説明

内燃機関用点火コイル

【課題】端末ピンと高圧端子との間の電気的接続を確実にすることのできる内燃機関用点火コイルを提供すること。
【解決手段】コイルボビンに巻回された一次コイル及び二次コイルと、これら二つのコイルを磁気的に結合させる鉄心と、これらを収容する絶縁ケースとを備え、前記絶縁ケース内に充填された絶縁性合成樹脂によって一次コイル、二次コイル、鉄心等を固定保持する内燃機関用点火コイルであって、前記二次コイルに接続された端末ピンの先端に湾曲部を形成するとともに、前記端末ピンと電気的に接続される高圧端子側に凹溝を形成し、前記端末ピンの先端に形成された湾曲部を、高圧端子側に形成された凹溝内に嵌合して導通させるので、端末ピンと高圧端子との間の電気的接続を確実にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等のエンジンの点火プラグに火花放電を発生させるために高圧電流を供給するモールド型の内燃機関用点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の内燃機関用点火コイルにおける高圧端子と端末ピンとの関係を示す縦断面図である。図4において、内燃機関用点火コイル1は、鉄心・コイル組立体2と、この鉄心・コイル組立体2を収容する合成樹脂製の絶縁ケース3と、この絶縁ケース3の高圧タワー部に取り付けられた高圧端子4と、絶縁ケース3内に各構成部品を絶縁しながら固定する絶縁性を有した熱硬化性樹脂5等で構成されている。
【0003】
上記した鉄心・コイル組立体2は、閉磁路を形成する鉄心6と、鉄心6が挿通される一次コイルボビン7と、この一次コイルボビン7に巻回された一次コイル8と、一次コイル8が挿通され、一次コイルボビン7と同心状に形成された二次コイルボビン9と、この二次コイルボビン9に巻回された二次コイル10と、二次コイル10の巻き終わりが接続された端末ピン11とで構成されている。そして、二次コイル10の巻き終わりが接続された端末ピン11は、アルミや黄銅などで円柱または円錐状に切削加工またはプレス加工された高圧端子4に対応するように位置決めされ、自身の弾性によって高圧端子4に圧接するよう配設されている。
【0004】
絶縁ケース3の下端部は、高圧端子4を収納した高圧タワー部12となっており、プロテクター13に嵌合されている。また、プロテクター13の下端は、点火プラグ14に嵌合されるとともに、プロテクター13の内部に収納されたスプリング15が高圧端子4と点火プラグ14を電気的に接続している。
【0005】
以上のように構成された内燃機関用点火コイル1の一次コイル8に、一次端子16および両一次端末ピン等を介して所定の電流を通電した後に遮断すると、二次コイル10に発生した高電圧の電流が、端末ピン11を介して高圧端子4、スプリング15から点火プラグ14へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−27064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような構成の従来の内燃機関用点火コイルにおいて、二次コイルの高圧側端末の寸法によって、高圧端子と接触する位置が異なり、接触面積にばらつきが発生していた。このため、製造の初期に電気的導通が得られても、点火コイルの稼働時に内部温度が上昇した場合、線材と高圧端子と熱硬化性樹脂との線膨張係数が異なり、端末ピンと高圧端子の接続部において、端末ピン自体の弾性により保持されていた接触が遮断され、導通不良が発生する場合があった。
【0008】
この発明は、上記に鑑み提案されたもので、端末ピンの先端に湾曲部を形成するとともに、端末ピンと電気的に接続される高圧端子側に凹溝を形成して、湾曲部を凹溝に嵌合することにより電気的接続を確実にできる内燃機関用点火コイルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に本発明の内燃機関用点火コイルは、コイルボビンに巻回された一次コイル及び二次コイルと、これら二つのコイルを磁気的に結合させる鉄心と、これらを収容する絶縁ケースとを備え、前記絶縁ケース内に充填された絶縁性合成樹脂によって一次コイル、二次コイル、鉄心等を固定保持する内燃機関用点火コイルであって、前記二次コイルに接続された端末ピンの先端に湾曲部を形成するとともに、前記端末ピンと電気的に接続される高圧端子側に凹溝を形成し、前記端末ピンの先端に形成された湾曲部を、高圧端子側に形成された凹溝内に嵌合して導通させることを特徴としている。
【0010】
また、本発明において、前記端末ピンの湾曲部は、先端が凸のU字状に形成されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記端末ピンの湾曲部は、複数回に渡って屈折させて形成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記端末ピン保持部は、前記端末ピンのほぼ中央に当接するように配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0014】
本発明では、コイルボビンに巻回された一次コイル及び二次コイルと、これら二つのコイルを磁気的に結合させる鉄心と、これらを収容する絶縁ケースとを備え、前記絶縁ケース内に充填された絶縁性合成樹脂によって一次コイル、二次コイル、鉄心等を固定保持する内燃機関用点火コイルであって、前記二次コイルに接続された端末ピンの先端に湾曲部を形成するとともに、前記端末ピンと電気的に接続される高圧端子側に凹溝を形成し、前記端末ピンの先端に形成された湾曲部を、高圧端子側に形成された凹溝内に嵌合して導通させるので、端末ピンを確実に高圧端子に接触させて電気的に導通させることができる。したがって、点火コイルの稼働時に発生する熱応力による導通不良等を未然に防止することができる。
【0015】
また、本発明において前記端末ピンの湾曲部は、先端が凸のU字状に形成されたので、高圧端子側に形成された凹溝内への嵌合作業が容易である。
【0016】
また、本発明において前記端末ピンの湾曲部は、複数回に渡って屈折させて形成したので、高圧端子との接触面積にばらつきが生じることなく、安定した導通を得ることができる。また、線材、高圧端子、絶縁材料間の線膨張係数の差に起因する温度ストレスに拘わらず、端末ピンと高圧端子間の接触が外れることなく、安定した電気的導通を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の内燃機関用点火コイルにおける高圧端子と端末ピンとの関係を示す縦断面図である。
【図2】図2は、同高圧端子と端末ピンとの関係を示す拡大斜視図である。
【図3】図3は、端末ピンの他の実施例を示す拡大斜視図である。
【図4】図4は、従来の内燃機関用点火コイルにおける高圧端子と端末ピンとの関係を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
内燃機関用点火コイルにおいて、端末ピンの先端に湾曲部を形成するとともに、端末ピンと電気的に接続される高圧端子側に前記湾曲部の挿着可能な凹溝を形成して、湾曲部を凹溝に嵌合することにより、端末ピンと高圧端子を確実に接触させて電気的導通の信頼性を向上することができる。
【実施例】
【0019】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の内燃機関用点火コイルにおける高圧端子と端末ピンとの関係を示す縦断面図である。ここで、内燃機関用点火コイル20は、一次コイルボビン21、二次コイルボビン22に巻回された一次コイル23及び二次コイル24と、これら二つのコイルを磁気的に結合させる鉄心25と、これらを収容する絶縁ケース26とを備え、前記絶縁ケース26内に充填された絶縁性合成樹脂27によって一次コイル23、二次コイル24、鉄心25等を固定保持するものであって、前記二次コイル24に接続された端末ピン28の先端に湾曲部28aを形成するとともに、前記端末ピン28と電気的に接続される高圧端子29側に凹溝30を形成し、前記端末ピン28の先端に形成された湾曲部28aを、高圧端子側に形成された凹溝30内に嵌合して導通させる構成である。
【0020】
二次コイルボビン22は、二次コイルを分巻きするために複数の鍔部22aを有している。また、二次コイルボビン22の一端に取り付けられた端末ピン28は、下方に配設された高圧端子29の方向に延設されるとともに、先端に湾曲部28aが形成されている。図2に示すように、端末ピン28の湾曲部28aは、U字状に折り返されて、先端が凸に形成されている。
また、湾曲部28aは、対向配置された凹溝30に略嵌合可能な直径寸法Wに形成されている。折り返し高さHは、凹溝30の深さと略等しい。また、凹溝30は、例えば、円筒状に形成されているが、湾曲部28aが嵌合可能であれば、他の形状であってもよい。
【0021】
図3は、端末ピンの他の実施例を示す拡大斜視図であり、端末ピン28の湾曲部28bは、複数回に渡って屈折させた、先端が凸の形状である。この場合においても、湾曲部28aは、対向配置された高圧端子29の凹溝30に嵌合可能な直径寸法Wに形成されている。また、折り返し高さHも、凹溝30の深さと略等しく形成する。
【0022】
以上のように構成された内燃機関用点火コイル20の組立手順について説明する。先ず、絶縁ケース26の高圧タワー部12に高圧端子29を配設した後、一次コイル23、二次コイル24、鉄心25等から成る組立体を絶縁ケース26内に収納する。
【0023】
この際に、組立体の下端側に延設された端末ピン28の湾曲部28aは、高圧端子29の上端に形成された凹溝30内に嵌合される。その後、絶縁性合成樹脂27を注入して、各構成部品を絶縁しながら固定する。
【0024】
このようにして製造された内燃機関用点火コイル20は、端末ピン28と高圧端子29とは、端末ピン28の湾曲部28aが凹溝30に圧入されているので、電気的接触を確実にすることができる。また、熱応力等によって端末ピン28に力が加わった場合であっても、湾曲部28aは線材自体の有する弾性力により反発し、端末ピン28と高圧端子29との接触が外れ、導通が遮断される虞れがない。
【0025】
また、図3に示すように端末ピン28の湾曲部28bを複数回に渡って屈折させた先端が凸の形状とした場合には、凹溝30内への嵌合作業を容易にすることができる。更に、端末ピン28を凹溝30から抜け難い構成とすることができる。
【0026】
以上のように本願発明の構成によれば、二次コイルの高圧側端末に寸法のばらつきがあった場合でも、高圧端子の凹溝内に確実に圧入できるために、点火コイルの稼働時に発生する温度ストレスによって、接触が離れてしまう虞れもなく、信頼性の向上を達成することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 内燃機関用点火コイル
2 鉄心・コイル組立体
3 絶縁ケース
4 高圧端子
5 熱硬化性樹脂
6 鉄心
7 一次コイルボビン
8 一次コイル
9 二次コイルボビン
10 二次コイル
11 端末ピン
12 高圧タワー部
13 プロテクター
14 点火プラグ
15 スプリング
16 一次端子
20 内燃機関用点火コイル
21 一次コイルボビン
22 二次コイルボビン
23 一次コイル
24 二次コイル
25 鉄心
26 絶縁ケース
27 絶縁性合成樹脂
28 端末ピン
28a 湾曲部
29 高圧端子
30 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルボビンに巻回された一次コイル及び二次コイルと、これら二つのコイルを磁気的に結合させる鉄心と、これらを収容する絶縁ケースとを備え、前記絶縁ケース内に充填された絶縁性合成樹脂によって一次コイル、二次コイル、鉄心等を固定保持する内燃機関用点火コイルであって、
前記二次コイルに接続された端末ピンの先端に湾曲部を形成するとともに、
前記端末ピンと電気的に接続される高圧端子側に凹溝を形成し、
前記端末ピンの先端に形成された湾曲部を、高圧端子側に形成された凹溝内に嵌合して導通させることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記端末ピンの湾曲部は、先端が凸のU字状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
前記端末ピンの湾曲部は、複数回に渡って屈折させて形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関用点火コイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate