説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】内燃機関の排気浄化装置において、ピストンリングによるガスシール機能の向上を図る。
【解決手段】ピストン本体41の外周面にリング溝44,45,46を形成し、このリング溝44,45,46にトップリング51、セカンドリング52、オイルリング53を嵌合し、上方に位置するリング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aとにより区画される空間部S1の壁面に、排気ガス(ブローバイガス)中に含まれる有害成分を浄化する浄化触媒54,55をコーティングにより担持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンがシリンダボアに摺動自在に支持され、このピストンの頂面と機関本体とで燃焼室が区画された内燃機関において、ブローバイガス中の有害成分を浄化する内燃機関の排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、内燃機関において、シリンダヘッドはシリンダブロックの上部に組み付けられ、複数の締結ボルトにより締結されており、直列をなして複数のシリンダボアが設けられ、各シリンダボアにピストンが上下移動自在に支持されている。そして、シリンダヘッドとシリンダブロックとピストン区画される各燃焼室に対して吸気ポート及び排気ポートが対向して形成され、この吸気ポート及び排気ポートは吸気弁及び排気弁により開閉自在となっている。また、吸気ポート(または燃焼室)に燃料を噴射するインジェクタが装着されると共に、燃焼室の混合気に着火する点火プラグが装着されている。
【0003】
従って、吸気弁の開放時に、空気が吸気ポートから燃焼室に吸入されると共に、インジェクタから噴射された燃料が燃焼室に吸入され、空気と燃料との混合気がピストンの上昇により圧縮され、この高圧の混合気が点火プラグに導かれて着火して爆発することで駆動力を得ることができ、排気弁の開放時に、燃焼後の排気ガスが排気ポートから排出される。
【0004】
そして、上述した内燃機関において、ピストンの外周部には複数のピストンリングが装着されている。上方側に装着されるトップリング及びセカンドリングは、ガスシール機能及び熱伝導機能を有し、その下方側に装着されるオイルリングは、オイルコントロール機能を有している。即ち、ガスシール機能は、内燃機関の吸気、圧縮、膨張、排気行程における燃焼室の機密性を確保するものであり、特に、燃焼室における燃焼ガスの膨張によりピストンが圧力を受けて下降するが、このとき、燃焼ガスがシリンダボアとピストンとの隙間を通ってクランクケース内に漏れないように、ピストンリングがシリンダボアの壁面に圧接して機密性を確保している。また、熱伝導機能は、ピストンリングがシリンダボアの壁面に圧接することで、ピストンの熱をシリンダボア側に逃がし、ピストンやピストンリングの長寿命化を確保するものである。更に、オイルコントロール機能は、潤滑油を必要最小限の量だけシリンダボアの壁面に残し、余分な潤滑油をかき上げて回収するものである。
【0005】
なお、このような従来の内燃機関としては、例えば、下記引用文献1に記載されたものがある。
【0006】
【特許文献1】実開平04−116637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃焼後に発生する排気ガス(ブローバイガス)は、有害成分であるNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)などを含んでおり、上述したように、ピストンリングによりこの排気ガスがクランクケース内に漏洩するのを防止している。ところが、ピストンリングは、その弾性力をもってシリンダボアの壁面に圧接することから、ピストンに形成されたリング溝とピストンリングとの間には若干のクリアランスが確保されると共に、ピストンリングの対向する端面に合口隙間が形成されている。そのため、若干量の排気ガスがリング溝とピストンリングとの隙間やピストンリングの合口隙間を通ってクランクケース内に漏洩してしまう。すると、リング溝の底面、ピストンリングの内周面や端面(合口隙間)にスラッジが発生してしまう。
【0008】
即ち、排気ガス中のNOxが、潤滑油に含まれる水分中の酸素やクランクケース内のブローバイガスを排出するためにエアクリーナから導入される空気中の酸素と反応し、スラッジ、つまり、カーボンの塊が発生する。そして、このスラッジがリング溝やピストンリングに形成されるとピストンリングの弾性力が低下し、ピストンの移動時にピストンリングがシリンダボアの壁面に対してスティックしてしまい、ガスシール機能が低下してしまうという問題がある。
【0009】
また、燃焼室の排気ガスがリング溝とピストンリングとの隙間やピストンリングの合口隙間を通ってクランクケース内に漏洩すると、有害成分であるNOx、HC、COがオイルパンに貯留されている潤滑油と接触し、この潤滑油が劣化してしまい、潤滑油の交換時期が短縮されて高コスト化を招くと共に、潤滑不良により燃費の悪化、出力の低下、騒音の発生などの不具合を招いてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、ピストンリングによるガスシール機能の向上を図った内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、ピストンの外周面に形成されたリング溝にピストンリングが嵌着され、前記ピストンがシリンダボアに摺動自在に支持され、該ピストンの頂面と機関本体とで燃焼室が区画された内燃機関において、前記リング溝と前記ピストンリングにより区画される空間部の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒が担持されたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の内燃機関の排気浄化装置では、前記空間部は、前記リング溝の底面と前記ピストンリングの内周面との間に形成された空間部であり、前記リング溝の底面または前記ピストンリングの内周面の少なくともいずれか一方に前記浄化触媒が担持されたことを特徴としている。
【0013】
本発明の内燃機関の排気浄化装置では、前記空間部は、前記リング溝の上面と前記ピストンリングの上面との間に形成された空間部であり、前記リング溝の上面または前記ピストンリングの上面の少なくともいずれか一方に前記浄化触媒が担持されたことを特徴としている。
【0014】
本発明の内燃機関の排気浄化装置では、前記空間部は、前記ピストンリングにおける対向する端面により形成された合口隙間部であり、前記ピストンリングの端面に前記浄化触媒が担持されたことを特徴としている。
【0015】
本発明の内燃機関の排気浄化装置では、前記ピストンリングにおける対向する端部が段付形状をなし、前記ピストンリングの複数の端面に前記浄化触媒が担持されたことを特徴としている。
【0016】
本発明の内燃機関の排気浄化装置では、前記空間部の壁面にポーラス部材が固定され、該ポーラス部材に前記浄化触媒が担持されたことを特徴としている。
【0017】
本発明の内燃機関の排気浄化装置では、前記ピストンリングは、トップリングとセカンドリングとオイルリングとを有し、少なくとも前記トップリングと該トップリングが嵌着されるリング溝により区画される空間部の壁面に前記浄化触媒が担持されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、ピストンの外周面に形成されたリング溝と、このリング溝に嵌着されるピストンリングとにより区画される空間部の壁面に、ブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒を担持したので、燃焼室のブローバイガスがリング溝とピストンリングとの空間部に流入すると、このガス中の有害成分が空間部の壁面に担持された浄化触媒により浄化されることとなり、リング溝やピストンリングにおけるスラッジの発生を抑制することができると共に、クランクケースへの有害成分の漏洩を抑制することができ、ピストンリングによるガスシール機能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンへのトップリングの装着部分を表す概略断面図、図2は、実施例1の内燃機関の排気浄化装置が適用されたエンジンの縦断面図、図3は、実施例1の内燃機関の排気浄化装置におけるビストンの要部断面図である。
【0021】
実施例1の内燃機関は、多気筒エンジンであり、図2に示すように、シリンダヘッド11はシリンダブロック12上に組み付けられ、複数の図示しない締結ボルトにより締結されている。シリンダブロック12には複数のシリンダボア13が形成され、各シリンダボア13にピストン14が摺動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック12の下部に図示しないクランクシャフトが回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド15を介してこのクランクシャフトに連結されている。
【0022】
シリンダブロック12の各シリンダボア13に対応してその上方に燃焼室16が直列するように形成されている。この燃焼室16は、シリンダボア13の内壁面と、シリンダヘッド11の下面と、ピストン14の頂面により囲繞されており、天井部(シリンダヘッド11の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。そして、この各燃焼室16の上方、つまり、シリンダヘッド11の下面に吸気ポート17と、排気ポート18が対向して開口している。
【0023】
そして、この吸気ポート17及び排気ポート18に対して吸気弁19及び排気弁20がそれぞれ位置している。この吸気弁19及び排気弁20は、シリンダヘッド11に固定された各ステムガイド21,22により軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、各バルブスプリング23,24により上方、つまり、吸気ポート17及び排気ポート18を閉止する方向に付勢支持されている。また、吸気弁19及び排気弁20は、上端部にローラロッカアーム25,26の一端部が連結され、このローラロッカアーム25,26の他端部はシリンダヘッド11に固定されたラッシュアジャスタ27,28に連結されており、吸気カムシャフト29の吸気カム30及び排気カムシャフト31の排気カム32が各ローラロッカアーム25,26に接触している。
【0024】
従って、エンジンに同期して吸気カムシャフト29及び排気カムシャフト31が回転すると、吸気カム30及び排気カム32がローラロッカアーム25,26を作動させ、各吸気弁19及び排気弁20が所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート17及び排気ポート18を開閉し、吸気ポート17と燃焼室16、燃焼室16と排気ポート18とをそれぞれ連通することができる。
【0025】
燃焼室16の側部、つまり、吸気ポート17側のシリンダヘッド11の下面には、この燃焼室16に直接燃料を噴射するインジェクタ33が装着されている。また、燃焼室16の天井部中央、つまり、吸気ポート17と排気ポート18の間のシリンダヘッド11の下面には、点火プラグ34が装着されている。そして、車両には、電子制御ユニット(ECU)が搭載されており、このECUは、インジェクタ33の燃料噴射量や噴射時期、点火プラグ34による点火時期などを制御可能となっており、検出した吸入空気量、スロットル開度(アクセル開度)、エンジン回転数などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。
【0026】
また、上述したピストン14は、図2及び図3に示すように、ピストン本体41の外周面42に3つのピストンリング51,52,53が装着されて構成されている。そして、このピストン本体41は、シリンダボア13の内径より若干小さい外径を有する円柱形状をなし、外周面42がシリンダボア13の内壁面と所定のクリアランスを有している。また、ピストン本体41は、上部に燃焼室16を区画形成する頂面43を有している。
【0027】
また、ピストン本体41は、外周面に周方向に沿って所定深さを有する3つのリング溝44,45,46が上下方向に対して所定間隔で形成されている。そして、各リング溝44,45,46に、ピストンリングとしてのトップリング51、セカンドリング52、オイルリング53が嵌着しており、外周面42は、トップランド42a、セカンドランド42b、サードランド42cとして区画されている。
【0028】
この場合、ピストン本体41の頂面43側に位置するトップリング51及びセカンドリング52は、ガスシール機能及び熱伝導機能を有している。即ち、トップリング51及びセカンドリング52は、エンジンの吸気、圧縮、膨張、排気行程における燃焼室16の機密性を確保することができるものであり、特に、燃焼室16における燃焼ガスの膨張によりピストン14が圧力を受けて下降するが、トップリング51及びセカンドリング52が弾性力をもってシリンダボア13の壁面に圧接することで、排気ガスがピストン14とシリンダボア13との隙間を通ってクランクケース内に漏れないように機能している。また、トップリング51及びセカンドリング52は、外周面がシリンダボア13の壁面に圧接することで、ピストン14の熱をシリンダボア13側に逃がし、ピストン14やトップリング51及びセカンドリング52の長寿命化を確保することができる。
【0029】
また、セカンドリング52とその下方側に装着されるオイルリング53は、外周面がシリンダボア13の壁面に圧接することで、ピストン14の移動時にシリンダボア13の壁面に付着している潤滑油をかき上げ、必要最小限の量の潤滑油をシリンダボア13の壁面に残し、余分な潤滑油を回収することができる。
【0030】
ところで、燃焼室16に残留する排気ガス(ブローバイガス)は、有害成分であるNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)などを含んでおり、トップリング51及びセカンドリング52のガスシール機能により、この排気ガスが図示しないクランクケース内に漏洩するのを防止している。しかし、トップリング51及びセカンドリング52は、上述したリング溝44,45に移動自在に嵌合していることから、両者の間に若干のクリアランスが確保されている。そのため、特に、トップリング51とリング溝44との隙間に排気ガスが侵入し、この排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、スラッジ、つまり、カーボンの塊が生成されて付着する。すると、このスラッジによりピストンリングの弾性力が低下してガスシール機能が低下してしまい、有害成分であるNOx、HC、COがオイルパンに貯留されている潤滑油と接触し、この潤滑油が劣化してしまう。
【0031】
そこで、本実施例では、図1に示すように、リング溝44とトップリング51とにより区画される空間部S1の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒54,55が担持されている。具体的に説明すると、リング溝44は、底面44aと、上面44bと、下面44cとから構成される一方、トップリング51は、リング溝44の底面44aに対向する内周面51aと、上面44bに対向する上面51bと、下面44cに対向する下面51cと、シリンダボア13の壁面に圧接可能な外周面51dとから構成されている。そして、リング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aとの間に空間部S1が形成されている。また、トップリング51が弾性力をもって径方向に移動してシリンダボア13の壁面に圧接できるように、リング溝44の上面44bとトップリング51の上面51bとの間または下面44cと下面51cとの間には、若干リクリアランスが設けられている。そのため、ピストン14の上昇時には、トップリング51の下面51cがリング溝44の下面44cに密着することで、上面44bと上面51bとの間に空間部S2が形成され、ピストン14の下降時には、トップリング51の上面51bがリング溝44の上面44bに密着することで、下面44cと下面51cとの間に空間部S3が形成される。
【0032】
そして、上述した空間部S1を区画するリング溝44の底面44a及び一部の上面44b、下面44cに浄化触媒54がコーティングにより設けられると共に、空間部S1を区画するトップリング51の内周面51aに浄化触媒55がコーティングにより設けられている。本実施例では、排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、リング溝44の底面44aやトップリング51の内周面51aにスラッジが生成されるのを防止するため、この浄化触媒54,55として、NOx還元触媒を適用し、排気ガス中のNOxを還元して減少させるようにしている。このNOx還元触媒としては、例えば、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)などのアルカリ貴金属や種々のアルカリ、アルカリ土類金属、または、アルミナやゼオライトにNOx選択還元性の高い金属を担持した触媒などが望ましい。
【0033】
なお、空間部S1を区画するリング溝44の底面44a及び一部の上面44b、下面44cと、トップリング51の内周面51aにそれぞれ浄化触媒54,55をコーティングしたが、リング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aに浄化触媒54,55をコーティングしてもよく、または、リング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aのいずれか一方に浄化触媒54,55をコーティングしてもよい。
【0034】
ここで、本実施例の内燃機関の排気浄化装置における作用を説明する。
【0035】
図1乃至図3に示すように、吸気弁19の開放時に、吸気通路の空気が吸気ポート17から燃焼室16に吸入されると共に、インジェクタ33から燃料が燃焼室16に噴射され、この空気と燃料との混合気がピストン14の上昇により圧縮され、この高圧の混合気が点火プラグ34に導かれて着火して爆発することでピストン14が押し下げられて駆動力を得ることができ、排気弁20の開放時に、燃焼室16の排気ガスが排気ポート18から排気管に排出される。
【0036】
このとき、ピストン14が上昇して燃焼室16の混合気が圧縮され、高圧の混合気に点火することで膨張して爆発するが、爆発後の燃焼ガス、つまり、排気ガスには、有害成分であるNOxが含まれている。そのため、ピストン14の移動時に、このピストン14の外周面に装着されたトップリング51及びセカンドリング52がシリンダボア13の壁面に摺接することで、燃焼室16の排気ガスがピストン14とシリンダボア13との隙間を通ってクランクケースに漏洩するのが防止される。
【0037】
また、このとき、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通ってリング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められる。この排気ガスにはNOxが含まれているが、排気ガスが空間部S1に閉じ込められている間に、NOxは空間部S1の壁面にコーティングされた浄化触媒54,55により還元される。そのため、排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、スラッジが生成されることはなく、ピストン14のリング溝44の底面44aやトップリング51の内周面51aにスラッジが付着することが防止される。
【0038】
また、排気ガスが空間部S1に閉じ込められている間に、排気ガス中に含まれるHCやCOが空間部S1の壁面にコーティングされた浄化触媒54,55により浄化される。そして、ピストン14の下降時に、トップリング51の外周面51dとシリンダボア13の壁面との摺動抵抗により、トップリング51の上面51bがリング溝44の上面44bに密着して空間部S2を閉止する一方、トップリング51の下面51cがリング溝44の下面44cから離間して空間部S3を開放し、空間部S1に閉じ込められた排気ガスがこの空間部S3を通ってクランクケース側に排出される。しかし、この排気ガスには有害物質が含まれていないため、図示しないオイルパンに貯留されている潤滑油が劣化することはない。
【0039】
このように実施例1の内燃機関の排気浄化装置にあっては、ピストン本体41の外周面にリング溝44,45,46を形成し、このリング溝44,45,46にトップリング51、セカンドリング52、オイルリング53を嵌合し、上方に位置するリング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aとにより区画される空間部S1の壁面に、排気ガス(ブローバイガス)中に含まれる有害成分を浄化する浄化触媒54,55をコーティングにより担持している。
【0040】
従って、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通ることで流速が低下し、リング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められると、排気ガス中のNOxがこの空間部S1の壁面にコーティングされた浄化触媒54,55により浄化されることとなり、NOxが酸素と反応してスラッジを生成することはない。その結果、スラッジの付着により各リング51,52,53の弾性力が低下することはなく、ピストン14はスティックすることなく各リング51,52,53がシリンダボア13の壁面に圧接した状態で適正に移動することができ、ガスシール機能を向上することができる。
【0041】
また、排気ガスが空間部S1に閉じ込められている間に、排気ガス中に含まれるNOx、HC、COなどの有害成分が浄化触媒54,55により浄化されることから、浄化処理後の排気ガスがセカンドリング52及びオイルリング53を通過してクランクケースに排出されても、この排気ガスには有害物質が含まれていないために潤滑油を劣化させることはなく、潤滑油の交換時期が短縮して高コスト化を招くこともなく、その結果、潤滑不良により燃費の悪化、出力の低下、騒音の発生などの不具合を確実に防止することができる。
【0042】
そして、リング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aに浄化触媒54,55をコーティングしており、有害成分を含んだ排気ガスを空間部S1に一時的に閉じ込めることで、浄化触媒54,55による浄化効率を向上することができる。また、トップリング51の径方向における動作を阻害することなく、空間部S1の排気ガス中のNOxを確実に浄化することができる。
【0043】
また、本実施例では、ピストンリングとしてのトップリング51、セカンドリング52、オイルリング53のうち、トップリング51とリング溝44により区画される空間部S1の壁面に浄化触媒54,55をコーティングすることで、この空間部S1に閉じ込められた排気ガス中の有害成分浄化している。従って、有害成分、特に、NOxを含んだ排気ガスがセカンドリング52やオイルリング53に接触することはなく、浄化触媒を設けることなく、このセカンドリング52やオイルリング53、リング溝45,46におけるスラッジの生成を防止することができる。
【0044】
なお、上述した各実施例では、リング溝44とトップリング51により区画される空間部S1の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒54,55として、例えば、NOx還元触媒を担持するようにしたが、三元触媒や酸化触媒であってもよい。
【実施例2】
【0045】
図4は、本発明の実施例2に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0046】
実施例2の内燃機関の排気浄化装置において、図4に示すように、ピストン14は、上部外周面にリング溝44が形成されており、このリング溝44にトップリング51が嵌着され、このトップリング51の外周面がシリンダボア13の壁面に圧接することで、ガスシール機能が確保されている。そして、リング溝44とトップリング51とにより区画される空間部S1の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒61が担持されている。
【0047】
この浄化触媒61は、積層した金網などのポーラス部材に、触媒として、例えば、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)などのアルカリ貴金属や種々のアルカリ、アルカリ土類金属がコーティングされて形成されている。そして、上述した空間部S1を区画するリング溝44の底面44a及び一部の上面44b、下面44cに浄化触媒61が固定されている。
【0048】
なお、空間部S1を区画するリング溝44の底面44a及び一部の上面44b、下面44cにポーラス部材からなる浄化触媒61を固定したが、トップリング51の内周面51aに浄化触媒61を固定してもよい。
【0049】
従って、ピストン14の上昇時に、このピストン14の外周面に装着されたトップリング51がシリンダボア13の壁面に摺接することで、燃焼室16の排気ガスがピストン14とシリンダボア13との隙間を通ってクランクケースに漏洩するのが防止される。
【0050】
このとき、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通ることで流速が低下し、リング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められる。この排気ガスにはNOxなどの有害成分が含まれているが、排気ガスが空間部S1に閉じ込められている間に、この有害成分は空間部S1の壁面に固定された浄化触媒61により浄化される。そのため、排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、スラッジが生成されることはなく、ピストン14のリング溝44の底面44aやトップリング51の内周面51aにスラッジが付着することが防止される。
【0051】
また、排気ガスが空間部S1に閉じ込められている間に、排気ガス中のHCやCOも空間部S1の壁面に固定された浄化触媒61により浄化される。そのため、ピストン14の下降時に、リング溝44とトップリング51との間に空間部S3が形成され、空間部S1に閉じ込められた排気ガスがこの空間部S3を通ってクランクケース側に排出されても、この排気ガスには有害成分が含まれていないため、オイルパンに貯留されている潤滑油が劣化することはない。
【0052】
このように実施例2の内燃機関の排気浄化装置にあっては、ピストン本体41の外周面にリング溝44を形成し、このリング溝44にトップリング51を嵌合し、このリング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aとにより区画される空間部S1の壁面に、排気ガス(ブローバイガス)中に含まれる有害成分を浄化するポーラス部材からなる浄化触媒61を固定している。
【0053】
従って、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通り、リング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められると、排気ガス中の有害成分がこの空間部S1の壁面に設けられた浄化触媒61により浄化されることとなり、NOxが酸素と反応してスラッジを生成することはない。その結果、スラッジの付着によりトップリング51の弾性力が低下することはなく、ピストン14はスティックすることなくトップリング51がシリンダボア13の壁面に圧接した状態で適正に移動することができ、ガスシール機能を向上することができる。
【0054】
また、排気ガスが空間部S1に閉じ込められている間に、排気ガス中に含まれるNOx、HC、COなどの有害成分が浄化触媒61により浄化されることから、浄化処理後の排気ガスがクランクケースに排出されても、この排気ガスには有害物質が含まれていないために潤滑油を劣化させることはなく、潤滑油の交換時期が短縮して高コスト化を招くこともなく、その結果、潤滑不良により燃費の悪化、出力の低下、騒音の発生などの不具合を確実に防止することができる。
【0055】
また、本実施例では、空間部S1を区画するリング溝44の底面44a及び一部の上面44b、下面44cに固定した浄化触媒61をポーラス部材としている。従って、浄化触媒61を圧膜に形成することで、有害成分との接触面積を拡大することができると共に、流速を低下することができ、排気ガスの浄化効率を向上することができる。また、空間部S1を通過する排気ガスの流速を低下させることで、燃焼室16からクランクケース側に排出される排気ガス量を低下してスシール機能を更に向上することができる。
【実施例3】
【0056】
図5は、本発明の実施例3に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0057】
実施例3の内燃機関の排気浄化装置において、図5に示すように、ピストン14は、上部外周面にリング溝44が形成されており、このリング溝44にトップリング51が嵌着され、このトップリング51の外周面がシリンダボア13の壁面に圧接することで、ガスシール機能が確保されている。そして、リング溝44とトップリング51とにより区画される空間部S1,S2の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒62が担持されている。
【0058】
即ち、空間部S1,S2を区画するリング溝44の底面44aと上面44bに浄化触媒62がコーティングにより設けられると共に、この浄化触媒62は、リング溝44の上面44bからトップランド42aの一部まで延出されている。
【0059】
従って、ピストン14の上昇時に、このピストン14の外周面に装着されたトップリング51がシリンダボア13の壁面に摺接することで、燃焼室16の排気ガスがピストン14とシリンダボア13との隙間を通ってクランクケースに漏洩するのが防止される。
【0060】
このとき、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通ることで流速が低下し、リング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められる。この排気ガスにはNOxなどの有害成分が含まれているが、排気ガスが空間部S1,S2に閉じ込められている間に、この有害成分は空間部S1,S2の壁面にコーティングされた浄化触媒62により浄化される。そのため、排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、スラッジが生成されることはなく、ピストン14のリング溝44の底面44aやトップリング51の内周面51aにスラッジが付着することが防止される。
【0061】
また、排気ガスが空間部S1,S2に閉じ込められている間に、排気ガス中のHCやCOも浄化触媒62により浄化される。そのため、ピストン14の下降時に、リング溝44とトップリング51との間に空間部S3が形成され、空間部S1,S2に閉じ込められた排気ガスがこの空間部S3を通ってクランクケース側に排出されても、この排気ガスには有害成分が含まれていないため、オイルパンに貯留されている潤滑油が劣化することはない。
【0062】
このように実施例3の内燃機関の排気浄化装置にあっては、ピストン本体41の外周面にリング溝44を形成し、このリング溝44にトップリング51を嵌合し、このリング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aとにより区画される空間部S1の壁面、つまり、リング溝44の底面44aと上面44bに、排気ガス(ブローバイガス)中に含まれる有害成分を浄化する浄化触媒62をコーティングしている。
【0063】
従って、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通り、リング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められると、排気ガス中の有害成分がこの空間部S1,S2の壁面に設けられた浄化触媒62により浄化されることとなり、NOxが酸素と反応してスラッジを生成することはない。その結果、スラッジの付着によりトップリング51の弾性力が低下することはなく、ピストン14はスティックすることなくトップリング51がシリンダボア13の壁面に圧接した状態で適正に移動することができ、ガスシール機能を向上することができる。
【0064】
また、排気ガスが空間部S1,S3に閉じ込められている間に、排気ガス中に含まれるNOx、HC、COなどの有害成分が浄化触媒62により浄化されることから、浄化処理後の排気ガスがクランクケースに排出されても、この排気ガスには有害物質が含まれていないために潤滑油を劣化させることはなく、潤滑油の交換時期が短縮して高コスト化を招くこともなく、その結果、潤滑不良により燃費の悪化、出力の低下、騒音の発生などの不具合を確実に防止することができる。
【0065】
また、本実施例では、空間部S1,S2を区画するリング溝44の底面44aと上面44bに浄化触媒62をコーティングしている。従って、有害成分を含んだ排気ガスを空間部S1,S2に一時的に閉じ込めることで、浄化触媒62による浄化効率を向上することができる。
【実施例4】
【0066】
図6は、本発明の実施例4に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
実施例4の内燃機関の排気浄化装置において、図6に示すように、ピストン14は、上部外周面にリング溝44が形成されており、このリング溝44にトップリング51が嵌着され、このトップリング51の外周面がシリンダボア13の壁面に圧接することで、ガスシール機能が確保されている。そして、リング溝44とトップリング51とにより区画される空間部S1,S2の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒63が担持されている。
【0068】
即ち、空間部S1,S2を区画するトップリング51の内周面51aと上面51bに浄化触媒63がコーティングにより設けられている。この場合、トップリング51の内周面51aから上面51bにかけて浄化触媒63のコーティング厚さに対応した切欠を形成し、この切欠に浄化触媒63をコーティングすることで、リング溝44とのクリアランスを適正に維持することができる。
【0069】
従って、ピストン14の上昇時に、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通ることで流速が低下し、リング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められる。すると、排気ガスが空間部S1,S2に閉じ込められている間に、排気ガス中の有害成分が空間部S1,S2の壁面にコーティングされた浄化触媒63により浄化される。そのため、排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、スラッジが生成されることはなく、ピストン14のリング溝44の底面44aやトップリング51の内周面51aにスラッジが付着することが防止される。
【0070】
また、排気ガスが空間部S1,S2に閉じ込められている間に、排気ガス中のHCやCOも浄化触媒63により浄化される。そのため、ピストン14の下降時に、空間部S1,S2に閉じ込められた排気ガスがリング溝44とトップリング51との間に形成された空間部S3を通ってクランクケース側に排出されても、この排気ガスには有害成分が含まれていないため、オイルパンに貯留されている潤滑油が劣化することはない。
【0071】
このように実施例4の内燃機関の排気浄化装置にあっては、ピストン本体41の外周面にリング溝44を形成し、このリング溝44にトップリング51を嵌合し、このリング溝44の底面44aとトップリング51の内周面51aとにより区画される空間部S1の壁面、つまり、トップリング51の内周面51aと上面51bに、排気ガス(ブローバイガス)中に含まれる有害成分を浄化する浄化触媒63をコーティングしている。
【0072】
従って、燃焼室16内の排気ガスがリング溝44とトップリング51との空間部S2から空間部S1に侵入して一時的に閉じ込められると、有害成分がこの空間部S1,S2の壁面に設けられた浄化触媒63により浄化され、スラッジの生成が抑制されることとなり、ガスシール機能を向上することができる。また、排気ガスがクランクケースに排出されても、有害物質が浄化処理されているために潤滑油を劣化させることはない。
【0073】
また、本実施例では、空間部S1,S2を区画するトップリング51の内周面51aと上面51bに浄化触媒63をコーティングしている。従って、高温となるトップリング51側に浄化触媒63をコーティングすることで、浄化触媒63が早期に活性温度まで上昇し、この活性温度に維持されることで、浄化効率を向上することができる。また、トップリング51は、一般的にステンレス製であるため、浄化触媒63としての金属を容易に担持することができ、低コスト化を図ることができる。
【実施例5】
【0074】
図7は、本発明の実施例5に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部側面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0075】
実施例5の内燃機関の排気浄化装置において、図7に示すように、ピストン14は、上部外周面にリング溝44が形成されており、このリング溝44にトップリング51が嵌着され、このトップリング51の外周面がシリンダボア13の壁面に圧接することで、ガスシール機能が確保されている。また、トップリング51は、不連続なリング形状をなし、互いに対向する2つの端面51e,51fが形成されており、この端面51e,51fとの間に空間部としての合口隙間部S4が形成されている。そして、リング溝44とトップリング51とにより区画される空間部、つまり、合口隙間部S4の壁面としての端面51e,51fにブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒64,65が担持されている。
【0076】
従って、ピストン14の移動時に、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通ることで流速が低下してから、トップリング51の端面51e,51fにより形成された合口隙間部S4に侵入する。すると、排気ガスがこの空間部S4を通過するときに、排気ガス中の有害成分が空間部S4の壁面にコーティングされた浄化触媒64,65により浄化される。そのため、排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、スラッジが生成されることはなく、ピストン14のリング溝44やトップリング51の端面51e,51fにスラッジが付着することが防止される。
【0077】
また、排気ガスが空間部S4を通過するときに、排気ガス中のHCやCOも浄化触媒64,65により浄化される。そのため、合口隙間部S4を通過した排気ガスがクランクケース側に排出されても、この排気ガスには有害成分が含まれていないため、オイルパンに貯留されている潤滑油が劣化することはない。
【0078】
このように実施例5の内燃機関の排気浄化装置にあっては、ピストン本体41の外周面にリング溝44を形成し、このリング溝44にトップリング51を嵌合し、このリング溝44とトップリング51により区画される空間部S4の壁面、つまり、合口隙間部S4を区画するトップリング51の端面51e,51fに排気ガス(ブローバイガス)中に含まれる有害成分を浄化する浄化触媒64,65をコーティングしている。
【0079】
従って、燃焼室16内の排気ガスがリング溝44とトップリング51との合口隙間部S4を通過するとき、有害成分がこの合口隙間部S4の壁面に設けられた浄化触媒64,65により浄化され、スラッジの生成が抑制されることとなり、ガスシール機能を向上することができる。また、排気ガスがクランクケースに排出されても、有害物質が浄化処理されているために潤滑油を劣化させることはない。
【実施例6】
【0080】
図8は、本発明の実施例6に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部側面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0081】
実施例6の内燃機関の排気浄化装置において、図8に示すように、ピストン14は、上部外周面にリング溝44が形成されており、このリング溝44にトップリング51が嵌着され、このトップリング51の外周面がシリンダボア13の壁面に圧接することで、ガスシール機能が確保されている。また、トップリング51は、不連続なリング形状をなし、互いに対向する2つの端部が段付形状をなしている。即ち、一方の端部には、2つの端面51e1,51e2が段付部51gをもって長手方向にずれて形成され、他方の端部には、2つの端面51f1,51f2が段付部51hをもって長手方向にずれて形成されており、段付部51g,51hが当接すると共に、一方の端面51e1,51e2と他方の端面51f1,51f2との間に空間部としての合口隙間部S41,S42が形成されている。そして、リング溝44とトップリング51とにより区画される空間部、つまり、合口隙間部S41,S42の壁面としての端面51e1,51e2,51f1,51f2にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒66,67,68,69が担持されている。
【0082】
従って、ピストン14の移動時に、燃焼室16内の排気ガスがピストン14のトップランド42aとシリンダボア13の壁面との隙間を通り、トップリング51の端面51e1,51e2,51f1,51f2により形成された合口隙間部S41,S42に侵入する。すると、排気ガスがこの空間部S41,S42を通過するときに、排気ガス中の有害成分が空間部S41,S42の壁面にコーティングされた浄化触媒66,67,68,69により浄化される。そのため、排気ガス中のNOxが潤滑油に含まれる水分中の酸素と反応し、スラッジが生成されることはなく、ピストン14のリング溝44やトップリング51の端面51e1,51e2,51f1,51f2にスラッジが付着することが防止される。
【0083】
また、排気ガスが空間部S41,S42を通過するときに、排気ガス中のHCやCOも浄化触媒66,67,68,69により浄化される。そのため、合口隙間部S41,S42を通過した排気ガスがクランクケース側に排出されても、この排気ガスには有害成分が含まれていないため、オイルパンに貯留されている潤滑油が劣化することはない。
【0084】
このように実施例6の内燃機関の排気浄化装置にあっては、ピストン本体41の外周面にリング溝44を形成し、このリング溝44にトップリング51を嵌合し、このリング溝44とトップリング51により区画される空間部S4の壁面、つまり、合口隙間部S41,S42を区画するトップリング51の端面51e1,51e2,51f1,51f2に排気ガス(ブローバイガス)中に含まれる有害成分を浄化する浄化触媒66,67,68,69をコーティングしている。
【0085】
従って、燃焼室16内の排気ガスがリング溝44とトップリング51との合口隙間部S41,S42を通過するとき、有害成分がこの合口隙間部S41,S42の壁面に設けられた浄化触媒66,67,68,69により浄化され、スラッジの生成が抑制されることとなり、ガスシール機能を向上することができる。また、排気ガスがクランクケースに排出されても、有害物質が浄化処理されているために潤滑油を劣化させることはない。
【0086】
なお、上述した各実施例において、リング溝44とトップリング51により区画される空間部S1,S2,S3,S4,S41,S42を区画する壁面に浄化触媒54,55,61,62,63,64,65,66,67,68,69を担持するようにしている。この場合、浄化触媒54,55,61,62,63,64,65,66,67,68,69の表面の粗さを大きくすることで、ラビリンス効果によりブローバイガスの乱れを起こして圧力を降下させ、流速を低下させることで排気ガスの漏洩量を減少させることができる。
【0087】
また、上述した各実施例では、ピストン14の上方に位置するリング溝44とトップリング51により区画される空間部S1の壁面に浄化触媒を担持するようにしたが、トップリング51に加えて、セカンドリング52やオイルリング53とリング溝45,46により区画される空間部の壁面に浄化触媒を担持してもよく、この場合、燃焼室16からクランクケース内へのブローバイガスの漏洩を確実に防止することができる。
【0088】
また、上述した実施例1〜4では、ピストン14の上方に位置するリング溝44とトップリング51により区画される空間部S1,S2,S3の壁面に浄化触媒を担持し、実施例5、6では、トップリング51の空間部としての合口隙間部S4,S41,S42の壁面に浄化触媒を担持するようにしたが、空間部S1,S2,S3と合口隙間部S4,S41,S42の両方の壁面に浄化触媒を担持してもよく、燃焼室16からクランクケース内へのブローバイガスの漏洩を確実に防止することができる。
【0089】
そして、上述した各実施例では、燃料を直接燃焼室に噴射する筒内噴射式の内燃機関として説明したが、燃料を吸気ポートに噴射するポート噴射式内燃機関に適用しても前述と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、ピストンのリング溝とピストンリングにより区画される空間部の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒を担持することで、ガスシール機能の向上を図ったものであり、いずれの種類の内燃機関に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンへのトップリングの装着部分を表す概略断面図である。
【図2】実施例1の内燃機関の排気浄化装置が適用されたエンジンの縦断面図である。
【図3】実施例1の内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部断面図である。
【図5】本発明の実施例3に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部断面図である。
【図6】本発明の実施例4に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部断面図である。
【図7】本発明の実施例5に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部側面図である。
【図8】本発明の実施例6に係る内燃機関の排気浄化装置におけるピストンの要部側面図である。
【符号の説明】
【0092】
11 シリンダヘッド
12 シリンダブロック
14 ピストン
16 燃焼室
17 吸気ポート
18 排気ポート
33 インジェクタ
34 点火プラグ
41 ピストン本体
42 外周面
43 頂面
44,45,46 リング溝
44a 底面
44b 上面
44c 下面
51 トップリング(ピストンリング)
51a 内周面
51b 上面
51c 下面
51d 外周面
51e,51e1,51e2,51f,51f1,51f2 端面
51g,51h 段付部
52 セカンドリング(ピストンリング)
53 オイルリング(ピストンリング)
54,55,61,62,63,64,65,66,67,68,69 浄化触媒
S1,S2,S3,S41,S42 空間部
S4 合口隙間部(空間部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの外周面に形成されたリング溝にピストンリングが嵌着され、前記ピストンがシリンダボアに摺動自在に支持され、該ピストンの頂面と機関本体とで燃焼室が区画された内燃機関において、前記リング溝と前記ピストンリングにより区画される空間部の壁面にブローバイガス中の有害成分を浄化する浄化触媒が担持されたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記空間部は、前記リング溝の底面と前記ピストンリングの内周面との間に形成された空間部であり、前記リング溝の底面または前記ピストンリングの内周面の少なくともいずれか一方に前記浄化触媒が担持されたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記空間部は、前記リング溝の上面と前記ピストンリングの上面との間に形成された空間部であり、前記リング溝の上面または前記ピストンリングの上面の少なくともいずれか一方に前記浄化触媒が担持されたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記空間部は、前記ピストンリングにおける対向する端面により形成された合口隙間部であり、前記ピストンリングの端面に前記浄化触媒が担持されたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記ピストンリングにおける対向する端部が段付形状をなし、前記ピストンリングの複数の端面に前記浄化触媒が担持されたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記空間部の壁面にポーラス部材が固定され、該ポーラス部材に前記浄化触媒が担持されたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記ピストンリングは、トップリングとセカンドリングとオイルリングとを有し、少なくとも前記トップリングと該トップリングが嵌着されるリング溝により区画される空間部の壁面に前記浄化触媒が担持されたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−309138(P2007−309138A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136970(P2006−136970)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】