内皮前駆細胞サブセットの単離とそれらの使用方法
内皮前駆細胞を前駆細胞の源から単離する方法であって、系列に関係付けられた(lineage−committed)細胞を単離し、そしてさらに蛍光活性化細胞分類により系列陰性(lineage−negative)細胞の集団からCD34+細胞を単離することによる方法を提供する。内皮前駆細胞の単離された集団及び血管の誘導、周囲の血管内の血管新生応答の誘導及び炎症性細胞の走化性のためのCD34+細胞含有治療用組成物も提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2004年8月13日に出願された米国仮特許出願60/601,188に対してU.S.C.§119(e)下で優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
[0002] 本発明は、一般に、心臓血管疾患の治療のための内皮前駆細胞を単離する方法に関する。
【0003】
発明の背景
[0003] 組織の虚血に応じての新規な血管の発生は、生理的器官機能に必要な組織還流を維持するために意図される自然な宿主の反応を構成する。この自然な血管新生は、高齢化、糖尿病、及び高コレステロール症において十分に機能しない。これらの症状の各々において、血管内皮成長因子(VEGF)の内因性の発現の低下があり、そして外来のVEGFの投与が増強された新規な血管形成を導く。
[0004] 虚血性の組織の損傷は一連の事象を誘発し、血中前駆細胞(CPC)の損傷部位への移動及び補充を含む。虚血後の血管新生のモデルにおいては、内皮前駆細胞(EPC)と命名されたCPCの亜集団が新規血管内に入る。さらに、動物モデルにおいて、並びに急性心筋梗塞(aMI)の臨床試験においては、EPCの全身投与が心筋の血管形成に寄与し、そして改善された心筋機能に付随する。
[0005] それらのオリジナルの記載以来、骨髄由来のEPCは血管の損傷を発展させた(evolving)後の再生治療において焦点となってきた。末梢血においては通常低いCPCの数が虚血性事象の後には顕著に増加するため、血管の損傷とCPC−媒介性修復の間の因果関係が仮定された。虚血後の血管新生の動物モデルにおいては、骨髄由来のEPCが新規の血管に入る。さらに、VEGFを含む血管新生成長因子の局所及び全身のレベルが虚血後に上昇し、そして血中のCPCの数の増加と関連する。
[0006] 外来の成長因子の投与の明らかな治療上のポテンシャルは、動物及びヒトにおいて成功裏に評価された。様々な動物モデルにおいて、VEGF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、繊維芽細胞成長因子1(FGF−1)、間質(stromal)由来因子(SDF−1)又はスタチン薬剤の投与による血管損傷の後のEPCの移動は血中EPCの数の増加と相関し、そして治療上の血管形成を改善した。EPCの血管形成ポテンシャルの直接の証拠は、後肢の虚血と有するマウスに移植されたEPCが新規に形成された血管に入ったという研究により提供される(Kalka C.et al.,”Trasplantation of ex vivo expanded endothelial progenitor cells for therapeutic neovascularization,”Proc.Natl.Acad.Sci.97:3422−7,2000)。心筋梗塞(MI)のマウスモデルにおいて、ヒトCD34+CPCの静脈内注射は心筋の再血管形成に寄与し、そして心筋機能の救済に関連した(Kocher A.A.et al.,”Neovascularization of ischemic myocardiubone marrow−derived angioblasts prevents cardiomyocyte apoptosis,reduces remodeling and improves cardiac function,”Nat.Med.7:412−3,2001)。さらに、aMIの患者における自己のEPCの梗塞動脈への冠動脈内注入は、梗塞エリアの心筋の生存性の増加をもたらした(Assmus B.et al.,”Transplantation of progenitor cells and regeneration enhancement in acute myocardial infarction[TOPCARE−AMI],”Circulation 106:3009−17,2002)。
[0007] 現在の前駆細胞の研究は、治療上の血管形成におけるCPCの臨床上の応用に焦点が向けられている。よって、未来の大規模なCPCの治療上の応用はこれらの細胞の表現型上及び機能上の特性の理解を必要とすることになる。表現型上開散性のCPCサブセットが識別可能であることが証明された。細胞表面マーカーCD34,CD133及びVEGFR−2(KDR,flk−1)がCPCの一元的又は二元的パラメーターフローサイトメトリー分析のためのCPCマーカーとして用いられており、CD34+前駆細胞(PC)の富裕化を導く。このアプローチの欠点は技術的限界であって、一通り及び二通りのパラメーター検出により規定されたときにCPCサブセット間の同一性及び関連性を決定することにおいての制限を含む。
[0008] おもしろいことに、CPCの検出及び単離に用いられた方法はCPC機能アッセイの結果も決定する。フローサイトメトリーにより単離されて血管新生条件下で培養されたとき、CD34+CPCは紡錘細胞を形成し、時間をかけて毛細血管様構造を組織化する。さらに、これらの細胞は内皮細胞(EC)に特異的なマーカー、例えば、CD31,E−セレクチン及びTie−2を発現する。
[0009] 或いは、CPCは、血管形成性成長因子の存在下でフィブロネクチン又はゼラチンをコートされたプレート上で単核細胞のインビトロ培養に基づいて単離された。低密度のリポプロテイン(LDL)陰性であってレクチン結合能力を呈した単離細胞が、CPCと呼ばれた。これらの細胞はインビボにおいて血管新生を促進できるが、それらは単球の特性を有し、そしてそれらの血管新生能は血管新生因子、例えばVEGF、肝臓成長因子(HGF)、G−CSF及びGM−CSFのそれらによる生産により実際には誘導される。即ち、これらのLDL−,レクチン結合細胞は直接ECを形成しないが、それらは血管新生を変調し得る。
[0010] 前記のことに基づいて、内皮前駆細胞の不均質集団及び均質集団の両方が、心臓血管疾患の治療のための機会を示す。
【0004】
発明の概要
[0011] 本発明は、血管を形成することができるか又は血管新生を誘導できるヒト末梢血内皮前駆細胞を生じる細胞及び炎症媒介性細胞の4つのパラメーター蛍光活性化細胞分類を用いた単離の方法を記載する。さらに、本発明は、炎症性細胞に関して血管新生及び/又はケモタクシスを誘導する能力を有する内皮前駆細胞を含む生物分解性移植物を提供する。本発明の一つの態様において、血管形成/血管新生細胞及び炎症媒介新生細胞の両方を生じさせるヒト末梢血内皮前駆細胞のサブセット、CD34+CPCが同定される。
[0012] 本発明の一つの態様において、前駆細胞を、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31からなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクロームで標識された抗体に接触させて前駆細胞の源から系列に関係付けられた(lineage−committed)細胞を割り出し(identifying);系列陰性(lineage−negative)細胞の集団を形成するように蛍光活性化細胞分類により系列に関係付けられた細胞を枯渇させ;系列陰性細胞をCD34,CD133及びKDRからなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクローム標識抗体に接触させるが、その際、各抗体は唯一の放射波長を有するフルオロクロームにより標識されており;そして標識された系列陰性細胞を3色蛍光活性化細胞分類により分類することにより、内皮前駆細胞の集団を形成することを含む。
[0013] 本発明の一つの態様において、前駆細胞の源は哺乳類源であって、ヒト源、例えば末梢血を含む。
[0014] 本発明の別の態様において、系列に関係付けられた細胞を割り出すのに有用な抗体は、細胞マーカーCD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31に特異的な抗体を含む。
[0015] 本発明の別の態様において、反応工程は、細胞マーカーCD34,CD133及びKDRに特異的な抗体と系列陰性細胞を反応させることを含む。本発明の別の態様において、結果の内皮前駆細胞はCD34を発現する。本発明の別の態様において、結果の内皮前駆細胞はCD34+CD133−KDR−である。
[0016] 本発明の一つの態様において、内皮前駆細胞は、血管生成細胞、炎症媒介性細胞、又は両方である。本発明の別の態様において、血管生成細胞は、CD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である。本発明のまた別の態様において、内皮前駆細胞は、インターロイキン−8を発現できる炎症媒介性細胞である。
[0017] 本発明の別の態様において、内皮前駆細胞は、周囲の血管中に血管新生応答を誘導する。
[0018] 本発明の一つの態様において、処置された部位において血管新生を誘導する治療用組成物は、その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性マトリックスを含むように提供される。本発明の別の態様において、生物分解性マトリックスは、CD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である。
[0019] 本発明の別の態様において、炎症媒介性細胞に対して処置部位においてケモタクシス効果を有する治療用組成物は、その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性の生物適合性マトリックスを含むように提供される。本発明の別の態様において、生物分解性の生物適合性マトリックスは、CD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である。
[0020] 本発明のまた別の態様において、生物分解性の生物適合性マトリックスは、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様基質からなる群から選択される。
[0021] 本発明の一つの態様において、単離された集団が系列陰性のCD34+CD133−KDR−であるように提供される。
[0022] 本発明の別の態様において、内皮前駆細胞の単離された集団は血管生成細胞を含む。本発明の別の態様において、内皮前駆細胞の単離された集団は、インターロイキン−8を発現できる炎症媒介性細胞を含む。本発明の別の態様において、内皮前駆細胞の単離された集団は、周囲の血管に血管新生応答を誘導する。
【0005】
発明の詳細な説明
[0035] 本発明は、4つのパラメーター蛍光活性化細胞分類を用いて、血管を形成できるか又は血管新生及び炎症媒介性細胞を誘導することができる、ヒト末梢血内皮前駆細胞の単離のための方法を記載する。さらに、本発明は、炎症細胞のために血管新生及び/又はケモタクシスを誘導する能力を有する内皮前駆細胞を含む生分解可能な移植物を提供する。一つの態様において、血管形成/血管新生細胞及び炎症媒介細胞の両方を生じさせる、ヒト末梢血内皮前駆細胞、CD34+血中前駆細胞細胞(CPC)のサブセットを同定する。CD34+CPC,CD34+CD133−KDR−細胞のサブセットがこれらの活性に必須であるというのが本発明の非拘束の(non−binding)仮説である。
[0036] 過去数年にわたり、CPCは心臓血管再生治療において活動中心となってきたが、特に、成長因子投与によるCPCの治療上の動員とこれらの細胞の梗塞された領域への移植が虚血状態の患者への利益を証明した。以前、CPCsのサブセット、内皮前駆細胞(EPC)が血管新生におけるキープレイヤーとして指定された。しかしながら、EPCが表現型上及び機能上内皮形成能力を有する異種(heterogeneous)集団であるという蓄積した証拠が存在する。このCPCの異種集団は、よって、異なる機能を有するEPCsの源を提供する。この明細書において発明を記載するために、血中前駆細胞と内皮前駆細胞は同じ細胞集団を意味する。
[0037] 本発明者らは、予測に反して、系列陰性であり、CD34を発現するがCD133とKDRを発現せず、血管を形成するのに必須のCPCsのサブセットを発見した。CDの呼称は、「分化のクラスター(cluster of differentiation)」抗原を意味し、白血球細胞表面上に存在する抗原を系統的に同定する。CD34は内皮細胞上及び造血幹細胞上に構成的に発現される膜貫通糖蛋白質である。CD133は造血幹細胞抗原であり、プロミニンとしても知られている。KDRはヒト血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)の前駆体であり、Flk−1としても知られる。この血管形成集団のCPCsがKDR+であったと以前は考えられていた。
[0038] 幹細胞と前駆細胞は、より成熟した系列に関係付けられた(Lin+)細胞の特徴である特定のマーカーを欠く。系列特異的マーカーは、限定ではないが、CD3,CD8,CD10,CD14,CD16/56,CD19,CD20,CD31及びCD33を含む。本発明の一つの態様において、Lin+細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現する。本発明の別の態様において、Lin−細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現しない。
[0039] これらのマーカーの発現パターンに基づいてEPC表現型の転写プロファイリングと優秀な分析により、広く受容されたCPCマーカーCD34,CD133及びKDRを発現するヒトCPCの生体での挙動を研究した。3つのグループの患者からのCPCsを研究した:(i)再度のパフュージョン治療の成功を経験した急性心筋梗塞(aMI)患者、(ii)健康なボランティア及び(iii)スタチンドラッグによる治療を経験した安定なアンギナの患者。スタチン治療は治療の開始後早くも7日目にCPCのレベルの増加を報告し、そして多数のaMI患者がスタチン治療を受けている。
[0040] 系列陰性集団に関して分類されてCPCマーカーCD34,CD133又はKDRの何れかを発現する患者の各グループからの末梢血単核細胞を、CD34,CD133及びKDRの細胞発現の3つのパラメーターの評価(3色蛍光活性化細胞分類)に基づいて7つの別個のサブセット全部に細分類する(subdivided)ことができる。これらの7つのサブセットは、健康な被験者の血中及びスタチンドラッグによる治療を経験した安定なアンギナ患者の血中に存在し、そしてaMI後は全て細胞数が増加した。
[0041] 全3つのCPCサブセット(即ち、CD34+,CD133+及びKDR+)のaMI後の動員は、前駆細胞(PC)の非選択的補充を示す(図6A)。さらに、内皮細胞の分化及び機能に関与する遺伝子の発現分析は、aMI患者と健康な対照の間の同じサブセットのCPC内での遺伝子発現に主な違いはないことを明らかにした。これらの発見は、aMI後に増加したCPCの動員がこれらの細胞の変化した発現メイクアップの結果ではなく、むしろ骨髄由来のCPCの剥離を増強する外部因子の結果であることを示唆する。さらに、血管内皮成長因子(VEGF)は虚血性損傷により生じるが、骨髄内のマトリックスメタロプロテイナーゼ−9の発現を誘導する。このプロセスは可溶性Kitリガンドの放出をもたらし、cKit+幹細胞と前駆細胞の血中への動員を推進する。
[0042] これら3つのCPCサブセットのインビボにおける挙動を研究するため、本発明者らは、生物分解性マトリックス、例えばMatrigel(登録商標)(BDバイオサイエンセズ)に封入されたヒトCPCがマウス宿主内で成熟することを許容されたモデルを確立した。Matrigel(登録商標)は生物分解性で生物適合性の可溶性基底膜マトリックスである。当業者に知られている他の生物分解性マトリックスを本発明の範囲内で使用可能である。生物分解性マトリックスの他の例は、限定ではないが、自己由来の血小板細胞、コラーゲンゲル、又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づいたコラーゲン様基材を含む。生物分解性マトリックスの使用は多数の利点を有すが、その一つはCPCの位置局限であり、相対的に数の少ない標的細胞を観察することを可能にさせる。さらに、CPCにより生産された可溶性因子は、生物分解性マトリックスを通して自由に拡散して宿主環境に到達できる。よって、ヒトCPCの分化が監視できるのみならず、これらの細胞の宿主由来の血管新生(即ち、周囲のマウス血管の発生)に対する衝撃が容易に可視化できる。さらに、本発明の一つの態様において、生物分解性マトリックスは、前駆細胞の局在化された移植により利益を受ける疾患の治療のための哺乳類へのCPCの移植に有用である。最後に、ヒトCPCとマウス炎症性細胞の間の相互作用を研究することができ、即ち、虚血の後の炎症性リモデリングにおけるCPCの役割に関しての指標を提供する。
[0043] 本発明の一つの態様において、Matrigel(登録商標)移植物に封入されたがCD133+細胞又はKDR+細胞ではないCD34+細胞は、成熟した内皮細胞(EC)を形成した。遺伝子発現分析は、CD31転写物が3つ全てのサブセットに存在したことから、内皮形成のポテンシャルを示唆する。CD31は単球細胞表現型を有する内皮細胞又は血管新生ポテンシャルを有する単球細胞の代用物として機能し、内皮への関係付け(endthelial commitment)の証明としてのCD31転写物の存在が弱められる。フォンビルブランド因子転写物はCD34+細胞及びCD133+細胞において検出可能であったが、KDR+細胞においては常に検出可能ではなかったことから、前者2つのサブセットの分化は内皮系列に対して実は歪められるのかもしれないことを示唆する。
[0044] 本発明の別の態様において、成熟した内皮細胞を生じさせるCD34+集団も、チロシンキナーゼ受容体であるTie−2を発現する。CD34,Tie−1,Tie−2,VEGF及びKDRの遺伝子転写物はCPCに特徴的であり、CD34+細胞に存在し、そして低レベルでCD133+細胞に存在したが、KDR+細胞には不在であったことから、前者2つのサブセットの内皮系列への強い関係付けが示される。Tie−2発現はCD34+サブセットのみに見いだされたが、インビボにおいて内皮細胞を生じさせる唯一のサブセットであった。Tie−2は内皮細胞の生き残り及び毛細血管の形態形成に必須であるから、この分子の存在はインビボにおいてこのサブセットにおいて内皮細胞を形成するための装置であるかもしれない。
[0045] 系列陰性細胞のCPCサブセットを表現型により明確に識別するために、CPCマーカーCD34,CD133及びKDRの3つのパラメーターのフローサイトメトリー分析を確立した。以前の技術と比較してのこの戦略の利点は、分析における全てのCPCのサブタイプの偏りのない封入(unbiased inclusion)からなる。この偏りのない封入は、非関係付けの前駆細胞の使用により達成されて、分析のための出発集団として、CD34の予めの選択により系列陰性(Lin−)細胞に関して富裕にされた。このアプローチがインビボにて移植されたCPC集団の解剖を可能にさせるため(即ち、CD34+,CD133+,KDR+細胞)、インビボにおいて観察された効果に必須の有望なCPCサブセットが同定される。この技術を用いて、主要なCD34+,CD133+及びKDR+細胞集団内の7つの表現型上別々のCPCサブセットが同定された(図6C,D)。
[0046] 3つの主要な集団全てにおいて回帰性の(recurrent)CPCサブセットは、CD34+CD133+KDR+又は三重に陽性のサブセット細胞である。CD34+細胞の予めの選択後に、これらの細胞は以前に記載されており、EPCを運ぶことが示された。本発明者らの支配下では(in the hands of)、これらの細胞はインビボにおいてEC形成に寄与せず、おそらくはそれらの頻度の低さによる。
[0047] KDR+集団内では、3つのさらなるEPCサブセットが同定された:CD34+CD133−KDR+細胞、CD34−CD133−KDR+細胞及びCD34―CD133+KDR+細胞。CD34+KDR+細胞は有力な造血幹細胞又は成人の血管芽細胞(hemangioblasts)として記述されてきた。CD133は一次前駆細胞のマーカーであるが成熟内皮細胞のマーカーではない。よって、検出されたCD34+CD133−KDR+細胞は、より成熟した細胞であるかもしれない。CD34−CD133−KDR+細胞の有意さはまだ決定するのが難しいが、KDRが様々な前駆細胞上に発現されるからである。CD34+KDR+細胞は血管の外傷に際して血中に補充されたEPCであるという観察から、CD34−CD133+KDR+細胞の可能な同定が推理され得る。さらに、このサブセットは、これら3つのマーカーの発現に関する限り、Reyesら(Reyes M.,et al.Origin of endothelial progenitors in human postnatal bone marrow.J.Clin.Invest.109:337−46,2002)に記載された骨髄からの間組織幹細胞集団に似ており、彼らは、これらの細胞の内皮細胞形成能力も証明した。それらの表現型にも拘わらず、しかしながら、これら4つのサブセットの組み合わせ(即ち、CD34+/CD133+/KDR+,CD34−/CD133+/KDR+,CD34−/CD133−/KDR+,及びCD34+/CD133−/KDR+)は、実施例3に示されるとおりEC分化をもたらさなかった(図2及び3)。
[0048] KDR+細胞に類似して、CD133+細胞は単独ではインビボにおいて内皮細胞を形成しない。CD133+集団は、以前に論じられたとおり、KDR+集団とCD34−CD133+KDR+サブセットを共有する。CD133+集団内の残りの2つのサブセットはCD34−CD133+KDR−とCD34+CD133+KDR−である。CD34−CD133+細胞は、CD34+造血前駆細胞を生じるそれらの能力に基づくと、CD34+CD133+細胞の前駆体であるらしい。この後者の表現型(CD34+CD133+)に関して、造血前駆細胞、EPC及び血管リンパ細胞前駆体の機能が提案されている。しかしながら、実施例3に記載されたインビボシステムにおいては、4つのCD133+PCサブセットの組み合わせは内皮細胞を生じなかったことから、因子の配列が内皮細胞分化を誘導するのに十分でなかったらしいことが示唆される。
[0049] 7つのCPCサブセットの表現型と挙動の要約を下の表1に掲載する。
【0006】
【表1】
【0007】
[0050] 本発明の一つの態様において、CD34+集団は、レクチンUlex europeus−1アグルチニン(UEA−1)への結合、CD34+及びCD31+の発現、スピンドルの形態及びネットワークの組織により示されるとおり、成熟ECをインビボにおいて形成するための7つの同定されたCPC亜集団の一つにすぎない。CD34+集団は、CD133+集団と、CD34+CD133+KDR−サブセットを共有し、そしてKDR+集団と、CD34+CD133−KDR+サブセットを共有する。これらの2つのサブセットはそれぞれCD133+集団とKDR+集団のコンテクストにおいて内皮細胞分化に寄与しなかったが、それらは、CD34+集団に独特の、CD34+CD133−KDR−サブセットとの組み合わせにおいてそうでなかった。末梢血単核細胞(MNC)におけるCD34の発現は、Asaharaら(Asahara T.et al.,Isolation of putative progenitor endothelial cells for angiogenesis.Science 275:964−967,1997)がこの表現型を有する細胞をフィブロネクチン上で血管新生条件下で生育させたら、内皮細胞を生じ得たことを観察したという基準(criterion)であった。
[0051] 本発明の態様において、CD34+細胞のインビボ内皮細胞形成能力は、CD34+CD133−KDR−細胞の存在によるものであり、そしてオプションとしては、このサブセット内のTie−2の発現による。本発明の別の態様において、CD34+CD133−KDR+細胞とCD34+CD133+KDR−細胞の組み合わさった存在は、可能性としてCD34+CD133−KDR−サブセットの組み合わせであり、内皮細胞分化に必要かもしれない。
[0052] 予測に反して、CD34+CPCサブセットはECに分化する上、マウスの血管のMatrigel(登録商標)への内部への成長(ingrowth)も刺激した。細胞外マトリックス成分と成長因子のその組成物により血管新生性であったが、Matrigel(登録商標)自体(はだかのMatrigel(登録商標))は、14日の観察期間の間にマウスの血管の内部成長を誘導しなかった(実施例3と実施例5)。
[0053] CD34+CPCの移植は、2日で血管新生をもたらす。最初に、ヒトCD34+CPCがヒト内皮細胞に侵入する。続いて、ヒトCD34+CPCが宿主による血管内部侵入を誘導する。全てのCD34+ CPCサブセットが宿主血管新生を等しく誘導はしなかった。CD34+CD133−KDR−サブセットとCD34+CD133+KDR−サブセットが宿主血管新生に重要であった。大きな血管が最初にCD34+CD133−KDR−サブセットにおいて観察され、そしてより少ない程度にてCD34+CD133+KDR−サブセットにおいて観察された。さらに、これら2つのサブセットの組み合わせは相乗的でなく、サブセット単独に比べて高レベルの血管新生を導かなかった。さらに、CD34+CD133−KDR−とCD34+CD133−KDR+サブセットの組み合わせは、毛細血管の形成をもたらしたのみであり、小さい血管及び大きい血管の形成はもたらさなかった。初代毛細血管の誘導は虚血性心臓疾患を治療するのに有用かもしれない。
[0054] ここまでは、CPCが新規な血管を直接生じて損傷後に血管新生に寄与することができた細胞として考察された。本発明者らによる意外な観察は、CPCが局所脈管構造に対する変調機能を及ぼし得て、血管新生を発生させることを証明する。この発見は、改善された治療用血管新生に関する新規な展望を提供する。
[0055] 本発明の別の態様において、本発明の教示により単離されたCD34+CPCsは、単球/マクロファージ系列の炎症性細胞をMatrigel(登録商標)のマイクロ環境へ補充する。はだかのMatrigel(登録商標)はマウスのマクロファージの誘因をほとんど行使しなかったことから、Matrigel(登録商標)に対する低いグレードの外来身体反応(foreign body reaction)のみがマウントされたことを示す。CD133+細胞又はKDR+細胞を負荷されたMatrigel(登録商標)に対する炎症性応答ははだかのMatrigel(登録商標)のそれらを超えなかったので、これらのサブセットはそれら自身によりマクロファージの浸潤を変調しなかった。比較して、CD34+細胞を負荷されたMatrigel(登録商標)のマクロファージ浸潤は顕著に高かったため、これらの細胞の追加のマクロファージ誘因効果がMatrigel(登録商標)の効果に重ねられたことが示される。よって、CPCの機能は内皮細胞への分化のそれを超えて拡大するかもしれず、そして追加の治療用の含蓄を有するかもしれない。本発明のまた別の態様において、虚血性の心筋からの損傷シグナルにより補充された前駆細胞は、内皮細胞へ直接に分化して局所血管の成長を促進させることにより血管新生に寄与するのみならず、炎症性細胞を損傷したエリアに補充するのかもしれない。
[0056] 前炎症性化学誘引因子(pro−inflammatory chemoattractants)はCD34+前駆細胞により生産される。CD34+,CD133+及びKDR+3つ全てのサブセットが炎症関連サイトカイン/ケモカイン腫瘍ネクローシス因子−α(TNF−α)及びマクロファージ炎症性蛋白質−1α(MIP−1α)の転写物を含んだが、炎症性細胞を補充するのに必須のCD34+亜集団のみは高いレベルのヒトインターロイキン−8(IL−8)を発現した(KDR+細胞よりも3倍増加)。さらに、ヒトIL−8の単一の細胞による発現はMatrigel(登録商標)移植の14日後まで持続した。
[0057] 本発明者らによる驚くべき観察は、CD34,CD133及びKDRのようなマーカーの発現に以前はただ基づいていたCPCの存在する定義を書き換える必要性を指摘するが、なぜならば、これらの分子の発現パターンを変えた様々なサブセットが存在するからであり、等しく内皮細胞へ分化することができない。急性のMIは全ての検出された前駆細胞サブタイプの移動を導くことが、健康な個体及びaMI患者からのCPCサブセットにおける類似の遺伝子発現パターンから証明されたことから、CPCは損傷シグナルに適合可能に応答せず、むしろ、骨髄から受動的に放出されることを示す。最後に、CD34+前駆細胞は血管新生のポテンシャル並びに免疫変調ポテンシャルを有し、本発明の教示を用いて新規な治療戦略の生成に関して開発されるかもしれない。
[0058] 本発明の一つの態様において、4つのパラメーターの蛍光活性化細胞分類を用いて、血管形成細胞と炎症媒介細胞の両方を生じるCPCを同定する。本発明の4つのパラメーターは系列、CD34,CD133及びKDRである。
[0059] 本発明の一つの態様において、所望の細胞を規定するモノクローナル又はポリクローナルの何れかの抗体のカクテル又は混合物に細胞を暴露することにより、所望の細胞集団を含む細胞源を所望の集団及び不所望の集団に分離する。蛍光活性化細胞ソーターに、一つ又はそれより多い抗体が結合していた細胞を同定させるように、当該抗体に蛍光標識をコンジュゲートする。個々の抗体は、当業者によく知られている様々な蛍光標識(フルオロクローム)にコンジュゲートすることができる。本発明の一つの態様において、抗体は、同じか又は唯一の蛍光放射波長を有する一つ又はそれより多くのフルオロクロームに結合させることができる。各蛍光放射波長は色に対応する。例示のフルオロクロームは、限定ではないが、テキサスレッド(登録商標)(モリキュラープローブス、ユージーン、OR)、アロフィコシアニン、フィコエリスリン、フルオレセンイソチオシアネート、ローダミン、スペクトラルレッド(登録商標)(サザンバイオテック、バーミンガム、AL)、Cy−クローム、及びその他を含む。
[0060] 本発明の一つの態様において、内皮前駆細胞又は血中前駆細胞の源を、系列―関係付け(Lin+)細胞を定義する抗体のカクテルと接触させる。本発明の一つの態様において、この抗体のカクテルを全て同じフルオロクロームにコンジュゲートさせる。本発明の別の態様において、系列に関係付けられたマーカーは、限定ではないが、CD3,CD8,CD10,CD14,CD16/56,CD19,CD20,CD31及びCD33を含む。本発明の別の態様において、Lin+細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現する。本発明の別の態様において、系列非関係付けられた(前駆、Lin−)細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現しない。
[0061] 本発明の別の態様において、Lin−細胞は、CPCの源をフルオロクローム標識された抗体のカクテルに接触させ、そして滅菌精製された細胞の集団が得られるように蛍光活性化細胞ソーター上で当該細胞を分類することにより、単離される。蛍光活性化細胞分類のプロトコルと方法は、容易に利用可能であって、当業者にはよく知られている。
[0062] 本発明の別の態様において、単離された前駆細胞は、Lin−細胞をCD34,CD133及びKDRに対するフルオロクローム標識抗体に接触させ、そしてCD34を発現するがCD133又はKDRを発現しないLin−細胞の集団を同定するために、標識細胞を分類することにより、得られる。本発明の一つの態様において、この分類工程は滅菌条件下で行われる。
[0063] 本発明の一つの態様において、単離された前駆細胞は、患者において新規の血管の形成を誘導するのに有用である。新規な血管は脈管形成(vasculogenesis)(胚性前駆細胞からの血管の形成)、血管新生(angiogenesis)(周囲の組織からの血管の内部成長)又は新血管新生の形成(formation of neovascularization)(それらが以前に存在しなかった新規な血管の形成)により形成することができ、存在する血管に結合する内皮前駆細胞から血管を形成することを含む。外傷、外科手術又は急性あるいは慢性の疾患によるケガのような新規な血管の形成を哺乳類が必要としているかもしれない多数の条件が存在する。非限定例においては、哺乳類が治癒を必要とする創傷を有するかもしれない。別の非限定例においては、患者が心臓血管外科手術、心臓血管血管形成術(cardiovascular angioplasty)、頸動脈血管形成術、冠動脈血管形成術を受けているかもしれず、全てが新規の血管形成を必要とする。別の非限定例においては、心筋梗塞、例えばaMIの患者は新規な血管形成の必要がある。新規の血管形成を必要とするかもしれない別の条件は、鎌状赤血球貧血及び地中海貧血を含む。
[0064] 本発明の別の態様において、単離された前駆細胞は、新規な血管形成の必要な部位へ細胞の優先的移動を可能にするあらゆる経路又は方法により、新規な血管形成の必要のある哺乳類へ投与することができる。例示の投与経路は、限定ではないが、生物適合性溶液又は生物分解性生物適合性マトリックス中の前駆細胞の、全身投与、例えば、静脈内注射、局所移植、例えば局所筋肉内又は皮下注射を含む。生物適合性溶液は当業者に知られている。生物分解性生物適合性マトリックスの例は、限定ではないが、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様サブストレートを含む。
[0065] これらの実施例は、本発明の一つ又はそれより多くの態様を例示することを意図し、以下に記載されるものに発明を限定することを意図しない。
【0008】
実施例1
4つのパラメーターのフローサイトメトリーによる7つのCPCの同定
[0066] 3つの血中前駆細胞(CPC)マーカーであるCD34,CD133及びKDRの組み合わされた発現のパターンに基づく内皮前駆細胞(CPC)の表現型上の不均一性を、4つのパラメーター(3色)フローサイトメトリー分析を用いて分析した。
[0067] 単核細胞をヘパリン化血液からリンフォプレップ密度勾配遠心分離(ナイコメッド、オスロ、ノルウエー)により単離した。表現型に拘わらず血中前駆細胞(PC)の数は低いため、系列陰性(Lin−)細胞、即ち、非関係付けの有力なPCsを、全末梢血単核細胞(MNC)から、高速フローサイトメトリー分類により富裕化し、Lin+細胞は捨てた(図6A)。全MNCを、CD3(T細胞),CD14(単球),CD19(B細胞),CD16/56(NK細胞)及びCD31(成熟内皮細胞)に対するフィコエリスリン(PE)−標識されたモノクローナル抗体(moAbs)(全てIQ社、グロニンゲン、オランダ)のカクテルで染色した。Lin−細胞は塩基性内皮培地(ベクトンディッキンソン、エレンボーデゲム−アルスト、ベルギー)中で高速フローサイトメトリーによりMoFlo細胞ソーター(サイトメーション、フォルトコリンズ、CO)を用いて分類した。得られたLin−集団は典型的にはLin+細胞が95−98%フリーであって、全MNCの平均11.3%を占めるが(0.6−22.4%の範囲)、一方健康なからだにおいては(hc,n=9)平均3.0%のMNCがLin−であった(平均1.0−5.5%;P=0.0003)(図6A)。
[0068] CPCマーカーCD34,CD133及びKDRの発現パターンを決定するため、分類されたLin−細胞をCD34−アロフィコシアニン(APC)(クローン581、IQ社)、CD133−PE(ミルテニイバイオテック、ドイツ)及びウサギポリクローナル抗KDRフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(シグマケミカルズ社)を用いた3色染色に供した。
[0069] Lin−集団内では、3つのマーカーCD34,CD133及びKDRの一つを発現する細胞をゲートに通し(gated)、残りの2つのマーカーの発現を分析した(図6B:CD34,図6C:CD34,図6D:KDR)。このアプローチを用いて、7つのCPCサブセットをCD34,CD133及びKDRの組み合わされた発現に基づいて検出した。3重陰性細胞はEPCと考えなかった。7つのサブセット全てがaMI患者及び健康な対照に存在した。
[0070] CD34+集団は、主に、CD34+CD133+KDR−細胞(aMI,全CD34+細胞の平均62%、33−89%の範囲;健康な対照、平均38%、範囲24−50%)及びCD34+CD133−KDR−細胞(aMI,全CD34+細胞の37%、10−61%の範囲;健康な対照、平均60%、範囲0.1−0.8%)からなったが、3重陽性サブセット及びCD34+CD133−KDR+サブセットはこの集団を1%も占めなかった(図6C)。
[0071] aMI患者のCD133+集団においては、CD34+CD133+KDR−細胞(全CD133+細胞の平均52%、33−89%の範囲)及びCD34−CD133+KDR−細胞(全CD133+細胞の平均28%、0.1−85%の範囲)が支配的であったが、健康な対照においては、CD34+CD133+KDR−細胞(平均38%、13−76%の範囲、1異常値(outlier)1%)及びCD34−CD133+KDR−細胞(平均58%、12−73%の範囲)が支配的なサブセットであった(図6B)。
[0072] aMI患者と健康な対照の間の違いはKDR+集団にも存在したが、aMI患者においては主にCD34−CD133−KDR+細胞(平均65%、1−95%の範囲)及びCD34−CD133+KDR+細胞(平均33%、3−71%の範囲)からなった(図6D)。健康な対照においては、CD34−CD133+KDR+細胞が支配的(平均93%、52−99%の範囲)であり、CD34−CD133−KDR+サブセットは全KDR+細胞のほんの約5%しか含まなかった(図6D)。
【0009】
実施例2
aMI患者と健康な対照におけるCPCの数
[0073] 10人のaMI患者と9人の健康な対照ボランティアをEPCの数に関して比較することにより、7つのCPCサブセット中の細胞の数がaMIの事象に相関したか否かを決定した。CPCの数とaMIの間の可能性のある相関は、(CPCが検出されたうちの)Lin−細胞の数に反映された。Lin−細胞の数を2つの被験者群の間で比較した。aMI患者においては、Lin−細胞の数が平均2.6x105細胞/mL血液であり(範囲0.2−4.7x105細胞/mL血液)、健康な対照(平均0.5x105細胞/mL血液、範囲0.04−1.4x105細胞/mL血液)よりも有意に高く(P=0.001)(図7)、対照と比較してaMI患者において5.2倍高い数のLin−細胞に等しかった。
[0074] CD34,CD133又はKDRを発現するCPCの数をaMI患者と健康な対照において比較した。3つ全てのサブセット中のCPCの数は健康な対照に比べてaMI患者において有意に高かった。CD34サブセットにおいては、健康な対照(平均0.3x104細胞/mL血液、0.06−1.2x104細胞/mL血液)に比較すると、8.6倍高い数の細胞がaMI患者において見いだされた(平均2.6x104細胞/mL血液、2.1−11.0x104細胞/mL血液、P=0.005)。CD133サブセットにおいては、健康な対照(平均0.3x104細胞/mL血液、0.07−0.7x104細胞/mL血液)に比較すると、11.6倍高い数の細胞がaMI患者において見いだされた(平均3.5x104細胞/mL血液、0.5−13.5x104細胞/mL血液、P=0.0001)。最後に、KDRサブセットにおいては、健康な対照(平均0.2x104細胞/mL血液、0.009−0.8x104細胞/mL血液)に比較すると、6.2倍高い数の細胞がaMI患者において見いだされた(平均1.3x104細胞/mL血液、0.03−5.8x104細胞/mL血液、P=0.005)。
[0075] 可能性として損傷した心筋の血管の修復のために、aMIが特定のCPCサブセットの移動を誘発したか否かを確認するため、7つのサブセットの中のCPCの数を測定した。全7サブセットにおいて、それらの表現型に拘わらず、健康な対照に比べて有意に高いCPC数がaMI患者に存在した(図8)。患者レベルにおいては、特定のサブセットの中のCPC数の異常値(outliers)が容易に明白であるが、これらの患者においてCPC数は全7CPCサブセットにおいて一貫して高くはなかった。
[0076] CPCの数がそれらの表現型に拘わらずaMI患者において増加しており、心臓血管の損傷とCPC補充の間の原因となるリンクを示唆するため、CPC数と疾患のパラメーターの間の相関を探求した(表2)。15人のaMI患者と安定な狭心症の10人の患者をこの分析に含めた。心臓血管疾患(CVD)の病歴は、患者におけるCVDのエピソードを示す。aMIの数は現在のaMIエピソードの数を示す。表2に掲載したaMIのリスク因子に加えて、年齢(>60歳)と男性はaMIのリスク因子と考えたため、全部で6人の可能性のあるリスク因子をもたらす。累積のリスク因子は、用意した患者に存在するこれら6つの可能なリスク因子の数を示す。
[0077] 様々なサブセットと年齢におけるCVD数とリスク因子又は虚血時間の蓄積した数の間には相関がなかった。さらに、EPC数と血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチンホスホキナーゼ心筋バンド(CKMB)又はトロポニンの間にも相関はなかった。
【0010】
【表2】
【0011】
実施例3
CVDサブセットの血管形成活性
[0078] この実験は、主に成熟内皮細胞(EC)への分化に関して、インビボにおけるCPCサブセットの挙動を調査した。CD34,CD133又はKDRの何れかを発現するCPCを200μLのMatrigel(登録商標)内に保存して、10ngの塩基性繊維芽細胞成長因子(b−FGF,ケミコン、テメキュラ、CA)及び12Uのヘパリン(レオファーマ、ボーラーアップ、デンマーク)を5,000から15,000細胞/移植物にて添加して、ヌードマウスに皮下移植した。はだかのMatrigel(登録商標)はb−FGFおよびヘパリン添加物を含む。14日後に、Matrigel(登録商標)ペレットを外植し、液体窒素中で免疫組織化学のため部分的にスナップ凍結するか、又は0.1Mリン酸ナトリウムバッファー中の2%パラホルムアルデヒド中で固定し、脱水し、そして樹脂(Technovit 8100,ヒーリアスクルツァー、ヴエアーハイム、ドイツ)に埋め込んだ。全体の形態の評価のために、樹脂に埋め込まれたMatrigel(登録商標)のペレットの切片2μmをトルイジンブルーで染色した。移植物の形態分析は、移植の14日後にCD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)において高い細胞性(cellularity)が存在したことを示した(図2B)。細胞性はCD133+−負荷Matrigel(登録商標)において顕著に低く(図2C)、そしてKDR+細胞を植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)においては最小であった(図2A)。紡錘形態の細胞からなるネットワーク構造は毛細管ネットワークに酷似しており、CD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)において豊富であったが、CD133+細胞、KDR+細胞を植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)においては事実上不在であった。
[0079] これらのネットワーク構造がヒトPCにより形成されたか否かを決定するために、Matrigel(登録商標)切片を、ヒトECには特異的に結合するがマウスECには結合しないUEA−1で染色した(図3A,B)。ヒト臍帯血内皮細胞(HUVEC)をUEA−1染色のための陽性対照として用い(図3A)、そしてH5V細胞(マウスEC系)を陰性対照として用いた(図3B)。CD34+移植物のネットワーク構造はUEA−1に関して陽性である;しかしながら、UEA−1陽性細胞は、他のサブセットを植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)において存在しなかった。
[0080] UEA−1染色はインビボにおけるMatrigel(登録商標)中のネットワーク構造のヒトオリジンを証明したが前駆ECと成熟ECの間を識別できないため、外植物をEPC/ECマーカーCD34及びEC成熟マーカーCD31により染色した。CD34+EPCを植えたMatrigel(登録商標)中では、紡錘形態の細胞が場合によりネットワーク構造に配置されてUEA−1による染色後に観察される細胞に類似しており、ヒトCD34に関して陽性であった(図3D)。CD31は、CD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)における形態に類似した細胞上に存在した(図3E)。CD34もCD31も、CD133+CPC,KDR+CPCを植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)にて検出できなかった。
【0012】
実施例4
インビボCPCサブセットに対する血管新生の誘導と炎症性応答
[0081] CD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)中に検出された全ての細胞がヒトECマーカーに関して染色されなかったため、それらがマウスECであったか否かを調査した。免疫組織化学を用いて、マウスの血管と炎症性細胞を、マウスCD31(サザンバイオテック、バーミンガム、AL)及び単球/マクロファージ(MoMa,セロテック、オックスフォード、UK)に対して向けられたラットモノクローナル抗体を用いて検出した。強い宿主由来の血管新生応答が、ヒトCD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)に対して検出された(図4B,E)。しかしながら、ヒトCD133+細胞を含むMatrigel(登録商標)は弱いマウス血管新生応答を誘発し(図4C,F)、KDR+細胞を植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)の移植に際しての血管新生反応は下限に近かった(図4A,D)。ヒトCD34+細胞に対するマウスMoMa+炎症性細胞の強い流入と他の2つのサブセットに対する弱い応答(図4D−F)が5つの全ての試験された被験者において観察され(2人のaMI患者、3人の健康な対照)、そしてaMI患者からのCPCと健康な対照からのCPCの間に差異はなかった。ヒト単球(CD14+細胞)又はマクロファージ(CD68+,図4E挿入図)に対して差異は検出されなかった
実施例5
CD34+サブセットの血管新生に対する効果
[0082] CD34+CPCを実施例1に記載されたとおりに単離し、ヨウ化プロピジウム染色を含めることにより、生きた細胞のみが単離されたことを保証した(図9)。4つのCD34+サブセットが、さらにCD34+集団:CD34+CD133−KDR−(+――);CD34+CD133+KDR−(++―);CD34+CD133−KDR+(+―+);CD34+CD133+KDR+(+++)から単離された。4つのCD34+CPCサブセットを追加されたMatrigel(登録商標)に懸濁して、実施例3に記載されるとおりにヌードマウスに移植した。単一のサブセット又は混合された集団を表3の実験セットアップに従いマウスに移植した。
【0013】
【表3】
【0014】
[0083] 全体の組織学上の評価のため、2μmの切片を樹脂埋め込みMatrigel(登録商標)沈殿物から調製してトイジンブルーにより染色した。血管の数を数え、そして調査した組織の面積に関して補正し、平方マイクロメーターあたりの血管の数を出した。血管は以下の通りに定義される:大きな血管は赤血球を含み、平滑筋に囲まれる;中間の血管は赤血球と平滑筋からなる;そして毛細血管。
[0084] レクチンの内皮への特異的結合を用いて、ヒト及びマウスの内皮細胞両方の存在を検出した。レクチンUEA−1はヒト内皮とBS−1レクチンに特異的に結合し(Bandeiraea simplicifolia−1,シグマ)、マウス内皮に選択的に結合する。さらに、内皮細胞のマーカーであるCD31に対して特異的に向けられた抗体を用いた。検出はABCキット(ベクターラブス(Vector labs))及びアミノ−エチルカルバゾール(AEC)を用いて成し遂げた。CD31−陽性細胞の数を数えて組織の面積に関して補正した。
[0085] CD34+CPC含有Matrigel(登録商標)は、はだかのMatrigel(登録商標)に比較して血管新生を増加させた。ヒトCD31に関してこれらのMatrigel(登録商標)沈殿物を染色することは、未成熟内皮細胞を示す大きなCD31−陽性細胞クラスターの存在を証明する(図10A)。これらのクラスターは、主に、CD34+CD133−KDR−及びCD34+CD133+KDR−サブセットに存在した。血管様構造に関連した少数のヒトCD31−陽性細胞はCD34+CD133−KDR−サブセットに観察された(図10B)。
[0086] ヒトCPCsはヒト血管に分化しなかったが、CD34+ヒトCPCサブセットは宿主マウスの血管新生の誘導性作用を提供した。CD34+CPC−負荷Matrigel(登録商標)においてマウスCD31−陽性脈管構造の発生の増加があり、血管のサイズは毛細血管から大きな血管までの範囲であった(図11)。
[0087] マウスCD31−陽性血管の数/mm2(毛細血管、小さい血管及び大きな血管を含む)を表3に掲載した5つの実験群に関して測定した(図12)。血管の同定の基準は、毛細血管が1−2内皮細胞を有する;小さな血管が3−5内皮細胞を有する;そして大きな血管が5より多い内皮細胞を有し、そして血管の周囲に血管平滑筋を有するかもしれない。CD34+CPCサブセットは、はだかのMatrigel(登録商標)を超えて、高いレベルの宿主マウス血管新生を誘導した。もっとも高いレベルの血管新生は、CD34+CD133−KDR−及びCD34+CD133+KDR−サブセットに観察された。大きな血管は主にCD34+CD133−KDR−サブセットに観察され、そしてCD34+CD133+KDR−サブセットにおいては、より程度が劣った。さらに、これら2つのサブセットの組み合わせは相乗的ではなく、サブセット何れか単独よりも高いレベルの血管新生を導かなかった。さらに、CD34+CD133−KDR−サブセットとCD34+CD133+KDR−サブセットの組み合わせは毛細血管の形成のみをもたらし、小さな血管及び大きな血管の形成をもたらさなかった。
【0015】
実施例6
aMI患者と健康な対照のCPC転写プロファイル
[0088] 以前の研究は、CPCがそれらの分化及び機能に関連したマーカーの一団を発現し得ることを示す。上記の4パラメーターフローサイトメトリー分析は単一のCPCに対する3つのCPCマーカーの同時評価を可能にするが、このアプローチはこれまで知られている全てのCPCマーカーをカバーしない。よって、定量性RT−PCRを用いることにより、CPC分化、成熟及び機能に関連した転写物の数の存在及び発現レベルを調査して、何れの因子がCD34+CPCにおいて観察された前血管新生及び前炎症効果に介在したのかを決定した。
[0089] 全RNAを所望の表現型(CD34+,CD133+及びKDR+)及びランダムヘキサマーからの103−104CPCから単離し、そしてコピーのDNAを合成した。ヒトGAPDK,ベータ−2−マイクログロブリン(B2M)、ベータ−アクチン、c−abl,CD34,CD133,Tie−1,Tie−2,flt−1,KDR,VEGF,CD31,VE−カドヘリン、フォンワイルブランド因子(vWF)、インターロイキン−8(IL−8)、腫瘍ネクローシス因子−α(TNF−α)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ炎症性蛋白質−1α(MIP−1α)、マクロファージ化学誘因性蛋白質−1(MCP−1)、MCP−2及びMCP−3に関するプライマー/プローブセット(TaqMan,アプライドバイオシステムズ、フォスターシティー、CA)をCPC転写分析に用いた。3重のRT−PCR反応を等量のcDNAに対して以下のパラメーターを用いて実施した:2分50℃、10分95℃そして45サイクルの15秒の変性(95℃)そして1分のアニーリング/伸長合成(60℃)。組み合わされたcDNA合成とPCRの変量(SD)は、GAPDHハウスキーピングmRNAに関して0.5CT未満(サイクル閾値)であった。サイクル閾値の値をベータ−2−マイクログロブリンに対して△CT法を用いて標準化し、そして患者と対照の間又はサブセット間の発現レベルの差異を発現の倍分散(fold variance)として表現si,2−△△CTとして計算する(Livak KJ et al.Analysis of relative gene expression data usi real−time quantitative PCR and the 2−△△C Method.Methods.25:402−8,2001)。
[0090] CPCの成熟と機能に関与する可能性のある14のマーカーのmRNA転写物の存在を決定するためのRT−PCRの結果を表4に示す。遺伝子発現に関して個人間の変化があったので、与えられたCPCサブセットにおける遺伝子の発現を少なくとも3/5被験者におけるPCR産物の存在として規定した(即ち、CT値<45)。この規定に基づくと、aMI患者と健康な対照の遺伝子発現プロファイルは類似していた。
【0016】
【表4】
【0017】
[0091] 3つのCPCサブセットを比較すると、遺伝子発現の獲得は、KDR→CD133→CD34の順なのが明確であった。Tie−1,CD34そして健康な対照においてはCD133とvWF転写物がCD133サブセットには存在したが、KDRサブセットには存在しなかった。Flt−1転写物はKDR+サブセットにおいて検出可能であったが、CD133+細胞には不在であった。CD34+サブセットにおいては、Tie−2,flt−1,CD133そしてaMI患者においては、CD34が、KDR+及びCD133+細胞との比較において獲得された。
[0092] 炎症関連分子の転写物GM−CSF,MCP−1,CMP−2及びMCP−3は、全てのサブセットにおいてPCT検出限界を下回った。TNF−αとMIP−1α転写物は類似の量でCD34+CPCとKDR+CPC存在した。インターロイキン−8(IL−8)は、全ての含まれる個体からのCD34+転写物に存在した。KDR+CPCにおいては、しかしながら、IL−8転写物が5人の個体のうちの2人にしか見いだされなかった。さらに、IL−8転写物レベルは、CD34+サブセットにおいてKDR+サブセットにおけるよりも3倍高かった。インターロイキンー8転写物は、ヌードマウスにおいてMatrigel(登録商標)中で、分類直後及び移植14日後の両方においてCD34+CPCに見いだされた。
[0093] 他に示さなければ、明細書及び特許請求の範囲において用いられる、成分の量、特性、例えば分子量、反応条件等を表す全ての数字は、用語「約」により全ての例において修飾されるものとして理解される。従って、反対を指示しなければ、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示された数値パラメーターは、本発明において得られることが求められている所望の特性に依存して変更してよい近似値である。少なく見ても、そして特許請求の範囲への均等な学説を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、報告された顕著なディジットの数の見地から、そして通常のラウンディング技術を適用することにより、少なくとも構築されるべきである。発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターが近似しているにも拘わらず、特定の実施例において示された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、如何なる数値も、それらの試験測定において見いだされる標準偏差から必然的にもたらされる一定の誤差を本来は含む。
[0094] 発明を記載するコンテクストにおいて用いられる用語「a」及び「an」及び「the」及び類似の関係語(特に、以下の特許請求の範囲のコンテクストにおいて)は、他に示さない限り単数及び複数の両方をカバーすることを意図する。本明細書に記載された値の範囲の詳説は単にその範囲内に該当する各々の別々の値を個々に言及する速記法として機能することを意図する。他に示さなければ、各々の個別の値は個別に詳説されたごとくに明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、他に示さない限り又はコンテクストにより明確に否定されない限り、あらゆる適切な順序にて実施され得る。本明細書に提供される全ての実施例、又は例示の用語(例えば、「such as」)の使用は、発明を良好に例示することを単に意図するものであり、他に請求された発明の範囲の限定の態度を取るのではない。明細書中の言語は発明の実施に必須のあらゆる請求されない要素を示すものとして解釈されるべきである。
[0095] 本明細書に開示された発明の別の要素又は態様のグループ分けは、限定と解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又は本明細書に見いだされるグループの他のメンバー又は他の要素とのあらゆる組み合わせにおいて、言及されて請求されてよい。一つ又はそれより多くのグループメンバーが、便利性及び/又は特許性の理由に関してグループないに含まれるか又はグループから削除してよいことが認識される。そのような包含又は削除の如何なるものが起きたときも、明細書はここでは修飾されたものとしてグループを含むと見なされ、即ち、特許請求の範囲内で使用される全てのマーカッシュグループの書かれた記載を実行する。
[0096] この発明の好ましい態様は本明細書に記載されており、発明を実施するために発明者らに公知のベストモードを含む。もちろん、それらの好ましい態様におけるバリエーションは上記記載を読んだ当業者には明らかである。発明者は当業者がそのようなバリエーションを適切なものとして用いることを期待し、そして発明者は、発明が、本明細書にて特別に記載されたよりも他に実行されることを意図する。従って、この発明は、適用可能な法律により許可される添付の特許請求の範囲に詳説された主題の全ての修飾物と均等物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記の要素のあらゆる組み合わせが、他に示さない限り又は他にコンテクストにより否定されない限り、発明に包含される。
[0097] さらに、数値のレファレンスはこの明細書を通して特許及び印刷された刊行物に対してなされた。上記の引用されたレファレンスと印刷された刊行物の各々は、それら全てを引用により別個に本明細書に取り込む。
[0098] 終わりに、本明細書に開示された発明の態様が本発明の原理の例示であることは、理解されるべきである。採用されるかもしれない他の修飾は発明の範囲内である。即ち、例示の目的で、しかし限定ではなく、本発明の別の配置を本明細書内の教示に従い利用してよい。従って、本発明は示されて記載された通りに正確に発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】[0023] 図1は、フローサイトメトリーにより測定された、本発明の教示に従いLin−,CD34,CD133又はKDRとして規定された、急性心筋梗塞の患者(aMI,n=10)、安定狭心症(sAP、n=10)及び健康な対照(hc,n=9)からの末梢血中の血中前駆細胞(CPC)の数を描写する。
【図2】[0024] 図2は、本発明の教示に従い14日後にヌードマウスに移植されたMatrigel(登録商標)ペレット中に分類されたCD34+又はCD133+の何れかのヒトCPCサブセットのインビボの挙動を描写する。(A)はだかのMatrigel(登録商標);(B)CD34+細胞を含むMatrigel(登録商標)、及び(C)CD133+細胞を含むMatrigel(登録商標)。矢印は、有力なEPCと考えられた紡錘細胞により形成された代表的なネットワーク構造を示す。対物レンズ40倍。
【図3】[0025] 図3は、本発明の教示に従い、ヌードマウスに移植されたMatrigel(登録商標)ペレットに封入された(enclosed)単離CPC上のヒト内皮前駆マーカーの形態上の検出を描写する。パネルA−Cにおいて、ヒト内皮細胞(EC)をレクチンUlex europeus−1アグルチニン(TRITCにコンジュゲートされたUEA−1)、ヒト−及びEC−特異的レクチンにより検出された;(A)ヒト臍帯血内皮細胞(HUVEC)陽性細胞;(B)マウスEC細胞系(H5V)陰性対照;(C)ヒトCD34+EPC結合UEA−1レクチンと植えられた(seeded)Matrigel(登録商標)中の細胞。UEA−1結合細胞は紡錘形であり、そして接触させた(矢印)。パネルD−Eにおいては、(D)ヒトCD34(EC,EC)、及び(E)CD31(EC)に関して染色することによりEC表現型を確認した。陽性の内皮細胞を矢印で示す。挿入物は、ヒト血管の追加の例を示す。対物レンズ40倍。
【図4】[0026] 図4は、Matrigel(登録商標)中でヌードマウスに移植された、本発明の教示に従い単離された、ヒトCPCサブセットに対するマウスの血管新生及び炎症の応答を描写する。Matrigel(登録商標)中のマウスの血管の形成は、マウスCD31に特異的なモノクローナル抗体を用いて検出した(A−C)。マウス単球/マクロファージは、それらの細胞に特異的なモノクローナルにより検出した(D−F)。パネルE中の挿入物は、切片中のヒトCD68+マクロファージにより検出した。対物レンズ40倍。
【図5】[0027] 図5は、Matrigel(登録商標)中でヌードマウスに移植された、本発明の教示に従い単離された、CD34+細胞中のインターロイキン−8(IL−8)の検出を描写する。インターロイキン−8発現は、分類直後(A)及び移植の14日後(B)に測定した。対物レンズ40倍。
【図6A】[0028] 図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図6B】図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図6C】図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図6D】図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図7】[0029] 図7は、Lin−,CD34+,CD133+又はKDR+として規定されたサブセットとして、aMI(n=10)及び健康な対照(hc,n=9)からの末梢血中のCPCの数を描写する。点は個体を表す;水平線は中央値を表す;平均に基づいて倍数増加。P=p値。
【図8】[0030] 図8は、aMI(n=10)及び健康な対照(hc,n=9)における本発明の教示に従って定義された7つのCPCサブセットの、フローサイトメトリー分析により測定された細胞の数を描写する。水平線は中央値を表す;平均に基づいて倍数増加。
【図9】[0031] 図9は、本発明の教示に従う、4つのCD34+CPCサブセット、又はサブセットの組み合わせの、フローサイトメトリー分類を描写する。(A)CD34+CD133+KDR−;(B)CD34+CD133+KDR+;(C)CD34+CD133−KDR−;(D)CD34+CD133−KDR+。
【図10】[0032] 図10は、ヌードマウスにおける移植14日後の、本発明の教示に従う、CD34+CPC−負荷されたMatrigel(登録商標)中のヒトCD31−陽性細胞の存在を描写する。(A)ヒトCD31−陽性細胞クラスターと成熟表現型;(B)血管様構造中のヒト、CD31−陽性細胞。
【図11】[0033] 図11は、ヌードマウスにおける移植14日後の、本発明の教示に従う、CD34+CD133−KDR−CPC−負荷されたMatrigel(登録商標)中のマウスCD31−陽性細胞の存在を描写する。毛細管(矢印)から小(星印)及び大(挿入が(inset))までの範囲の異なるサイズの血管を検出した。両イメージ(大と小)をMatrigel(登録商標)ペレットの同じ切片の同じ拡大にて撮った。
【図12】[0034] 図12は、ヌードマウスにおける移植14日後の、本発明の教示に従う、CD34+サブセットからのCD34+CPCを負荷されたMatrigel(登録商標)中のマウスCD31−陽性血管/nm2の定量を描写する。(A)毛細管、(B)小さい血管及び(C)大きい血管。++−,CD34+CD133−KDR+;+――,CD34+CD133−KDR−;+++,CD34+CD133+KDR+;+―+,CD34+CD133−KDR+;B,そのままのMatrigel(登録商標)。
【発明の開示】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2004年8月13日に出願された米国仮特許出願60/601,188に対してU.S.C.§119(e)下で優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
[0002] 本発明は、一般に、心臓血管疾患の治療のための内皮前駆細胞を単離する方法に関する。
【0003】
発明の背景
[0003] 組織の虚血に応じての新規な血管の発生は、生理的器官機能に必要な組織還流を維持するために意図される自然な宿主の反応を構成する。この自然な血管新生は、高齢化、糖尿病、及び高コレステロール症において十分に機能しない。これらの症状の各々において、血管内皮成長因子(VEGF)の内因性の発現の低下があり、そして外来のVEGFの投与が増強された新規な血管形成を導く。
[0004] 虚血性の組織の損傷は一連の事象を誘発し、血中前駆細胞(CPC)の損傷部位への移動及び補充を含む。虚血後の血管新生のモデルにおいては、内皮前駆細胞(EPC)と命名されたCPCの亜集団が新規血管内に入る。さらに、動物モデルにおいて、並びに急性心筋梗塞(aMI)の臨床試験においては、EPCの全身投与が心筋の血管形成に寄与し、そして改善された心筋機能に付随する。
[0005] それらのオリジナルの記載以来、骨髄由来のEPCは血管の損傷を発展させた(evolving)後の再生治療において焦点となってきた。末梢血においては通常低いCPCの数が虚血性事象の後には顕著に増加するため、血管の損傷とCPC−媒介性修復の間の因果関係が仮定された。虚血後の血管新生の動物モデルにおいては、骨髄由来のEPCが新規の血管に入る。さらに、VEGFを含む血管新生成長因子の局所及び全身のレベルが虚血後に上昇し、そして血中のCPCの数の増加と関連する。
[0006] 外来の成長因子の投与の明らかな治療上のポテンシャルは、動物及びヒトにおいて成功裏に評価された。様々な動物モデルにおいて、VEGF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、繊維芽細胞成長因子1(FGF−1)、間質(stromal)由来因子(SDF−1)又はスタチン薬剤の投与による血管損傷の後のEPCの移動は血中EPCの数の増加と相関し、そして治療上の血管形成を改善した。EPCの血管形成ポテンシャルの直接の証拠は、後肢の虚血と有するマウスに移植されたEPCが新規に形成された血管に入ったという研究により提供される(Kalka C.et al.,”Trasplantation of ex vivo expanded endothelial progenitor cells for therapeutic neovascularization,”Proc.Natl.Acad.Sci.97:3422−7,2000)。心筋梗塞(MI)のマウスモデルにおいて、ヒトCD34+CPCの静脈内注射は心筋の再血管形成に寄与し、そして心筋機能の救済に関連した(Kocher A.A.et al.,”Neovascularization of ischemic myocardiubone marrow−derived angioblasts prevents cardiomyocyte apoptosis,reduces remodeling and improves cardiac function,”Nat.Med.7:412−3,2001)。さらに、aMIの患者における自己のEPCの梗塞動脈への冠動脈内注入は、梗塞エリアの心筋の生存性の増加をもたらした(Assmus B.et al.,”Transplantation of progenitor cells and regeneration enhancement in acute myocardial infarction[TOPCARE−AMI],”Circulation 106:3009−17,2002)。
[0007] 現在の前駆細胞の研究は、治療上の血管形成におけるCPCの臨床上の応用に焦点が向けられている。よって、未来の大規模なCPCの治療上の応用はこれらの細胞の表現型上及び機能上の特性の理解を必要とすることになる。表現型上開散性のCPCサブセットが識別可能であることが証明された。細胞表面マーカーCD34,CD133及びVEGFR−2(KDR,flk−1)がCPCの一元的又は二元的パラメーターフローサイトメトリー分析のためのCPCマーカーとして用いられており、CD34+前駆細胞(PC)の富裕化を導く。このアプローチの欠点は技術的限界であって、一通り及び二通りのパラメーター検出により規定されたときにCPCサブセット間の同一性及び関連性を決定することにおいての制限を含む。
[0008] おもしろいことに、CPCの検出及び単離に用いられた方法はCPC機能アッセイの結果も決定する。フローサイトメトリーにより単離されて血管新生条件下で培養されたとき、CD34+CPCは紡錘細胞を形成し、時間をかけて毛細血管様構造を組織化する。さらに、これらの細胞は内皮細胞(EC)に特異的なマーカー、例えば、CD31,E−セレクチン及びTie−2を発現する。
[0009] 或いは、CPCは、血管形成性成長因子の存在下でフィブロネクチン又はゼラチンをコートされたプレート上で単核細胞のインビトロ培養に基づいて単離された。低密度のリポプロテイン(LDL)陰性であってレクチン結合能力を呈した単離細胞が、CPCと呼ばれた。これらの細胞はインビボにおいて血管新生を促進できるが、それらは単球の特性を有し、そしてそれらの血管新生能は血管新生因子、例えばVEGF、肝臓成長因子(HGF)、G−CSF及びGM−CSFのそれらによる生産により実際には誘導される。即ち、これらのLDL−,レクチン結合細胞は直接ECを形成しないが、それらは血管新生を変調し得る。
[0010] 前記のことに基づいて、内皮前駆細胞の不均質集団及び均質集団の両方が、心臓血管疾患の治療のための機会を示す。
【0004】
発明の概要
[0011] 本発明は、血管を形成することができるか又は血管新生を誘導できるヒト末梢血内皮前駆細胞を生じる細胞及び炎症媒介性細胞の4つのパラメーター蛍光活性化細胞分類を用いた単離の方法を記載する。さらに、本発明は、炎症性細胞に関して血管新生及び/又はケモタクシスを誘導する能力を有する内皮前駆細胞を含む生物分解性移植物を提供する。本発明の一つの態様において、血管形成/血管新生細胞及び炎症媒介新生細胞の両方を生じさせるヒト末梢血内皮前駆細胞のサブセット、CD34+CPCが同定される。
[0012] 本発明の一つの態様において、前駆細胞を、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31からなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクロームで標識された抗体に接触させて前駆細胞の源から系列に関係付けられた(lineage−committed)細胞を割り出し(identifying);系列陰性(lineage−negative)細胞の集団を形成するように蛍光活性化細胞分類により系列に関係付けられた細胞を枯渇させ;系列陰性細胞をCD34,CD133及びKDRからなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクローム標識抗体に接触させるが、その際、各抗体は唯一の放射波長を有するフルオロクロームにより標識されており;そして標識された系列陰性細胞を3色蛍光活性化細胞分類により分類することにより、内皮前駆細胞の集団を形成することを含む。
[0013] 本発明の一つの態様において、前駆細胞の源は哺乳類源であって、ヒト源、例えば末梢血を含む。
[0014] 本発明の別の態様において、系列に関係付けられた細胞を割り出すのに有用な抗体は、細胞マーカーCD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31に特異的な抗体を含む。
[0015] 本発明の別の態様において、反応工程は、細胞マーカーCD34,CD133及びKDRに特異的な抗体と系列陰性細胞を反応させることを含む。本発明の別の態様において、結果の内皮前駆細胞はCD34を発現する。本発明の別の態様において、結果の内皮前駆細胞はCD34+CD133−KDR−である。
[0016] 本発明の一つの態様において、内皮前駆細胞は、血管生成細胞、炎症媒介性細胞、又は両方である。本発明の別の態様において、血管生成細胞は、CD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である。本発明のまた別の態様において、内皮前駆細胞は、インターロイキン−8を発現できる炎症媒介性細胞である。
[0017] 本発明の別の態様において、内皮前駆細胞は、周囲の血管中に血管新生応答を誘導する。
[0018] 本発明の一つの態様において、処置された部位において血管新生を誘導する治療用組成物は、その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性マトリックスを含むように提供される。本発明の別の態様において、生物分解性マトリックスは、CD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である。
[0019] 本発明の別の態様において、炎症媒介性細胞に対して処置部位においてケモタクシス効果を有する治療用組成物は、その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性の生物適合性マトリックスを含むように提供される。本発明の別の態様において、生物分解性の生物適合性マトリックスは、CD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である。
[0020] 本発明のまた別の態様において、生物分解性の生物適合性マトリックスは、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様基質からなる群から選択される。
[0021] 本発明の一つの態様において、単離された集団が系列陰性のCD34+CD133−KDR−であるように提供される。
[0022] 本発明の別の態様において、内皮前駆細胞の単離された集団は血管生成細胞を含む。本発明の別の態様において、内皮前駆細胞の単離された集団は、インターロイキン−8を発現できる炎症媒介性細胞を含む。本発明の別の態様において、内皮前駆細胞の単離された集団は、周囲の血管に血管新生応答を誘導する。
【0005】
発明の詳細な説明
[0035] 本発明は、4つのパラメーター蛍光活性化細胞分類を用いて、血管を形成できるか又は血管新生及び炎症媒介性細胞を誘導することができる、ヒト末梢血内皮前駆細胞の単離のための方法を記載する。さらに、本発明は、炎症細胞のために血管新生及び/又はケモタクシスを誘導する能力を有する内皮前駆細胞を含む生分解可能な移植物を提供する。一つの態様において、血管形成/血管新生細胞及び炎症媒介細胞の両方を生じさせる、ヒト末梢血内皮前駆細胞、CD34+血中前駆細胞細胞(CPC)のサブセットを同定する。CD34+CPC,CD34+CD133−KDR−細胞のサブセットがこれらの活性に必須であるというのが本発明の非拘束の(non−binding)仮説である。
[0036] 過去数年にわたり、CPCは心臓血管再生治療において活動中心となってきたが、特に、成長因子投与によるCPCの治療上の動員とこれらの細胞の梗塞された領域への移植が虚血状態の患者への利益を証明した。以前、CPCsのサブセット、内皮前駆細胞(EPC)が血管新生におけるキープレイヤーとして指定された。しかしながら、EPCが表現型上及び機能上内皮形成能力を有する異種(heterogeneous)集団であるという蓄積した証拠が存在する。このCPCの異種集団は、よって、異なる機能を有するEPCsの源を提供する。この明細書において発明を記載するために、血中前駆細胞と内皮前駆細胞は同じ細胞集団を意味する。
[0037] 本発明者らは、予測に反して、系列陰性であり、CD34を発現するがCD133とKDRを発現せず、血管を形成するのに必須のCPCsのサブセットを発見した。CDの呼称は、「分化のクラスター(cluster of differentiation)」抗原を意味し、白血球細胞表面上に存在する抗原を系統的に同定する。CD34は内皮細胞上及び造血幹細胞上に構成的に発現される膜貫通糖蛋白質である。CD133は造血幹細胞抗原であり、プロミニンとしても知られている。KDRはヒト血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)の前駆体であり、Flk−1としても知られる。この血管形成集団のCPCsがKDR+であったと以前は考えられていた。
[0038] 幹細胞と前駆細胞は、より成熟した系列に関係付けられた(Lin+)細胞の特徴である特定のマーカーを欠く。系列特異的マーカーは、限定ではないが、CD3,CD8,CD10,CD14,CD16/56,CD19,CD20,CD31及びCD33を含む。本発明の一つの態様において、Lin+細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現する。本発明の別の態様において、Lin−細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現しない。
[0039] これらのマーカーの発現パターンに基づいてEPC表現型の転写プロファイリングと優秀な分析により、広く受容されたCPCマーカーCD34,CD133及びKDRを発現するヒトCPCの生体での挙動を研究した。3つのグループの患者からのCPCsを研究した:(i)再度のパフュージョン治療の成功を経験した急性心筋梗塞(aMI)患者、(ii)健康なボランティア及び(iii)スタチンドラッグによる治療を経験した安定なアンギナの患者。スタチン治療は治療の開始後早くも7日目にCPCのレベルの増加を報告し、そして多数のaMI患者がスタチン治療を受けている。
[0040] 系列陰性集団に関して分類されてCPCマーカーCD34,CD133又はKDRの何れかを発現する患者の各グループからの末梢血単核細胞を、CD34,CD133及びKDRの細胞発現の3つのパラメーターの評価(3色蛍光活性化細胞分類)に基づいて7つの別個のサブセット全部に細分類する(subdivided)ことができる。これらの7つのサブセットは、健康な被験者の血中及びスタチンドラッグによる治療を経験した安定なアンギナ患者の血中に存在し、そしてaMI後は全て細胞数が増加した。
[0041] 全3つのCPCサブセット(即ち、CD34+,CD133+及びKDR+)のaMI後の動員は、前駆細胞(PC)の非選択的補充を示す(図6A)。さらに、内皮細胞の分化及び機能に関与する遺伝子の発現分析は、aMI患者と健康な対照の間の同じサブセットのCPC内での遺伝子発現に主な違いはないことを明らかにした。これらの発見は、aMI後に増加したCPCの動員がこれらの細胞の変化した発現メイクアップの結果ではなく、むしろ骨髄由来のCPCの剥離を増強する外部因子の結果であることを示唆する。さらに、血管内皮成長因子(VEGF)は虚血性損傷により生じるが、骨髄内のマトリックスメタロプロテイナーゼ−9の発現を誘導する。このプロセスは可溶性Kitリガンドの放出をもたらし、cKit+幹細胞と前駆細胞の血中への動員を推進する。
[0042] これら3つのCPCサブセットのインビボにおける挙動を研究するため、本発明者らは、生物分解性マトリックス、例えばMatrigel(登録商標)(BDバイオサイエンセズ)に封入されたヒトCPCがマウス宿主内で成熟することを許容されたモデルを確立した。Matrigel(登録商標)は生物分解性で生物適合性の可溶性基底膜マトリックスである。当業者に知られている他の生物分解性マトリックスを本発明の範囲内で使用可能である。生物分解性マトリックスの他の例は、限定ではないが、自己由来の血小板細胞、コラーゲンゲル、又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づいたコラーゲン様基材を含む。生物分解性マトリックスの使用は多数の利点を有すが、その一つはCPCの位置局限であり、相対的に数の少ない標的細胞を観察することを可能にさせる。さらに、CPCにより生産された可溶性因子は、生物分解性マトリックスを通して自由に拡散して宿主環境に到達できる。よって、ヒトCPCの分化が監視できるのみならず、これらの細胞の宿主由来の血管新生(即ち、周囲のマウス血管の発生)に対する衝撃が容易に可視化できる。さらに、本発明の一つの態様において、生物分解性マトリックスは、前駆細胞の局在化された移植により利益を受ける疾患の治療のための哺乳類へのCPCの移植に有用である。最後に、ヒトCPCとマウス炎症性細胞の間の相互作用を研究することができ、即ち、虚血の後の炎症性リモデリングにおけるCPCの役割に関しての指標を提供する。
[0043] 本発明の一つの態様において、Matrigel(登録商標)移植物に封入されたがCD133+細胞又はKDR+細胞ではないCD34+細胞は、成熟した内皮細胞(EC)を形成した。遺伝子発現分析は、CD31転写物が3つ全てのサブセットに存在したことから、内皮形成のポテンシャルを示唆する。CD31は単球細胞表現型を有する内皮細胞又は血管新生ポテンシャルを有する単球細胞の代用物として機能し、内皮への関係付け(endthelial commitment)の証明としてのCD31転写物の存在が弱められる。フォンビルブランド因子転写物はCD34+細胞及びCD133+細胞において検出可能であったが、KDR+細胞においては常に検出可能ではなかったことから、前者2つのサブセットの分化は内皮系列に対して実は歪められるのかもしれないことを示唆する。
[0044] 本発明の別の態様において、成熟した内皮細胞を生じさせるCD34+集団も、チロシンキナーゼ受容体であるTie−2を発現する。CD34,Tie−1,Tie−2,VEGF及びKDRの遺伝子転写物はCPCに特徴的であり、CD34+細胞に存在し、そして低レベルでCD133+細胞に存在したが、KDR+細胞には不在であったことから、前者2つのサブセットの内皮系列への強い関係付けが示される。Tie−2発現はCD34+サブセットのみに見いだされたが、インビボにおいて内皮細胞を生じさせる唯一のサブセットであった。Tie−2は内皮細胞の生き残り及び毛細血管の形態形成に必須であるから、この分子の存在はインビボにおいてこのサブセットにおいて内皮細胞を形成するための装置であるかもしれない。
[0045] 系列陰性細胞のCPCサブセットを表現型により明確に識別するために、CPCマーカーCD34,CD133及びKDRの3つのパラメーターのフローサイトメトリー分析を確立した。以前の技術と比較してのこの戦略の利点は、分析における全てのCPCのサブタイプの偏りのない封入(unbiased inclusion)からなる。この偏りのない封入は、非関係付けの前駆細胞の使用により達成されて、分析のための出発集団として、CD34の予めの選択により系列陰性(Lin−)細胞に関して富裕にされた。このアプローチがインビボにて移植されたCPC集団の解剖を可能にさせるため(即ち、CD34+,CD133+,KDR+細胞)、インビボにおいて観察された効果に必須の有望なCPCサブセットが同定される。この技術を用いて、主要なCD34+,CD133+及びKDR+細胞集団内の7つの表現型上別々のCPCサブセットが同定された(図6C,D)。
[0046] 3つの主要な集団全てにおいて回帰性の(recurrent)CPCサブセットは、CD34+CD133+KDR+又は三重に陽性のサブセット細胞である。CD34+細胞の予めの選択後に、これらの細胞は以前に記載されており、EPCを運ぶことが示された。本発明者らの支配下では(in the hands of)、これらの細胞はインビボにおいてEC形成に寄与せず、おそらくはそれらの頻度の低さによる。
[0047] KDR+集団内では、3つのさらなるEPCサブセットが同定された:CD34+CD133−KDR+細胞、CD34−CD133−KDR+細胞及びCD34―CD133+KDR+細胞。CD34+KDR+細胞は有力な造血幹細胞又は成人の血管芽細胞(hemangioblasts)として記述されてきた。CD133は一次前駆細胞のマーカーであるが成熟内皮細胞のマーカーではない。よって、検出されたCD34+CD133−KDR+細胞は、より成熟した細胞であるかもしれない。CD34−CD133−KDR+細胞の有意さはまだ決定するのが難しいが、KDRが様々な前駆細胞上に発現されるからである。CD34+KDR+細胞は血管の外傷に際して血中に補充されたEPCであるという観察から、CD34−CD133+KDR+細胞の可能な同定が推理され得る。さらに、このサブセットは、これら3つのマーカーの発現に関する限り、Reyesら(Reyes M.,et al.Origin of endothelial progenitors in human postnatal bone marrow.J.Clin.Invest.109:337−46,2002)に記載された骨髄からの間組織幹細胞集団に似ており、彼らは、これらの細胞の内皮細胞形成能力も証明した。それらの表現型にも拘わらず、しかしながら、これら4つのサブセットの組み合わせ(即ち、CD34+/CD133+/KDR+,CD34−/CD133+/KDR+,CD34−/CD133−/KDR+,及びCD34+/CD133−/KDR+)は、実施例3に示されるとおりEC分化をもたらさなかった(図2及び3)。
[0048] KDR+細胞に類似して、CD133+細胞は単独ではインビボにおいて内皮細胞を形成しない。CD133+集団は、以前に論じられたとおり、KDR+集団とCD34−CD133+KDR+サブセットを共有する。CD133+集団内の残りの2つのサブセットはCD34−CD133+KDR−とCD34+CD133+KDR−である。CD34−CD133+細胞は、CD34+造血前駆細胞を生じるそれらの能力に基づくと、CD34+CD133+細胞の前駆体であるらしい。この後者の表現型(CD34+CD133+)に関して、造血前駆細胞、EPC及び血管リンパ細胞前駆体の機能が提案されている。しかしながら、実施例3に記載されたインビボシステムにおいては、4つのCD133+PCサブセットの組み合わせは内皮細胞を生じなかったことから、因子の配列が内皮細胞分化を誘導するのに十分でなかったらしいことが示唆される。
[0049] 7つのCPCサブセットの表現型と挙動の要約を下の表1に掲載する。
【0006】
【表1】
【0007】
[0050] 本発明の一つの態様において、CD34+集団は、レクチンUlex europeus−1アグルチニン(UEA−1)への結合、CD34+及びCD31+の発現、スピンドルの形態及びネットワークの組織により示されるとおり、成熟ECをインビボにおいて形成するための7つの同定されたCPC亜集団の一つにすぎない。CD34+集団は、CD133+集団と、CD34+CD133+KDR−サブセットを共有し、そしてKDR+集団と、CD34+CD133−KDR+サブセットを共有する。これらの2つのサブセットはそれぞれCD133+集団とKDR+集団のコンテクストにおいて内皮細胞分化に寄与しなかったが、それらは、CD34+集団に独特の、CD34+CD133−KDR−サブセットとの組み合わせにおいてそうでなかった。末梢血単核細胞(MNC)におけるCD34の発現は、Asaharaら(Asahara T.et al.,Isolation of putative progenitor endothelial cells for angiogenesis.Science 275:964−967,1997)がこの表現型を有する細胞をフィブロネクチン上で血管新生条件下で生育させたら、内皮細胞を生じ得たことを観察したという基準(criterion)であった。
[0051] 本発明の態様において、CD34+細胞のインビボ内皮細胞形成能力は、CD34+CD133−KDR−細胞の存在によるものであり、そしてオプションとしては、このサブセット内のTie−2の発現による。本発明の別の態様において、CD34+CD133−KDR+細胞とCD34+CD133+KDR−細胞の組み合わさった存在は、可能性としてCD34+CD133−KDR−サブセットの組み合わせであり、内皮細胞分化に必要かもしれない。
[0052] 予測に反して、CD34+CPCサブセットはECに分化する上、マウスの血管のMatrigel(登録商標)への内部への成長(ingrowth)も刺激した。細胞外マトリックス成分と成長因子のその組成物により血管新生性であったが、Matrigel(登録商標)自体(はだかのMatrigel(登録商標))は、14日の観察期間の間にマウスの血管の内部成長を誘導しなかった(実施例3と実施例5)。
[0053] CD34+CPCの移植は、2日で血管新生をもたらす。最初に、ヒトCD34+CPCがヒト内皮細胞に侵入する。続いて、ヒトCD34+CPCが宿主による血管内部侵入を誘導する。全てのCD34+ CPCサブセットが宿主血管新生を等しく誘導はしなかった。CD34+CD133−KDR−サブセットとCD34+CD133+KDR−サブセットが宿主血管新生に重要であった。大きな血管が最初にCD34+CD133−KDR−サブセットにおいて観察され、そしてより少ない程度にてCD34+CD133+KDR−サブセットにおいて観察された。さらに、これら2つのサブセットの組み合わせは相乗的でなく、サブセット単独に比べて高レベルの血管新生を導かなかった。さらに、CD34+CD133−KDR−とCD34+CD133−KDR+サブセットの組み合わせは、毛細血管の形成をもたらしたのみであり、小さい血管及び大きい血管の形成はもたらさなかった。初代毛細血管の誘導は虚血性心臓疾患を治療するのに有用かもしれない。
[0054] ここまでは、CPCが新規な血管を直接生じて損傷後に血管新生に寄与することができた細胞として考察された。本発明者らによる意外な観察は、CPCが局所脈管構造に対する変調機能を及ぼし得て、血管新生を発生させることを証明する。この発見は、改善された治療用血管新生に関する新規な展望を提供する。
[0055] 本発明の別の態様において、本発明の教示により単離されたCD34+CPCsは、単球/マクロファージ系列の炎症性細胞をMatrigel(登録商標)のマイクロ環境へ補充する。はだかのMatrigel(登録商標)はマウスのマクロファージの誘因をほとんど行使しなかったことから、Matrigel(登録商標)に対する低いグレードの外来身体反応(foreign body reaction)のみがマウントされたことを示す。CD133+細胞又はKDR+細胞を負荷されたMatrigel(登録商標)に対する炎症性応答ははだかのMatrigel(登録商標)のそれらを超えなかったので、これらのサブセットはそれら自身によりマクロファージの浸潤を変調しなかった。比較して、CD34+細胞を負荷されたMatrigel(登録商標)のマクロファージ浸潤は顕著に高かったため、これらの細胞の追加のマクロファージ誘因効果がMatrigel(登録商標)の効果に重ねられたことが示される。よって、CPCの機能は内皮細胞への分化のそれを超えて拡大するかもしれず、そして追加の治療用の含蓄を有するかもしれない。本発明のまた別の態様において、虚血性の心筋からの損傷シグナルにより補充された前駆細胞は、内皮細胞へ直接に分化して局所血管の成長を促進させることにより血管新生に寄与するのみならず、炎症性細胞を損傷したエリアに補充するのかもしれない。
[0056] 前炎症性化学誘引因子(pro−inflammatory chemoattractants)はCD34+前駆細胞により生産される。CD34+,CD133+及びKDR+3つ全てのサブセットが炎症関連サイトカイン/ケモカイン腫瘍ネクローシス因子−α(TNF−α)及びマクロファージ炎症性蛋白質−1α(MIP−1α)の転写物を含んだが、炎症性細胞を補充するのに必須のCD34+亜集団のみは高いレベルのヒトインターロイキン−8(IL−8)を発現した(KDR+細胞よりも3倍増加)。さらに、ヒトIL−8の単一の細胞による発現はMatrigel(登録商標)移植の14日後まで持続した。
[0057] 本発明者らによる驚くべき観察は、CD34,CD133及びKDRのようなマーカーの発現に以前はただ基づいていたCPCの存在する定義を書き換える必要性を指摘するが、なぜならば、これらの分子の発現パターンを変えた様々なサブセットが存在するからであり、等しく内皮細胞へ分化することができない。急性のMIは全ての検出された前駆細胞サブタイプの移動を導くことが、健康な個体及びaMI患者からのCPCサブセットにおける類似の遺伝子発現パターンから証明されたことから、CPCは損傷シグナルに適合可能に応答せず、むしろ、骨髄から受動的に放出されることを示す。最後に、CD34+前駆細胞は血管新生のポテンシャル並びに免疫変調ポテンシャルを有し、本発明の教示を用いて新規な治療戦略の生成に関して開発されるかもしれない。
[0058] 本発明の一つの態様において、4つのパラメーターの蛍光活性化細胞分類を用いて、血管形成細胞と炎症媒介細胞の両方を生じるCPCを同定する。本発明の4つのパラメーターは系列、CD34,CD133及びKDRである。
[0059] 本発明の一つの態様において、所望の細胞を規定するモノクローナル又はポリクローナルの何れかの抗体のカクテル又は混合物に細胞を暴露することにより、所望の細胞集団を含む細胞源を所望の集団及び不所望の集団に分離する。蛍光活性化細胞ソーターに、一つ又はそれより多い抗体が結合していた細胞を同定させるように、当該抗体に蛍光標識をコンジュゲートする。個々の抗体は、当業者によく知られている様々な蛍光標識(フルオロクローム)にコンジュゲートすることができる。本発明の一つの態様において、抗体は、同じか又は唯一の蛍光放射波長を有する一つ又はそれより多くのフルオロクロームに結合させることができる。各蛍光放射波長は色に対応する。例示のフルオロクロームは、限定ではないが、テキサスレッド(登録商標)(モリキュラープローブス、ユージーン、OR)、アロフィコシアニン、フィコエリスリン、フルオレセンイソチオシアネート、ローダミン、スペクトラルレッド(登録商標)(サザンバイオテック、バーミンガム、AL)、Cy−クローム、及びその他を含む。
[0060] 本発明の一つの態様において、内皮前駆細胞又は血中前駆細胞の源を、系列―関係付け(Lin+)細胞を定義する抗体のカクテルと接触させる。本発明の一つの態様において、この抗体のカクテルを全て同じフルオロクロームにコンジュゲートさせる。本発明の別の態様において、系列に関係付けられたマーカーは、限定ではないが、CD3,CD8,CD10,CD14,CD16/56,CD19,CD20,CD31及びCD33を含む。本発明の別の態様において、Lin+細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現する。本発明の別の態様において、系列非関係付けられた(前駆、Lin−)細胞は、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31を発現しない。
[0061] 本発明の別の態様において、Lin−細胞は、CPCの源をフルオロクローム標識された抗体のカクテルに接触させ、そして滅菌精製された細胞の集団が得られるように蛍光活性化細胞ソーター上で当該細胞を分類することにより、単離される。蛍光活性化細胞分類のプロトコルと方法は、容易に利用可能であって、当業者にはよく知られている。
[0062] 本発明の別の態様において、単離された前駆細胞は、Lin−細胞をCD34,CD133及びKDRに対するフルオロクローム標識抗体に接触させ、そしてCD34を発現するがCD133又はKDRを発現しないLin−細胞の集団を同定するために、標識細胞を分類することにより、得られる。本発明の一つの態様において、この分類工程は滅菌条件下で行われる。
[0063] 本発明の一つの態様において、単離された前駆細胞は、患者において新規の血管の形成を誘導するのに有用である。新規な血管は脈管形成(vasculogenesis)(胚性前駆細胞からの血管の形成)、血管新生(angiogenesis)(周囲の組織からの血管の内部成長)又は新血管新生の形成(formation of neovascularization)(それらが以前に存在しなかった新規な血管の形成)により形成することができ、存在する血管に結合する内皮前駆細胞から血管を形成することを含む。外傷、外科手術又は急性あるいは慢性の疾患によるケガのような新規な血管の形成を哺乳類が必要としているかもしれない多数の条件が存在する。非限定例においては、哺乳類が治癒を必要とする創傷を有するかもしれない。別の非限定例においては、患者が心臓血管外科手術、心臓血管血管形成術(cardiovascular angioplasty)、頸動脈血管形成術、冠動脈血管形成術を受けているかもしれず、全てが新規の血管形成を必要とする。別の非限定例においては、心筋梗塞、例えばaMIの患者は新規な血管形成の必要がある。新規の血管形成を必要とするかもしれない別の条件は、鎌状赤血球貧血及び地中海貧血を含む。
[0064] 本発明の別の態様において、単離された前駆細胞は、新規な血管形成の必要な部位へ細胞の優先的移動を可能にするあらゆる経路又は方法により、新規な血管形成の必要のある哺乳類へ投与することができる。例示の投与経路は、限定ではないが、生物適合性溶液又は生物分解性生物適合性マトリックス中の前駆細胞の、全身投与、例えば、静脈内注射、局所移植、例えば局所筋肉内又は皮下注射を含む。生物適合性溶液は当業者に知られている。生物分解性生物適合性マトリックスの例は、限定ではないが、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様サブストレートを含む。
[0065] これらの実施例は、本発明の一つ又はそれより多くの態様を例示することを意図し、以下に記載されるものに発明を限定することを意図しない。
【0008】
実施例1
4つのパラメーターのフローサイトメトリーによる7つのCPCの同定
[0066] 3つの血中前駆細胞(CPC)マーカーであるCD34,CD133及びKDRの組み合わされた発現のパターンに基づく内皮前駆細胞(CPC)の表現型上の不均一性を、4つのパラメーター(3色)フローサイトメトリー分析を用いて分析した。
[0067] 単核細胞をヘパリン化血液からリンフォプレップ密度勾配遠心分離(ナイコメッド、オスロ、ノルウエー)により単離した。表現型に拘わらず血中前駆細胞(PC)の数は低いため、系列陰性(Lin−)細胞、即ち、非関係付けの有力なPCsを、全末梢血単核細胞(MNC)から、高速フローサイトメトリー分類により富裕化し、Lin+細胞は捨てた(図6A)。全MNCを、CD3(T細胞),CD14(単球),CD19(B細胞),CD16/56(NK細胞)及びCD31(成熟内皮細胞)に対するフィコエリスリン(PE)−標識されたモノクローナル抗体(moAbs)(全てIQ社、グロニンゲン、オランダ)のカクテルで染色した。Lin−細胞は塩基性内皮培地(ベクトンディッキンソン、エレンボーデゲム−アルスト、ベルギー)中で高速フローサイトメトリーによりMoFlo細胞ソーター(サイトメーション、フォルトコリンズ、CO)を用いて分類した。得られたLin−集団は典型的にはLin+細胞が95−98%フリーであって、全MNCの平均11.3%を占めるが(0.6−22.4%の範囲)、一方健康なからだにおいては(hc,n=9)平均3.0%のMNCがLin−であった(平均1.0−5.5%;P=0.0003)(図6A)。
[0068] CPCマーカーCD34,CD133及びKDRの発現パターンを決定するため、分類されたLin−細胞をCD34−アロフィコシアニン(APC)(クローン581、IQ社)、CD133−PE(ミルテニイバイオテック、ドイツ)及びウサギポリクローナル抗KDRフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(シグマケミカルズ社)を用いた3色染色に供した。
[0069] Lin−集団内では、3つのマーカーCD34,CD133及びKDRの一つを発現する細胞をゲートに通し(gated)、残りの2つのマーカーの発現を分析した(図6B:CD34,図6C:CD34,図6D:KDR)。このアプローチを用いて、7つのCPCサブセットをCD34,CD133及びKDRの組み合わされた発現に基づいて検出した。3重陰性細胞はEPCと考えなかった。7つのサブセット全てがaMI患者及び健康な対照に存在した。
[0070] CD34+集団は、主に、CD34+CD133+KDR−細胞(aMI,全CD34+細胞の平均62%、33−89%の範囲;健康な対照、平均38%、範囲24−50%)及びCD34+CD133−KDR−細胞(aMI,全CD34+細胞の37%、10−61%の範囲;健康な対照、平均60%、範囲0.1−0.8%)からなったが、3重陽性サブセット及びCD34+CD133−KDR+サブセットはこの集団を1%も占めなかった(図6C)。
[0071] aMI患者のCD133+集団においては、CD34+CD133+KDR−細胞(全CD133+細胞の平均52%、33−89%の範囲)及びCD34−CD133+KDR−細胞(全CD133+細胞の平均28%、0.1−85%の範囲)が支配的であったが、健康な対照においては、CD34+CD133+KDR−細胞(平均38%、13−76%の範囲、1異常値(outlier)1%)及びCD34−CD133+KDR−細胞(平均58%、12−73%の範囲)が支配的なサブセットであった(図6B)。
[0072] aMI患者と健康な対照の間の違いはKDR+集団にも存在したが、aMI患者においては主にCD34−CD133−KDR+細胞(平均65%、1−95%の範囲)及びCD34−CD133+KDR+細胞(平均33%、3−71%の範囲)からなった(図6D)。健康な対照においては、CD34−CD133+KDR+細胞が支配的(平均93%、52−99%の範囲)であり、CD34−CD133−KDR+サブセットは全KDR+細胞のほんの約5%しか含まなかった(図6D)。
【0009】
実施例2
aMI患者と健康な対照におけるCPCの数
[0073] 10人のaMI患者と9人の健康な対照ボランティアをEPCの数に関して比較することにより、7つのCPCサブセット中の細胞の数がaMIの事象に相関したか否かを決定した。CPCの数とaMIの間の可能性のある相関は、(CPCが検出されたうちの)Lin−細胞の数に反映された。Lin−細胞の数を2つの被験者群の間で比較した。aMI患者においては、Lin−細胞の数が平均2.6x105細胞/mL血液であり(範囲0.2−4.7x105細胞/mL血液)、健康な対照(平均0.5x105細胞/mL血液、範囲0.04−1.4x105細胞/mL血液)よりも有意に高く(P=0.001)(図7)、対照と比較してaMI患者において5.2倍高い数のLin−細胞に等しかった。
[0074] CD34,CD133又はKDRを発現するCPCの数をaMI患者と健康な対照において比較した。3つ全てのサブセット中のCPCの数は健康な対照に比べてaMI患者において有意に高かった。CD34サブセットにおいては、健康な対照(平均0.3x104細胞/mL血液、0.06−1.2x104細胞/mL血液)に比較すると、8.6倍高い数の細胞がaMI患者において見いだされた(平均2.6x104細胞/mL血液、2.1−11.0x104細胞/mL血液、P=0.005)。CD133サブセットにおいては、健康な対照(平均0.3x104細胞/mL血液、0.07−0.7x104細胞/mL血液)に比較すると、11.6倍高い数の細胞がaMI患者において見いだされた(平均3.5x104細胞/mL血液、0.5−13.5x104細胞/mL血液、P=0.0001)。最後に、KDRサブセットにおいては、健康な対照(平均0.2x104細胞/mL血液、0.009−0.8x104細胞/mL血液)に比較すると、6.2倍高い数の細胞がaMI患者において見いだされた(平均1.3x104細胞/mL血液、0.03−5.8x104細胞/mL血液、P=0.005)。
[0075] 可能性として損傷した心筋の血管の修復のために、aMIが特定のCPCサブセットの移動を誘発したか否かを確認するため、7つのサブセットの中のCPCの数を測定した。全7サブセットにおいて、それらの表現型に拘わらず、健康な対照に比べて有意に高いCPC数がaMI患者に存在した(図8)。患者レベルにおいては、特定のサブセットの中のCPC数の異常値(outliers)が容易に明白であるが、これらの患者においてCPC数は全7CPCサブセットにおいて一貫して高くはなかった。
[0076] CPCの数がそれらの表現型に拘わらずaMI患者において増加しており、心臓血管の損傷とCPC補充の間の原因となるリンクを示唆するため、CPC数と疾患のパラメーターの間の相関を探求した(表2)。15人のaMI患者と安定な狭心症の10人の患者をこの分析に含めた。心臓血管疾患(CVD)の病歴は、患者におけるCVDのエピソードを示す。aMIの数は現在のaMIエピソードの数を示す。表2に掲載したaMIのリスク因子に加えて、年齢(>60歳)と男性はaMIのリスク因子と考えたため、全部で6人の可能性のあるリスク因子をもたらす。累積のリスク因子は、用意した患者に存在するこれら6つの可能なリスク因子の数を示す。
[0077] 様々なサブセットと年齢におけるCVD数とリスク因子又は虚血時間の蓄積した数の間には相関がなかった。さらに、EPC数と血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチンホスホキナーゼ心筋バンド(CKMB)又はトロポニンの間にも相関はなかった。
【0010】
【表2】
【0011】
実施例3
CVDサブセットの血管形成活性
[0078] この実験は、主に成熟内皮細胞(EC)への分化に関して、インビボにおけるCPCサブセットの挙動を調査した。CD34,CD133又はKDRの何れかを発現するCPCを200μLのMatrigel(登録商標)内に保存して、10ngの塩基性繊維芽細胞成長因子(b−FGF,ケミコン、テメキュラ、CA)及び12Uのヘパリン(レオファーマ、ボーラーアップ、デンマーク)を5,000から15,000細胞/移植物にて添加して、ヌードマウスに皮下移植した。はだかのMatrigel(登録商標)はb−FGFおよびヘパリン添加物を含む。14日後に、Matrigel(登録商標)ペレットを外植し、液体窒素中で免疫組織化学のため部分的にスナップ凍結するか、又は0.1Mリン酸ナトリウムバッファー中の2%パラホルムアルデヒド中で固定し、脱水し、そして樹脂(Technovit 8100,ヒーリアスクルツァー、ヴエアーハイム、ドイツ)に埋め込んだ。全体の形態の評価のために、樹脂に埋め込まれたMatrigel(登録商標)のペレットの切片2μmをトルイジンブルーで染色した。移植物の形態分析は、移植の14日後にCD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)において高い細胞性(cellularity)が存在したことを示した(図2B)。細胞性はCD133+−負荷Matrigel(登録商標)において顕著に低く(図2C)、そしてKDR+細胞を植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)においては最小であった(図2A)。紡錘形態の細胞からなるネットワーク構造は毛細管ネットワークに酷似しており、CD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)において豊富であったが、CD133+細胞、KDR+細胞を植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)においては事実上不在であった。
[0079] これらのネットワーク構造がヒトPCにより形成されたか否かを決定するために、Matrigel(登録商標)切片を、ヒトECには特異的に結合するがマウスECには結合しないUEA−1で染色した(図3A,B)。ヒト臍帯血内皮細胞(HUVEC)をUEA−1染色のための陽性対照として用い(図3A)、そしてH5V細胞(マウスEC系)を陰性対照として用いた(図3B)。CD34+移植物のネットワーク構造はUEA−1に関して陽性である;しかしながら、UEA−1陽性細胞は、他のサブセットを植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)において存在しなかった。
[0080] UEA−1染色はインビボにおけるMatrigel(登録商標)中のネットワーク構造のヒトオリジンを証明したが前駆ECと成熟ECの間を識別できないため、外植物をEPC/ECマーカーCD34及びEC成熟マーカーCD31により染色した。CD34+EPCを植えたMatrigel(登録商標)中では、紡錘形態の細胞が場合によりネットワーク構造に配置されてUEA−1による染色後に観察される細胞に類似しており、ヒトCD34に関して陽性であった(図3D)。CD31は、CD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)における形態に類似した細胞上に存在した(図3E)。CD34もCD31も、CD133+CPC,KDR+CPCを植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)にて検出できなかった。
【0012】
実施例4
インビボCPCサブセットに対する血管新生の誘導と炎症性応答
[0081] CD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)中に検出された全ての細胞がヒトECマーカーに関して染色されなかったため、それらがマウスECであったか否かを調査した。免疫組織化学を用いて、マウスの血管と炎症性細胞を、マウスCD31(サザンバイオテック、バーミンガム、AL)及び単球/マクロファージ(MoMa,セロテック、オックスフォード、UK)に対して向けられたラットモノクローナル抗体を用いて検出した。強い宿主由来の血管新生応答が、ヒトCD34+細胞を植えたMatrigel(登録商標)に対して検出された(図4B,E)。しかしながら、ヒトCD133+細胞を含むMatrigel(登録商標)は弱いマウス血管新生応答を誘発し(図4C,F)、KDR+細胞を植えたMatrigel(登録商標)又ははだかのMatrigel(登録商標)の移植に際しての血管新生反応は下限に近かった(図4A,D)。ヒトCD34+細胞に対するマウスMoMa+炎症性細胞の強い流入と他の2つのサブセットに対する弱い応答(図4D−F)が5つの全ての試験された被験者において観察され(2人のaMI患者、3人の健康な対照)、そしてaMI患者からのCPCと健康な対照からのCPCの間に差異はなかった。ヒト単球(CD14+細胞)又はマクロファージ(CD68+,図4E挿入図)に対して差異は検出されなかった
実施例5
CD34+サブセットの血管新生に対する効果
[0082] CD34+CPCを実施例1に記載されたとおりに単離し、ヨウ化プロピジウム染色を含めることにより、生きた細胞のみが単離されたことを保証した(図9)。4つのCD34+サブセットが、さらにCD34+集団:CD34+CD133−KDR−(+――);CD34+CD133+KDR−(++―);CD34+CD133−KDR+(+―+);CD34+CD133+KDR+(+++)から単離された。4つのCD34+CPCサブセットを追加されたMatrigel(登録商標)に懸濁して、実施例3に記載されるとおりにヌードマウスに移植した。単一のサブセット又は混合された集団を表3の実験セットアップに従いマウスに移植した。
【0013】
【表3】
【0014】
[0083] 全体の組織学上の評価のため、2μmの切片を樹脂埋め込みMatrigel(登録商標)沈殿物から調製してトイジンブルーにより染色した。血管の数を数え、そして調査した組織の面積に関して補正し、平方マイクロメーターあたりの血管の数を出した。血管は以下の通りに定義される:大きな血管は赤血球を含み、平滑筋に囲まれる;中間の血管は赤血球と平滑筋からなる;そして毛細血管。
[0084] レクチンの内皮への特異的結合を用いて、ヒト及びマウスの内皮細胞両方の存在を検出した。レクチンUEA−1はヒト内皮とBS−1レクチンに特異的に結合し(Bandeiraea simplicifolia−1,シグマ)、マウス内皮に選択的に結合する。さらに、内皮細胞のマーカーであるCD31に対して特異的に向けられた抗体を用いた。検出はABCキット(ベクターラブス(Vector labs))及びアミノ−エチルカルバゾール(AEC)を用いて成し遂げた。CD31−陽性細胞の数を数えて組織の面積に関して補正した。
[0085] CD34+CPC含有Matrigel(登録商標)は、はだかのMatrigel(登録商標)に比較して血管新生を増加させた。ヒトCD31に関してこれらのMatrigel(登録商標)沈殿物を染色することは、未成熟内皮細胞を示す大きなCD31−陽性細胞クラスターの存在を証明する(図10A)。これらのクラスターは、主に、CD34+CD133−KDR−及びCD34+CD133+KDR−サブセットに存在した。血管様構造に関連した少数のヒトCD31−陽性細胞はCD34+CD133−KDR−サブセットに観察された(図10B)。
[0086] ヒトCPCsはヒト血管に分化しなかったが、CD34+ヒトCPCサブセットは宿主マウスの血管新生の誘導性作用を提供した。CD34+CPC−負荷Matrigel(登録商標)においてマウスCD31−陽性脈管構造の発生の増加があり、血管のサイズは毛細血管から大きな血管までの範囲であった(図11)。
[0087] マウスCD31−陽性血管の数/mm2(毛細血管、小さい血管及び大きな血管を含む)を表3に掲載した5つの実験群に関して測定した(図12)。血管の同定の基準は、毛細血管が1−2内皮細胞を有する;小さな血管が3−5内皮細胞を有する;そして大きな血管が5より多い内皮細胞を有し、そして血管の周囲に血管平滑筋を有するかもしれない。CD34+CPCサブセットは、はだかのMatrigel(登録商標)を超えて、高いレベルの宿主マウス血管新生を誘導した。もっとも高いレベルの血管新生は、CD34+CD133−KDR−及びCD34+CD133+KDR−サブセットに観察された。大きな血管は主にCD34+CD133−KDR−サブセットに観察され、そしてCD34+CD133+KDR−サブセットにおいては、より程度が劣った。さらに、これら2つのサブセットの組み合わせは相乗的ではなく、サブセット何れか単独よりも高いレベルの血管新生を導かなかった。さらに、CD34+CD133−KDR−サブセットとCD34+CD133+KDR−サブセットの組み合わせは毛細血管の形成のみをもたらし、小さな血管及び大きな血管の形成をもたらさなかった。
【0015】
実施例6
aMI患者と健康な対照のCPC転写プロファイル
[0088] 以前の研究は、CPCがそれらの分化及び機能に関連したマーカーの一団を発現し得ることを示す。上記の4パラメーターフローサイトメトリー分析は単一のCPCに対する3つのCPCマーカーの同時評価を可能にするが、このアプローチはこれまで知られている全てのCPCマーカーをカバーしない。よって、定量性RT−PCRを用いることにより、CPC分化、成熟及び機能に関連した転写物の数の存在及び発現レベルを調査して、何れの因子がCD34+CPCにおいて観察された前血管新生及び前炎症効果に介在したのかを決定した。
[0089] 全RNAを所望の表現型(CD34+,CD133+及びKDR+)及びランダムヘキサマーからの103−104CPCから単離し、そしてコピーのDNAを合成した。ヒトGAPDK,ベータ−2−マイクログロブリン(B2M)、ベータ−アクチン、c−abl,CD34,CD133,Tie−1,Tie−2,flt−1,KDR,VEGF,CD31,VE−カドヘリン、フォンワイルブランド因子(vWF)、インターロイキン−8(IL−8)、腫瘍ネクローシス因子−α(TNF−α)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ炎症性蛋白質−1α(MIP−1α)、マクロファージ化学誘因性蛋白質−1(MCP−1)、MCP−2及びMCP−3に関するプライマー/プローブセット(TaqMan,アプライドバイオシステムズ、フォスターシティー、CA)をCPC転写分析に用いた。3重のRT−PCR反応を等量のcDNAに対して以下のパラメーターを用いて実施した:2分50℃、10分95℃そして45サイクルの15秒の変性(95℃)そして1分のアニーリング/伸長合成(60℃)。組み合わされたcDNA合成とPCRの変量(SD)は、GAPDHハウスキーピングmRNAに関して0.5CT未満(サイクル閾値)であった。サイクル閾値の値をベータ−2−マイクログロブリンに対して△CT法を用いて標準化し、そして患者と対照の間又はサブセット間の発現レベルの差異を発現の倍分散(fold variance)として表現si,2−△△CTとして計算する(Livak KJ et al.Analysis of relative gene expression data usi real−time quantitative PCR and the 2−△△C Method.Methods.25:402−8,2001)。
[0090] CPCの成熟と機能に関与する可能性のある14のマーカーのmRNA転写物の存在を決定するためのRT−PCRの結果を表4に示す。遺伝子発現に関して個人間の変化があったので、与えられたCPCサブセットにおける遺伝子の発現を少なくとも3/5被験者におけるPCR産物の存在として規定した(即ち、CT値<45)。この規定に基づくと、aMI患者と健康な対照の遺伝子発現プロファイルは類似していた。
【0016】
【表4】
【0017】
[0091] 3つのCPCサブセットを比較すると、遺伝子発現の獲得は、KDR→CD133→CD34の順なのが明確であった。Tie−1,CD34そして健康な対照においてはCD133とvWF転写物がCD133サブセットには存在したが、KDRサブセットには存在しなかった。Flt−1転写物はKDR+サブセットにおいて検出可能であったが、CD133+細胞には不在であった。CD34+サブセットにおいては、Tie−2,flt−1,CD133そしてaMI患者においては、CD34が、KDR+及びCD133+細胞との比較において獲得された。
[0092] 炎症関連分子の転写物GM−CSF,MCP−1,CMP−2及びMCP−3は、全てのサブセットにおいてPCT検出限界を下回った。TNF−αとMIP−1α転写物は類似の量でCD34+CPCとKDR+CPC存在した。インターロイキン−8(IL−8)は、全ての含まれる個体からのCD34+転写物に存在した。KDR+CPCにおいては、しかしながら、IL−8転写物が5人の個体のうちの2人にしか見いだされなかった。さらに、IL−8転写物レベルは、CD34+サブセットにおいてKDR+サブセットにおけるよりも3倍高かった。インターロイキンー8転写物は、ヌードマウスにおいてMatrigel(登録商標)中で、分類直後及び移植14日後の両方においてCD34+CPCに見いだされた。
[0093] 他に示さなければ、明細書及び特許請求の範囲において用いられる、成分の量、特性、例えば分子量、反応条件等を表す全ての数字は、用語「約」により全ての例において修飾されるものとして理解される。従って、反対を指示しなければ、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示された数値パラメーターは、本発明において得られることが求められている所望の特性に依存して変更してよい近似値である。少なく見ても、そして特許請求の範囲への均等な学説を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、報告された顕著なディジットの数の見地から、そして通常のラウンディング技術を適用することにより、少なくとも構築されるべきである。発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターが近似しているにも拘わらず、特定の実施例において示された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、如何なる数値も、それらの試験測定において見いだされる標準偏差から必然的にもたらされる一定の誤差を本来は含む。
[0094] 発明を記載するコンテクストにおいて用いられる用語「a」及び「an」及び「the」及び類似の関係語(特に、以下の特許請求の範囲のコンテクストにおいて)は、他に示さない限り単数及び複数の両方をカバーすることを意図する。本明細書に記載された値の範囲の詳説は単にその範囲内に該当する各々の別々の値を個々に言及する速記法として機能することを意図する。他に示さなければ、各々の個別の値は個別に詳説されたごとくに明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、他に示さない限り又はコンテクストにより明確に否定されない限り、あらゆる適切な順序にて実施され得る。本明細書に提供される全ての実施例、又は例示の用語(例えば、「such as」)の使用は、発明を良好に例示することを単に意図するものであり、他に請求された発明の範囲の限定の態度を取るのではない。明細書中の言語は発明の実施に必須のあらゆる請求されない要素を示すものとして解釈されるべきである。
[0095] 本明細書に開示された発明の別の要素又は態様のグループ分けは、限定と解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又は本明細書に見いだされるグループの他のメンバー又は他の要素とのあらゆる組み合わせにおいて、言及されて請求されてよい。一つ又はそれより多くのグループメンバーが、便利性及び/又は特許性の理由に関してグループないに含まれるか又はグループから削除してよいことが認識される。そのような包含又は削除の如何なるものが起きたときも、明細書はここでは修飾されたものとしてグループを含むと見なされ、即ち、特許請求の範囲内で使用される全てのマーカッシュグループの書かれた記載を実行する。
[0096] この発明の好ましい態様は本明細書に記載されており、発明を実施するために発明者らに公知のベストモードを含む。もちろん、それらの好ましい態様におけるバリエーションは上記記載を読んだ当業者には明らかである。発明者は当業者がそのようなバリエーションを適切なものとして用いることを期待し、そして発明者は、発明が、本明細書にて特別に記載されたよりも他に実行されることを意図する。従って、この発明は、適用可能な法律により許可される添付の特許請求の範囲に詳説された主題の全ての修飾物と均等物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記の要素のあらゆる組み合わせが、他に示さない限り又は他にコンテクストにより否定されない限り、発明に包含される。
[0097] さらに、数値のレファレンスはこの明細書を通して特許及び印刷された刊行物に対してなされた。上記の引用されたレファレンスと印刷された刊行物の各々は、それら全てを引用により別個に本明細書に取り込む。
[0098] 終わりに、本明細書に開示された発明の態様が本発明の原理の例示であることは、理解されるべきである。採用されるかもしれない他の修飾は発明の範囲内である。即ち、例示の目的で、しかし限定ではなく、本発明の別の配置を本明細書内の教示に従い利用してよい。従って、本発明は示されて記載された通りに正確に発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】[0023] 図1は、フローサイトメトリーにより測定された、本発明の教示に従いLin−,CD34,CD133又はKDRとして規定された、急性心筋梗塞の患者(aMI,n=10)、安定狭心症(sAP、n=10)及び健康な対照(hc,n=9)からの末梢血中の血中前駆細胞(CPC)の数を描写する。
【図2】[0024] 図2は、本発明の教示に従い14日後にヌードマウスに移植されたMatrigel(登録商標)ペレット中に分類されたCD34+又はCD133+の何れかのヒトCPCサブセットのインビボの挙動を描写する。(A)はだかのMatrigel(登録商標);(B)CD34+細胞を含むMatrigel(登録商標)、及び(C)CD133+細胞を含むMatrigel(登録商標)。矢印は、有力なEPCと考えられた紡錘細胞により形成された代表的なネットワーク構造を示す。対物レンズ40倍。
【図3】[0025] 図3は、本発明の教示に従い、ヌードマウスに移植されたMatrigel(登録商標)ペレットに封入された(enclosed)単離CPC上のヒト内皮前駆マーカーの形態上の検出を描写する。パネルA−Cにおいて、ヒト内皮細胞(EC)をレクチンUlex europeus−1アグルチニン(TRITCにコンジュゲートされたUEA−1)、ヒト−及びEC−特異的レクチンにより検出された;(A)ヒト臍帯血内皮細胞(HUVEC)陽性細胞;(B)マウスEC細胞系(H5V)陰性対照;(C)ヒトCD34+EPC結合UEA−1レクチンと植えられた(seeded)Matrigel(登録商標)中の細胞。UEA−1結合細胞は紡錘形であり、そして接触させた(矢印)。パネルD−Eにおいては、(D)ヒトCD34(EC,EC)、及び(E)CD31(EC)に関して染色することによりEC表現型を確認した。陽性の内皮細胞を矢印で示す。挿入物は、ヒト血管の追加の例を示す。対物レンズ40倍。
【図4】[0026] 図4は、Matrigel(登録商標)中でヌードマウスに移植された、本発明の教示に従い単離された、ヒトCPCサブセットに対するマウスの血管新生及び炎症の応答を描写する。Matrigel(登録商標)中のマウスの血管の形成は、マウスCD31に特異的なモノクローナル抗体を用いて検出した(A−C)。マウス単球/マクロファージは、それらの細胞に特異的なモノクローナルにより検出した(D−F)。パネルE中の挿入物は、切片中のヒトCD68+マクロファージにより検出した。対物レンズ40倍。
【図5】[0027] 図5は、Matrigel(登録商標)中でヌードマウスに移植された、本発明の教示に従い単離された、CD34+細胞中のインターロイキン−8(IL−8)の検出を描写する。インターロイキン−8発現は、分類直後(A)及び移植の14日後(B)に測定した。対物レンズ40倍。
【図6A】[0028] 図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図6B】図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図6C】図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図6D】図6は、本発明の教示に従いaMI(n=10)の患者及び健康な対照からの末梢血中のCPCサブセットの封入された分析を描写する。系列陰性(Lin−)(A)細胞集団をCD34,CD133及びKDRに対する抗体を用いて染色し、そして3つのマーカーの各々を発現する細胞を残りの2つのマーカーに関してゲート化して分析した。(B)CD133分析;(C)CD34分析;(D)KDR分析。
【図7】[0029] 図7は、Lin−,CD34+,CD133+又はKDR+として規定されたサブセットとして、aMI(n=10)及び健康な対照(hc,n=9)からの末梢血中のCPCの数を描写する。点は個体を表す;水平線は中央値を表す;平均に基づいて倍数増加。P=p値。
【図8】[0030] 図8は、aMI(n=10)及び健康な対照(hc,n=9)における本発明の教示に従って定義された7つのCPCサブセットの、フローサイトメトリー分析により測定された細胞の数を描写する。水平線は中央値を表す;平均に基づいて倍数増加。
【図9】[0031] 図9は、本発明の教示に従う、4つのCD34+CPCサブセット、又はサブセットの組み合わせの、フローサイトメトリー分類を描写する。(A)CD34+CD133+KDR−;(B)CD34+CD133+KDR+;(C)CD34+CD133−KDR−;(D)CD34+CD133−KDR+。
【図10】[0032] 図10は、ヌードマウスにおける移植14日後の、本発明の教示に従う、CD34+CPC−負荷されたMatrigel(登録商標)中のヒトCD31−陽性細胞の存在を描写する。(A)ヒトCD31−陽性細胞クラスターと成熟表現型;(B)血管様構造中のヒト、CD31−陽性細胞。
【図11】[0033] 図11は、ヌードマウスにおける移植14日後の、本発明の教示に従う、CD34+CD133−KDR−CPC−負荷されたMatrigel(登録商標)中のマウスCD31−陽性細胞の存在を描写する。毛細管(矢印)から小(星印)及び大(挿入が(inset))までの範囲の異なるサイズの血管を検出した。両イメージ(大と小)をMatrigel(登録商標)ペレットの同じ切片の同じ拡大にて撮った。
【図12】[0034] 図12は、ヌードマウスにおける移植14日後の、本発明の教示に従う、CD34+サブセットからのCD34+CPCを負荷されたMatrigel(登録商標)中のマウスCD31−陽性血管/nm2の定量を描写する。(A)毛細管、(B)小さい血管及び(C)大きい血管。++−,CD34+CD133−KDR+;+――,CD34+CD133−KDR−;+++,CD34+CD133+KDR+;+―+,CD34+CD133−KDR+;B,そのままのMatrigel(登録商標)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内皮前駆細胞を単離する方法であって、
前駆細胞を、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31からなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクロームで標識された抗体に接触させて前駆細胞の源から系列に関係付けられた(lineage−committed)細胞を割り出し(identifying);
系列陰性(lineage−negative)細胞の集団を形成するように蛍光活性化細胞分類により系列に関係付けられた細胞を枯渇させ;
系列陰性細胞をCD34,CD133及びKDRからなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクローム標識抗体に接触させるが、その際、各抗体は唯一の放射波長を有するフルオロクロームにより標識されており;そして
標識された系列陰性細胞を3色蛍光活性化細胞分類により分類することにより、内皮前駆細胞の集団を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
前駆細胞の源が哺乳類源である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
哺乳類源がヒト源である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前駆細胞の源が末梢血である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
割り出す(identifying)工程が、細胞マーカーCD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31に特異的な抗体に前駆細胞を接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
反応工程が、細胞マーカーCD34,CD133及びKDRに特異的な抗体と系列陰性細胞を反応させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
内皮前駆細胞がCD34を発現する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
内皮前駆細胞が血管生成細胞、炎症媒介性細胞、又は両方である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
血管生成細胞がCD34+の内皮前駆細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
血管生成細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
炎症媒介性細胞がCD34+の内皮前駆細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
炎症媒介性細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
炎症媒介性細胞がインターロイキン−8を発現する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
内皮前駆細胞が周囲の血管仲に血管新生応答を誘導する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
処置部位において血管新生を誘導する治療用組成物であって、
その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性マトリックス
を含む組成物。
【請求項16】
CD34+内皮前駆細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項15記載の治療用組成物。
【請求項17】
生物分解性の生物適合性マトリックスが、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様基質からなる群から選択される、請求項15記載の治療用組成物。
【請求項18】
処置部位において炎症媒介性細胞に対して走化性効果を有する治療用組成物であって、
その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性マトリックス
を含む組成物。
【請求項19】
CD34+内皮前駆細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項18記載の治療用組成物。
【請求項20】
生物分解性の生物適合性マトリックスが、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様基質からなる群から選択される、請求項18記載の治療用組成物。
【請求項21】
内皮前駆細胞の単離された集団であって、系列陰性でありかつCD34+である単離集団。
【請求項22】
系列陰性でありかつCD34+CD133−KDR−である、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団
【請求項23】
単離された集団が血管生成細胞を含む、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団。
【請求項24】
単離された集団が炎症媒介性細胞を含む、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団。
【請求項25】
単離された集団が周囲の血管において血管新生応答を誘導する、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団。
【請求項1】
内皮前駆細胞を単離する方法であって、
前駆細胞を、CD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31からなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクロームで標識された抗体に接触させて前駆細胞の源から系列に関係付けられた(lineage−committed)細胞を割り出し(identifying);
系列陰性(lineage−negative)細胞の集団を形成するように蛍光活性化細胞分類により系列に関係付けられた細胞を枯渇させ;
系列陰性細胞をCD34,CD133及びKDRからなる群から選択される細胞マーカーに特異的な、多数のフルオロクローム標識抗体に接触させるが、その際、各抗体は唯一の放射波長を有するフルオロクロームにより標識されており;そして
標識された系列陰性細胞を3色蛍光活性化細胞分類により分類することにより、内皮前駆細胞の集団を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
前駆細胞の源が哺乳類源である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
哺乳類源がヒト源である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前駆細胞の源が末梢血である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
割り出す(identifying)工程が、細胞マーカーCD3,CD14,CD16/56,CD19及びCD31に特異的な抗体に前駆細胞を接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
反応工程が、細胞マーカーCD34,CD133及びKDRに特異的な抗体と系列陰性細胞を反応させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
内皮前駆細胞がCD34を発現する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
内皮前駆細胞が血管生成細胞、炎症媒介性細胞、又は両方である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
血管生成細胞がCD34+の内皮前駆細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
血管生成細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
炎症媒介性細胞がCD34+の内皮前駆細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
炎症媒介性細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
炎症媒介性細胞がインターロイキン−8を発現する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
内皮前駆細胞が周囲の血管仲に血管新生応答を誘導する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
処置部位において血管新生を誘導する治療用組成物であって、
その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性マトリックス
を含む組成物。
【請求項16】
CD34+内皮前駆細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項15記載の治療用組成物。
【請求項17】
生物分解性の生物適合性マトリックスが、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様基質からなる群から選択される、請求項15記載の治療用組成物。
【請求項18】
処置部位において炎症媒介性細胞に対して走化性効果を有する治療用組成物であって、
その中に配分されたCD34+内皮前駆細胞を有する生物分解性マトリックス
を含む組成物。
【請求項19】
CD34+内皮前駆細胞がCD34+CD133−KDR−の内皮前駆細胞である、請求項18記載の治療用組成物。
【請求項20】
生物分解性の生物適合性マトリックスが、可溶化されたベースメント膜、自己血小板ゲル、コラーゲンゲル又はエラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外マトリックス及び繊維状蛋白質に基づくコラーゲン様基質からなる群から選択される、請求項18記載の治療用組成物。
【請求項21】
内皮前駆細胞の単離された集団であって、系列陰性でありかつCD34+である単離集団。
【請求項22】
系列陰性でありかつCD34+CD133−KDR−である、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団
【請求項23】
単離された集団が血管生成細胞を含む、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団。
【請求項24】
単離された集団が炎症媒介性細胞を含む、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団。
【請求項25】
単離された集団が周囲の血管において血管新生応答を誘導する、請求項21記載の内皮前駆細胞の単離された集団。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−509678(P2008−509678A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525866(P2007−525866)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028923
【国際公開番号】WO2006/020954
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028923
【国際公開番号】WO2006/020954
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]