説明

内視鏡装置および内視鏡診断装置

【課題】面倒な手間や専用の測定器を要することなく、被検体の被観察領域の硬さを検出し、さらに、その硬さに対応する画像を表示することができる内視鏡装置および内視鏡診断装置を提供する。
【解決手段】内視鏡装置は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部の先端面から照明光を照射し、被検体の被観察領域の画像を撮像素子で撮像するものであって、内視鏡挿入部の先端面から撮像素子の撮像面まで延在するように敷設され、内視鏡挿入部の先端面側の先端部に応力発光体が設けられ、応力発光体が内視鏡挿入部の先端面から露出するように配置された光ファイバを備える。内視鏡装置は、応力発光体を被観察領域に押し当てた場合に、被観察領域の硬さに応じて応力発光体から発せられる光の発光量に対応する画像を、光ファイバで導光して撮像素子で撮像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の被観察領域の生体組織の硬さを検出する機能を有する内視鏡装置およびこの内視鏡装置を用いて診断を行うための内視鏡画像を表示する内視鏡診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1によって説明されているように、癌には独特の硬さがあることが知られている。この特性を利用して、特許文献1には、生体組織の硬さを測定して病変部位を診断する生体組織硬さ測定装置が提案されている。
【0003】
特許文献1の生体組織硬さ測定装置では、生体組織の硬さを測定する場合、内視鏡のチャンネルを通じて硬さ測定用プローブを生体内に導入し、生体組織の被測定部位にプローブの先端を突き当てる。続いて、ポンプによる吸気によって生体組織のプローブの先端縁によって包囲された領域を保持し、吸排気のタイミングに合わせて保持した生体組織部位を振動させる。そして、被測定部位の振動波の周波数または振幅を求め、求めた周波数または振幅から硬さ換算手段によって被測定部位の硬さを測定する。
【0004】
また、特許文献2および非特許文献2には、光ファイバの先端部に応力発光体が設けられた光ファイバーセンサおよびこの光ファイバーセンサを利用した応力計測装置が提案されている。
【0005】
特許文献2および非特許文献2の応力計測装置では、光ファイバの先端部に設けられた応力発光体に、外部から荷重が印加されて、その内部に応力が発生すると、応力発光体が応力の大きさに比例した発光強度の光を放出する。この光は、光ファイバを介して送出され、例えば、光ファイバのもう一方の端部に設けられている光検出器等によって、その発光強度が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3038060号公報
【特許文献2】特許第3785457号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】狭間研至、「良性腫瘍と悪性腫瘍の違いって?」、[online]、平成19年 3月26日、[平成23年 1月14日検索]、インターネット〈URL:http://allabout.co.jp/r_health/gc/300812/〉
【非特許文献2】「光による応力のダイレクトな遠隔測定方法」、産総研 TODAY、2007年12月、p.27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の生体組織硬さ測定装置では、振動部とその検出部をプローブの先端に設ける必要があるため構造が複雑になるし、先端への駆動用の電力も必要であり、先端での温度上昇も問題であった。
【0009】
一方、特許文献2および非特許文献2の光ファイバーセンサおよび応力計測装置を内視鏡装置に適用する場合、測定時に光ファイバを内視鏡の鉗子チャンネルを通じて被検体内に挿入する手間が毎回かかるし、専用の測定器も必要であるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、面倒な手間や専用の測定器を要することなく、被検体の被観察領域の硬さを検出し、さらに、その硬さに対応する画像を表示することができる内視鏡装置および内視鏡診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部の先端面から照明光を照射し、該被検体の被観察領域の画像を撮像素子で撮像する内視鏡装置であって、
前記内視鏡挿入部の先端面から前記撮像素子の撮像面まで延在するように敷設され、該内視鏡挿入部の先端面側の先端部に応力発光体が設けられ、該応力発光体が前記内視鏡挿入部の先端面から露出するように配置された光ファイバを備え、
前記応力発光体を前記被観察領域に押し当てた場合に、該被観察領域の硬さに応じて前記応力発光体から発せられる光の発光量に対応する画像を、前記光ファイバで導光して前記撮像素子で撮像することを特徴とする内視鏡装置を提供するものである。
【0012】
ここで、前記撮像素子は矩形のものであり、
前記光ファイバは、前記撮像素子の撮像面の角部まで延在するように施設されることが好ましい。
【0013】
また、前記内視鏡挿入部の先端面から露出する応力発光体の表面を被覆する保護層が設けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記光ファイバを2以上備えることが好ましい。
【0015】
また、前記2以上の光ファイバの先端部に設けられた応力発光体は、前記被観察領域の硬さが同じ場合であっても前記応力発光体から発せられる光の発光量が異なるように、該応力発光体の塗布量が異なるものであることが好ましい。
【0016】
また、前記応力発光体は、応力発光材料とバインダーとを混合したものであり、
前記2以上の光ファイバの先端部に設けられた応力発光体は、前記被観察領域の硬さが同じ場合であっても前記応力発光体から発せられる光の発光量が異なるように、前記応力発光材料と前記バインダーとの混合比率が異なるものであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、光源装置と、
前記光源装置から発せられる光を用いて前記被検体の被観察領域の画像を撮像する請求項1〜6のいずれかに記載の内視鏡装置と、
前記内視鏡装置により撮像された画像を画像処理して内視鏡画像を出力するプロセッサ装置と、
前記プロセッサ装置から出力される内視鏡画像を表示する表示装置とを備えることを特徴とする内視鏡診断装置を提供する。
【0018】
ここで、前記プロセッサ装置は、前記内視鏡装置により撮像された、前記被観察領域の硬さに応じて前記応力発光体から発せられる光の発光量に対応する画像を、前記前記表示装置の表示画面に表示させるものであることが好ましい。
【0019】
また、前記プロセッサ装置は、前記応力発光体から発せられる光の発光量に対応する画像を、該発光量に対応する疑似カラーで前記表示装置の表示画面に表示させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、手間や専用の測定器が不要であり、内視鏡挿入部の先端面を被検体の被観察領域に押し当てるだけで、常時、被検体の被観察領域の硬さを検出し、例えば、その硬さに対応する画像を表示装置上に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る内視鏡診断装置の構成を表す一実施形態の外観図である。
【図2】図1に示す内視鏡診断装置の内部構成を表すブロック図である。
【図3】内視鏡挿入部の先端面の構成を表す概念図である。
【図4】青色レーザ光源からの青色レーザ光および青色レーザ光が蛍光体により波長変換された発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】撮像素子の撮像面を、内視鏡挿入部の先端面側から見た様子を表す平面概念図である。
【図6】図5に示す撮像素子の側面概念図である。
【図7】表示装置上に表示される内視鏡画像を表す一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明に係る内視鏡装置および内視鏡診断装置を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る内視鏡診断装置の構成を表す一実施形態の外観図、図2は、その内部構成を表すブロック図である。これらの図に示す内視鏡診断装置10は、光源装置12と、光源装置12から発せられる光を用いて被検体の被観察領域の画像を撮像する内視鏡装置14と、内視鏡装置14で撮像された画像を画像処理して内視鏡画像を出力するプロセッサ装置16と、プロセッサ装置16から出力される内視鏡画像を表示する表示装置18と、入力操作を受け付ける入力装置20とによって構成されている。
【0024】
まず、光源装置12は、光源制御部22と、レーザ光源LDと、カプラ(分波器)26とによって構成されている。
【0025】
本実施形態において、レーザ光源LDからは、中心波長が445nmである、青色の所定の波長範囲(例えば、中心波長±10nm)の狭帯域光が発せられる。レーザ光源LDは、照明光として、後述する蛍光体から白色光(疑似白色光)を発生させるための励起光を発する光源であって、後述するプロセッサ装置16の制御部によって制御される光源制御部22によりオンオフ(点灯消灯)制御および光量制御が行われる。
【0026】
レーザ光源LDとしては、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオード等を用いることもできる。
【0027】
なお、白色光(通常光)を発生するための白色光光源(通常光光源)は、励起光および蛍光体の組合せに限定されず、白色光を発するものであればよく、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、白色LED(発光ダイオード)などを利用することもできる。また、レーザ光源LDから発せられるレーザ光の波長は上記例に限定されず、同様の役割を果たす波長のレーザ光を適宜選択することができる。
【0028】
レーザ光源LDから発せられるレーザ光は、集光レンズ(図示略)を介して光ファイバに入力され、カプラ26により2系統の光に分波されてコネクタ部32Aに伝送される。カプラ26は、ハーフミラー、反射ミラー等によって構成される。
【0029】
続いて、内視鏡装置14は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部の先端面から2系統(2灯)の照明光を出射する照明光学系と、被観察領域の画像を撮像する1系統(1眼)の撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。内視鏡装置14は、内視鏡挿入部28と、内視鏡挿入部28の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部30と、内視鏡装置14を光源装置12およびプロセッサ装置16に着脱自在に接続するコネクタ部32A,32Bとを備えている。
【0030】
内視鏡挿入部28は、可撓性を持つ軟性部34と、湾曲部36と、先端部(以降、内視鏡先端部とも呼称する)38とから構成されている。
【0031】
湾曲部36は、軟性部34と先端部38との間に設けられ、操作部30に配置されたアングルノブ40の回動操作により湾曲自在に構成されている。この湾曲部36は、内視鏡装置14が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端部38を、所望の観察部位に向けることができる。
【0032】
図3に示すように、内視鏡挿入部28の先端面29には、被観察領域へ光を照射する2系統の照明窓42A,42B、被観察領域からの反射光を撮像する1系統の観察窓44、内視鏡挿入部28の内部に設けられている鉗子チャンネルに挿入される、組織採取用の処置具等の出口となる鉗子口88、同じく送気・送水チャンネルの出口となる送気・送水口90、後述する4本の光ファイバ76a、76b、76c、76dの先端部等が配置されている。
【0033】
観察窓44、鉗子口88、送気・送水口90は、先端面29の中央部に配置されている。照明窓42A,42Bは、観察窓44を挟んでその両脇側に配置されている。4本の光ファイバ76a、76b、76c、76dの先端部は、先端面29の外周部の4箇所に配置されている。図3に示す例の場合、光ファイバ76a、76b、76c、76dの先端部は、それぞれ、照明窓42Aの近傍、鉗子口88の近傍、送気・送水口90の近傍、照明窓42Bの近傍に配置されている。
【0034】
照明窓42Aの奥には、光ファイバ48Aが収納されている。光ファイバ48Aは、光源装置12からコネクタ部32Aを介して内視鏡先端部38まで敷設されている。光ファイバ48Aの先端部(照明窓42A側)の先には蛍光体54Aが配置され、さらに蛍光体54Aの先にレンズ52A等の光学系が取り付けられている。同様に、照明窓42Bの奥には、先端部に蛍光体54Bおよびレンズ52B等の光学系を有する光ファイバ48Bが収納されている。
【0035】
蛍光体54A,54Bは、レーザ光源LDからの青色レーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光物質(例えばYAG系蛍光物質、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光物質)を含んで構成される。白色光観察(通常光観察)用の励起光が蛍光体54A,54Bに照射されると、蛍光体54A,54Bから発せられる緑色〜黄色の励起発光光(蛍光)と、蛍光体54A,54Bにより吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて、白色光(疑似白色光)が生成される。
【0036】
図4は、青色レーザ光源からの青色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体により波長変換された発光スペクトルを示すグラフである。レーザ光源LDから発せられる青色レーザ光は、中心波長445nmの輝線で表され、青色レーザ光による蛍光体54A,54Bからの励起発光光は、概ね450nm〜700nmの波長範囲で発光強度が増大する分光強度分布となる。この励起発光光と青色レーザ光との合波光によって、上述した疑似白色光が形成される。
【0037】
ここで、本発明でいう白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、例えば、上述した疑似白色光を始めとして、基準色であるR,G,B等、特定の波長帯の光を含むものであればよい。つまり、本発明のいう白色光には、例えば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光等も広義に含まれるものとする。
【0038】
照明窓42A側および照明窓42B側の照明光学系は同等の構成および作用のものであって、照明窓42A,42Bからは、基本的に同時に同等の照明光が照射される。なお、照明窓42A,42Bからそれぞれ異なる照明光を照射させることもできる。また、2系統の照明光を出射する照明光学系を有することは必須ではなく、例えば、1系統や4系統の照明光を出射する照明光学系でも同等の機能を実現することができる。
【0039】
観察窓44の奥には、被検体の被観察領域の像光を取り込むための対物レンズユニット56等の光学系が取り付けられ、さらに対物レンズユニット56の奥には、被観察領域の画像情報を取得するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子58(第1撮像素子)が取り付けられている。
【0040】
撮像素子58は、対物レンズユニット56からの光を撮像面(受光面)で受光し、受光した光を光電変換して撮像信号(アナログ信号)を出力する。撮像素子58の撮像面には、可視光の約370〜720nmの波長範囲を3分割する分光透過率を有する、R色(約580nm〜760nm)、G色(約450nm〜630nm)、B色(約380nm〜510nm)のカラーフィルタが設けられ、R画素、G画素、B画素の3色の画素を1組として、複数組の画素がマトリクス状に配列されている。
【0041】
光源装置12から光ファイバ48A,48Bによって導光された光は、内視鏡先端部38から被検体の被観察領域に向けて照射される。そして、照明光が照射された被観察領域の様子が対物レンズユニット56により撮像素子58の撮像面上に結像され、撮像素子58により光電変換されて撮像される。撮像素子58からは、撮像された被検体の被観察領域の画像の撮像信号(アナログ信号)が出力される。
【0042】
撮像素子58から出力される画像の撮像信号(アナログ信号)は、スコープケーブル62を通じてA/D変換器64に入力される。A/D変換器64は、撮像素子58からの撮像信号(アナログ信号)を画像信号(デジタル信号)に変換する。変換後の画像信号は、コネクタ部32Bを介してプロセッサ装置16の画像処理部に入力される。
【0043】
以下、図5,6を参照して、撮像素子58の周辺の構成を説明する。
【0044】
図5は、撮像素子の撮像面を、内視鏡挿入部の先端面側から見た様子を表す平面概念図、図6は、その側面概念図である。これらの図に示すように、撮像素子58は、矩形のものであり、同じく矩形の基板74の上に配置されている。レンズ56は円形のものであり、撮像素子58の撮像面と内視鏡挿入部28の先端面29との間に配置されている。つまり、矩形の撮像素子58の撮像面のうち、円形のレンズ56に対応する部分が被観察領域を撮像するために使用される有効領域であり、それ以外の領域は、被観察領域の撮像には使用されない無効領域である。
【0045】
また、内視鏡挿入部28の先端面29から撮像素子58の撮像面まで延在するように、4本の光ファイバ76a、76b、76c、76dが施設されている。光ファイバ76a、76b、76c、76dの、内視鏡挿入部28の先端面29側の端部(先端部)は、図3に示すように、内視鏡挿入部28の先端面29の外周部の4箇所にそれぞれ配置され、撮像素子58の撮像面側の端部(後端部)は、図5に示すように、撮像素子58の撮像面の4つの角部(前述の無効領域)に対向するようにそれぞれ配置されている。
【0046】
この光ファイバ76a、76b、76c、76dの先端部には、塗布等により応力発光体78が設けられている。光ファイバ76a、76b、76c、76dの先端部は、内視鏡挿入部28の先端面29から応力発光体78が露出するように配置されている。なお、光ファイバ76a、76b、76c、76dの先端部は、内視鏡挿入部28の先端面29から所定の長さだけ応力発光体が突出するように配置されていてもよい。内視鏡挿入部28の先端面29から露出する応力発光体78の表面には、透明な保護層80が被覆されている。保護層80は、例えば、シリコーン等のゴム質の材料のものが用いられる。
【0047】
本実施形態の内視鏡診断装置10では、上記構成により、内視鏡挿入部28の先端面29から露出する応力発光体78を被検体の被観察領域に押し当てることによって、後述するように、被観察領域の硬さを検出することができる。
【0048】
ここで、応力発光体78は、内視鏡挿入部28の先端面29、つまり、光ファイバ76a、76b、76c、76dの先端部に設けられた応力発光体78(より正確には、保護層80)を被検体の被観察領域に押し当てた場合に、被観察領域の硬さに応じて応力発光体78に加えられる圧力によって発生する応力の大きさに比例して発光量が変化するもの、すなわち、圧力が大きくなるに従って応力が大きくなり、発光量が増大するものであって、応力発光材料を含む。
【0049】
応力発光材料は、例えば、特許文献2に記載のものが利用できる。すなわち、炭酸ストロンチウムとアルミナ、ZnS:Mn、ZnS:Cu、スピネル構造、MAl24:N(但し、M=Mg、Ca、Sr、Ba;N=Eu、Ce、Tb、Sm、Cu、Mn)、M3Al26:N、MAl1219:N、メリライト系構造酸化物、Ca2Al2SiO7:N、MMgAl1017:N、M3MgSi28:N(ここで、M=Ba、Sr、Ca;N=Eu、Ce、Sm、Cu、Mn)等である。
【0050】
また、応力発光体78は、上記の応力発光材料を単独で用いてもよいし、応力発光材料と、アルミナ、シリカ等の無機物質、もしくは、プラスチック、樹脂、ゴム等の有機物質のバインダー(接合剤)とを混合して用いることもできる。
【0051】
応力発光体78が、応力発光材料単独か、応力発光材料とバインダーとを混合したものであるかに係わらず、応力発光体78の塗布量を変えることによって、被観察領域の硬さが同じ場合であっても応力発光体78から発せられる光の発光量を変えることができる。例えば、応力発光体の塗布量を増やすことによって、同じ硬さ、つまり、同じ圧力が加えられた場合であっても発光量を増大させることができる。言い換えると、4本の光ファイバ76a、76b、76c、76dの応力発光体の塗布量を変えることによって、それぞれの光ファイバ76a、76b、76c、76dにより異なる硬さを検出することができる。
【0052】
応力発光体78が、応力発光材料とバインダーとを混合したものである場合には、両者の混合比率を変えることによって、同様に、被観察領域の硬さが同じ場合であっても応力発光体78から発せられる光の発光量を変えることができる。例えば、応力発光材料の混合比率を増やすことによって、同じ硬さ、つまり、同じ圧力が加えられた場合であっても発光量を増大させることができる。言い換えると、4本の光ファイバ76a、76b、76c、76dの応力発光材料とバインダーとの混合比率を変えることによって、それぞれの光ファイバ76a、76b、76c、76dにより異なる硬さを検出することができる。
【0053】
続いて、プロセッサ装置16は、制御部68と、画像処理部70と、記憶部72とを備えている。制御部68には、表示装置18および入力装置20が接続されている。プロセッサ装置16は、内視鏡装置14の撮像スイッチ66や入力装置20から入力される指示に基づき、光源装置12の光源制御部22を制御するとともに、内視鏡装置14から入力される画像の画像信号を画像処理し、内視鏡画像を生成して表示装置18に出力する。
【0054】
制御部68は、内視鏡装置14の撮像スイッチ66や入力装置20からの指示に基づいて、光源装置12の光源制御部22の動作を制御する。
【0055】
画像処理部70は、内視鏡装置14から入力される画像の画像信号に対して所定の画像処理を施し、内視鏡画像の画像信号を出力する。内視鏡画像の画像信号は、制御部68に送られて、制御部68で各種情報と共に表示装置18に表示され、必要に応じて、例えば、1枚(1フレーム)の画像を単位としてメモリやストレージ装置からなる記憶部72に記憶される。
【0056】
次に、内視鏡診断装置10の動作を説明する。
まず、白色光画像の撮像時の動作を説明する。
【0057】
白色光画像の撮像時には、光源制御部22の制御により、レーザ光源LDが所定の発光量で点灯される。レーザ光源LDから発せられる中心波長445nmのレーザ光が蛍光体54A,54Bに照射され、蛍光体54A,54Bから白色光が発せられる。蛍光体54A,54Bから発せられる白色光は被検体に照射され、その反射光が撮像素子58で受光されて被検体の被観察領域の画像が撮像される。
【0058】
撮像素子58から出力される画像の撮像信号(アナログ信号)は、A/D変換器62により画像信号(デジタル信号)に変換され、画像処理部68により所定の画像処理が施され、内視鏡画像の画像信号が出力される。そして、制御部64により、内視鏡画像の画像信号に対応する内視鏡画像が表示装置18上に表示され、必要に応じて、内視鏡画像の画像信号が記憶部72に記憶される。
【0059】
続いて、被検体の被観察領域の硬さを検出する場合の動作を説明する。
【0060】
被検体の被観察領域の硬さを検出する場合、内視鏡挿入部28の先端面29に露出する応力発光体78(つまり、保護層80)が、被検体の被観察領域に押し当てられる。この時、被観察領域の硬さに応じて、応力発光体78から所定の発光量の光が発せられる。応力発光体78から発せられた光は、光ファイバ76a、76b、76c、76dによって導光され、撮像素子58の撮像面の4つの角部の無効領域に入射され、撮像される。これ以後の動作は、白色光画像を撮像する場合の動作と同じであり、応力発光体78から発せられる被賀露の発光量、つまり、被観察領域の硬さに対応する画像が表示装置18上に表示される。
【0061】
図7は、表示装置上に表示される内視鏡画像を表す一例の概念図である。同図に示すように、表示装置18の表示画面82の中央部には、撮像素子58の撮像面の有効領域に対応する円形の内視鏡画像84が表示される。これに加えて、本実施形態の内視鏡診断装置10では、内視鏡画像84の周辺部分、図示例の場合、表示装置18の表示画面82の4つの角部に、4本の光ファイバ76a、76b、76c、76dに対応する、それぞれの応力発光体78の発光量を示す画像86が表示される。
【0062】
なお、応力発光体の発光量に対応する画像86の表示方法は何ら限定されない。例えば、発光量に対応する輝度で画像を表示してもよいが、応力発光体78の発光量が所定値(閾値)を超えていない場合に緑色で表示し、超えている場合に赤色で表示するというように、発光量に対応する疑似カラーで表示してもよい。また、それぞれ応力発光体78の発光量に対応する画像を表示装置18の表示画面82の4つの角部に表示することも必須ではない。つまり、それぞれ応力発光体78の発光量に対応する画像を内視鏡画像84以外の任意の場所に表示してもよい。
【0063】
このように、本実施形態の内視鏡診断装置10では、従来のように、先端部に応力発光体が設けられた光ファイバを鉗子口から挿入するという面倒な手間も、専用の測定器も不要であり、内視鏡挿入部28の先端面29を被検体の被観察領域に押し当てるだけで、常時、被検体の被観察領域の硬さを検出することができ、その硬さに対応する画像86を表示装置18上に表示させることができる。
【0064】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0065】
10 内視鏡診断装置
12 光源装置
14 内視鏡装置
16 プロセッサ装置
18 表示装置
20 入力装置
22 光源制御部
26 カプラ
28 内視鏡挿入部
29 先端面
30 操作部
32A,32B コネクタ部
34 軟性部
36 湾曲部
38 先端部
40 アングルノブ
42A,42B 照明窓
44 観察窓
46A,46B,48A,48B,76a、76b、76c、76d 光ファイバ
50A,50B,52A,52B レンズ
54A,54B 蛍光体
56 対物レンズユニット
58,59 撮像素子
62 スコープケーブル
64 A/D変換器
66 撮像スイッチ
68 制御部
70 画像処理部
72 記憶部
74 基板
78 応力発光体
80 保護層
82 表示画面
84 内視鏡画像
86 応力発光体の発光量に対応する画像
LD レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される内視鏡挿入部の先端面から照明光を照射し、該被検体の被観察領域の画像を撮像素子で撮像する内視鏡装置であって、
前記内視鏡挿入部の先端面から前記撮像素子の撮像面まで延在するように敷設され、該内視鏡挿入部の先端面側の先端部に応力発光体が設けられ、該応力発光体が前記内視鏡挿入部の先端面から露出するように配置された光ファイバを備え、
前記応力発光体を前記被観察領域に押し当てた場合に、該被観察領域の硬さに応じて前記応力発光体から発せられる光の発光量に対応する画像を、前記光ファイバで導光して前記撮像素子で撮像することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記撮像素子は矩形のものであり、
前記光ファイバは、前記撮像素子の撮像面の角部まで延在するように施設される請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記内視鏡挿入部の先端面から露出する応力発光体の表面を被覆する保護層が設けられている請求項1または2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記光ファイバを2以上備える請求項1〜3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記2以上の光ファイバの先端部に設けられた応力発光体は、前記被観察領域の硬さが同じ場合であっても前記応力発光体から発せられる光の発光量が異なるように、該応力発光体の塗布量が異なるものである請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記応力発光体は、応力発光材料とバインダーとを混合したものであり、
前記2以上の光ファイバの先端部に設けられた応力発光体は、前記被観察領域の硬さが同じ場合であっても前記応力発光体から発せられる光の発光量が異なるように、前記応力発光材料と前記バインダーとの混合比率が異なるものである請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
光源装置と、
前記光源装置から発せられる光を用いて前記被検体の被観察領域の画像を撮像する請求項1〜6のいずれかに記載の内視鏡装置と、
前記内視鏡装置により撮像された画像を画像処理して内視鏡画像を出力するプロセッサ装置と、
前記プロセッサ装置から出力される内視鏡画像を表示する表示装置とを備えることを特徴とする内視鏡診断装置。
【請求項8】
前記プロセッサ装置は、前記内視鏡装置により撮像された、前記被観察領域の硬さに応じて前記応力発光体から発せられる光の発光量に対応する画像を、前記前記表示装置の表示画面に表示させるものである請求項7に記載の内視鏡診断装置。
【請求項9】
前記プロセッサ装置は、前記応力発光体から発せられる光の発光量に対応する画像を、該発光量に対応する疑似カラーで前記表示装置の表示画面に表示させるものである請求項8に記載の内視鏡診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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