内視鏡挿入装置
【課題】腸が腹腔内で自由に動く部位では、従来の内視鏡装置では内視鏡挿入部を腸管の深部方向に移動できない状況となる。これに対して、簡単な操作で深部へ内視鏡機能を有する医療器具が挿入可能な内視鏡挿入装置を提供する。
【解決手段】第1の医療器具2aおよび第2の医療器具2bを備え、医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段31、32を有し、第1の医療器具2aに設けられた固定手段31は腸壁9と固定時に、第2の医療器具2bの先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成され、第2の医療器具2bに設けられた固定手段32は腸壁9と固定時に、第1の医療器具2aの先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されている。
【解決手段】第1の医療器具2aおよび第2の医療器具2bを備え、医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段31、32を有し、第1の医療器具2aに設けられた固定手段31は腸壁9と固定時に、第2の医療器具2bの先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成され、第2の医療器具2bに設けられた固定手段32は腸壁9と固定時に、第1の医療器具2aの先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡挿入装置に関する。特に複数の医療器具を備え、各医療器具が腸壁と固定可能な固定手段を備えた、内視鏡挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に内視鏡は細長の管で可撓性を有する軟性部と、この軟性部の先端部に連設され操作部の操作により左右又は及び上下方向に湾曲可能な湾曲部と、この湾曲部の先端部に連設された硬性の先端部とから構成されている。内視鏡は、経肛門的又は経口的又は経鼻的に体腔内へ挿入して、所定部位を観察診断し、又は観察しつつ処置等をするようになっている。
【0003】
しかし、従来の内視鏡を深部消化管、例えば大腸を経由して小腸へ挿入する場合、単に内視鏡挿入部を押し入れていくだけでは、複雑な腸管の屈曲のため内視鏡先端に力が伝わりにくく、深部への挿入は困難である。このため、大腸内視鏡挿入手技においては、アングル操作、捻り操作、引き戻し操作、軸保持などの工夫を要し、或いは送気やX線透視の併用などが行われてきた。
【0004】
前記操作を簡単にするために、以下のような固定用バルーンを有する内視鏡が提案されている。
例えば、特開2002−65595号公報には、2個のチューブを形成し、各チューブにはそれぞれ、先端近傍に流体により膨張収縮可能なバルーン部と、管壁にバルーン部に連通する流体通路と、基端部に前記流体通路に連通する流体送入装置とを設けたことを特徴とする多段式バルーン付チューブが開示されている。
【0005】
また、特開2002−301019号公報には、先端外周部に本体固定用バルーンを取り付けた内視鏡本体と、先端外周部にチューブ固定用バルーンを取り付け、内視鏡本体を挿通させて内視鏡本体挿入時のガイドを行うスライディングチューブとを有する内視鏡が開示されている。
【0006】
図29は、特開2002−65595号公報に開示されているダブルバルーン方式の内視鏡を大腸に挿入するための手順を示す説明図である。ダブルバルーン方式の内視鏡では、オーバーチューブ40aと内視鏡本体2aの先端に取り付けられた、それぞれのバルーン30aおよび30bで、内視鏡本体2aとオーバーチューブ40aのそれぞれが腸と固定される。このため、図29(A)から図29(H)に順に示すような手順で、それぞれのバルーン30aおよび30bを交互に腸と固定しながら、内視鏡2aが深部側へと進み、進んだ分をオーバーチューブ40aが後から追いつく動作を繰り返すことで、腸をたぐり、内視鏡2aは大腸深部や小腸まで到達することができる。
【特許文献1】特開2002−65595号公報
【特許文献2】特開2002−301019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図30は、従来のダブルバルーン方式内視鏡挿入の際の問題点を説明するための説明図であり、図31は従来のスライディングチューブ方式内視鏡挿入の際の問題点を説明するための説明図であり、図32は、従来のスライディングチューブ方式内視鏡の問題点を説明するための説明図である。
【0008】
大腸のS状結腸や横行結腸などの部位は、大腸が腹腔などに固定されていない遊離部分であり、腸管が腹腔内で自由に動く。このような部位においては、従来のダブルバルーン方式の内視鏡では、うまく挿入できない場合がある。すなわち、図30(A)に示すように、深部側に、内視鏡2aに取り付けられたバルーン30bが挿入される。次に、図30(B)に示すように、バルーン30bが膨張し、バルーン30bが腸壁9に固定される。次に、図30(C)に示すように、オーバーチューブ40aに取り付けられたバルーン30aが、深部側で腸壁9と固定されたバルーン30bに、腸内を滑って近づこうとするが、腸壁9とバルーン30aとの間の摩擦により、腸を動かし変形してしまう。
【0009】
この場合、一時的には、バルーン30aとバルーン30bの間の長さは短くなるが、腸とオーバーチューブ40aとは相対的には動いていない。すなわち、バルーン間で腸管が蛇腹状に短縮された状態となっただけにすぎない。次に、図30(D)に示すようにオーバーチューブのバルーン30aが膨張し腸壁9と固定され、さらに、内視鏡2aに取り付けられたバルーン30bを収縮する。そして、内視鏡2aに取り付けられたバルーン30bを、内視鏡2aを伸ばして深部に進めようとする。しかし、収縮した状態でも腸壁9とバルーン30bとの間の摩擦によりバルーン30bが腸内を滑っていかない。このため、蛇腹状に短縮されていた腸管を伸ばすだけとなる。すなわち、図30(D)の状態から図30(A)の状態に戻り、実質的に、内視鏡2aは腸管の深部方向に移動できない状況となる。
【0010】
やはり、特開2002−65595号公報で開示されている方法を用いても、大腸が腹腔などに固定されていない遊離部分では不具合が生じる可能性がある。図31(A)に示すように、内視鏡挿入部2aを無理のない部位まで挿入し、バルーン30bを膨張し腸壁9に固定する。次に、図31(B)に示すように、バルーン付きオーバーチューブ40aを送り込む時に、バルーン付きオーバーチューブ40aが腸壁9に対してスリップしなければ、オーバーチューブ40aの動きに合わせて腸を深部方向に押し込んで、バルーン30aとバルーン30b間で腸管を蛇腹状に短縮させることとなる。そして、図31(C)に示すように、バルーン30bを収縮すると、蛇腹状の腸管が伸びる。このため、図31(C)の状態から図31(A)の状態に戻り、実質的に、内視鏡挿入部を腸管の深部方向に移動できない状況となる。
【0011】
また、上記のオーバーチューブ方式では、内視鏡挿入部はオーバーチューブ40aと組み合わせで使用する。このため、図32に示すように、術者が手15で内視鏡を操作するには、内視鏡2aに被せられたオーバーチューブ40aを介して行わなければならない。しかし、内視鏡2aとオーバーチューブ40aとの間は、その動作原理上、滑りやすい構成になっているため、内視鏡の挿入操作は容易ではなかった。
【0012】
本発明は、簡単な操作で腸深部へ内視鏡を挿入が可能な内視鏡挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の内視鏡挿入装置は、第1の医療器具および第2の医療器具を備える内視鏡挿入装置であって、前記第1の医療器具および前記第2の医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有し、前記第1の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第2の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成され、前記第2の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第1の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、簡単な操作で腸深部へ内視鏡を挿入が可能な内視鏡挿入装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置について説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3を備える内視鏡装置1の全体構成図である。図3は、本発明の第1の実施の形態の内視鏡挿入装置3の外観図を示す。
内視鏡装置1は、患者体内に挿入する2つの医療器具2aおよび2bと、医療器具2aおよび2bをそれぞれ独立して操作するための操作部51および52と、接続コード61および62とからなる内視鏡挿入装置3を備える。さらに、内視鏡装置1は内視鏡挿入装置3に搭載された機能を制御し内視鏡挿入装置3が撮影した画像信号を処理する回路等を内蔵するプロセッサ102と、内視鏡挿入装置3が撮影した画像を写すモニタ101と、内視鏡挿入装置3を通じて大腸内に送気、送水し、また大腸から液体や気体を吸引するポンプ103等とを備える。
【0017】
各医療器具2aおよび2bと各操作部51および52は一体で構成される。個々の医療器具2aおよび2bは、その先端部21および22に腸との固定手段である膨張収縮自在なバルーン部31および32を備え、シース40により束ねられている。
【0018】
第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3を備える内視鏡装置1の接続図を図2に示す。内視鏡挿入装置3は、プロセッサ102と着脱可能に接続される。腸の穿孔を避けるために、ポンプ103によりバルーンに加えられる圧力が一定以上にならないように、ポンプ103はプロセッサ102と接続され、プロセッサ102により制御されている。
【0019】
第1の実施の形態の内視鏡挿入装置3は、第1の医療器具2aおよび第2の医療器具2bと、それぞれの医療器具先端部21および22近傍に位置する第1の固定手段であるバルーン部31と第2の固定手段であるバルーン部32とを備える。すなわち、第1の実施の形態においては、固定手段は気体により膨張収縮自在なバルーン部である。そして、バルーン部31および32は、いずれも2つのバルーンから構成されている。シース40は、2本の医療器具2aおよび2bを束ねる役割をしている。また医療器具2aおよび2bは、それぞれ操作部51および52を介してプロセッサ102と接続コード61および62で結ばれている。
【0020】
図4は、第1の実施の形態の内視鏡挿入装置3を腸内に挿入している状態を説明するための説明図である。図4(A)は、腸長手方向に対して直交する方向から観察した時の状態を示す図であり、図4(B)は、図4(A)の腸深部(右)側の視点E1から観察した時の状態を示す図である。
【0021】
図4において、先端部21のバルーン部31は膨張し腸壁9に固定されている。一方の先端部22のバルーン部32は、収縮状態で腸壁9とは固定されていない。ここで、図4(B)に示すように、バルーン部31は膨張し腸と固定されていても、腸壁周方向の一部に切欠き部を有し、腸壁9との間に比較的大きな空間を残している。言い換えれば、医療器具2aに設けられたバルーン部31は、腸壁を押圧した時に、バルーン部32が設けられた医療器具2bの先端部22が挿通可能な隙間を形成するように構成されている。あるいは、医療器具2aをバルーン部31により腸壁と固定した時に、医療器具2aと腸壁との間に形成される空間が先端部22が挿通可能な隙間を形成する。なお、上記記載では、腸壁9と先端部21の間であってバルーン部31が占有しない部分、すなわちバルーン部が腸壁9と接しない部分を有する空間、をバルーン部31の切欠き部と表現している。
【0022】
収縮したバルーン部32を備えた先端部22は、膨張したバルーン部31と腸壁9の間の空間を通って、腸深部へと挿通可能である。すなわち、医療器具2bは医療器具2aよりも腸深部へと挿入できる。
【0023】
さらに、図示しないが、先端部22を、先端部21より深部へ挿入後に、先端部22の固定手段であるバルーン部32を膨張させ腸壁9と固定し、先端部21の固定手段であるバルーン部31を収縮する。すると、今度は、バルーン部32と腸壁9との間に比較的大きな空間が形成される。このため、収縮したバルーン部31を備えた先端部21は、膨張したバルーン部32と腸壁9の間の空間を通って、より腸深部へと挿通可能である。すなわち、固定手段であるバルーン部32が腸壁9に固定された状態において、バルーン部32と腸壁9との間には、固定手段であるバルーン部31を有する挿入部21が通過可能な隙間が形成される。
【0024】
以下、図5を用いて、第1の実施の形態に係る大腸に医療器具を挿入する内視鏡挿入装置の操作方法を示す。なお、図5では、バルーン部31、バルーン部32およびシース40のみを図示している。
【0025】
(1) 図5(A)
第1の固定手段であるバルーン部31を備えた先端部21と第2の固定手段であるバルーン部32を備えた先端部22とシース40とは腸管に挿入される。挿入の際に、まず、先端部21は先端部22より、先行して挿入される。そして、バルーン部31は膨張し腸壁9と先端部21とは固定される。
【0026】
(2)図5(B)
先端部21が、腸壁9とバルーン部31により固定した状態で、肛門側に引っ張られることで、腸管は肛門側にたぐられる。そして、腸壁9との固定手段であるバルーン部32を備えた先端部22は、先行して挿入された先端部21のバルーン部31と腸の間の空間を挿通し、より深部側に達するまで、挿入される。この時、もちろん、バルーン部32は収縮した状態、すなわち非固定状態であり、移動可能である。
【0027】
(3)図5(C)
先端部22が先端部21が固定している腸壁部よりも深部側に達した時点で、バルーン部32は送気により膨張し、バルーン部32は腸壁9と固定される。そして、肛門に近い側にある先に挿入されていた固定手段であるバルーン部31中の空気は排気され、バルーン部31が収縮することで、腸壁9とバルーン部31との間の固定は解除される。
【0028】
(4)図5(D)
先端部22が、深部側で腸壁9とバルーン部32が固定した状態で、肛門側に引っ張られることにより、腸管は肛門側にたぐられる。
【0029】
(5)図5(E)
固定が解除されたバルーン部31は、深部側にあるバルーン部32と腸壁9の間の空間を挿通し、さらに深部側まで挿入される。
【0030】
(6)図5(F)
バルーン部31は膨張し腸壁9と先端部21とは固定され、一方、バルーン部32は収縮し腸壁9と先端部22の固定は解除される。
【0031】
(7)図5(G)、図5(H)
以上の手順を繰り返し行うことで、確実に腸管をたぐりながら、先端部21および22を腸深部へと進めていく。
【0032】
言い換えれば、第1の医療器具2aを腸壁9と固定する固定操作と、第1の医療器具2a固定箇所よりも深部に、第2の医療器具2bの先端部22を挿通する挿通操作と、第2の医療器具2bと腸壁9とを固定する固定操作と、第1の医療器具2aの腸壁との固定を解除する固定解除操作と、第2の医療器具2bの固定箇所よりも深部に、第1の医療器具2aの先端部21を挿通する挿通操作とを、順に繰り返し行う内視鏡挿入装置の操作である。
【0033】
腸壁9との固定手段31および32を備えた複数の先端部21および22が互いに追い越しながら、いずれかの固定手段31または32を深部側の腸壁9と固定することで、先端部21および22は確実に深部側に進むことができる。すなわち、腸壁9と固定する手段31および32を備えているので、固定された一方の先端部21または22を引っ張り、腸管をたぐりながら、他の先端部21または22を深部へと送り込むこともできる。
【0034】
さらに、腸管に癒着を生じている患者においては、癒着箇所を一方の固定手段31または32で固定しながら、他の先端部21または22が送り込む。すると、癒着した腸管を無理に引っ張って患者に苦痛を与えることはない。
【0035】
上記操作を実行するには、2つの医療器具が互いに腸内で追い越すことが必要となる。前述のように、従来のダブルバルーン方式の構成では、バルーン付きオーバーチューブが固定している箇所を挿入部が追い越すことは可能である。しかし、挿入部に設けたバルーンが膨張し腸管を固定している状態では、オーバーチューブは、挿入部固定箇所を追い越して、より深部へと挿入することはできない点で、本実施の形態と全く異なる。
【0036】
すなわち、本実施の形態の内視鏡挿入装置の固定手段は、腸壁9との固定時における断面が単なる円形あるいはドーナツ形状等ではなく、断面の一部にくびれ、言い換えれば、切欠きを有する。この固定手段の切欠きがあることによって、固定手段と腸壁9との間に他の医療器具が追い越し可能な空間である、固定手段により固定された箇所をはさんで腸管深部を見通すことができる空間が形成される。そして、その空間を通って他の非固定の医療器具が腸深部へと移動できる。
【0037】
このように、腸壁9と医療器具との間に、この切欠きのある空間を確保することで、一方の医療器具が固定している箇所を越えて、もう一方の医療器具をさらに深部へと進めるとき、互いの医療器具が互いに邪魔し合うことがなく移動できる。
【0038】
なお、医療器具2aの固定手段31が固定時に、固定手段31と腸壁9との間のすきまの断面が、切欠きを有しない、例えばドーナツ形状の場合には、ドーナツ形状の中心を通過して、医療器具2bを腸深部へと移動はできる。しかし、次の操作で医療器具2aの固定手段31を収縮し腸と非固定としても、医療器具2bを、医療器具2aを追い越して、より腸深部へと挿入はできない。すなわち本実施の形態の目的を達成できない。
【0039】
本実施の形態の内視鏡1は、第1の医療器具2aと第2の医療器具2bとを備えている。そして、それぞれの医療器具2aおよび2bは、内視鏡機能すなわち、撮像手段、観察領域を照らす照明手段と送気手段と送水送気手段と吸引手段等を、その内部に有している。また、各医療器具の先端部21および22は、先端の方向を制御する湾曲機構を備えていても良い。
【0040】
医療器具は2つに限定されず、2つ以上であればよい。そして、前記2つ以上の医療器具のうち、1つ以外は実質的な内視鏡機能を有しない医療器具、すなわち挿入補助のための機能のみを有する医療器具であって差し支えない。すなわち、最低、1の医療器具が撮像機能等の内視鏡本来の各種手段を有していれば良い。他の医療器具は挿入のための固定手段等さえ備えていれば、本実施の形態の医療器具として使用可能である。他の内視鏡機能を有しない医療器具は、内視鏡機能を有する医療器具を腸深部に挿入するために使用される。このような内視鏡機能を有していない医療器具を備えた内視鏡挿入装置を使用することにより各医療器具内に収納する部材が少なくなり各医療器具の細径化が図られる。あるいは、通常1本の内視鏡が有している機能を、複数の医療器具が分割して有することも可能である。例えば、送水機能のみを有する医療器具を備えた構成とすることで、この送水機能のみを有する医療器具により他の医療器具の外管壁に送水を行うことで、腸壁とのすべりが良くなり、挿入がより容易となる。
【0041】
本実施の形態の内視鏡挿入装置は医療器具2aおよび2bを束ねる鞘であるシース40を有する。シース40は2本の医療器具2aおよび2bのほぼ全長を覆い束ねることで、2本の医療器具が腸管内で互いに追い越すことが可能な相対的な位置関係、言い換えれば2本の医療器具の軸間距離を保持することができる。医療器具の軸間距離を保持する保持手段としては、シーズ40に限定されるものではなく、以下の変形例を含め、種々の構造が利用可能である。
【0042】
以上のように、本実施の形態の内視鏡挿入装置は、少なくとも一つが内視鏡機能を有する複数の医療器具を備えた内視鏡挿入装置であって、各医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有し、前記複数の医療器具に設けられた前記複数の固定手段は、互いに前記複数の固定手段の少なくとも一つが前記腸壁を押圧した時に、前記少なくとも一つ以外の固定手段が設けられた一または二以上の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されていることを特徴とする内視鏡挿入装置である。
【0043】
図6は、本実施の形態の内視鏡挿入装置の第1の変形例に用いられる、医療器具の軸間距離を保持する保持手段である係合用クリップの説明図である。すなわち、第1の変形例では、シース40の替わりに図6に示すように、医療器具2aと医療器具2bを係合する係合用クリップ46を用いる。図6(A)は係合用クリップ46で係合された医療器具2aおよび2bの外観を、図6(B)は係合用クリップ46で係合された医療器具2aおよび2bの、図6(A)のVI−B−VI−B線での断面図を示している。クリップ46と医療器具2aは、硬く固定されているが、もう一方の先端部22とクリップ46とは、相対的に軸方向に動く必要があるため、ゆるく固定されている。
【0044】
次に、本実施の形態の内視鏡挿入装置の第2の変形例に用いられる医療器具の軸間距離を保持する保持手段である係合用突起21aを備えた挿入装置3の先端部の上面図を図7(A)に、図7(B)には図7(A)のXII−B−XII−B線での断面図を示す。すなわち、挿入部21は、その先端付近の一定範囲にて係合用突起21aを備え、医療器具22とゆるく結合していても良い。
【0045】
なお、医療器具の軸間距離を保持する保持手段であるシース40、係合用クリップ46または係合用突起21a(以下、シース等という)は、本実施の形態の内視鏡挿入装置の必須構成要素ではない。シース等は、あくまで複数の医療器具が腸管内で互いに追い越すことが可能な相対的な位置関係、すなわち複数の医療器具の軸間距離、を保持するための部材である。保持手段を有する内視鏡挿入装置料においては、各医療器具が腸内で互いに追い越すことが容易である。しかし、例えば、全ての医療器具が撮像部を有する内視鏡の場合には、各医療器具は、深部側にあるバルーンと腸壁の間の空間を撮像部により観察しながら、先端部を挿通することができるため、シース等は不要の場合もある。
【0046】
また、バルーンで固定された医療器具が撮像部および180度曲げることができる湾曲部を有する場合には、湾曲部により先端部を180度曲げることで、固定されたバルーンと腸壁9の間の空間を、固定された先端部の撮像部により観察しながら、次の医療器具先端部を挿通することができるため、シース等は不要の場合もある。
【0047】
2本の医療器具2aおよび2bは、それぞれ独立して操作でき、腸壁9に固定するための固定手段30である固定バルーン部31および32、医療器具2a、2bを操作するための操作部51および52、医療器具2aおよび2bとプロセッサ102間の接続コード61および62等を備える。
【0048】
固定用のバルーン部31および32は、各医療器具の先端部の湾曲部上、湾曲部より基端側の先端部上、あるいは両者にまたがった箇所に、接着などの手段により固定されている。バルーン部の位置は、医療器具の先端にある必要はなく、先端近傍であればよい。
【0049】
図8は、本実施の形態の固定手段であるバルーン部の構成を説明するための説明図である。図8に示すように、固定用のバルーン部31は、先端部21に取り付けられた2つのバルーンに空気を出し入れするための送気脱気チューブ110を備えている。図8において、実線は送気前、破線は送気後のバルーン部31の状態を示している。送気脱気チューブ110は先端部21の外表面に沿って配設されていてもよい。他の先端部22においても同様にバルーン部32に送気脱気チューブが接続されている。なお、図8には、バルーンと直接関係のない部材は全て図示していない。
【0050】
図9は、本実施の形態の操作部51または52を示す図である。操作部51または52は、把持部115と、送気脱気ボタン116と。送気送水ボタン117と、吸引ボタン118と、アングルレバー119とを備える。把持部115は術者が片手で把持可能であり、および前記各ボタンは術者が片手で作業できる。本実施の形態では、把持部115は、操作者の疲労低減を考慮し、医療器具2aまたは2bの軸に対して角度をもって、具体的には直角に把持できるが、これに限定するものではない。また、それぞれのボタン116、117または118は把持した際に、親指以外の指で操作可能な範囲に設けられている。また、アングルレバー119は、親指で操作できる。
【0051】
図10は、医療器具2aおよび2bとプロセッサ102をつなぐコード61および62の断面を示す。コード61および62には、バルーン部31を動作させる送気脱気チューブ120と、送気送水チューブ121と、吸引チューブ122と、撮像や光源を動作させるためのケーブル123とが挿通されている。操作部51または52に接続されたコード61または62は、術者の邪魔にならない位置から導出されている。コード61および62は、途中で分岐させて、送気脱気チューブ121と送気送水チューブ121と吸引チューブ122とをポンプ103に接続し、ケーブル123をプロセッサ102に接続しても良い。
【0052】
バルーン部31および32は、たとえば、伸縮性に富んだ材料であるシリコーンゴムなどで作成されている。あるいは、バルーン部31および32は、その構造によっては、素材自体は伸縮性の小さい樹脂または紙等で作成してもよい。
なお、医療器具外皮は、腸と滑りやすくするため、潤滑剤や表面コート処理されていても良い。
【0053】
医療器具2aおよび2bの内部には、送気を行うチューブ111と、送水を行うチューブ112と、吸引を行うチューブを行うチューブ113と、撮像信号や照明のための電源を伝達するケーブル114等とを内蔵している。チューブ111、112、113およびケーブル114等は、プロセッサ102またはポンプ103に着脱可能に接続されている。医療器具2aおよび2bが湾曲機能を有している場合、すなわち湾曲部を有する場合、上記に加えて湾曲動作を発生させるワイヤまたは/かつチューブ等も医療器具2aおよび2b内部に内蔵されている。
【0054】
医療器具2aおよび2bは、シース40内および腸壁9内で互いにこすれあう。互いの挿入部21および22の挿入性を阻害しないで、挿通力を軽減するために、医療器具2a、2bの表面およびシース40の内外面はすべり性の良い材質で覆われている。例えば、シース40は、フッ素樹脂のようなすべり性の良い材質で構成される。さらに、シース40の内面は、潤滑剤や特殊コートにより低潤滑状態とする。シース40は屈曲性に優れたものが良い。
【0055】
シース40は、医療器具2aまたは2bのいずれかに固定されている。シース40の端部は腸壁を傷つけないようにR加工や先細りになるように処理されている。医療器具2aおよび2bの可撓管部は、挿入の操作性向上および繰り返しの押し引きに耐えるように、可撓管部の基端部側は、可撓管部の先端部に比べて硬く、曲がりにくくなっている。
【0056】
また、撮像部を有する医療器具を複数備える場合には、モニタ101に表示する画像を術者が選択する選択手段を有していても良いし、複数の画像を同時に表示しても良いし、あるいは、複数のモニタを備える構成としても良い。さらには、挿入操作中に、固定された医療器具先端部と腸壁の間の空間を観察するために、前記空間を通って挿入する医療器具の撮像部の画像を表示するように、表示に使用する医療器具撮像部が自動的に切り替わる表示手段としても良い。
【0057】
次に、本発明の第1の実施の形態の種々の変形例にかかる固定手段について、図11から図17を用いて説明する。なお、上記図はいずれも概略図であり、説明と直接関係のない部材や、詳細なバルーン壁の厚さ等は図示されていない。
【0058】
図11は、第1の実施の形態の第2の変形例にかかる固定手段を示す図であり、図11(A)は膨張時の断面概略図を、図11(B)は図11(A)の一部拡大図(腸壁9は図示せず)である。図12は、第1の実施の形態の第3の変形例にかかる固定手段を示す図であり、(A)バルーン部膨張状態から(C)バルーン部収縮状態への変化を示している。図13は本発明の第1の実施の形態の第4の変形例にかかる固定手段を示す図であり、図13(B)は図13(A)の一部拡大図(腸壁9は図示せず)である。
【0059】
図14は、本発明の第1の実施の形態の第5の変形例にかかる固定手段であるバルーン部37が占める領域の変化の一例を示す断面図である。図15は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の先端部軸方向から観察した場合の概略図である。図16は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の先端部長手直角方向の断面図であり、(A)は固定時、(B)は非固定時を示す。図17は本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる折り曲げ可能な固定手段39の(A)展開時、(B)収縮中、(C)収縮時の断面図を示す
本発明の第1の実施の形態の第2の変形例にかかる固定手段30は、図11(A)膨張時の断面図に示すように、複数のバルーンの群から構成された構造を有するバルーン部35である。複数のバルーンは、先端部21または22に固定された伸縮性をもつ連結帯35Aにより固定されている。各バルーンへはバルーン連結帯35Aに内蔵された送気脱気チューブ124により空気が供給排気される。送気脱気チューブ35Aは、連結帯の隙間に設けられていてもよい。
【0060】
図12に示すように、連結帯35Aは、バルーン部35の膨張時に腸管管腔内でバルーン部35より内側に位置している。これにより、バルーン部35が膨張した際にはバルーン群は略ドーナツ型を形成し、バルーン部35が収縮し固定を解除する際には、図12(B)に示すように、C字型の断面形状を有する。
【0061】
次に、本発明の第1の実施の形態の第4の変形例にかかる固定手段は、図13に示すように多数のバルーンから構成された構造を有するバルーン部36である。そして、図13(B)に示すように、各バルーンは、空気の送気脱気チューブ36Aを介して間接的に先端部21または22に固定されている。上記構成を有するため、バルーン部36は、各バルーンが膨張した際に、固定箇所におけるバルーン部36が占める形状を変形させることができる。
【0062】
次に、図14に、本発明の第1の実施の形態の第5の変形例にかかる固定手段であるバルーン部37が占める領域の変化の一例を示す。図14(A)はバルーン部37が膨張した状態を、図14(C)はバルーン部37が収縮した状態を、図14(B)はバルーン部37が膨張収縮の中間の状態を示している。バルーン部37は、図14(A)に示すように、通常のバルーンと異なり、扁平に膨張する。
【0063】
次に、図15は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の先端部軸方向から見た図を示す。図16は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の動作を説明するための先端部軸直角方向から見た断面図を示し、図16(A)は固定時、図16(B)は非固定時を示す。図16は、動作説明図であり、先端部21、22の内部を示すために、先端部21、22の径を大きく表示している。
【0064】
固定手段38は、伸縮自在な機械的部材である。すなわち、固定手段38は、複数の固定用アーム部材38aから構成され、アーム突っ張りバネ38bを備える。図16(A)に示すように、アーム基端部には、アーム操作用ワイヤ38cが接続されており、ワイヤ38cは、先端部21、22の内部を通じて操作部まで伸びている。バネ38bが無負荷の状態ではアーム38aは開き、言い換えると伸展し、固定手段38は腸壁9と固定される。また図16(B)に示すように、ワイヤ38cを引っ張ることで、アーム38aをたたみ、言い換えると収縮させ、固定手段38と腸壁9との固定状態を解除することができる。
【0065】
次に、図17は本発明の第1の実施の形態の第7の変形例にかかる折り曲げ可能な固定手段39の(A)展開時、(B)収縮中、(C)収縮時を、それぞれ示す。固定手段39は、伸縮自在な機械的部材であり、複数の折り曲げ可能な部材39bを複数の関節39aにより連結した構造を有する。
固定手段39は、固定時には図17(A)の状態であり、固定解除時には、図17(B)の状態を経て、図17(C)に示すように小さく収納可能な状態となる。
【0066】
なお、本実施の形態にかかる内視鏡挿入装置は、複数の各医療器具が、それぞれ異なる方式、形状または大きさの固定手段を有していても差し支えない。
【0067】
また、本発明の第1の実施の形態では、説明を簡単にするために、2つの医療器具2aおよび2bを有する内視鏡挿入装置3について説明をした。しかし、医療器具は2つ以上であれば良い。以下に、複数の医療器具を有する内視鏡挿入装置ついて説明する。
【0068】
複数の医療器具を有する内視鏡挿入装置とは、少なくとも一つが内視鏡機能を有する複数の医療器具を備え、複数の医療器具の各々が先端に腸壁と固定可能な固定手段を有する内視鏡挿入装置である。そして、選択された一の医療器具を、腸壁9に固定する固定操作と、腸壁9と非固定の医療器具の先端部を、固定された医療器具と前記腸壁9との固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作とを、繰り返しこの順序で行い、全ての前記医療器具を腸壁9に固定する。その後、最も浅部において腸壁9と固定している医療器具、すなわち最初に固定操作を行った医療器具を腸壁9から固定解除する固定解除操作と、固定解除した医療器具の先端部を、すでに固定した医療器具のどの固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作と、固定解除した医療器具を、腸壁9と固定する固定操作を行う。さらに、前記操作により、最も浅部において腸壁9と固定している医療器具となった医療器具の先端部を、すでに固定した医療器具のどの固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作と、固定解除した医療器具を、腸壁9と固定する固定操作を行う。この操作を繰り返し行うことで、各挿入部を深部へと送り込むことができる。もちろん、最終的に、内視鏡機能を備えた医療器具を、所望の深部箇所に送り込むことが出来た時点で、挿入操作は完了する。
【0069】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aについて説明する。
【0070】
図18は、内視鏡挿入装置3Aの外観図である。内視鏡挿入装置3Aの全体構成は、第1の実施の形態とほぼ同様である。しかし、内視鏡挿入装置3Aは、その先端部に先端部23を有する医療器具2Aと、その先端部に切欠き部42aを有するオーバーチューブ42により構成される。医療器具2Aとオーバーチューブ42は、それぞれが固定手段33および34を備え、それぞれの固定手段33および34は独立して操作することができる。
【0071】
本実施の形態の内視鏡挿入装置は、医療器具を2つ備えるが、第1の医療器具が内視鏡機能を備え、第2の医療器具が内視鏡機能を有しない。すなわち、先端部23を有する第1の医療器具2Aが第1の医療器具に相当し、オーバーチューブ42を備えた医療器具2Bが第2の医療器具に相当する。
【0072】
図19は第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図である。そして、図19は、第1の医療器具2Aの固定手段であるバルーン部33が膨張し、内視鏡機能を有する第1の医療器具2Aが、腸壁(図示せず)に固定されている状態を示す。
【0073】
図20は内視鏡挿入装置3Aの先端部を腸深部側から観察した図である。図19と同じく、図20においては、バルーン部33が膨張し、第1の医療器具2Aが、腸壁9に固定されている。この時、バルーン部33は、オーバーチューブ42固定用のバルーン部34よりも、腸深部に位置している。そしてオーバーチューブ固定用のバルーン部34は収縮しており、オーバーチューブは腸壁9とは非固定の状態である。
【0074】
図20より明らかなように、バルーン部33が膨張し腸壁9に固定されている状態においても、バルーン部33と腸壁9との間には、収縮しているバルーン部34を備えたオーバーチューブ42の先端部が挿通するのに十分な空間が確保されている。このため、この状態でバルーン部34を備えたオーバーチューブ42の先端部を、固定バルーン部33より腸深部へと挿入できる。
【0075】
図21は、第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図である。図21に示すようにオーバーチューブ42固定用のバルーン部34を膨張し、腸壁9(図示せず)に固定する。そして、第1の医療器具2A固定用のバルーン部33を収縮すると、今度は、バルーン部33を備えた先端部23を深部へ挿入できる。すなわち、再び、先端部23のバルーン部33をオーバーチューブ42の固定用のバルーン部34よりも腸深部へと送り込める。上記を繰り返すことで確実に内視鏡機能を有する医療器具23を深部に挿通できる。
【0076】
なお、図18に示すように、内視鏡挿入装置3Aは、第1の医療器具2Aと、第2の医療器具2Bであるオーバーチューブ42の2層構造になっており、第1の医療器具2Aと第2の医療器具2Bには、それぞれ操作部54および53が設けられ、挿入、抜去、送気、送水または吸引等の各コントロールができる。操作部53および54にはさらに、送気脱気チューブと送気送水チューブと吸引チューブ等とが内蔵されたコード63および64等とが接続されている。第1の医療器具2Aは、さらに湾曲部を備えていても良く、その制御は操作部54で行う。
【0077】
オーバーチューブ42先端の切欠き部42aの長さLは、第1の医療器具2Aの固定用の各バルーンの直径Rの2倍以上が好ましい。前記範囲を超えていれば、オーバーチューブ42が医療器具2Aの上をスライドする際に、第1の医療器具固定用のバルーン部33に干渉されることなく、オーバーチューブ固定用のバルーン部34を第1の医療器具固定用のバルーン部33よりも深部側に到達できる。
【0078】
切欠き部42aの長さLの上限は特にないが、操作性や強度を考慮すると、第1の医療器具固定用の各バルーンの直径Rの3倍以下が好ましい。なお、上記の固定用バルーン33の直径Rとは、図19で示すように、腸内で膨張固定時の医療器具軸方向の長さをいう。
【0079】
図23は内視鏡挿入装置3Aの操作部の構成図である。第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aにおいては、オーバーチューブ42と医療器具2Aの挿入部23との繰り返しのスライド作業をスムーズに行うために、オーバーチューブ固定用のバルーン34が、医療器具固定用のバルーン部33より腸深部にあるとき、オーバーチューブの先端が第1の医療器具固定用のバルーン部33より後端側に逸脱することを防止する必要がある。このためには、図23に示すように、操作部近傍に、スライドを調整するストッパー47を備えることが好ましい。
【0080】
図24は、第2の実施の形態の第1の変形例にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部近傍の挿入部23の軸方向垂直方向からの概要図である。第2の実施の形態の第1の変形例において、オーバーチューブ42は、第1の医療器具2Aの先端部23とゆるく嵌合している嵌合部42bを有している。嵌合部42bを有することで、先端部23とオーバーチューブ42が互いに離れることが無くなり、スライド操作が容易となる。特に、オーバーチューブ42の嵌合部42bは切り欠き部42aが存在する範囲には形成されていることが好ましい。
【0081】
また、図24に示すように、オーバーチューブ固定用のバルーン部34はオーバーチューブ42の先端から少し離れたオーバーチューブ先端部の基端側に固定される
また、オーバーチューブ42と先端部23の間の摺動性改善のため、潤滑剤を塗布することも好ましい。
なお、オーバーチューブ42の先端部は、挿入操作時において、第1の医療器具先端部23に収納された撮像手段の視界を妨げることはない。
【0082】
<第3の実施の形態>
次に、本発明にかかる第3の実施の形態の内視鏡挿入装置について説明する。
【0083】
図25は、本実施の形態の内視鏡挿入装置のケーブルを用いた誘い込み機構を説明するための説明図である。図25を用いて本実施の形態の内視鏡挿入装置を用いて、より簡単に挿入操作を実施するためのケーブルを用いた誘い込み機構について説明する。本実施の形態の内視鏡挿入装置の基本構成は、第1の実施の形態の内視鏡挿入装置と同じである。しかし、第3の実施の形態の内視鏡挿入装置は、ケーブルを用いた誘い込み機構を有する。
【0084】
すなわち、図25に示すように、ケーブル125は、その両端が第1の医療器具の先端部21の先端と後端に固定され、その間は先端部22の内部に挿通されている。ケーブル126は、その両端が第2の医療器具の先端部22の先端と後端に固定され、その間は先端部21の内部に挿通されている。なお、図25では、固定手段30や操作部50等の誘い込み機構と直接関係のない部材は全て図示していない。
【0085】
図25(A)は、先端部21が腸内で先行し、固定手段により固定されている状態を示す。すなわち図の上部が腸の深部側、図の下部が肛門側を示している。
【0086】
ここで、ケーブル125を引くと、図25(B)に示すように、先端部22が深部へ挿入され、極めて容易に先端部22の先端が先端部21の先端とが並ぶ状態となる。このため、このケーブルを用いた誘い込み機構を有する内視鏡挿入装置では、先端部22を操作して先端部21より深部へ挿入する作業(図25(C))が、非常に楽に行えるようになる。
【0087】
なお、先端部22が先端部21が腸内で先行し、固定手段により固定されている場合(図25(C))では、ケーブル126を引っ張ることで先端部21が先端部22近傍まで近づく。
【0088】
図26に、本発明にかかる第3の実施の形態の内視鏡挿入装置の内視鏡機能を有する医療器具の先端の構成を示す。内視鏡先端には、消化管を観察するための撮像子127と、消化管を照らす複数の照明手段128と、吸引口129と残渣や粘液を除去するための前方送水口130と、撮像レンズの汚れを除去するための送気送水口金131と、他の医療器具とのスムーズな連係動作を達成するためのケーブル125および126が挿通するためのケーブル挿通口132等、とから構成されている。照明手段128は光ファイバーにより構成されてもよいし、LED等の電気的手段によって構成されても良い。
【0089】
<第4の実施の形態>
図27は、本発明の第4の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の医療器具先端部の斜視図であり、図28は、本実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の動作を説明するための図である。本実施の形態の内視鏡挿入装置の基本動作原理等は、第1の実施の形態の内視鏡挿入装置と同じである。図27に示すように、本実施の形態の内視鏡挿入装置は、バルーン部31を有する医療器具2aと、バルーン部32を有する医療器具2bと、内視鏡2cを備える。内視鏡2cは、撮像部25等の内視鏡機能を有し、その先端の2つの鉗子孔26aおよび26bのそれぞれから、医療器具2aおよび2bが突出可能である。
【0090】
次に、図28を用いて、本実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の動作を説明する。図28は、本実施の形態の内視鏡挿入装置を用いて腸深部に内視鏡2cを挿入する手順を腸長手垂直方向から観察した模式図である。
【0091】
内視鏡挿入装置による内視鏡2cの挿入動作としては、最初に、図28(A)に示すように、医療器具2aのバルーン部31が膨張し、医療器具2aは腸壁9に固定されている。それに対して、医療器具2bのバルーン部32は収縮している。本実施の形態の内視鏡挿入装置においては、図28(B)に示すように、医療器具2bの先端部22は、医療器具2aが腸壁9に固定されていても、医療器具2aと腸壁9との間のすきまを通って、医療器具2aよりも腸深部(図面左側)へ前進できる。そして、医療器具2bの先端部22が、医療器具2aの先端部21よりも腸深部に到達すると、医療器具2bのバルーン部32が膨張し腸壁9と固定され(図28(C))、医療器具2aのバルーン部31は収縮する(図28(D))。すると、今度は、図28(E)に示すように、医療器具2bが腸壁9と固定されていても、医療器具2aの先端部21は、医療器具2bと腸壁9との間のすきまを通って、医療器具2bよりも腸深部(図面左側)へ前進できる。そして、図28(F)に示すように、医療器具2aのバルーン部31が再び膨張し腸壁9と固定される。
【0092】
このように、2つの医療器具2aおよび2bの先端部21および22が、バルーン部31または32により交互に腸壁9と固定しながら、腸深部へと進む。そして、図28(G)に示すように、先端部21および22がある程度、進んだ時点で、内視鏡2cが腸深部へと進む。
【0093】
本実施の形態の内視鏡挿入装置では、医療器具2aおよび医療器具2bは、いずれも内視鏡機能を有しない医療器具であり、内視鏡2cを腸深部に挿入するためだけ使用される医療器具である。医療器具2aおよび医療器具2bは、内視鏡2cの鉗子チャンネルを経由して内視鏡2cの先端部から突出しており、内視鏡2cが目的の腸深部に到達した後には、鉗子チャンネルから抜き去り、他の医療器具を、該鉗子チャンネルに挿入することも可能である。
【0094】
本発明は、上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0095】
付記事項
本発明の内視鏡挿入装置の操作方法を以下に示す。
【0096】
(1)複数の医療器具を備え、前記複数の医療器具の各々が先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有する内視鏡挿入装置を用いて、
選択された一の医療器具を、腸壁に固定する固定操作と、
腸壁と非固定の医療器具の先端部を、前記固定された医療器具と前記腸壁との固定箇所よりも深部に、挿通する挿通操作とを、
繰り返し行い、全ての前記医療器具を前記腸壁に固定した後に、
最も浅部において腸壁と固定している前記医療器具を、前記腸壁から固定解除する固定解除操作と、
固定解除した医療器具の先端部を、他のすべての医療器具の固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作と、
前記固定解除した医療器具を、前記腸壁と固定する固定操作とを、
繰り返し行うことを特徴とする内視鏡挿入装置の操作方法。
【0097】
(2)第1の医療器具と第2の医療器具を備え、前記医療器具の各々が先端に腸壁と固定可能な固定手段を有する内視鏡挿入装置を用いて、
前記第1の医療器具を腸壁と固定する固定操作と、
第1の医療器具固定箇所よりも深部に、前記第2の医療器具の先端部を挿通する挿通操作と、
前記第2の医療器具と腸壁とを固定する固定操作と、
前記第1の医療器具の腸壁との固定を解除する固定解除操作と、
第2の医療器具の固定箇所よりも深部に、前記第1の医療器具の先端部を挿通する挿通操作とを、
順に繰り返し行うことを特徴とする内視鏡挿入装置の操作方法。
【0098】
(3)前記第1の医療器具の内部を挿通する第1のケーブルの両端がそれぞれ前記第2の医療器具の両端に固定され、
前記第2の医療器具の内部を挿通する第2のケーブルの両端がそれぞれ前記第1の医療器具の両端に固定された挿入補助手段を用い、
前記第1のケーブルと前記第2のケーブルを順に索引することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の内視鏡挿入装置の操作方法。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置を備える内視鏡装置の全体構成図。
【図2】第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置を備える内視鏡装置の接続概図。
【図3】第1の実施の形態の内視鏡挿入装置の外観図。
【図4】第1の実施の形態の内視鏡挿入装置を腸内に挿入している状態の説明図。
【図5】第1の実施の形態に係る内視鏡挿入装置の操作方法の説明図。
【図6】第1の実施の形態の第1の変形例の係合用クリップの説明図。
【図7】第1の実施の形態の第1の変形例の係合用突起の説明図。
【図8】第1の実施の形態の固定用のバルーン部の説明図。
【図9】第1の実施の形態の操作部の説明図。
【図10】第1の実施の形態のコードの断面図。
【図11】第1の実施の形態の第2の変形例にかかる固定手段を示す図。(A)はバルーン部膨張時の断面図、(B)は(A)の一部拡大図。
【図12】第1の実施の形態の第3の変形例にかかる固定手段を示す図。
【図13】第1の実施の形態の第4の変形例にかかる固定手段を示す図。(A)はバルーン部膨張時の断面図、(B)は(A)の一部拡大図。
【図14】第1の実施の形態の第5の変形例にかかる固定手段が膨張収縮時に腸内で占める領域の変化の一例を示す断面図。
【図15】第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段を先端部軸方向から観察した場合の概略図。
【図16】第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段の先端部長手直角方向の断面図。(A)固定時、(B)非固定時。
【図17】第1の実施の形態の第7の変形例にかかる折り曲げ可能な固定手段の断面図。(A)展開時、(B)収縮中、(C)収縮時。
【図18】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の外観図。
【図19】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の先端部の断面図。
【図20】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置を腸深部側から観察した図。
【図21】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図。
【図22】第2の実施の形態の変形例1にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図。
【図23】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の操作部の構成図。
【図24】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の先端部の構成図。
【図25】第3の実施の形態にかかるケーブルを用いた誘い込み機構を説明するための説明図。
【図26】第3の実施の形態にかかる誘い込み機構ケーブルを有する医療器具先端部の構成図。
【図27】第4の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の先端部の斜視図。
【図28】第4の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の動作を説明するための図。
【図29】従来の内視鏡を大腸に挿入するための手順を示す説明図。
【図30】従来の内視鏡挿入の問題点を説明するための説明図。
【図31】従来の内視鏡挿入の問題点を説明するための説明図。
【図32】従来の内視鏡挿入の問題点を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0100】
1…内視鏡装置、2a、2b、2A、2B…医療器具、3、3A…内視鏡挿入装置、9…腸壁、21、22、23…医療器具先端部、31、32、33、34、35、36、37、38…固定手段、40…シース、51、52、53、54…操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡挿入装置に関する。特に複数の医療器具を備え、各医療器具が腸壁と固定可能な固定手段を備えた、内視鏡挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に内視鏡は細長の管で可撓性を有する軟性部と、この軟性部の先端部に連設され操作部の操作により左右又は及び上下方向に湾曲可能な湾曲部と、この湾曲部の先端部に連設された硬性の先端部とから構成されている。内視鏡は、経肛門的又は経口的又は経鼻的に体腔内へ挿入して、所定部位を観察診断し、又は観察しつつ処置等をするようになっている。
【0003】
しかし、従来の内視鏡を深部消化管、例えば大腸を経由して小腸へ挿入する場合、単に内視鏡挿入部を押し入れていくだけでは、複雑な腸管の屈曲のため内視鏡先端に力が伝わりにくく、深部への挿入は困難である。このため、大腸内視鏡挿入手技においては、アングル操作、捻り操作、引き戻し操作、軸保持などの工夫を要し、或いは送気やX線透視の併用などが行われてきた。
【0004】
前記操作を簡単にするために、以下のような固定用バルーンを有する内視鏡が提案されている。
例えば、特開2002−65595号公報には、2個のチューブを形成し、各チューブにはそれぞれ、先端近傍に流体により膨張収縮可能なバルーン部と、管壁にバルーン部に連通する流体通路と、基端部に前記流体通路に連通する流体送入装置とを設けたことを特徴とする多段式バルーン付チューブが開示されている。
【0005】
また、特開2002−301019号公報には、先端外周部に本体固定用バルーンを取り付けた内視鏡本体と、先端外周部にチューブ固定用バルーンを取り付け、内視鏡本体を挿通させて内視鏡本体挿入時のガイドを行うスライディングチューブとを有する内視鏡が開示されている。
【0006】
図29は、特開2002−65595号公報に開示されているダブルバルーン方式の内視鏡を大腸に挿入するための手順を示す説明図である。ダブルバルーン方式の内視鏡では、オーバーチューブ40aと内視鏡本体2aの先端に取り付けられた、それぞれのバルーン30aおよび30bで、内視鏡本体2aとオーバーチューブ40aのそれぞれが腸と固定される。このため、図29(A)から図29(H)に順に示すような手順で、それぞれのバルーン30aおよび30bを交互に腸と固定しながら、内視鏡2aが深部側へと進み、進んだ分をオーバーチューブ40aが後から追いつく動作を繰り返すことで、腸をたぐり、内視鏡2aは大腸深部や小腸まで到達することができる。
【特許文献1】特開2002−65595号公報
【特許文献2】特開2002−301019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図30は、従来のダブルバルーン方式内視鏡挿入の際の問題点を説明するための説明図であり、図31は従来のスライディングチューブ方式内視鏡挿入の際の問題点を説明するための説明図であり、図32は、従来のスライディングチューブ方式内視鏡の問題点を説明するための説明図である。
【0008】
大腸のS状結腸や横行結腸などの部位は、大腸が腹腔などに固定されていない遊離部分であり、腸管が腹腔内で自由に動く。このような部位においては、従来のダブルバルーン方式の内視鏡では、うまく挿入できない場合がある。すなわち、図30(A)に示すように、深部側に、内視鏡2aに取り付けられたバルーン30bが挿入される。次に、図30(B)に示すように、バルーン30bが膨張し、バルーン30bが腸壁9に固定される。次に、図30(C)に示すように、オーバーチューブ40aに取り付けられたバルーン30aが、深部側で腸壁9と固定されたバルーン30bに、腸内を滑って近づこうとするが、腸壁9とバルーン30aとの間の摩擦により、腸を動かし変形してしまう。
【0009】
この場合、一時的には、バルーン30aとバルーン30bの間の長さは短くなるが、腸とオーバーチューブ40aとは相対的には動いていない。すなわち、バルーン間で腸管が蛇腹状に短縮された状態となっただけにすぎない。次に、図30(D)に示すようにオーバーチューブのバルーン30aが膨張し腸壁9と固定され、さらに、内視鏡2aに取り付けられたバルーン30bを収縮する。そして、内視鏡2aに取り付けられたバルーン30bを、内視鏡2aを伸ばして深部に進めようとする。しかし、収縮した状態でも腸壁9とバルーン30bとの間の摩擦によりバルーン30bが腸内を滑っていかない。このため、蛇腹状に短縮されていた腸管を伸ばすだけとなる。すなわち、図30(D)の状態から図30(A)の状態に戻り、実質的に、内視鏡2aは腸管の深部方向に移動できない状況となる。
【0010】
やはり、特開2002−65595号公報で開示されている方法を用いても、大腸が腹腔などに固定されていない遊離部分では不具合が生じる可能性がある。図31(A)に示すように、内視鏡挿入部2aを無理のない部位まで挿入し、バルーン30bを膨張し腸壁9に固定する。次に、図31(B)に示すように、バルーン付きオーバーチューブ40aを送り込む時に、バルーン付きオーバーチューブ40aが腸壁9に対してスリップしなければ、オーバーチューブ40aの動きに合わせて腸を深部方向に押し込んで、バルーン30aとバルーン30b間で腸管を蛇腹状に短縮させることとなる。そして、図31(C)に示すように、バルーン30bを収縮すると、蛇腹状の腸管が伸びる。このため、図31(C)の状態から図31(A)の状態に戻り、実質的に、内視鏡挿入部を腸管の深部方向に移動できない状況となる。
【0011】
また、上記のオーバーチューブ方式では、内視鏡挿入部はオーバーチューブ40aと組み合わせで使用する。このため、図32に示すように、術者が手15で内視鏡を操作するには、内視鏡2aに被せられたオーバーチューブ40aを介して行わなければならない。しかし、内視鏡2aとオーバーチューブ40aとの間は、その動作原理上、滑りやすい構成になっているため、内視鏡の挿入操作は容易ではなかった。
【0012】
本発明は、簡単な操作で腸深部へ内視鏡を挿入が可能な内視鏡挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の内視鏡挿入装置は、第1の医療器具および第2の医療器具を備える内視鏡挿入装置であって、前記第1の医療器具および前記第2の医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有し、前記第1の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第2の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成され、前記第2の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第1の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、簡単な操作で腸深部へ内視鏡を挿入が可能な内視鏡挿入装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置について説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3を備える内視鏡装置1の全体構成図である。図3は、本発明の第1の実施の形態の内視鏡挿入装置3の外観図を示す。
内視鏡装置1は、患者体内に挿入する2つの医療器具2aおよび2bと、医療器具2aおよび2bをそれぞれ独立して操作するための操作部51および52と、接続コード61および62とからなる内視鏡挿入装置3を備える。さらに、内視鏡装置1は内視鏡挿入装置3に搭載された機能を制御し内視鏡挿入装置3が撮影した画像信号を処理する回路等を内蔵するプロセッサ102と、内視鏡挿入装置3が撮影した画像を写すモニタ101と、内視鏡挿入装置3を通じて大腸内に送気、送水し、また大腸から液体や気体を吸引するポンプ103等とを備える。
【0017】
各医療器具2aおよび2bと各操作部51および52は一体で構成される。個々の医療器具2aおよび2bは、その先端部21および22に腸との固定手段である膨張収縮自在なバルーン部31および32を備え、シース40により束ねられている。
【0018】
第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3を備える内視鏡装置1の接続図を図2に示す。内視鏡挿入装置3は、プロセッサ102と着脱可能に接続される。腸の穿孔を避けるために、ポンプ103によりバルーンに加えられる圧力が一定以上にならないように、ポンプ103はプロセッサ102と接続され、プロセッサ102により制御されている。
【0019】
第1の実施の形態の内視鏡挿入装置3は、第1の医療器具2aおよび第2の医療器具2bと、それぞれの医療器具先端部21および22近傍に位置する第1の固定手段であるバルーン部31と第2の固定手段であるバルーン部32とを備える。すなわち、第1の実施の形態においては、固定手段は気体により膨張収縮自在なバルーン部である。そして、バルーン部31および32は、いずれも2つのバルーンから構成されている。シース40は、2本の医療器具2aおよび2bを束ねる役割をしている。また医療器具2aおよび2bは、それぞれ操作部51および52を介してプロセッサ102と接続コード61および62で結ばれている。
【0020】
図4は、第1の実施の形態の内視鏡挿入装置3を腸内に挿入している状態を説明するための説明図である。図4(A)は、腸長手方向に対して直交する方向から観察した時の状態を示す図であり、図4(B)は、図4(A)の腸深部(右)側の視点E1から観察した時の状態を示す図である。
【0021】
図4において、先端部21のバルーン部31は膨張し腸壁9に固定されている。一方の先端部22のバルーン部32は、収縮状態で腸壁9とは固定されていない。ここで、図4(B)に示すように、バルーン部31は膨張し腸と固定されていても、腸壁周方向の一部に切欠き部を有し、腸壁9との間に比較的大きな空間を残している。言い換えれば、医療器具2aに設けられたバルーン部31は、腸壁を押圧した時に、バルーン部32が設けられた医療器具2bの先端部22が挿通可能な隙間を形成するように構成されている。あるいは、医療器具2aをバルーン部31により腸壁と固定した時に、医療器具2aと腸壁との間に形成される空間が先端部22が挿通可能な隙間を形成する。なお、上記記載では、腸壁9と先端部21の間であってバルーン部31が占有しない部分、すなわちバルーン部が腸壁9と接しない部分を有する空間、をバルーン部31の切欠き部と表現している。
【0022】
収縮したバルーン部32を備えた先端部22は、膨張したバルーン部31と腸壁9の間の空間を通って、腸深部へと挿通可能である。すなわち、医療器具2bは医療器具2aよりも腸深部へと挿入できる。
【0023】
さらに、図示しないが、先端部22を、先端部21より深部へ挿入後に、先端部22の固定手段であるバルーン部32を膨張させ腸壁9と固定し、先端部21の固定手段であるバルーン部31を収縮する。すると、今度は、バルーン部32と腸壁9との間に比較的大きな空間が形成される。このため、収縮したバルーン部31を備えた先端部21は、膨張したバルーン部32と腸壁9の間の空間を通って、より腸深部へと挿通可能である。すなわち、固定手段であるバルーン部32が腸壁9に固定された状態において、バルーン部32と腸壁9との間には、固定手段であるバルーン部31を有する挿入部21が通過可能な隙間が形成される。
【0024】
以下、図5を用いて、第1の実施の形態に係る大腸に医療器具を挿入する内視鏡挿入装置の操作方法を示す。なお、図5では、バルーン部31、バルーン部32およびシース40のみを図示している。
【0025】
(1) 図5(A)
第1の固定手段であるバルーン部31を備えた先端部21と第2の固定手段であるバルーン部32を備えた先端部22とシース40とは腸管に挿入される。挿入の際に、まず、先端部21は先端部22より、先行して挿入される。そして、バルーン部31は膨張し腸壁9と先端部21とは固定される。
【0026】
(2)図5(B)
先端部21が、腸壁9とバルーン部31により固定した状態で、肛門側に引っ張られることで、腸管は肛門側にたぐられる。そして、腸壁9との固定手段であるバルーン部32を備えた先端部22は、先行して挿入された先端部21のバルーン部31と腸の間の空間を挿通し、より深部側に達するまで、挿入される。この時、もちろん、バルーン部32は収縮した状態、すなわち非固定状態であり、移動可能である。
【0027】
(3)図5(C)
先端部22が先端部21が固定している腸壁部よりも深部側に達した時点で、バルーン部32は送気により膨張し、バルーン部32は腸壁9と固定される。そして、肛門に近い側にある先に挿入されていた固定手段であるバルーン部31中の空気は排気され、バルーン部31が収縮することで、腸壁9とバルーン部31との間の固定は解除される。
【0028】
(4)図5(D)
先端部22が、深部側で腸壁9とバルーン部32が固定した状態で、肛門側に引っ張られることにより、腸管は肛門側にたぐられる。
【0029】
(5)図5(E)
固定が解除されたバルーン部31は、深部側にあるバルーン部32と腸壁9の間の空間を挿通し、さらに深部側まで挿入される。
【0030】
(6)図5(F)
バルーン部31は膨張し腸壁9と先端部21とは固定され、一方、バルーン部32は収縮し腸壁9と先端部22の固定は解除される。
【0031】
(7)図5(G)、図5(H)
以上の手順を繰り返し行うことで、確実に腸管をたぐりながら、先端部21および22を腸深部へと進めていく。
【0032】
言い換えれば、第1の医療器具2aを腸壁9と固定する固定操作と、第1の医療器具2a固定箇所よりも深部に、第2の医療器具2bの先端部22を挿通する挿通操作と、第2の医療器具2bと腸壁9とを固定する固定操作と、第1の医療器具2aの腸壁との固定を解除する固定解除操作と、第2の医療器具2bの固定箇所よりも深部に、第1の医療器具2aの先端部21を挿通する挿通操作とを、順に繰り返し行う内視鏡挿入装置の操作である。
【0033】
腸壁9との固定手段31および32を備えた複数の先端部21および22が互いに追い越しながら、いずれかの固定手段31または32を深部側の腸壁9と固定することで、先端部21および22は確実に深部側に進むことができる。すなわち、腸壁9と固定する手段31および32を備えているので、固定された一方の先端部21または22を引っ張り、腸管をたぐりながら、他の先端部21または22を深部へと送り込むこともできる。
【0034】
さらに、腸管に癒着を生じている患者においては、癒着箇所を一方の固定手段31または32で固定しながら、他の先端部21または22が送り込む。すると、癒着した腸管を無理に引っ張って患者に苦痛を与えることはない。
【0035】
上記操作を実行するには、2つの医療器具が互いに腸内で追い越すことが必要となる。前述のように、従来のダブルバルーン方式の構成では、バルーン付きオーバーチューブが固定している箇所を挿入部が追い越すことは可能である。しかし、挿入部に設けたバルーンが膨張し腸管を固定している状態では、オーバーチューブは、挿入部固定箇所を追い越して、より深部へと挿入することはできない点で、本実施の形態と全く異なる。
【0036】
すなわち、本実施の形態の内視鏡挿入装置の固定手段は、腸壁9との固定時における断面が単なる円形あるいはドーナツ形状等ではなく、断面の一部にくびれ、言い換えれば、切欠きを有する。この固定手段の切欠きがあることによって、固定手段と腸壁9との間に他の医療器具が追い越し可能な空間である、固定手段により固定された箇所をはさんで腸管深部を見通すことができる空間が形成される。そして、その空間を通って他の非固定の医療器具が腸深部へと移動できる。
【0037】
このように、腸壁9と医療器具との間に、この切欠きのある空間を確保することで、一方の医療器具が固定している箇所を越えて、もう一方の医療器具をさらに深部へと進めるとき、互いの医療器具が互いに邪魔し合うことがなく移動できる。
【0038】
なお、医療器具2aの固定手段31が固定時に、固定手段31と腸壁9との間のすきまの断面が、切欠きを有しない、例えばドーナツ形状の場合には、ドーナツ形状の中心を通過して、医療器具2bを腸深部へと移動はできる。しかし、次の操作で医療器具2aの固定手段31を収縮し腸と非固定としても、医療器具2bを、医療器具2aを追い越して、より腸深部へと挿入はできない。すなわち本実施の形態の目的を達成できない。
【0039】
本実施の形態の内視鏡1は、第1の医療器具2aと第2の医療器具2bとを備えている。そして、それぞれの医療器具2aおよび2bは、内視鏡機能すなわち、撮像手段、観察領域を照らす照明手段と送気手段と送水送気手段と吸引手段等を、その内部に有している。また、各医療器具の先端部21および22は、先端の方向を制御する湾曲機構を備えていても良い。
【0040】
医療器具は2つに限定されず、2つ以上であればよい。そして、前記2つ以上の医療器具のうち、1つ以外は実質的な内視鏡機能を有しない医療器具、すなわち挿入補助のための機能のみを有する医療器具であって差し支えない。すなわち、最低、1の医療器具が撮像機能等の内視鏡本来の各種手段を有していれば良い。他の医療器具は挿入のための固定手段等さえ備えていれば、本実施の形態の医療器具として使用可能である。他の内視鏡機能を有しない医療器具は、内視鏡機能を有する医療器具を腸深部に挿入するために使用される。このような内視鏡機能を有していない医療器具を備えた内視鏡挿入装置を使用することにより各医療器具内に収納する部材が少なくなり各医療器具の細径化が図られる。あるいは、通常1本の内視鏡が有している機能を、複数の医療器具が分割して有することも可能である。例えば、送水機能のみを有する医療器具を備えた構成とすることで、この送水機能のみを有する医療器具により他の医療器具の外管壁に送水を行うことで、腸壁とのすべりが良くなり、挿入がより容易となる。
【0041】
本実施の形態の内視鏡挿入装置は医療器具2aおよび2bを束ねる鞘であるシース40を有する。シース40は2本の医療器具2aおよび2bのほぼ全長を覆い束ねることで、2本の医療器具が腸管内で互いに追い越すことが可能な相対的な位置関係、言い換えれば2本の医療器具の軸間距離を保持することができる。医療器具の軸間距離を保持する保持手段としては、シーズ40に限定されるものではなく、以下の変形例を含め、種々の構造が利用可能である。
【0042】
以上のように、本実施の形態の内視鏡挿入装置は、少なくとも一つが内視鏡機能を有する複数の医療器具を備えた内視鏡挿入装置であって、各医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有し、前記複数の医療器具に設けられた前記複数の固定手段は、互いに前記複数の固定手段の少なくとも一つが前記腸壁を押圧した時に、前記少なくとも一つ以外の固定手段が設けられた一または二以上の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されていることを特徴とする内視鏡挿入装置である。
【0043】
図6は、本実施の形態の内視鏡挿入装置の第1の変形例に用いられる、医療器具の軸間距離を保持する保持手段である係合用クリップの説明図である。すなわち、第1の変形例では、シース40の替わりに図6に示すように、医療器具2aと医療器具2bを係合する係合用クリップ46を用いる。図6(A)は係合用クリップ46で係合された医療器具2aおよび2bの外観を、図6(B)は係合用クリップ46で係合された医療器具2aおよび2bの、図6(A)のVI−B−VI−B線での断面図を示している。クリップ46と医療器具2aは、硬く固定されているが、もう一方の先端部22とクリップ46とは、相対的に軸方向に動く必要があるため、ゆるく固定されている。
【0044】
次に、本実施の形態の内視鏡挿入装置の第2の変形例に用いられる医療器具の軸間距離を保持する保持手段である係合用突起21aを備えた挿入装置3の先端部の上面図を図7(A)に、図7(B)には図7(A)のXII−B−XII−B線での断面図を示す。すなわち、挿入部21は、その先端付近の一定範囲にて係合用突起21aを備え、医療器具22とゆるく結合していても良い。
【0045】
なお、医療器具の軸間距離を保持する保持手段であるシース40、係合用クリップ46または係合用突起21a(以下、シース等という)は、本実施の形態の内視鏡挿入装置の必須構成要素ではない。シース等は、あくまで複数の医療器具が腸管内で互いに追い越すことが可能な相対的な位置関係、すなわち複数の医療器具の軸間距離、を保持するための部材である。保持手段を有する内視鏡挿入装置料においては、各医療器具が腸内で互いに追い越すことが容易である。しかし、例えば、全ての医療器具が撮像部を有する内視鏡の場合には、各医療器具は、深部側にあるバルーンと腸壁の間の空間を撮像部により観察しながら、先端部を挿通することができるため、シース等は不要の場合もある。
【0046】
また、バルーンで固定された医療器具が撮像部および180度曲げることができる湾曲部を有する場合には、湾曲部により先端部を180度曲げることで、固定されたバルーンと腸壁9の間の空間を、固定された先端部の撮像部により観察しながら、次の医療器具先端部を挿通することができるため、シース等は不要の場合もある。
【0047】
2本の医療器具2aおよび2bは、それぞれ独立して操作でき、腸壁9に固定するための固定手段30である固定バルーン部31および32、医療器具2a、2bを操作するための操作部51および52、医療器具2aおよび2bとプロセッサ102間の接続コード61および62等を備える。
【0048】
固定用のバルーン部31および32は、各医療器具の先端部の湾曲部上、湾曲部より基端側の先端部上、あるいは両者にまたがった箇所に、接着などの手段により固定されている。バルーン部の位置は、医療器具の先端にある必要はなく、先端近傍であればよい。
【0049】
図8は、本実施の形態の固定手段であるバルーン部の構成を説明するための説明図である。図8に示すように、固定用のバルーン部31は、先端部21に取り付けられた2つのバルーンに空気を出し入れするための送気脱気チューブ110を備えている。図8において、実線は送気前、破線は送気後のバルーン部31の状態を示している。送気脱気チューブ110は先端部21の外表面に沿って配設されていてもよい。他の先端部22においても同様にバルーン部32に送気脱気チューブが接続されている。なお、図8には、バルーンと直接関係のない部材は全て図示していない。
【0050】
図9は、本実施の形態の操作部51または52を示す図である。操作部51または52は、把持部115と、送気脱気ボタン116と。送気送水ボタン117と、吸引ボタン118と、アングルレバー119とを備える。把持部115は術者が片手で把持可能であり、および前記各ボタンは術者が片手で作業できる。本実施の形態では、把持部115は、操作者の疲労低減を考慮し、医療器具2aまたは2bの軸に対して角度をもって、具体的には直角に把持できるが、これに限定するものではない。また、それぞれのボタン116、117または118は把持した際に、親指以外の指で操作可能な範囲に設けられている。また、アングルレバー119は、親指で操作できる。
【0051】
図10は、医療器具2aおよび2bとプロセッサ102をつなぐコード61および62の断面を示す。コード61および62には、バルーン部31を動作させる送気脱気チューブ120と、送気送水チューブ121と、吸引チューブ122と、撮像や光源を動作させるためのケーブル123とが挿通されている。操作部51または52に接続されたコード61または62は、術者の邪魔にならない位置から導出されている。コード61および62は、途中で分岐させて、送気脱気チューブ121と送気送水チューブ121と吸引チューブ122とをポンプ103に接続し、ケーブル123をプロセッサ102に接続しても良い。
【0052】
バルーン部31および32は、たとえば、伸縮性に富んだ材料であるシリコーンゴムなどで作成されている。あるいは、バルーン部31および32は、その構造によっては、素材自体は伸縮性の小さい樹脂または紙等で作成してもよい。
なお、医療器具外皮は、腸と滑りやすくするため、潤滑剤や表面コート処理されていても良い。
【0053】
医療器具2aおよび2bの内部には、送気を行うチューブ111と、送水を行うチューブ112と、吸引を行うチューブを行うチューブ113と、撮像信号や照明のための電源を伝達するケーブル114等とを内蔵している。チューブ111、112、113およびケーブル114等は、プロセッサ102またはポンプ103に着脱可能に接続されている。医療器具2aおよび2bが湾曲機能を有している場合、すなわち湾曲部を有する場合、上記に加えて湾曲動作を発生させるワイヤまたは/かつチューブ等も医療器具2aおよび2b内部に内蔵されている。
【0054】
医療器具2aおよび2bは、シース40内および腸壁9内で互いにこすれあう。互いの挿入部21および22の挿入性を阻害しないで、挿通力を軽減するために、医療器具2a、2bの表面およびシース40の内外面はすべり性の良い材質で覆われている。例えば、シース40は、フッ素樹脂のようなすべり性の良い材質で構成される。さらに、シース40の内面は、潤滑剤や特殊コートにより低潤滑状態とする。シース40は屈曲性に優れたものが良い。
【0055】
シース40は、医療器具2aまたは2bのいずれかに固定されている。シース40の端部は腸壁を傷つけないようにR加工や先細りになるように処理されている。医療器具2aおよび2bの可撓管部は、挿入の操作性向上および繰り返しの押し引きに耐えるように、可撓管部の基端部側は、可撓管部の先端部に比べて硬く、曲がりにくくなっている。
【0056】
また、撮像部を有する医療器具を複数備える場合には、モニタ101に表示する画像を術者が選択する選択手段を有していても良いし、複数の画像を同時に表示しても良いし、あるいは、複数のモニタを備える構成としても良い。さらには、挿入操作中に、固定された医療器具先端部と腸壁の間の空間を観察するために、前記空間を通って挿入する医療器具の撮像部の画像を表示するように、表示に使用する医療器具撮像部が自動的に切り替わる表示手段としても良い。
【0057】
次に、本発明の第1の実施の形態の種々の変形例にかかる固定手段について、図11から図17を用いて説明する。なお、上記図はいずれも概略図であり、説明と直接関係のない部材や、詳細なバルーン壁の厚さ等は図示されていない。
【0058】
図11は、第1の実施の形態の第2の変形例にかかる固定手段を示す図であり、図11(A)は膨張時の断面概略図を、図11(B)は図11(A)の一部拡大図(腸壁9は図示せず)である。図12は、第1の実施の形態の第3の変形例にかかる固定手段を示す図であり、(A)バルーン部膨張状態から(C)バルーン部収縮状態への変化を示している。図13は本発明の第1の実施の形態の第4の変形例にかかる固定手段を示す図であり、図13(B)は図13(A)の一部拡大図(腸壁9は図示せず)である。
【0059】
図14は、本発明の第1の実施の形態の第5の変形例にかかる固定手段であるバルーン部37が占める領域の変化の一例を示す断面図である。図15は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の先端部軸方向から観察した場合の概略図である。図16は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の先端部長手直角方向の断面図であり、(A)は固定時、(B)は非固定時を示す。図17は本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる折り曲げ可能な固定手段39の(A)展開時、(B)収縮中、(C)収縮時の断面図を示す
本発明の第1の実施の形態の第2の変形例にかかる固定手段30は、図11(A)膨張時の断面図に示すように、複数のバルーンの群から構成された構造を有するバルーン部35である。複数のバルーンは、先端部21または22に固定された伸縮性をもつ連結帯35Aにより固定されている。各バルーンへはバルーン連結帯35Aに内蔵された送気脱気チューブ124により空気が供給排気される。送気脱気チューブ35Aは、連結帯の隙間に設けられていてもよい。
【0060】
図12に示すように、連結帯35Aは、バルーン部35の膨張時に腸管管腔内でバルーン部35より内側に位置している。これにより、バルーン部35が膨張した際にはバルーン群は略ドーナツ型を形成し、バルーン部35が収縮し固定を解除する際には、図12(B)に示すように、C字型の断面形状を有する。
【0061】
次に、本発明の第1の実施の形態の第4の変形例にかかる固定手段は、図13に示すように多数のバルーンから構成された構造を有するバルーン部36である。そして、図13(B)に示すように、各バルーンは、空気の送気脱気チューブ36Aを介して間接的に先端部21または22に固定されている。上記構成を有するため、バルーン部36は、各バルーンが膨張した際に、固定箇所におけるバルーン部36が占める形状を変形させることができる。
【0062】
次に、図14に、本発明の第1の実施の形態の第5の変形例にかかる固定手段であるバルーン部37が占める領域の変化の一例を示す。図14(A)はバルーン部37が膨張した状態を、図14(C)はバルーン部37が収縮した状態を、図14(B)はバルーン部37が膨張収縮の中間の状態を示している。バルーン部37は、図14(A)に示すように、通常のバルーンと異なり、扁平に膨張する。
【0063】
次に、図15は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の先端部軸方向から見た図を示す。図16は、本発明の第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段38の動作を説明するための先端部軸直角方向から見た断面図を示し、図16(A)は固定時、図16(B)は非固定時を示す。図16は、動作説明図であり、先端部21、22の内部を示すために、先端部21、22の径を大きく表示している。
【0064】
固定手段38は、伸縮自在な機械的部材である。すなわち、固定手段38は、複数の固定用アーム部材38aから構成され、アーム突っ張りバネ38bを備える。図16(A)に示すように、アーム基端部には、アーム操作用ワイヤ38cが接続されており、ワイヤ38cは、先端部21、22の内部を通じて操作部まで伸びている。バネ38bが無負荷の状態ではアーム38aは開き、言い換えると伸展し、固定手段38は腸壁9と固定される。また図16(B)に示すように、ワイヤ38cを引っ張ることで、アーム38aをたたみ、言い換えると収縮させ、固定手段38と腸壁9との固定状態を解除することができる。
【0065】
次に、図17は本発明の第1の実施の形態の第7の変形例にかかる折り曲げ可能な固定手段39の(A)展開時、(B)収縮中、(C)収縮時を、それぞれ示す。固定手段39は、伸縮自在な機械的部材であり、複数の折り曲げ可能な部材39bを複数の関節39aにより連結した構造を有する。
固定手段39は、固定時には図17(A)の状態であり、固定解除時には、図17(B)の状態を経て、図17(C)に示すように小さく収納可能な状態となる。
【0066】
なお、本実施の形態にかかる内視鏡挿入装置は、複数の各医療器具が、それぞれ異なる方式、形状または大きさの固定手段を有していても差し支えない。
【0067】
また、本発明の第1の実施の形態では、説明を簡単にするために、2つの医療器具2aおよび2bを有する内視鏡挿入装置3について説明をした。しかし、医療器具は2つ以上であれば良い。以下に、複数の医療器具を有する内視鏡挿入装置ついて説明する。
【0068】
複数の医療器具を有する内視鏡挿入装置とは、少なくとも一つが内視鏡機能を有する複数の医療器具を備え、複数の医療器具の各々が先端に腸壁と固定可能な固定手段を有する内視鏡挿入装置である。そして、選択された一の医療器具を、腸壁9に固定する固定操作と、腸壁9と非固定の医療器具の先端部を、固定された医療器具と前記腸壁9との固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作とを、繰り返しこの順序で行い、全ての前記医療器具を腸壁9に固定する。その後、最も浅部において腸壁9と固定している医療器具、すなわち最初に固定操作を行った医療器具を腸壁9から固定解除する固定解除操作と、固定解除した医療器具の先端部を、すでに固定した医療器具のどの固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作と、固定解除した医療器具を、腸壁9と固定する固定操作を行う。さらに、前記操作により、最も浅部において腸壁9と固定している医療器具となった医療器具の先端部を、すでに固定した医療器具のどの固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作と、固定解除した医療器具を、腸壁9と固定する固定操作を行う。この操作を繰り返し行うことで、各挿入部を深部へと送り込むことができる。もちろん、最終的に、内視鏡機能を備えた医療器具を、所望の深部箇所に送り込むことが出来た時点で、挿入操作は完了する。
【0069】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aについて説明する。
【0070】
図18は、内視鏡挿入装置3Aの外観図である。内視鏡挿入装置3Aの全体構成は、第1の実施の形態とほぼ同様である。しかし、内視鏡挿入装置3Aは、その先端部に先端部23を有する医療器具2Aと、その先端部に切欠き部42aを有するオーバーチューブ42により構成される。医療器具2Aとオーバーチューブ42は、それぞれが固定手段33および34を備え、それぞれの固定手段33および34は独立して操作することができる。
【0071】
本実施の形態の内視鏡挿入装置は、医療器具を2つ備えるが、第1の医療器具が内視鏡機能を備え、第2の医療器具が内視鏡機能を有しない。すなわち、先端部23を有する第1の医療器具2Aが第1の医療器具に相当し、オーバーチューブ42を備えた医療器具2Bが第2の医療器具に相当する。
【0072】
図19は第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図である。そして、図19は、第1の医療器具2Aの固定手段であるバルーン部33が膨張し、内視鏡機能を有する第1の医療器具2Aが、腸壁(図示せず)に固定されている状態を示す。
【0073】
図20は内視鏡挿入装置3Aの先端部を腸深部側から観察した図である。図19と同じく、図20においては、バルーン部33が膨張し、第1の医療器具2Aが、腸壁9に固定されている。この時、バルーン部33は、オーバーチューブ42固定用のバルーン部34よりも、腸深部に位置している。そしてオーバーチューブ固定用のバルーン部34は収縮しており、オーバーチューブは腸壁9とは非固定の状態である。
【0074】
図20より明らかなように、バルーン部33が膨張し腸壁9に固定されている状態においても、バルーン部33と腸壁9との間には、収縮しているバルーン部34を備えたオーバーチューブ42の先端部が挿通するのに十分な空間が確保されている。このため、この状態でバルーン部34を備えたオーバーチューブ42の先端部を、固定バルーン部33より腸深部へと挿入できる。
【0075】
図21は、第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図である。図21に示すようにオーバーチューブ42固定用のバルーン部34を膨張し、腸壁9(図示せず)に固定する。そして、第1の医療器具2A固定用のバルーン部33を収縮すると、今度は、バルーン部33を備えた先端部23を深部へ挿入できる。すなわち、再び、先端部23のバルーン部33をオーバーチューブ42の固定用のバルーン部34よりも腸深部へと送り込める。上記を繰り返すことで確実に内視鏡機能を有する医療器具23を深部に挿通できる。
【0076】
なお、図18に示すように、内視鏡挿入装置3Aは、第1の医療器具2Aと、第2の医療器具2Bであるオーバーチューブ42の2層構造になっており、第1の医療器具2Aと第2の医療器具2Bには、それぞれ操作部54および53が設けられ、挿入、抜去、送気、送水または吸引等の各コントロールができる。操作部53および54にはさらに、送気脱気チューブと送気送水チューブと吸引チューブ等とが内蔵されたコード63および64等とが接続されている。第1の医療器具2Aは、さらに湾曲部を備えていても良く、その制御は操作部54で行う。
【0077】
オーバーチューブ42先端の切欠き部42aの長さLは、第1の医療器具2Aの固定用の各バルーンの直径Rの2倍以上が好ましい。前記範囲を超えていれば、オーバーチューブ42が医療器具2Aの上をスライドする際に、第1の医療器具固定用のバルーン部33に干渉されることなく、オーバーチューブ固定用のバルーン部34を第1の医療器具固定用のバルーン部33よりも深部側に到達できる。
【0078】
切欠き部42aの長さLの上限は特にないが、操作性や強度を考慮すると、第1の医療器具固定用の各バルーンの直径Rの3倍以下が好ましい。なお、上記の固定用バルーン33の直径Rとは、図19で示すように、腸内で膨張固定時の医療器具軸方向の長さをいう。
【0079】
図23は内視鏡挿入装置3Aの操作部の構成図である。第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aにおいては、オーバーチューブ42と医療器具2Aの挿入部23との繰り返しのスライド作業をスムーズに行うために、オーバーチューブ固定用のバルーン34が、医療器具固定用のバルーン部33より腸深部にあるとき、オーバーチューブの先端が第1の医療器具固定用のバルーン部33より後端側に逸脱することを防止する必要がある。このためには、図23に示すように、操作部近傍に、スライドを調整するストッパー47を備えることが好ましい。
【0080】
図24は、第2の実施の形態の第1の変形例にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部近傍の挿入部23の軸方向垂直方向からの概要図である。第2の実施の形態の第1の変形例において、オーバーチューブ42は、第1の医療器具2Aの先端部23とゆるく嵌合している嵌合部42bを有している。嵌合部42bを有することで、先端部23とオーバーチューブ42が互いに離れることが無くなり、スライド操作が容易となる。特に、オーバーチューブ42の嵌合部42bは切り欠き部42aが存在する範囲には形成されていることが好ましい。
【0081】
また、図24に示すように、オーバーチューブ固定用のバルーン部34はオーバーチューブ42の先端から少し離れたオーバーチューブ先端部の基端側に固定される
また、オーバーチューブ42と先端部23の間の摺動性改善のため、潤滑剤を塗布することも好ましい。
なお、オーバーチューブ42の先端部は、挿入操作時において、第1の医療器具先端部23に収納された撮像手段の視界を妨げることはない。
【0082】
<第3の実施の形態>
次に、本発明にかかる第3の実施の形態の内視鏡挿入装置について説明する。
【0083】
図25は、本実施の形態の内視鏡挿入装置のケーブルを用いた誘い込み機構を説明するための説明図である。図25を用いて本実施の形態の内視鏡挿入装置を用いて、より簡単に挿入操作を実施するためのケーブルを用いた誘い込み機構について説明する。本実施の形態の内視鏡挿入装置の基本構成は、第1の実施の形態の内視鏡挿入装置と同じである。しかし、第3の実施の形態の内視鏡挿入装置は、ケーブルを用いた誘い込み機構を有する。
【0084】
すなわち、図25に示すように、ケーブル125は、その両端が第1の医療器具の先端部21の先端と後端に固定され、その間は先端部22の内部に挿通されている。ケーブル126は、その両端が第2の医療器具の先端部22の先端と後端に固定され、その間は先端部21の内部に挿通されている。なお、図25では、固定手段30や操作部50等の誘い込み機構と直接関係のない部材は全て図示していない。
【0085】
図25(A)は、先端部21が腸内で先行し、固定手段により固定されている状態を示す。すなわち図の上部が腸の深部側、図の下部が肛門側を示している。
【0086】
ここで、ケーブル125を引くと、図25(B)に示すように、先端部22が深部へ挿入され、極めて容易に先端部22の先端が先端部21の先端とが並ぶ状態となる。このため、このケーブルを用いた誘い込み機構を有する内視鏡挿入装置では、先端部22を操作して先端部21より深部へ挿入する作業(図25(C))が、非常に楽に行えるようになる。
【0087】
なお、先端部22が先端部21が腸内で先行し、固定手段により固定されている場合(図25(C))では、ケーブル126を引っ張ることで先端部21が先端部22近傍まで近づく。
【0088】
図26に、本発明にかかる第3の実施の形態の内視鏡挿入装置の内視鏡機能を有する医療器具の先端の構成を示す。内視鏡先端には、消化管を観察するための撮像子127と、消化管を照らす複数の照明手段128と、吸引口129と残渣や粘液を除去するための前方送水口130と、撮像レンズの汚れを除去するための送気送水口金131と、他の医療器具とのスムーズな連係動作を達成するためのケーブル125および126が挿通するためのケーブル挿通口132等、とから構成されている。照明手段128は光ファイバーにより構成されてもよいし、LED等の電気的手段によって構成されても良い。
【0089】
<第4の実施の形態>
図27は、本発明の第4の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の医療器具先端部の斜視図であり、図28は、本実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の動作を説明するための図である。本実施の形態の内視鏡挿入装置の基本動作原理等は、第1の実施の形態の内視鏡挿入装置と同じである。図27に示すように、本実施の形態の内視鏡挿入装置は、バルーン部31を有する医療器具2aと、バルーン部32を有する医療器具2bと、内視鏡2cを備える。内視鏡2cは、撮像部25等の内視鏡機能を有し、その先端の2つの鉗子孔26aおよび26bのそれぞれから、医療器具2aおよび2bが突出可能である。
【0090】
次に、図28を用いて、本実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の動作を説明する。図28は、本実施の形態の内視鏡挿入装置を用いて腸深部に内視鏡2cを挿入する手順を腸長手垂直方向から観察した模式図である。
【0091】
内視鏡挿入装置による内視鏡2cの挿入動作としては、最初に、図28(A)に示すように、医療器具2aのバルーン部31が膨張し、医療器具2aは腸壁9に固定されている。それに対して、医療器具2bのバルーン部32は収縮している。本実施の形態の内視鏡挿入装置においては、図28(B)に示すように、医療器具2bの先端部22は、医療器具2aが腸壁9に固定されていても、医療器具2aと腸壁9との間のすきまを通って、医療器具2aよりも腸深部(図面左側)へ前進できる。そして、医療器具2bの先端部22が、医療器具2aの先端部21よりも腸深部に到達すると、医療器具2bのバルーン部32が膨張し腸壁9と固定され(図28(C))、医療器具2aのバルーン部31は収縮する(図28(D))。すると、今度は、図28(E)に示すように、医療器具2bが腸壁9と固定されていても、医療器具2aの先端部21は、医療器具2bと腸壁9との間のすきまを通って、医療器具2bよりも腸深部(図面左側)へ前進できる。そして、図28(F)に示すように、医療器具2aのバルーン部31が再び膨張し腸壁9と固定される。
【0092】
このように、2つの医療器具2aおよび2bの先端部21および22が、バルーン部31または32により交互に腸壁9と固定しながら、腸深部へと進む。そして、図28(G)に示すように、先端部21および22がある程度、進んだ時点で、内視鏡2cが腸深部へと進む。
【0093】
本実施の形態の内視鏡挿入装置では、医療器具2aおよび医療器具2bは、いずれも内視鏡機能を有しない医療器具であり、内視鏡2cを腸深部に挿入するためだけ使用される医療器具である。医療器具2aおよび医療器具2bは、内視鏡2cの鉗子チャンネルを経由して内視鏡2cの先端部から突出しており、内視鏡2cが目的の腸深部に到達した後には、鉗子チャンネルから抜き去り、他の医療器具を、該鉗子チャンネルに挿入することも可能である。
【0094】
本発明は、上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0095】
付記事項
本発明の内視鏡挿入装置の操作方法を以下に示す。
【0096】
(1)複数の医療器具を備え、前記複数の医療器具の各々が先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有する内視鏡挿入装置を用いて、
選択された一の医療器具を、腸壁に固定する固定操作と、
腸壁と非固定の医療器具の先端部を、前記固定された医療器具と前記腸壁との固定箇所よりも深部に、挿通する挿通操作とを、
繰り返し行い、全ての前記医療器具を前記腸壁に固定した後に、
最も浅部において腸壁と固定している前記医療器具を、前記腸壁から固定解除する固定解除操作と、
固定解除した医療器具の先端部を、他のすべての医療器具の固定箇所よりも深部に挿通する挿通操作と、
前記固定解除した医療器具を、前記腸壁と固定する固定操作とを、
繰り返し行うことを特徴とする内視鏡挿入装置の操作方法。
【0097】
(2)第1の医療器具と第2の医療器具を備え、前記医療器具の各々が先端に腸壁と固定可能な固定手段を有する内視鏡挿入装置を用いて、
前記第1の医療器具を腸壁と固定する固定操作と、
第1の医療器具固定箇所よりも深部に、前記第2の医療器具の先端部を挿通する挿通操作と、
前記第2の医療器具と腸壁とを固定する固定操作と、
前記第1の医療器具の腸壁との固定を解除する固定解除操作と、
第2の医療器具の固定箇所よりも深部に、前記第1の医療器具の先端部を挿通する挿通操作とを、
順に繰り返し行うことを特徴とする内視鏡挿入装置の操作方法。
【0098】
(3)前記第1の医療器具の内部を挿通する第1のケーブルの両端がそれぞれ前記第2の医療器具の両端に固定され、
前記第2の医療器具の内部を挿通する第2のケーブルの両端がそれぞれ前記第1の医療器具の両端に固定された挿入補助手段を用い、
前記第1のケーブルと前記第2のケーブルを順に索引することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の内視鏡挿入装置の操作方法。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置を備える内視鏡装置の全体構成図。
【図2】第1の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置を備える内視鏡装置の接続概図。
【図3】第1の実施の形態の内視鏡挿入装置の外観図。
【図4】第1の実施の形態の内視鏡挿入装置を腸内に挿入している状態の説明図。
【図5】第1の実施の形態に係る内視鏡挿入装置の操作方法の説明図。
【図6】第1の実施の形態の第1の変形例の係合用クリップの説明図。
【図7】第1の実施の形態の第1の変形例の係合用突起の説明図。
【図8】第1の実施の形態の固定用のバルーン部の説明図。
【図9】第1の実施の形態の操作部の説明図。
【図10】第1の実施の形態のコードの断面図。
【図11】第1の実施の形態の第2の変形例にかかる固定手段を示す図。(A)はバルーン部膨張時の断面図、(B)は(A)の一部拡大図。
【図12】第1の実施の形態の第3の変形例にかかる固定手段を示す図。
【図13】第1の実施の形態の第4の変形例にかかる固定手段を示す図。(A)はバルーン部膨張時の断面図、(B)は(A)の一部拡大図。
【図14】第1の実施の形態の第5の変形例にかかる固定手段が膨張収縮時に腸内で占める領域の変化の一例を示す断面図。
【図15】第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段を先端部軸方向から観察した場合の概略図。
【図16】第1の実施の形態の第6の変形例にかかる固定手段の先端部長手直角方向の断面図。(A)固定時、(B)非固定時。
【図17】第1の実施の形態の第7の変形例にかかる折り曲げ可能な固定手段の断面図。(A)展開時、(B)収縮中、(C)収縮時。
【図18】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の外観図。
【図19】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の先端部の断面図。
【図20】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置を腸深部側から観察した図。
【図21】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図。
【図22】第2の実施の形態の変形例1にかかる内視鏡挿入装置3Aの先端部の断面図。
【図23】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の操作部の構成図。
【図24】第2の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の先端部の構成図。
【図25】第3の実施の形態にかかるケーブルを用いた誘い込み機構を説明するための説明図。
【図26】第3の実施の形態にかかる誘い込み機構ケーブルを有する医療器具先端部の構成図。
【図27】第4の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の先端部の斜視図。
【図28】第4の実施の形態にかかる内視鏡挿入装置の動作を説明するための図。
【図29】従来の内視鏡を大腸に挿入するための手順を示す説明図。
【図30】従来の内視鏡挿入の問題点を説明するための説明図。
【図31】従来の内視鏡挿入の問題点を説明するための説明図。
【図32】従来の内視鏡挿入の問題点を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0100】
1…内視鏡装置、2a、2b、2A、2B…医療器具、3、3A…内視鏡挿入装置、9…腸壁、21、22、23…医療器具先端部、31、32、33、34、35、36、37、38…固定手段、40…シース、51、52、53、54…操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の医療器具および第2の医療器具を備える内視鏡挿入装置であって、
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有し、
前記第1の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第2の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成され、
前記第2の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第1の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されていることを特徴とする内視鏡挿入装置。
【請求項2】
前記第1の医療器具または/かつ前記第2の医療器具は内視鏡機能を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項3】
前記固定手段が膨張収縮自在なバルーン部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項4】
前記固定手段が伸縮自在な機械的部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項5】
複数の前記医療器具の軸間距離を保持する保持手段を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項6】
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具が内視鏡機能を有し、
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具の前記固定手段が、2つのバルーンからなるバルーン部であり、
前記保持手段が、前記第1の医療器具および前記第2の医療器具のほぼ全長を覆い束ねるシースであることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項7】
前記複数の医療器具が、第1の医療器具と第2の医療器具とからなり、前記第1の医療器具が内視鏡機能を備え、前記第2の医療器具が前記第1の医療器具のオーバーチューブであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項8】
前記複数の医療器具は、
前記第1の医療器具の内部を挿通する第1のケーブルの両端がそれぞれ前記第2の医療器具の両端に固定され、
前記第2の医療器具の内部を挿通する第2のケーブルの両端がそれぞれ前記第1の医療器具の両端に固定された、
挿入補助手段を有することを特徴とする請求項6に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項1】
第1の医療器具および第2の医療器具を備える内視鏡挿入装置であって、
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具の各々は、それぞれの先端部に腸壁と固定可能な固定手段を有し、
前記第1の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第2の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成され、
前記第2の医療器具に設けられた前記固定手段は前記腸壁と固定時に、前記第1の医療器具の先端部が挿通可能な隙間を形成するように構成されていることを特徴とする内視鏡挿入装置。
【請求項2】
前記第1の医療器具または/かつ前記第2の医療器具は内視鏡機能を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項3】
前記固定手段が膨張収縮自在なバルーン部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項4】
前記固定手段が伸縮自在な機械的部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項5】
複数の前記医療器具の軸間距離を保持する保持手段を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項6】
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具が内視鏡機能を有し、
前記第1の医療器具および前記第2の医療器具の前記固定手段が、2つのバルーンからなるバルーン部であり、
前記保持手段が、前記第1の医療器具および前記第2の医療器具のほぼ全長を覆い束ねるシースであることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項7】
前記複数の医療器具が、第1の医療器具と第2の医療器具とからなり、前記第1の医療器具が内視鏡機能を備え、前記第2の医療器具が前記第1の医療器具のオーバーチューブであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内視鏡挿入装置。
【請求項8】
前記複数の医療器具は、
前記第1の医療器具の内部を挿通する第1のケーブルの両端がそれぞれ前記第2の医療器具の両端に固定され、
前記第2の医療器具の内部を挿通する第2のケーブルの両端がそれぞれ前記第1の医療器具の両端に固定された、
挿入補助手段を有することを特徴とする請求項6に記載の内視鏡挿入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2009−50559(P2009−50559A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221687(P2007−221687)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
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