説明

内燃機関用点火装置の製造方法

【目的】 本発明は複数の点火コイルを集積型にした内燃機関用点火装置の配線作業の向上を目的とする。
【構成】 多気筒内燃機関の各気筒に配置した各点火プラグに点火用の高電圧を供給するための内燃機関用点火装置の製造方法において、各点火プラグに対応して一体になった複数の点火コイル(200、300、400)と、複数の点火コイルをその内部に収納する点火コイルケース(101)と、点火コイルケースの上端面より突き出し、各点火コイルの点火信号等の電気信号を受けるための金属性の端子(220、320、420、230、330、430、510、520、530、540)とを組み込み、点火コイルの金属性の端子への金属性ワイヤ(600、610、620、630)の配線完了した後、その金属性の端子を折り曲げることにより配線部を前記点火コイルケース内に収納する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリンダ内で圧縮された混合ガスを適当な時期に点火爆発させる内燃機関用点火装置の製造方法に関し、特に複数の点火コイルを集積型にした内燃機関用点火装置の製造方法ついて配線作業の向上を目的とする。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術として、特開昭2−283864号公報に記載されたものがあった。これはエンジンに固定され点火プラグと二次巻線とをそれぞれ有する複数個の別個の二次巻線ユニットに磁気的に結合される複数個の離間した一次巻線を有する点火装置等である。これらの従来技術は集積型の内燃機関用点火装置であり本発明と関連するが、本発明の目的が該装置の配線作業の向上であるため下記図に示す本発明の前提となる従来技術について説明する。
【0003】図8は本発明の前提となる従来の内燃機関用点火装置を示す図である。本図(a)に示す様に、集積型の内燃機関用点火装置の製造では、複数個の点火コイル1と、イグナイタ2と、該点火コイル1の端子3と、該イグナイタ2の端子4と、該端子3と4とを接続する銅線5と、各部品を収納するコイルケース6と組み立て、これらは絶縁のためのエポキシポティング面Aよりも下に配置されている(図8(b)を参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来の内燃機関用点火装置の製造では、該銅線5が配回され該端子3及び4への絡げ及びはんだ付を実施する際にこれらが該コイルケース6内に収納されているため該コイルケース6内で作業をしなければならず、その結果作業性が悪化するという問題があった。さらにこの配線作業時に該銅線5は配線上たるみをもたせる必要があり、絶縁のためエポキシポッティング時にこの銅線5が浮き上がるという問題もあった。
【0005】したがって本発明は上記問題点に鑑み配線作業性を向上しかつエポキシポッティング時に銅線が浮き上がるのを防止できる内燃機関用点火装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は前記問題点を解決するために、多気筒内燃機関の各気筒に配置した各点火プラグに点火用の高電圧を供給するための内燃機関用点火装置の製造方法において、点火コイルケースには前記複数の点火コイルがその内部に収納され、各点火コイルの点火信号等の電気信号を受ける該金属性の端子が前記点火コイルケースの上端面より突き出す形状にされる。前記金属性の端子を電気導電性を有する形状記憶合金としてもよい。
【0007】
【作用】本発明の内燃機関用点火装置の製造方法によれば、点火コイルケースが前記複数の点火コイルをその内部に収納し、各点火コイルの点火信号等の電気信号を受ける該金属性の端子が前記点火コイルケースの上端面より突き出す形状にすることによって前記点火コイルの金属性の端子への金属性ワイヤの配線は該点火コイルケースの外の広い所で行われるようになり、前記点火コイルの金属性の端子への金属性ワイヤの配線完了した後、その金属性の端子を折り曲げることにより配線部を前記点火コイルケース内に収納することが可能になり配線作業が容易なった。さらに配線作業中に前記金属性ワイヤをたるませなくてもよいので樹脂充填時に該金属性ワイヤが従来のように浮き上がることがなくなった。さらに該金属性の端子を電気導電性を有する形状記憶合金とすることにより温度を印加するだけ該金属性の端子の折り曲げができ作業が向上することになる。
【0008】
【実施例】以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例の主要部構成を示す部分断面正面図であり、図2は図1のA方向矢視図である。なお本実施例では3気筒を例にして示し、図2では内部部品に説明上電気絶縁性を有する樹脂の被覆部700を注型前の状態で示している。本図の第1の実施例の構成を説明する。本図に示す内燃機関用点火装置は、エンジンの各気筒に配置した各点火プラグに一体に組付けられる点火装置本体100は、各部品例えば点火コイル200、300及び400等を収納するコイルケース101を有している。該コイルケース101には後述する各端子を保持するために凹形状の突起部102が該端子数分だけ備えられている。各該点火コイル200、300及び400は1次、2次コイルを有し高電圧を発生するための高電圧発生部210、310及び410と、バッテリ電源用接続端子220、320及び420と、点火信号用接続端子230、330及び430を有している。該点火コイル200、300及び400の1次電流を断続するイグナイタ500は、各該点火コイル200、300及び400にバッテリ電源を送るための端子510と、各該点火コイル200、300及び400に点火信号を送るための端子520、530及び540と、外部機器との接続用コネクタ550とを有している。さらに、該高電圧発生部220、320及び420並びに該端子510の端子間を結線するために銅線等からなる金属ワイヤ600と、該点火信号用接続端子230及び該端子540の間、該点火信号用接続端子330及び該端子530の間、該点火信号用接続端子430及び該端子520の間についても同様にそれぞれ結線する金属ワイヤ610、620及び630とを有している。またコイルケース101内に収納された該点火コイル200、300及び400、該バッテリ電源用接続端子220、320及び420、該点火信号用接続端子230、330及び430、該端子510、該端子520、530及び540、並びに結線用の該金属ワイヤ600、610、620及び630は電気絶縁性を有する樹脂700の注型により被覆されている。ここで該コイルケース101はPBT等の電気絶縁性を有する樹脂であり、該バッテリ電源用接続端子220、320及び420、該点火信号用接続端子230、330及び430、該端子510並びに該端子520、530及び540は黄銅等の電気導電性を有する金属端子であり、また該金属ワイヤ600、610、620及び630は銅線等の電気導電性を有するものである。
【0009】以上は本発明の構成の説明であるが本発明は上記構成により各端子間の配線作業性を向上すること等を目的とするものであり、以下にその説明をする。図3R>3は図1の部分断面正面図である。図3を参照して説明すると、複数に点火コイルを一体化した点火装置における内部結線作業において、各該バッテリ電源用接続端子220、320及び420、該点火信号用接続端子230、330及び430、該イグナイタの該端子510並びに該端子520、530及び540は該コイルケース101の上端面より上方に突き出した状態にしておくことで狭いコイルケース101内での配線作業をする必要がなくなり、このため該高電圧発生部210、310及び410の端子220、320及び420並びに該端子510の間を該金属ワイヤ600で直線的に配線できる。また該点火信号用接続端子430及び端子520間、該点火信号用接続端子330及び該端子530間、該点火信号用接続端子230及び該端子540間を各該金属ワイヤ630、620及び610で直線に配線できる。なお各結線部ははんだ付、又はフュージング等により結合させる。
【0010】図4は図3のB方向矢視部の部分断面側面図であり、図5は図4において治具操作後の状態を示す図である。図4に示すように治具900を左右方向(矢印方向)に動かすことによって各端子は図5の様に倒され、全ての端子(220、320、420、230、330、430、510、520、530、540)は該コイルケース101内に収められその結果、図2に示すようになる。なお全ての端子はスプリングバック防止のため凹部102に嵌合している。その後エポキシ樹脂等の電気絶縁性を有する樹脂700を注型する。
【0011】本発明の様に各端子を立てておき配線完了後その端子を折り曲げる構造とすることにより、前述したように従来のように狭いコイルケース101内で配線作業する必要がなくなる。これにより配線作業を大幅に向上させることができる。さらに該コイルケース101の上空間という広いところでの作業が可能となり該金属ワイヤ600、610、620及び630にたるみをもたせる配線を必要なくなり同時にエポキシポッティング時に従来のように銅線が浮き上がることがなくなった。
【0012】なお本実施例では参照符号500をイグナイタとして説明したが、これをコネクタとしてもよい。次に本発明の第2の実施例を説明する。図6は第2の実施例に係る図3のB方向矢視部の部分断面側面図であり、図7は図6における折り曲げ状態を示す図である。第2の実施例で第1の実施例と異なる構成要素は、電気導電性を有する形状記憶合金で作らせた該高電圧発生部210、310及び410の該端子220、320及び420、該点火用信号用接続端子230、330及び430、該端子510並びに該端子520、530及び540である。この実施例では、第1の実施例と同じく配線した後に、エポキシ等の電気絶縁性を有する樹脂注型としてその後温度をかけることによって形状記憶合金でできた端子220a、320a、420a、230a、330a、430a、510a、520a、530a、540aは記憶された形状に戻ろうとするために図6に示す状態より矢印の方向に倒れ第7図に示す状態になり、全ての端子は自然にエポキシ等の電気絶縁性の樹脂700の内部へと収められる。第2の実施例の場合は、第1の実施例の様なスプリングバック防止のための凹部102が廃止できまた端子折り曲げの設備も不要となる。この様な端子を折り曲げる構造においては形状記憶合金を用いることによっても大幅に配線作業性を向上させることができる。
【0013】なお本実施例の構成図は図1及び図2とほぼ同じであるため省略した。
【0014】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、点火コイルケースの上端面より突き出し、各点火コイルの点火信号等の電気信号を受けるための金属性の端子を設け、点火コイルの金属性の端子への金属性ワイヤの配線完了した後、その金属性の端子を折り曲げることにより配線部を点火コイルケース内に収納するようにしたので、配線作業性が向上しかつ金属性ワイヤのたるみがなくなり樹脂注型時に金属性ワイヤの浮き上がりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の主要部構成を示す部分断面正面図である。
【図2】図1のA方向矢視図である。
【図3】図1の部分断面正面図である。
【図4】図3のB方向矢視部の部分断面側面図であり、
【図5】図4において治具操作後の状態を示す図である。
【図6】第2の実施例に係る図3のB方向矢視部の部分断面側面図であり、
【図7】図6において昇温後の状態を示す図である。
【図8】本発明の前提となる従来の内燃機関用点火装置を示す図である。
【符号の説明】
100・・・点火装置本体
101・・・コイルケース
102・・・突起部
200、300、400・・・点火コイル
210、310、410・・・高電圧発生部
220、320、420・・・バッテリ電源用接続端子
230、330、430・・・点火信号用接続端子
500・・・イグナイタ
510、520、530、540・・・端子
600、610、620、630・・・金属ワイヤ
700・・・被覆部
900・・・治具
220a、320a、420a・・・導電性形状記憶合金のバッテリ電源用接続端子
230a、330a、430a・・・導電性形状記憶合金の点火信号用接続端子
510a、520a、530a、540a・・・導電性形状記憶合金の端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 多気筒内燃機関の各気筒に配置した各点火プラグに点火用の高電圧を供給するための複数の点火コイルを含む内燃機関用点火装置の製造方法において、点火コイルケースの内部に前記複数の点火コイルを収納し、各点火コイルの点火信号等の電気信号を受けるための金属性の端子を前記点火コイルケースの上端面より突き出し、前記点火コイルの金属性の端子への金属性ワイヤの配線完了した後、その金属性の端子を折り曲げることにより配線部を前記点火コイルケース内に収納することを特徴とする内燃機関用点火装置の製造方法。
【請求項2】 前記金属性の端子を電気導電性を有する形状記憶合金とし、温度を印加して折り曲げる請求項1記載の内燃機関用点火装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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