説明

内装仕上用塗料組成物および内装仕上用塗料組成物の製造方法

【課題】大量に生じている石膏ボード廃材の新規の再利用方法等を提供することを目的とする。また、主成分に珪藻土を用いたものに近い塗膜表面が得られ同様の風合いを備えていながらも安価な内装仕上用塗料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を主成分とする水性の内装仕上用塗料組成物であって、石膏粉末が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過する大きさである、水性の内装仕上用塗料組成物とした。このとき、繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を含む、内装仕上用塗料組成物とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装仕上用塗料組成物および内装仕上用塗料組成物の製造方法に関する。詳しくは、石膏ボードを再利用した、内装の仕上げ塗材として用いられる内装仕上用塗料組成物およびこの内装仕上用塗料組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボードは、焼石膏を主成分とした素材に水を加えて混練したものに、紙材を張り付けて板状に成形したものである。石膏ボードは、耐熱性や耐久性に優れているため、建築材料として、家屋の壁、床、間仕切り及び天井などに用いられている。
【0003】
このように優れた特徴を有し広く用いられている石膏ボードであるが、一旦、家屋等を解体した後には、その取り扱いに苦慮することになる。即ち、大量に生じる石膏ボード廃材は、有効に利用する用途が殆ど無いのである。そのため、通常、石膏ボード廃材は産業廃棄物処理法に従い産業廃棄物として埋め立て処分されている。しかし、埋め立て処分には多額の処理費用が必要であるため、埋め立て処分せずに床下等で保管されている実態も一部あり、社会的な問題となっている。このような課題を解決するためには石膏ボード廃材を再利用(リサイクル)することが重要である。この点に関し、石膏ボード廃材を再利用する方法等が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1には、「石膏ボード廃材を乾式粉砕、又は/及び石膏ボード廃材に適量の水分、及び離解を促進する界面活性剤を加えて湿式粉砕し、上記粉砕物である石膏質原料3重量部〜70重量部に、水砕スラグ30重量部〜70重量部、石灰質等からなる水硬性材料30重量部〜70重量部、及び繊維質材料2重量部〜15重量部を混合したるスラリーを以て湿式抄造方法又は押出成形方法で耐火性建築材料を製造することを特徴とする耐火性建築材料の製造方法」が記載されている。
そして、これによって「石膏ボード廃材の再利用を図ると共に、優れた耐火性建築材料を安く大量に製造することができる」とある。
【0005】
一方、内装の仕上げ塗材として用いられる塗り壁材(内装仕上用塗料組成物)としては、下記特許文献2に記載されたような、珪藻土に所定の水、バインダーを入れて混練したものが広く用いられている。このような珪藻土を主成分とした内装仕上用塗料組成物は、その塗膜表面に微妙な凹凸ができ、独特の風合いを備えたものである。
【0006】
【特許文献1】特開平7−69700号公報(請求項1、発明の効果)
【特許文献2】特開2007−39971号公報(請求項2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、石膏ボード廃材を産業廃棄物として処分せずに再利用する新たな手法が望まれていた。一方、珪藻土を用いた内装仕上用塗料組成物は、珪藻土が比較的高価であるためコスト高となりがちであった。
【0008】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、大量に生じている石膏ボード廃材の新規の再利用方法等を提供することを目的とする。また、主成分に珪藻土を用いた内装仕上用塗料組成物に近い塗膜表面が得られて同様の風合いを備えており、これの代替品として使用することができる安価な内装仕上用塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を主成分とする水性の内装仕上用塗料組成物であって、石膏粉末が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過する大きさである、水性の内装仕上用塗料組成物とした。このとき、珪藻土を含んでいない、水性の内装仕上用塗料組成物とすることができる。また、石膏粉末を80〜98重量%含む水性の内装仕上用塗料組成物とすることもできる。
【0010】
上記発明によれば、石膏ボード廃材の新規の再利用方法等を提供することができるとともに、珪藻土を主成分として用いたものよりも安価な内装仕上用塗料組成物とすることができる。
【0011】
また、石膏粉末が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過する大きさであるため、主成分に珪藻土を用いたものに近い塗膜表面が得られ同様の風合いを備えた内装仕上用塗料組成物とすることができる。目開き寸法1.6mmのふるいを通過しない粉末状の石膏が含まれると、塗膜表面の凸部(突起部)が大きくなり、珪藻土を用いた従来品と同様の風合いとは言い難くなる。
このような特徴を有する本発明の内装仕上用塗料組成物は、主成分として珪藻土を用いた内装仕上用塗料組成物の代替品として使用することができる。
【0012】
さらに、石膏ボードは、ホルムアルデヒドを殆ど発生せず、かつ人体に優しい中性であり、屋内使用において既に安全性が確立されている。よって、石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を主成分として用いた水性の内装仕上用塗料組成物は、人体への悪影響が少ない。
【0013】
またさらに、石膏ボードの石膏は二水石膏の状態であり、適度な力を加えることで粉砕することができる一方で、粉体にしたときに適度な強度があるため、粉砕加工が容易でありながらも粉砕された石膏粉末が配合や撹拌等で必要以上に微粉末化しにくく、珪藻土を用いたものに近い塗膜表面を確保しやすい。
【0014】
加えて、二水石膏は、水に難溶であることから、水性の内装仕上用塗料組成物の材料として使用した場合であっても、石膏粉末が水溶媒中に溶解しずらいため必要以上に微粉末化等しにくく、珪藻土を用いたものに近い塗膜表面を確保しやすい。
【0015】
また加えて、二水石膏には、20%程度の結晶水が含まれており、この結晶水は高温で加熱しない限り消失しないことから、耐火性に優れた内装仕上用塗料組成物となる。
【0016】
またさらに加えて、珪藻土を主成分とする従来の水性の内装仕上用塗料組成物において、珪藻土の代替品として石膏粉末を用いた場合であっても、二水石膏の比重が珪藻土の比重とほぼ同等であるため塗料のダレ等が生じにくく、珪藻土を主成分としたものに近い塗布作業性を有する内装仕上用塗料組成物となる。
【0017】
このとき、石膏粉末が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過し、目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさのものを、20〜50重量%含む、水性の内装仕上用塗料組成物とすることができる。
【0018】
上記発明によれば、目開き寸法1.6mmのふるいを通過し、目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさのものを、20重量%以上含むことで、珪藻土を用いたものと殆ど変わらない塗膜表面が得られ同様の風合いを備えた内装仕上用塗料組成物とすることができる。
また、石膏粉末が、上記大きさのものを、20〜50重量%含むことで、石膏粉末の粒度分布が最適化され、塗料のダレや塗りやすさの点で珪藻土を主成分としたものと殆ど変わらない塗布作業性を有する内装仕上用塗料組成物とすることができる。石膏粉末は、前記大きさのものを20〜40重量%含むことが更に好ましく、前記大きさのものを25〜35重量%含むことが最も好ましい。
【0019】
このとき、繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を含む、水性の内装仕上用塗料組成物とすることができる。
【0020】
石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を主成分とする内装仕上用塗料組成物は、珪藻土を用いたものよりも塗膜の強度が低下する傾向があるが、繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を含んだ内装仕上用塗料組成物とすることで、塗膜表面の状態に悪影響を与えることなく、この点を補強できる。このとき、繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を0.1〜5重量%含むことが好ましく、繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を0.3〜3重量%含むことが更に好ましい。またこのとき、直径が10〜60μmの合成樹脂繊維とすることも好ましい。
【0021】
また、上記課題は、石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を固形分比で80〜98重量%と、繊維長が10〜20mmで直径が10〜60μmの合成樹脂繊維を固形分比で0.1〜5重量%と、を含み、珪藻土を含んでいない、水性の内装仕上用塗料組成物であって、石膏粉末が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過し、目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさのものを、20〜50重量%含む、水性の内装仕上用塗料組成物とすることでも解決される。ここで、固形分比とは、内装仕上用塗料組成物全体の固形分に対して占める割合を指す。
【0022】
合成樹脂繊維の直径が60μm以下であることによって、塗膜表面の状態に悪影響を与えることなく塗膜を補強することができる。
【0023】
また、上記課題は、石膏ボード廃材を表面の紙材とともに粉砕して紙材を含んだ粉末状の石膏を得る粉砕工程と、粉砕工程で得られた紙材を含んだ粉末状の石膏を、目開き寸法1.6mmのふるいに掛けて、ふるいを通過した石膏粉末を選別するふるい選別工程と、ふるい選別工程で選別された石膏粉末を主成分とした水性の内装仕上用塗料組成物を得る塗料組成物配合工程と、を備えた水性の内装仕上用塗料組成物の製造方法とすることでも解決される。
ここで、粉末状の石膏のうち、目開き寸法1.6mmのふるいを通過したものを石膏粉末と称している。
【0024】
ふるい選別工程では、粉砕工程で得られた紙材を含んだ粉末状の石膏を、目開き寸法1.6mmのふるいに掛けて、ふるいを通過しなかった粉末状の石膏及び紙材を除去して、ふるいを通過した石膏粉末を選別する。紙材は細かく粉砕されにくいため、その殆どがふるいの上に残ることになる。
【0025】
内装仕上用塗料組成物中に紙材が混ざってしまうと、塗膜表面に紙材の凹凸が現れてしまうことがあった。上記製造方法によれば、粉砕工程で得られた紙材を含んだ石膏粉末を、目開き寸法1.6mmのふるいに掛けて、ふるいを通過した石膏粉末を選別するふるい選別工程を備えるため、粉砕工程に先だって石膏ボード廃材から紙材を剥離除去しなくてもよく、珪藻土を用いたもの殆ど変わらない塗膜表面の内装仕上用塗料組成物を簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、大量に生じている石膏ボード廃材の新規の再利用方法等を提供することができるとともに、主成分に珪藻土を用いたものに近い塗膜表面を備えながらも安価な内装仕上用塗料組成物を提供することが可能となる。また、人体への悪影響が少なく、耐火性に優れ、かつ珪藻土を用いたものに近い塗布作業性を有する内装仕上用塗料組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の内装仕上用塗料組成物等の実施形態を例示説明する。本発明は、石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を主成分とする水性の内装仕上用塗料組成物であって、石膏粉末が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過する大きさの、水性の内装仕上用塗料組成物である。この内装仕上用塗料組成物は、図1に例示するように、粉砕工程1と、ふるい選別工程2と、塗料組成物配合工程3と、を備えた水性の内装仕上用塗料組成物の製造方法によって、製造することができる。
以下、石膏ボード廃材、粉砕工程1、ふるい選別工程2、および塗料組成物配合工程3について例示説明する。
なお、本発明は以下の実施形態や実施例に限定されるものではない。
【0028】
[石膏ボード廃材]
本発明で用いられる石膏ボード廃材は、焼石膏を主成分とした素材に水を加えて混練したものに、紙材を張り付けて板状に成形することで得られた石膏ボードであって、原則として、建築材料として、家屋の壁、床、間仕切り及び天井などに使用されていたものが対象である。
【0029】
[粉砕工程]
本発明では、上記石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を使用する。粉砕工程1は石膏ボード廃材を粉砕する工程である。粉砕工程1で用いられる粉砕方法や粉砕装置については特に制限されず、出願時公知の種々の方法や装置、およびこれらと均等関係にある種々の方法や装置を用いることができる。例えば、石膏ボード廃材をフレッドミルやハンマーミル等で粉砕した後、微粉砕機であるレーモンドローラミル等で微粉砕することができる。このとき、粉末状の石膏の一部又は全部が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過する大きさになるまで粉砕する。
【0030】
ここで、石膏ボード廃材の表面には紙材が張られており、この紙材が内装仕上用塗料組成物に含まれてしまうと塗膜表面に紙材の凹凸が現れて表面状態が変化することがあった。また、耐火性が悪化することも懸念されていた。これらの課題を解決するためには、紙材が内装仕上用塗料組成物に含まれないようにすることが好ましい。そのため、例えば、石膏ボード廃材を粉砕する前に表面の紙材を予め剥離除去等すればよい。しかし、紙材を予め剥離除去等することは煩雑で手間取るため、石膏ボード廃材を紙材ごと粉砕してもよい。この場合、紙材は石膏ほど細かく粉砕されにくく、後述するふるい選別工程で殆どの紙材がふるいの上に残るため、石膏粉末から紙材を除去することができる。目開き寸法1.6mmのふるいを通過する程度の大きさの紙材であれば、内装仕上用塗料組成物に含まれていても塗膜表面に紙材の凹凸が現れにくい。
【0031】
[ふるい選別工程]
本発明では、目開き寸法1.6mmのふるい(JIS Z8801)を通過する石膏粉末を用いる必要がある。ふるい選別工程2は、粉砕工程1で得られた紙材を含んだ粉末状の石膏を、目開き寸法1.6mmのふるいに掛けて、ふるいを通過した石膏粉末を選別する工程である。具体的には、石膏ボード廃材を粉砕して得られた粉末状の石膏を目開き寸法1.6mmのふるいにかけ、これを通過した石膏粉末のみを水性の内装仕上用塗料組成物に用いる。目開き寸法1.6mmのふるいを通過しない粉末状の石膏が含まれると、塗膜表面の凸部が大きくなり、珪藻土を用いた従来品と同様の風合いとは言い難くなる。ここで、石膏ボード廃材を紙材ごと粉砕した場合であっても、前述の通り、粉砕されにくい紙材は目開き寸法1.6mmのふるいの上に残るため、本ふるい選別工程2で紙材を除去することができる。
【0032】
ここで、目開き寸法1.6mmのふるいを通過した石膏粉末を、さらに、目開き寸法425μmのふるい(JIS Z8801)にかけた後、目開き寸法1.6mmのふるいを通過し、(かつ)目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさのものが、石膏粉末の20重量%以上を占めるように調節してもよい。これによって、珪藻土を用いたもの殆ど変わらない塗膜表面が得られ同様の風合いを備えた内装仕上用塗料組成物とすることができる。
また、石膏粉末が、目開き寸法1.6mmのふるいを通過し、(かつ)目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさのものを、20〜50重量%含むように調節してもよい。これによって、珪藻土を主成分とした内装仕上用塗料組成物と殆ど変わらない塗布作業性を有するように、石膏粉末の粒度分布が最適化される。
【0033】
なお、前記粉砕工程1の最適化等によって、粉砕工程1で得られた粉末状の石膏の(ほぼ)全てが目開き寸法1.6mmのふるいを通過するようになれば、この粉末状の石膏を石膏粉末として使用すればよく、本ふるい選別工程2を設けなくてもよい。しかし、この場合、塗膜表面の状態を考慮すると粉砕工程1の前に石膏ボード廃材両面の紙材を予め剥離除去等しておく必要があり、このような行程は煩雑なため、簡単に紙材を除去する目的で、ふるい選別工程2を設けることが好ましい。
【0034】
[塗料組成物配合工程]
本発明の内装仕上用塗料組成物は上記選別された石膏粉末を主成分とする。具体的には、例えば、上記石膏粉末(固形分比で80〜98重量%、好ましくは固形分比で90〜98重量%)に所定の水、バインダーを入れて混練した水性の内装仕上用塗料組成物とすることができる。また、繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を含んだ水性の内装仕上用塗料組成物としてもよい。具体的には、石膏粉末を固形分比で80〜98重量%と、繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を0.1〜5重量%と、を含んだ水性の内装仕上用塗料組成物とすることができる。
【0035】
ここで、合成樹脂繊維の繊維長が10mm以上であると塗膜を補強する効果を十分得ることができる。一方、合成樹脂繊維の繊維長が20mm以下であると合成樹脂繊維が塊になりにくいため、塗膜表面の状態に悪影響を与えることなく塗膜を補強することができる。
また、合成樹脂繊維の含有量が0.1重量%以上であると塗膜を補強する効果を十分得ることができる。一方、合成樹脂繊維の含有量が5重量%以下であると塗膜表面の状態に悪影響を与えることなく塗膜を補強することができる。
さらに、合成樹脂繊維の直径が60μm以下であると塗膜表面の状態や塗布性に悪影響を与えることなく塗膜を補強することができる。合成樹脂繊維の直径は好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。合成樹脂繊維の直径が10μm以上であると、塗膜を補強する効果が高まり好ましい。合成樹脂繊維の直径は、より好ましくは20μm以上である。
【0036】
本発明の内装仕上用塗料組成物には、上述した石膏粉末、バインダー、水及び合成樹脂繊維の他には、塗膜表面の状態に影響を及ぼすような材料を配合すべきではない。特に、石膏粉末、及び合成樹脂繊維の他には、構造材やフィラー等を配合しないことが好ましい。本発明の内装仕上用塗料組成物には少量の珪藻土を配合してもよいが、コスト面や石膏ボード廃材の有効利用を考慮すると、全く配合しないことが好ましい。また、前記特許文献1に記載された発明は石灰質等からなる水硬性材料を配合したものであるが、本発明の内装仕上用塗料組成物にはこのような材料(石灰質等からなる水硬性材料)を配合しないことが好ましい。
また、石膏粉末を主成分とする本発明の内装仕上用塗料組成物は、耐水性等を考慮すると、屋外で使用するべきではない。
【0037】
以下、本発明の内容を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0038】
まず、石膏ボード廃材を両面の紙材ごと、ハンマーミルで粉砕した後、レーモンドローラミルで微粉砕した。次に、得られた粉末状の石膏を目開き寸法1.6mmのふるいにかけて、ふるいを通過したものを石膏粉末として選別した。このとき、石膏ボード廃材の紙材は、ふるいの上に残り、ふるいを通過した石膏粉末から除かれた。次に、目開き寸法1.6mmのふるいを通過した石膏粉末を、さらに目開き寸法425μmのふるいにかけた。このとき、目開き寸法425μmのふるいの上に残ったものと、ふるいを通過したものの割合は、重量比で30:70であった。目開き寸法425μmのふるいの上に残ったもの全てと、ふるいを通過したもの全てを再混合して、目開き寸法1.6mmのふるいを通過し目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさの粉末を30重量%含んだ石膏粉末とした。
【0039】
上記石膏粉末4,000gと、ナイロン繊維(東レ株式会社製 タフバインダー(登録商標) 繊維長15mm、繊度7dtex、直径28μm)15gと、アクリルエマルジョンタイプの合成樹脂水溶液(株式会社マルユウ製 Mプライマー を同重量の水で希釈したもの)300gと、着色剤(フジワラ化学株式会社製 シルタッチSNカラー)100gと、化学のりとしてのメチルセルロース(松本油脂製薬株式会社製 マーボローズエース)20gを混合撹拌して、水性の内装仕上用塗料組成物を得た。上記配合は、固形分比率に換算すると、おおよそ、石膏粉末95.4重量%と、ナイロン繊維(合成樹脂繊維)0.4重量%と、合成樹脂(アクリル樹脂)1.3重量%と、着色剤2.4重量%と、化学のり0.5重量%である。
【0040】
得られた水性の内装仕上用塗料組成物を石膏ボードの表面に塗布した際の塗膜表面状態を図2に示す。本発明の内装仕上用塗料組成物は、珪藻土を主成分として用いた従来品と殆ど変わらない塗膜表面状態であり従来品と同様の風合いを備えていた。また、本発明の内装仕上用塗料組成物は、塗料のダレや塗りやすさの点で、珪藻土を主成分とした従来品と殆ど変わらない塗布作業性を有していた。
【比較例】
【0041】
比較例として、上記同様の配合組成で、目開き寸法1.6mmのふるいを通過しない石膏粉末(目開き寸法2.36mmのふるいは通過した)を10重量%程度含んでいる水性の内装仕上用塗料組成物を作成したが、塗膜表面の凸部が大きくなり、珪藻土を用いた従来品と同様の風合いとは言い難いものであった。
また、上記同様の配合組成で、繊維長が25〜30mmのナイロン繊維(合成樹脂繊維)を使用した塗料組成物では、所々に塊状の繊維が表面に見られ、珪藻土を用いた従来品と同様の風合いとは言い難いものであった。
さらに、上記同様の配合組成で、直径が150μmのナイロン繊維(合成樹脂繊維)を使用した塗料組成物では、表面にナイロン繊維の凹凸がうっすらと見られた。
【0042】
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の内装仕上用塗料組成物の製造工程を例示した図である。
【図2】本発明の内装仕上用塗料組成物の塗膜表面を示す写真である。
【符号の説明】
【0044】
1 粉砕工程
2 ふるい選別工程
3 塗料組成物配合工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を主成分とする水性の内装仕上用塗料組成物であって、
前記石膏粉末が、
目開き寸法1.6mmのふるいを通過する大きさである、
水性の内装仕上用塗料組成物。
【請求項2】
石膏粉末が、
目開き寸法1.6mmのふるいを通過し、目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさのものを、20〜50重量%含む、
請求項1記載の水性の内装仕上用塗料組成物。
【請求項3】
繊維長が10〜20mmの合成樹脂繊維を含む、
請求項1又は2記載の水性の内装仕上用塗料組成物。
【請求項4】
珪藻土を含んでいない、
請求項1〜3何れか記載の水性の内装仕上用塗料組成物。
【請求項5】
石膏ボード廃材を粉砕して得られた石膏粉末を固形分比で80〜98重量%と、
繊維長が10〜20mmで直径が10〜60μmの合成樹脂繊維を固形分比で0.1〜5重量%と、を含み、
珪藻土を含んでいない、水性の内装仕上用塗料組成物であって、
前記石膏粉末が、
目開き寸法1.6mmのふるいを通過し、目開き寸法425μmのふるいを通過しない大きさのものを、20〜50重量%含む、
水性の内装仕上用塗料組成物。
【請求項6】
石膏ボード廃材を表面の紙材とともに粉砕して前記紙材を含んだ粉末状の石膏を得る粉砕工程と、
該粉砕工程で得られた、前記紙材を含んだ前記粉末状の石膏を、目開き寸法1.6mmのふるいに掛けて、該ふるいを通過した石膏粉末を選別するふるい選別工程と、
該ふるい選別工程で選別された石膏粉末を主成分とした水性の内装仕上用塗料組成物を得る塗料組成物配合工程と、
を備えた水性の内装仕上用塗料組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−121425(P2010−121425A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298857(P2008−298857)
【出願日】平成20年11月22日(2008.11.22)
【出願人】(506245763)
【Fターム(参考)】