説明

内視鏡の製造方法

【課題】所望量の接着剤によって、内視鏡挿入部の網状管(ネット/ブレード)と外皮とを所望箇所で的確に接着することができる内視鏡の製造方法を提供する。
【解決手段】内視鏡の挿入部14において、網状管76と、当該網状管76上に接着層77を介して被覆される外皮80とが設けられる。接着層77は、基材と、基材の表裏面に設けられる接着部とを有する。この接着層77の接着部は、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって基材上に接着剤が付与されることで形成される。このようにインクジェットタイプの接着剤付与装置を用いることで、所望量の接着剤を的確に付与することができ、網状管76と外皮80とを所望箇所で接着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡の製造方法に係り、特に、内視鏡挿入部の網状管(ネット/ブレード)と外皮との接着技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、内視鏡を利用した診断及び処置が広く行われており、その活用範囲も多岐にわたる。例えば、内視鏡の処置具挿通用のチャンネルを介して体腔内に処置具を挿入し、当該処置具によってポリープの切除等の処置を患部に施すことができる。また、内視鏡の挿入部の先端に内蔵されるCCD等の撮像素子によって体腔内の画像が撮影され、手元操作部に接続されるプロセッサ装置における種々の処理を経て体腔内の所望位置・所望角度の画像をモニタに表示することができる。
【0003】
体腔内に挿入される内視鏡の挿入部には、先端側から基端側に向かって、対物レンズ等が設けられる先端硬質部、手元操作部を介したユーザ(術者)の操作に応じて屈曲(湾曲)する湾曲部(アングル部)、及び挿入経路に倣って湾曲自在の軟性部(可撓部)が順次配設される。挿入部を構成するこれらの先端構成部、湾曲部及び軟性部は、要求される機能・特性が相違し、それぞれの要求に応じた異なる内部構成を有する。
【0004】
その一方で、体腔内挿入時に必要な挿入部の剛性(柔軟性)やスムーズな挿入性を確保するため、特に湾曲部及び軟性部において網状管(ネット/ブレード)上に外皮が被覆されることによって、内視鏡の挿入部を体腔内へスムーズに挿通することができるようになっている。
【0005】
例えば特許文献1には、螺管の外周面を被覆するブレードと、ブレードの外周面を被覆する外皮とを接着剤により接着する内視鏡用可撓管の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−226027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように一般的な内視鏡挿入部は、網状管上に外皮が被覆され、網状管と外皮とが接着剤によって接着固定される。このような構成の内視鏡を製造する場合、通常は、網状管上に接着剤を載せ、その上から外皮を被覆することによって網状管及び外皮が接着剤により接着される。
【0008】
しかしながら、網状管は複数の素線が編み合わされて構成されるため、網状管上に付与される接着剤が液状であると、網状管内に接着剤が浸透してしまうため、十分量の接着剤を付与することが求められる。その一方で、多量の接着剤が付与され過ぎると接着剤により挿入部が必要以上に固くなってしまうため、適量の接着剤が網状管上に与えられることが望ましい。特に、接着剤は外皮と網状管とにより挟み込まれて拡がる傾向があり、想定範囲を超えて接着剤が拡がってしまうと、挿入部に求められる剛性(柔軟性)を確保することが難しくなる。したがって、適量の接着剤により、外皮及び網状管を所望箇所において的確に接着することができる新たな技術の提案が望まれている。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、所望量の接着剤によって内視鏡挿入部の網状管(ネット/ブレード)と外皮とを所望箇所で的確に接着することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、網状管と当該網状管上に被覆される外皮とを有する挿入部を備える内視鏡の製造方法において、基材と当該基材上に設けられる接着部とを有する接着層によって前記網状管と前記外皮とを接着する工程を含み、前記接着部は、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって、前記基材上に形成されることを特徴とする内視鏡の製造方法に関する。
【0011】
本態様によれば、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって接着部が基材上に付与されるため、所望量の接着部を基材上の所望位置に正確に載せることができる。したがって、基材上に的確に形成される適量の接着部によって、網状管と外皮とを所望箇所で適切に接着することができる。
【0012】
なお、ここでいう「インクジェットタイプの接着剤付与装置」とは、接着剤を微滴化して噴出する装置全般を指す。接着剤を微滴化する方式は特に問わず、後述の所謂ピエゾ方式、サーマル方式、或いはその他の方式を、接着剤付与装置は適宜採用することが可能である。
【0013】
本発明の別の態様は、網状管と当該網状管上に被覆される外皮とを有する挿入部を備える内視鏡の製造方法において、前記網状管及び前記外皮のうち少なくともいずれか一方に、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって、接着剤を付与する工程と、前記接着剤によって前記網状管と前記外皮とを接着する工程と、を含むことを特徴とする内視鏡の製造方法に関する。
【0014】
本態様によれば、網状管と外皮との間に直接的に接着剤が付与される場合であっても、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって、所望量の接着剤を網状管と外皮との間の所望箇所に的確に付与することができ、網状管と外皮とを所望箇所で適切に接着することができる。
【0015】
前記接着剤付与装置は、圧電素子を用いたピエゾ方式によって前記接着剤を吐出してもよい。
【0016】
前記接着剤付与装置は、ヒーターを用いたサーマル方式によって前記接着剤を吐出してもよい。
【0017】
前記接着剤付与装置は、ラインヘッドから前記接着剤を吐出してもよい。
【0018】
ここでいう「ラインヘッド」とは、接着対象の接着領域の一辺の長さ以上の長さを有する長尺のヘッドであり、接着対象とラインヘッドとを1回相対移動させるだけで、接着対象の接着領域の全域にラインヘッドから吐出される接着剤を付与することが可能なヘッドである。したがって、接着剤付与装置がラインヘッドを用いる場合には、より簡便且つ迅速に、所望量の接着剤を所望箇所に的確に付与することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって接着剤が接着対象に付与されるため、内視鏡挿入部の網状管(ネット/ブレード)と外皮とを、所望量の接着剤によって所望箇所で適切に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】内視鏡の一例を示す斜視図である。
【図2】挿入部(軟性部)の断面構成の一部を示し、網状管及び外皮の第1の接着態様を示す断面図である。
【図3】第1の接着態様で用いられる接着層の一部の断面図である。
【図4】基材上における接着部の配置態様を例示する平面図である。
【図5】第1の接着態様で用いられる接着層の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】網状管及び外皮の第1の接着方法を示すフローチャートである。
【図7】網状管及び外皮の第2の接着態様を示す断面図である。
【図8】網状管及び外皮の第2の接着方法を示すフローチャートである。
【図9】ラインヘッドの平面透視図であり、(a)はラインヘッドの一例を示し、(b)は(a)に示すラインヘッドの一部の拡大図であり、(c)はラインヘッドの他の例を示す。
【図10】図9(a)及び(b)の断面線X−Xに沿った断面図であり、(a)は圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出素子を示し、(b)はヒーターを用いたサーマル方式の吐出素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、理解を容易にするため、各図面に描かれる装置類の大きさ(縮尺)は必ずしも一致していないが、各装置間の関係は当業者であれば各図面から当然に理解されるものである。また、下記の構成は例示に過ぎず、他の構成の内視鏡に対しても本発明を適用することが可能である。
【0022】
<内視鏡の全体構成>
図1は、内視鏡10の一例を示す斜視図である。内視鏡10は、術者(ユーザ)によって把持される手元操作部12と、この手元操作部12に連設され被験者の体内に挿入される挿入部14とを備える。
【0023】
手元操作部12にはユニバーサルケーブル16が接続され、ユニバーサルケーブル16の先端にはLGコネクタ(ライトガイド・コネクタ)18が設けられる。このLGコネクタ18は、不図示の光源装置に着脱自在に設けられ、この光源装置に連結されることによって、挿入部14の先端の先端硬質部44に配設される照明光学系52に照明光を送ることができるようになっている。またLGコネクタ18には、ケーブル22を介して電気コネクタ24が接続され、電気コネクタ24は不図示のプロセッサに対して着脱自在に設けられる。電気コネクタ24をこのプロセッサに接続することによって、内視鏡10で得られた観察画像のデータがプロセッサに出力され、さらにプロセッサに接続されたモニタ(不図示)に画像を表示することができる。
【0024】
また手元操作部12には、送気・送水ボタン26、吸引ボタン28、シャッターボタン30及び機能切替ボタン32が並設される。送気・送水ボタン26は、挿入部14の先端硬質部44に配設された送気・送水ノズル54からエアや水を噴射するための操作ボタンであり、先端硬質部44に設けられた観察光学系(観察レンズ)50に向けて送気・送水ノズル54からエアや水が噴出するようになっている。また吸引ボタン28は、先端硬質部44に配設された鉗子口56から病変部等を吸引するための操作ボタンであり、シャッターボタン30は、観察画像の録画等を操作するための操作ボタンであり、機能切替ボタン32は、シャッターボタン30の機能等を切り替えるための操作ボタンである。
【0025】
また手元操作部12には、一対のアングルノブ34、34及びロックレバー36、36が設けられる。アングルノブ34を操作することによって湾曲部42が湾曲操作され、ロックレバー36を操作することによってアングルノブ34の固定及び固定解除が行われる。
【0026】
さらに、手元操作部12には鉗子挿入部38が設けられており、この鉗子挿入部38は先端硬質部44の鉗子口56に連通されている。鉗子等の処置具(不図示)は、この鉗子挿入部38から挿入され軟性部(可撓管)40内部の鉗子チャネルを通って鉗子口56から導出可能となっている。
【0027】
一方、挿入部14は、手元操作部12側から先端側へ順に、軟性部40、湾曲部42、及び先端硬質部44が配設されて構成される。湾曲部42は、前述の手元操作部12のアングルノブ34により調節されて湾曲自在に設けられており、先端硬質部44の端面に設けられた観察光学系(観察レンズ)50、照明光学系52、送気・送水ノズル54及び鉗子口56の位置及び方向を適切に調整することができるようになっている。軟性部40は、円筒状に形成された可撓性を有する部材であり、多層構造によって挿入時に必要とされる柔軟性及び剛性が確保されている。
【0028】
<挿入部の構成>
(第1の例)
図2は、挿入部14の軟性部40の断面構成の一部を示す断面図である。軟性部40は、所定の幅を有する金属帯片を螺旋状に巻回した螺旋管(フレックス)74を有しており、この螺旋管74は例えば巻回方向を変えた2重の管によって構成することができる。
【0029】
螺旋管74には、複数の素線(素線束)の編組からなる円筒状の網状管(ブレード/ネット)76が被覆され、この網状管76上には接着層77を介して円筒状の外皮80が被覆される。したがって、網状管76と外皮80とは、この接着層77によって接着される。
【0030】
なお網状管76を構成する素線は特に限定されず、樹脂(繊維)素線、金属素線、或いは材料の異なる複数の素線を組み合わせて網状管76を形成することができる。ただし、外皮80との接着に使用される後述の接着剤(接着層77の接着部79)との接着性に優れた素線が網状管76に含まれていることが望ましい。
【0031】
挿入部14を構成する湾曲部42(図1参照)の内部構成についての詳細な説明は省略するが、複数のアングルリングが相互に回動自在に連結され、アングルノブ34と連動する複数の操作ワイヤによって湾曲部42は所望方向に湾曲動作するようになっている。
【0032】
軟性部40と湾曲部42とは、網状管と外皮とが接着層により接着されて外周部が構成される点で共通する。なお、軟性部40及び湾曲部42の全体において、網状管及び外皮のそれぞれが本来的に一体的に構成されていてもよいし、軟性部40及び湾曲部42において別体に構成される網状管及び/又は外皮を、所定の固定手段(接着剤、緊縛糸、その他の固定手段等)により固定して一体化してもよい。
【0033】
図3は、接着層77の一部の断面図である。接着層77は、基材78と、基材78の表裏面の各々に設けられる接着部79と有し、例えば表面の接着部79を外皮80と接着させると共に裏面の接着部79を網状管76と接着することができる。
【0034】
基材78及び接着部79を構成する材料は特に限定されず、基材78の表裏面の接着部79を同じ材料(接着剤)により構成してもよいし、異なる材料により構成してもよい。また、弾性に富んだ材料によって基材78及び接着部79を構成することにより、挿入部14の湾曲動作時に作用するテンション(張力)をその弾性作用に緩和して、挿入部14の湾曲動作に応じて接着層77を湾曲追従させることができる。例えば、基材78を伸縮性のある素材(例えば布やウレタンなど)によって構成し、接着部79を熱可塑性ウレタン接着剤によって構成することが可能である。
【0035】
また、基材78上における接着部79の配置態様も特に限定されない。図4(a)〜(c)は、基材78上における接着部79の配置態様を例示する平面図である。
【0036】
例えば、図4(a)に示すように基材78の表裏面の全体に接着部79が形成されてもよいし、図4(b)に示すように基材78の表裏面においてライン状の接着部79が所定距離Dだけ離隔して形成されてもよいし、図4(c)に示すように基材78の表裏面において離散的に接着部79が形成されてもよい。なお図4(a)〜(c)では相互に離隔する円形状の接着部79が示されているが、接着部79同士が結合した状態で基材78上に設けられてもよい。
【0037】
また接着層77は、網状管76の全体を覆う円筒状に設けられてもよいし、テープ状等の網状管76の一部のみを覆う形状を有していてもよい。
【0038】
次に、接着層77の製造方法について説明する。図5は、接着層77の製造方法を示すフローチャートである。
【0039】
まず、接着層77を構成する基材78が準備される(図5のS10)。具体的には、後述のインクジェットタイプの接着剤付与装置(図9〜図13参照)によって接着剤が付与される位置に基材78が配置される。
【0040】
そして、インクジェットタイプの接着剤付与装置から接着剤が吐出され、この吐出された接着剤を基材78の表裏面に付与することで基材78上に接着部79を形成する(S11)。具体的には、基材78の表面及び裏面の各々に対して、順次、接着剤付与装置から接着剤が付与され、基材78上の所望位置に接着部79が形成される。
【0041】
このようにして、基材78上の所望位置に適量の接着部(接着剤)79が形成された接着層77が提供される。
【0042】
次に、この接着層77によって網状管76と外皮80とを接着する方法について説明する。図6は、網状管76及び外皮80の第1の接着方法を示すフローチャートである。
【0043】
まず、網状管76が準備される(図6のS20)。このとき、網状管76単体を準備してもよいが、網状管76内に配置される挿入部14の内部構造体(螺旋管74(図2参照)、アングルリング等)が網状管76内に配設された状態で、網状管76が準備されてもよい。
【0044】
そして、接着層77が網状管76上に配置される(S21)。具体的には、接着層77の一方の面(内側向きの裏面)に形成される接着部79を網状管76と接着することで、接着層77と網状管76とを接着する。
【0045】
そして、外皮80が、接着層77上において網状管76を被覆するように配置され、接着層77を介して網状管76と接着される(S22)。具体的には、網状管76上に配置された接着層77の外側向きの表面に形成される接着部79と外皮80とを接着することで、接着層77と外皮80とを接着する。
【0046】
このようにして、網状管76と外皮80とを接着層77によって接着することができる。
【0047】
なお、上述の例では、別個に作られている接着層77を網状管76上に配設するケースについて説明したが、接着層77を構成する基材78及び接着部79を網状管76上で直接的に形成してもよい。例えば、接着部79(内側向きの裏面側の接着部79)を構成する接着剤をインクジェットタイプの接着剤付与装置によって網状管76上に直接吐出し、この裏面側の接着部79及び網状管76の上から基材78を被覆し、接着部79(外側向きの表面側の接着部79)を構成する接着剤をインクジェットタイプの接着剤付与装置によって基材78上に直接吐出する。これらの工程を経ることによって、接着層77(基材78及び接着部79)が網状管76上に直接的に設けられることとなる。そして、このようにして網状管76上に形成された接着層77上に外皮80を配設することによって、網状管76と外皮80とを接着層77によって接着することができる。
【0048】
(第2の例)
次に、網状管76及び外皮80の他の接着態様について説明する。図7は、網状管76及び外皮80の第2の接着態様を示す断面図である。
【0049】
上述の第1の例では、基材78及び接着部(接着剤)79から成る接着層77によって網状管76及び外皮80が接着される例について説明したが、本例では接着部(接着剤)79のみから成る接着層77を介して網状管76と外皮80とが接着される。
【0050】
すなわち、網状管76及び外皮80のうち少なくともいずれか一方に、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって、直接的に接着剤(接着部79)が付与され、この付与された接着剤を介して網状管76及び外皮80が接着される。
【0051】
なお、図7に示す例では、網状管76を構成する素線(素線束)のうち外皮80に近接する素線上(網状管76の多層構造の素線のうち外皮80側の層(最外層)を形成する素線上)にのみ接着層(接着剤)77が形成されているが、他の素線上に選択的に又は全面的に接着層(接着剤)77が形成されてもよい。
【0052】
図8は、網状管76及び外皮80の第2の接着方法を示すフローチャートである。
【0053】
図7に示す内視鏡挿入部14(網状管76及び外皮80)を形成するため、まず網状管76が準備される(図8のS30)。本例においても、上述の第1の例と同様に、網状管76単体を準備してもよいが、網状管76内に配置される挿入部14の内部構造体(螺旋管74(図2参照)、アングルリング等)が網状管76内に配設された状態で、網状管76が準備されてもよい。
【0054】
そして、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって、準備された網状管76上に接着剤(接着層77)が付与される(S31)。
【0055】
そして、この接着層77の上から網状管76を被覆するように外皮80が配設され、接着層77によって網状管76と外皮80とが接着される(S32)。
【0056】
なお、上述の例では網状管76上に接着剤(接着層77)が付与される例について説明したが、外皮80上に接着剤(接着層77)が付与されてもよいし、網状管76及び外皮80の双方に接着剤(接着層77)が付与されてもよい。特に、2種類の接着材料が接触・混合することによって接着性を示す所謂2液混合タイプの接着剤を用いることも可能であり、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって一方の接着材料を網状管76上に付与すると共に他方の接着材料を外皮80上に付与し、網状管76上に外皮80を配置して両接着材料を混合することで網状管76及び外皮80を接着するようにしてもよい。
【0057】
(インクジェットタイプの接着剤付与装置)
次に、接着剤(接着部79)を吐出するインクジェットタイプの接着剤付与装置について説明する。以下の例では、多数のノズルを備える所謂ラインヘッドを用いる接着剤付与装置について説明する。
【0058】
図9(a)は、インクジェットタイプの接着剤付与装置(インクジェットヘッド)60の一例を示す平面透視図であり、図9(b)は、図9(a)に示すインクジェットヘッド60の一部を拡大して示す図である。
【0059】
本例のヘッド60は、接着剤滴の吐出孔であるノズル61、各ノズル61に対応する圧力室62、等を含んで構成される複数の接着剤室ユニット63を千鳥状に2次元的に配置した構造(マトリックス配置構造)を有する。圧力室62の平面形状は概略正方形となっており、圧力室62の平面形状の対角線上の両隅部にノズル61及び接着剤供給口64が設けられている。
【0060】
図10は、図9(a)及び(b)の断面線X−Xに沿った断面図である。ヘッド60のインク吐出面60aを構成するノズルプレート(ノズル形成基板)70は、複数のノズル(ノズル孔)61が形成されている。このノズルプレート70は例えば樹脂材料によって構成することができる。ノズルプレート70の表面(吐出面)には接着剤に対して撥液性を示す撥液層72が設けられることが好ましい。また、ノズル61の内壁面は接着剤に対して親液化されることが好ましい。
【0061】
各圧力室62は供給口64を介して共通流路65と連通されている。共通流路65は接着剤供給源たる接着剤供給タンク(不図示)と連通しており、該接着剤供給タンクから供給される接着剤は共通流路65及び各供給口64を介して各圧力室62に分配供給される。
【0062】
圧力室62の天面を構成し共通電極として機能する振動板66には個別電極67が設けられた圧電素子68が接合されており、個別電極67に駆動電圧を印加することによって圧電素子68が変形してノズル61から接着剤が吐出される。接着剤が吐出されると、共通流路65から供給口64を通って新しい接着剤が圧力室62に供給される。
【0063】
かかる構造を有する接着剤室ユニット63を図9(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、ヘッド長手方向(主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化が実現される。
【0064】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿って接着剤室ユニット63を一定のピ
ッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル61が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0065】
なお、長尺のインクジェットヘッド(ラインヘッド)60を構成する形態は図9(a)に示す例に限定されず、例えば図9(c)に示すように、複数のノズル61が2次元に配列された短尺のヘッドブロック(ヘッドチップ)60’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることでラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0066】
また図10に示す例では、ノズル61から接着剤を吐出させる吐出力発生手段として圧電素子68を使用するピエゾ方式を用いたが、圧力室62内にヒーター75を配置して、このヒーター75の加熱による膜沸騰の圧力を利用して接着剤を吐出させるサーマル方式を用いることも可能である。
【0067】
また、インクジェットタイプの接着剤付与装置はラインヘッドを用いる場合に限定されず、短尺のヘッドを所定の方向(主走査方向)に走査させて、1回の走査が終わると主走査方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけヘッドを移動させて、次の領域上をヘッド走査させ、これらの動作を繰り返して接着剤の吐出・付与を行うシリアル方式のヘッドを用いてもよい。また接着剤付与装置は、単数のノズルのみを有するヘッドを用いることもできる。
【0068】
以上説明したように上述の実施形態によれば、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって接着剤(接着層77)が与えられるため、所望量の接着剤を所望箇所に的確に付与することができ、網状管(ネット/ブレード)と外皮と簡便且つ正確に接着することができる。
【0069】
また、インクジェットタイプの接着剤付与装置としてラインヘッドを利用する場合には、ラインヘッドと接着対象(網状管76、基材78)とを1回相対移動する間に、所望量の接着剤を所望箇所に付与することができるため、迅速且つ的確に接着剤を付与することができる。
【0070】
なお、上述の実施形態は本発明を例示したものに過ぎず、種々の変更や修正を適宜加えることもできる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、他の形態に対しても適宜応用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…内視鏡、12…手元操作部、14…挿入部、16…ユニバーサルケーブル、18…LGコネクタ、22…ケーブル、24…電気コネクタ、26…送気・送水ボタン、28…吸引ボタン、30…シャッターボタン、32…機能切替ボタン、34…アングルノブ、36…ロックレバー、38…鉗子挿入部、40…軟性部、42…湾曲部、44…先端硬質部、52…照明光学系、54…送水ノズル、56…鉗子口、60…インクジェットヘッド、60a…インク吐出面、61…ノズル、62…圧力室、63…接着剤室ユニット、64…供給口、65…共通流路、66…振動板、67…個別電極、68…圧電素子、70…ノズルプレート、72…撥液層、74…螺旋管、76…網状管、77…接着層、78…基材、79…接着部、80…外皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状管と当該網状管上に被覆される外皮とを有する挿入部を備える内視鏡の製造方法において、
基材と当該基材上に設けられる接着部とを有する接着層によって前記網状管と前記外皮とを接着する工程を含み、
前記接着部は、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって、前記基材上に形成されることを特徴とする内視鏡の製造方法。
【請求項2】
網状管と当該網状管上に被覆される外皮とを有する挿入部を備える内視鏡の製造方法において、
前記網状管及び前記外皮のうち少なくともいずれか一方に、インクジェットタイプの接着剤付与装置によって、接着剤を付与する工程と、
前記接着剤によって前記網状管と前記外皮とを接着する工程と、を含むことを特徴とする内視鏡の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤付与装置は、圧電素子を用いたピエゾ方式によって前記接着剤を吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤付与装置は、ヒーターを用いたサーマル方式によって前記接着剤を吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤付与装置は、ラインヘッドから前記接着剤を吐出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内視鏡の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217811(P2012−217811A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90334(P2011−90334)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】