説明

内袋複合容器

【課題】分別廃棄が従来に比べて容易に行える内袋複合容器を提供する。
【解決手段】充填物を収納する袋形状で樹脂製の内側容器111を備えるとともに、地板123が巻き締められ上記内側容器を収納する胴体122と、上記胴体の開放端に対して着脱可能な天板124とを有し外側容器に相当する鋼製のペール缶121を備えた。該構成により、胴体に対して天板は取り外し可能であり、分別処理が容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製の外側容器内に樹脂製の内側容器を設けた内袋複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品や薬品を収納するための鋼製容器では、上記食品や薬品が直接に鋼製容器内面に接触することによる腐食等の発生を防止するため、上記食品や薬品を収納する樹脂製の内側容器を鋼製の外側容器内に収納した、図5に示すような、内袋複合容器10の形態が採られる。
【0003】
該内袋複合容器10では、内側容器1は、本体部1aがポリエチレン製で袋状にて形成され、その上部には充填物を出入するための出入口1bが容器本体部と一体的に形成されている。尚、出入口1bの外周面は、雄ネジ形状に成形されている。
【0004】
一方、内袋複合容器10の外側容器2は、円筒状の鋼板にてなる胴体2aと、鋼板にてなる地板2bとが巻き締められて収納部が形成される。
そして、上記収納部内に、上記内側容器1を装填した後、鋼板製の天板2cに形成した開口から上記出入口1bを突出させた状態で、胴体2aと天板2cとが巻き締められ、鋼製の外側容器2内に樹脂製の内側容器1を収納した内袋複合容器10が作製される。このような内袋複合容器10に対して充填物を注入した後、天板2cから突出した出入口1bには、キャップ3が螺合され、充填物の密閉が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−45429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年になり、資源の再利用のため、及び環境への配慮等の観点から、物を廃棄する際には、材料に応じた分別廃棄が強く叫ばれている。
上述した内袋複合容器10についても例外ではなく、樹脂製の内側容器1と、鋼製の外側容器2とを分別して廃棄しようとする意識が非常に高まってきている。また、内袋複合容器10では、充填物が上述したような食品や薬品である場合が多く、衛生上あるいは特性上の問題から、内側容器1から充填物を排出後、同じ充填物を内側容器1へ再注入することはできない場合が多い。よって、内袋複合容器10は1回限りの使用が多く、充填物の排出後は、直ちに廃棄物になる場合が多く、廃棄量が多い。よって必然的に分別作業量も多くなってしまう。
【0007】
一方、内袋複合容器10では、上述したように、地板2bのみならず天板2cについても胴体2aに対して巻き締められて固定されており、地板2b及び天板2cは、胴体2aから容易には取り外すことができない。したがって、内側容器1と外側容器2とを分別するためには、つまり外側容器2から内側容器1を取り出すためには、例えば缶詰を開けるときと同様の要領にて、例えば天板2cを、その周囲に沿って切断していく方法が採られる。該作業は、非常に面倒で手間を要し、作業効率は極めて悪い。したがって、内袋複合容器10の分別廃棄率の向上を阻害する大きな要因の一つになっている。
【0008】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたもので、分別廃棄が従来に比べて容易に行える内袋複合容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における内袋複合容器は、充填物を収納する袋形状にてなり上記充填物の出入口を有する樹脂製の内側容器と、
地板が巻き締められ上記内側容器を収納する胴体、及び、上記胴体の開放端に対して着脱可能であり上記出入口が突出可能な開口を有する天板を有し、外側容器に相当する鋼製のペール缶と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
又、上記天板は、上記胴体に当該天板を締め付ける爪を有するラグタイプであってもよい。
【0011】
又、上記天板を、上記胴体に締め付ける固定バンドをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様における内袋複合容器によれば、樹脂製の内側容器を収納する鋼製のペール缶の天板は、胴体に対して着脱可能である。よって、当該内袋複合容器を廃棄するときには、胴体に対して天板は従来に比して容易に取り外すことができ、内側容器は、外側容器から容易に取り出すことができる。したがって、内袋複合容器の分別廃棄が従来に比して非常に容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における内袋複合容器の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における内袋複合容器の構成の他の例を示す図である。
【図3】図2に示す内袋複合容器の一変形例を示す図である。
【図4】図2に示す内袋複合容器の他の変形例を示す図である。
【図5】従来の内袋複合容器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態である内袋複合容器について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
図1には、本実施形態における内袋複合容器101が示されている。内袋複合容器101は、大きく分けて、樹脂製の内側容器111と、該内側容器111を収納する外側容器に相当する鋼製のペール缶121とを有する。
【0015】
内側容器111は、充填物を収納する袋形状にてなる本端部111aと、該本体部111aの上面に、例えば融着にて本体部111aと一体的に取り付けられ上記充填物の出入を行う出入口111bとを有する。本端部111a及び出入口111bを形成する樹脂材は、例えばポリエチレンであり、本体部111aは、例えばブロー成形にて作製することができる。
【0016】
ペール缶121は、JIS Z1620(1995)「鋼製ペール」に規定されるペール缶に相当し、その中でも、「天板取外し式」のラグタイプ及びバンドタイプのペール缶である。尚、図1は、上記ラグタイプを図示している。
このようなペール缶121は、大きく分けて、胴体122と、地板123と、天板124とを有する。胴体122は、鋼板を円筒状に成形しシーム溶接されて形成される。また、胴体122における外周面の対向位置には、図示するように、取っ手(つる)128が取り付けられている。地板123は、胴体122に巻き締められて固定され、コップ状の容器部が形成される。また、該容器部の開放端における胴体122には、カール122aが形成される。天板124は、鋼板にて形成され、胴体122に対して着脱可能な構成を有する。即ち、当該内袋複合容器101における天板124は、上述のラグタイプであり、天板124の周縁部には、胴体122に天板124を固定するため折り曲げ可能な複数の爪125が放射状に形成されている。また、天板124には、内側容器111の出入口111bが突出可能な開口124aが形成されている。
【0017】
尚、上記JIS Z1620には、ペール缶の種類として、さらに、胴体122にテーパーを付けたテーパーペールと呼ばれる「T」形と、胴体122がストレートである、ストレートペールと呼ばれる「S」形とが規定されている。本実施形態におけるペール缶121は、「T」形及び「S」形のどちらでも良い。
【0018】
このような構成部分を有するペール缶121において、胴体122の開放端側に内側容器111の出入口111bを配向した状態で、胴体122及び地板123にて形成されたコップ状の容器部内に内側容器111を装填する。そして、胴体122の上記カール122aに天板124を載置し、出入口111bを天板124の開口124aから突出させた状態で、天板124の爪125を上記カール122aに沿って折り曲げる。この折り曲げ作業により、天板124は、胴体122に固定される。また、天板124より突出している出入口111bには、図5に示すようなキャップ3が螺合される。以上のようにして、本実施形態の内袋複合容器101が完成する。
【0019】
一方、内袋複合容器101を分別廃棄するときには、カール122aへ係止させた天板124の爪125を引き起こすことで、天板124と胴体122との締結を解除する。これにより天板124は、胴体122から取り外すことができる。又、キャップ3を取り除き、内側容器111と、ペール缶121とを分離することができる。
【0020】
このように本実施形態の内袋複合容器101によれば、従来に比べて非常に容易に、内袋複合容器の分別廃棄を行うことが可能となる。上述したように、内袋複合容器は、1回限りの使用が多く、廃棄量が多い。したがって、本実施形態の内袋複合容器101のように、非常に簡単に分別作業が可能となることで、従来であれば分別されずに放置される件数を減少させることができ、資源の有効活用に大きく貢献することができ、かつ環境への配慮にも大きく寄与することが可能となる。
【0021】
図2には、上述したバンドタイプのペール缶126を有する内袋複合容器102が図示されている。図1の内袋複合容器101と、図2の内袋複合容器102との違いは、ペール缶121とペール缶126との違いであり、内側容器111に変更箇所は無い。ペール缶126と、上述のペール缶121との相違点は、天板の形状が異なる点、及び固定バンド131を用いる点であり、その他の構成は同じである。よって、ここでは、内袋複合容器102におけるペール缶126の天板127、及び固定バンド131に関する構成についてのみ説明を行う。
【0022】
天板127は、上述の天板124から爪125を除去した形状にてなり、内側容器111の出入口111bを突出させる開口127aを有する。
固定バンド131は、C字形のリング状部材131aと、該リング状部材131aに取り付けられたレバー部131bとを有する。リング状部材131aは、胴体122のカール122aに載置された天板127と、カール122aとを挟むコ字状の断面を有し、レバー部131bの操作により、内袋複合容器102に対して着脱可能となる。
【0023】
このような構成部分を有するペール缶126において、胴体122の開放端側に内側容器111の出入口111bを配向した状態で、胴体122及び地板123にて形成されたコップ状の容器部内に内側容器111を装填する。そして、胴体122の上記カール122aに天板127を載置し、出入口111bを天板127の開口127aから突出させた状態で、天板127の周縁部とカール122aとを固定バンド131のリング状部材131aにて挟み、レバー部131bを操作してリング状部材131aの締め付けを行う。この締め付け操作により、天板127は、胴体122に固定される。また、天板127より突出している出入口111bには、上記キャップ3が螺合される。以上のようにして、本実施形態の内袋複合容器102が完成する。
【0024】
一方、内袋複合容器102を分別廃棄するときには、固定バンド131のレバー部131bを操作してリング状部材131aによる締め付けを解除し、固定バンド131を内袋複合容器102から取り外す。これにより、天板127と胴体122との締結が解除され、天板127は、胴体122から取り外すことができる。又、キャップ3を取り除き、内側容器111と、ペール缶126とを分離することができる。
【0025】
このように、図2に示す内袋複合容器102においても、図1に示す内袋複合容器101の場合と同様に、従来に比べて非常に容易に、内袋複合容器の分別廃棄を行うことが可能となる。また、このように、非常に簡単に分別作業が行えることで、従来であれば分別されずに放置される件数を減少させることができ、資源の有効活用に大きく貢献することができ、かつ環境への配慮にも大きく寄与することができる。
【0026】
また、図2に示す上述した内袋複合容器102の変形例として、図3に示す内袋複合容器102−2、及び図4に示す内袋複合容器102−3の形態を採ることもできる。図2に示す内袋複合容器102に対して、図3に示す内袋複合容器102−2のペール缶126−2では、ペール缶126の胴体122から取っ手128を削除し、天板127の中央部に取っ手128−2を取り付けている。尚、ペール缶126−2の胴体を「122−2」と符号し、天板を「129」と符号する。天板129は、取っ手128を取り付けた点、及び補強用のエンボス129aを設けた点で、上述の天板127と相違する。尚、天板129において、エンボス129aの形成を省略することもできる。
【0027】
また、図4に示す内袋複合容器102−3のペール缶126−3では、図3に示すペール缶126−2に対して、さらに胴体122−2からビーダー135を無くした形態を有する。尚、ペール缶126−3の胴体を「122−3」と符号する。
図3に示す内袋複合容器102−2及び図4に示す内袋複合容器102−3におけるその他の構成は、図2に示す内袋複合容器102に同じである。
【0028】
図3に示す内袋複合容器102−2及び図4に示す内袋複合容器102−3においても、図2に示す内袋複合容器102の場合と同様に、固定バンド131を内袋複合容器102−2、102−3から取り外すことで、内袋複合容器の分別廃棄が可能である。このとき、図3に示す内袋複合容器102−2及び図4に示す内袋複合容器102−3では、天板129に取っ手128−2を設けたことから、図2に示す内袋複合容器102に比べて、胴体122−2、122−3に対する天板129の着脱をより容易に行えるという利点がある。さらに、図4に示す内袋複合容器102−3では、ビーダー135を無くすことによる製造工程の削減によりコストダウンを図ることも可能となる。
【0029】
また、図1から図4に示す各内袋複合容器101、102、102−2、102−3における構成を適宜組み合わせた構成の内袋複合容器を作製することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、鋼製の外側容器内に樹脂製の内側容器を設けた内袋複合容器に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
101、102、102−2、102−3…内袋複合容器、
111…内側容器、111b…出入口、121…ペール缶、
122、122−2、122−3…胴体、123…地板、124…天板、
126、126−2、126−3…ペール缶、
127、129…天板、131…固定バンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填物を収納する袋形状にてなり上記充填物の出入口(111b)を有する樹脂製の内側容器(111)と、
地板(123)が巻き締められ上記内側容器を収納する胴体(122、122−2、122−3)、及び、上記胴体の開放端に対して着脱可能であり上記出入口が突出可能な開口(124a、127a)を有する天板(124,127、129)を有し、外側容器に相当する鋼製のペール缶(121,126、126−2、126−3)と、
を備えたことを特徴とする内袋複合容器。
【請求項2】
上記天板は、上記胴体に当該天板を締め付ける爪(125)を有するラグタイプである、請求項1記載の内袋複合容器。
【請求項3】
上記天板を、上記胴体に締め付ける固定バンド(131)をさらに備えた、請求項1記載の内袋複合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126601(P2011−126601A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125956(P2010−125956)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(595100598)株式会社ジャパンペール (7)
【Fターム(参考)】