内視鏡の湾曲部及び内視鏡の湾曲部の製造方法
【課題】 負荷が掛かる方向において強度を十分に確保でき、細径及び薄肉な内視鏡の湾曲部と、内視鏡の湾曲部の製造方法とを提供すること。
【解決手段】 湾曲部23は、隣り合うもの同士が回動可能に連結されている節輪30を有している。節輪30は、節輪30の軸方向に平行な断面において、周面31が部分的に屈曲することで形成される断面屈曲部41を有している。
【解決手段】 湾曲部23は、隣り合うもの同士が回動可能に連結されている節輪30を有している。節輪30は、節輪30の軸方向に平行な断面において、周面31が部分的に屈曲することで形成される断面屈曲部41を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中空の節輪同士が互いに回動可能に連結することによって構成される内視鏡の湾曲部と、内視鏡の湾曲部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡の湾曲部は、複数の中空の節輪同士が互いに回動可能に連結することによって、構成されている。湾曲部の湾曲半径を小さくすることと、節輪の内部に配設される内蔵物のための収納スペースを節輪の内部に確保することとを考慮して、節輪の肉厚は薄く、節輪の外径は小さく、節輪の内径は大きいことが好適である。
【0003】
例えば特許文献1には、剛性を高めるための塑性変形よりなる凹形または凸形の変形部を設けた湾曲管が開示されている。変形部は、節輪の周方向に沿って、節輪の周壁に配設されている。また変形部は、円周方向における連結部同士の間、連結部の近傍、または周壁全周に渡って連続して配設されている。
【0004】
また例えば特許文献2には、隣接する節輪をリベット無しで連結して極細化を可能にするとともに、円滑な湾曲操作が可能な内視鏡の湾曲管が開示されている。特許文献2において、節輪と一体の凸部がリベットの代わりに節輪に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−56002号公報
【特許文献2】特開2001−104239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、変形部以外の部分は、変形部に比べて剛性が低く、強度が弱い。また湾曲部が湾曲したり潰されたり捻れたり引っ張られたりすることに伴い、内圧が内蔵物から節輪に生じたり、外圧が外部から節輪に掛かったり、節輪に引張・圧縮・捻り等の負荷が掛かる。このような内圧や外力や負荷は、節輪にとって応力を発生させる。この応力が例えば捻り方向といった所定の方向において生じた際に、所定の方向における強度が十分に確保されていないと、節輪が変形する虞が生じる。このように強度は、負荷が掛かる方向によって、十分に確保されていない虞が生じる。
【0007】
また一般的に節輪が実用上で十分な強度を確保するために金属によって形成される場合、金属の硬さが低く、絞り性の良い材料であると、節輪は塑性加工しやすい。しかしこのような材料は降伏強度が低いため、節輪は負荷によって容易に変形してしまう。
そのため特許文献2において、節輪の強度を確保し、容易な変形を防止するためには、節輪の肉厚を従来よりも厚く確保する必要がある。しかし結果として、節輪の細径化と薄肉化とは制限されてしまう。
【0008】
本発明は、負荷が掛かる方向において強度を十分に確保でき、細径及び薄肉な内視鏡の湾曲部と、内視鏡の湾曲部の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は目的を達成するために、隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部であって、前記節輪は、前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を有していることを特徴とする内視鏡の湾曲部を提供する。
【0010】
また本発明は目的を達成するために、隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部の製造方法であって、板材から前記節輪を形成するための節輪準備部を形成する工程と、前記節輪準備部を円環化し、前記節輪準備部を前記節輪に加工する工程と、前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程と、円環化された際に突き当てられた前記節輪準備部の両端部を接合する工程と、を具備することを特徴とする内視鏡の湾曲部の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、負荷が掛かる方向において強度を十分に確保でき、細径及び薄肉な内視鏡の湾曲部と、内視鏡の湾曲部の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る内視鏡の概略図である。
【図2A】図2Aは、第1の実施形態における節輪の斜視図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに記載された2B−2B線における断面図である。
【図3A】図3Aは、湾曲部の製造方法を示すフローチャートである。
【図3B】図3Bは、第3の工程(断面屈曲部が形成される工程)を説明するための図である。
【図3C】図3Cは、図2Bに記載された3C−3C線における断面図である。
【図4A】図4Aは、第1の実施形態の第1の変形例における節輪の斜視図である。
【図4B】図4Bは、本変形例における擬似円筒多面体の上面図である。
【図4C】図4Cは、図4Bに記載された4C−4C線における断面図である。
【図5A】図5Aは、第2の変形例における擬似円筒多面体の上面図である。
【図5B】図5Bは、図5Aに記載された5B−5B線における断面図である。
【図6A】図6Aは、第3の変形例における擬似円筒多面体の上面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに記載された6B−6B線における断面図である。
【図7A】図7Aは、第2の実施形態における節輪の側面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示す節輪を軸方向から見た際の側面図である。
【図7C】図7Cは、突出部が内周面に配設された節輪を軸方向から見た際の側面図である。
【図7D】図7Dは、突出部が内周面と外周面とに配設された節輪を軸方向から見た際の側面図である。
【図8A】図8Aは、第2の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図8B】図8Bは、図8Aに記載された8B−8B線における断面図である。
【図8C】図8Cは、突出部が内周面に配設された状態の8B−8B線における断面図である。
【図8D】図8Dは、突出部が内周面と外周面とに配設された状態の8B−8B線における断面図である。
【図9A】図9Aは、第3の実施形態における節輪の側面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに記載された9B−9B線における断面図である。
【図9C】図9Cは、凹部が内周面に配設された状態の9B−9B線における断面図である。
【図9D】図9Dは、凹部が内周面と外周面とに配設された状態の9B−9B線における断面図である。
【図10A】図10Aは、凹部が周方向に配設された状態の節輪の側面図である。
【図10B】図10Bは、図10Aに記載された10B−10B線における断面図である。
【図10C】図10Cは、凹部が内周面に配設された状態の10B−10B線における断面図である。
【図10D】図10Dは、凹部が内周面と外周面とに配設された状態の10B−10B線における断面図である。
【図11A】図11Aは、第3の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図11B】図11Bは、図11Aに記載された11B−11B線における断面図である。
【図11C】図11Cは、ディンプル部が内周面に配設された状態の11B−11B線における断面図である。
【図11D】図11Dは、ディンプル部が内周面と外周面とに配設された状態の11B−11B線における断面図である。
【図12A】図12Aは、第3の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図12B】図12Bは、図12Aに記載された12B−12B線における断面図である。
【図12C】図12Cは、ディンプル部が内周面に配設された状態の12B−12B線における断面図である。
【図12D】図12Dは、ディンプル部が内周面と外周面とに配設された状態の12B−12B線における断面図である。
【図13A】図13Aは、第3の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図13B】図13Bは、図13Aに記載された13B−13B線における断面図である。
【図13C】図13Cは、ディンプル部が内周面に配設された状態の13B−13B線における断面図である。
【図13D】図13Dは、ディンプル部が内周面と外周面とに配設された状態の13B−13B線における断面図である。
【図14A】図14Aは、第4の実施形態における節輪の側面図である。
【図14B】図14Bは、図14Aに記載された14B−14B線における断面図である。
【図14C】図14Cは、突出凹部が周方向に配設された状態の節輪の側面図である。
【図15】図15は、第4の実施形態の変形例における節輪の14B−14B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1と図2Aと図2Bと図3Aと図3Bと図3Cとを参照して第1の実施形態について説明する。
図1に示すように内視鏡1には、患者の体腔内等に挿入される細長い挿入部10と、挿入部10の基端部と連結し、内視鏡1を操作する操作部60とが配設されている。
【0014】
挿入部10は、挿入部10の先端部側から基端部側に向かって、先端硬質部21と、湾曲部23と、可撓管部25とを有している。先端硬質部21の基端部は湾曲部23の先端部と連結し、湾曲部23の基端部は可撓管部25の先端部と連結している。
【0015】
先端硬質部21は、挿入部10の先端部であり、硬い。
湾曲部23については、後述する。
可撓管部25は、所望な可撓性を有しており、外力によって曲がる。可撓管部25は、操作部60における後述する本体部61から延出されている管状部材である。
【0016】
挿入部10には、例えば、図示しない、操作ワイヤと、吸引チャンネルと、送気・送水チャンネルと、撮像ユニットにおけるケーブルと、後述するワイヤガイド部材といった内蔵物が内蔵されている。
【0017】
操作部60は、可撓管部25が延出している本体部61と、本体部61の基端部と連結し、内視鏡1を操作する操作者によって把持される把持部63と、把持部63と接続しているユニバーサルコード65とを有している。
【0018】
把持部63には、湾曲部23を湾曲操作する湾曲操作部67が配設されている。湾曲操作部67は、湾曲部23を左右に湾曲操作させる左右湾曲操作ノブ67aと、湾曲部23を上下に湾曲操作させる上下湾曲操作ノブ67bと、湾曲した湾曲部23の位置を固定する固定ノブ67cとを有している。
【0019】
次に湾曲部23について説明する。
湾曲部23は、複数の略円筒(環状)形状の節輪30(図2A参照)が挿入部10の長手方向に沿って並設されていることで、構成されている。隣り合う(挿入部10の長手方向に沿って前後に位置する)節輪30は、後述する連結部39によって回動可能に連結されている。このように節輪30が互いに回動可能に連結されることで、上述したように湾曲(回動)可能な湾曲部23は形成される。
【0020】
次に図2Aと図2Bとを参照して節輪30について説明する。
図2Aに示すように、節輪30は、略円筒形状を有している。このような節輪30は、挿入部10の長手方向に沿って並設されている。隣り合っている(挿入部10の挿入方向に沿って前後に位置する)節輪30は、上述したように、湾曲部23を形成するためにそれぞれ連結部39によって回動可能に連結されている。
【0021】
節輪30は、例えば金属などの硬質材料で形成されている。節輪30は、例えば、金属薄板プレス品、鍛造品などによって成形されている。
【0022】
節輪30の先端部側(図2Aの左側)には、突片(前側ヒンジ台)33が2つ配設されている。突片33は、節輪30の一部が前方(湾曲部23の先端部側)に向けて突出して平面状に形成されたものである。また、突片33には、貫通孔33aが穿設されている。2つの突片33は、周方向に略180°離れて配置されている。
【0023】
また、節輪30の後端部側(図2Aの右側)には、突片(後側ヒンジ台)35が2つ配設されている。突片35は、節輪30の一部が後方(湾曲部23の基端部側)に向けて突出して平面状に形成されたものである。また、突片35には、突片33の略板厚分の段差が設けられている。また、突片35には、貫通孔35aが穿設されている。2つの突片35は、周方向に略180°離れて配置されている。
【0024】
前側の2つの突片33と、後側の2つの突片35とはそれぞれ周方向に略90°離れた位置に配置されている。
【0025】
可撓管部25側の節輪30の突片35と、先端硬質部21側の節輪30の突片33とにおいて、貫通孔33a,35aには、回動部材(枢軸)である図示しないリベットが挿入される。これにより、可撓管部25側の節輪30と先端硬質部21側の節輪30とは、リベットを介して連結され、リベットを中心に回動可能に軸支される。このように、突片33と突片35との間には、リベットを回動支軸とした支軸部が形成されている。
【0026】
また言い換えると、突片33と突片35とリベットとは、可撓管部25側の節輪30と先端硬質部21側の節輪30とを連結する連結部39である。
【0027】
なお節輪30同士がリベットを介して連結された際、可撓管部25側の節輪30の突片33は、先端硬質部21側の節輪30の突片35に積層する。
【0028】
本実施形態の湾曲部23において、複数の節輪30間をそれぞれ連結する回動部材となるリベットは、各節輪30の前後間でそれぞれ略90°ずれた状態で交互に配置されている。これにより、湾曲部23は、上下左右の4方向にそれぞれ湾曲できるように構成される。
【0029】
図2Aと図2Bとに示すように、節輪30は、節輪30の軸方向に平行な断面において、周面31が部分的に屈曲することで形成される断面屈曲部41を有している。断面屈曲部41は、湾曲部23の湾曲によって負荷が節輪30に生じた際に、負荷が掛かる方向例えば節輪30の径方向において十分な強度を確保し、節輪30の径方向において負荷による節輪30の変形を防止するために、形成されている。本実施形態の断面屈曲部41は、擬似円筒多面体43(PCCPシェル)を有している。本実施形態では、湾曲部23が湾曲し、内蔵物が内周面31aに接触等することによって、内圧が内蔵物から節輪30に生じた際に、負荷が掛かる方向例えば節輪30の径方向において十分な強度を確保し、節輪30の径方向において負荷による節輪30の変形を防止するために、本実施形態の擬似円筒多面体43は形成されている。擬似円筒多面体43は、平板状の金属板から円筒状の節輪30が製造される際に、例えば周面31(内周面31aと外周面31b)が金型などによって挟み込まれてプレス加工されることで、周面31に形成される。
【0030】
擬似円筒多面体43は、周面31の一部である。擬似円筒多面体43は、周面31が厚み方向において重なることなく連続して形成される複数の平面45を有している。一方の平面の法線は、周面31の法線と、一方の平面に隣接する他方の平面の法線とに対して交差している。
【0031】
このような平面45は凸凹部47を形成し、図2Bに示すように、凸凹部47における凸部47aは内周面31aに対して隆起し、凸凹部47における凹部47bは外周面31bに対して陥没している。図2Bに示すように、凸部47aが内周面31aに配設されている箇所の裏側つまり外周面31bには、凸部47aとは逆に外周面31bに対して凹んだ凹部47bが配設されている。つまり厚み方向において、凸部47aと凹部47bとは同一直線上に配設されており、凸部47aの裏側は凹部47bとなる。凸部47aと凹部47bとは同じ構成であり、詳細には、凸部47aにおける後述する平面49aや辺49bや凸部47aの配列や数は、凹部47bと略同様である。そのため以下に凸部47aについてのみ記載する。
【0032】
図2Aと図2Bとに示すように、凸部47aは、内周面31aに対して角度を有して盛り上がっている2つ平面49aが1つの辺49bを共有し互いに隣接することで形成される。このような凸部47aは、2つ平面49aによって形成される平面対であり、山形状に形成される。また凸部47aは、辺49bにおいて角度を有することとなる。また辺49bは、角度を有した状態で隣接している2つの平面49aによって共有され、さらに内周面31aから突出していることとなる。2つの平面49aによって共有されている1つの辺49bは、図2Aと図3Cとに示すように、周方向に沿って配設されている。
【0033】
このような凸部47a(2つの平面49aによって形成される平面対)は、内周面31aに複数配設されている。なお凸部47aは、連結部39及び連結部39周辺を含む内周面31a全体に配設されていることが好適である。また本実施形態では、図2Aに示すように、凸部47a同士は周方向において所望する間隔離れて配設されている。また図2Bに示すように、凸部47aは、節輪30の軸方向において例えば2列といったように列を形成していてもよい。
【0034】
なお凹部47bの構成は、上述したように凸部47aの構成と略同様である。このように2つ平面49aが1つの辺49bを共有し互いに隣接し、これら2つ平面49aによって形成される平面対が複数配設され、平面対同士は周方向において所望する間隔離れて配設されることで、本実施形態の擬似円筒多面体43は形成される。
【0035】
次に図3Aと図3Bと図3Cとを参照して、本実施形態の湾曲部23の製造方法について説明する。
Step1(第1の工程:板材から節輪を形成するための節輪準備部を形成する工程)
金属の図示しない板材には、突片33,35を形成するための突片準備部が形成される。
突片準備部には、貫通孔33a,35aを形成するための図示しない貫通孔準備部が穴抜き加工によって形成される。
板材には、節輪30を形成するための節輪準備部101が穴抜き加工により形成される。節輪準備部は、略円筒状の節輪30が平板状に展開されたものである。
節輪準備部101に突片35における段差を形成するために、段差が段曲げ加工によって形成される。
板材から節輪準備部101が切り離される。
【0036】
Step2(第2の工程:節輪準備部101を円環化し、節輪準備部101を節輪30に加工する工程)
節輪準備部101を円筒形状にするために、節輪準備部101は少なくとも1回U曲げ加工される。そしてU曲げ加工された節輪準備部101は、さらにO曲げ加工される。このとき、節輪準備部101の両端面は、互いに対向し突き当てられる。
【0037】
Step3(第3の工程:断面屈曲部41が形成される工程)
第2の工程において、節輪準備部101がU曲げ加工されている際に、図3Bに示すように節輪準備部101は、裏面側と表面側とから擬似円筒多面体形状を転写させる金型103によって挟み込まれてプレス加工される。これにより、断面屈曲部41である擬似円筒多面体43が節輪準備部101に形成される。
このように、断面屈曲部41は、プレス加工によって、第2の工程と同時に形成される。
【0038】
なお断面屈曲部41は、第1の工程と同時に形成されてもよい。
【0039】
Step4(第4の工程:節輪準備部101の両端面を接合する工程)
O曲げ加工が施され円環化された際に突き当てられた節輪準備部101の両端部は、図3Cに示すようにレーザ溶接等によって接合する。これにより図2Aと図3Cとに示すような節輪30が形成される。
【0040】
節輪30は、擬似円筒多面体43によって、節輪30の径方向において十分な強度を確保している。そのため、負荷が節輪30の径方向において節輪30に生じても、節輪30が擬似円筒多面体43によって上述したように十分な強度を確保しているために、節輪30の径方向における節輪30の変形は防止される。
【0041】
また節輪30が上述したように塑性加工を容易にするために、降伏強度が低い材料であっても、節輪30は擬似円筒多面体43によって十分な強度を確保し、変形が防止されているために、節輪30は肉厚を厚く確保する必要が無く、節輪30は細径及び薄肉とすることができる。
【0042】
このように本実施形態では、節輪30に、断面屈曲部41、詳細には擬似円筒多面体43を形成することで、負荷が掛かる方向例えば節輪30の径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。
また本実施形態では、強度を十分に確保できるために、節輪30を細径及び薄肉にできる。
【0043】
また本実施形態では、擬似円筒多面体43を周面31全体に配設することで、節輪30全体の強度を確保でき、負荷が特定の部位に集中することを抑えることで、節輪30が変形することを防止できる。
【0044】
また本実施形態では、擬似円筒多面体43を、第1の工程または第2の工程にて形成するために、塑性加工における加工性を確保しつつ、強度を確保することができる。
【0045】
また本実施形態では、1つの辺49bを周方向に配設することで、節輪30の径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。なお1つの辺49bは、軸方向に配設されてもよい。これにより本実施形態では、軸方向における強度をより十分に確保することができる。
【0046】
次に図4Aと図4Bと図4Cとを参照して、本実施形態の第1の変形例について説明する。
本変形例では、凸凹部47同士が互いに隣接し、縁部を除く平面49aが三角形形状を有し、擬似円筒多面体43が形成されている。
【0047】
本変形例では、全ての平面49aにおける全ての三角形形状は、互いに合同であり、二等辺三角形形状を有している。
【0048】
平面49a同士は隣接しているため、平面49aにおける3つの辺はいずれも他の平面と共有されている。また3つの辺のいずれか1つの辺49bは、図4Bに示すように、周方向に沿って配設されている。
【0049】
上述したように、平面49a同士は、隣接し、二等辺三角形形状を有している。また、3つの辺のいずれか1つの辺49bが周方向に沿って配設されている。そのため、擬似円筒多面体43は、周方向における強度を確保するトラス構造を有することとなる。
【0050】
これにより本変形例は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また本変形例では、トラス構造によって、周方向における強度をより十分に確保することができる。
【0051】
次に図5Aと図5Bとを参照して、本実施形態の第2の変形例について説明する。
本変形例では、図5Aに示すように、全ての平面49aが三角形形状を有し、三角形形状を有する平面49aの大きさは位置によって異なり、平面49a同士は隣接することで、擬似円筒多面体43が形成されている。例えば、周方向における平面49aの大きさは同一であるが、軸方向における平面49aの大きさは異なっている。また例えば、周面31の縁側の平面49aの大きさは小さく、周面31の軸方向中央の平面49aの大きさは大きい。また例えば平面49aの単位面積当たりの数、すなわちトラス構造の節点の密度は、縁側では高く軸方向中央側では低い。そのため縁側では軸方向中央側よりも強度が高い。
【0052】
また平面49a同士は隣接しているため、平面49aにおける3つの辺はいずれも他の平面49aと共有されている。また3つの辺のいずれか1つの辺49bは、周方向に沿って配設されている。
【0053】
上述したように、平面49a同士は、隣接し、三角形形状を有している。また、3つの辺のいずれか1つの辺49bが周方向に沿って配設されている。そのため、擬似円筒多面体43は、周方向における強度を確保するトラス構造を有していることとなる。
【0054】
本変形例では、第1の実施形態と第1の変形例と同様の効果をえることができる。また本変形例では、平面49aの大きさは位置によって異なっているために、平面49aの位置に応じて強度を変えることができる。
【0055】
次に図6Aと図6Bとを参照して、本実施形態の第3の変形例について説明する。
本変形例では、図6Aに示すように、全ての平面49aが三角形形状を有し、平面49a同士は隣接することで、擬似円筒多面体43が形成されている。また平面49aにおいて、2つの一方側の平面49aaと2つの他方側の平面49abとによって、四角錐の側面形状が形成される。
【0056】
また平面49a同士は隣接しているため、平面49aにおける3つの辺はいずれも他の平面49aと共有されている。一方側の平面49aaにおける3つの辺のいずれか1つの辺49baは、周方向に沿って配設されている。
【0057】
上述したように、平面49a同士は、隣接し、三角形形状を有している。また、平面49aaにおいて、3つの辺のいずれか1つの辺49baが周方向に沿って配設されている。そのため、擬似円筒多面体43は、周方向における強度を確保するトラス構造を有することとなる。
【0058】
なお本変形例では、図6Bに示すように、他方側の平面49abにおける3つの辺のいずれか1つの辺49bbは、軸(高さ)方向に沿って配設されている。そのため擬似円筒多面体43は、周方向と共に軸方向における強度を確保するトラス構造を有していることとなる。
【0059】
これにより本変形例は、第1の実施形態と第1の変形例と同様の効果を得ることができる。また本変形例では、辺49bbを軸(高さ)方向に沿って配設することで、軸方向における強度をより十分に確保することができる。
【0060】
次に図7Aと図7Bと図7Cと図7Dとを参照して本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態の断面屈曲部41は、周面31に沿って配設され、周面31から突出している連続した帯状の突出部53を有している。突出部53は、1つでも複数であってもよい。本実施形態では、突出部53は、図7Aに示すように、例えば軸方向に沿って配設されている。
【0061】
突出部53は、例えば図7Bと図7Cと図7Dとに示すように内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に配設されていればよい。
突出部53は、図7Aと図7Bとに示すように、例えば外周面31bの一部が突出して形成され、外周面31bと一体である。なお突出部53は、外周面31bと別体であってもよい。また突出部53は、図7Cに示すように、例えば内周面31aの一部が突出して形成され、内周面31aと一体である。なお突出部53は、内周面31aと別体であってもよい。また突出部53は、図7Dに示すように、内周面31aと外周面31bとの両方に配設されている。この場合、内周面31a側の突出部53と外周面31b側の突出部53とは、図7Dにおいて、節輪30の厚み方向において、同一線上に配設されている。
【0062】
このように本実施形態では、突出部53を軸方向に連続して配設することで、引張・圧縮方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。また本実施形態では、内周面31a側の突出部53と外周面31b側の突出部53とを、図7Dに示すように、厚み方向において、同一線上に配設することで、引張・圧縮方向における強度をより十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを確実に防止できる。
【0063】
次に図8Aと図8Bと図8Cと図8Dとを参照して第2の実施形態の変形例について説明する。
本変形例において、突出部53は、例えば周方向に沿って連続して配設されている。このとき、突出部53は、上記同様に、内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に配設されていればよい。なお突出部53は、連結部39及び連結部39周辺を含むように、図示はしないが円環形状に配設されてもよい。
【0064】
これにより本変形例では、径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。つまり本変形例では、節輪30を潰れにくくすることができる。
【0065】
次に図9Aと図9Bと図9Cと図9Dを参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態の断面屈曲部41は、内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に対して凹んでいる(陥没している)凹部55を有している。
【0066】
凹部55は、例えば、周面31に沿って配設されている連続した帯状の溝部を有している。凹部55は、突出部53と同様に、例えば図9Aと図9Bとに示すように軸方向に沿って連続して配設されている。
【0067】
これにより本実施形態では、凹部55によって、肉厚を薄くできる。また本実施形態では、加圧によって形成される凹部55によって、圧縮圧力が増加し、疲労強度を増やすことができる。また本実施形態では、凹部55を軸方向に連続して配設することで、引張・圧縮方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。また本実施形態では、内周面31a側の凹部55と外周面31b側の凹部55とを、図9Dに示すように、厚み方向において、同一線上に配設することで、引張・圧縮方向における強度をより十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを確実に防止できる。
【0068】
なお本実施形態では、図10Aと図10Bと図10Cと図10Dとに示すように、凹部55を周方向に沿って連続して配設してもよい。これにより本実施形態では、径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。つまり本変形例では、節輪30を潰れにくくすることができる。
【0069】
次に図11Aと図11Bと図11Cと図11Dと図12Aと図12Bと図12Cと図12Dと図13Aと図13Bと図13Cと図13Dとを参照して、第3の実施形態の変形例について説明する。
本変形例において、凹部55は、周面31に不連続に形成されるディンプル部57であってもよい。ディンプル部57は、内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に配設されていればよい。
このとき図11Aと図11Bと図11Cと図11Dとに示すように、ディンプル部57は、軸方向に沿って配設されている。これにより本変形例では、引張・圧縮方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。
【0070】
またはディンプル部57は、図11Aと図11Bと図11Cと図11Dとに示すように、周方向に沿って配設されている。これにより本変形例では、径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。つまり本変形例では、節輪30を潰れにくくすることができる。
【0071】
またはディンプル部57は、図12Aと図12Bと図12Cと図12Dとに示すように、周方向に対して斜行し直線状に配設されている。これにより本変形例では、捻れ方向における強度を十分に確保でき、これらの方向に節輪30が変形することを防止できる。
【0072】
またはディンプル部57は、図13Aと図13Bと図13Cと図13Dとに示すように、周面31に分散されて配設されている。これにより本変形例では、様々な方向における強度を十分に確保でき、これらの方向に節輪30が変形することを防止できる。
【0073】
このように本変形例では、負荷が掛かる方向にディンプル部57を自在に配設することができるために、負荷が掛かる方向に応じて強度が十分に確保されている節輪30を容易に提供することができる。
【0074】
次に図14Aと図14Bと図14Cとを参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
本実施形態の断面屈曲部41は、内周面31aと外周面31bとのどちらか一方が突出し、他方が突出した部分の裏側にて凹んでいる(陥没している)突出凹部59を有している。
【0075】
突出凹部59は、例えば図14Aと図14Bとに示すように軸方向に沿って、または図14Cとに示すように周方向に沿って配設されている連続した帯状の段部を有している。突出凹部59は、押し抜かれることで形成される。
【0076】
これにより本実施形態では、肉厚を増やすことなく強度を確保することができる。
【0077】
次に図15を参照して、第4の実施形態の変形例について説明する。
本変形例において、突出凹部59は、周方向に沿って不連続に形成されているエンボス部を有している。エンボス部は、軸方向に沿って不連続に形成されていてもよい。
これにより本変形例では、第4の実施形態と同様に、肉厚を増やすことなく強度を確保することができる。
【0078】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0079】
1…内視鏡、10…挿入部、21…先端硬質部、23…湾曲部、25…可撓管部、30…節輪、31…周面、31a…内周面、31b…外周面、41…断面屈曲部、43…擬似円筒多面体、45…平面、47…凸凹部、49a…平面、49b…辺、101…節輪準備部、101a…開口部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中空の節輪同士が互いに回動可能に連結することによって構成される内視鏡の湾曲部と、内視鏡の湾曲部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡の湾曲部は、複数の中空の節輪同士が互いに回動可能に連結することによって、構成されている。湾曲部の湾曲半径を小さくすることと、節輪の内部に配設される内蔵物のための収納スペースを節輪の内部に確保することとを考慮して、節輪の肉厚は薄く、節輪の外径は小さく、節輪の内径は大きいことが好適である。
【0003】
例えば特許文献1には、剛性を高めるための塑性変形よりなる凹形または凸形の変形部を設けた湾曲管が開示されている。変形部は、節輪の周方向に沿って、節輪の周壁に配設されている。また変形部は、円周方向における連結部同士の間、連結部の近傍、または周壁全周に渡って連続して配設されている。
【0004】
また例えば特許文献2には、隣接する節輪をリベット無しで連結して極細化を可能にするとともに、円滑な湾曲操作が可能な内視鏡の湾曲管が開示されている。特許文献2において、節輪と一体の凸部がリベットの代わりに節輪に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−56002号公報
【特許文献2】特開2001−104239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、変形部以外の部分は、変形部に比べて剛性が低く、強度が弱い。また湾曲部が湾曲したり潰されたり捻れたり引っ張られたりすることに伴い、内圧が内蔵物から節輪に生じたり、外圧が外部から節輪に掛かったり、節輪に引張・圧縮・捻り等の負荷が掛かる。このような内圧や外力や負荷は、節輪にとって応力を発生させる。この応力が例えば捻り方向といった所定の方向において生じた際に、所定の方向における強度が十分に確保されていないと、節輪が変形する虞が生じる。このように強度は、負荷が掛かる方向によって、十分に確保されていない虞が生じる。
【0007】
また一般的に節輪が実用上で十分な強度を確保するために金属によって形成される場合、金属の硬さが低く、絞り性の良い材料であると、節輪は塑性加工しやすい。しかしこのような材料は降伏強度が低いため、節輪は負荷によって容易に変形してしまう。
そのため特許文献2において、節輪の強度を確保し、容易な変形を防止するためには、節輪の肉厚を従来よりも厚く確保する必要がある。しかし結果として、節輪の細径化と薄肉化とは制限されてしまう。
【0008】
本発明は、負荷が掛かる方向において強度を十分に確保でき、細径及び薄肉な内視鏡の湾曲部と、内視鏡の湾曲部の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は目的を達成するために、隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部であって、前記節輪は、前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を有していることを特徴とする内視鏡の湾曲部を提供する。
【0010】
また本発明は目的を達成するために、隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部の製造方法であって、板材から前記節輪を形成するための節輪準備部を形成する工程と、前記節輪準備部を円環化し、前記節輪準備部を前記節輪に加工する工程と、前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程と、円環化された際に突き当てられた前記節輪準備部の両端部を接合する工程と、を具備することを特徴とする内視鏡の湾曲部の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、負荷が掛かる方向において強度を十分に確保でき、細径及び薄肉な内視鏡の湾曲部と、内視鏡の湾曲部の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る内視鏡の概略図である。
【図2A】図2Aは、第1の実施形態における節輪の斜視図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに記載された2B−2B線における断面図である。
【図3A】図3Aは、湾曲部の製造方法を示すフローチャートである。
【図3B】図3Bは、第3の工程(断面屈曲部が形成される工程)を説明するための図である。
【図3C】図3Cは、図2Bに記載された3C−3C線における断面図である。
【図4A】図4Aは、第1の実施形態の第1の変形例における節輪の斜視図である。
【図4B】図4Bは、本変形例における擬似円筒多面体の上面図である。
【図4C】図4Cは、図4Bに記載された4C−4C線における断面図である。
【図5A】図5Aは、第2の変形例における擬似円筒多面体の上面図である。
【図5B】図5Bは、図5Aに記載された5B−5B線における断面図である。
【図6A】図6Aは、第3の変形例における擬似円筒多面体の上面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに記載された6B−6B線における断面図である。
【図7A】図7Aは、第2の実施形態における節輪の側面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示す節輪を軸方向から見た際の側面図である。
【図7C】図7Cは、突出部が内周面に配設された節輪を軸方向から見た際の側面図である。
【図7D】図7Dは、突出部が内周面と外周面とに配設された節輪を軸方向から見た際の側面図である。
【図8A】図8Aは、第2の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図8B】図8Bは、図8Aに記載された8B−8B線における断面図である。
【図8C】図8Cは、突出部が内周面に配設された状態の8B−8B線における断面図である。
【図8D】図8Dは、突出部が内周面と外周面とに配設された状態の8B−8B線における断面図である。
【図9A】図9Aは、第3の実施形態における節輪の側面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに記載された9B−9B線における断面図である。
【図9C】図9Cは、凹部が内周面に配設された状態の9B−9B線における断面図である。
【図9D】図9Dは、凹部が内周面と外周面とに配設された状態の9B−9B線における断面図である。
【図10A】図10Aは、凹部が周方向に配設された状態の節輪の側面図である。
【図10B】図10Bは、図10Aに記載された10B−10B線における断面図である。
【図10C】図10Cは、凹部が内周面に配設された状態の10B−10B線における断面図である。
【図10D】図10Dは、凹部が内周面と外周面とに配設された状態の10B−10B線における断面図である。
【図11A】図11Aは、第3の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図11B】図11Bは、図11Aに記載された11B−11B線における断面図である。
【図11C】図11Cは、ディンプル部が内周面に配設された状態の11B−11B線における断面図である。
【図11D】図11Dは、ディンプル部が内周面と外周面とに配設された状態の11B−11B線における断面図である。
【図12A】図12Aは、第3の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図12B】図12Bは、図12Aに記載された12B−12B線における断面図である。
【図12C】図12Cは、ディンプル部が内周面に配設された状態の12B−12B線における断面図である。
【図12D】図12Dは、ディンプル部が内周面と外周面とに配設された状態の12B−12B線における断面図である。
【図13A】図13Aは、第3の実施形態の変形例における節輪の側面図である。
【図13B】図13Bは、図13Aに記載された13B−13B線における断面図である。
【図13C】図13Cは、ディンプル部が内周面に配設された状態の13B−13B線における断面図である。
【図13D】図13Dは、ディンプル部が内周面と外周面とに配設された状態の13B−13B線における断面図である。
【図14A】図14Aは、第4の実施形態における節輪の側面図である。
【図14B】図14Bは、図14Aに記載された14B−14B線における断面図である。
【図14C】図14Cは、突出凹部が周方向に配設された状態の節輪の側面図である。
【図15】図15は、第4の実施形態の変形例における節輪の14B−14B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1と図2Aと図2Bと図3Aと図3Bと図3Cとを参照して第1の実施形態について説明する。
図1に示すように内視鏡1には、患者の体腔内等に挿入される細長い挿入部10と、挿入部10の基端部と連結し、内視鏡1を操作する操作部60とが配設されている。
【0014】
挿入部10は、挿入部10の先端部側から基端部側に向かって、先端硬質部21と、湾曲部23と、可撓管部25とを有している。先端硬質部21の基端部は湾曲部23の先端部と連結し、湾曲部23の基端部は可撓管部25の先端部と連結している。
【0015】
先端硬質部21は、挿入部10の先端部であり、硬い。
湾曲部23については、後述する。
可撓管部25は、所望な可撓性を有しており、外力によって曲がる。可撓管部25は、操作部60における後述する本体部61から延出されている管状部材である。
【0016】
挿入部10には、例えば、図示しない、操作ワイヤと、吸引チャンネルと、送気・送水チャンネルと、撮像ユニットにおけるケーブルと、後述するワイヤガイド部材といった内蔵物が内蔵されている。
【0017】
操作部60は、可撓管部25が延出している本体部61と、本体部61の基端部と連結し、内視鏡1を操作する操作者によって把持される把持部63と、把持部63と接続しているユニバーサルコード65とを有している。
【0018】
把持部63には、湾曲部23を湾曲操作する湾曲操作部67が配設されている。湾曲操作部67は、湾曲部23を左右に湾曲操作させる左右湾曲操作ノブ67aと、湾曲部23を上下に湾曲操作させる上下湾曲操作ノブ67bと、湾曲した湾曲部23の位置を固定する固定ノブ67cとを有している。
【0019】
次に湾曲部23について説明する。
湾曲部23は、複数の略円筒(環状)形状の節輪30(図2A参照)が挿入部10の長手方向に沿って並設されていることで、構成されている。隣り合う(挿入部10の長手方向に沿って前後に位置する)節輪30は、後述する連結部39によって回動可能に連結されている。このように節輪30が互いに回動可能に連結されることで、上述したように湾曲(回動)可能な湾曲部23は形成される。
【0020】
次に図2Aと図2Bとを参照して節輪30について説明する。
図2Aに示すように、節輪30は、略円筒形状を有している。このような節輪30は、挿入部10の長手方向に沿って並設されている。隣り合っている(挿入部10の挿入方向に沿って前後に位置する)節輪30は、上述したように、湾曲部23を形成するためにそれぞれ連結部39によって回動可能に連結されている。
【0021】
節輪30は、例えば金属などの硬質材料で形成されている。節輪30は、例えば、金属薄板プレス品、鍛造品などによって成形されている。
【0022】
節輪30の先端部側(図2Aの左側)には、突片(前側ヒンジ台)33が2つ配設されている。突片33は、節輪30の一部が前方(湾曲部23の先端部側)に向けて突出して平面状に形成されたものである。また、突片33には、貫通孔33aが穿設されている。2つの突片33は、周方向に略180°離れて配置されている。
【0023】
また、節輪30の後端部側(図2Aの右側)には、突片(後側ヒンジ台)35が2つ配設されている。突片35は、節輪30の一部が後方(湾曲部23の基端部側)に向けて突出して平面状に形成されたものである。また、突片35には、突片33の略板厚分の段差が設けられている。また、突片35には、貫通孔35aが穿設されている。2つの突片35は、周方向に略180°離れて配置されている。
【0024】
前側の2つの突片33と、後側の2つの突片35とはそれぞれ周方向に略90°離れた位置に配置されている。
【0025】
可撓管部25側の節輪30の突片35と、先端硬質部21側の節輪30の突片33とにおいて、貫通孔33a,35aには、回動部材(枢軸)である図示しないリベットが挿入される。これにより、可撓管部25側の節輪30と先端硬質部21側の節輪30とは、リベットを介して連結され、リベットを中心に回動可能に軸支される。このように、突片33と突片35との間には、リベットを回動支軸とした支軸部が形成されている。
【0026】
また言い換えると、突片33と突片35とリベットとは、可撓管部25側の節輪30と先端硬質部21側の節輪30とを連結する連結部39である。
【0027】
なお節輪30同士がリベットを介して連結された際、可撓管部25側の節輪30の突片33は、先端硬質部21側の節輪30の突片35に積層する。
【0028】
本実施形態の湾曲部23において、複数の節輪30間をそれぞれ連結する回動部材となるリベットは、各節輪30の前後間でそれぞれ略90°ずれた状態で交互に配置されている。これにより、湾曲部23は、上下左右の4方向にそれぞれ湾曲できるように構成される。
【0029】
図2Aと図2Bとに示すように、節輪30は、節輪30の軸方向に平行な断面において、周面31が部分的に屈曲することで形成される断面屈曲部41を有している。断面屈曲部41は、湾曲部23の湾曲によって負荷が節輪30に生じた際に、負荷が掛かる方向例えば節輪30の径方向において十分な強度を確保し、節輪30の径方向において負荷による節輪30の変形を防止するために、形成されている。本実施形態の断面屈曲部41は、擬似円筒多面体43(PCCPシェル)を有している。本実施形態では、湾曲部23が湾曲し、内蔵物が内周面31aに接触等することによって、内圧が内蔵物から節輪30に生じた際に、負荷が掛かる方向例えば節輪30の径方向において十分な強度を確保し、節輪30の径方向において負荷による節輪30の変形を防止するために、本実施形態の擬似円筒多面体43は形成されている。擬似円筒多面体43は、平板状の金属板から円筒状の節輪30が製造される際に、例えば周面31(内周面31aと外周面31b)が金型などによって挟み込まれてプレス加工されることで、周面31に形成される。
【0030】
擬似円筒多面体43は、周面31の一部である。擬似円筒多面体43は、周面31が厚み方向において重なることなく連続して形成される複数の平面45を有している。一方の平面の法線は、周面31の法線と、一方の平面に隣接する他方の平面の法線とに対して交差している。
【0031】
このような平面45は凸凹部47を形成し、図2Bに示すように、凸凹部47における凸部47aは内周面31aに対して隆起し、凸凹部47における凹部47bは外周面31bに対して陥没している。図2Bに示すように、凸部47aが内周面31aに配設されている箇所の裏側つまり外周面31bには、凸部47aとは逆に外周面31bに対して凹んだ凹部47bが配設されている。つまり厚み方向において、凸部47aと凹部47bとは同一直線上に配設されており、凸部47aの裏側は凹部47bとなる。凸部47aと凹部47bとは同じ構成であり、詳細には、凸部47aにおける後述する平面49aや辺49bや凸部47aの配列や数は、凹部47bと略同様である。そのため以下に凸部47aについてのみ記載する。
【0032】
図2Aと図2Bとに示すように、凸部47aは、内周面31aに対して角度を有して盛り上がっている2つ平面49aが1つの辺49bを共有し互いに隣接することで形成される。このような凸部47aは、2つ平面49aによって形成される平面対であり、山形状に形成される。また凸部47aは、辺49bにおいて角度を有することとなる。また辺49bは、角度を有した状態で隣接している2つの平面49aによって共有され、さらに内周面31aから突出していることとなる。2つの平面49aによって共有されている1つの辺49bは、図2Aと図3Cとに示すように、周方向に沿って配設されている。
【0033】
このような凸部47a(2つの平面49aによって形成される平面対)は、内周面31aに複数配設されている。なお凸部47aは、連結部39及び連結部39周辺を含む内周面31a全体に配設されていることが好適である。また本実施形態では、図2Aに示すように、凸部47a同士は周方向において所望する間隔離れて配設されている。また図2Bに示すように、凸部47aは、節輪30の軸方向において例えば2列といったように列を形成していてもよい。
【0034】
なお凹部47bの構成は、上述したように凸部47aの構成と略同様である。このように2つ平面49aが1つの辺49bを共有し互いに隣接し、これら2つ平面49aによって形成される平面対が複数配設され、平面対同士は周方向において所望する間隔離れて配設されることで、本実施形態の擬似円筒多面体43は形成される。
【0035】
次に図3Aと図3Bと図3Cとを参照して、本実施形態の湾曲部23の製造方法について説明する。
Step1(第1の工程:板材から節輪を形成するための節輪準備部を形成する工程)
金属の図示しない板材には、突片33,35を形成するための突片準備部が形成される。
突片準備部には、貫通孔33a,35aを形成するための図示しない貫通孔準備部が穴抜き加工によって形成される。
板材には、節輪30を形成するための節輪準備部101が穴抜き加工により形成される。節輪準備部は、略円筒状の節輪30が平板状に展開されたものである。
節輪準備部101に突片35における段差を形成するために、段差が段曲げ加工によって形成される。
板材から節輪準備部101が切り離される。
【0036】
Step2(第2の工程:節輪準備部101を円環化し、節輪準備部101を節輪30に加工する工程)
節輪準備部101を円筒形状にするために、節輪準備部101は少なくとも1回U曲げ加工される。そしてU曲げ加工された節輪準備部101は、さらにO曲げ加工される。このとき、節輪準備部101の両端面は、互いに対向し突き当てられる。
【0037】
Step3(第3の工程:断面屈曲部41が形成される工程)
第2の工程において、節輪準備部101がU曲げ加工されている際に、図3Bに示すように節輪準備部101は、裏面側と表面側とから擬似円筒多面体形状を転写させる金型103によって挟み込まれてプレス加工される。これにより、断面屈曲部41である擬似円筒多面体43が節輪準備部101に形成される。
このように、断面屈曲部41は、プレス加工によって、第2の工程と同時に形成される。
【0038】
なお断面屈曲部41は、第1の工程と同時に形成されてもよい。
【0039】
Step4(第4の工程:節輪準備部101の両端面を接合する工程)
O曲げ加工が施され円環化された際に突き当てられた節輪準備部101の両端部は、図3Cに示すようにレーザ溶接等によって接合する。これにより図2Aと図3Cとに示すような節輪30が形成される。
【0040】
節輪30は、擬似円筒多面体43によって、節輪30の径方向において十分な強度を確保している。そのため、負荷が節輪30の径方向において節輪30に生じても、節輪30が擬似円筒多面体43によって上述したように十分な強度を確保しているために、節輪30の径方向における節輪30の変形は防止される。
【0041】
また節輪30が上述したように塑性加工を容易にするために、降伏強度が低い材料であっても、節輪30は擬似円筒多面体43によって十分な強度を確保し、変形が防止されているために、節輪30は肉厚を厚く確保する必要が無く、節輪30は細径及び薄肉とすることができる。
【0042】
このように本実施形態では、節輪30に、断面屈曲部41、詳細には擬似円筒多面体43を形成することで、負荷が掛かる方向例えば節輪30の径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。
また本実施形態では、強度を十分に確保できるために、節輪30を細径及び薄肉にできる。
【0043】
また本実施形態では、擬似円筒多面体43を周面31全体に配設することで、節輪30全体の強度を確保でき、負荷が特定の部位に集中することを抑えることで、節輪30が変形することを防止できる。
【0044】
また本実施形態では、擬似円筒多面体43を、第1の工程または第2の工程にて形成するために、塑性加工における加工性を確保しつつ、強度を確保することができる。
【0045】
また本実施形態では、1つの辺49bを周方向に配設することで、節輪30の径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。なお1つの辺49bは、軸方向に配設されてもよい。これにより本実施形態では、軸方向における強度をより十分に確保することができる。
【0046】
次に図4Aと図4Bと図4Cとを参照して、本実施形態の第1の変形例について説明する。
本変形例では、凸凹部47同士が互いに隣接し、縁部を除く平面49aが三角形形状を有し、擬似円筒多面体43が形成されている。
【0047】
本変形例では、全ての平面49aにおける全ての三角形形状は、互いに合同であり、二等辺三角形形状を有している。
【0048】
平面49a同士は隣接しているため、平面49aにおける3つの辺はいずれも他の平面と共有されている。また3つの辺のいずれか1つの辺49bは、図4Bに示すように、周方向に沿って配設されている。
【0049】
上述したように、平面49a同士は、隣接し、二等辺三角形形状を有している。また、3つの辺のいずれか1つの辺49bが周方向に沿って配設されている。そのため、擬似円筒多面体43は、周方向における強度を確保するトラス構造を有することとなる。
【0050】
これにより本変形例は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また本変形例では、トラス構造によって、周方向における強度をより十分に確保することができる。
【0051】
次に図5Aと図5Bとを参照して、本実施形態の第2の変形例について説明する。
本変形例では、図5Aに示すように、全ての平面49aが三角形形状を有し、三角形形状を有する平面49aの大きさは位置によって異なり、平面49a同士は隣接することで、擬似円筒多面体43が形成されている。例えば、周方向における平面49aの大きさは同一であるが、軸方向における平面49aの大きさは異なっている。また例えば、周面31の縁側の平面49aの大きさは小さく、周面31の軸方向中央の平面49aの大きさは大きい。また例えば平面49aの単位面積当たりの数、すなわちトラス構造の節点の密度は、縁側では高く軸方向中央側では低い。そのため縁側では軸方向中央側よりも強度が高い。
【0052】
また平面49a同士は隣接しているため、平面49aにおける3つの辺はいずれも他の平面49aと共有されている。また3つの辺のいずれか1つの辺49bは、周方向に沿って配設されている。
【0053】
上述したように、平面49a同士は、隣接し、三角形形状を有している。また、3つの辺のいずれか1つの辺49bが周方向に沿って配設されている。そのため、擬似円筒多面体43は、周方向における強度を確保するトラス構造を有していることとなる。
【0054】
本変形例では、第1の実施形態と第1の変形例と同様の効果をえることができる。また本変形例では、平面49aの大きさは位置によって異なっているために、平面49aの位置に応じて強度を変えることができる。
【0055】
次に図6Aと図6Bとを参照して、本実施形態の第3の変形例について説明する。
本変形例では、図6Aに示すように、全ての平面49aが三角形形状を有し、平面49a同士は隣接することで、擬似円筒多面体43が形成されている。また平面49aにおいて、2つの一方側の平面49aaと2つの他方側の平面49abとによって、四角錐の側面形状が形成される。
【0056】
また平面49a同士は隣接しているため、平面49aにおける3つの辺はいずれも他の平面49aと共有されている。一方側の平面49aaにおける3つの辺のいずれか1つの辺49baは、周方向に沿って配設されている。
【0057】
上述したように、平面49a同士は、隣接し、三角形形状を有している。また、平面49aaにおいて、3つの辺のいずれか1つの辺49baが周方向に沿って配設されている。そのため、擬似円筒多面体43は、周方向における強度を確保するトラス構造を有することとなる。
【0058】
なお本変形例では、図6Bに示すように、他方側の平面49abにおける3つの辺のいずれか1つの辺49bbは、軸(高さ)方向に沿って配設されている。そのため擬似円筒多面体43は、周方向と共に軸方向における強度を確保するトラス構造を有していることとなる。
【0059】
これにより本変形例は、第1の実施形態と第1の変形例と同様の効果を得ることができる。また本変形例では、辺49bbを軸(高さ)方向に沿って配設することで、軸方向における強度をより十分に確保することができる。
【0060】
次に図7Aと図7Bと図7Cと図7Dとを参照して本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態の断面屈曲部41は、周面31に沿って配設され、周面31から突出している連続した帯状の突出部53を有している。突出部53は、1つでも複数であってもよい。本実施形態では、突出部53は、図7Aに示すように、例えば軸方向に沿って配設されている。
【0061】
突出部53は、例えば図7Bと図7Cと図7Dとに示すように内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に配設されていればよい。
突出部53は、図7Aと図7Bとに示すように、例えば外周面31bの一部が突出して形成され、外周面31bと一体である。なお突出部53は、外周面31bと別体であってもよい。また突出部53は、図7Cに示すように、例えば内周面31aの一部が突出して形成され、内周面31aと一体である。なお突出部53は、内周面31aと別体であってもよい。また突出部53は、図7Dに示すように、内周面31aと外周面31bとの両方に配設されている。この場合、内周面31a側の突出部53と外周面31b側の突出部53とは、図7Dにおいて、節輪30の厚み方向において、同一線上に配設されている。
【0062】
このように本実施形態では、突出部53を軸方向に連続して配設することで、引張・圧縮方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。また本実施形態では、内周面31a側の突出部53と外周面31b側の突出部53とを、図7Dに示すように、厚み方向において、同一線上に配設することで、引張・圧縮方向における強度をより十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを確実に防止できる。
【0063】
次に図8Aと図8Bと図8Cと図8Dとを参照して第2の実施形態の変形例について説明する。
本変形例において、突出部53は、例えば周方向に沿って連続して配設されている。このとき、突出部53は、上記同様に、内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に配設されていればよい。なお突出部53は、連結部39及び連結部39周辺を含むように、図示はしないが円環形状に配設されてもよい。
【0064】
これにより本変形例では、径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。つまり本変形例では、節輪30を潰れにくくすることができる。
【0065】
次に図9Aと図9Bと図9Cと図9Dを参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態の断面屈曲部41は、内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に対して凹んでいる(陥没している)凹部55を有している。
【0066】
凹部55は、例えば、周面31に沿って配設されている連続した帯状の溝部を有している。凹部55は、突出部53と同様に、例えば図9Aと図9Bとに示すように軸方向に沿って連続して配設されている。
【0067】
これにより本実施形態では、凹部55によって、肉厚を薄くできる。また本実施形態では、加圧によって形成される凹部55によって、圧縮圧力が増加し、疲労強度を増やすことができる。また本実施形態では、凹部55を軸方向に連続して配設することで、引張・圧縮方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。また本実施形態では、内周面31a側の凹部55と外周面31b側の凹部55とを、図9Dに示すように、厚み方向において、同一線上に配設することで、引張・圧縮方向における強度をより十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを確実に防止できる。
【0068】
なお本実施形態では、図10Aと図10Bと図10Cと図10Dとに示すように、凹部55を周方向に沿って連続して配設してもよい。これにより本実施形態では、径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。つまり本変形例では、節輪30を潰れにくくすることができる。
【0069】
次に図11Aと図11Bと図11Cと図11Dと図12Aと図12Bと図12Cと図12Dと図13Aと図13Bと図13Cと図13Dとを参照して、第3の実施形態の変形例について説明する。
本変形例において、凹部55は、周面31に不連続に形成されるディンプル部57であってもよい。ディンプル部57は、内周面31aと外周面31bとの少なくとも一方に配設されていればよい。
このとき図11Aと図11Bと図11Cと図11Dとに示すように、ディンプル部57は、軸方向に沿って配設されている。これにより本変形例では、引張・圧縮方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。
【0070】
またはディンプル部57は、図11Aと図11Bと図11Cと図11Dとに示すように、周方向に沿って配設されている。これにより本変形例では、径方向における強度を十分に確保でき、この方向に節輪30が変形することを防止できる。つまり本変形例では、節輪30を潰れにくくすることができる。
【0071】
またはディンプル部57は、図12Aと図12Bと図12Cと図12Dとに示すように、周方向に対して斜行し直線状に配設されている。これにより本変形例では、捻れ方向における強度を十分に確保でき、これらの方向に節輪30が変形することを防止できる。
【0072】
またはディンプル部57は、図13Aと図13Bと図13Cと図13Dとに示すように、周面31に分散されて配設されている。これにより本変形例では、様々な方向における強度を十分に確保でき、これらの方向に節輪30が変形することを防止できる。
【0073】
このように本変形例では、負荷が掛かる方向にディンプル部57を自在に配設することができるために、負荷が掛かる方向に応じて強度が十分に確保されている節輪30を容易に提供することができる。
【0074】
次に図14Aと図14Bと図14Cとを参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
本実施形態の断面屈曲部41は、内周面31aと外周面31bとのどちらか一方が突出し、他方が突出した部分の裏側にて凹んでいる(陥没している)突出凹部59を有している。
【0075】
突出凹部59は、例えば図14Aと図14Bとに示すように軸方向に沿って、または図14Cとに示すように周方向に沿って配設されている連続した帯状の段部を有している。突出凹部59は、押し抜かれることで形成される。
【0076】
これにより本実施形態では、肉厚を増やすことなく強度を確保することができる。
【0077】
次に図15を参照して、第4の実施形態の変形例について説明する。
本変形例において、突出凹部59は、周方向に沿って不連続に形成されているエンボス部を有している。エンボス部は、軸方向に沿って不連続に形成されていてもよい。
これにより本変形例では、第4の実施形態と同様に、肉厚を増やすことなく強度を確保することができる。
【0078】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0079】
1…内視鏡、10…挿入部、21…先端硬質部、23…湾曲部、25…可撓管部、30…節輪、31…周面、31a…内周面、31b…外周面、41…断面屈曲部、43…擬似円筒多面体、45…平面、47…凸凹部、49a…平面、49b…辺、101…節輪準備部、101a…開口部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部であって、
前記節輪は、前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を有していることを特徴とする内視鏡の湾曲部。
【請求項2】
前記断面屈曲部は、前記周面が前記節輪の厚み方向において重なることなく連続することで形成される複数の平面を有している擬似円筒多面体を有し、
前記擬似円筒多面体において、一方の前記平面の法線は、前記周面の法線及び一方の前記平面に隣接する他方の前記平面の法線とに対して交差されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項3】
2つの前記平面が1つの辺を共有し互いに隣接し、これら2つの前記平面によって形成される平面対が複数配設され、前記平面対同士は前記節輪の周方向において所望する間隔離れて配設されることで、前記擬似円筒多面体は形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項4】
2つの前記平面によって共有されている前記1つの辺は、前記節輪の周方向に沿って、または前記節輪の軸方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項5】
互いに隣接して、縁部を除く全ての前記平面が三角形形状を有することで、前記擬似円筒多面体は形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項6】
全ての前記平面における全ての三角形形状は、互いに合同であり、二等辺三角形形状を有していることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項7】
三角形形状を有する前記平面の大きさは、位置によって異なることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項8】
三角形形状の前記平面における1つの辺は、前記節輪の周方向に沿って、または前記節輪の軸方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項9】
前記断面屈曲部は、前記周面に沿って配設され、前記周面から突出している連続した帯状の突出部を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項10】
前記突出部は、前記節輪の軸方向に沿ってまたは前記節輪の周方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項11】
前記突出部は、前記周面の内周面と外周面との少なくとも一方に配設されていることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項12】
前記内周面側の前記突出部と前記外周面側の前記突出部とは、前記節輪の厚み方向において、同一線上に配設されていることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項13】
前記断面屈曲部は、前記周面の外周面と内周面との少なくとも一方に対して凹んでいる凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項14】
前記内周面側の前記凹部と前記外周面側の前記凹部とは、前記節輪の厚み方向において、同一線上に配設されていることを特徴とする請求項13に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項15】
前記凹部は、前記節輪の軸方向に沿ってまたは前記節輪の周方向に沿って配設されている連続した帯状の溝部を有することを特徴とする請求項13に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項16】
前記凹部は、前記周面に不連続に形成されるディンプル部を有することを特徴とする請求項13に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項17】
前記断面屈曲部は、前記周面の内周面と外周面とのどちらか一方が突出し、他方が突出した部分の裏側にて凹んでいる突出凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項18】
前記突出凹部は、前記節輪の軸方向に沿って、または前記節輪の周方向に沿って配設されている連続した帯状の段部を有していることを特徴とする請求項17に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項19】
前記突出凹部は、前記節輪の軸方向に沿って、または前記節輪の周方向に沿って不連続に形成されているエンボス部を有していることを特徴とする請求項17に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項20】
隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部の製造方法であって、
板材から前記節輪を形成するための節輪準備部を形成する工程と、
前記節輪準備部を円環化し、前記節輪準備部を前記節輪に加工する工程と、
前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程と、
円環化された際に突き当てられた前記節輪準備部の両端部を接合する工程と、
を具備することを特徴とする内視鏡の湾曲部の製造方法。
【請求項21】
前記断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程は、プレス加工によって、断面屈曲部を前記節輪準備部に形成することを特徴とする請求項20に記載の内視鏡の湾曲部の製造方法。
【請求項22】
前記断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程は、前記節輪準備部を前記節輪に加工する工程と同時に行われることを特徴とする請求項20に記載の内視鏡の湾曲部の製造方法。
【請求項23】
前記断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程は、前記節輪準備部を形成する工程と同時に行われることを特徴とする請求項20に記載の内視鏡の湾曲部の製造方法。
【請求項1】
隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部であって、
前記節輪は、前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を有していることを特徴とする内視鏡の湾曲部。
【請求項2】
前記断面屈曲部は、前記周面が前記節輪の厚み方向において重なることなく連続することで形成される複数の平面を有している擬似円筒多面体を有し、
前記擬似円筒多面体において、一方の前記平面の法線は、前記周面の法線及び一方の前記平面に隣接する他方の前記平面の法線とに対して交差されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項3】
2つの前記平面が1つの辺を共有し互いに隣接し、これら2つの前記平面によって形成される平面対が複数配設され、前記平面対同士は前記節輪の周方向において所望する間隔離れて配設されることで、前記擬似円筒多面体は形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項4】
2つの前記平面によって共有されている前記1つの辺は、前記節輪の周方向に沿って、または前記節輪の軸方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項5】
互いに隣接して、縁部を除く全ての前記平面が三角形形状を有することで、前記擬似円筒多面体は形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項6】
全ての前記平面における全ての三角形形状は、互いに合同であり、二等辺三角形形状を有していることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項7】
三角形形状を有する前記平面の大きさは、位置によって異なることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項8】
三角形形状の前記平面における1つの辺は、前記節輪の周方向に沿って、または前記節輪の軸方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項9】
前記断面屈曲部は、前記周面に沿って配設され、前記周面から突出している連続した帯状の突出部を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項10】
前記突出部は、前記節輪の軸方向に沿ってまたは前記節輪の周方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項11】
前記突出部は、前記周面の内周面と外周面との少なくとも一方に配設されていることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項12】
前記内周面側の前記突出部と前記外周面側の前記突出部とは、前記節輪の厚み方向において、同一線上に配設されていることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項13】
前記断面屈曲部は、前記周面の外周面と内周面との少なくとも一方に対して凹んでいる凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項14】
前記内周面側の前記凹部と前記外周面側の前記凹部とは、前記節輪の厚み方向において、同一線上に配設されていることを特徴とする請求項13に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項15】
前記凹部は、前記節輪の軸方向に沿ってまたは前記節輪の周方向に沿って配設されている連続した帯状の溝部を有することを特徴とする請求項13に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項16】
前記凹部は、前記周面に不連続に形成されるディンプル部を有することを特徴とする請求項13に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項17】
前記断面屈曲部は、前記周面の内周面と外周面とのどちらか一方が突出し、他方が突出した部分の裏側にて凹んでいる突出凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項18】
前記突出凹部は、前記節輪の軸方向に沿って、または前記節輪の周方向に沿って配設されている連続した帯状の段部を有していることを特徴とする請求項17に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項19】
前記突出凹部は、前記節輪の軸方向に沿って、または前記節輪の周方向に沿って不連続に形成されているエンボス部を有していることを特徴とする請求項17に記載の内視鏡の湾曲部。
【請求項20】
隣り合うもの同士が回動可能に連結している節輪を有する内視鏡の湾曲部の製造方法であって、
板材から前記節輪を形成するための節輪準備部を形成する工程と、
前記節輪準備部を円環化し、前記節輪準備部を前記節輪に加工する工程と、
前記節輪の軸方向に平行な断面において、前記節輪の周面が屈曲することで形成される断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程と、
円環化された際に突き当てられた前記節輪準備部の両端部を接合する工程と、
を具備することを特徴とする内視鏡の湾曲部の製造方法。
【請求項21】
前記断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程は、プレス加工によって、断面屈曲部を前記節輪準備部に形成することを特徴とする請求項20に記載の内視鏡の湾曲部の製造方法。
【請求項22】
前記断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程は、前記節輪準備部を前記節輪に加工する工程と同時に行われることを特徴とする請求項20に記載の内視鏡の湾曲部の製造方法。
【請求項23】
前記断面屈曲部を前記節輪準備部に形成する工程は、前記節輪準備部を形成する工程と同時に行われることを特徴とする請求項20に記載の内視鏡の湾曲部の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【公開番号】特開2012−152274(P2012−152274A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11873(P2011−11873)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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