説明

内視鏡挿入補助具及び内視鏡システム

【課題】内視鏡の観察視野を確保し、体内の管路を確実に把持して内視鏡の挿入部を案内する。
【解決手段】挿入補助具12は、長尺状の線状部材80と、把持部81と、線状部材80の外周に設けられたバスケット状バルーン82とからなる。バスケット状バルーン82は、膨張及び収縮するチューブを連結させてバスケット状に形成したものである。線状部材80及びバスケット状バルーン82は、内視鏡10の鉗子チャンネル38に挿通される。バスケット状バルーン82は、線状部材80とともに体内の管路深部へと挿入され、バルーン制御装置76の制御により膨張する。バスケット状バルーン82の膨張により体内の管路を把持した状態となり、線状部材80に沿って挿入部14を挿入することができる。バスケット状バルーン82は、内側に空間が形成されるため、内視鏡10の観察視野を妨げない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を体内の管路深部に挿入させる内視鏡挿入補助具、及びこれを備えた内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野において、大腸や小腸のような深部消化管内に内視鏡の挿入部を挿入して、管内壁面の観察や診断、治療を施す手技が行われている。大腸や小腸等の深部消化管は複雑に屈曲しており、内視鏡の挿入部を単に押し入れていくだけでは挿入部の先端に力が伝わり難く、深部への挿入は困難を窮める。
【0003】
そこで、特許文献1,2記載の内視鏡の挿入装置では、内視鏡の挿入部先端部に第1バルーンを設けるとともに、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通され、挿入部の先端から突出される線状部材としてのプローブ、及びプローブの外周面に装着される第2バルーンとを備えており、第1及び第2バルーンを交互に膨張させることで体内の管路を把持する。第2バルーンを膨張させて管路を把持させたときは、プローブに沿って挿入部を押し込むことができる。そして、第1及び第2バルーンの膨張及び収縮を交互に繰り返しながら、挿入部を深部に挿入させている。
【0004】
また、特許文献3記載の挿入補助具では、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通される可撓性の補助具挿入部(線状部材)の外周上に螺旋状構造部を配し、この螺旋状構造部の一部をバルーンにより形成した螺旋バルーンを備えており、螺旋バルーンを膨張及び収縮させて、内視鏡挿入部の挿入を補助する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−8447号公報
【特許文献2】特開2005−334473号公報
【特許文献3】特開2007−29556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2記載の挿入装置では、鉗子チャンネルに挿通され、内視鏡挿入部の先端から突出した線状部材の外周にバルーンが位置する。すなわち、内視鏡の観察視野内にバルーンが位置するため、バルーンを径方向に膨張させている間は、内視鏡による体内の観察が妨げられる。
【0007】
また、特許文献3記載の挿入補助具のような螺旋バルーンを線状部材の先端外周に設けた場合、螺旋状に膨張しているときは、線状部材と螺旋バルーンとの間にできる空間を通して体内の管路奥側を観察することができるが、螺旋バルーンは構造的に弱く、螺旋状に膨張した状態を保つことができない。すなわち、螺旋バルーンは、線状部材の軸回りの方向に沿って配置されるため、体内の管路から圧迫を受けると押し潰され、線状部材の軸方向に延びてしまう。よって、螺旋バルーンでは、体内の管路を把持できなくなる。また、管路から圧迫を受けて押し潰されると、膨張した状態を保つことができなくなり、観察視野を妨げることになる。
【0008】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、内視鏡の観察視野を確保しながら、体内の管路を確実に把持して内視鏡の挿入部を案内することが可能な内視鏡挿入補助具及びこれを備えた内視鏡システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡挿入補助具は、先端に配された観察窓を通して被検体を観察可能な内視鏡の挿入部に挿通され、前記先端から突出し、被検体内の深部へ前記挿入部を案内する線状部材と、前記線状部材の外周に設けられ、膨縮自在なチューブをバスケット状に形成してなるバスケット状バルーンとを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記バスケット状バルーンは、前記線状部材の軸回り方向に沿って配された横チューブと、前記線状部材に取り付けられるとともに、前記横チューブと接続され、且つ接続部分で前記横チューブと互いに直交するする縦チューブとからなることが好ましい。
【0011】
前記バスケット状バルーンは、複数の横チューブを備え、前記縦チューブは、前記横チューブ同士が所定の間隔を置くようにして前記横チューブと接続されることが好ましい。
【0012】
前記バスケット状バルーンの中心に配され、前記バスケット状バルーンを支持する支持部材を備えたことが好ましい。
【0013】
本発明の内視鏡システムは、内視鏡と、前記内視鏡の挿入部の外周に取り付けられ、膨縮自在のバルーンと、前記内視鏡挿入補助具とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内視鏡の挿入部に挿通され、被検体内の深部へ挿入部を案内する線状部材の外周に、膨縮自在なチューブをバスケット状に形成してなるバスケット状バルーンを設けているので、径方向から受ける外力に対して変形が少ないから、内視鏡の観察視野を確保し、体内の管路を確実に把持して内視鏡の挿入部を案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】内視鏡システムの構成図である。
【図2】内視鏡の鉗子チャンネルに挿通させた内視鏡挿入補助具の斜視図である。
【図3】内視鏡、オーバーチューブ及び内視鏡挿入補助具の構成を概略的に示す構成図である。
【図4】内視鏡挿入補助具を用いて内視鏡の挿入部を挿入させるときのプロセスを示す説明図である。
【図5】複数の横チューブ及び縦チューブからなるバスケット状バルーンを備えた内視鏡挿入補助具を示す斜視図である。
【図6】オーバーチューブの支持部材を線状部材とは別部材で設けた内視鏡挿入補助具を示す要部断面図である。
【図7】処置具、及び処置具を挿通させるオーバーチューブを備えた内視鏡システムの構成図である。
【図8】オーバーチューブの鉗子チャンネルに挿通させた処置具、及び内視鏡の鉗子チャンネルに挿通させた内視鏡挿入補助具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、本発明を適用した内視鏡システム2は、内視鏡10、オーバーチューブ11、及び内視鏡挿入補助具(以下、挿入補助具とする。)12を備える。内視鏡10は、手元操作部13と、この手元操作部13に連設され、体内(例えば大腸)に挿入される挿入部14とを備える。手元操作部13にはユニバーサルコード15が接続され、ユニバーサルコード15の先端には光源用コネクタ16が設けられている。また、光源用コネクタ16からケーブル17が分岐され、このケーブル17の先端にはプロセッサ用コネクタ18が設けられている。光源用コネクタ16およびプロセッサ用コネクタ18は、光源装置19およびプロセッサ装置20にそれぞれ着脱自在に接続される。
【0017】
手元操作部13には、アングルノブ21や、挿入部14の先端からエアー、水を噴出させるための送気・送水ボタン22、吸引ボタン23等が設けられている。また、手元操作部13の挿入部14側には、電気メス等の処置具が挿通される鉗子口24が設けられている。
【0018】
挿入部14は、手元操作部13側から順に、可撓性を有する軟性部25と、湾曲自在な湾曲部26と、先端硬性部27とからなる。軟性部25は、先端硬性部27を体内の目的の位置に到達させるために数mの長さをもつ。湾曲部26は、手元操作部13のアングルノブ21の操作に連動して上下、左右方向に湾曲動作する。これにより、先端硬性部27を体内の所望の方向に向けることができる。
【0019】
図2において、先端硬性部27の先端面30には、観察窓31、照明窓32、送気・送水ノズル33、および鉗子出口34が設けられている。観察窓31は、先端面30の片側中央に配置されている。照明窓32は、観察窓31に関して対称な位置に二個配されている。
【0020】
観察窓31の奥には、体内の被観察部位の像を取り込むための対物光学系、および被観察部位の像を撮像するCCDやCMOSイメージセンサ等の撮像素子36(図3参照)が設けられている。符号Lは、観察窓31を通して撮像素子36が被観察部位を撮像するときの撮像光軸を示す。撮像素子36は、挿入部14、手元操作部13、ユニバーサルコード15に挿通されてプロセッサ用コネクタ18まで延設された信号ケーブル(図示せず)にてプロセッサ装置20に接続される。観察窓31から取り込まれた被観察部位の像は、撮像素子36の受光面に結像されて撮像信号に変換される。プロセッサ装置20は、信号ケーブルを介して受けた撮像素子からの撮像信号に各種画像処理を行って映像信号に変換し、これをケーブル接続されたモニタ37(図1参照)に観察画像として表示させる。
【0021】
照明窓32の背後には、光源装置19の照射光源からの照明光を導くライトガイドの出射端が配されている。ライトガイドは、挿入部14、手元操作部13、ユニバーサルコード15に挿通されて光源用コネクタ16まで延設され、光源用コネクタ16内に入射端が配設される。ライトガイドで導かれた照明光は、照明窓32を介して体内の被観察部位に向けて照射される。
【0022】
送気・送水ノズル33は、送気・送水ボタン22の操作に応じて、光源装置19に内蔵の送気・送水装置から供給されるエアーや水を、観察窓31に向けて噴射する。鉗子出口34は、挿入部14内に配設された鉗子チャンネル38(図3参照)に接続され、鉗子口24に連通している。鉗子口24に挿通された処置具の先端は、鉗子出口34から露呈される。
【0023】
図1において、オーバーチューブ11は、略筒状に形成された本体部61と、本体部61の先端に取り付けられたバルーン62とで構成される。本体部61は、可撓性材料によって形成され、内視鏡10の挿入部14先端側に外嵌されて固定される。
【0024】
図3に示すように、本体部61の内部には、挿入部14が挿通される挿通管路70とともに、バルーン用流体管路71が軸方向に沿って形成されている。バルーン62は、略球状に形成され、先端及び基端が本体部61に固定される。バルーン用流体管路71は、バルーン62に流体(例えばエアー)を供給・吸引するための管路であり、挿通管路70の管壁内に設けられている。バルーン用流体管路71は、本体部61の外周面に形成されたバルーン用の開口72に連通されている。開口72は、バルーン62の装着位置に複数個並べて形成され、この開口72から流体の供給・吸引を行うことによってバルーン62が膨張・収縮される。
【0025】
バルーン用流体管路71の基端側には、細径のチューブ73が接続され、このチューブ73の端部にコネクタ74が接続される。コネクタ74にはチューブ75が接続され、チューブ75はバルーン制御装置76に接続される。バルーン制御装置76でエアーを供給・吸引することによって、バルーン62が膨張・収縮される。
【0026】
図1に示すように、本発明の挿入補助具12は、剛性を有する長尺状の線状部材80と、線状部材80に連設された把持部81と、線状部材80の先端側外周に設けられたバスケット状バルーン82とからなる。線状部材80は、内視鏡10の鉗子口24から鉗子チャンネル38に挿通され、先端部が鉗子出口34から所定量突出する長さに形成されている。
【0027】
図2に示すように、バスケット状バルーン82は、弾性を有し、膨張及び収縮するチューブ83,84を連結させてバスケット状に形成したものである。バスケット状バルーン82を形成する横チューブ83は、線状部材80の軸回りに沿って配された円環状のチューブであり、縦チューブ84は、端部がそれぞれ線状部材80に取り付けられるとともに、横チューブ83と接続され、且つ接続部分で横チューブ83と互いに直交する円弧状のチューブである。縦チューブ84は、線状部材80を中心にして等角度間隔で複数個(本実施形態では90度間隔で4個)配設されている。横チューブ83及び縦チューブ84に流体を供給して膨張させたとき、バスケット状バルーン82の外径Rは、少なくとも先端硬性部27の外径Rよりも大きくなる。
【0028】
図3に示すように、線状部材80には、バスケット状バルーン82に流体を供給・吸引するための流体管路85が形成されている。流体管路85は、線状部材80の軸方向に沿って配され、線状部材80の先端で閉塞されている。この流体管路85は、線状部材80の外周面から貫通されたバスケット状バルーン82用の開口86に連通されている。開口86は、縦チューブ84の端部の位置に合わせて複数個形成され、縦チューブ84がそれぞれ接続されている。流体管路85から開口86を介して流体の供給・吸引を行うことによって、縦チューブ84、及びさらに縦チューブ84に接続された横チューブ83が膨張・収縮される。
【0029】
バルーン用流体管路85の基端側は、把持部81に設けられたコネクタ87に連通される。コネクタ87にはチューブ88が接続され、チューブ88はバルーン制御装置76に接続される。バルーン制御装置76でエアーを供給・吸引することによって、バスケット状バルーン82が膨張・収縮される。
【0030】
バルーンをチューブから形成する場合、個々のチューブについては外径が細く形成されるため、横からの圧迫により押し潰されることがある。しかし、本実施形態で使用されるバスケット状バルーン82は、上述したように横チューブ83と縦チューブ84とを連結して形成されるため、バスケット状バルーン82を膨張させたとき、径方向から受ける外力に対して高い強度を持っている。すなわち、バスケット状バルーン82が膨張しているときは、互いに直交する横チューブ83と縦チューブ84とが支え合っているため、バスケット状バルーン82が径方向から圧迫されたとしても形状を保つことができる。これに対して、従来の螺旋状バルーンのように1本のチューブを膨張させる場合は、径方向からの圧迫により押し潰され、軸方向に延びるように変形してしまう可能性があるが、本発明では変形が少ない。また、上述したように縦チューブ84は、線状部材80を中心にして配置され、端部が線状部材80に取り付けられている。すなわち、バスケット状バルーン82の中心を通る線状部材80がバスケット状バルーン82を支持する支持部材として機能しているため、バスケット状バルーン82の強度をさらに高めている。
【0031】
さらに、バスケット状バルーン82が膨張しているとき、円環状の横チューブ83及び円弧状の縦チューブ84の中心側(線状部材80の周囲)には、空間が形成される。内視鏡10の撮像素子36が観察窓31を通して被観察部位を撮像するときの撮像光軸L(図2及び図3参照)は、横チューブ83及び縦チューブ84の中心側の空間を通過する。すなわち、バスケット状チューブ82が膨張しているときは、撮像素子36による撮像を妨げることがなく、被観察部位の観察を行うことができる。
【0032】
また、バスケット状バルーン82は、流体を流出させると、折り畳み可能となる。折り畳んだ状態のバスケット状バルーン82は、線状部材80とともに鉗子チャンネル38に挿通可能な外径となる。
【0033】
図1において、バルーン制御装置76は、バルーン62、バスケット状バルーン82にそれぞれエアー等の流体を供給・吸引する装置であり、リモートコントロール用のハンドスイッチ90とバルーン専用モニタ91が付属している。バルーン制御装置76の前面には、電源スイッチ、停止スイッチ、圧力表示部等が設けられる。圧力表示部はバルーン62、バスケット状バルーン82の圧力値を表示するパネルであり、バルーン62、バスケット状バルーン82の破れ等の異常発生時には圧力表示部にエラーコードが表示される。
【0034】
ハンドスイッチ90には各種のスイッチが設けられる。例えば、バルーン制御装置76の停止スイッチと同じ機能の停止スイッチや、バルーン62の加圧/減圧を指示するON/OFFスイッチ、さらにはバルーン62、バスケット状バルーン82の圧力を保持するためのポーズスイッチ等が設けられる。ハンドスイッチ90はコードを介してバルーン制御装置76に電気的に接続されている。なお、図示はしていないが、ハンドスイッチ90には、バルーン62、バスケット状バルーン82の送気状態、あるいは排気状態を示す表示部が設けられている。
【0035】
バルーン制御装置76は、バルーン62、バスケット状バルーン82にエアーを供給して膨張させたり、そのエアー圧を一定値に制御してバルーン62、バスケット状バルーン82を膨張状態に保持する。また、バルーン制御装置76は、バルーン62、バスケット状バルーン82からエアーを吸引して収縮させたり、そのエアー圧を一定値に制御してバルーン62、バスケット状バルーン82を収縮状態に保持する。
【0036】
バルーン専用モニタ91には、バルーン62、バスケット状バルーン82を膨張、収縮させる際に、バルーン62、バスケット状バルーン82の圧力値や膨張・収縮状態が表示される。なお、バルーン62、バスケット状バルーン82の圧力値や膨張・収縮状態は、内視鏡10の観察画像にスーパーインポーズしてモニタ37に表示してもよい。
【0037】
次に、上記の如く構成された内視鏡システム2の操作方法について図4を用いて説明する。内視鏡10の挿入部14を体内の管路深部へ挿入させるのが困難になり、挿入補助具12を用いて挿入を補助させる場合、先ず、図4(A)に示すように、内視鏡10の鉗子口24から、挿入補助具12の線状部材80及びバスケット状バルーン82を鉗子チャンネル38に挿通させる。このとき、バスケット状バルーン82は、バルーン制御装置76の制御によりエアーが抜かれて折り畳まれた状態となっている。また、内視鏡10の挿入部14には、予めオーバーチューブ11を外嵌させた状態となっている。
【0038】
図4(B)に示すように、鉗子チャンネル38に挿通された挿入補助具12の線状部材80は、バスケット状バルーン82とともに先端部が先端面30から突出する位置まで押し出される。線状部材80とともに先端面30から突出したバスケット状バルーン82は、体内の管路Pの深部へと挿入される。線状部材80の先端部とバスケット状バルーン82を管路Pの深部へと挿入した後、図4(C)に示すように、ハンドスイッチ90が操作され、バルーン制御装置76の制御によりバスケット状バルーン82が膨張して管路Pを把持し、線状部材80を管路Pに対して固定する。この状態で、内視鏡10の挿入部14を線状部材80に沿って押し込むと、バスケット状バルーン82の直後の位置まで挿入部14を前進させることができる。
【0039】
次に、バルーン制御装置76からバルーン62にエアーを供給し、膨張したバルーン62によって体内の管路Pを把持させる。この状態で、挿入部14とともにオーバーチューブ11を手元側に後退させると、その引張り力によってオーバーチューブ11と共に挿入部14の曲率半径が大きく、略直線状態になるため、管路Pの撓みを取って(特にS字結腸などの撓みの多い消化管の場合)短縮することができる。
【0040】
管路Pの撓みを取った後、バスケット状バルーン82のエアーを吸引して収縮した状態とし、挿入補助具12の線状部材80を押し進める。以降は、バスケット状バルーン82及びバルーン62の膨張及び収縮を繰り返しながら、挿入補助具12及び挿入部14を管路Pのさらに深部に挿入させることができる。また、挿入部14に対して挿入補助具12の線状部材80を押し進めるときには、必要に応じてオーバーチューブ11のバルーン62を膨張させて管路Pを把持し、オーバーチューブ11、挿入部14を管路Pに対して固定した状態で、線状部材80を押し出すようにしてもよい。
【0041】
以上のように、挿入補助具12を用いて挿入部14を体内の管路深部に挿入させるとき、上述したように、バスケット状バルーン82を膨張させると、横チューブ83及び縦チューブ84の内側に形成される空間を通して、被観察部位H(図4(C)参照)を観察することができる。また、管路Pが狭くなっている場合など管路Pから径方向に圧迫を受けても、バスケット状バルーン82は径方向から受ける力に強く、変形が少ないため、膨張した状態を保って観察視野を確保することができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、バスケット状バルーン82を構成する横チューブが1個だけであるが、本発明はこれに限らず、図5に示すように、複数の横チューブが配されたバスケット状バルーンを備えた挿入補助具100でもよい。この場合、バスケット状バルーン101は、線状部材80の軸回りに配され、且つ互いに平行に位置する複数の横チューブ102、及び横チューブ102と連結される縦チューブ103とからなる。縦チューブ103は、両端が線状部材80に取り付けられるとともに、横チューブ102と接続部分で直交し、且つ横チューブ102同士が所定の間隔を置くように接続されている。
【0043】
また、上記実施形態では、バスケット状バルーン82の中心を通る線状部材80が、バスケット状バルーン82を支持する支持部材となっているが、本発明はこれに限らず、図6に示すように、線状部材80とは別部材の支持部材105を設け、この支持部材105にバスケット状バルーン82を支持させるようにしてもよい。この場合、線状部材80の先端に支持部材105を連結し、線状部材80の流体管路85に接続される流体管路106を支持部材105に設ける。そして、上記実施形態と同様に、支持部材105の外周面に、流体管路106と連通する開口107を形成し、開口107を通してバスケット状バルーン82に流体を供給・吸引することができる。さらにまた、支持部材105をバスケット状バルーン82と一体に形成してもよい。
【0044】
上記実施形態では、内視鏡10、オーバーチューブ11、及び挿入補助具12を備えた内視鏡システムを例示しているが、本発明の挿入補助具12を適用する内視鏡システムの構成はこれに限るものではない。図7に示す内視鏡システム110では、鉗子などの処置具111と、この処置具111を挿通させるオーバーチューブ112とを備えた内視鏡システムに本発明の挿入補助具12を適用している。なお、上記実施形態と同じ部材には同一符号を付して説明を省略する。また、図7では、光源装置19、プロセッサ装置20、モニタ37、バルーン制御装置76などは省略している。
【0045】
オーバーチューブ112は、略筒状に形成された本体部114と、本体部114の先端に取り付けられたバルーン62とで構成される。本体部114は、可撓性材料によって形成され、内視鏡10の挿入部14先端側に外嵌されて固定される。
【0046】
本体部114の内部には、挿入部14が挿通される挿通管路115、バルーン用流体管路116、及び鉗子チャンネル117が軸方向に沿って形成されている。バルーン用流体管路116は、上記実施形態のバルーン用流体管路71と同様に、本体部114の外周面に形成されたバルーン用の開口(図示せず)に連通され、この開口から流体の供給・吸引を行うことによってバルーン62が膨張・収縮される。
【0047】
図8に示すように、鉗子チャンネル117は、本体部114の先端114aに形成された鉗子出口119と連通している。この内視鏡システム110では、鉗子チャンネル117に挿通され、鉗子出口119から内視鏡10の観察視野内に突出した処置具111によって手技を行うことができる。
【0048】
上記構成の内視鏡システム110では、挿入補助具12を用いて挿入部14を体内の管路深部に挿入させるとき、上記実施形態と同様に、横チューブ83及び縦チューブ84の内側に形成される空間を通して、被観察部位を観察することができる。さらに、鉗子チャンネル117に挿通させた処置具111を鉗子出口119から突出させたとき、横チューブ83及び縦チューブ84の内側に形成される空間を通して内視鏡10の観察視野内に処置具111を進入させることができる。これにより、体内の管路深部で処置具111による手技を行うときは、バスケット状バルーン82が観察視野を妨げることがなく、観察視野内における処置具111の移動もスムーズに行うことができる。なお、内視鏡システム110で使用する処置具111としては、鉗子に限らず、レーザーや電気メス、注射針などオーバーチューブの鉗子チャンネルに挿通して手技を行うことが可能な処置具であればよい。
【0049】
上記実施形態では、オーバーチューブにバルーンが装着された内視鏡システムを説明したが、内視鏡の挿入部に膨張及び収縮自在なバルーンを直接装着した内視鏡システムに本発明の挿入補助具を適用してもよい。この場合、挿入部側のバルーンを膨張させて体内の管路を把持する把持操作、挿入補助具を挿入部の鉗子チャンネルに沿って押し出す押出操作、挿入補助具のバスケット状バルーンを膨張させて管路を把持する把持操作、挿入補助具の線状部材に沿って内視鏡の挿入部を挿入させる挿入操作、内視鏡の挿入部とともに挿入部側のバルーンを手元側に引張る引張操作などを繰り返し行うことによって、挿入部の先端を体内管路の深部に挿入することができる。なお、内視鏡の挿入部に装着するバルーンがなく、さらにバルーン付きのオーバーチューブもない内視鏡システムに本発明の挿入補助具を適用してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、撮像素子を用いて被検体の状態を撮像した画像を観察する電子内視鏡を備えた内視鏡システムを例に上げて説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、光学的イメージガイドを採用して被検体の状態を観察する内視鏡を備えた内視鏡システムにも本発明の挿入補助具を適用することができる。
【0051】
さらにまた、上記実施形態においては、内視鏡挿入補助具は、挿入部の挿入を補助する以外の機能を持たない構成を例示しているが、本発明はこれに限らず、鉗子などの処置具、または超音波プローブの機能を持たせた構成でもよい。この場合、内視鏡挿入補助具は、鉗子チャンネルに挿通される線状部材としての処置具または超音波プローブと、この線状部材に取り付けられる上記実施形態と同様のバスケット状バルーンとから構成される。
【符号の説明】
【0052】
2 内視鏡システム
10 電子内視鏡
11,112 オーバーチューブ
14 挿入部
19 光源装置
20 プロセッサ装置
38 鉗子チャンネル
76 バルーン制御装置
80 線状部材
82,101 バスケット状バルーン
83 横チューブ
84 縦チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に配された観察窓を通して被検体を観察可能な内視鏡の挿入部に挿通され、前記先端から突出し、被検体内の深部へ前記挿入部を案内する線状部材と、前記線状部材の外周に設けられ、膨縮自在なチューブをバスケット状に形成してなるバスケット状バルーンとを備えたことを特徴とする内視鏡挿入補助具。
【請求項2】
前記バスケット状バルーンは、前記線状部材の軸回り方向に沿って配された横チューブと、前記線状部材に取り付けられるとともに、前記横チューブと接続され、且つ接続部分で前記横チューブと互いに直交するする縦チューブとからなることを特徴とする請求項1記載の内視鏡挿入補助具。
【請求項3】
前記バスケット状バルーンは、複数の横チューブを備え、前記縦チューブは、前記横チューブ同士が所定の間隔を置くようにして前記横チューブと接続されることを特徴とする請求項2記載の内視鏡挿入補助具。
【請求項4】
前記バスケット状バルーンの中心に配され、前記バスケット状バルーンを支持する支持部材を備えたことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の内視鏡挿入補助具。
【請求項5】
内視鏡と、前記内視鏡の挿入部外周に取り付けられ、膨縮自在のバルーンと、請求項1ないし4いずれか1項記載の内視鏡挿入補助具とを備えたことを特徴とする内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−29886(P2012−29886A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172214(P2010−172214)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】