説明

内燃機関用点火コイル

【課題】溶接又は半田付け等を使用しないことで溶接又は半田による不良の発生が無くなり、さらには容易に組み立てられる点火コイルを提供する。
【解決手段】1次端子18cとイグナイタ端子24a、コネクタ端子26aの当該導出された端子は弾性力を有した金属等の導電部材で形成された接合端子12で接続されており、またケース開口面と略垂直方向の一部且つ前記コネクタ26と同一面に樹脂で形成された樹脂止め部16を配置し、前記樹脂止め部16には前記接合端子12を固定するための接合端子保持部14a及び上部固定部14bを有し樹脂で形成されたホルダー部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の点火コイルのコネクタ端子とイグナイタ端子、1次ボビン端子の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりケースのコイル収容部に1次コイルと2次コイルと鉄芯からなるコイル部と、当該コイル部へ1次電圧と点火信号とを供給するイグナイタと、当該イグナイタと外部のバッテリとを接続するコネクタを備え、ケースのコイル収容部にモールド樹脂を充填した内燃機関用点火コイルにおいて、1次端子と2次端子、イグナイタ端子、コネクタ端子の電気的接続方法はいくつか提案されており、当該点火コイルの各端子間の接続は、接続の容易性及び信頼性の向上等を目的としていくつかの構成が提案されている。この代表的な例として、例えば特開平11−050938号公報(以下「特許文献1」)では、内燃機関の点火装置に印加する高電圧を発生する内燃機関用点火コイルであって、前記点火コイル内に収容されるイグナイタを備え、前記イグナイタの接続端子はほぼ同一の仮想取出し平面上でイグナイタ本体から平行に取出され、隣接する前記接続端子の少なくとも一方は前記イグナイタ本体からの取出し後折り曲げられており、前記電気的接続部において、前記点火コイル内において外部端子と電気的に接続する前記接続端子の隣接する電気的接続部を結ぶ仮想直線は、前記仮想取出し平面と交差しており、前記電気的接続部において、前記接続端子は前記イグナイタ本体からの取出し方向に延びており、隣接する前記接続端子は反対方向に、かつ前記仮想取出し平面と直交する方向に延びている点火コイルが提案されている。
【0003】
また、別の例として、特開平11−062800号公報(以下「特許文献2」)では、内燃機関の点火装置に印加する高電圧を発生する内燃機関用点火コイルであって、内燃機関の電子制御装置と電気的に接続される複数の外部端子と、前記点火コイル内に収容されるイグナイタ本体と、前記イグナイタ本体からほぼ同一の仮想取出し平面上で平行に取出される複数の接続端子であって、隣接する少なくとも一方の接続端子が他方の接続端子と異なる長さを有する接続端子と、前記点火コイル内において前記外部端子と前記接続端子とを電気的に接続する複数の電気的接続部であって、前記仮想取出し平面上において隣接する少なくとも一方の電気的接続部が他方の電気的接続部と前記イグナイタ本体から異なる距離の前記接続端子と前記外部端子との交点に設けられる電気的接続部とを備え、前記外部端子は、前記仮想取出し平面上で前記イグナイタ本体に向かって直線状に延びており、前記接続端子は、前記仮想取出し平面上で前記イグナイタ本体から取出し方向に直線状に延びている点火コイルも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−050938号公報
【特許文献2】特開平11−062800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の点火コイルでは次のような課題が生じている。即ち、上記特許文献1の点火コイルでは、イグナイタの接続端子を取り出し交互に折り曲げて平面交差させているが、溶接又は半田付けのバラツキがおこるため、誤って隣接した端子を接続したり若しくは端子を正確に接続できていないといった不具合で信頼性が維持できないという問題が生じている。
【0006】
また、特許文献2の点火コイルでは、コネクタ端子もしくはイグナイタ端子を平面上で取り出しどちらか一方の端子の長さを長くし、電気的接続部分の間隔を大きくしているが、コネクタ端子及びイグナイタ端子は複数あるため、溶接又は半田付けのバラツキがおこるため、誤って隣接した端子を接続したり若しくは端子を正確に接続できていないといった不具合で信頼性が維持できないという問題が生じている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、溶接又は半田付け等を使用しないことで溶接又は半田による不良の発生が無くなり、さらには容易に組み立てられる点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は次のような構成とする。すなわち、請求項1の発明においては、ケース内に1次コイルと2次コイルと鉄芯とからなるコイル部と、当該コイル部の駆動制御を行うイグナイタとを収容し、前記ケースには点火プラグへ高電圧を供給する高圧タワーと外部電源及び点火信号線を接続するコネクタ部とを備え、前記ケース内にモールド樹脂を充填した内燃機関用点火コイルにおいて、前記1次コイルに接続される1次端子と、前記2次コイルに接続される2次端子と、前記イグナイタから導出されるイグナイタ端子と、前記コネクタに収容されるコネクタ端子とを備え、前記1次端子と2次端子、イグナイタ端子、コネクタ端子のうち少なくとも2個を同方向に導出すると共に、当該導出された端子を接合する接合端子を備え、前記ケースのケース開口面と略垂直方向の一部に樹脂止め部を配置し、当該樹脂止め部は前記ケース開口面からケースの一部に沿う如くケースに装着され、当該樹脂止め部には前記接合端子を固定配置し、前記樹脂止め部をケース装着時に前記接合端子が前記導出された端子間の接合を行うことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【0009】
上記の構成においては、前記樹脂止め部は前記接合端子を収容するためのホルダー部を有し、前記接合端子は当該ホルダー部に固定されるために弾性を有し、前記樹脂止め部をケース装着時に当該ホルダー部に収容された前記接合端子が端子間の接合を行ってもよい。また、前記接合端子はホルダーに収容され、前記接合端子は前記ホルダーに固定されるために弾性を有してもよい。さらに、前記樹脂止め部は前記ケースに装着された前記コネクタと同一面に配置してもよいし、前記1次端子と前記2次端子、前記イグナイタ端子、前記コネクタ端子は略平板状の金属端子を有し、前記1次端子と前記2次端子、前記イグナイタ端子、前記コネクタ端子の接続は複数の前記接合端子によって同時に行ってもよいし、前記1次端子と前記2次端子、前記イグナイタ端子、前記コネクタ端子は前記ケース開口面に対して垂直方向且つ同じ高さに揃えて導出してもよいし、前記導出された端子には前記接合端子を嵌合するために少なくとも1箇所に溝部が形成してもよいし、前記コネクタ端子は前記ケースに装着された前記コネクタと同一面の前記ケース内壁に這うように配置してもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の通り、1次端子と2次端子、イグナイタ端子、コネクタ端子の接続を接合端子で行うことによって、接合状態のバラツキが無くなり、不良の発生を抑えることができると共に容易に組み立てられる点火コイルが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例とする点火コイルの斜視図である。
【図2】図1の矢印B方向から見たA−A断面図である。
【図3】図2のC部拡大図である。
【図4】1次端子とイグナイタ端子、コネクタ端子の電気的接続部分の斜視図である。
【図5】ホルダーに挿入した接合端子の斜視図である。
【図6】タイバーカットした接合端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、特に1次コイルとイグナイタ、コネクタから導出される各端子間の接続構造に特徴を有し、これら各端子間を溶接、半田付け等することなく接合端子によって容易に接続可能な構造としたことを特徴とする。上記接合端子により接続される端子は、コネクタ端子−イグナイタ端子間、またはコネクタ端子−1次コイル端子、あるいはこれら3種類の信号、グランド、電源端子等複数の組合せがあり、本発明においては適宜接続枚数およびこの組合せは変更可能なものである。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例による本発明の実施例とする点火コイルの斜視図を図1に、当該図1の矢印B方向から見たA−A断面図を図2に示す。本発明の点火コイルは、図示しないエンジン上部に形成されたプラグホール外にコイル部が配置され、当該コイル部から作られる高電圧は導電部材を介して点火プラグへ供給するものとなっている。
【0014】
図1と2において、点火コイル10のコイル部を形成しているケース30は樹脂性で箱型で形成されている。前記ケース30にはエンジンへの取付け固定するためのケース固定部30aを備えている。前記ケース30内には、点火コイルの点火動作を制御するイグナイタ24と、少なくとも一部が収容されるように鉄芯22とを備え、前記鉄芯22の外側には1次ボビン18aの外周に1次巻線18bを100ターン前後巻き回した1次コイル18と、当該1次コイル18の外側には2次ボビン20aの外周に2次巻線20bを8000〜15000ターン程度巻き回した2次コイル20を配置されており、組み立て工程の最終段階においては、当該ケース内部には熱硬化性のモールド樹脂34が充填されることで上記各構成部材の固定と絶縁が保たれている。なお、上記構成においては、イグナイタ24はケース開口面30cに対して垂直方向に縦置きされ、この端子出し方向がケース30側面と略平行とすることでケース30の高さ方向の寸法を低く抑えることを可能にするとともにコネクタ端子26aと1次端子18cとの接続を容易にしている。また、前記ケース30の外周側面の一面には図示しないバッテリ及び外部のECU等点火コイル制御部とを接続するコネクタ26が備えられている。
【0015】
次に、本発明の実施例とする点火コイルの各端子間の接続構造について説明する。本実施例においては、特に1次コイル18とイグナイタ24、コネクタ26から導出される各端子を接合端子によって接続している。以下のこの具体的な構造を述べる。図3には図2のC部拡大図を、図4には1次端子とイグナイタ端子、コネクタ端子も電気的接続部分の斜視図を示す。図2乃至図4において、1次端子18cとイグナイタ端子24a、コネクタ端子26aは略平板状の金属端子を有し、当該1次端子18cと当該イグナイタ端子24a、当該コネクタ端子26aのうち2個を同方向に導出すると共にそれぞれの間で電気的導通を実現する如く接続され、前記1次端子18cと前記イグナイタ端子24a、前記コネクタ端子26aは前記ケース開口面30cに対して垂直方向且つ同じ高さに揃えて導出し、前記コネクタ端子26aは前記ケース30に装着された前記コネクタ26と同一面の前記ケース内壁に這って配置している。また、前記1次端子18cと前記イグナイタ端子24a、コネクタ端子26aの当該導出された端子は弾性力を有した金属等の導電部材で形成された接合端子12で接続されており、当該1次端子18aと当該イグナイタ端子24a、当該コネクタ端子26aの接続は複数の当該接合端子12によって同時に行っており、前記1次端子18cと前記イグナイタ端子24a、前記コネクタ端子26aの前記接合端子12と当接する部分の1箇所には当該当接部分と係合するための溝部28が形成されている。また、前記ケース開口面30cと略垂直方向の一部且つ前記コネクタ26と同一面に樹脂で形成された樹脂止め部16を配置し、当該樹脂止め部16にはケース係止部16aを形成し、前記ケース30には樹脂止め係止部30bを形成し、当該ケース係止部16aと当該樹脂止め係止部30bは嵌合することで当該樹脂止め部16は前記ケース開口面30cから前記ケース30の一部に沿う如く前記ケース30に装着されている。
【0016】
次にホルダーに挿入した接合端子の斜視図を図5に、タイバーカットした接合端子の斜視図を図6に示す。図5と図6において、前記樹脂止め部16には前記接合端子12を収容するための樹脂で形成されたホルダー部14を有し、当該ホルダー部14には前記接続端子12を固定するための接合端子保持部14a及び上部固定部14bが形成されている。また前記接合端子12の最も幅広の長さL1寸法が当該接合端子保持部14a−当該接合端子保持部14a間の距離L2寸法より長くされているため、当該ホルダー部14に収容された際に当該接続端子保持部14aに固定される。さらに前記接合端子12は当該ホルダー部14に装着後、タイバー12bをカットして前記接合端子12を分離させており、前記樹脂止め部16を前記ケース装着時に当該ホルダー部14に収容された前記接合端子12が前記端子間の接合を行っている。
【0017】
なお上記実施例の変形例として、前記接合端子12により接続される端子の組合せ及び導出位置は、前記1次コイル18と前記2次コイル20、前記イグナイタ24、前記コネクタ26の端子から設計事情により任意に変更してもよいし、前記溝部28の個数及び位置は設計事情により任意に変更してもよい。また前記樹脂止め部16に前記接合端子12を固定配置してもよいし、前記樹脂止め部16と前記ホルダー部14を個々に設けてもよいし、前記樹脂止め部16は前記ケース開口面30cと略垂直方向の一部且つ前記ケース開口面30cから前記ケース30の一部に沿う如く前記ケース30に配置される位置であれは設計事情により任意に変更してもよい。また前記接合端子12の材質は真鍮、ステンレス、アルミニウム、鉄、リン青銅等を用いてもよいし、スズメッキ、ニッケルメッキを用いて表面処理を施してもよい。さらに前記1次端子18cと前記イグナイタ端子24a、前記コネクタ端子26aに形成される前記溝部28の数及び位置は設計事情により任意に変更してもよい。さらに前記樹脂止め部16及び前記ホルダー14の材質はPBT、PPE、ナイロン、PPS、PET、エラストマ等を用いてもよい。さらに前記接合端子12を装着した前記ホルダー部14内に前記モールド樹脂34充填後も導通を保つための導電性シリコン32を注入してもよいし、当該導電性シリコン32は変形容易な他の導電性を有した部材、例えばエポキシ、ウレタン、アクリル、熱可塑性樹脂等に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0018】
10:点火コイル
12:接合端子
12a:曲げ部
12b:タイバー
14:ホルダー部
14a:接合端子保持部
14b:上部固定部
16:樹脂止め部
16a:ケース係止部
18:1次コイル
18a:1次ボビン
18b:1次巻線
18c:1次端子
20:2次コイル
20a:2次ボビン
20b:2次巻線
22:鉄芯
24:イグナイタ
24a:イグナイタ端子
26:コネクタ
26a:コネクタ端子
28:溝部
30:ケース
30a:ケース固定部
30b:樹脂止め係止部
30c:ケース開口面
32:導電性シリコン
34:モールド樹脂
36:高圧タワー
38:ケース開口面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に1次コイルと2次コイルと鉄芯とからなるコイル部と、当該コイル部の駆動制御を行うイグナイタとを収容し、前記ケースには点火プラグへ高電圧を供給する高圧タワーと外部電源及び点火信号線を接続するコネクタ部とを備え、前記ケース内にモールド樹脂を充填した内燃機関用点火コイルにおいて、
前記1次コイルに接続される1次端子と、前記2次コイルに接続される2次端子と、前記イグナイタから導出されるイグナイタ端子と、前記コネクタに収容されるコネクタ端子とを備え、
前記1次端子と2次端子、イグナイタ端子、コネクタ端子のうち少なくとも2個を同方向に導出すると共に、当該導出された端子を接合する接合端子を備え、
前記ケースのケース開口面と略垂直方向の一部に樹脂止め部を配置し、
当該樹脂止め部は前記ケース開口面から前記ケースの一部に沿う如く前記ケースに装着され、
当該樹脂止め部には前記接合端子を固定配置し、
前記樹脂止め部をケース装着時に前記接合端子が前記導出された端子間の接合を行うことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の点火コイルにおいて、前記樹脂止め部は前記接合端子を収容するためのホルダー部を有し、
前記接合端子は当該ホルダー部に固定されるために弾性を有し、
前記樹脂止め部をケース装着時に当該ホルダー部に収容された前記接合端子が端子間の接合を行うことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
請求項1の記載の点火コイルにおいて、前記接合端子はホルダーに収容され、
前記接合端子は前記ホルダーに固定されるために弾性を有していることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の点火コイルにおいて、前記樹脂止め部は前記ケースに装着された前記コネクタと同一面に配置されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の点火コイルにおいて、前記1次端子と前記2次端子、前記イグナイタ端子、前記コネクタ端子は略平板状の金属端子を有し、
前記1次端子と前記2次端子、前記イグナイタ端子、前記コネクタ端子の接続は複数の前記接合端子によって同時に行うことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の点火コイルにおいて、前記1次端子と前記2次端子、前記イグナイタ端子、前記コネクタ端子は前記ケース開口面に対して垂直方向且つ同じ高さに揃えて導出していることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の点火コイルにおいて、前記導出された端子には前記接合端子を嵌合するために少なくとも1箇所に溝部が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の点火コイルにおいて、前記コネクタ端子は前記ケースに装着された前記コネクタと同一面の前記ケース内壁に這うように配置されていることを特徴とする点火コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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