説明

内視鏡用清掃具

【課題】内視鏡の挿入部の先端面を迅速に清掃することができる内視鏡用清掃具を提供すること。
【解決手段】挿入部Sをその先端部から挿入可能な開口部2aを有する本体部材2と、開口部2aから挿入された挿入部Sの先端面S1と当接可能な被当接部材3と、被当接部材3と挿入部Sの先端面S1とを当接させた状態で挿入部Sを本体部材2にさらに挿入することに応じて、この挿入方向に被当接部材3が移動するとともに前記挿入方向と直交する方向に被当接部材3が挿入部Sの先端面S1に摺動するように、被当接部材3を本体部材2に支持させる支持機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を清掃するための用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示される腹腔鏡のように、体内に挿入される内視鏡が知られている。
【0003】
この種の内視鏡は、操作部と、この操作部から延びるとともに体内に挿入される挿入部とを備えている。前記挿入部は、その先端面が向く方向を撮像することが可能な撮像部材とを有している。
【0004】
前記内視鏡を体内に挿入した場合、体内の体液等が挿入部の先端面に付着することや、体内の湿度及び体内と体外との温度差に応じて挿入部の先端部に曇りが生じることにより、撮像部材の視野が悪くなる場合がある。
【0005】
このような場合、医療従事者は、挿入部を体外に引き抜いて、当該挿入部の先端面をガーゼで拭いたり、挿入部の先端部をお湯に浸けることによって、挿入部の先端面の汚れや曇りを取り除いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−269403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、挿入部の先端部をガーゼで拭く場合、医療従事者は、挿入部とガーゼとを別々の手に持って、両者を複数回擦り付けるという作業を要するため、作業が煩雑となり、当該作業を迅速に行なうことが難しかった。
【0008】
また、挿入部の先端部をお湯に浸ける場合においても、挿入部の清掃に先立ってお湯を準備することを要するため、内視鏡の清掃作業を迅速に行うことが難しかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、内視鏡の挿入部の先端面を迅速に清掃することができる内視鏡用清掃具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、所定方向に延びるとともにその先端面の向く方向を撮像可能な挿入部を有する内視鏡を清掃するための内視鏡用清掃具であって、前記挿入部をその先端部から挿入可能な開口部を有する本体部材と、前記開口部から挿入された前記挿入部の先端面と当接可能な被当接部材と、前記被当接部材と挿入部の先端面とを当接させた状態で前記挿入部を前記本体部材にさらに挿入することに応じて、この挿入方向に被当接部材が移動するとともに前記挿入方向と直交する方向に前記被当接部材が前記挿入部の先端面に対して摺動するように、前記被当接部材を前記本体部材に支持させる支持機構とを備えていることを特徴とする内視鏡用清掃具を提供する。
【0011】
本発明によれば、支持機構を備えているので、挿入部を本体部材の内部に挿入することによって、この挿入方向と直交する方向に、挿入部の先端面に対して被当接部材を摺動させることができる。そのため、内視鏡を操作する医療従事者は、挿入部を体内から引き出すとともに、この挿入部を本体部材に挿入するだけの操作で、当該挿入部の先端面の拭き清掃を行うことができる。
【0012】
したがって、本発明によれば、内視鏡の挿入部の先端面を迅速に清掃することができる。
【0013】
前記内視鏡用清掃具において、前記支持機構は、前記被当接部材を保持する保持部材と、前記本体部材に設けられ、前記保持部材に挿入方向への力が与えられることに応じて前記保持部材が本体部材に対して前記挿入方向に変位するとともに前記挿入方向と平行する軸回りに回転するように、前記保持部材を支持する支持部とを備えていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、被当接部材を保持する保持部材を本体部材に対して回転させることにより、挿入部の先端面と被当接部材とを摺動させることができる。
【0015】
前記内視鏡用清掃具において、前記保持部材と本体部材との間に設けられた付勢部材をさらに備え、前記保持部材は、前記付勢部材の付勢力によって前記開口部に向けて変位した初期位置と、前記付勢力に抗して前記本体部材に押し込まれた押込位置との間で変位可能となるように前記本体部材に支持されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、付勢部材によって保持部材が初期位置に向けて付勢されているので、挿入部を挿入して保持部材を押込位置まで押し込むことにより挿入部の先端面の拭き清掃が終了した後、この挿入部を本体部材から抜き取ることにより、保持部材が初期位置に復帰して、挿入部を清掃可能な状態に自動的に復帰する。したがって、この構成によれば、挿入部を本体部材に抜き差しすることにより、挿入部の拭き清掃を何度も連続して行うことができ、挿入部の先端面の清掃をより迅速にすることが可能となる。
【0017】
前記内視鏡用清掃具において、前記保持部材は、前記挿入部の先端面と当接する前記被当接部材の当接面が前記挿入方向と直交する面に対して傾斜可能となるように、前記被当接部材を保持することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、挿入部の長手方向と直交する平面に対して先端面が傾斜した、いわゆる、斜視型内視鏡の挿入部も有効に清掃することができる。つまり、前記構成によれば、被当接部材が挿入部の先端面の傾斜角度に合わせて傾斜し、当該挿入部の先端面と被当接部材の当接面とを密着させることができるため、この状態で、挿入部の先端面と被当接部材とを摺動させることによって挿入部の先端面を有効に清掃することができる。
【0019】
前記内視鏡用清掃具において、前記保持部材は、前記本体部材に回転可能に支持された第一部材と、この第一部材に支持されているとともに前記被当接部材を保持する第二部材をさらに備え、前記第二部材は、前記挿入方向の軸回りに前記第一部材と一体に回転可能となり、かつ、前記挿入方向と直交する面に対して傾斜可能となるように、前記第一部材に支持されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、挿入部の先端面と被当接部材の当接面とを密着させた状態のまま、当該先端面と当接面とを相互に回転させることが可能となる。
【0021】
前記内視鏡用清掃具において、前記挿入部の先端面を曇り止めするための曇り止め用液体を含浸可能な含浸部材をさらに備えていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、清掃の終了した挿入部の先端面に対して曇り止めを施すことができる。
【0023】
前記内視鏡用清掃具において、前記含浸部材は、白色の部材からなることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、内視鏡の撮像範囲内に含浸部材を配置することにより、内視鏡のホワイトバランスを調整することが可能となる。
【0025】
前記内視鏡用清掃具において、前記被当接部材は、前記本体部材に着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、挿入部を何度も清掃して、清掃能力の低下した被当接部材を新しい被当接部材に交換することが可能となる。また、この構成によれば、被当接部材を消耗品とし、被当接部以外の部分を再使用する構成とすることが可能となるため、ランニングコストを低減することができる。
【0027】
前記内視鏡用清掃具において、前記被当接部材は、少なくとも前記挿入部と当接する部分がマイクロファイバからなることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、被当接部材の挿入部と当接する部分がマイクロファイバからなるため、挿入部の先端面をより確実に清掃することが可能となる。
【0029】
ここで、マイクロファイバとは、断面の直径が8μm以下である極細の合成繊維である。この繊維断面の形状が鋭角の部分を有し又は多角形とされているため、マイクロファイバは、極めて細かい塵や汚れを有効に取り込む性能を発揮する。
【0030】
前記内視鏡用清掃具において、前記本体部材に設けられ、所定の連結対象物と前記本体部材とを着脱可能に連結する連結部材をさらに備えていることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、例えば、内視鏡用清掃具をオイフや手術着に連結しておくことにより、内視鏡用清掃具を紛失することなく、常に治療場所の近く置いておくことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の先端面を迅速に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る内視鏡用清掃具を示す斜視図である。
【図2】図1の内視鏡用清掃具の側面断面図である。
【図3】図2の保持部材を拡大して示す斜視図である。
【図4】図2の保持部材及び傾動部材を拡大して示す側面断面図である。
【図5】図2の受け部材及び傾動部材を拡大して示す斜視図である。
【図6】図5の受け部材及び傾動部材を示す平面図である。
【図7】保持部材が押込位置とされた状態を示す図2相当図である。
【図8】斜視型内視鏡を清掃している状態を示す図7相当図である。
【図9】図1の内視鏡清掃具に連結部材をさらに設けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る内視鏡用清掃具を示す斜視図である。図2は、図1の内視鏡用清掃具の側面断面図である。
【0036】
図1及び図2を参照して、内視鏡用清掃具1は、上部に開口部2aを有する本体部材2と、本体部材2内に設けられ、前記開口部2aから挿入された内視鏡の挿入部Sの先端面S1(図7参照)と当接可能な被当接部材3と、この被当接部材3を前記本体部材2内に取り付けるための取付部材4とを備えている。
【0037】
本体部材2は、合成樹脂からなり、特定の方向に延びる有底の筒状部材である。以下、本体部材2の延びる方向を上下方向として説明する。
【0038】
具体的に、本体部材2は、有底容器状の下部ケース5と、この下部ケース5の上部に連結された上部ケース6とを備えている。
【0039】
下部ケース5は、円筒状の胴体部5aと、この胴体部5aの下部を塞ぐ底部5bと、この底部5bを浮かせた状態で下部ケース5を自立させることが可能となるように前記胴体部5aから下に延びるスカート部5cとを備えている。前記底部5bの下面には、曇り止め用の液体を含浸可能な含浸部材7が取り付けられている。
【0040】
含浸部材7は、下部ケース5を所定の載置面に立たせた状態で、当該載置面と接触しないような厚み寸法を有している。つまり、前記スカート部5cにより下部ケース5を自立させた状態で形成された載置面と底部5bとの間の上下寸法よりも含浸部材7の厚み寸法が小さく設定されている。したがって、曇り止め用の液体が載置面に付着するのを抑制しつつ、下部ケース5を上下逆さまの姿勢として内視鏡の挿入部Sを含浸部材7にこすり付けることにより、挿入部Sの先端面S1に曇り止めを施すことができる。
【0041】
また、含浸部材7は、白色の部材(例えば、スポンジ)からなる。したがって、内視鏡の撮像範囲内に含浸部材を配置した状態で、内視鏡のホワイトバランスを調整することが可能となる。
【0042】
前記胴体部5aは、その内側面に形成された雌ねじ部(支持部)8と、その上部外側面に形成された雄ねじ部9とを備えている。
【0043】
上部ケース6は、前記下部ケース5の雌ねじ部9に上から螺合されている。具体的に、上部ケース6は、円筒状の胴体部6aと、この胴体部6aの上部を塞ぐように設けられた天部6bとを備えている。胴体部6aは、その内側面に設けられ、前記雌ねじ部9に螺合可能な雌ねじ部10を備えている。底部6bには、当該天部6bを上下方向に貫通する孔が形成されることにより、前記開口部2aが形成されている。
【0044】
被当接部材3は、前記本体部材2の開口部2aに上から挿入された内視鏡の挿入部Sの先端面S1(図7参照)と当接可能となるように、前記開口部2aの直下に配置されている。具体的に、被当接部材3は、マイクロファイバからなり、前記挿入部Sの先端面S1の全範囲に当接可能となる面積を有する円板状に形成されている。ここで、マイクロファイバとは、断面の直径寸法が8μm以下である極細の合成繊維である。この繊維断面の形状が鋭角の部分を有し又は多角形とされているため、マイクロファイバは、極めて細かい塵や汚れを有効に取り込む性能を発揮する。
【0045】
取付部材4は、前記被当接部材3を保持するための保持部材14と、この保持部材14を上に付勢するコイルばね16とを備えている。
【0046】
図3は、図2の保持部材を拡大して示す斜視図である。図4は、図2の保持部材及び傾動部材を拡大して示す側面断面図である。図5は、図2の受け部材及び傾動部材を拡大して示す斜視図である。図6は、図5の受け部材及び傾動部材を示す平面図である。
【0047】
図2〜6を参照して、保持部材14は、上下方向に延びる筒状に形成された筒部材18と、この筒部材18の内側に下から挿入された受け部材19と、これら筒部材18及び受け部材19(これらが本実施形態の第一部材に相当する)に支持されているとともに前記被当接部材3を保持する傾動部材(第二部材)15とを備えている。
【0048】
筒部材18は、上又は下への移動に応じて上下方向の軸回りに回転するように前記下部ケース5内に収納されている。具体的に、前記筒部材18の外側面には、前記下部ケース5の雌ねじ部8と螺合可能な雄ねじ部17が形成されている。この雄ねじ部17が雌ねじ部8に沿って移動することにより、保持部材14が上下方向の軸回りに回転しながら上下動することになる。つまり、本実施形態では、保持部材14を押し下げることに応じて、この押し下げ方向に被当接部材3が移動するとともに押し下げ方向と平行する軸回りに被当接部材3が回転するように被当接部材3を本体部材2に支持させる支持機構が、保持部材14と下部ケース5の雌ねじ部8とによって実現されている。
【0049】
また、前記筒部材18には、その上部と、これより大きな直径を有する下部とを繋ぐ肩部18aが形成されている。そして、筒部材18は、前記肩部18aが前記上部ケース6の天部6bと当接する上位置(初期位置:図2の位置)から下部ケース5の底部5b側に押し込まれた下位置(押込位置:図7参照)までの間で上下動可能となるように本体部材2内に収納されている。そして、筒部材18は、前記コイルばね16によって上方に付勢されているため、外力が付与されていない状態では前記初期位置に押し上げられている。
【0050】
さらに、筒部材18には、前記本体部材2の開口部2aと同軸に配置され小径孔20と、この小径孔20の下に配置されるとともに当該小径孔20よりも大きな直径寸法とされた大径孔21とが同軸に形成されている。大径孔21を取り囲む筒部材18の内側面には、雌ねじ部22が形成され、この雌ねじ部22によって受け部材19を螺合可能となっている。
【0051】
図4〜図6に示すように、受け部材19は、前記雌ねじ部22に螺合可能な雄ねじ部23が形成された本体部24と、この本体部24上に立設された4本の支柱部25と、本体部24の上面に形成された球状凹面26とを備えている。
【0052】
球状凹面26は、傾動部材15が上下方向と直交する平面に対して傾斜可能となるように、当該傾動部材15の下面を支持するようになっている。具体的に、球状凹面26は、半球状に凹まされた本体部24の上面からなり、半球状に凸となる傾動部材15の球状凸部27を当該球状凸部27に沿って摺動可能となるように下から支持している。
【0053】
各支柱部25は、受け部材19に対して傾動部材15が上下方向と平行な軸回りに回転するのを阻止するためのものである。具体的に、各支柱部25の間には、傾動部材15から突出する4本の回り止め片28がそれぞれ挿入されており、これら各回り止め片28と各支柱部25とが当接することによって、受け部材19と傾動部材15との相対的な回転が阻止される。つまり、受け部材19と傾動部材15とは、一体になって回転する。
【0054】
傾動部材15は、前記被当接部材3を保持する円板状の本体部29と、この本体部29の下面から下に突出する前記球状凸部27と、前記本体部29の周面から側方に突出する4本の前記回り止め片28とを備えている。上述のように、傾動部材15は、各回り止め片28が受け部材19の各支柱部25の間に挿入された状態で、球状凸部27が受け部材19の球状凹面26上に載置されることにより、上下方向と平行する軸回りの回転が規制された状態で、上下方向と直交する平面に対して傾斜することが可能となるように、受け部材19に支持されている。
【0055】
図2に示すように、コイルばね16は、前記下部ケース5の底部5bの上面と、保持部材14(筒部材18)の下面との間に縮められた状態で配設されている。したがって、このコイルばね16によって押し上げられた保持部材14は、外力が付与されていない状態において、図2に示す初期位置に押し上げられている。一方、保持部材14に押し下げる方向の力を与えると、当該保持部材14は、コイルばね16の付勢力に抗して下方に移動しながら、前記雌ねじ部8に沿って回転することになる。
【0056】
以下、内視鏡の挿入部Sの先端面S1を清掃する際の内視鏡用清掃具1の動作について説明する。
【0057】
まず、内視鏡の挿入部S(図7参照)を患者の体内から抜き出し、図2に示す初期位置にある内視鏡用清掃具1の開口部2aに挿入する。これにより、挿入部Sの先端面S1(図7参照)と被当接部材3の上面とが当接する。
【0058】
この状態からさらに挿入部Sを挿入すると、保持部材14は、コイルばね16の付勢力に抗して下方に移動しながら回転することになる。このとき、挿入部Sは、医療従事者の手で把持され、回転することはないので、当該挿入部Sに対して被当接部材3が相対的に回転(摺動)することとなり、挿入部Sの先端面S1が被当接部材3によって拭き清掃されることになる。
【0059】
そして、さらに挿入部Sを挿入し、図7に示すように、保持部材14が押込位置まで押し込まれると、医療従事者は、挿入部Sを内視鏡用清掃具1から抜き出す。これにより、保持部材14に対する押込力が解除されるため、コイルばね16の付勢力によって保持部材14は、図2に示す初期位置に復帰する。
【0060】
なお、本実施形態に係る内視鏡用清掃具1は、傾動部材15を備えているので、図8に示すように、挿入部Sの軸線と直交する平面に対して傾斜した先端面S2を有する斜視型内視鏡の清掃も有効に行うことができる。つまり、前記内視鏡用清掃具1は、先端面S2の傾斜角に合わせて被当接部材3の上面を傾斜させることができるため、斜視型内視鏡の先端面S2と被当接部材3の上面とを相密着させた状態で、当該被当接部材3と先端面S2とを相対的に摺動(回転)させることが可能となる。
【0061】
上記のように挿入部Sの先端面S2を清掃した後、当該先端面Sの表面を含浸部材7に擦り付けることにより、当該先端面Sに曇り止めを施すことができる。このとき、含浸部材7が白色の部材からなるため、曇り止めを施した直後に、当該含浸部材7を撮像範囲に配置した状態で、内視鏡のホワイトバランスを調整することができる。
【0062】
以上説明したように、前記実施形態によれば、保持部材14及び下部ケース5の雌ねじ部8を有しているので、挿入部Sを本体部材2の内部に挿入することによって、この挿入方向(上下方向)と直交する方向に、挿入部Sの先端面S1、S2に対して被当接部材3を摺動させることができる。そのため、内視鏡を操作する医療従事者は、挿入部Sを体内から引き出すとともに、この挿入部Sを本体部材2に挿入するだけの操作で、当該挿入部Sの先端面S1の拭き清掃を行うことができる。
【0063】
したがって、前記実施形態によれば、内視鏡の挿入部Sの先端面S1を迅速に清掃することができる。
【0064】
前記実施形態のように、保持部材14を雌ねじ部8によって回転させる構成によれば、被当接部材3を保持する保持部材14を回転させることによって、挿入部Sの先端面S1と被当接部材3とを摺動させることができる。
【0065】
前記実施形態のように、コイルばね16を設けた構成によれば、コイルばね16によって保持部材14が初期位置に向けて付勢されているので、挿入部Sを挿入して保持部材14を押込位置まで押し込むことにより、挿入部の先端面の拭き清掃が終了した後、この挿入部Sを本体部材2から抜き取ることにより、保持部材14が初期位置に復帰して、挿入部Sを清掃可能な状態に自動的に復帰する。したがって、この構成によれば、挿入部Sを本体部材2に抜き差しすることにより、挿入部Sの拭き清掃を何度も連続して行うことができ、挿入部Sの先端面S1の清掃をより迅速にすることが可能となる。
【0066】
前記実施形態のように、被当接部材3の当接面が上下方向と直交する面に対して傾斜可能となるように、保持部材14が被当接部材3を保持する構成によれば、挿入部Sの長手方向と直交する平面に対して先端面が傾斜した、いわゆる斜視型内視鏡の挿入部Sも有効に清掃することができる。つまり、前記構成によれば、被当接部材3が挿入部Sの先端面S1の傾斜角度に合わせて傾斜し、当該挿入部Sの先端面S1と被当接部材3の当接面とを密着させることができるため、この状態で、挿入部Sの先端面S1と被当接部材3とを摺動させることによって挿入部Sの先端面S1を有効に清掃することができる。
【0067】
前記実施形態のように、受け部材19と傾動部材15とを備えた構成によれば、挿入部Sの先端面S1と被当接部材3の当接面とを密着させた状態のまま、当該先端面S1と当接面とを相互に回転させることができる。
【0068】
前記実施形態のように、含浸部材7を備えた構成によれば、清掃の終了した挿入部Sの先端面に対して曇り止めを施すことができる。
【0069】
前記実施形態のように、含浸部材7を白色の部材により構成した場合、内視鏡の撮像範囲内に含浸部材7を配置することにより、内視鏡のホワイトバランスを調整することができる。したがって、被当接部材3により挿入部Sの先端面S1を清掃し、含浸部材7により先端面S1の曇り止めを施した直後に、ホワイトバランスの調整を行うことができ、その後の撮像を良好な条件で行うことが可能となる。
【0070】
前記実施形態のように、前記被当接部材3をマイクロファイバにより構成することにより、挿入部Sの先端面S1を確実に清掃することが可能となる。
【0071】
なお、前記実施形態では、被当接部材3の全体をマイクロファイバにより構成した例について説明したが、被当接部材3のうち、少なくとも挿入部Sの先端面S1と当接部分をマイクロファイバにより構成することにより、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、前記実施形態では、被当接部材3を傾動部材15に固定した構成について説明したが、前記被当接部材3を保持部材14に対して着脱可能に構成することが好ましい。このようにすれば、挿入部Sを何度も清掃して、清掃能力の低下した被当接部材3を新しい被当接部材3に交換することが可能となる。また、この構成によれば、被当接部材3を消耗品とし、被当接部材3以外の部分を再使用する構成とすることが可能となるため、ランニングコストを低減することができる。
【0073】
なお、前記本体部材2をオイフや手術着に着脱可能に連結するための連結部材30をさらに備えていることが好ましい。
【0074】
図9は、連結部材30の構成を示す概略図である。
【0075】
図9を参照して、連結部材30は、前記本体部材2の外側面に形成されたアーチ状の被連結部31に取り付けられている。具体的に、連結部材30は、前記被連結部31に結ばれた紐部材32と、この紐部材32の先端部に設けられたクリップ33とを備えている。
【0076】
クリップ33は、一対の挟持刃33a及び33bと、これら挟持刃33a、33bを繋ぐ操作部33cとを一体に備えている。
【0077】
操作部33cを矢印Y1に示すように押し縮めると、矢印Y2に示すように挟持刃33aと挟持刃33bとが互いに離間する。一方、操作部33cの操作を止めると、当該操作部33cが弾性的に形状復帰することにより、挟持刃33aと挟持刃33bとが互いに密着する。これら密着した挟持刃33a、33b同士の間に物を挟むことができる。
【0078】
連結部材30を備えた構成によれば、例えば、内視鏡清掃具1をオイフや手術着に連結しておくことにより、内視鏡用清掃具1を紛失することなく、常に治療場所の近くに置いておくことができる。
【符号の説明】
【0079】
S 挿入部
S1、S2 先端面
1 内視鏡用清掃具
2 本体部材
2a 開口部
3 被当接部材
7 含浸部材
8 雌ねじ部(支持機構の一部)
14 保持部材(支持機構の一部)
15 傾動部材
18 筒部材(第一部材)
19 受け部材(第一部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びるとともにその先端面の向く方向を撮像可能な挿入部を有する内視鏡を清掃するための内視鏡用清掃具であって、
前記挿入部をその先端部から挿入可能な開口部を有する本体部材と、
前記開口部から挿入された前記挿入部の先端面と当接可能な被当接部材と、
前記被当接部材と挿入部の先端面とを当接させた状態で前記挿入部を前記本体部材にさらに挿入することに応じて、この挿入方向に被当接部材が移動するとともに前記挿入方向と直交する方向に前記被当接部材が前記挿入部の先端面に対して摺動するように、前記被当接部材を前記本体部材に支持させる支持機構とを備えていることを特徴とする内視鏡用清掃具。
【請求項2】
前記支持機構は、前記被当接部材を保持する保持部材と、前記本体部材に設けられ、前記保持部材に挿入方向への力が与えられることに応じて前記保持部材が本体部材に対して前記挿入方向に変位するとともに前記挿入方向と平行する軸回りに回転するように、前記保持部材を支持する支持部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項3】
前記保持部材と本体部材との間に設けられた付勢部材をさらに備え、
前記保持部材は、前記付勢部材の付勢力によって前記開口部に向けて変位した初期位置と、前記付勢力に抗して前記本体部材に押し込まれた押込位置との間で変位可能となるように前記本体部材に支持されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項4】
前記保持部材は、前記挿入部の先端面と当接する前記被当接部材の当接面が前記挿入方向と直交する面に対して傾斜可能となるように、前記被当接部材を保持することを特徴とする請求項2又は3に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項5】
前記保持部材は、前記本体部材に回転可能に支持された第一部材と、この第一部材に支持されているとともに前記被当接部材を保持する第二部材をさらに備え、
前記第二部材は、前記挿入方向の軸回りに前記第一部材と一体に回転可能となり、かつ、前記挿入方向と直交する面に対して傾斜可能となるように、前記第一部材に支持されていることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項6】
前記挿入部の先端面を曇り止めするための曇り止め用液体を含浸可能な含浸部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項7】
前記含浸部材は、白色の部材からなることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項8】
前記被当接部材は、前記本体部材に着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項9】
前記被当接部材は、少なくとも前記挿入部と当接する部分がマイクロファイバからなることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の内視鏡用清掃具。
【請求項10】
前記本体部材に設けられ、所定の連結対象物と前記本体部材とを着脱可能に連結する連結部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の内視鏡用清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−172576(P2010−172576A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20303(P2009−20303)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000205007)大研医器株式会社 (28)
【Fターム(参考)】