説明

内燃機関用中空バルブ

【課題】冷却性を良好にすること
【解決手段】軸部Vsと、この軸部Vsの一端に設けた傘部Vhと、この傘部Vhから軸部Vhまでの間で内部にて連通する密閉された中空部4と、この中空部4内に封入された冷媒5と、を備えた内燃機関用中空バルブ10Aにおいて、その傘部Vhは、内燃機関の燃焼室CCの壁面の一部を成す燃焼室壁面3aと中空部4の壁面の一部を成す中空部壁面3bとが形成された壁面部位(下部キャップ3)を有し、この壁面部位と少なくとも冷媒5又は軸部Vsの内の何れか一方の伝熱対象との間で高い熱伝導を行う高熱伝導部材6Aを中空部壁面3bに対して少なくとも1つ配設すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関における吸排気の動弁機構に用いられる内燃機関用中空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関における吸排気の動弁機構には、吸気ポートと燃焼室又は排気ポートと燃焼室との間を夫々に連通又は遮断させるバルブが配設されている。一般に、このバルブは、傘部と軸部とに大別され、その軸部の軸線方向への往復運動によって吸気ポートと燃焼室又は排気ポートと燃焼室との間における連通又は遮断の状態を作り出す。
【0003】
ここで、このバルブの傘部、特に燃焼室の壁面の一部を成す部分は、燃焼室の燃焼ガスに曝されるので、燃焼によって発生した熱が伝達され易くなっている。特に、近年においては、内燃機関の高出力化のみならず、燃料消費量や排気ガス中の有害物質(炭化水素等)の低減を図るべく行われる燃焼形態によって燃焼室の発熱量が高くなっていく傾向にあり、その傘部に伝わる熱が多くなっている。
【0004】
そこで、従来、その傘部に伝わる熱を逃がし易くしたバルブが存在している。例えば、下記の特許文献1には、傘部から軸部まで繋がる密閉された中空部をバルブに形成し、その中空部内に熱伝導媒体となる圧粉体が封入された内燃機関用中空バルブが開示されている。この内燃機関用中空バルブにおいては、中空部内が熱伝導媒体で埋め尽くされていないので、その熱伝導媒体がバルブの往復運動に伴い中空部内で揺すられて傘部から軸部までの間を流動する。従って、この内燃機関用中空バルブにおいては、燃焼室から伝達された傘部の熱をその熱伝導媒体が軸部に伝えて逃がすことができ、その傘部の過度の温度上昇を抑えることができる。
【0005】
尚、下記の特許文献2には、内燃機関用中空バルブとは無縁な半導体装置の放熱基材に関するものではあるが、母材に対して垂直方向に当該母材よりも熱伝導率の高いロッド(炭素繊維強化複合材料、炭素基金属複合材料や高熱伝導性金属材料等の内の少なくとも一方からなるもの)を埋め込んで良好な熱伝導特性を得ようとする技術について記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−113113号公報
【特許文献2】特開2003−188324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内燃機関には多用な型式が存在するが、どの様な型式の内燃機関であっても、その殆どにおいては、内燃機関用中空バルブの軸線方向と重力方向との一致は見受けられないので、中空部内における傘部、軸部の夫々の壁面にて熱伝導媒体(冷媒)が均一に接するとは限らず、その夫々が均等に冷却されない可能性がある。例えば、所謂直列の内燃機関は、一般的に傾斜させて車輌に搭載されるので、内燃機関用中空バルブの軸線方向と重力方向とが一致している可能性が低い。また、所謂V型(水平対向も含む)の内燃機関は、バンク角が設けられているので、同じく内燃機関用中空バルブの軸線方向と重力方向とが一致する可能性が低い。更に、そもそも、内燃機関用中空バルブは、一般的に傾斜させて内燃機関に搭載されるので、その軸線方向と重力方向とが一致していない。
【0008】
つまり、従来の内燃機関用中空バルブにおいては、例えば、中空部内における傘部の或る一部分では熱伝導媒体に熱が伝えられてその熱を軸部等の伝熱対象へと逃がすことができたとしても、他の部分では熱伝導媒体が壁面に触れることができずにそこの熱を奪えなくなっている、ということも考えられ、これによって、特に冷却の必要とされる傘部の冷却効果に斑が出てしまう可能性がある。尚、かかる不都合を改善すべく熱伝導媒体(一般に金属ナトリウム)の封入量を増加させてもよいが、その熱伝導媒体の殆どはバルブの運動方向とは逆方向へと移動するものであり、また、その増加に伴ってバルブの慣性力が増大するので、内燃機関用中空バルブの円滑な往復運動を阻害してしまう虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、冷却性の良好な内燃機関用中空バルブを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、軸部と、この軸部の一端に設けた傘部と、この傘部から軸部までの間で内部にて連通する密閉された中空部と、この中空部内に封入された冷媒と、を備えた内燃機関用中空バルブにおいて、その傘部は、内燃機関の燃焼室の壁面の一部を成す燃焼室壁面と中空部の壁面の一部を成す中空部壁面とが形成された壁面部位を有し、この壁面部位と少なくとも冷媒又は軸部の内の何れか一方の伝熱対象との間で高い熱伝導を行う高熱伝導部材を中空部壁面に対して少なくとも1つ配設している。
【0011】
この請求項1記載の内燃機関用中空バルブにおいては、壁面部位の熱が高熱伝導部材によって奪われるので、その壁面部位の冷却を図ることができる。また、その高熱伝導部材が奪った熱は、冷媒等の伝熱対象に伝えられるので、その伝熱対象から最終的にシリンダヘッドへと伝わる。このようなことから、この内燃機関用中空バルブは、最も高温になり易い傘部を効率良く冷却することができる。
【0012】
また、上記目的を達成する為、請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の内燃機関用中空バルブにおいて、中空部壁面に接触させた一端と伝熱対象に接触させた他端との間で熱伝導の方向性を有する高熱伝導部材を用意している。例えば、この種の高熱伝導部材としては、請求項3記載の発明の如く炭素繊維強化金属が考えられる。
【0013】
この請求項2又は3に記載の内燃機関用中空バルブにおいては、壁面部位の熱を所望の伝熱対象へと確実に伝えることができるようになる。
【0014】
また、上記目的を達成する為、請求項4記載の発明では、上記請求項1,2又は3に記載の内燃機関用中空バルブにおいて、壁面部位の熱を冷媒に対して伝えることの可能な高熱伝導部材を軸部の軸線方向と略同一方向に突出させて凸部が形成されるよう複数配設している。
【0015】
この請求項4記載の内燃機関用中空バルブにおいては、往復運動に伴い凸部にて跳ね上げられた冷媒が軸部の上側にまで届けられるので、その冷媒が高熱伝導部材から奪った熱が軸部の上側に伝えられる。従って、この内燃機関用中空バルブは、特に傘部の高い冷却効果を得ることができるようになる。
【0016】
また、上記目的を達成する為、請求項5記載の発明では、上記請求項1,2又は3に記載の内燃機関用中空バルブにおいて、中空部壁面と軸部における傘部とは反対の他端寄りの壁面との間で熱伝導が行われるように高熱伝導部材を配設している。
【0017】
この請求項5記載の内燃機関用中空バルブにおいては、自身が傾倒して配置されていようがいまいが、また、バルブリフト量が小さくて冷媒が大きく跳ね上がらないときであっても、必ず壁面部位の熱が直接軸部における他端寄りの壁面に伝達されるので、その壁面部位の冷却を確実に行うことができる。
【0018】
また、上記目的を達成する為、請求項6記載の発明では、上記請求項1から5の内の何れか1つに記載の内燃機関用中空バルブにおいて、中空部壁面の中央部分と伝熱対象との間で熱伝導が行われるように配設し、且つ、中空部壁面の周縁部分と中空部内における傘部のバルブシート近傍との間で熱伝導が行われるように高熱伝導部材を配設している。
【0019】
この請求項6記載の内燃機関用中空バルブにおいては、壁面部位の熱が伝達先を伝熱対象(冷媒や軸部)だけでなく、傘部のバルブシート近傍にも伝わるようにしている。従って、例えば、吸入空気の温度上昇が起きてしまうので軸部の温度を上げたくないときには、バルブシート近傍へと放熱量が多めになるよう高熱伝導部材を配設し、吸入空気の温度上昇が抑えられるようにする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る内燃機関用中空バルブは、高熱伝導部材自身の放熱性が高く、また、この高熱伝導部材から伝熱対象に熱が伝えられるので、特に傘部において良好な冷却性を確保することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例1を図1及び図2に基づいて説明する。
【0023】
図1の符号10Aは、本実施例1の内燃機関用中空バルブを示す。この本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aは、図示しない内燃機関における吸気や排気の動弁機構(バルブリフター101等からなる機構)に用いられるものであり、その内燃機関の燃焼室CCと吸気ポートPの間(又は燃焼室CCと排気ポートPの間)を軸線方向に往復運動することで連通又は遮断させるものである。
【0024】
先ず、本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aは、軸部(所謂バルブステム)Vsとこの軸部Vsの端部に設けた傘部Vhとに大別され、これらが、両端の開口された筒状のバルブ主体1と、このバルブ主体1の一端の開口を閉塞する第1閉塞部材(以下、「上部キャップ」という。)2と、そのバルブ主体1の他端の開口を閉塞する第2閉塞部材(以下、「下部キャップ」という。)3と、によって構成される。
【0025】
そのバルブ主体1は、両端が開口された円筒状の円筒部1aと、上底の開口と下底の開口とを繋ぐ内方の空間を有する略円錐台状に形成された円錐台部1bと、を有しており、その円筒部1aの一方の開口端と円錐台部1bの上底側の開口端とを合わせた形で一体的に成形されている。その円錐台部1bにおける内方の空間は、外郭形状と略同等の円錐台に近い形状に形成されている。従って、このバルブ主体1においては、その円筒部1aにおける円柱状の空間と円錐台部1bにおける略円錐台状の空間とを繋げた形状の中空部4が形成されている。つまり、このバルブ主体1においては、その中空部4が外郭形状と略同等の形状になっている。
【0026】
ここで、このバルブ主体1においては、その円筒部1aが軸部Vsの主たる部分を成しており、この円筒部1aの残りの開口端(即ち、円錐台部1bとは反対側の開口端)に上部キャップ2が配設されている。つまり、ここで例示する内燃機関用中空バルブ10Aの軸部Vsは、このバルブ主体1の円筒部1aと上部キャップ2とで構成される。例えば、その上部キャップ2は、その円筒部1aに対して溶接等の手法を用いて一体化され、これにより、このバルブ主体1の円筒部1a側の開口端を閉塞させる。
【0027】
また、このバルブ主体1においては、その円錐台部1bが傘部Vhの主たる部分を成しており、この円錐台部1bの残りの開口端(即ち、下底側の開口端)に下部キャップ3が配設されている。つまり、ここで例示する内燃機関用中空バルブ10Aの傘部Vhは、このバルブ主体1の円錐台部1bと下部キャップ3とで構成される。例えば、その下部キャップ3は、ポート(吸気ポート又は排気ポートを指す)Pと燃焼室CCとの間が遮断状態にあるときの燃焼室CCの壁面の一部を成している図1に示す燃焼室壁面3aと、中空部4の壁面の一部を成している図2に示す中空部壁面3bと、が各々対向状態で形成された壁面部位になっている。そして、この下部キャップ3は、その中空部壁面3bを内側にして円錐台部1bに溶接等の手法を用いて一体化され、これにより、このバルブ主体1における円錐台部1b側の開口端を閉塞させる。
【0028】
このように形成されている内燃機関用中空バルブ10Aは、動弁機構の作用により軸部Vsの軸線方向に往復運動する。例えば、この内燃機関用中空バルブ10Aは、図示しないカムやロッカーアームの動作によりバルブリフター101を介して押下される。そして、これに伴って、この内燃機関用中空バルブ10Aは、傘部Vhの傾斜面がポート(吸気ポート又は排気ポートを指す)Pと燃焼室CCとの間の境界部分(つまり、図1に示す環状のバルブシート102)から離間し、その二者の間を連通させる。
【0029】
一方、ここでは、その内燃機関用中空バルブ10Aの押下動作に連動して、上部キャップ2に固定された環状のリテーナ103が弾性部材(弦巻バネ)104を例えばシリンダヘッド105との間で圧縮している。従って、この内燃機関用中空バルブ10Aには、カム等の動作に応じて弾性部材104の弾発力がリテーナ103を介して作用するようになる。これが為、この内燃機関用中空バルブ10Aは、押下動作とは逆方向に移動させられて、傘部Vhの傾斜面がバルブシート102に当設し、その二者の間を遮断させる。
【0030】
この内燃機関用中空バルブ10Aは、その軸部Vsが円筒状のバルブステムガイド106に包まれており、このバルブステムガイド106によって往復運動が円滑に案内される。
【0031】
更に、この内燃機関用中空バルブ10Aには、燃焼室CCから伝達された熱(特に、下部キャップ3等の燃焼ガスに曝されている部分の熱)を逃がす冷却手段が用意されている。
【0032】
本実施例1においては、その冷却手段として、先ず中空部4の中に金属ナトリウム等の冷媒5が封入されている。尚、少なくとも内燃機関が運転されているときには、冷媒5が金属ナトリウムであれば融点を超えて液状になっている。この冷媒5は、内燃機関用中空バルブ10Aの往復運動に伴って揺すられ、その中空部4の中で流動させられる。そして、自身よりも高温の中空部4の壁面に接した冷媒5は、その壁面から熱を奪い、往復運動が繰り返される度に更に流動して自身よりも低温の中空部4の壁面に接した際にその壁面へと熱を渡す。例えば、この内燃機関用中空バルブ10Aにおいては、最も高温になり易い傘部Vhの熱が冷媒5に受熱され、この冷媒5が内燃機関用中空バルブ10Aの往復運動に伴い軸部Vsへと移動することによって、傘部Vhから受け取った熱が冷媒5から軸部Vsに伝えられ、その傘部Vhの冷却が行われる。
【0033】
また、本実施例1においては、別の冷却手段として、熱伝導率が高く且つ熱伝導の方向性を有する高熱伝導部材6Aを下部キャップ3の中空部壁面3bに少なくとも1つ配設する。例えば、この種の高熱伝導部材6Aとしては、炭素繊維強化金属(CFRM:Corbon Fiber Reinforced Metals)の利用が可能である。つまり、この炭素繊維強化金属とは母材に金属を用いると共に強化材に炭素繊維を用いたものであり、その両端にて母材の金属を露出させることによって、この高熱伝導部材6Aは、その一端の金属の露出面から他端の金属の露出面の間で高温側から低温側へと熱の伝達が可能になる。
【0034】
本実施例1においては、略同等の長さで小径(例えば、凡そ10μm程度)の直線状に成形した高熱伝導部材6Aを図1や図2に示す如く円形の中空部壁面3bの全体を覆い尽くすように複数本配置する。尚、その図2においては夫々の高熱伝導部材6Aの間に明確な隙間が出来ているが、その隙間は図示の便宜上のものである。これら各高熱伝導部材6Aは、その一端を中空部壁面3bに金属メッキ等の手法を用いて接着し、下部キャップ3との間の伝熱効率が妨げられないようにしておく。
【0035】
このように、本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aにおいては、複数本の高熱伝導部材6Aを下部キャップ3の中空部壁面3bの全体に立設しているので、その下部キャップ3の熱が全ての高熱伝導部材6Aに奪われ、その下部キャップ3の冷却を行うことができる。また、この内燃機関用中空バルブ10Aにおいては、その熱が夫々の高熱伝導部材6Aの自由端(即ち、中空部壁面3bとは反対側の他端)に接した冷媒5へと伝達される。
【0036】
そして、この内燃機関用中空バルブ10Aにおいては、その夫々の高熱伝導部材6Aが伝熱対象たる冷媒5を底上げした状態となり、高熱伝導部材6Aが配備されていないものと同じ冷媒5の封入量であれば、内燃機関用中空バルブ10Aが傾倒して配設されていたとしても、その往復運動によって冷媒5がより確実に軸部Vsの上部側(バルブリフター101側)へと届くようになる。これが為、その冷媒5が高熱伝導部材6Aから受け取った熱(つまり、下部キャップ3の熱)の殆どは、軸部Vs{バルブ主体1の円筒部1aや上部キャップ2の下面(即ち、中空部4の壁面を成す面)}へと伝わり、この軸部Vsからバルブステムガイド106、バルブリフター101やカム等を介してシリンダヘッド105に放熱される。従って、本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aは、効率良く下部キャップ3の冷却を行うことができるので、これによりバルブシート102やこれに当接する傘部Vhのバルブフェイス面の温度上昇を効果的に抑えることができ、更にそのバルブシート102やバルブフェイス面の摩耗を抑えて耐久性や燃焼室CCの気密性の向上を図ることができる。
【0037】
他方、高熱伝導部材6Aが配備されていない内燃機関用中空バルブにて十分に冷却効果を得ることができていた場合には、高熱伝導部材6Aを配備して本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aとすることによって冷媒5の封入量を減らすことができ、往復運動する際の慣性マスを低減することができる。従って、この場合の本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aは、応答性良く軽快に往復運動することができ、開弁時期や閉弁時期の精度を高めることができる。
【0038】
以上示した如く、本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aは、最も高温になり易い傘部Vhの効果的な冷却が可能になり、これにより、自身の耐久性やバルブシート102の耐久性、燃焼室CCの気密性、開弁時期や閉弁時期の精度の向上を図ることができる。これが為、この内燃機関用中空バルブ10Aは、燃焼室CCの空気過剰率(即ち、空燃比であり、特に理論空燃比)の指令値に対する精度向上、筒内圧の高圧化を図ることができ、高出力化や低燃費化が可能になる。また、この内燃機関用中空バルブ10Aは、耐熱性や耐久性が従来よりも低い低コストの材料で自身やバルブシート102を形成しても十分に耐熱性や耐久性を確保することができるので、自身やその周辺部品の低コスト化が可能になる。更に、この内燃機関用中空バルブ10Aは、傘部Vh(特に、下部キャップ3の燃焼室壁面3a等の如く燃焼室CCの壁面を成している部分)を従来と比して大幅に冷却することができるので、ノッキングを従来よりも抑えることができるようになる。従って、この内燃機関用中空バルブ10Aは、そのノッキングの抑制効果に伴う点火時期の進角化が可能になり、出力性能の向上を図ることができる。
【0039】
ここで、本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aにおいては、配設する高熱伝導部材6Aの本数を増減させることによって傘部Vhの冷却度合いを調節することができる。従って、この内燃機関用中空バルブ10Aを高熱に曝され易い排気側に適用する場合には、吸気側に適用する場合よりも多く高熱伝導部材6Aを配置して、十分な冷却効果を確保することができるようにすればよい。そして、本実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aは、このように高熱伝導部材6Aの本数を調節するのみで冷却度合いを変えることができるので、排気側と吸気側とで全ての部品の共通化が可能になり、低コストで排気バルブと吸気バルブを製造することができるようになる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例2を図3に基づいて説明する。この図3は、バルブ主体1の中心軸に沿って切った断面図であり、その中心軸を中心に360度あらゆる角度で切っても同じ形状を表している。
【0041】
図3の符号10Bは、本実施例2の内燃機関用中空バルブを示す。この本実施例2の内燃機関用中空バルブ10Bは、前述した実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aにおいて複数本の高熱伝導部材6Aを図3に示す複数本の高熱伝導部材6Bへと置き換えたものである。
【0042】
具体的に、本実施例2の夫々の高熱伝導部材6Bは、実施例1の各高熱伝導部材6Aにおいて中央部分を中空部4の内方に向けて突出させた形に配置する。つまり、本実施例2においては、例えば、下部キャップ3の中空部壁面3bにおける周縁部分には実施例1と略同じ長さ及び直径の直線状の高熱伝導部材6Bを複数本環状に配置し、その周縁部分よりも内側には凸部7が成されるよう周縁部分よりも長い高熱伝導部材6Bを複数本配置している。
【0043】
ここで、本実施例2の凸部7は、内燃機関用中空バルブ10Bの中心軸に向かうにつれて徐々に高さが増していくよう外側から段々と長さを長く成形した高熱伝導部材6Bが配置されている。
【0044】
このように、本実施例2の内燃機関用中空バルブ10Bにおいては、中央部分を盛り上げた形に高熱伝導部材6Bが配設されているので、言い換えるならば、円錐台状に近い空間に合わせて中央部分の高熱伝導部材6Bの長さを周囲よりも長くしているので、凸部7にて実施例1よりも下部キャップ3からの熱が奪われ易くなる。また、この内燃機関用中空バルブ10Bにおいては、往復運動の最中にその凸部7に接した伝熱対象たる冷媒5を実施例1のときよりも高く跳ね上げることができ、更に確実に冷媒5が軸部Vsの上部側(バルブリフター101側)へと届くようになる。従って、この内燃機関用中空バルブ10Bは、実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aよりも高い冷却効果を発揮することができる。
【0045】
更に、実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aにて十分に冷却効果を得ることができていた場合には、本実施例2の如く凸部7を設けることによって冷媒5の封入量を減らすことができ、往復運動する際の慣性マスを実施例1よりも低減することができる。
【0046】
以上示した如く、本実施例2の内燃機関用中空バルブ10Bは、最も高温になり易い傘部Vhをより効果的に冷却させることが可能になり、これにより、自身の耐久性やバルブシート102の耐久性、燃焼室CCの気密性、開弁時期や閉弁時期の精度の更なる向上を図ることができる。これが為、この内燃機関用中空バルブ10Bは、燃焼室CCの空気過剰率(即ち、空燃比であり、特に理論空燃比)の指令値に対する更なる精度向上、筒内圧の更なる高圧化を図ることができ、より効果的な高出力化や低燃費化を可能にする。また、この内燃機関用中空バルブ10Bは、実施例1と同じく、耐熱性や耐久性が従来よりも低い低コストの材料で自身やバルブシート102を形成しても十分に耐熱性や耐久性を確保することができるので、自身やその周辺部品の低コスト化が可能になる。更に、この内燃機関用中空バルブ10Bは、実施例1と同様に、傘部Vh(特に、下部キャップ3の燃焼室壁面3a等の如く燃焼室CCの壁面を成している部分)を従来と比して大幅に冷却することができ、ノッキングを従来よりも抑えることができるので、点火時期の進角化が可能になり、出力性能の向上を図ることができる。
【0047】
ここで、本実施例2の内燃機関用中空バルブ10Bにおいても、実施例1のときと同様に、配設する高熱伝導部材6Bの本数を増減させることによって傘部Vhの冷却度合いを調節することができる。従って、この内燃機関用中空バルブ10Bを高熱に曝され易い排気側に適用する場合には、吸気側に適用する場合よりも多く高熱伝導部材6Bを配置して、十分な冷却効果を確保することができるようにすればよい。そして、本実施例2の内燃機関用中空バルブ10Bは、このように高熱伝導部材6Bの本数を調節するのみで冷却度合いを変えることができるので、排気側と吸気側とで殆どの部品の共通化が可能になり、低コストで排気バルブと吸気バルブを製造することができるようになる。
【0048】
また、上述した本実施例2の内燃機関用中空バルブ10Bにて十分に冷却効果を得ることができる場合には、周縁部分の高熱伝導部材6Bを取り外し、中央部分(つまり、凸部7)の高熱伝導部材6Bのみで構成してもよく、このようにしても同様の効果を奏することができる。かかる場合、傘部Vhの冷却効果が高い中空部壁面3bの全体に高熱伝導部材6Bを配置したものを排気バルブとして製造し、これよりも傘部Vhの冷却効果が低い中央部分の高熱伝導部材6Bのみのものを吸気バルブとして製造してもよい。
【実施例3】
【0049】
次に、本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例3を図4に基づいて説明する。この図4は、バルブ主体1の中心軸に沿って切った断面図であり、その中心軸を中心に360度あらゆる角度で切っても同じ形状を表している。
【0050】
図4の符号10Cは、本実施例3の内燃機関用中空バルブを示す。この本実施例3の内燃機関用中空バルブ10Cは、前述した実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aにおいて複数本の高熱伝導部材6Aを図4に示す複数本の高熱伝導部材6Cへと置き換えたものである。
【0051】
具体的に、本実施例3の夫々の高熱伝導部材6Cは、実施例1の各高熱伝導部材6Aにおいて中央部分を上部キャップ2まで延設したものであり、換言すれば、実施例2の凸部7の中心部分を上部キャップ2まで延ばしたものとも言える。つまり、本実施例3においては、例えば、下部キャップ3の中空部壁面3bにおける周縁部分には実施例1と略同じ長さ及び直径の直線状の高熱伝導部材6Cを複数本環状に配置し、その周縁部分よりも内側には一端を上部キャップ2の下面(即ち、中空部4の壁面を成す面)に当接させた高熱伝導部材6Cを複数本配置している。その高熱伝導部材6Cと上部キャップ2との間は、下部キャップ3との間と同様に金属メッキ等の手法を用いて接着する。
【0052】
このように、本実施例3の内燃機関用中空バルブ10Cにおいては、下部キャップ3の中空部壁面3bと上部キャップ2の下面との間が高熱伝導部材6Cの両端で繋がれているので、その下部キャップ3から奪った熱を直接伝熱対象たる上部キャップ2の下面まで確実に伝達させることができ、その伝えられてきた熱をバルブリフター101やバルブステムガイド106等を介してシリンダヘッド105に放熱させることができる。また、この内燃機関用中空バルブ10Cにおいては、中央部分の高熱伝導部材6Cの長さを伸ばしているので放熱効果が高くなる。尚、ここで例示している内燃機関用中空バルブ10Cにおいては、その中空部壁面3bにおける周縁部分の高熱伝導部材6Cから熱を伝達された伝熱対象たる冷媒5が往復運動に伴い軸部Vsへと届けられる。従って、この本実施例3の内燃機関用中空バルブ10Cは、自身が傾倒して配置されていようがいまいが、また、バルブリフト量が小さくて冷媒5が大きく跳ね上がらないときであっても、必ず下部キャップ3の熱が軸部Vsの上部側(上部キャップ2の下面)へと伝達されるようになっているので、その下部キャップ3の冷却を確実に行うことができる。
【0053】
以上示した如く、本実施例3の内燃機関用中空バルブ10Cは、最も高温になり易い傘部Vhをより効果的に冷却させることが可能になり、これにより、自身の耐久性やバルブシート102の耐久性、燃焼室CCの気密性、開弁時期や閉弁時期の精度の更なる向上を図ることができる。これが為、この内燃機関用中空バルブ10Cは、燃焼室CCの空気過剰率(即ち、空燃比であり、特に理論空燃比)の指令値に対する更なる精度向上、筒内圧の更なる高圧化を図ることができ、より効果的な高出力化や低燃費化を可能にする。また、この内燃機関用中空バルブ10Cは、実施例1と同じく、耐熱性や耐久性が従来よりも低い低コストの材料で自身やバルブシート102を形成しても十分に耐熱性や耐久性を確保することができるので、自身やその周辺部品の低コスト化が可能になる。更に、この内燃機関用中空バルブ10Cは、実施例1と同様に、傘部Vh(特に、下部キャップ3の燃焼室壁面3a等の如く燃焼室CCの壁面を成している部分)を従来と比して大幅に冷却することができ、ノッキングを従来よりも抑えることができるので、点火時期の進角化が可能になり、出力性能の向上を図ることができる。
【0054】
ここで、本実施例3の内燃機関用中空バルブ10Cにおいても、実施例1のときと同様に、配設する高熱伝導部材6Cの本数を増減させることによって傘部Vhの冷却度合いを調節することができる。従って、この内燃機関用中空バルブ10Cを高熱に曝され易い排気側に適用する場合には、吸気側に適用する場合よりも多く高熱伝導部材6Cを配置して、十分な冷却効果を確保することができるようにすればよい。そして、本実施例3の内燃機関用中空バルブ10Cは、このように高熱伝導部材6Cの本数を調節するのみで冷却度合いを変えることができるので、排気側と吸気側とで殆どの部品の共通化が可能になり、低コストで排気バルブと吸気バルブを製造することができるようになる。
【0055】
また、上述した本実施例2の内燃機関用中空バルブ10Bにて十分に冷却効果を得ることができる場合には、周縁部分の高熱伝導部材6Bを取り外し、中央部分(つまり、凸部7)の高熱伝導部材6Bのみで構成してもよく、このようにしても同様の効果を奏することができる。かかる場合、傘部Vhの冷却効果が高い中空部壁面3bの全体に高熱伝導部材6Bを配置したものを排気バルブとして製造し、これよりも傘部Vhの冷却効果が低い中央部分の高熱伝導部材6Bのみのものを吸気バルブとして製造してもよい。
【0056】
また、上述した本実施例3の内燃機関用中空バルブ10Cにて十分に冷却効果を得ることができる場合には、周縁部分の高熱伝導部材6Cを取り外し、中央部分の高熱伝導部材6C(つまり、下部キャップ3の中空部壁面3bと上部キャップ2の下面とを繋ぐもの)のみで構成してもよく、このようにしても同様の効果を奏することができる。そして、この場合には、所望の冷却効果を得ることができるのであれば、必ずしも中空部4の中に冷媒5を封入しなくてもよく、これにより更なる慣性マスの低減が可能になるので、より応答性良く軽快に内燃機関用中空バルブ10Cを往復運動させることができるようになる。例えば、かかる場合、傘部Vhの冷却効果が高い中空部壁面3bの全体に高熱伝導部材6Cを配置したものを排気バルブとして製造し、これよりも傘部Vhの冷却効果が低い中央部分の高熱伝導部材6Cのみのものを吸気バルブとして製造してもよい。また、冷媒5を封入したものを排気バルブとして製造し、冷媒5の無いものを吸気バルブとして製造してもよい。
【実施例4】
【0057】
次に、本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例4を図5及び図6に基づいて説明する。
【0058】
図5の符号10Dは、本実施例4の内燃機関用中空バルブを示す。この本実施例4の内燃機関用中空バルブ10Dは、前述した実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aにおいて複数本の高熱伝導部材6Aを図5及び図6に示す複数本の高熱伝導部材6D1,6D2へと置き換えたものである。
【0059】
具体的に、本実施例4においては、実施例1の各高熱伝導部材6Aにおける周縁部分の夫々の自由端を中空部4における傘部Vhのバルブフェイス面近傍の壁面に接触させたものである。つまり、本実施例4においては、例えば、図6に示す如く、下部キャップ3の中空部壁面3bにおける中央部分には実施例1と略同じ長さ及び直径の直線状の高熱伝導部材6D1を複数本円形状に配置し、その周縁部分には中空部壁面3bとバルブフェイス面近傍の壁面とを両端で繋ぐ高熱伝導部材6D2を複数本放射状に配置している。尚、その図6においては夫々の高熱伝導部材6D1,6D2の間に明確な隙間が出来ているが、その隙間は図示の便宜上のものである。その高熱伝導部材6D2とバルブフェイス面近傍の壁面との間は、下部キャップ3との間と同様に金属メッキ等の手法を用いて接着する。
【0060】
このように、本実施例4の内燃機関用中空バルブ10Dにおいては、下部キャップ3の中空部壁面3bの周縁部分とバルブフェイス面近傍の壁面との間が高熱伝導部材6D2の両端で繋がれているので、その下部キャップ3から奪った熱を伝熱対象たるバルブフェイス面近傍の壁面からバルブシート102を介してシリンダヘッド105に放熱させることができる。尚、ここで例示している内燃機関用中空バルブ10Dにおいては、その中空部壁面3bにおける中央部分の高熱伝導部材6D1から熱を伝達された伝熱対象たる冷媒5が往復運動に伴い軸部Vsの上部側へと届けられる。つまり、この本実施例4の内燃機関用中空バルブ10Dは、下部キャップ3の熱を軸部Vs側とバルブシート102とに分けて放熱することができる。そして、このように構成したとしても、本実施例4の内燃機関用中空バルブ10Dは、実施例1と同様に下部キャップ3の冷却を確実に行うことができる。
【0061】
ところで、この内燃機関用中空バルブ10Dが排気側に適用される場合には、排気行程の如くその全体が高温の排気ガスに曝されることがあるので、吸気側へ適用する場合よりも大きな冷却効果が必要とされる。一方、この内燃機関用中空バルブ10Dが吸気側に適用される場合には、常に吸入空気の接している軸部Vsへと多量に放熱すると、その吸入空気の温度が上昇して燃焼室CCでの体積効率が悪化してしまうので、熱効率の低下が生じる可能性がある。
【0062】
従って、この内燃機関用中空バルブ10Dを高い冷却性が求められる排気側に適用する場合には、軸部Vsよりもバルブフェイス面近傍の壁面への放熱量が多くなるように周縁部分の高熱伝導部材6D2と中央部分の高熱伝導部材6D1の各々の本数を定めて配置させる。つまり、バルブフェイス面はシリンダヘッド105に嵌め込まれているバルブシート102に直接触れて伝熱するので、軸部Vsよりもバルブフェイス面近傍の壁面に放熱させる方がシリンダヘッド105の伝熱効率に優れており、この内燃機関用中空バルブ10Dは、その壁面への放熱量を多くすることによって冷却性を高めることができる。
【0063】
一方、この内燃機関用中空バルブ10Dを体積効率が悪化しない程度の適度な冷却性が求められる吸気側に適用する場合には、軸部Vsへの放熱量が少なくなるように周縁部分の高熱伝導部材6D2と中央部分の高熱伝導部材6D1の各々の本数を定めて配置させる。そして、これにより軸部Vsの熱で吸入空気が暖められて体積効率を悪化させてしまうという状況を回避することができるので、この内燃機関用中空バルブ10Dは、無駄な過冷却を抑えつつ内燃機関の熱効率の低下を防ぐことができる。
【0064】
このように、本実施例4の内燃機関用中空バルブ10Dは、配置する高熱伝導部材6D1,6D2の本数を調節するのみで冷却度合いを変えることができるので、排気側と吸気側とで全ての部品の共通化が可能になり、低コストで排気バルブと吸気バルブを製造することができるようになる。
【0065】
また、本実施例4の高熱伝導部材6D2は、バルブ主体1と下部キャップ3の図5に示す溶接部分8の近くの熱を略均等にすることができるので、その溶接部分8の補強材として機能する。更に、この高熱伝導部材6D2は、その溶接部分8を覆った形に配設しているので、これによっても、その溶接部分8の補強材として機能する。つまり、高熱伝導部材6D2たる炭素繊維強化金属は剛性が高いので、その溶接部分8の捻れや歪みを抑えることができる。従って、本実施例4の内燃機関用中空バルブ10Dは、その溶接部分8やその周囲での亀裂等の発生を防ぐことができる。
【0066】
ここで、中央部分の高熱伝導部材6D1としては、前述した実施例2の凸部7を成す高熱伝導部材6Bに置き換えてもよく、また、前述した実施例3における下部キャップ3の中空部壁面3bと上部キャップ2の下面との間を繋ぐ高熱伝導部材6Cに置き換えてもよい。
【実施例5】
【0067】
次に、本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例5を図7及び図8に基づいて説明する。
【0068】
図7の符号10Eは、本実施例5の内燃機関用中空バルブを示す。この本実施例5の内燃機関用中空バルブ10Eは、前述した実施例1の内燃機関用中空バルブ10Aにおいて複数本の高熱伝導部材6Aを図7及び図8に示す複数本の高熱伝導部材6Eへと置き換えたものである。
【0069】
具体的に、本実施例5の夫々の高熱伝導部材6Eは、下部キャップ3の中空部壁面3bにおける周縁部分と中空部4におけるバルブステムガイド106近傍の壁面とを夫々の両端で繋いだものであり、内燃機関用中空バルブ10Eの中心軸を中心にして図8に示す如く放射状に配置する。尚、その図8においては夫々の高熱伝導部材6Eの間に明確な隙間が出来ているが、その隙間は図示の便宜上のものである。その高熱伝導部材6Eとバルブステムガイド106近傍の壁面との間は、下部キャップ3との間と同様に金属メッキ等の手法を用いて接着する。
【0070】
このように、本実施例5の内燃機関用中空バルブ10Eにおいては、下部キャップ3における中空部壁面3bの周縁部分とバルブステムガイド106近傍の壁面との間が高熱伝導部材6Eの両端で繋がれているので、その下部キャップ3から奪った熱を直接伝熱対象たるバルブステムガイド106近傍の壁面まで確実に伝達させることができ、その伝えられてきた熱をバルブステムガイド106を介してシリンダヘッド105に放熱させることができる。また、この内燃機関用中空バルブ10Eにおいては、その高熱伝導部材6Eの長さが長いので放熱効果が高くなる。尚、ここで例示している内燃機関用中空バルブ10Eにおいては、その中空部壁面3bにおける中央部分から熱を奪った冷媒5が往復運動に伴い軸部Vsへと届けられる。従って、この本実施例5の内燃機関用中空バルブ10Eは、自身が傾倒して配置されていようがいまいが、また、バルブリフト量が小さくて冷媒5が大きく跳ね上がらないときであっても、必ず下部キャップ3の熱がバルブステムガイド106近傍の壁面へと伝達されるようになっているので、その下部キャップ3の冷却を確実に行うことができる。
【0071】
また、本実施例5においては、前述した実施例1〜4のように多数の高熱伝導部材がひしめき合っていないので、高熱伝導部材6Eの断面積(つまり、母材たる金属の断面積)を大きく成形することができるので、放熱量の増加が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明に係る内燃機関用中空バルブは、冷却性、特に傘部の冷却性を向上させる技術に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例1の構成を示す断面図である。
【図2】実施例1の高熱伝導部材の形状及び配置について示す斜視図である。
【図3】本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例2の構成を示す断面図である。
【図4】本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例3の構成を示す断面図である。
【図5】本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例4の構成を示す断面図である。
【図6】実施例4の高熱伝導部材の配置について示す中空部の中から見た上面図である。
【図7】本発明に係る内燃機関用中空バルブの実施例5の構成を示す断面図である。
【図8】実施例5の高熱伝導部材の配置について示す図7のX−X線で切った断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 バルブ主体
1a 円筒部
1b 円錐台部
2 上部キャップ
3 下部キャップ
3a 燃焼室壁面
3b 中空部壁面
4 中空部
5 冷媒
6A,6B,6C,6D1,6D2,6E 高熱伝導部材
7 凸部
10A,10B,10C,10D,10E 内燃機関用中空バルブ
101 バルブリフター
102 バルブシート
103 リテーナ
104 弾性部材
105 シリンダヘッド
106 バルブステムガイド
CC 燃焼室
P ポート(吸気ポート、排気ポート)
Vh 傘部
Vs 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、該軸部の一端に設けた傘部と、該傘部から前記軸部までの間で内部にて連通する密閉された中空部と、該中空部内に封入された冷媒と、を備えた内燃機関用中空バルブにおいて、
前記傘部は、内燃機関の燃焼室の壁面の一部を成す燃焼室壁面と前記中空部の壁面の一部を成す中空部壁面とが形成された壁面部位を有し、
この壁面部位と少なくとも前記冷媒又は前記軸部の内の何れか一方の伝熱対象との間で高い熱伝導を行う高熱伝導部材を前記中空部壁面に対して少なくとも1つ配設したことを特徴とする内燃機関用中空バルブ。
【請求項2】
前記高熱伝導部材は、前記中空部壁面に接触させた一端と前記伝熱対象に接触させた他端との間で熱伝導の方向性を有するものであることを特徴とした請求項1記載の内燃機関用中空バルブ。
【請求項3】
前記高熱伝導部材は、炭素繊維強化金属であることを特徴とした請求項1又は2に記載の内燃機関用中空バルブ。
【請求項4】
前記壁面部位の熱を前記冷媒に対して伝えることの可能な前記高熱伝導部材を前記軸部の軸線方向と略同一方向に突出させて凸部が形成されるよう複数配設したことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の内燃機関用中空バルブ。
【請求項5】
前記高熱伝導部材は、前記中空部壁面と前記軸部における前記傘部とは反対の他端寄りの壁面との間で熱伝導が行われるように配設したことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の内燃機関用中空バルブ。
【請求項6】
前記高熱伝導部材は、前記中空部壁面の中央部分と前記伝熱対象との間で熱伝導が行われるように配設し、且つ、前記中空部壁面の周縁部分と前記中空部内における前記傘部のバルブシート近傍との間で熱伝導が行われるように配設したことを特徴とする請求項1から5の内の何れか1つに記載の内燃機関用中空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−13935(P2009−13935A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178867(P2007−178867)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000215785)帝国ピストンリング株式会社 (80)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)