説明

内視鏡洗浄装置

【課題】内視鏡の外表面と内視鏡内部の管路内を洗浄する内視鏡洗浄装置。
【解決手段】内視鏡の外表面を洗浄する外表面洗浄装置と管路内を洗浄する管路内洗浄装置と制御部とを備え、外表面洗浄装置は洗浄槽と洗浄液タンクと洗浄液供給手段と洗浄液の排出手段とからなり、管路内洗浄装置は、球状洗浄具を収納した洗浄部材と、洗浄部材を装着する洗浄部材装着部と、液体注入装置と空気注入装置と送液管と送気管とを備え、洗浄部材装着部は、送液管および送気管と連通する上流側装着部と、内視鏡管路の基端側開口に接続可能な接続部を有する下流側装着部とを備え、制御部は液体注入装置制御機能と空気注入装置制御機能とを備え、送り出す洗浄液と空気を制御して球状洗浄具を基端側開口より管路内に送り込み、球状洗浄具を管路内壁と接触した状態にて洗浄液もしくは洗浄液と空気と共に移動させた後内視鏡の先端側開口より排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端側開口および基端側開口を有する管路を内部に有する内視鏡の外表面と、内部の管路内を洗浄する内視鏡洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡検査が終了した使用後の内視鏡は、体控内に挿入する挿入部の外表面が汚染され、また、内視鏡の鉗子チャンネル、吸引チャンネル、送気チャンネル、送水チャンネル等の複数の管路内が、粘液、血液、汚物により汚染されている。このため、内視鏡の再使用にあたっては二次感染などを防止するために、内視鏡の外表面、および、管路内の厳密な洗浄が必要となる。
そのため、一般的には内視鏡を洗浄する洗浄槽を設け、該洗浄槽に洗浄液を満たし、その中に内視鏡を侵漬しスポンジ、ガーゼ等を使用して内視鏡の外表面を洗浄するとともに、内視鏡の複数の管路のそれぞれに洗浄液を注入できるように、複数の送液管路が前記洗浄槽等に配設され、該送液管路と内視鏡の複数の管路を洗浄アダプターを使用して接続し、管路内に洗浄液を注入し内視鏡の管路内の洗浄をするものが種々知られているが、内視鏡の管路内に洗浄液を流すだけであるから洗浄が充分に行うことができなかった。
【0003】
そこで、このような内視鏡洗浄装置を改良するものとして、特開2007−275437号公報(特許文献1)に開示されているように、内視鏡洗浄装置の上部に所定の深さを有する洗浄槽が設けられ、該洗浄槽内に内視鏡を収容し、洗浄液、濯ぎ水等を供給して、内視鏡に付着している粘液、血液、汚物を洗浄し、また、内視鏡の各管路に液体供給ユニットにより洗浄液等の流体を供給するとともに、洗浄ブラシを管路に自動的に挿抜して管路を洗浄するものが提案されている。
また、特許第3416933号公報(特許文献2)には、内視鏡の管路内を、管路の口径よりやや大きいサイズの複数個の球状ブラシを洗浄液と同時に吸引移動させることにより、チューブ内表面の粘液、血液などの汚染物を洗浄し、細菌、ウィルスなどをも脱落、消失させる球状ブラシ吸引型内視鏡ブラッシング洗浄装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−275437号公報
【特許文献2】特許第3416933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の発明は、洗浄ブラシを使用し管路内を挿抜するものであるから、管路の内壁を不規則に擦れ合うブラシによる洗浄となるため、管路の内壁に付着する分泌物、血液、組織片などの比較的落ちやすい汚染物の洗浄除去は可能であるが充分な洗浄効果がなく、ウイルス、細菌その他の各種微生物などを除去することについては問題があり、さらに、内視鏡の管路内の径の異なる部分また管路の湾曲部分においては、隅々まで洗浄することが困難であった。
また、前記特許文献2の発明にあっては、球状ブラシを使用して洗浄液とともに吸引移動させて内視鏡管路内に付着する粘液などの分泌物、血液、組織片などは勿論、ウイルス、細菌、その他の各種微生物等を洗浄除去することができるが、より洗浄効果を高めるために、球状ブラシの管路内を移動させる手段の改良、および、使用勝手をよくするために球状ブラシの送り出し器について改良をする余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、内視鏡の外表面を洗浄する外表面洗浄装置により内視鏡の外表面の洗浄を行い、管路内洗浄装置により内視鏡内の管路内を洗浄するものであって、内視鏡の内部の管路内に送り込む球状洗浄具を収納した洗浄部材の内視鏡への装着を容易とし、前記洗浄部材を内視鏡の基端側開口、例えばユニバーサルコード部の吸引チャンネル口に接続し、比較的汚染の少ない吸引チャンネル口から球状洗浄具を送り込み、該球状洗浄具を吸引チャンネル内を移動させ、その後前記吸引チャンネルに連通する汚染の多い鉗子チャンネル内を移動せ内視鏡の先端側開口方向へ洗浄できるようにし、洗浄作業をする人が最も汚染された体控内に挿入される内視鏡の先端部に触れることなく洗浄作業を行え、また、汚染された鉗子チャンネル内を通った洗浄具が吸引チャンネルを通過することなく洗浄でき洗浄効果を高め、さらに、球状洗浄具を管路内に送り込む際に、洗浄液等の液体及び空気の注入を制御部で制御し、強い水流と大きい空気圧を球状洗浄具に作用させ、もしくは間欠的に作用させて、内視鏡の管路の内径に大小の差があっても、また、湾曲した部分、段差等があっても確実に管路の内壁に密に接触しつつ移動可能とし、内視鏡の管路内の隅々まで確実に洗浄できることができ、さらにまた、複数の球状洗浄具が同時に洗浄部材から送り出されても、内視鏡の管路内で球状洗浄具が詰まることがなく確実に排出できる等、使い勝手をよくした内視鏡洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するものは、以下のものである。
(1)先端側開口および基端側開口を有する管路を内部に有する内視鏡を洗浄するための内視鏡洗浄装置であって、
該内視鏡洗浄装置は、前記内視鏡の外表面を洗浄する外表面洗浄装置と、前記内視鏡内の管路内を洗浄する管路内洗浄装置と、制御部とを備え、
前記外表面洗浄装置は、前記内視鏡を収容する洗浄槽と、洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、該洗浄液タンクから前記洗浄槽に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、洗浄後の洗浄液の排出手段とを備え、前記洗浄槽において洗浄液に浸漬された内視鏡の外表面を洗い流し洗浄可能となっており、さらに、
前記管路内洗浄装置は、球状洗浄具を収納した洗浄部材と、該洗浄部材を着脱可能に装着する洗浄部材装着部と、液体注入装置と、空気注入装置と、前記液体注入装置に接続された送液管と、前記空気注入装置に接続された送気管とを備え、前記洗浄部材装着部は、前記送液管および前記送気管と連通する上流側装着部と、前記内視鏡の前記管路の前記基端側開口に接続可能な接続部を有する下流側装着部とを備え、
前記制御部は、前記液体注入装置により注入される洗浄液等の液体の注入量、注入時間および注入間隔を制御する液体注入装置制御機能と、前記空気注入装置により注入される空気の注入圧力、注入時間および注入間隔を制御する空気注入装置制御機能とを備え、
前記内視鏡洗浄装置は、前記制御部により、前記液体注入装置及び空気注入装置から送り出される液体と空気を制御して前記洗浄部材装着部の前記上流側装着部に送給し、前記洗浄部材に収納されている前記球状洗浄具を前記下流側装着部を介して前記内視鏡の前記基端側開口より前記管路内に送り込み、前記球状洗浄具を前記管路内壁と接触した状態にて洗浄液等の液体もしくは液体と空気とともに移動させた後、前記先端側開口より排出させることにより、前記内視鏡の管路内を前記基端側開口側から前記先端側開口方向への洗浄を可能とした内視鏡洗浄装置。
【0008】
(2)前記制御部は、前記内視鏡の管路内に、液体のみの供給と、液体と空気の同時送給とを選択して行う機能を備えている上記(1)に記載の内視鏡洗浄装置。
(3)前記制御部は、前記内視鏡の管路内に、液体のみの供給と、液体と空気の同時送給とおよび空気のみの供給を選択して行う機能を備えている上記(1)に記載の内視鏡洗浄装置。
(4)前記制御部は、前記球状洗浄具を前記管路内に送り込む際、前記液体を所定秒流し、その後空気を所定秒を流す操作を1セットとし、 これを複数回繰り返すように制御する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
(5)前記制御部は、前記球状洗浄具を前記管路内に送り込む際、前記液体を30〜60秒流し、その後空気を10〜20秒を流す操作を1セットとし、これを3〜7回繰り返すように制御するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【0009】
(6)前記内視鏡洗浄装置は、前記液体注入装置の前記送液管に設けられた流量センサーを備え、前記制御部は、目詰まり判断用流量値を記憶しており、前記流量センサーにより検知される流量が前記目詰まり判断用流量値以下となったことが検知されたときに作動する警報装置を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
(7)前記内視鏡洗浄装置は、前記液体注入装置の前記送液管に設けられた流量センサーを備え、前記制御部は、目詰まり判断用流量値を記憶しており、前記流量センサーにより検知される流量が前記目詰まり判断用流量値以下となったことが検知されたとき、前記液体注入装置および前記空気注入装置の作動を停止する機能を備えている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
(8)前記球状洗浄具は、多数の極細繊維により略球状に成形された多孔質体であって、前記液体により膨潤可能であるとともに膨潤時に洗浄対象となる内視鏡の管路の内径より大きな外径となり、前記管路内に注入される前記液体もしくは液体と空気により前記管路の内壁に接触した状態にて移動可能とした上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【0010】
(9)前記液体注入装置は、前記洗浄液タンクに貯留されている洗浄液を送給する液体ポンプと、前記洗浄液を送給する送液管と、送液管に設けられ、前記制御部により開閉制御される液体送給切換バルブと、液体の流量を計測する流量センサーとを備えるものである上記(1)から(8)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
(10)前記空気注入装置は、空気ポンプと圧縮空気を貯留する空気タンクと圧縮空気を送給する送気管と、該送気管に設けられ、前記制御部により開閉制御される空気送給切換バルブとを備えるものである上記(1)から(9)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【0011】
(11)前記洗浄部材は、複数の球状洗浄具を保持する筒状部材と、該筒状部材を収容する収容ケースとからなり、該収容ケースは、両端部に前記筒状部材の内径とほぼ等しい外径に形成された接続部を備え、該接続部には、前記洗浄部材装着部の前記上流側装着部および前記下流側装着部とを構成するチューブの内部に液密に接続可能なシール用の環状リブが設けられている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
(12)前記洗浄部材は、複数の球状洗浄具を保持する複数の保持孔を有するカートリッジと、該カートリッジを挿入するカートリッジ装着部と、該カートリッジ装着部に挿入したカートリッジの複数の保持孔の各々と連通する複数の上流側流路と、該複数の上流側流路を集結し、かつ前記洗浄部材装着部の前記上流側装着部に接続可能な流入側接続部と、前記保持孔の各々と連通する複数の下流側流路と、該複数の下流側流路を集結し、かつ前記洗浄部材装着部の前記下流側装着部に接続可能な流出側接続部とを有する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
(13)前記洗浄部材の前記複数の下流側流路は、前記カートリッジより流出する複数の球状洗浄具の前記流出側接続部への到達時間を異なるものとするために、各下流側流路は、流路長がそれぞれ異なるものとなっている上記(12)に記載の内視鏡洗浄装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内視鏡洗浄装置によれば、外表面洗浄装置により洗浄槽において洗浄液に内視鏡を侵漬し、侵漬された内視鏡の外表面を洗い流し内視鏡の外表面の洗浄を行うことができる。
また、管路内洗浄装置は、内視鏡の管路内に送り込む球状洗浄具を収納した洗浄部材の装着が容易で、複数の球状洗浄具を簡単に管路内に送り込むことができる。
そして、前記管路内洗浄装置の制御部により、球状洗浄具を収納した洗浄部材に、液体注入装置から送り出される液体の注入量、注入時間、注入間隔、および、空気注入装置から送り出される空気の注入圧力、注入時間、注入間隔が制御され、制御された液体もしくは液体と空気が前記球状洗浄具に送給され、前記球状洗浄具が内視鏡の基端側開口より管路内に強い水流(水圧)、もしくは強い水流と大きい空気圧を受けて送り込まれ、前記管路内を移動するので、内視鏡の管路内壁に付着した分泌物、血液、組織片等の汚染物を洗浄除去し、ウイルス、細菌その他の各種微生物等も一気に除去できる。
また、管路内洗浄装置は、前記球状洗浄具が内視鏡の比較的汚染の少ない前記基端側開口である吸引チャンネル口から送り込まれ、汚染の激しい内視鏡の先端側開口方向へ洗浄を進めるので、汚染が激しい鉗子チャンネル内を通った洗浄具が内視鏡の先端側開口から排出され、吸引チャンネル内を汚染された洗浄具が通過することなく洗浄できる。
さらに、前記管路内洗浄装置は、内視鏡が最も汚染される体控内に挿入される前記先端側開口に該管路内洗浄装置の洗浄部材等を接続することなく洗浄作業ができるので、洗浄作業をする人も汚染された内視鏡の先端部に触れることなく洗浄作業が行え、また、管路内洗浄装置自体も汚染されることがないので、該管路内洗浄装置の洗浄消毒する必要がない。
【0013】
本発明の内視鏡洗浄装置によれば、前記制御部により、前記内視鏡の管路内に、洗浄液等の液体のみを送給したり、液体と空気とを同時送給したり、空気のみの供給したりする等自由に選択して制御できるので、使用する内視鏡の種類の相違、汚染の程度の違い等に対応して、効果的な洗浄をすることができる。
特に、前記制御部は、前記球状洗浄具を前記管路内に送り込む際、前記液体を所定秒流し、その後空気を所定秒を流す操作を1セットとし、これを複数回繰り返すように制御することも可能であるから、管路内の洗浄を効果的に行うことができる。そして、前記液体を30〜60秒流し、その後空気を10〜20秒を流す操作を1セットとし、これを3〜7回繰り返せば洗浄効果は極めて高くなる。
さらに、前記球状洗浄具が排出された後は、空気のみを送給する制御をすることにより、管路内を乾燥をさせることができ、細菌等の付着・増加を予防することができる。
【0014】
本発明の内視鏡洗浄装置によれば、前記内視鏡洗浄装置は、流量センサーを備え、目詰まり判断用流量値を下回ると警報装置から警報が発せられので、洗浄が順調に進んでいるか否かを知ることができる。また、目詰まり判断用流量値を下回ると前記液体注入装置および前記空気注入装置の作動を停止し、液体や空気の送給を止めることができるので、内視鏡の管路、洗浄部材、洗浄部材装着部、及び、それらの接続部に強い水圧、大きな空気圧が加わり、器具の損傷、接続部の離脱等が生じることがない。
【0015】
本発明の内視鏡洗浄装置によれば、前記球状洗浄具は、多数の極細繊維により略球状に成形された多孔質体のものを使用するので、液体もしくは液体と空気を用いて内視鏡の管路内に送り込まれると、前記球状洗浄具は前記液体により膨潤し洗浄対象となる内視鏡の管路の内径より大きな外径となり、前記液体もしくは液体と空気により前記管路の内壁に接触した状態で、内視鏡の管路内壁に付着した粘液などの分泌物、血液、組織片など汚染物を洗浄除去し、ウイルス、細菌その他の各種微生物なども除去しながら移動し管路内を洗浄をすることができる。
さらに、前記球状洗浄具は内径の大きい管路から内径の小さい管路に移っても楕円形に変形しつつ管路の内壁に接触した状態で移動し、また、湾曲部分や段差がある部分に差し掛かってもその管路の形状に対応して内壁に接触した状態で移動するので、注入される洗浄液等の液体と空気との働きにより、短時間で内視鏡の管路内の隅々まで確実に洗浄することができる。
【0016】
本発明の内視鏡洗浄装置によれば、複数の球状洗浄具を収納した前記洗浄部材を使用しているので、前記洗浄部材を液体と空気が送給される前記洗浄部材装着部の上流側装着部と、前記内視鏡の前記基端側開口に接続される前記洗浄部材装着部の下流側装着部との間に装着するという簡単な作業で、複数の球状洗浄具を内視鏡の管路に送り込む準備ができる。
また、前記洗浄部材を複数の球状洗浄具を保持するカートリッジ式とした場合は、カートリッジ装着部に該カートリッジを挿入すると、カートリッジの複数の保持孔の各々と複数の上流側流路と複数の下流側流路が連通し、前記洗浄部材装着部の前記上流側装着部から液体もしくは液体と空気を送給するだけで、複数の球状洗浄具を送り出さすことがでる。
さらに、前記複数の下流側流路は、流路長がそれぞれ異なるものとなっているので、複数の球状洗浄具をカートリッジから同時に送り出しても、時間差をもって前記内視鏡の前記基端側開口から管路内に送り込まれるので、管路内で球状洗浄具が詰まることがなく使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の内視鏡洗浄装置の説明図である。
【図2】図2は、本発明の内視鏡の各管路と洗浄部材と接続ポートの接続関係を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の洗浄部材の断面図である。
【図4】図4は、本発明の異なる洗浄部材の説明図である。
【図5】図5は、本発明の図4に示す洗浄部材に使用するカートリッジの斜視図である。
【図6】図6は、洗浄方法と洗浄効果の試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の内視鏡洗浄装置について、図に示す実施例を用いて説明する。
図1及び図2において、Aは内視鏡洗浄装置で、内視鏡の外表面を洗浄する外表面洗浄装置Bと、内視鏡内の管路内を洗浄する管路内洗浄装置Cと制御部Dを備えており、前記外表面洗浄装置Bは、内視鏡検査が終了した使用後の内視鏡1を収容する洗浄槽2と、蛋白質分解酵素、脂質分解酵素、またはアミン系蛋白除去剤などを含有する洗浄液、次亜塩素酸水などのアルカリ水等の洗浄液、その他の洗浄液を貯留しておく洗浄液タンク3と、該洗浄液タンク3から前記洗浄槽2に洗浄液を供給する洗浄液供給手段4と、洗浄が終了した後に洗浄槽2から洗浄液等を排出する排出手段5とから構成されている。
【0019】
前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段4は、前記洗浄液タンク3の底部から液体ポンプ6により洗浄液送給管7を通って前記洗浄槽2に洗浄液を送給するとともに、後述する液体注入装置8の一部を担うもので、前記洗浄液送給管7から分岐した送液管9等を介して内視鏡1の管路内に洗浄液を注入するものである。
また、前記洗浄液を排出する排出手段5は、前記洗浄槽2から排出管46によりフィルター47を介して再び洗浄液タンク3に戻したり、排出用液体ポンプ10により廃液送給管11を介して内視鏡洗浄装置Aの外に排出するようになっている。
さらに、水道水により内視鏡1の外表面を洗い流すために、水道蛇口12からフィルター13等を介して給水管14により、前記洗浄槽2内に送水でき、また、シャワーヘッド15を介して水道水を流出させ、内視鏡1の外表面を洗い流すことがき、さらに、給水管14から分岐し内視鏡の1の管路内にも送水できるようになっている。
【0020】
前記管路内洗浄装置Cは、球状洗浄具16と、該球状洗浄具16を収納する洗浄部材17と、該洗浄部材17を内視鏡1の吸引チャンネル18の吸引チャンネル口19と接続ポート30との間に着脱できるように装着する洗浄部材装着部21と、前記内視鏡1の吸引チャンネル口19等の管路内に洗浄液等の液体を注入する液体注入装置8と、前記内視鏡1の吸引チャンネル口19等の管路内に空気を注入する空気注入装置22とから構成されている。
前記液体注入装置8は、前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段4を共用するもので、前記洗浄液タンク3に貯留されている洗浄液を送給する液体ポンプ6と、前記洗浄液を送給する洗浄液送給管7から分岐して設けられた送液管9とからなり、該送液管9には前記制御部Dにより開閉制御される液体送給切換バルブ23と、送液管内を流れる液体の流量を計測する流量センサー24が設けられている。
尚、洗浄液タンク3とは異なるタンクを用意し、洗浄槽2に送給する洗浄液とは異なる洗浄液、消毒液を貯留し、送液管により吸引チャンネル口19等に注入できるようにすることもできる。
【0021】
前記空気注入装置22は、空気ポンプ25と圧縮空気を貯留する空気タンク26と圧縮空気を送給する送気管27とからなり、該送気管27には前記制御部Dにより開閉制御される空気送給切換バルブ28が設けられている。
そして、前記液体注入装置8の送液管9と前記空気注入装置22の送気管27は接続され、両者が接続された送給管29は、前記洗浄槽2の周辺部に設置された接続ポート30の複数の送給路接続部31の上流側に接続されている。
前記接続ポート30の各送給路接続部31の下流側には、内視鏡の複数の管路32等と接続する複数の接続具が接続さる。該接続具の1つは内視鏡の管路の基端側開口であるユニバーサルコード部20の吸引チャンネル口19に洗浄部材17を装着する洗浄部材装着部21であり、その他の接続具は、送気チャンネル、送液チャンネル等の管路と接続する接続アダプターである。前記洗浄部材装着部21及び接続アダプターとしてはチーブを使用するのが好ましい。
内視鏡が内部に有する複数の管路の内、吸引チャンネル18は鉗子チャンネル33と連通し、この管路には液体と空気だけでなく球状洗浄具16を送り込み洗浄を行うため、前記複数の送給路接続部31に洗浄部材装着部21の上流側装着部21aを接続し、これに球状洗浄具16を収納した洗浄部材17の上流側の接続部36を嵌入接続する。また、洗浄部材17の他方の下流側の接続部36は前記吸引チャンネル口19に接続する洗浄部材装着部21の下流側装着部21bに嵌入接続するようになっている。
【0022】
前記制御部Dは、前記液体注入装置8により注入される洗浄液等の液体の注入量、注入時間および注入間隔を制御する液体注入装置制御機能と、前記空気注入装置22により注入される空気の注入圧力、注入時間および注入間隔を制御する空気注入装置制御機能とを備え、前記内視鏡1の管路内に、洗浄液等の液体のみを送給したり、液体と空気を同時送給したり、空気のみを送給したり、液体と空気を交互に送給したり、液体又は空気を間欠的に送給するなど、液体と空気の送給方法を選択して制御することができる機能を備えたものである。
そして、内視鏡1の管路内の洗浄を開始する際に、液体送給切換バルブ23を開成し液体のみを送液管9から送給管29を通って前記接続ポート30の送給路接続部31に送給し、前記上流側装着部21aを介して前記洗浄部材17に供給し、洗浄部材17の内部に保持されている球状洗浄具16を水流で内視鏡1の管路内に送り込み、また、液体送給切換バルブ23と空気送給切換バルブ28の両者を開成し、液体と空気を同時に送給し球状洗浄具16を内視鏡1の管路の吸引チャンネル18から鉗子チャンネル33に送り込むことができるようになっている。
また、前記球状洗浄具16が充分に液体を吸収し膨潤した後、吸引チャンネル18に送り込まれるように、わずかの液体を洗浄操作を開始する前に流すこともできるようになっている。
さらに、前記制御部Dは、液体送給切換バルブ23と空気送給切換バルブ28の両者を交互に開閉制御し、前記球状洗浄具16を前記吸引チャンネル18に送り込む際、前記液体を30〜60秒流し、その後空気を10〜20秒を流す操作を1セットとし、これを3〜7回繰り返すように制御することができる。
また、内視鏡1の管路内洗浄が終了した後、液体送給切換バルブ23を閉止し空気送給切換バルブ28を開成し、空気のみを供給し管路内を乾燥させることができる。
【0023】
前記液体注入装置Aは、前記内視鏡の管路内に500mL/分以上の流量にて液体を供給可能としたものであり、短時間に液体を1000mL/分以上送給するように設定するのが望ましい。
また、前記空気注入装置は、前記内視鏡の管路内に50KPa以上の圧力にて空気を送給可能としたものであり、送給圧力が100KPa以上で送給するよう設定するのが望ましい。
【0024】
前記内視鏡洗浄装置Aには制御部Dが備えられ、該制御部Dには前記液体注入装置8の前記送液管9に設けた流量センサー24で検知した流量を電気信号に変え入力するようになっている。
そして、前記制御部Dは、目詰まり判断用流量値を記憶しており、前記流量センサーにより検知される流量の電気信号が、前記目詰まり判断用流量値以下、例えば100mL/分以下となったことを検知したときに、前記内視鏡洗浄装置Aに備えた警報装置45から警報を出し知らせるようになっている。また、前記制御部Dは、前記目詰まり判断用流量値以下となったことを検知しとき、前記液体注入装置8および前記空気注入装置22の作動を停止させることもできる。
【0025】
前記球状洗浄具14は、多数の極細繊維により略球状に成形された多孔質体で弾性に富んだ性質を持ち、内視鏡1の管路内壁の付着物を該多孔質体の表面および多孔質体内にて取り込み除去するもので、洗浄液等の液体が前記液体注入装置17により送られると液体を吸収し膨潤する。膨潤すると洗浄対象となる内視鏡の内径より大きな外径となり、管路内に送り込まれたとき、注入される前記液体もしくは液体と空気により前記管路の内壁に密に接触した状態で移動する。
特に、内視鏡の吸引チャンネルと組織採取用の鉗子チャンネルは連通し、吸引チャンネルの内径は一般に鉗子チャンネルの内径よりも大きいものが多い。それ故、使用する球状洗浄具16としては、液体を吸収し膨潤したときの外径が吸引チャンネルの内径よりもやや大きくなる大きさの球状洗浄具を使用する。これにより、吸引チャンネル口19から球状洗浄具16を送り込むと吸引チャンネル18の内壁に密に接触しながら移動し、やがて内径の小さな鉗子チャンネル33に差し掛かると、球状洗浄具は水流の圧力若しくは水流と空気の圧力でその形を楕円形に変形し、鉗子チャンネル内の内壁に強く接触した状態で移動し、管路の先端側開口48から排出される。
その他、湾曲した部分、キズがある部分、段差がある部分も密着した状態で球状洗浄具は移動する。
前記球状洗浄部材17に収納する前記球状洗浄具16は、一度の洗浄に必要な数は1〜5個であり、3個使用すれば、ほとんど分泌物、血液、組織片などの汚染物を除去でき、ウイルス、細菌その他の各種微生物もぬぐい絡め取り除去することができるものである。
【0026】
前記洗浄部材17は、図3に示すように、3個の前記球状洗浄具16を保持する筒状部材34と、該筒状部材34を収容する収容ケース35とから構成され、前記筒状部材の内径は球状洗浄具16の外径よりやや小さく、前記筒状部材34に前記球状洗浄具16を挿入すると筒状部材34から容易に転がり出ることがないよう保持できる大きさの内径となっている。
また、前記筒状部材34を収容する収容ケース35は、円筒形で両端部が絞り込まれ、前記筒状部材34の内径とほぼ等しい内径に形成された上流側の接続部36と下流側の接続部36を両端に備えている。
この収容ケース35の両端の接続部36、36には、前記洗浄部材装着部21のチューブ状の前記上流側装着部21aおよび前記下流側装着部21bの内部に液密に接続できるようにシール用の環状リブ37、37が設けられている。
【0027】
図4及び図5は、前記洗浄部材17の異なる実施例を示すものであり、この洗浄部材17’は主に前記洗浄槽2の周辺部に設置して使用するものである。
該洗浄部材17’は、3つの球状洗浄具16を保持する3つの保持孔38を有するカートリッジ39と、該カートリッジを挿入するカートリッジ装着部40と、前記保持孔38と連通し、該保持孔38の球状洗浄具16に液体もしくは液体と空気を送給する3本の上流側流路41と、前記保持孔38と連通し、前記保持孔38から球状洗浄具16から内視鏡1の管路へ送り出す3本の下流側流路43とから構成され、さらに、3本の上流側流路41は集結して前記洗浄部材装着部21の前記上流側装着部21aに接続可能な流入側接続部42を備え、同様に3本の下流側流路43も集結し前記洗浄部材装着部21の前記下流側装着部21bに接続可能な流出側接続部44を備えている。
そして、前記3本の下流側流路43は、前記カートリッジ39より送り出される3個の球状洗浄具16の前記流出側接続部44への到達時間が異なるものとするために、各下流側流路43の流路長がそれぞれ異なるように、直線上、波形状、螺旋状としたものである。
尚、前記下流側流路43の形状はこれらに限られるものではなく、流路長を変えることができる形状であればよい。
【0028】
内視鏡1の洗浄には、蛋白質分解酵素、脂質分解酵素、またはアミン系蛋白除去剤などを含有する洗浄液、次亜塩素酸水などのアルカリ水等の洗浄液、その他の洗浄液を使用する。一般的には消毒液を使用すると、内視鏡に付着する有機物を凝固させ、その後の洗浄に支障をきたす場合があるので、上記洗浄液を主に使用するが、上記の球状洗浄具16と洗浄液を使用して洗浄工程を終了した後に、消毒液を内視鏡の管路内に送給し、また、内視鏡の外表面を消毒液に侵漬し、その後消毒液を洗い流しリンスすることにより、洗浄と消毒を行ってもよい。
【0029】
上記構成により、内視鏡1を洗浄する場合、初めに洗浄槽2に洗浄液供給手段4により洗浄液タンク3に貯留している洗浄液を供給し、洗浄槽2を洗浄液で満たし、その中に内視鏡全体を侵漬する。侵漬した状態でスポンジ、ガーゼ、布等を使用して内視鏡1の外表面の汚染物を除去し、また、水道水をシャワーヘッドから流出させるなどして濯ぎ洗浄をする。
内視鏡1の外表面の洗浄が完了した後、または、後述する内視鏡管路内の洗浄が終了した後、洗浄槽内の洗浄液を再利用する場合は排出管46からフィルターを47を通って再び洗浄液タンク3に戻す。洗浄槽内の洗浄液を破棄する場合は、排出ポンプ10により廃液送給管11から内視鏡洗浄装置Aの外に排出する。
【0030】
内視鏡1が内部に有する複数の管路内の洗浄は、前記洗浄槽2の周辺部に設置した接続ポート30の複数の送給路接続部31の一つに、前記洗浄部材装着部21の上流側装着部21aを用いて前記洗浄部材17の上流側の接続部36を接続し、また、該洗浄部材17の下流側の接続部36を洗浄部材装着部21の下流側装着部21bを用いて内視鏡1の基端側開口であるユニバーサルコード部20の吸引チャンネル口19に接続する。
次いで、液体注入装置8と空気注入装置22が制御部Dからの指令により、液体ポンプ6を作動し液体送給切換バルブ23が開かれ液体が洗浄液送給管7から送液管9を通り、送気管27と接続された送給管29を通り、前記接続ポート30の複数の送給路接続部31に送られ、また、液体と空気を同時に送給する場合は、空気送給切換バルブ28が開かれ、空気ポンプ25が作動し空気タンク26から送気管27を通って、送液管9と接続された送給管29を通り前記接続ポート30の複数の送給路接続部31に送られる。
【0031】
複数の送給路接続部31に送られた液体もしくは液体と空気は、送給路接続部31の一つから前記洗浄部材装着部21の上流側装着部21aを通って洗浄部材17に送給され、洗浄部材17の筒状部材34に収納されている球状洗浄具16を洗浄部材から送り出し、前記洗浄部材装着部21の下流側装着部21bを通ってユニバーサルコード部20の吸引チャンネル口19から吸引チャンネル18内に送り込まれる。
送り込まれた球状洗浄具16は、吸引チャンネル口19に送られるまでに液体を吸収して膨潤した状態にあり、液体もしくは液体と空気の圧力を受け、管路の内壁に密に接触した状態で移動する。球状洗浄具が吸引チャンネルから内径の小さい鉗子チャンネルに差しかかると球状洗浄具は水流及び空気の圧力を受け楕円形に変形して鉗子チャンネル内を内壁に強く密着した状態で移動し、やがて内視鏡の先端側開口48から排出される。排出された球状洗浄具16は、洗浄槽12の排水口に設けたネット等で回収され、使用した球状洗浄具16の個数だけ回収されたことを確認する。
【0032】
吸引チャンネル口19から球状洗浄具16を送り込む際、制御部Dにより洗浄対象となる内視鏡の種類、内視鏡の使用状態、汚染の程度等を勘案して、液体の注入量・注入時間・注入間隔を制御し、また、空気の注入圧力、注入時間、注入間隔を制御し、液体のみ又は液体と空気を同時に送給したりする。
例えば、洗浄液等の液体を45秒流しその後空気を15秒流すという操作を1セットとし、これを5回繰り返して行うと洗浄効果が高くなる。
上記1セットの洗浄操作のみでは、管路の内径が小さくなっている部分、管路内の屈曲部、キズ等により球状洗浄具が通過する際に障害となり球状洗浄具が停止したり、詰まる状態を呈することがある。しかし、複数セット繰り返して行うことによりほとんど管路内に詰まることがない。また、管路内に送給する空気の圧力を、通常内視鏡の管路内を乾燥させるために送り込む圧力のおよそ3倍位に高く設定しているので、球状洗浄具16を充分に管路内から押し出すことができる。
1セット目で球状洗浄具16が排出されたときは、2セット目以降は液体のみもしくは液体と空気が送給されることになる。
球状洗浄具16が排出されたか否かは流量センサー24で検出する流量が制御部に記憶している目詰まり判断用流量値を下回ったか否かで判別することができ、前記制御部Dから指令を出し、例えば第3セット以降は液体もしくは液体と空気の送給を停止することもできる。また、球状洗浄具16が管路内に詰まった旨を警報装置45により知らせることができる。
尚、吸引チャンネル18、鉗子チャンネル33以外の送気チャンネル、送液チャンネル等の管路32は、複数の送給路接続部31と接続アダプターで接続され、液体もしくは液体と空気が送給され洗浄がされる。
また、液体及び空気を送給する際には、内視鏡の操作部にある鉗子口等に蓋をし、液体及び空気が逃げないようにして行う。
【0033】
次に、前記洗浄部材として、図4及び図5に示す洗浄部材17’を使用した場合は、球状洗浄具16が収納されたカートリッジ39をカートリッジ装着部に挿入しセットする。その後前記実施例と同様の操作で、液体もしくは液体と空気が前記送給路接続部31から前記洗浄部材装着部21の上流側装着部21aを通って洗浄部材17’の流入側接続部42から3本の上流側流路41を通り、カートリッジ39の保持孔38に送球される。収納されている3個の球状洗浄具16は水流もしくは水流と空気の圧力を受け保持孔38から送り出され、3本の下流側流路43から流出側接続部44を通り前記洗浄部材装着部21の前記下流側装着部21bからユニバーサルコード部20の吸引チャンネル口19から吸引チャンネル18内に送り込まれる。
3個の球状洗浄具16は、それぞれ異なる流路長を有する3本の下流側流路43内を移動して行くので、直線状の流路と波型の流路と螺旋状の流路を通る球状洗浄具16は下流側流路43が集結する流出側接続部44に達する時間が異なるため、同時に3個の球状洗浄具16に液体もしくは液体と空気が送給されても、送り出された球状洗浄具は時間差を持って吸引チャンネル口19から送り込まれることになる。したがって、時間差を持って球状洗浄具を送り込むための装置を必要としない。
【0034】
本発明は、上記構成としたので、内視鏡の外表面と内視鏡内の複数の管路内を洗浄することができ、内視鏡内の複数の管路の内、吸引チャンネルと鉗子チャンネルは液体もしくは液体と空気により球状洗浄具が管路の内壁に密に接触した状態で移動するので、管路の内径の大小の差、段差、湾曲部があっても、隅々まで確実に洗浄でき、内視鏡の管路内壁に付着した粘液などの分泌物、血液、組織片など汚染物、ウイルス、細菌その他の各種微生物などを除去できる。
また、内視鏡の吸引チャンネル口から送り込まれた球状洗浄具と液体もしくは液体と空気は、内視鏡の基端側開口から先端側開口に向かって移動し、汚染の激しい内視鏡の先端部開口付近が最後に洗浄されるので効果的に洗浄がされ、さらに、内視鏡の体控内に挿入され汚染の激しい管路の先端側開口部に洗浄装置を取り付ける必要が無く、汚染の少ないユニバーサルコード部の吸引チャンネル口に管路内洗浄装置の洗浄部材装着部を接続して洗浄作業をするので、洗浄作業する人も汚染されることがなく、また、管路内洗浄装置も汚染されることなく管路内洗浄装置自体の洗浄を必要としないので使い勝手がよい。
また、内視鏡の管路と接続ポートとの間に洗浄部材を装着するのみでよいから洗浄作業が容易に行え、複数の球状洗浄具が同時に球状洗浄部材から送り出されても、時間差を持って内視鏡の管路内に送り込まれるので、内視鏡の管路内で球状洗浄具が詰まることがなく、万一球状洗浄具が管路内に詰まったときは警報装置によりその旨を知らせるので使い勝手もよい。
【実施例】
【0035】
図6は、洗浄方法と洗浄効果の試験結果を示す表であり、内視鏡の管路内に、
a.球状洗浄具を使用しないで、水のみを送給し洗浄した場合。
b.球状洗浄具3個を使用し、水及び空気を送給し洗浄した場合。
c.球状洗浄具を使用しないで、アミン系洗浄剤のみを送給し洗浄した場合。
c.球状洗浄具3個を使用し、アミン系洗剤及び空気を送給し洗浄した場合。
の管路の内壁の汚れ剥離度(蛋白除去率)、及び、管路の内壁に固着させた細菌の除去率を調べたものである。
なお、球状洗浄具としては、エチレンビニルアルコール共重合体とポリエチレンテレフタレートにより、多層分割型極細繊維でできた球状洗浄具3.5ミリ径のものを、内視鏡の管路3.2ミリ径のものに送り込んで測定した値である。
実験方法は、ISO 15883−4,4.3.5及び6.11.3の試験法に基づく試験で、図3に示す球状洗浄具16を3個収納した洗浄部材を使用した。
180センチの長さの内視鏡管路内を、温度30度±2、72時間〜96時間、1mL当たり、10の8乗の緑膿菌入り培養液をポンプにて循環させ、内視鏡管路(チューブ)内表面に緑膿菌のバイオフィルムを形成させ、該バイオフィルムを形成したチューブを120mm切り取り、これを6個に切り分け(20mm×6個)、それぞれ3個づつを蛋白剥離試験及び菌剥離試験に使用した。
尚、20mmに切られた3つのチューブは、それぞれ内視鏡の鉗子チャンネル(バイオプシチャンネル)、鉗子チャンネル口(バイオプシチャンネル口)と吸引チャンネル口(サクションチャンネル口)の間とユニバーサルコード部の吸引チャンネル部をカットし、バイオフィルムを形成させたチューブを繋ぎ、本発明の内視鏡洗浄装置にて洗浄工程を行い、蛋白及び細菌の減少率を検査した。
【0036】
その結果、図6の洗浄方法と洗浄効果の試験結果を示す表に記載したように、
球状洗浄具3個を水及び空気で圧送するだけで、洗浄後の固着菌量及び蛋白量が大幅に減少し、球状洗浄具3個をアミン系洗剤と空気で圧送した場合は、固着菌量及び蛋白量は検出限界以下となり、洗浄効果が極めて高いことが分かる。
したがって、検査に使用した内視鏡を再使用する場合、本発明の内視鏡洗浄装置を使用して洗浄すれば、二次感染を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
A…内視鏡洗浄装置
B…外表面洗浄装置
C…管路内洗浄装置
D…制御部
1…内視鏡
2…洗浄槽
3…洗浄液タンク
4…洗浄液供給手段
5…排出手段
6…液体ポンプ
8…液体注入装置
9…送液管
10…排出用液体ポンプ
11…廃液送給管
12…水道蛇口
13…フィルター
14…給水管
15…シャワーヘッド
16…球状洗浄具
17…洗浄部材
17’…異なる洗浄部材
18…吸引チャンネル
19…吸引チャンネル口(管路の基端側開口)
20…ユニバーサルケーブル部
21…洗浄部材装着部
21a…上流側装着部
21b…下流側装着部
22…空気注入装置
23…液体送給切換バルブ
24…流量センサー
25…空気ポンプ
26…空気タンク
27…送気管
28…空気送給切換バルブ
29…送給管
30…接続ポート
32…内視鏡の管路
33…鉗子チャンネル
34…筒状部材
35…収容ケース
36…接続部
37…環状リブ
38…保持孔
39…カートリッジ
40…カートリッジ装着部
41…上流側流路
42…流入側接続部
43…下流側流路
44…流出側接続部
45…警報装置
48…管路の先端側開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側開口および基端側開口を有する管路を内部に有する内視鏡を洗浄するための内視鏡洗浄装置であって、
該内視鏡洗浄装置は、前記内視鏡の外表面を洗浄する外表面洗浄装置と、前記内視鏡内の管路内を洗浄する管路内洗浄装置と、制御部とを備え、
前記外表面洗浄装置は、前記内視鏡を収容する洗浄槽と、洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、該洗浄液タンクから前記洗浄槽に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、洗浄後の洗浄液の排出手段とを備え、前記洗浄槽において洗浄液に浸漬された内視鏡の外表面を洗い流し洗浄可能となっており、さらに、
前記管路内洗浄装置は、球状洗浄具を収納した洗浄部材と、該洗浄部材を着脱可能に装着する洗浄部材装着部と、液体注入装置と、空気注入装置と、前記液体注入装置に接続された送液管と、前記空気注入装置に接続された送気管とを備え、前記洗浄部材装着部は、前記送液管および前記送気管と連通する上流側装着部と、前記内視鏡の前記管路の前記基端側開口に接続可能な接続部を有する下流側装着部とを備え、
前記制御部は、前記液体注入装置により注入される洗浄液等の液体の注入量、注入時間および注入間隔を制御する液体注入装置制御機能と、前記空気注入装置により注入される空気の注入圧力、注入時間および注入間隔を制御する空気注入装置制御機能とを備え、
前記内視鏡洗浄装置は、前記制御部により、前記液体注入装置及び空気注入装置から送り出される液体と空気を制御して前記洗浄部材装着部の前記上流側装着部に送給し、前記洗浄部材に収納されている前記球状洗浄具を前記下流側装着部を介して前記内視鏡の前記基端側開口より前記管路内に送り込み、前記球状洗浄具を前記管路内壁と接触した状態にて洗浄液等の液体もしくは液体と空気とともに移動させた後、前記先端側開口より排出させることにより、前記内視鏡の管路内を前記基端側開口側から前記先端側開口方向への洗浄を可能としたことを特徴とする内視鏡洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記内視鏡の管路内に、液体のみの供給と、液体と空気の同時送給とを選択して行う機能を備えている請求項1に記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記内視鏡の管路内に、液体のみの供給と、液体と空気の同時送給とおよび空気のみの供給を選択して行う機能を備えている請求項1に記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記球状洗浄具を前記管路内に送り込む際、前記液体を所定秒流し、その後空気を所定秒を流す操作を1セットとし、 これを複数回繰り返すように制御する請求項1ないし3のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記球状洗浄具を前記管路内に送り込む際、前記液体を30〜60秒流し、その後空気を10〜20秒を流す操作を1セットとし、これを3〜7回繰り返すように制御するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項6】
前記内視鏡洗浄装置は、前記液体注入装置の前記送液管に設けられた流量センサーを備え、前記制御部は、目詰まり判断用流量値を記憶しており、前記流量センサーにより検知される流量が前記目詰まり判断用流量値以下となったことが検知されたときに作動する警報装置を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項7】
前記内視鏡洗浄装置は、前記液体注入装置の前記送液管に設けられた流量センサーを備え、前記制御部は、目詰まり判断用流量値を記憶しており、前記流量センサーにより検知される流量が前記目詰まり判断用流量値以下となったことが検知されたとき、前記液体注入装置および前記空気注入装置の作動を停止する機能を備えている請求項1ないし6のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項8】
前記球状洗浄具は、多数の極細繊維により略球状に成形された多孔質体であって、前記液体により膨潤可能であるとともに膨潤時に洗浄対象となる内視鏡の管路の内径より大きな外径となり、前記管路内に注入される前記液体もしくは液体と空気により前記管路の内壁に接触した状態にて移動可能とした請求項1ないし7のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項9】
前記液体注入装置は、前記洗浄液タンクに貯留されている洗浄液を送給する液体ポンプと、前記洗浄液を送給する送液管と、送液管に設けられ、前記制御部により開閉制御される液体送給切換バルブと、液体の流量を計測する流量センサーとを備えるものである請求項1から8のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項10】
前記空気注入装置は、空気ポンプと圧縮空気を貯留する空気タンクと圧縮空気を送給する送気管と、該送気管に設けられ、前記制御部により開閉制御される空気送給切換バルブとを備えるものである請求項1から9のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項11】
前記洗浄部材は、複数の球状洗浄具を保持する筒状部材と、該筒状部材を収容する収容ケースとからなり、該収容ケースは、両端部に前記筒状部材の内径とほぼ等しい外径に形成された接続部を備え、該接続部には、前記洗浄部材装着部の前記上流側装着部および前記下流側装着部とを構成するチューブの内部に液密に接続可能なシール用の環状リブが設けられている請求項1ないし10のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項12】
前記洗浄部材は、複数の球状洗浄具を保持する複数の保持孔を有するカートリッジと、該カートリッジを挿入するカートリッジ装着部と、該カートリッジ装着部に挿入したカートリッジの複数の保持孔の各々と連通する複数の上流側流路と、該複数の上流側流路を集結し、かつ前記洗浄部材装着部の前記上流側装着部に接続可能な流入側接続部と、前記保持孔の各々と連通する複数の下流側流路と、該複数の下流側流路を集結し、かつ前記洗浄部材装着部の前記下流側装着部に接続可能な流出側接続部とを有する請求項1ないし10のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置。
【請求項13】
前記洗浄部材の前記複数の下流側流路は、前記カートリッジより流出する複数の球状洗浄具の前記流出側接続部への到達時間を異なるものとするために、各下流側流路は、流路長がそれぞれ異なるものとなっている請求項12に記載の内視鏡洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−104063(P2011−104063A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261317(P2009−261317)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(599048638)CBC株式会社 (9)
【Fターム(参考)】