内装壁構造及び施工方法
【課題】
本発明は、簡単な施工で、精度の高いレベル出しを容易に実現できる内装壁構造を提供する。
【解決手段】
本発明の一態様によれば、既存壁上に内装ボードを接着した内装壁構造であって、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられたレベル調整材と、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられ、接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、前記注入孔に充填された接着剤と、を備えた内装壁構造が提供される。
本発明は、簡単な施工で、精度の高いレベル出しを容易に実現できる内装壁構造を提供する。
【解決手段】
本発明の一態様によれば、既存壁上に内装ボードを接着した内装壁構造であって、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられたレベル調整材と、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられ、接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、前記注入孔に充填された接着剤と、を備えた内装壁構造が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物壁面の内装壁構造と施工方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
事務所ビル、病院、学校等の建築物におけるトイレ改修工事において、石膏ボード等の内装ボード材を下地材とする内壁工法としては、GL工法と称される水性接着剤を用いる湿式工法がある。(例えば、特許文献1参照。)また、レベル調整材を用いた乾式工法がある。(例えば、特許文献2参照。)
【0003】
しかしながら、湿式工法においては壁面がタイルの場合、カチオン系下地調整剤の塗布し、乾燥するまで1日養生が必要である。さらに水性接着剤は通常、乾燥期間を1週間以上必要とする。また、水性接着材を団子状態にして壁面に塗り付けた後に石膏ボードをその上から圧着しているが、このような圧着を行って石膏ボードのレベル出しを行うことは相当の熟練作業が必要である。
【0004】
乾式工法は湿式工法よりも工期を短くできるが、個々のレベル調整材の高さ出しや既存壁への取付が必要であり、工数が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−58636号公報
【特許文献2】特開2003−213886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な施工で、精度の高いレベル出しを容易に実現できる内装壁構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、既存壁上に内装ボードを接着した内装壁構造であって、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられたレベル調整材と、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられ、接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、前記注入孔に充填された接着剤と、を備えた内装壁構造が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な施工で、精度の高いレベル出しを容易に実現できる内装壁構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の内装壁構造を示す縦断面図である。
【図2】内装壁構造の部材の取付位置について表した図である。
【図3】レベル調整材の取付位置を示す模式図である。
【図4】スポンジ状ガイド部材を示す模式図である。
【図5】スポンジ状ガイド部材の取付位置について表した図である。
【図6】スポンジ状ガイド部材に接着剤を塗布した状態を示す図である。
【図7】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図8】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図9】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図10】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図11】新規内装ボード裏面に電線ケーブルを配線した内装壁構造を示す図である。
【図12】新規内装ボード裏面に補強部材を入れて紙巻器を取り付けた内装壁構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明における内装壁構造について、図面に従って説明する。図1は内装壁構造の縦断面図、図2は内装壁構造の内装材を一部取り外した図である。1は内装壁構造、2はレベル調整材、3はスポンジ状ガイド部材、4は粘着のり、5は接着剤、6は新規内装ボード、7はアクセサリー用補強材、8は新規仕上げ材、9は接着剤、10はビス、11は既存壁、12は既存床である。
【0011】
レベル調整材2は既存壁11に接着剤9で固定されている。スポンジ状ガイド部材3は既存壁11に粘着のり4で仮固定され、さらに接着剤5により既存壁11に固定されている。新規内装ボード6は接着剤5を介して既存壁11に固定され、さらにビス10でレベル調整材2に固定されている。
【0012】
ここで、レベル調整材2においては、既存壁11の不陸に応じて任意のレベルに調整できるものとして、スクリュー方式で高さを調節するもの(例えば、フクビ科学工業製のスクリューパッキン)を用いることができるが、その部材は特に限定されず、均一な既存壁面などレベルの調整を必要としない壁面の場合は、板状のスペーサーなどでも良い。
【0013】
図3はレベル調整材の取り付け位置を示す模式図である。
図3に示すようにレベル調整材2は、新規内装ボード6の中央部、及び複数の新規内装ボード6の継ぎ目となる新規内装ボード6の端部や四隅部に配置されることが好ましい。の固定箇所は、新規内装ボード6の端部、レベル調整材2を新規内装ボード6の中央部に配置することで、新規内装ボード6の中央付近の湾曲を防止することができる。また、複数の新規内装ボード6の継ぎ目となる新規内装ボード6の端部や四隅部に、複数の新規内装ボード6を跨ぐようにレベル調整材2が配置されることで、特別な技術を有しなくても、一方の新規内装ボード6と他方の新規内装ボード6との継ぎ目に段差ができることなく面一にすることができ、作業性が向上する。
【0014】
レベル調整材2の既存壁11への取り付けは、接着剤9を使用することが好ましい。接着剤での施工であれば、騒音を小さくできるので、病院などの音だし制限のある改修工事に適する。用いる接着剤9は特に限定されないが、初期接着性に優れた接着剤で、硬化まで既設壁11に固定位置を保持することができるものが好ましい。
【0015】
図4はスポンジ状ガイド部材を示す模式図である。図4(a)はスポンジ状ガイド部材の模式上面図、図4(b)はスポンジ状ガイド部材の模式側面図である。
図4のスポンジ状ガイド部材3は、一面に壁面仮固定用に粘着のり4が粘着加工されている。既存壁11に粘着のり4を介してスポンジ状ガイド部材3を仮固定することで、接着剤5が塗布され硬化するまで、既存壁11に接着された状態を保持することができる。スポンジ状ガイド部材3の中央部分には接着剤を注入するための貫通孔である注入孔13が設けられている。注入孔13の大きさは新規内装ボード6との接着強度により、適宜設定される。
【0016】
注入孔13に接着剤5を注入する施工とすることで、必要以上に多量の接着剤5を使用することを防止できる。また、接着強度に必要な接着剤を適正量を予め注入孔の大きさで規定することができるので、接着剤の使用量が不足することによる接着強度の不足を防止できる。また、複数のスポンジ状ガイド部材を配置する施工とすることで、新規内装ボード6と既存壁11の接着強度が均一となり、施工性と品質が向上する。
【0017】
スポンジ状ガイド部材の材質については、無膜処理された連続気泡型のウレタンフォームを好適に用いることができる。適正量の接着剤5が塗布された後、新規内装ボード6を圧着・固定した際に、接着剤5が三次元的に連通した気孔を有するウレタンフォームの気孔内に含浸されることで、接着剤5による新規内装ボード6の表面への反りや接着剤5の変形の発生がなく、且つ、既存壁11の不陸やアクセサリー用補強材7の凸部分を調整するので、高い精度の仕上げができる。
【0018】
スポンジ状ガイド部材の厚みはレベル調整材2よりも厚くすることで、接着剤が硬化するまでの間、ウレタンフォームの反力によって、既設壁11と新規内装ボード6に圧着されて位置を保持する。スポンジ状ガイド部材の形状は特に限定されないが、部材製作過程において、裁断加工時に無駄なく効率が良く加工ができる形状が有利である。
【0019】
図5は、長さ1820ミリ×巾910ミリの新規内装ボード6を複数枚施工した場合のスポンジ状ガイド部材とレベル調整材の配置を示す模式図である。1枚の新規内装ボード6に複数個のスポンジ状ガイド部材が所定間隔で配置されている。新規内装ボード6の周辺部には、中央部分よりも間隔を狭く配置することで、内装ボードの突き合わせ部分の仕上材へのヒビ割れや反りの発生を防止することができる。
【0020】
接着剤5は、既設壁11と新規内装ボード6を確実に接着するためには、既設壁11に団子状に塗布しても、その形状を保持できるような粘性の高いものが好ましい。
【0021】
図6に示すようにスポンジ状ガイド部材3の注入孔13に接着剤5を塗布することで、硬化するまでの間、ウレタンフォームが型枠となり、接着剤5の垂れを防止することができる。また、速硬型の接着剤5を使用すれば、養生期間を短縮できるので、工期を短縮することができる。性状においては、内装仕上げ後にアクセサリーなどを固定するビスの位置が接着剤の団子塊部分の場合、接着剤が破断することがあるので、弾性系接着剤が好ましい。
【0022】
本工法においては、二液型のエポキシ変成シリコーン系接着剤を好適に用いることができる。二液型のエポキシ変成シリコーン系接着剤を用いることで、翌日には、次工程の仕上げ工事等が可能であり、且つ、弾性系接着剤の上記利点を備えている。
【0023】
図7、図8、図9、図10は本発明の内装壁構造の施工手順例を示した図である。14はレーザー光線の基準線、15は内装ボードの取付基準レベル、16はレーザー墨出し工具、17は粘着のり離型紙、18は搾り器を示す。
【0024】
内装壁構造の施工方法については、図7に示すように、まず、レベル調整材2を既存壁の所定位置に固定し、接着剤5が硬化後、レーザー墨出し工具16を用いて、既存壁11における最も出張っている部分を見つけ、その部分を新規内装ボード6の取付基準レベル15として、それぞれのレベル調整材2を任意に調整する。
【0025】
次に、図8に示すように、スポンジ状ガイド部材2の粘着のり離型紙17を剥がし、粘着加工された接着面を既存壁11側に所定間隔で取り付ける。この状態で任意の寸法に切断された新規内装ボード6を仮組みして、寸法等を修正することができる。
【0026】
図9は搾り器18を用いた接着剤5の塗布作業例を示す。接着剤5はスポンジ状ガイド部材3の注入孔13に塗布する。塗布量はウレタンフォームの厚みよりも高く盛ることで、内装ボードを取り付けた際に、接着剤5が圧着される。このように接着に必要な塗布量を容易に確保することができ、接着剤5も効率良く塗布することができる。
【0027】
接着剤の塗布方法については、エアー式ガンや搾り器18と称されるポリエチレン製の三角袋等を用いた方法があるが、特に限定されるものではない。
【0028】
図10は、新規内装ボード6の固定方法である。所定位置に配置されたレベル調整材2に、新規内装ボード6をビス10で固定するが、接着剤5が硬化するまでの間、レベル調整材2が新規内装ボード6を剥落することを防止している。また、新規内装ボード6の表面からビス10により固定することで、新規内装ボード6の反りを防止することができる。以上により、新規内装ボード6の固定は、新規壁面の取付基準レベル15が予め調整されているので、熟練作業は不要であり、かつ高い精度の仕上げレベルが期待できる。
【0029】
図11は、内装壁裏側に電気配線をした内装壁構造を示す透視図である。19は新規コンセント、20は電線ケーブル等ある。近年のトイレの改修工事においては、電線ケーブルや機器類の信号線などの電気配線が多くなっている。本工法においては、既存壁11にハツリを入れずに、既存壁11と新規内装ボード6との間に形成される空間に配線することができるため、既存壁のハツリ作業による騒音や粉じんを出すことが無くなり、省力化とコスト低減につながる。
【0030】
図12は、内装壁裏側に補強部材を入れた内装壁構造を示す断面図である。21は紙巻器、22は速乾性接着剤を示す。通常、トイレの壁面には鏡、紙巻器21、機器用リモコンなどのアクセサリー類が固定されている。アクセサリー用補強材7は新規内装ボード6に速乾性接着剤22で固定されている。新規内装ボード6の表面に新規仕上げ材8が施工された後に、アクセサリー類をアクセサリー用補強材7が配置されている箇所に新規仕上げ材8の表面側からビスなどにより固定する。このような施工とすることで、アクセサリー類を既存壁11に直接固定する場合と比較して、アクセサリー類を固定することによる新規内装ボード6の歪の発生を抑えることができる。
【0031】
アクセサリー用補強材7の材質は、アクセサリーを十分に保持できる亜鉛メッキ鋼板や合板が好ましい。施工手順は、新規内装ボード6の裏面とアクセサリー用補強材7に速乾性接着剤22を塗布し、新規内装ボード6とアクセサリー補強材7とを貼り合せる。既存壁11とアクセサリー用補強材7との間にスポンジ状ガイド部材3が配置されるようにスポンジ状ガイド部材3を既存壁11に貼り付けた後に、接着剤5を塗布し、新規内装ボード6を圧着・固定する。アクセサリー用補強材7と新規内装ボード6とを速乾性接着剤22で接着することで、十分に接着され、接着剤5が養生中、落下することはない。
【符号の説明】
【0032】
1…内装壁構造
2…レベル調整材
3…スポンジ状ガイド部材
4…粘着のり
5…接着剤
6…新規内装ボード
7…アクセサリー用補強材
8…新規仕上げ材
9…接着剤
10…ビス
11…既存壁
12…既存床
13…注入孔
14…レーザー光線の基準線
15…取付基準レベル
16…レーザー墨出し工具
17…粘着のり離型紙
18…搾り器
19…新規コンセント
20…電線ケーブル
21…紙巻器
22…速乾性接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物壁面の内装壁構造と施工方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
事務所ビル、病院、学校等の建築物におけるトイレ改修工事において、石膏ボード等の内装ボード材を下地材とする内壁工法としては、GL工法と称される水性接着剤を用いる湿式工法がある。(例えば、特許文献1参照。)また、レベル調整材を用いた乾式工法がある。(例えば、特許文献2参照。)
【0003】
しかしながら、湿式工法においては壁面がタイルの場合、カチオン系下地調整剤の塗布し、乾燥するまで1日養生が必要である。さらに水性接着剤は通常、乾燥期間を1週間以上必要とする。また、水性接着材を団子状態にして壁面に塗り付けた後に石膏ボードをその上から圧着しているが、このような圧着を行って石膏ボードのレベル出しを行うことは相当の熟練作業が必要である。
【0004】
乾式工法は湿式工法よりも工期を短くできるが、個々のレベル調整材の高さ出しや既存壁への取付が必要であり、工数が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−58636号公報
【特許文献2】特開2003−213886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な施工で、精度の高いレベル出しを容易に実現できる内装壁構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、既存壁上に内装ボードを接着した内装壁構造であって、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられたレベル調整材と、前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられ、接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、前記注入孔に充填された接着剤と、を備えた内装壁構造が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な施工で、精度の高いレベル出しを容易に実現できる内装壁構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の内装壁構造を示す縦断面図である。
【図2】内装壁構造の部材の取付位置について表した図である。
【図3】レベル調整材の取付位置を示す模式図である。
【図4】スポンジ状ガイド部材を示す模式図である。
【図5】スポンジ状ガイド部材の取付位置について表した図である。
【図6】スポンジ状ガイド部材に接着剤を塗布した状態を示す図である。
【図7】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図8】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図9】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図10】内装壁構造の施工手順を示した図である。
【図11】新規内装ボード裏面に電線ケーブルを配線した内装壁構造を示す図である。
【図12】新規内装ボード裏面に補強部材を入れて紙巻器を取り付けた内装壁構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明における内装壁構造について、図面に従って説明する。図1は内装壁構造の縦断面図、図2は内装壁構造の内装材を一部取り外した図である。1は内装壁構造、2はレベル調整材、3はスポンジ状ガイド部材、4は粘着のり、5は接着剤、6は新規内装ボード、7はアクセサリー用補強材、8は新規仕上げ材、9は接着剤、10はビス、11は既存壁、12は既存床である。
【0011】
レベル調整材2は既存壁11に接着剤9で固定されている。スポンジ状ガイド部材3は既存壁11に粘着のり4で仮固定され、さらに接着剤5により既存壁11に固定されている。新規内装ボード6は接着剤5を介して既存壁11に固定され、さらにビス10でレベル調整材2に固定されている。
【0012】
ここで、レベル調整材2においては、既存壁11の不陸に応じて任意のレベルに調整できるものとして、スクリュー方式で高さを調節するもの(例えば、フクビ科学工業製のスクリューパッキン)を用いることができるが、その部材は特に限定されず、均一な既存壁面などレベルの調整を必要としない壁面の場合は、板状のスペーサーなどでも良い。
【0013】
図3はレベル調整材の取り付け位置を示す模式図である。
図3に示すようにレベル調整材2は、新規内装ボード6の中央部、及び複数の新規内装ボード6の継ぎ目となる新規内装ボード6の端部や四隅部に配置されることが好ましい。の固定箇所は、新規内装ボード6の端部、レベル調整材2を新規内装ボード6の中央部に配置することで、新規内装ボード6の中央付近の湾曲を防止することができる。また、複数の新規内装ボード6の継ぎ目となる新規内装ボード6の端部や四隅部に、複数の新規内装ボード6を跨ぐようにレベル調整材2が配置されることで、特別な技術を有しなくても、一方の新規内装ボード6と他方の新規内装ボード6との継ぎ目に段差ができることなく面一にすることができ、作業性が向上する。
【0014】
レベル調整材2の既存壁11への取り付けは、接着剤9を使用することが好ましい。接着剤での施工であれば、騒音を小さくできるので、病院などの音だし制限のある改修工事に適する。用いる接着剤9は特に限定されないが、初期接着性に優れた接着剤で、硬化まで既設壁11に固定位置を保持することができるものが好ましい。
【0015】
図4はスポンジ状ガイド部材を示す模式図である。図4(a)はスポンジ状ガイド部材の模式上面図、図4(b)はスポンジ状ガイド部材の模式側面図である。
図4のスポンジ状ガイド部材3は、一面に壁面仮固定用に粘着のり4が粘着加工されている。既存壁11に粘着のり4を介してスポンジ状ガイド部材3を仮固定することで、接着剤5が塗布され硬化するまで、既存壁11に接着された状態を保持することができる。スポンジ状ガイド部材3の中央部分には接着剤を注入するための貫通孔である注入孔13が設けられている。注入孔13の大きさは新規内装ボード6との接着強度により、適宜設定される。
【0016】
注入孔13に接着剤5を注入する施工とすることで、必要以上に多量の接着剤5を使用することを防止できる。また、接着強度に必要な接着剤を適正量を予め注入孔の大きさで規定することができるので、接着剤の使用量が不足することによる接着強度の不足を防止できる。また、複数のスポンジ状ガイド部材を配置する施工とすることで、新規内装ボード6と既存壁11の接着強度が均一となり、施工性と品質が向上する。
【0017】
スポンジ状ガイド部材の材質については、無膜処理された連続気泡型のウレタンフォームを好適に用いることができる。適正量の接着剤5が塗布された後、新規内装ボード6を圧着・固定した際に、接着剤5が三次元的に連通した気孔を有するウレタンフォームの気孔内に含浸されることで、接着剤5による新規内装ボード6の表面への反りや接着剤5の変形の発生がなく、且つ、既存壁11の不陸やアクセサリー用補強材7の凸部分を調整するので、高い精度の仕上げができる。
【0018】
スポンジ状ガイド部材の厚みはレベル調整材2よりも厚くすることで、接着剤が硬化するまでの間、ウレタンフォームの反力によって、既設壁11と新規内装ボード6に圧着されて位置を保持する。スポンジ状ガイド部材の形状は特に限定されないが、部材製作過程において、裁断加工時に無駄なく効率が良く加工ができる形状が有利である。
【0019】
図5は、長さ1820ミリ×巾910ミリの新規内装ボード6を複数枚施工した場合のスポンジ状ガイド部材とレベル調整材の配置を示す模式図である。1枚の新規内装ボード6に複数個のスポンジ状ガイド部材が所定間隔で配置されている。新規内装ボード6の周辺部には、中央部分よりも間隔を狭く配置することで、内装ボードの突き合わせ部分の仕上材へのヒビ割れや反りの発生を防止することができる。
【0020】
接着剤5は、既設壁11と新規内装ボード6を確実に接着するためには、既設壁11に団子状に塗布しても、その形状を保持できるような粘性の高いものが好ましい。
【0021】
図6に示すようにスポンジ状ガイド部材3の注入孔13に接着剤5を塗布することで、硬化するまでの間、ウレタンフォームが型枠となり、接着剤5の垂れを防止することができる。また、速硬型の接着剤5を使用すれば、養生期間を短縮できるので、工期を短縮することができる。性状においては、内装仕上げ後にアクセサリーなどを固定するビスの位置が接着剤の団子塊部分の場合、接着剤が破断することがあるので、弾性系接着剤が好ましい。
【0022】
本工法においては、二液型のエポキシ変成シリコーン系接着剤を好適に用いることができる。二液型のエポキシ変成シリコーン系接着剤を用いることで、翌日には、次工程の仕上げ工事等が可能であり、且つ、弾性系接着剤の上記利点を備えている。
【0023】
図7、図8、図9、図10は本発明の内装壁構造の施工手順例を示した図である。14はレーザー光線の基準線、15は内装ボードの取付基準レベル、16はレーザー墨出し工具、17は粘着のり離型紙、18は搾り器を示す。
【0024】
内装壁構造の施工方法については、図7に示すように、まず、レベル調整材2を既存壁の所定位置に固定し、接着剤5が硬化後、レーザー墨出し工具16を用いて、既存壁11における最も出張っている部分を見つけ、その部分を新規内装ボード6の取付基準レベル15として、それぞれのレベル調整材2を任意に調整する。
【0025】
次に、図8に示すように、スポンジ状ガイド部材2の粘着のり離型紙17を剥がし、粘着加工された接着面を既存壁11側に所定間隔で取り付ける。この状態で任意の寸法に切断された新規内装ボード6を仮組みして、寸法等を修正することができる。
【0026】
図9は搾り器18を用いた接着剤5の塗布作業例を示す。接着剤5はスポンジ状ガイド部材3の注入孔13に塗布する。塗布量はウレタンフォームの厚みよりも高く盛ることで、内装ボードを取り付けた際に、接着剤5が圧着される。このように接着に必要な塗布量を容易に確保することができ、接着剤5も効率良く塗布することができる。
【0027】
接着剤の塗布方法については、エアー式ガンや搾り器18と称されるポリエチレン製の三角袋等を用いた方法があるが、特に限定されるものではない。
【0028】
図10は、新規内装ボード6の固定方法である。所定位置に配置されたレベル調整材2に、新規内装ボード6をビス10で固定するが、接着剤5が硬化するまでの間、レベル調整材2が新規内装ボード6を剥落することを防止している。また、新規内装ボード6の表面からビス10により固定することで、新規内装ボード6の反りを防止することができる。以上により、新規内装ボード6の固定は、新規壁面の取付基準レベル15が予め調整されているので、熟練作業は不要であり、かつ高い精度の仕上げレベルが期待できる。
【0029】
図11は、内装壁裏側に電気配線をした内装壁構造を示す透視図である。19は新規コンセント、20は電線ケーブル等ある。近年のトイレの改修工事においては、電線ケーブルや機器類の信号線などの電気配線が多くなっている。本工法においては、既存壁11にハツリを入れずに、既存壁11と新規内装ボード6との間に形成される空間に配線することができるため、既存壁のハツリ作業による騒音や粉じんを出すことが無くなり、省力化とコスト低減につながる。
【0030】
図12は、内装壁裏側に補強部材を入れた内装壁構造を示す断面図である。21は紙巻器、22は速乾性接着剤を示す。通常、トイレの壁面には鏡、紙巻器21、機器用リモコンなどのアクセサリー類が固定されている。アクセサリー用補強材7は新規内装ボード6に速乾性接着剤22で固定されている。新規内装ボード6の表面に新規仕上げ材8が施工された後に、アクセサリー類をアクセサリー用補強材7が配置されている箇所に新規仕上げ材8の表面側からビスなどにより固定する。このような施工とすることで、アクセサリー類を既存壁11に直接固定する場合と比較して、アクセサリー類を固定することによる新規内装ボード6の歪の発生を抑えることができる。
【0031】
アクセサリー用補強材7の材質は、アクセサリーを十分に保持できる亜鉛メッキ鋼板や合板が好ましい。施工手順は、新規内装ボード6の裏面とアクセサリー用補強材7に速乾性接着剤22を塗布し、新規内装ボード6とアクセサリー補強材7とを貼り合せる。既存壁11とアクセサリー用補強材7との間にスポンジ状ガイド部材3が配置されるようにスポンジ状ガイド部材3を既存壁11に貼り付けた後に、接着剤5を塗布し、新規内装ボード6を圧着・固定する。アクセサリー用補強材7と新規内装ボード6とを速乾性接着剤22で接着することで、十分に接着され、接着剤5が養生中、落下することはない。
【符号の説明】
【0032】
1…内装壁構造
2…レベル調整材
3…スポンジ状ガイド部材
4…粘着のり
5…接着剤
6…新規内装ボード
7…アクセサリー用補強材
8…新規仕上げ材
9…接着剤
10…ビス
11…既存壁
12…既存床
13…注入孔
14…レーザー光線の基準線
15…取付基準レベル
16…レーザー墨出し工具
17…粘着のり離型紙
18…搾り器
19…新規コンセント
20…電線ケーブル
21…紙巻器
22…速乾性接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存壁上に内装ボードを接着した内装壁構造であって、
前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられたレベル調整材と、
前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられ、接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、
前記注入孔に充填された接着剤と、を備えた内装壁構造。
【請求項2】
前記内装ボードの前記既存壁側の面にアクセサリーを取り付けるための補強部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の内装壁構造。
【請求項3】
前記軟質ガイド部材が三次元的に連通した気孔を有する発泡体であることを特徴とする請求項1または2に記載の内装壁構造。
【請求項4】
接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、内装ボードの施工位置を調節するためのレベル調整材と、を既存壁上に固定する工程と、
前記注入孔に接着剤を注入する工程と、
前記内装ボードを圧着する工程と、を備えた内装壁構造の施工方法。
【請求項5】
前記レベル調整材に前記内装ボードをビスで固定することを特徴とする請求項4に記載の内装壁構造の施工方法。
【請求項1】
既存壁上に内装ボードを接着した内装壁構造であって、
前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられたレベル調整材と、
前記既存壁と前記内装ボードとの間に設けられ、接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、
前記注入孔に充填された接着剤と、を備えた内装壁構造。
【請求項2】
前記内装ボードの前記既存壁側の面にアクセサリーを取り付けるための補強部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の内装壁構造。
【請求項3】
前記軟質ガイド部材が三次元的に連通した気孔を有する発泡体であることを特徴とする請求項1または2に記載の内装壁構造。
【請求項4】
接着剤の注入孔を有する軟質ガイド部材と、内装ボードの施工位置を調節するためのレベル調整材と、を既存壁上に固定する工程と、
前記注入孔に接着剤を注入する工程と、
前記内装ボードを圧着する工程と、を備えた内装壁構造の施工方法。
【請求項5】
前記レベル調整材に前記内装ボードをビスで固定することを特徴とする請求項4に記載の内装壁構造の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−229732(P2010−229732A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79032(P2009−79032)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]