説明

内視鏡用カメラモジュール及び内視鏡

【課題】カメラモジュールのプリズムの剥がれや伝送ケーブルの破断、接合部の剥離の発生を抑える。
【解決手段】プリズム取付枠40bにプリズム41を固着する。ケーブル連結具45の一端を伝送ケーブル44に固着する。ケーブル連結具45の他端に設けた係止爪47を、プリズム保持具40の取付筒部40aの先端面に係止させた後に、取付筒部40aとケーブル連結具45とを固着する。先端硬質部の内周面にイメージエリアセンサ42を近接させて、カメラモジュール10を先端硬質部内に配置する。先端硬質部の内周面とイメージエリアセンサ42との間の空きスペースに、ケーブル連結具45を配置することができる。ケーブル連結具45を空きスペースの範囲内で大きくすることができ、連結強度を確保し、プリズム41や接合部の剥がれ、伝送ケーブル44の破断を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡用カメラモジュール及び内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、例えば患者の体内に挿入される挿入部を有する。この挿入部は、先端から順に、先端硬質部、湾曲部、軟性部となっている。そして、先端硬質部の先端面には、観察窓、照明窓、鉗子出口、送気・送水ノズルが設けられている。また、先端硬質部の内面には、観察窓に対応した位置でカメラモジュールが、照明窓に対応した位置でライトガイドがそれぞれ取り付けられている。湾曲部は、複数の節輪ユニットを連結して構成されており、ワイヤ操作によって先端硬質部を所望の方向に向けることができる。軟性部は、被検体の所望の観察部位に先端硬質部を到達させるために、1m〜2m程度の長さとなっている。
【0003】
カメラモジュールは撮影レンズユニット及び撮像ユニットから構成されている。撮影レンズユニットは、ハウジング内に複数個のレンズを収納して構成されている。撮像ユニットは、撮影レンズユニットによって結像された光学画像を撮像信号に光電変換するCCDやCMOS等のイメージエリアセンサを有する。イメージエリアセンサはフレキシブル基板やサブ基板などの回路基板を介して伝送ケーブルに接続されている。また、フレキシブル基板やサブ基板にはイメージエリアセンサを駆動するために電子部品が実装されている。撮像ユニットからの信号は、フレキシブル基板やサブ基板、伝送ケーブルを介して画像処理装置に送られる。画像処理装置では信号を画像処理して、モニタに病変等の画像を表示する。
【0004】
撮像ユニットからの信号を画像処理装置に送る伝送ケーブルは、複合多芯ケーブルから構成されている。この伝送ケーブルは、挿入部の全長にわたって挿通されているので、挿入部がループされたり湾曲されたりする度に、強く押し引きされる。伝送ケーブルが引き込まれると、基板の接合部が剥離したり、伝送ケーブルが切断したりする場合がある。
【0005】
このような剥離や切断を回避するため、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1記載の内視鏡では、フレキシブル基板の一端側に伝送ケーブルが半田付けされるとともに、その半田付けされた伝送ケーブルを囲むようにフレキシブル基板がコの字状に折り曲げられ、その周囲をシールドテープと絶縁テープによって被覆され、この内部空間にエポキシ系の接着剤が充填されて変形しないように固められている。さらに、伝送ケーブルが固定された側の回路基板は、押さえ板を介して、固定ねじによって連結筒に固定されているため、伝送ケーブルが強く押し引きされても、回路基板は動かず、伝送ケーブルから回路基板に加わるねじれや傾きの力も、可撓性のある回路基板で吸収されて、イメージエリアセンサ及び対物光学系には伝わらない。
【0006】
特許文献2記載のカメラモジュールでは、フレキシブル基板と伝送ケーブルの接続部は封止材で覆い固められている。
【0007】
特許文献3記載のカメラモジュールは、イメージエリアセンサ及びフレキシブル基板の電子部品実装部を収容する補強枠を備え、この補強枠の内側に接着剤を充填している。さらに、フレキシブル基板に半田付けされた伝送ケーブルの先端部分と補強枠とを熱収縮チューブで覆い、この内側に接着剤を充填して密封している。
【0008】
特許文献4記載のカメラモジュールでは、撮影レンズの焦点距離を可変する機構を備え、通常観察及び拡大観察の間で焦点距離を切り換えることが可能になっている。このようなカメラモジュールでは、撮影レンズユニットと撮像ユニットとを分離可能に構成し、撮像ユニットのプリズム保持具を介して、撮影レンズユニットに固着し、一体化することで、カメラモジュールを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−261064号公報
【特許文献2】特開平9−146011号公報
【特許文献3】特開2008−118568号公報
【特許文献4】特開2004−283486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1記載のカメラモジュールでは、回路基板を固定ねじによって連結筒に固定するという煩雑な作業が必要となるという欠点がある。特許文献2記載のカメラモジュールでは、伝送ケーブルが押し引きされる力は、フレキシブル基板との接合部やフレキシブル基板に伝わる。フレキシブル基板に伝わった力は、伝送ケーブルとフレキシブル基板との半田付け部やフレキシブル基板とイメージエリアセンサとの接合部等にかかることになり、これらのいずれか弱いところに剥離や破損が生じる懸念がある。
【0011】
特許文献3記載のカメラモジュールでは、イメージエリアセンサを補強枠の内部に収納する関係上、イメージエリアセンサのサイズによって補強枠のサイズが影響を受ける。内視鏡への要求も高画質化、細径化、オートクレーブ対応など多様化しており、それに伴いイメージエリアセンサ及びその周辺の部品も多様化且つ複雑化している。イメージエリアセンサ及びその周辺部品に機能が増えることで大型化すると、これをすべて収納する補強枠も大型化するため、内視鏡挿入部の先端硬質部の径が太くなり、患者の負担が増加するという欠点がある。
【0012】
特許文献4記載のカメラモジュールでは、プリズム保持具を介しプリズムを固定し、この固定したプリズムに撮像素子や回路基板などを固着している。さらに、回路基板には伝送ケーブルが接続されている。このため、伝送ケーブルの接続部分に引っ張り力が作用し、断線の原因になる。また、プリズムとイメージエリアセンサとは全面で接着されているものの、プリズム保持具には撮影レンズユニットからの光をプリズムの入射面に入射させる関係で開口が形成されているため、全面接着は不可能になり、入射面の周縁部と保持具とが接着されるだけとなり、伝送ケーブルが引っ張られると、この部分からプリズムが剥がれるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、伝送ケーブルが強く押し引きされた場合でも、伝送ケーブル,フレキシブル基板,イメージエリアセンサ等の部品の破損やこれらの接合部や、プリズム保持具とプリズムの剥離の発生を抑えることができ、しかも先端硬質部の径を細くすることで患者への負担が軽減可能な内視鏡用カメラモジュール及び内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡用カメラモジュールは、撮影レンズ、前記撮影レンズを保持するハウジングを有する撮影レンズユニットと、前記撮影レンズからの撮影光が入射する入射面、反射面、出射面を有するプリズムと、前記ハウジングの一端に取り付けられる取付筒部、前記プリズムの入射面への入射光が通過する開口、前記プリズムの入射面の周縁部が固着されるプリズム固着面を有するプリズム保持枠と、前記プリズムの出射面に取り付けられるイメージエリアセンサと、前記イメージエリアセンサを駆動する回路基板と、前記回路基板に接続される素線及び前記素線を束ねて保護する外皮を有する伝送ケーブルと、前記イメージエリアセンサに近接して前記イメージエリアセンサと略平行に配置され、前記伝送ケーブルの前記外皮に一端が固着され、他端が前記取付筒部に取り付けられるケーブル連結具とを有することを特徴とする。
【0015】
なお、前記ケーブル連結具の他端には前記取付筒部の先端面に係止する係止爪が形成されていることが好ましい。また、前記ケーブル連結具の他端部は前記取付筒部に固着されることが好ましい。また、前記ケーブル連結具は、前記一端部から他端部に掛けて補強用の突条を有することが好ましい。前記ケーブル連結具は、前記補強部材の長手方向に直交する幅方向で折り返されたバネ部を有することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記内視鏡用カメラモジュールが取り付けられる円筒状の先端硬質部を有する内視鏡であって、前記先端硬質部内で前記円筒状内周面に前記イメージエリアセンサが近接して配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、伝送ケーブルの外皮に一端が固着され、他端がプリズム保持枠の取付筒部に取り付けられるケーブル連結具を有するから、内視鏡の挿入部が繰り返して曲げられて伝送ケーブルが引っ張られる場合でも、ケーブル連結具により引っ張り力がプリズム保持枠に伝達されるため、プリズムや回路基板などに引っ張り力が作用することがなく、プリズムの剥離や断線などが発生することがない。また、プリズムの出射面に取り付けられて、撮影光軸に交差する方向に配置されるイメージエリアセンサが、先端硬質部内で円筒状内周面に近接して配置されることにより、先端硬質部の内周面とイメージエリアセンサとの間の空きスペースに、ケーブル連結具を配置することができる。ケーブル連結具を空きスペースの範囲内で大きくすることができ、連結強度を確保し、プリズムや接合部の剥がれ、ケーブル破断を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】撮影レンズユニットを分解して示す斜視図である。
【図2】ハウジングを正面斜めから見た斜視図である。
【図3】撮影レンズユニットを分解して示す断面図である。
【図4】標準位置のカメラモジュールの要部断面図である。
【図5】拡大位置のカメラモジュールの要部断面図である。
【図6】ハウジングとプリズム保持枠とイメージエリアセンサ等の電装部品とを分解して示す斜視図である。
【図7】カメラモジュールの全体外観を示す斜視図である。
【図8】同側面図である。
【図9】ケーブル連結具を示す斜視図である。
【図10】別の実施形態のケーブル連結具を示す側面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線に沿うケーブル連結具の断面図である。
【図12】別の実施形態のケーブル連結具を示す側面図である。
【図13】電子内視鏡システムの構成を示す斜視図である。
【図14】内視鏡先端硬質部の断面図である。
【図15】電子内視鏡の先端硬質部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図3に示すように、撮影レンズユニット11は、ハウジング13と、これらハウジング13内に収納される撮影レンズ14、レンズ移動部15とを有する。
【0020】
撮影レンズ14は、第1固定レンズ21、第1可動レンズ22、第2可動レンズ23、第2固定レンズ24を光軸方向に順に配置して構成されている。各固定レンズ21,24、各可動レンズ22,23は、レンズ枠21a〜24aと、これらレンズ枠21a〜24aで保持される1枚または複数枚のレンズ本体21b〜24bとから構成される。
【0021】
レンズ移動部15は、カム軸25と、このカム軸25上で摺動移動する第1レンズ移動枠26及び第2レンズ移動枠27とを備える。このレンズ移動部15は、可動レンズ22,23を光軸方向に移動させ、撮影レンズ14の焦点距離を変えて変倍撮影を可能にする。
【0022】
ハウジング13は、第1筒部30と第2筒部31とを筒心方向に直交する方向で並べて連結部32で連結して構成されている。図2に示すように、第2筒部31の外径は第1筒部30の外径より少し小さくされており正面から見て8の字形になっている。第1筒部30には撮影レンズ収納穴33が形成されて、この穴33に撮影レンズ14が収納される。第2筒部31にはレンズ移動部収納穴34が形成されて、レンズ移動部15が収納される。図3に示すように、レンズ移動部収納穴34内には、係止リング34aが突出して形成されている。また、連結部32内には撮影レンズ収納穴33とレンズ移動部収納穴34を連結する摺動穴35が形成されている。
【0023】
図1及び図3に示すように、カム軸25は外周面に2個のカム溝25a,25bを有し、後端に軸心に沿ってワイヤ連結穴25c、後端部外周面に係止フランジ25dを有する。図4に示すように、ワイヤ連結穴25cには回転駆動用のワイヤ18の先端が固定される。ワイヤ18は保護チューブ19に入れられて手元操作部67内のモータ80(図13参照)に連結されている。モータ80は手元操作部67のシーソースイッチ79の操作によって正転または逆転するように図示しないコントローラにより駆動制御される。
【0024】
図1及び図3に示すように、カム軸25の先端には固定リング29が取り付けられている。この固定リング29により、図4に示すように、レンズ移動部収納穴34内でカム軸25が傾くことなく円滑に回転する。また、カム軸25の後端側の係止フランジ25dは、係止リング34aに係止するため、レンズ移動部収納穴34からカム軸25が抜け出すことがない。
【0025】
図1及び図3に示すように、第1レンズ移動枠26は、ガイド筒26aとレンズ枠22aとこれらを連結するアーム26bとを有し、これらが一体に形成されている。同様にして、第2レンズ移動枠27も、ガイド筒27a,レンズ枠23a,アーム27bを有し、一体に形成されている。第1レンズ移動枠26のガイド筒26aには第1係合ピン28aが取り付けられ、この係合ピン28aの先端は第1カム溝25aに入り込む。また、第2レンズ移動枠27のガイド筒27aには係合ピン28bが取り付けられ、この第2係合ピン28bは第2カム溝25bに入り込む。
【0026】
カム軸25がモータ80(図13参照)により正転または逆転すると、この回転量に応じてカム軸25が回転変位し、この回転変位によって各係合ピン28a,28bを介して、第1及び第2レンズ移動枠26,27がハウジング13内で光軸方向に移動する。
【0027】
図4及び図5は撮影レンズの焦点距離の切り換えを説明するもので、図4は標準位置を示し、図5は拡大位置を示している。拡大位置では、第1レンズ移動枠26が標準位置よりも前側に移動し、第2レンズ移動枠27が標準位置よりも後ろ側に移動する。
【0028】
第1及び第2レンズ移動枠26,27がカム軸25の回転により光軸方向で円滑に移動するように、本実施形態では、第1及び第2レンズ移動枠26,27のアーム26b,27bの厚みと、摺動穴の摺動案内面間距離の嵌合時の隙間が例えば3±3μmになるように、これら各部品を採寸して3±3μmの隙間内で組み合わさるもの同士を選択して、これらを組として使用する。
【0029】
図3に示すように、撮影レンズ収納穴33は、ハウジング13の先端から後端に向かって順に、第1固定レンズ21及び第1可動レンズ22を収納する第1収納部33a、第2可動レンズ23を収納する第2収納部33b、第2固定レンズ24を収納する第3収納部33cが形成されている。第2収納部33bと第3収納部33cとの間には、仕切りとなるリング突起33dが形成されている。第2収納部33bは第1収納部33aの内径よりも少し小さく形成されており、第2収納部33bと第3収納部33cとは同じ内径で形成されている。
【0030】
前記第2収納部33bには、第2反射防止筒37が収納される。第2反射防止筒37は筒状に形成されており、光軸方向にスリット37aを有する。このスリット37aに第2レンズ移動枠27のアーム27bが入り、筒内には、第2レンズ移動枠27のレンズ枠23aが入る。筒内径は、レンズ枠23aの外径よりも僅かに大きく形成されており、レンズ枠23aが筒部内を移動する際に、筒部内周面にレンズ枠23aが接触することはない。
【0031】
第1収納部33aには、第1反射防止筒36が収納される。第1反射防止筒36も、第2反射防止筒37と同様に形成されており、スリット36aを有する。第2反射防止筒37と異なっている点は後端に絞り板38が一体形成されている点である。この第1反射防止筒36は、第1収納部33aと第2収納部33bとの間の段差面33eによって、その後端面が係止し、収納時に位置決めされる。第1反射防止筒36内では、第1レンズ移動枠26のレンズ枠22aが移動する。
【0032】
図3に示すように、フレアの発生を防止するために、第1固定レンズ21のレンズ枠21a、第1可動レンズ22のレンズ枠22aを一体に有する第1レンズ移動枠26と、第2可動レンズ23のレンズ枠23aを有する第2レンズ移動枠27と、第2固定レンズ24のレンズ枠24a、及び第1及び第2反射防止筒36,37が黒染め加工されて、その表面に黒色層39が形成されている。黒染め加工は周知の方法のいずれを使用してもよく、例えば黒染め処理液を用いた化学処理にて黒色層39が形成される。なお、黒色層39は、僅かな厚みの断面として現れるため、厚みを付けた図示は省略してある。これに対して、ハウジング13は、複雑な形状を呈しおり、外径寸法が7mm×4mm×15mm程度の微小な部品であるので、所望の厚さの黒色層39が内周面に形成されないこともあり、黒染め加工は行わない。
【0033】
図6に示すように、第2筒部31はカム軸25を収納する関係で第1筒部30よりも長く形成されている。そして、互いの先端は揃えてあり、後端は、第1筒部30の後端よりも第2筒部31の後端が後方に突出した段違いに形成されている。この二つの筒部30,31による後端の段違い部分によって、第1筒部30の後端側にはスペースが生じる。このスペースを利用して、図7,図8に示すように、撮影レンズユニット11には撮像ユニット12が取り付けられ、カメラモジュール10が構成される。
【0034】
図6に示すように、ハウジング13の第1筒部30の外周面の後半分30aは、外周面の前半分30bよりも外径を僅かに小さく形成してあり、前半分30bと後半分30aとの間に段差面30cが形成される。この外周面の後半分30aには、撮像ユニット12のプリズム保持具40が取り付けられる。このように、第1筒部30の後端側のスペースに、プリズム保持具40を介して撮像ユニット12を配置することにより、全体として、カメラモジュール10をコンパクトに構成することができる。
【0035】
図7及び図8に示すように、撮像ユニット12は、プリズム保持具40、プリズム41、CCD型イメージエリアセンサ42、回路基板43、伝送ケーブル44、ケーブル連結具45、放熱板49及び配線類を封止する封止剤(図示省略)とを有する。なお、ハウジング13に形成される穴48は、反射防止筒36,37や第2固定レンズ24を撮影レンズ収納穴33内に固定するときの、接着剤注入やネジ挿入のためのものであり、必要に応じて設けられる。
【0036】
図6に示すように、プリズム保持具40は、取付筒部40aとプリズム取付枠40bとを有する。プリズム41は、直角に交差する入射面41a,出射面41bと、斜面からなる反射面41cと、両側面41dとの5面を有する直角プリズムから構成されている。プリズム取付枠40bは、撮影レンズ14からの入射光が通る開口部40c(図4参照)を有し、プリズム取付枠40bの後端面には位置決め片40d(図10参照)を有する。位置決め片40dは、プリズム41の側面41dが当接することにより、プリズム41の位置決めを行う。したがって、微小な部品同士を組み立てる際に、別個の位置規制治具などを用いる必要がなくなり、組み立てを簡単にしかも精度良く行うことができる。なお、位置決め片は必要に応じて複数個設けてもよく、この場合には位置決め精度を更に高めることができる。
【0037】
図7及び図8に示すように、プリズム41の出射面41bにはイメージエリアセンサ42が、プリズム41の斜面にはイメージエリアセンサ42を駆動するための回路基板43が接着剤にて取り付けられる。回路基板43は、フレキシブル配線回路基板52や結線(図示省略)などを介して、イメージエリアセンサ42と接続されている。回路基板43には、伝送ケーブル44の素線(信号線)44aが接続される。図6に示すように、伝送ケーブル44は、複数の素線44aと、これらを束ねてシールドするシールド線44bと、これを覆う外皮44cとから構成されている。なお、回路基板43はメイン基板の他に、複数のサブ基板を有していてもよい。
【0038】
イメージエリアセンサ42の外側には放熱板49が固着されている。この放熱板49の後端にはケーブル受け部49aが形成されており、このケーブル受け部49aは、伝送ケーブル44のシールド線に半田付けされる。放熱板49はイメージエリアセンサ42からの熱を伝送ケーブル44に逃がす。
【0039】
伝送ケーブル44の外皮44cには放熱板49のケーブル受け部49aと同じ側で、ケーブル連結具45の一端が接着剤により固着される。ケーブル連結具45は、取付枠部45aと連結板部45bとから構成される。取付枠部45aは、金属板の両側部を折り曲げて断面U字状に形成されている。この枠内には接着材が充填されて、伝送ケーブル44と一体化される。
【0040】
連結板部45bは、平板を折り曲げて中央付近にオフセット部46、先端に係止爪47が形成されている。オフセット部46は、イメージエリアセンサ42や放熱板49が当たることがないようなオフセット量で形成されている。係止爪47は90°に折り曲げて形成されており、先端縁は、ハウジング13の第1筒部30の外周面に沿うように円弧状に形成されている。係止爪47とオフセット部46との間は、取付筒部40aとの接着面となっており、この部分に接着材が充填されることで、ケーブル連結具45がプリズム保持具40に固着される。オフセット部46は、イメージエリアセンサ42と、プリズム保持具40の取付筒部40aの外周面との位置関係に応じて設けられるものであり、取付筒部40aの外周面からイメージエリアセンサ42を覆う放熱板49が外側に突出していない場合には、オフセット部46は不要で、平板状に構成してよい。
【0041】
ケーブル連結具45やイメージエリアセンサ42及び回路基板43に覆われた結線部や素線などを保護するために、これらの隙間には必要に応じて、封止剤(図示省略)が注入されて固化される。
【0042】
ケーブル連結具45は、イメージエリアセンサ42の両側方を覆うことがないように、板状に形成されている。したがって、イメージエリアセンサ42のサイズが変更される場合でも、サイズ変更によりイメージエリアセンサ42が大きくなっても連結板部45bに接触してしまうことがなくなり、イメージエリアセンサ42のサイズ変更などにも対応が可能となる。また、イメージエリアセンサ42を保護する放熱板49も枠状ではなく、板状であるので、イメージエリアセンサ42のサイズが変更される場合でも、現状の構造でサイズ変更が可能になる。
【0043】
上記実施形態では、取付筒部40aの先端面に係止爪47を係止させて固着したが、係止爪47を先端面に係止する代わりに、取付筒部40aに形成した段部や係止穴に係止爪を係止させてもよい。
【0044】
図10及び図11は、別の実施形態のケーブル連結具54を用いた撮像ユニット55を示すものである。このケーブル連結具54では、図9に示すケーブル連結具45に長手方向に補強リブとしての突条54aを突出して形成したものである。突条54aの断面形状は、図11に示すような円弧状の他に、三角状やその他の各種形状であってもよい。
【0045】
図12は、別の実施形態のケーブル連結具56を用いた撮像ユニット57を示すものである。このケーブル連結具56では、図9に示すケーブル連結具45のオフセット部46と取付枠部45aとの間にバネ部58を設けている。バネ部58は、連結板部45bの長手方向に直交する幅方向の折り曲げ線で折り曲げたものである。折り曲げ箇所は例えば4箇所とし、下方に向かう第1折り曲げ部58aと上方に向かう第2折り曲げ部58bとしているが、折り曲げ個数や折り曲げ形状は適宜変更してよい。この実施形態では、伝送ケーブル44が引っ張られることで、伝送ケーブル44とケーブル連結具56との間で曲げ力が作用してもこのバネ部58が曲げ力の干渉材または吸収材として作用するため、伝送ケーブル44とケーブル連結具56との間での曲げ力が緩和され、剥離や断線などが発生することが抑えられる。
【0046】
上記のように構成されるカメラモジュール10は、図13に示すように、電子内視鏡60の挿入部66に取り付けられる。電子内視鏡システム59は、電子内視鏡60、プロセッサ装置61、光源装置62を有する。電子内視鏡60は、患者の体腔内に挿入される可撓性の挿入部66と、挿入部66の基端部分に連設された手元操作部67と、プロセッサ装置61および光源装置62に接続されるコネクタ69aと、手元操作部67、コネクタ69a間を繋ぐユニバーサルコード69とを有する。
【0047】
挿入部66は、先端から順に、先端硬質部66a、湾曲部66b、及び軟性部66cとなっている。先端硬質部66aの断面形状を示す図14において、先端硬質部66aは、硬質樹脂製の先端部本体63に、軟質樹脂製の先端キャップを被せ、先端部本体63とこれに続く湾曲部66bの金属製先端筒86をチューブにより被覆して構成される。
【0048】
先端部本体63内には、本発明のカメラモジュール10の他に、ライトガイド82a,82b、鉗子チャンネル83、送気チューブ84、送水チューブ85が取り付けられている。カメラモジュール10は、先端部本体63に形成した取り付け穴にハウジング13が入り込み、ネジ止めされることにより先端部本体63に固定される。カメラモジュール10のイメージエリアセンサ42は、先端部本体63の内周面、正確には湾曲部66bの金属製先端筒86の内周面に近接するように配置される。これにより、ライトガイド82a,82bの間に撮影レンズユニットが配置され、カム軸駆動用のワイヤ18は送気チューブ84とライトガイド82bとの間に配置されるので、先端硬質部66a内で、各内蔵物の間の隙間を少なくして、これら内蔵物を効率良く配置することができる。
【0049】
特に、先端筒86の円筒内でイメージエリアセンサ42が外側近くに配置されるため、イメージエリアセンサ42と先端筒86の内周面86aとの間には、隙間が形成されて、この隙間部分がデッドスペース87となる。本発明では、このデッドスペース87に、ケーブル連結具45が配置されるため、デッドスペース87を有効利用することができ、その分だけ、挿入部66の細径化が図れる。また、デッドスペースの空間を利用して、第2及び第3実施形態のような突条54aやバネ部58を形成することで、ケーブル連結具54,56を補強したり緩衝材として利用することができる。
【0050】
湾曲部66bは各節輪がピン結合されたユニットを有し、全体が湾曲する。湾曲部66bは、手元操作部67のアングルノブ70の回転操作により、上下左右方向に任意角度で湾曲する。これにより、先端硬質部66aを体腔内の所望の方向に向けて、体腔内の観察部位をカメラモジュール10で撮像することができる。軟性部66cは、手元操作部67と湾曲部66bとの間を細径で長尺状に繋ぐ部分であり、可撓性を有している。
【0051】
図15に示すように、先端硬質部66aの先端面には、鉗子出口72の他に、観察窓73、照明窓74a,74b、及び送気・送水ノズル75が設けられる。観察窓73には、本発明のカメラモジュール10のレンズ21が配置され、照明窓74a,74bにはライトガイド82a,82bが連結され、送気・送水ノズル75には送気チューブ84、送水チューブ85が連結される。また、必要に応じて、ウォータジェット噴き出し口やその他のノズルなどが設けられる。
【0052】
手元操作部67は、アングルノブ70、送気・送水ボタン76、吸引ボタン77、レリーズボタン78、ズーム操作用のシーソースイッチ79などの各種操作部材を備えている。アングルノブ70は、回転操作によって挿入部66の先端硬質部66aを上下左右方向に湾曲させる。送気・送水ボタン76は、押圧操作によって送気・送水ノズル75からエアーまたは水を噴出させる。吸引ボタン77は、押圧操作によって、体内の液体や組織等の被吸引物を鉗子出口72から吸引する。レリーズボタン78は、押圧操作によってカメラモジュール10により観察画像を静止画記録する。シーソースイッチ79は、モータ80を正転または逆転させて、この回転をワイヤ18を介してカム軸25に伝達し、撮影レンズ14を標準及び拡大撮影に切り換える。
【0053】
プロセッサ装置61は、光源装置62と電気的に接続され、電子内視鏡システム59の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置61は、ユニバーサルコード69や挿入部66内に挿通された伝送ケーブル44を介して電子内視鏡60に給電を行い、先端硬質部66aのカメラモジュール10の駆動を制御する。また、プロセッサ装置61は、伝送ケーブル44を介してカメラモジュール10からの信号を受信し、各種処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置61にはモニタ81が接続されている。モニタ81は、プロセッサ装置61からの画像データに基づき観察画像を表示する。
【0054】
なお、上記実施形態では、撮影レンズユニット11として、可動レンズ22,23を2個用いる例で説明したが、可動レンズは1個以上であればよい。また、可動レンズを有し、変倍や合焦を行うものに代えて、固定焦点の撮影レンズユニットに本発明を適用してもよい。また、上記実施形態では、本発明を医療用の内視鏡に適用する例で説明をしたが、本発明を工業用の内視鏡に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 カメラモジュール
11 撮影レンズユニット
12 撮像ユニット
40 プリズム保持具
41 プリズム
42 CCD型イメージエリアセンサ
44 伝送ケーブル
45,54,56 ケーブル連結具
59 電子内視鏡システム
60 内視鏡
66 挿入部
67 手元操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズ、前記撮影レンズを保持するハウジングを有する撮影レンズユニットと、
前記撮影レンズからの撮影光が入射する入射面、反射面、出射面を有するプリズムと、
前記ハウジングの一端に取り付けられる取付筒部、前記プリズムの入射面への入射光が通過する開口、前記プリズムの入射面の周縁部が固着されるプリズム固着面を有するプリズム保持枠と、
前記プリズムの出射面に取り付けられるイメージエリアセンサと、
前記イメージエリアセンサを駆動する回路基板と、
前記回路基板に接続される素線及び前記素線を束ねて保護する外皮を有する伝送ケーブルと、
前記イメージエリアセンサに近接して前記イメージエリアセンサと略平行に配置され、前記伝送ケーブルの前記外皮に一端が固着され、他端が前記取付筒部に取り付けられるケーブル連結具とを有することを特徴とする内視鏡用カメラモジュール。
【請求項2】
前記ケーブル連結具の他端には前記取付筒部の先端面に係止する係止爪が形成されていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項3】
前記ケーブル連結具の他端部は前記取付筒部に固着されることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項4】
前記ケーブル連結具は、前記一端部から他端部に掛けて補強用の突条を有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項5】
前記ケーブル連結具は、前記補強部材の長手方向に直交する幅方向で折り返されたバネ部を有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の内視鏡用カメラモジュールが取り付けられる円筒状の先端硬質部を有する内視鏡であって、
前記先端硬質部内で前記円筒状内周面に前記イメージエリアセンサが近接して配置されていることを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−75026(P2013−75026A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216676(P2011−216676)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】