説明

内視鏡カバー

【課題】内視鏡に対する着脱動作が容易であるとともに、処置具の管路等の形状安定性に優れた内視鏡カバーを実現する。
【解決手段】内視鏡カバー30は、形状記憶合金36とカバー本体40を含む。カバー本体40は、形状記憶合金36の温度変化に伴って変形する。形状記憶合金36は、変態点以上の温度で収縮し、変態点よりも低い温度では拡張する。内視鏡カバー30が使用される場合、内視鏡の挿入部を内視鏡管路30Aに通した状態で形状記憶合金36が加熱、収縮され、カバー本体40も収縮する。この結果、内視鏡管路30Aも収縮するため、内視鏡カバー30を内視鏡の挿入部に容易に取り付け、密着させることができる。内視鏡観察後には、形状記憶合金36を放冷することにより内視鏡管路30Aを拡張させ、内視鏡カバー30を挿入部から容易に取り外すことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に取り付けられる内視鏡カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部を覆う内視鏡カバーの例として、鉗子等の処置具が通るための処置具挿通用チャンネルが、径方向に拡張可能であるものが知られている(特許文献1参照)。この例においては、内視鏡カバーの弾性変形により、処置具挿通用チャンネルが拡張する。
【0003】
また、内視鏡の分野等において、形状記憶合金が用いられる場合がある。例えば、形状記憶合金の使用により、内視鏡の挿入部の径や、生体に挿入されるカテーテルの径を調整可能にすることが知られている(特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−247290号公報
【特許文献2】特開昭57−180933号公報
【特許文献3】特開2006−271787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内視鏡カバーは、一般に、長い管状の内視鏡挿入部のほぼ全表面を覆うものであり、内視鏡への取り付け、および内視鏡からの取り外し作業は容易ではない。このため上述の例においては、内視鏡に装着する前に、空気を送り込んで内視鏡カバーを拡張させるといった煩雑な作業が必要とされている。そして、内視鏡の挿入部、およびカテーテルの径を調整可能にした場合においても、必ずしも内視鏡カバーの着脱を容易にすることはできない。
【0006】
また、処置具挿通用チャンネルが設けられた内視鏡カバーを内視鏡に取り付ける場合、処置具挿通用チャンネルの周囲を抑えながら力を加えることが必要である。このため、たとえ弾性変形する部材で形成された内視鏡カバーであっても、長期間の使用によっては処置具挿通用チャンネルの座屈を生じ、復元困難なほど変形してしまう可能性もある。処置具挿通用チャンネルが変形した内視鏡カバーにおいては、処置具を適切に使用することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、内視鏡に対する着脱動作が容易であるとともに、処置具の管路等の形状安定性に優れた内視鏡カバーの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の内視鏡カバーは、内視鏡の挿入部に着脱自在である。第1の内視鏡カバーは可変部材を備えており、可変部材は、形状記憶部材を有する。可変部材には、挿入部に対する着脱のための隙間と、処置具が通るための処置具管路とが設けられている。そして第1の内視鏡カバーにおいては、形状記憶部材の温度変化による可変部材の変形により、隙間を介して内視鏡カバーを挿入部に着脱するために隙間を拡張させることと、内視鏡カバーを挿入部に固定するために隙間を収縮させることが可能であり、隙間の収縮に伴って処置具管路が拡張する。
【0009】
可変部材における隙間は、例えば、挿入部が通る内視鏡管路である。この場合、内視鏡管路の周囲に処置具管路が設けられており、内視鏡管路と処置具管路との間に形状記憶部材が配置されていることが好ましい。
【0010】
形状記憶部材は、例えば内視鏡カバーの長手方向に沿って巻き付けられており、この場合、外力が加えられていない自然状態の可変部材において、形状記憶部材の密度が相対的に低い低密度領域と形状記憶部材の密度が相対的に高い高密度領域とが形成されていることが好ましい。また、隙間が収縮した状態の可変部材において、高密度領域が低密度領域よりも厚く、形状記憶部材に対して高密度領域側から低密度領域側に外力が加えられると、形状記憶部材の密度および可変部材の厚さが、それぞれ略一定になることがより好ましい。また、内視鏡カバーは、隙間を収縮させるように可変部材が変形したときに、内視鏡カバーの外径を保持する形状保持部材をさらに有することが好ましい。
【0011】
本発明の第2の内視鏡カバーは、内視鏡の挿入部に着脱自在である。第2の内視鏡カバーは、可変部材と、処置具が通るための管状部材とを備えている。可変部材は、形状記憶部材を有する。可変部材には、挿入部に対する着脱のための隙間が設けられている。そして第2の内視鏡カバーにおいては、形状記憶部材の温度変化による可変部材の変形により、可変部材を挿入部に着脱するために隙間を拡張させることと、可変部材を挿入部に固定するために隙間を収縮させることが可能であり、隙間が拡張されると、可変部材が挿入部とともに管状部材に対して着脱可能である。
【0012】
可変部材における隙間が拡張している状態において、可変部材の長手方向に垂直な断面形状は、例えばC字型である。また、形状記憶部材の温度が変態点以上であるとき、隙間が収縮することが好ましい。
【0013】
第1または第2の内視鏡カバーにおいては、処置具通路を介してチューブ側処置具通路に挿通可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内視鏡に対する着脱動作が容易であるとともに、処置具の管路等の形状安定性に優れた内視鏡カバーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態の内視鏡装置を示す側面図である。
【図2】内視鏡管路が拡張した状態における第1の実施形態の内視鏡カバーを、長手方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【図3】内視鏡管路が収縮し始めた状態における内視鏡カバーを示す断面図である。
【図4】内視鏡管路が収縮した状態における内視鏡カバーを示す断面図である。
【図5】処置具管路に処置具が通っている状態の内視鏡カバーを示す斜視図である。
【図6】形状保持部材を示す内視鏡カバーの斜視図である。
【図7】カバー本体が収縮状態にあって外力の加えられていない状態の変形例の内視鏡カバーを示す斜視図である。
【図8】図7に対応する内視鏡カバーの正面図である。
【図9】カバー本体が収縮状態にあって外力の加えられた状態における変形例の内視鏡カバーを示す斜視図である。
【図10】カバー本体が拡張状態にあるときと、収縮後に外力が加えられた状態とにおける変形例の内視鏡カバーを比較する斜視図である。
【図11】カバー本体が拡張状態にある第2の実施形態の内視鏡カバーを、長手方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【図12】カバー本体が収縮状態にある第2の実施形態の内視鏡カバーを示す正面図である。
【図13】カバー本体が収縮状態にある変形例の内視鏡カバーを示す断面図である。
【図14】カバー本体が拡張状態にある第2の実施形態の内視鏡カバーを示す斜視図である。
【図15】カバー本体が収縮状態にある第2の実施形態の内視鏡カバーを示す斜視図である。
【図16】カバー本体が拡張状態にあるときと収縮状態にあるときの内視鏡カバーを比較する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の内視鏡装置を示す側面図である。
【0017】
内視鏡装置60は、内視鏡10と内視鏡カバー30とを含む。内視鏡10は、操作部12から側方に延伸するライトガイド可撓管14を介してプロセッサ16に接続される。内視鏡10の挿入部20は、オレドメ部25から延伸しており、体腔内に挿入される。
【0018】
内視鏡カバー30は、内視鏡10の挿入部20に着脱自在に取り付けられ、挿入部20の側面20Sの略全域を覆う。図1においては、説明の便宜上、内視鏡カバー30のみが断面で示されている。また、図1では、内視鏡カバー30に含まれる部材の一部が省略されている。
【0019】
プロセッサ16の光源(図示せず)からの照明光が、挿入部20の先端面20Tから観察の対象である体内器官に出射される。体内器官からの反射光、および内視鏡10で生成された画像信号等は、プロセッサ16に送られる。画像信号は、プロセッサ16における所定の処理の後に、画像表示装置(図示せず)に送信される。この結果、体内器官が観察、撮影される。
【0020】
体内器官の観察、撮影時には、内視鏡10の操作部12が操作される。例えば、操作部12の操作ノブ13、15を回転させると挿入部20の先端が上下、左右に湾曲される。また、鉗子口18から鉗子等の処置具(図示せず)を挿通し、挿入部20の先端面20Tから突出させて患部を処置することができる。さらに、後述するように、内視鏡カバー30に鉗子等の処置具をオレドメ部25側から挿通させ、先端面20Tの周囲から突出させることも可能である。
【0021】
図2は、内視鏡管路が拡張した状態における第1の実施形態の内視鏡カバー30を、長手方向に垂直な平面で切断した断面図である。図3は、内視鏡管路が収縮し始めた状態における内視鏡カバー30を示す断面図であり、図4は、内視鏡管路が収縮した状態における内視鏡カバー30を示す断面図である。図5は、処置具管路に処置具が通っている状態の内視鏡カバー30を示す斜視図である。
【0022】
第1の実施形態の内視鏡カバー30は、内視鏡管路30Aが設けられた円筒形である。内視鏡管路30Aは内視鏡カバー30の中心に設けられており、両者の中心軸30Cは共通である。内視鏡管路30A(隙間)は、内視鏡10の挿入部20(図1参照)に対する内視鏡カバー30の着脱のために設けられており、挿入部20が通るための管路である。内視鏡管路30Aの周囲には、鉗子等の処置具32が通るための複数の処置具管路30Bが形成されている。
【0023】
内視鏡管路30Aと処置具管路30Bとの間には、形状記憶合金36(形状記憶部材)が配置されている。本実施形態の形状記憶合金36は、矢印A(図1参照)の示す内視鏡カバー30の長手方向に沿って、ほぼ等間隔で螺旋状に巻き付けられた糸状部材である。形状記憶合金36は、図2に示されるように、内視鏡管路30Aと略同心円状に配置されている。
【0024】
内視鏡カバー30は、カバー本体40を有する。カバー本体40は、形状記憶合金36の周囲に設けられている。カバー本体40は、適度な弾性、伸縮性、および生体適合性を有する高分子材料、例えば、樹脂、シリコンゴム、天然ゴム、ポリウレタン等により形成されている。
【0025】
形状記憶合金36が温度変化によって変形すると、これに伴ってカバー本体40(可変部材)も変形する。具体的には、カバー本体40は、内視鏡管路30Aが最も大きく拡張された状態(図2参照・以下、拡張状態という)から、矢印Bの示すように収縮し、図3に示された中間状態を経て、内視鏡管路30Aが最も収縮された状態(図4参照、以下、収縮状態という)まで変形可能である。また、形状記憶合金36が可逆的に変形可能であるため、カバー本体40は、収縮状態から拡張状態への変形も可能である。
【0026】
本実施形態の形状記憶合金36は、その温度が変態点以上であるときに収縮し、変態点よりも低い温度になると拡張する。形状記憶合金36の変態点は、例えば、室温よりも高く、概ね被検者の体温と等しくなるように設定されている。そして内視鏡カバー30が使用される場合、挿入部20を内視鏡管路30Aに通した状態で、例えばドライヤを用いて内視鏡カバー30が加熱される。
【0027】
その結果、変態点以上の温度に加熱された形状記憶合金36の変形により、形状記憶合金36を内包するカバー本体40が変形し、拡張状態(図2参照)から収縮状態(図4参照)に移行する。カバー本体40が収縮状態にあるときの内視鏡管路30Aの径は、予め挿入部20の径にほぼ等しくなるように調整されている。
【0028】
このため、形状記憶合金36の加熱によって内視鏡管路30Aを収縮させると、内視鏡カバー30を挿入部20に密着させて強固に固定することができる。なお収縮状態においては、図4及び図5に示されたように、内視鏡管路30Aと処置具管路30Bとがほぼ接する。このため、処置具32を挿入部20の先端面20T(図1参照)のすぐ近くで使用することができる。
【0029】
カバー本体40が収縮状態にあるときには、内視鏡管路30Aとは異なり、処置具管路30Bが拡張する。これは、処置具管路30Bと、処置具管路30Bよりも内側の内視鏡管路30Aとの間に形状記憶合金36が設けられているためであり、内視鏡管路30Aおよびカバー本体40の収縮動作に伴って、処置具管路30Bが中心軸30C側に引っ張られるためである。図4に示されたように、カバー本体40が収縮状態になると、処置具管路30Bは、断面が略円形となるように拡張される。なお、断面図である図2〜4においては、本来、螺旋状の形状記憶合金36(図5参照)は部分的に示されるべきであるところ、説明の便宜上、中心軸40Cを中心とした円の全周に渡って示されている。
【0030】
処置具管路30Bは、内視鏡管路30A等の収縮時において、中心軸30C側に拡張容易な形状を有する。すなわち処置具管路30Bは、カバー本体40が拡張状態にあるときに、カバー本体40の周方向に沿って延びる細長い断面形状を有する(図2参照)。このような形状の処置具管路30Bは、内側に向かって容易に拡張可能である上に、以下の点でも優れている。すなわち、内視鏡カバー30が挿入部20とともに体腔内に挿入されるとき、あるいは挿入部20に対する着脱のために側面30Sが押圧されるときなどにおいて、外力が内視鏡カバー30に加えられても、処置具管路30Bの座屈といった内視鏡カバー30の変形が生じにくいという利点である。
【0031】
上述のように、内視鏡管路30Aが収縮して挿入部20に固定されつつ、処置具管路30Bが広がった状態の内視鏡カバー30が、挿入部20とともに体腔内に挿入される。このため内視鏡観察時に、内視鏡カバー30が挿入部20から外れてしまうことは確実に防止されるとともに、処置具32は、図5に示されるように、処置具管路30B内で矢印Aの示す内視鏡カバー30の長手方向に沿って進退容易である。
【0032】
なお図5においては、説明の便宜上、内視鏡カバー30が長手方向に沿って大幅に縮小されている。また、図5では、単一の処置具管路30Bのみが示されており、他の処置具管路30Bは省略されている。これらの点については、後述する図7、図9においても同様である。
【0033】
一方、内視鏡観察の終了後には、内視鏡カバー30が挿入部20とともに体腔内から抜き出され、形状記憶合金36の温度が室温程度まで低下する。このため、形状記憶合金36は拡張するように変形し、カバー本体40も、収縮状態(図4参照)から拡張状態(図2参照)に戻る。この結果、内視鏡管路30Aが拡張し、内視鏡カバー30は、挿入部20から容易に取り外しできる。
【0034】
以上のように本実施形態によれば、必要に応じて、簡易な手法で形状記憶合金36の温度を調整することにより内視鏡管路30Aを拡張させ、内視鏡カバー30を内視鏡10の挿入部20に対して容易に着脱できる。さらに、形状記憶合金36の温度調整により内視鏡管路30Aを収縮させることも容易に可能であり、内視鏡観察中に、内視鏡カバー30が挿入部20から外れることを確実に防止できる。
【0035】
また、内視鏡カバー30を挿入部20に取り付ける動作、および挿入部20から取り外す動作によって内視鏡カバー30に力が加えられるときには、内視鏡カバー30の側面30S側にある処置具管路30Bが収縮している(図2参照)ことから、処置具管路30Bの座屈等による内視鏡カバー30の復元できない変形を防止できる。
【0036】
なお、内視鏡カバー30の側面30S付近には、カバー本体40が収縮状態にあるとき、すなわち内視鏡管路30Aを収縮させるように変形したときに、内視鏡カバー30の外径を保持する形状保持部材34が埋設されていても良い。この形状保持部材34により、内視鏡管路30Aが収縮したときに内視鏡カバー30の外径が小さくなり、処置具管路30Bがつぶれることを防止し、十分な処置具管路30Bを確保できる。さらに、内視鏡カバー30に外力が作用した際にも、座屈による内視鏡カバー30の変形を防止できる。形状保持部材34は、内視鏡カバー30の側面30Sのすぐ内側に巻き付けられており、図6(A)に例示されたように線状、あるいは図6(B)に例示されたように面状であっても良い。なお図6では、説明の便宜上、形状記憶合金36が省略されている。保持部材34は、例えば、ステンレス鋼、ポリテトラフルオロエチレンなどからなる。
【0037】
次に、本実施形態の変形例につき、説明する。図7は、カバー本体40が収縮状態にあって外力の加えられていない状態の変形例の内視鏡カバー30を示す斜視図である。図8は、図7に対応する内視鏡カバー30の正面図である。図9は、カバー本体40が収縮状態にあって外力の加えられた状態における変形例の内視鏡カバー30を示す斜視図である。図10は、カバー本体40が拡張状態にあるときと、収縮後に外力が加えられた状態とにおける変形例の内視鏡カバー30を比較する斜視図である。なお図7以下の図面では、第1の実施形態の内視鏡カバー30と同一、もしくは対応する部材には、同じ符号が付されている。
【0038】
本変形例の内視鏡カバー30においては、形状記憶合金36の配置が上述の実施形態とは異なる。すなわち本変形例では、内視鏡カバー30において、長手方向に沿って巻き付けられた形状記憶合金36の密度が低い低密度領域42と、形状記憶合金36の密度が高い高密度領域43とが形成されている。
【0039】
そして形状記憶合金36が加熱されて内視鏡管路30Aが収縮すると、図7および図8に示されたように、高密度領域43においてカバー本体40の一部が側面30Sの外側にはみ出す。これは、高密度領域43における形状記憶合金36の間隔が狭いためである。このように本変形例では、カバー本体40が収縮されると、まずは高密度領域43が部分的に低密度領域42よりも厚くなる。この高密度領域43におけるカバー本体40の部分的な隆起は、形状記憶合金36の隙間であって、処置具管路30Bから離れた領域ほど大きくなる。
【0040】
このように、内視鏡カバー30が挿入部20とともに体腔内に挿入される直前など、カバー本体40が収縮状態にあって厚さが不均一であるときにおいて、本変形例では、形状記憶合金36の巻付密度とカバー本体40の厚さの不均等を解消できる。この場合、形状記憶合金36における低密度領域42側の端部36Eを矢印Cの示すように長手方向に沿って引っ張り、高密度領域43側から低密度領域42側に外力を加えることが必要である(図7参照)。
【0041】
この引張り動作により、高密度領域43の一部が隆起する前に円筒形であったときの内視鏡カバー30の側面30S(図7および8の破線)から外側にはみ出していたカバー本体40の一部が、側面30Sの内側に移動し、内視鏡カバー30は再び円筒形になる(図9参照)。そしてこのとき、形状記憶合金36の間隔も略一定になる。
【0042】
以上のように、カバー本体40が拡張状態にある内視鏡カバー30(図10(A)参照)を収縮させると、カバー本体40の一部が外部に膨出するものの、収縮後に外力を加えることにより、内視鏡カバー30の外径と形状記憶合金36の間隔とが一定になる(図10(B)参照)。なお、カバー本体40の内部において、形状記憶合金36を内視鏡カバー30の長手方向に沿って容易に移動可能とするための溝(図示せず)を形成しても良い。
【0043】
このように本変形例では、あえて低密度領域42と高密度領域43とを設けつつ、形状記憶合金36の引張り動作を可能にしておくことにより、内視鏡カバー30の側面30Sを常に平滑に保つことができる。
【0044】
次に、第2の実施形態につき説明する。図11は、カバー本体40が拡張状態にある第2の実施形態の内視鏡カバー30を、長手方向に垂直な平面で切断した断面図である。図12は、カバー本体40が収縮状態にある第2の実施形態の内視鏡カバー30を示す正面図であり、図13は、カバー本体40が収縮状態にある変形例の内視鏡カバー30を示す断面図である。
【0045】
第2の実施形態の内視鏡カバー30は、カバー本体40と、管状部材50とを含む。カバー本体40は、図示されたように、長手方向に垂直な平面で切断した断面がC字型である。すなわち本実施形態のカバー本体40は、円筒の一部を長手方向に沿って切り欠き、隙間30Aを設けた形状を有する。カバー本体40の内側には、後述する複数のC字型の形状記憶合金36が配置されている。
【0046】
この隙間30Aを介して、カバー本体40は、内視鏡10の挿入部20(図1参照)と管状部材50とを包み込むように、挿入部20に対して着脱される。管状部材50は、処置具(図示せず)が通るための部材であり、その径は使用される処置具の径に応じて調整されている。以上のように本実施形態においては、主として、カバー本体40の形状と、カバー本体40と管状部材50とが別体であることが第1の実施形態と異なる。
【0047】
本実施形態のカバー本体40も、第1の実施形態と同様に、形状記憶合金36により可変である。すなわちカバー本体40は、挿入部20に対する着脱のための隙間30Aが拡張した拡張状態(図11および図12の破線参照)と、隙間30Aがほぼ閉じた収縮状態(図12の実線参照)との間で可逆的に変形可能である。
【0048】
図11に示されるように、カバー本体40が拡張状態にあるときには、挿入部20とともに管状部材50が、隙間30Aを介してカバー本体40の内側に取り込まれる。すなわちカバー本体40は、隙間30Aが拡張されると、挿入部20とともに管状部材50に対して着脱可能である。
【0049】
なお、形状記憶合金36の変態点とカバー本体40の形状との関係は、第1の実施形態と同様である。すなわち、形状記憶合金36の温度が、被検者の体温と概ね等しい変態点以上であるときにカバー本体40が収縮し、変態点よりも低い温度になるとカバー本体40は拡張する。
【0050】
また、収縮状態におけるカバー本体40の形状は、図12の実線で示されたように、断面が楕円形に近い細長い円形であっても良く、図13の変形例のように円形であっても良い。前者の場合、挿入部20と内視鏡カバー30との断面積を最小限に抑え、可能な限り細径化できるのに対し、後者は、内視鏡カバー30の側面30Sが保持し易く、操作性に優れる。
【0051】
カバー本体40の形状は、変態点以上の温度における形状記憶合金36の形状により適宜調整される。形状記憶合金36は、カバー本体40の内側に配置されるのではなく、カバー本体40の内部に埋設されても良い。
【0052】
図14は、カバー本体40が拡張状態にある本実施形態の内視鏡カバー30を示す斜視図である。図15は、カバー本体40が収縮状態にある本実施形態の内視鏡カバー30を示す斜視図である。図16は、カバー本体40が拡張状態にあるときと収縮状態にあるときの内視鏡カバー30を比較する斜視図である。
【0053】
カバー本体40が拡張状態にある内視鏡カバー30(図14および図16(A)参照)においては、隙間30Aが広がっている。このため図14の矢印Dの示すように、挿入部20と管状部材50とは、簡単な動作で内視鏡カバー30内に取り込まれる。その後、形状記憶合金36の加熱により、カバー本体40は収縮状態(図15および図16(B)参照)に変化する。
【0054】
さらに、内視鏡観察の終了後において、カバー本体40を収縮状態から拡張状態に変化させることも容易である。形状記憶合金36を放冷すれば良いためである。従って、内視鏡カバー30は、挿入部20等から簡単に取り外される。
【0055】
以上のように本実施形態においても、第1の実施形態と同様に形状記憶合金36の温度を簡易な手法で調整することにより、隙間30Aが拡張、収縮される。このため、内視鏡カバー30の挿入部20に対する着脱は容易であるとともに、挿入部20からの内視鏡カバー30の予期せぬ脱離も防止できる。さらに、カバー本体40とは別体の管状部材50を耐久性に優れた部材で形成することにより、管状部材50の座屈といった内視鏡カバー30の変形も確実に防止できる。
【0056】
内視鏡カバー30に含まれる部材の形状、材質等は、上述のいずれの実施形態、変形例にも限定されない。例えば、形状記憶合金36を含む内視鏡カバー30であって、挿入部20の側面20S(図1参照)の一部のみを覆う内視鏡カバー30を用いても良い。この場合、着脱が容易な内視鏡カバー30によって覆われた挿入部20の領域のみを湾曲しにくくさせ、可撓性を部分的に調整することができる。
【0057】
また、第1の実施形態において、第2の実施形態と同様に複数のC字型の形状記憶合金36が使用されても良く、反対に、第2の実施形態において、糸状の形状記憶合金36がカバー本体40内に巻き付けられていても良い。さらに、いずれの実施形態においても、網状、層状の形状記憶合金36を使用しても良く、第1および第2の実施形態を適宜組み合わせても良い。
【0058】
形状記憶合金36は、上述のように、変態点以上の温度で収縮していることが好ましいものの、反対に変態点以上の温度で拡張しても良い。この場合、変態点を被検者の体温よりも明らかに高い温度に設定しておき、内視鏡カバー30の使用直前、あるいは使用後に形状記憶合金36を変態点以上の温度に加熱すれば、挿入部20に対して内視鏡カバー30を容易に着脱できる。
【0059】
また、形状記憶合金36の温度調節には、ドライヤ以外のものを用いても良い。例えば、電流を流すことにより形状記憶合金36を加熱しても良い。さらに形状記憶部材も形状記憶合金36には限定されず、例えば、形状記憶ポリマー等を用いても良い。
【符号の説明】
【0060】
10 内視鏡
20 挿入部
30 内視鏡カバー
30A 内視鏡管路(隙間)
30B 処置具管路
32 処置具
34 形状保持部材
36 形状記憶合金(形状記憶部材)
40 カバー本体(可変部材)
42 低密度領域
43 高密度領域
50 管状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部に着脱自在な内視鏡カバーであって、
形状記憶部材を有するとともに、前記挿入部に対する着脱のための隙間と、処置具が通るための処置具管路とが設けられている可変部材を備え、
前記形状記憶部材の温度変化による前記可変部材の変形により、前記隙間を介して前記内視鏡カバーを前記挿入部に着脱するために前記隙間を拡張させることと、前記内視鏡カバーを前記挿入部に固定するために前記隙間を収縮させることが可能であり、前記隙間の収縮に伴って前記処置具管路が拡張することを特徴とする内視鏡カバー。
【請求項2】
前記隙間が、前記挿入部が通る内視鏡管路であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡カバー。
【請求項3】
前記内視鏡管路の周囲に前記処置具管路が設けられており、前記内視鏡管路と前記処置具管路との間に前記形状記憶部材が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡カバー。
【請求項4】
前記形状記憶部材が、前記内視鏡カバーの長手方向に沿って巻き付けられており、外力が加えられていない自然状態の前記可変部材において、前記形状記憶部材の密度が相対的に低い低密度領域と前記形状記憶部材の密度が相対的に高い高密度領域とが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡カバー。
【請求項5】
前記隙間が収縮した状態の前記可変部材において、前記高密度領域が前記低密度領域よりも厚く、前記形状記憶部材に対して前記高密度領域側から前記低密度領域側に外力が加えられると、前記形状記憶部材の密度および前記可変部材の厚さが、それぞれ略一定になることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡カバー。
【請求項6】
前記隙間を収縮させるように前記可変部材が変形したときに、前記内視鏡カバーの外径を保持する形状保持部材をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡カバー。
【請求項7】
内視鏡の挿入部に着脱自在な内視鏡カバーであって、
形状記憶部材を有するとともに、前記挿入部に対する着脱のための隙間が設けられている可変部材と、
処置具が通るための管状部材とを備え、
前記形状記憶部材の温度変化による前記可変部材の変形により、前記可変部材を前記挿入部に着脱するために前記隙間を拡張させることと、前記可変部材を前記挿入部に固定するために前記隙間を収縮させることが可能であり、前記隙間が拡張されると、前記可変部材が前記挿入部とともに前記管状部材に対して着脱可能であることを特徴とする内視鏡カバー。
【請求項8】
前記隙間が拡張している状態において、前記可変部材の長手方向に垂直な断面形状がC字型であることを特徴とする請求項7に記載の内視鏡カバー。
【請求項9】
前記形状記憶部材の温度が変態点以上であるときに、前記隙間が収縮することを特徴とする請求項1または請求項7のいずれかに記載の内視鏡カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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