説明

内視鏡装置

【課題】内視鏡が滅菌バックに収納されたまま、固体撮像素子が正常に作動するかについて固体撮像素子を故障させることなく診断できる診断機構を備えた内視鏡装置を提供する。
【解決手段】内視鏡10に設けられた固体撮像素子54が正常に作動するかを診断する診断機構72を備えた内視鏡装置70であって、診断機構72は、診断機構72への給電を行うバッテリー74と、診断を開始させるスイッチ76と、内視鏡内部空間66の湿度を測定する湿度センサ78と、診断の結果を表示するLEDランプ80と、スイッチ76のON操作による診断開始にともなって湿度センサ78の測定結果が入力されると共に、該測定結果が所定値以下の場合にのみバッテリー74から固体撮像素子54に給電して診断を行い、診断結果をLEDランプ80に出力するCPU60と、を備え、備えた診断機構の全ての構成を内視鏡10に搭載した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡装置に係り、特に内視鏡に設けられた固体撮像素子が正常に作動するかを、滅菌パッケージに収納したまま診断することのできる診断機構を備えた内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断に使用された内視鏡は、洗浄及び消毒又は滅菌処理を必ず行う必要がある。消毒は洗浄消毒装置等で消毒薬液に内視鏡を浸漬して行われる。近年、滅菌レベルの処理が望まれており、滅菌処理は洗浄装置の洗浄液によって内視鏡の外表面や管路内が洗浄された後、滅菌パッケージに入れられてオートクレーブ滅菌(高温高圧蒸気滅菌)装置によって行われる。
【0003】
内視鏡は気密構造であるが、内視鏡の外表面にピンホール等の小孔が生じている状態で内視鏡を洗浄装置の洗浄液に浸漬すると、内視鏡内部空間に洗浄液が浸入する虞がある。
【0004】
また、オートクレーブ滅菌装置による高圧蒸気殺菌では、水蒸気を滅菌チャンバに供給する前に滅菌チャンバ内の空気を取り除いて減圧する。これにより、内視鏡内部空間と滅菌チャンバとの圧力差が生じる。この圧力差によって、内視鏡が破損する虞があるため、内視鏡内部空間と滅菌チャンバとを連通する必要が生じるが、水蒸気が内視鏡内部空間に浸入することがある。
【0005】
この結果、内視鏡内部空間に設けられたCCD等の固体撮像素子や回路基板等が湿気によって動作不良を起こすと固体撮像素子が正常に作動しなくなる虞がある。
【0006】
この対策として例えば、特許文献1では、内視鏡内部空間の先端部に絶対湿度センサを設けると共に、LGコネクタ内に絶対湿度センサで測定された測定値を記憶する測定値記憶手段を設け、新規に測定された湿度と記憶された測定値との変化を知ることで内視鏡内部空間の湿度状態を判断することを提案している。
【0007】
また、特許文献2では、内視鏡を洗浄装置及びオートクレーブ滅菌装置で洗浄・滅菌した後、内視鏡内部空間にエアを供給及び吸引して除湿乾燥することを提案している。
【0008】
ところで、内視鏡は、オートクレーブ滅菌装置による滅菌処理後に内視鏡を使用する直前の検査準備まで滅菌パッケージに収納された状態で保管され、外部環境からの菌や塵埃が付着するのを防止している。そして、検査準備の時に滅菌パッケージから内視鏡を取り出してプロセッサや光源装置に接続して電源を入れ、モニターに映像を写し出すことにより内視鏡の固体撮像素子が正常に作動するかを判定している。
【0009】
このように、検査準備の作業時に滅菌パッケージから内視鏡を取り出すまで固体撮像素子が正常に作動するかが分からないと、下記に示すような各種の問題がある。
【0010】
(1)検査準備の作業において固体撮像素子に動作不良があった場合には別の内視鏡に代えて更に検査準備を行わなくてはならず、内視鏡の施術者や技師、看護師等にとって作業効率が悪く不便である。
【0011】
(2)内視鏡内部空間に水分や水蒸気が残存し、湿度が高い状態で検査準備の作業を行うと、固体撮像素子等の電気系統がショートする等により内視鏡が損傷する虞がある。
【0012】
(3)内視鏡内部空間に水分や水蒸気が残存し、湿度が高い状態で検査準備まで保管することは、内視鏡の性能維持にとっても好ましくない。
【0013】
したがって、高圧蒸気殺菌の直後に内視鏡が滅菌パッケージに収納されたまま、固体撮像素子が正常に作動するかについて固体撮像素子を損傷させることなく診断できれば、上記(1)〜(3)の問題を解決できる。例えば固体撮像素子が正常に作動しないという診断結果であり、内視鏡内部空間の除湿が必要な場合には、その内視鏡のみ滅菌パッケージから取り出して乾燥を行えばよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−230258号公報
【特許文献2】特開2006−136732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような背景から、内視鏡が滅菌パッケージに収納されたまま、固体撮像素子が正常に作動するかについて固体撮像素子を損傷させることなく診断できる診断機構を備えた内視鏡装置が要望されている。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、内視鏡が滅菌パッケージに収納されたまま、固体撮像素子が正常に作動するかについて固体撮像素子を損傷させることなく診断できる診断機構を備えた内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡装置は、内視鏡に設けられた固体撮像素子が正常に作動するかを診断する診断機構を備えた内視鏡装置であって、前記診断機構は、前記診断機構への給電を行うバッテリーと、前記診断を開始させるスイッチと、前記内視鏡の内部空間の湿度を測定する湿度センサと、前記診断の結果を表示する表示手段と、前記スイッチのON操作による診断開始にともなって前記湿度センサの測定結果が入力されると共に、該測定結果が所定値以下の場合にのみ前記バッテリーから前記固体撮像素子に給電して診断を行い、診断結果を前記表示手段に出力するCPUと、を備え、前記備えた診断機構の全ての構成を前記内視鏡に搭載したことを特徴とする。
【0018】
ここで、内視鏡とは、挿入部、手元操作部、手元操作部にユニバーサルケーブルを介して接続されるLGコネクタと、から構成され、洗浄装置で洗浄されたり、オートクレーブ滅菌装置で滅菌されたりする部分を言う。また、内視鏡内部空間とは、内視鏡内に固体撮像素子等の内蔵物を収納するためのスペースを言う。
【0019】
なお、本発明では、内視鏡に診断機構を設けたものを内視鏡装置と称し、以下同様である。
【0020】
本発明によれば、固体撮像素子が正常に作動するかを診断する診断機構の全ての構成を内視鏡に搭載するスタンドアローン型の診断機構として構築したので、診断のために内視鏡を外部装置(例えばプロセッサあるいは専用の診断装置)に接続する必要がない。これにより、固体撮像素子が正常に作動するか否かを、内視鏡を滅菌パッケージに収納したままで診断できるので、内視鏡を使用する直前の検査準備作業まで固体撮像素子が正常に作動するか否かを判定できないという従来の問題を解消できる。
【0021】
したがって、内視鏡の施術者にとって作業効率が良くなる。また、オートクレーブによる滅菌処理後に直ちに内視鏡内部空間の湿度環境を把握でき、湿度が高い場合には内視鏡内部空間を乾燥できる。したがって、内視鏡内部空間の湿度が高いまま保管することがないので、保管中に内視鏡の性能が低下することがない。
【0022】
また、湿度センサで内視鏡内部空間の湿度を調べて所定値以下である場合のみ固体撮像素子に給電して診断を行うようにした。これにより、内視鏡内部空間の湿度が高い状態で固体撮像素子へ給電することがないので、固体撮像素子等の撮像系統の部品が診断時にショート(短絡)等によって損傷するという危険を未然に防止できる。
【0023】
本発明の内視鏡装置の好ましい態様として、前記CPUは、前記バッテリーから前記固体撮像素子へ給電して該固体撮像素子の駆動電源回路の電圧を規定電圧まで徐々に上げていき、規定電圧に達した場合のみ固体撮像素子を駆動して該固体撮像素子からの出力の有無を検知することが好ましい。
【0024】
このように、固体撮像素子へ給電して該固体撮像素子の駆動電源回路の電圧を規定電圧まで徐々に上げていき、規定電圧に達した場合のみ固体撮像素子を駆動して該固体撮像素子からの出力の有無を検知するようにしたので、固体撮像素子が診断によって損傷するという危険を更に確実に防止できる。この場合、駆動電源回路の電圧を階段状に上げていくことが好ましい。
【0025】
即ち、内視鏡に搭載された診断機構は、湿度センサの測定結果が所定値以下であるという第1の安全対策と、固体撮像素子の駆動電源回路の電圧を規定電圧まで徐々に上げていき、規定電圧に達した場合のみ固体撮像素子を駆動するという第2の安全対策と、の2つの安全対策をクリアした場合のみ、固体撮像素子を駆動するので、固体撮像素子の診断時に固体撮像素子が損傷するという危険を確実に回避することができる。
【0026】
本発明の内視鏡装置の好ましい態様として、前記診断は前記内視鏡を滅菌パッケージに収納した状態で行うと共に、前記滅菌パッケージの外側から前記スイッチをONにすることによって診断を開始することが好ましい。
【0027】
本発明の内視鏡装置は、滅菌パッケージに収納した状態で使用されてこそ効果を発揮するからである。
【0028】
本発明の内視鏡装置の好ましい態様として、前記CPUは、前記湿度センサの測定結果が所定値を超えた場合、前記規定電圧にならなかった場合、前記出力を検知できなかった場合には、前記表示手段に不合格であることを表示することが好ましい。
【0029】
これにより、湿度センサの測定結果が所定値を超えた場合、規定電圧にならなかった場合、出力を検知できなかった場合のそれぞれにおいて不合格が表示されるので、不合格品を合格品としてしまう人為的ミスを防止できる。
【0030】
本発明の内視鏡装置の好ましい態様として、前記CPUは前記内視鏡に元々備わっている内視鏡用CPUを兼用することが好ましい。これにより、診断機構に使用する部品点数を減らすことができる。
【0031】
本発明の内視鏡装置の好ましい態様として、前記湿度センサは、前記内視鏡に前記固体撮像素子や周辺回路の漏れ電流を検出する漏れ電流検出回路を設け、前記CPUが前記検出された漏れ電流を予め入力されている湿度と漏れ電流の関係に基づいて湿度に換算するものであることが好ましい。
【0032】
これにより、内視鏡に元々配備されている固体撮像素子や周辺回路を湿度検出のための構成に利用するので、内視鏡に湿度センサを別途設ける必要がない。
【発明の効果】
【0033】
本発明の内視鏡装置によれば、内視鏡が滅菌パッケージに収納されたまま、固体撮像素子が正常に作動するかについて固体撮像素子を損傷させることなく診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用する内視鏡の斜視図
【図2】図1に示した内視鏡挿入部における先端硬性部の端面を示した斜視図
【図3】診断機構を備えた内視鏡装置のシステム構成を示すブロック図
【図4】診断ステップのステップフロー図
【図5】内視鏡が滅菌パッケージに収納された図
【図6】診断時に固体撮像素子に給電するときの電圧の上昇パターンを示す図
【図7】診断機構の別態様を備えた内視鏡のシステム構成を示すブロック図
【図8】固定固体撮像素子を駆動する駆動電源回路の漏れ電流と湿度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に従って、本発明に係る内視鏡装置の好ましい実施の形態について詳述する。
【0036】
図1は、本発明が適用される内視鏡10の斜視図である。
【0037】
同図に示す内視鏡10は、施術者が把持する手元操作部12と、この手元操作部12に連設されて体腔内に挿入される挿入部14とを備える。手元操作部12には、ユニバーサルケーブル16が接続され、ユニバーサルケーブル16の先端にLGコネクタ18が設けられる。LGコネクタ18は光源装置(図示せず)に接続され、これによって図2の照明窓46、46に前記光源装置から照明光が送られる。
【0038】
また、LGコネクタ18には、電気ケーブル20を介して電気コネクタ22が接続され、電気コネクタ22が不図示のプロセッサに着脱自在に接続される。なお、図1の符号23は、電気コネクタ22の防水キャップであり、洗浄装置での洗浄時に電気コネクタ22に装着される。そして、電気コネクタ22をプロセッサ(図示せず)に接続することによって、プロセッサの電源供給部から内視鏡10を駆動するのに必要な電源が分圧されて供給される。
【0039】
手元操作部12には、送気・送水ボタン24、吸引ボタン26、及びシャッターボタン28が並設されると共に、一対の湾曲操作ノブ30、30が設けられる。また、手元操作部12には鉗子挿入部32が設けられ、鉗子挿入部32の開口端に鉗子栓34が装着される。
【0040】
挿入部14は、手元操作部12側から順に可撓管部36、湾曲部38、及び先端硬質部40によって構成される。湾曲部38は、手元操作部12の湾曲操作ノブ30、30を回動することによって遠隔的に湾曲操作される。これにより、先端硬質部40を所望の方向に向けることができる。
【0041】
図2の如く先端硬質部40の先端面42には、観察窓44、照明窓46、46、送気・送水ノズル48、及び鉗子口50が設けられる。
【0042】
鉗子口50は、図1の鉗子挿入部32に連通されている。よって、鉗子挿入部32から鉗子等の処置具を挿入することによって、この処置具を図2の鉗子口50から導出することができる。また、鉗子口50は、図1の吸引ボタン26によって操作される吸引バルブ(図示せず)に連通され、更にこの吸引バルブがLGコネクタ18の吸引コネクタ(図示せず)に接続される。したがって、吸引コネクタに不図示の吸引ポンプを接続し、吸引ボタン26で吸引バルブを操作することによって、鉗子口50から病変部等を吸引することができる。
【0043】
図3は、内視鏡10の内部空間66に設けられる内蔵物の構成を示すブロック図である。
【0044】
図3に示すように、照明窓46(図2参照)は、ユニバーサルケーブル16や挿入部14に配設されたライトガイド47及び照明レンズ49によって導光される光源装置(図示せず)からの照明光を、被観察部位に照明する。
【0045】
また、観察窓44(図2参照)の後方には対物光学系52(レンズ群及びプリズムからなる)、固体撮像素子54が設けられる。固体撮像素子54は回路基板56が接続されると共に、回路基板56には、アンプやバッファ、固体撮像素子54の駆動電源等の周辺回路(図示せず)が設けられる。また、固体撮像素子54の信号を処理するアナログ信号処理回路58(AFEと略す)、内視鏡用CPU60、メモリ装置62等が手元操作部12に設けられる。
【0046】
また、固体撮像素子54の回路基板56から延設された信号ケーブルは、アナログ信号処理回路58を介して電気コネクタ22の回路基板(図示せず)まで延設され、プロセッサに接続される。
【0047】
これにより、観察窓44から取り込まれた観察像は、固体撮像素子54の受光面に結像されて電気信号に変換され、この電気信号が信号ケーブルを介してプロセッサに出力され、映像信号に変換される。これにより、プロセッサに接続されたモニタ(不図示)に観察画像が表示される。
【0048】
固体撮像素子54は、インターライントランスファ型のCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサ等からなる。固体撮像素子54は、観察窓44、対物光学系52を経由した体腔内の被観察部位の像光が、撮像面に入射するように配置されている。固体撮像素子54の撮像面には、複数の色セグメントからなるカラーフィルタ(例えば、ベイヤー配列の原色カラーフィルタ)が形成されている。
【0049】
AFE58は、相関二重サンプリング回路58A(CDSと略す)、自動ゲイン制御回路58B(AGCと略す)、及びアナログ/デジタル変換器58C(A/Dと略す)から構成される。CDS68Aは、固体撮像素子54から出力される撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、固体撮像素子54で生じるリセット雑音及びアンプ雑音の除去を行う。AGC58Bは、CDS58Aによりノイズ除去が行われた撮像信号を、プロセッサから指定されるゲイン(増幅率)で増幅する。
【0050】
A/D58Cは、AGC58Bにより増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタル信号に変換する。A/D58Cでデジタル化された撮像信号は、ユニバーサルケーブル16、電気コネクタ22を介してプロセッサに入力され、プロセッサに設けられたデジタル信号処理回路(図示せず)の作業用メモリ(図示せず)に一旦格納される。
【0051】
また、固体撮像素子54の回路基板56は、タイミングジェネレータ64(以下、TGと略す)を介して内視鏡用CPU60に接続される。
【0052】
TG64は、固体撮像素子54の駆動パルス(垂直/水平走査パルス、リセットパルス等)とAFE58用の同期パルスとを発生する。固体撮像素子54は、TG64からの駆動パルスに応じて撮像動作を行い、撮像信号を出力する。また、AFE58の各部58A〜58Cは、TG64からの同期パルスに基づいて動作する。
【0053】
また、内視鏡用CPU60は、内視鏡10とプロセッサとが接続された後、プロセッサのCPU(図示せず)からの動作開始指示に基づいて、TG64を駆動させると共にAGC58Bのゲインを調整する。
【0054】
上記の如く構成された内視鏡10は、医療診断に使用された後、洗浄装置の洗浄液によって、その外表面や内部管路(例えば処置具導入管路等)が洗浄処理され、その後に滅菌パッケージ68(図5参照)に入れられてオートクレーブ滅菌装置によって滅菌処理される。この洗浄処理及び滅菌処理において、内視鏡内部空間55に水や水蒸気等が浸入すると、内視鏡内部空間66に収納される内蔵物である固体撮像素子54や撮像系統の部品が破損し易くなる。しかし、内視鏡10への汚染を防止するために、内視鏡10を使用するまで滅菌パッケージ68から内視鏡10を取り出すことはない。
【0055】
そこで、本発明の内視鏡装置70は、内視鏡10を滅菌パッケージ68に収納したままで、固体撮像素子54が正常に作動するかを診断でき、しかもプロセッサや外部診断装置に接続しなくても内視鏡10のみで診断を完結する自己完結型(スタンドアローン型)の診断機構72を内視鏡10に搭載するようにした。
【0056】
次に、内視鏡10に搭載された診断機構72について説明する。
【0057】
図3に示すように、診断機構72は、バッテリー74と、診断用スイッチ76と、湿度センサ78と、LEDランプ80(表示手段)と、内視鏡用CPU60とを備え、これら全ての構成が内視鏡10に搭載されている。なお、本実施の形態では診断用のCPUを内視鏡に既に備わっている内視鏡用CPU60で兼用するようにした。
【0058】
バッテリー74は、内視鏡用CPU60を介して診断機構72を構成する各部材に給電する。
【0059】
診断用スイッチ76は手元操作部12の外面に設けられ、診断用スイッチ76をONにすることにより、診断を開始する。診断用スイッチ76を上記したシャッターボタン28で兼用するように構成してもよい。
【0060】
湿度センサ78は内視鏡内部空間66の湿度を測定するもので、挿入部14の先端部又はLGコネクタ18に配置することが好ましい。
【0061】
LEDランプ80は、診断結果を表示するもので、診断結果の合格(OK)又は不合格(NG)を表示する。LEDランプ80のOK表示とNG表示の識別方法としては、例えばOK表示は緑色の点灯、NG表示は赤色の点灯のように色の種類で分けてもよく、他の方法でもよい。
【0062】
内視鏡用CPU60は診断機構72を制御するものであり、診断用スイッチ76をONにすると、内視鏡用CPU60がメモリ装置62に格納した診断プログラムによって診断を開始する。なお、メモリ装置62は内視鏡10に元々配備されるものを利用することができる。
【0063】
また、固体撮像素子54からAFE58への信号ケーブルが分岐され、固体撮像素子54の出力は分岐された第1診断用ケーブル82を介して内視鏡用CPU60に入力される。また、AFE58によって生成された映像信号は第2診断用ケーブル84を介して内視鏡用CPU60に入力される。
【0064】
図4は、固体撮像素子が正常に作動するかを診断する診断ステップのステップフローであり、本実施の形態では内視鏡10を滅菌パッケージ68に収納した状態で診断を行う場合で説明する。
【0065】
図5に示すように、診断を行う作業者が滅菌パッケージ68の外側から診断用スイッチ76を押す(ステップ1)。これにより、内視鏡用CPU60は以下の診断を開始する。
【0066】
先ず、湿度センサ78により内視鏡内部空間66の湿度が測定され(ステップ2)、測定湿度はCPU60に入力される。CPU60は、測定湿度が所定値以下であるかを判定する(ステップ3)。所定値とは例えば固体撮像素子54の仕様スペックにおいて仕様に適切な環境湿度の上限値とすることができる。
【0067】
そして、測定湿度が所定値以下の場合(YES)のみバッテリー74から固体撮像素子54に給電し(ステップ4)、所定値を超えた場合(NO)にはLEDランプ80をNG(不合格)表示(ステップ5)して診断を終了する(ステップ13)。なお、バッテリー74から固体撮像素子54への給電は、電圧を規定電圧になるまで徐々に、例えば図6に示すように階段状に上げていくことが好ましい。
【0068】
次に、固体撮像素子54の電圧を回路基板56でチェック(ステップ6)し、固体撮像素子54が規定電圧に達したか否かを判定する(ステップ7)。この場合、固体撮像素子54側の回路基板56と、電気コネクタ22側の回路基板との両方における電圧をチェックすることが好ましい。そして、規定電圧に達した場合(YES)のみ、内視鏡用CPU60はTG64により駆動パルスを固体撮像素子54に送り、固体撮像素子54を駆動する(ステップ8)。一方、規定電圧に達しない場合(NO)にはLEDランプをNG表示(ステップ9)して診断を終了する(ステップ13)。
【0069】
次に、内視鏡用CPU60は、固体撮像素子54からの出力をチェック(ステップ10)し、出力を検知したか否かを判定する(ステップ11)。この場合、第1診断用ケーブル82から得られる固体撮像素子54からの出力ではなく、第2診断用ケーブル84から得られる映像信号の出力をチェックするようにしてもよい。
【0070】
そして、出力を検知した場合(YES)にはLEDランプをOK表示(ステップ12)して診断を終了する(ステップ13)と共に、出力を検知しない場合(NO)にはLEDランプ80をNG表示(ステップ14)して診断を終了する(ステップ13)。
【0071】
LEDランプ80をNG表示して診断を終了した後、内視鏡10は滅菌パッケージ68から取り出されて機能修復のための操作、例えば内視鏡内部空間66の除湿乾燥等が行われる。
【0072】
なお、上記のステップフローでは、判定がNOの場合のみLEDランプ80をNG表示するようにしたが、ステップ3、7、11のYESの場合にもLEDランプ80をOK表示するようにしてもよい。この場合、ステップ3でLEDランプ80をOK表示したら、次のステップ7に進むまでにLEDランプ80を消しておく。ステップ7からステップ11でも同様である。
【0073】
このように、本実施の形態の内視鏡10は、固体撮像素子54が正常に作動するかを診断する診断機構72の全ての構成を内視鏡10に搭載するスタンドアローン型の診断機構として構築したので、診断のために内視鏡10を外部装置(例えばプロセッサあるいは専用の診断装置)と接続する必要がない。これにより、固体撮像素子54が正常に作動するか否かを、内視鏡10を滅菌パッケージ68に収納したままで診断できる。
【0074】
したがって、内視鏡10を使用する直前の検査準備作業まで固体撮像素子54が正常に作動するか否かを判定できないという従来の不具合を解消できる。
【0075】
これにより、内視鏡10の術者(医者)にとって作業効率が良くなると共に、高温高圧蒸気滅菌後に直ちに内視鏡内部空間66の湿度に起因する動作不良を把握することができるので、固体撮像素子54やその他の撮像系統の部品が湿気によって破損することも事前に防止できる。
【0076】
また、診断プログラムによって固体撮像素子54の診断を行う前に、予め湿度センサ78で内視鏡内部空間66の湿度を調べて所定値以下である場合のみ固体撮像素子54に給電して診断を行うようにした。これにより、内視鏡内部空間66の湿度が高い状態で固体撮像素子54へ給電して診断することがないので、固体撮像素子54が診断によって損傷するという弊害を未然に防止できる。
【0077】
図7は診断機構72の別態様であり、固体撮像素子54や回路基板56に設けられた周辺回路の漏れ電流を利用して内視鏡内部空間66の湿度を測定するように構成したものである。図7に示すように、固体撮像素子54の回路基板56に形成された回路が漏れ電流検出回路86を経て内視鏡用CPU60に接続されるラインが新たに設けられ、図3の湿度センサ78から内視鏡用CPU60へのラインが必要なくなる。
【0078】
なお、漏れ電流検出のための給電は、図6の第1段階程度の電圧によって行い、固体撮像素子54や回路基板56の周辺回路に流れる電流を極力抑えることにより、湿度測定時における固体撮像素子54や回路基板56の破壊を未然に防ぐことができる。
【0079】
図8は、駆動電源回路の漏れ電流と湿度との関係を示すグラフであり、湿度が大きくなると駆動電源回路からの漏れ電流が大きくなる正相関関係にある。これにより、固体撮像素子54の駆動電源回路の漏れ電流を漏れ電流検出回路86で検出し、漏れ電流の大きさを湿度に換算することにより、内視鏡内部空間66、特に内視鏡先端部における湿度状態を把握することができる。
【0080】
このように、内視鏡10に元々配備されている固体撮像素子54の駆動電源回路を湿度検出のための構成に利用するので、内視鏡10に湿度センサ78を別途設ける必要がなく、診断機構72をコンパクト化できる。
【符号の説明】
【0081】
10…内視鏡、12…手元操作部、14…挿入部、16…ユニバーサルケーブル、18…LGコネクタ、20…ケーブル、22…電気コネクタ、24…送気・送水ボタン、26…吸引ボタン、28…シャッターボタン、30、アングルノブ、32…鉗子挿入部、34…鉗子栓、36…可撓管部、38…湾曲部、40…先端硬質部、42…先端硬質部の先端面、44…観察窓、46…照明窓、48…送気・送水ノズル、50…鉗子口、52…対物光学系、54…固体撮像素子、56…回路基板、58…アナログ信号処理回路(AFE)、58A…相関二重サンプリング回路(CDS)、58B…自動ゲイン制御回路(AGC)、58C…アナログ/デジタル変換器(A/D)、60…CPU、62…メモリ、64…タイミングジェネレータ(TG)、66…内視鏡内部空間、68…滅菌パッケージ、70…内視鏡装置、72…診断機構、74…バッテリー、76…診断用スイッチ、78…湿度センサ、80…LEDランプ、82…第1診断用ケーブル、84…第2診断用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡に設けられた固体撮像素子が正常に作動するかを診断する診断機構を備えた内視鏡装置であって、
前記診断機構は、
前記診断機構への給電を行うバッテリーと、
前記診断を開始させるスイッチと、
前記内視鏡の内部空間の湿度を測定する湿度センサと、
前記診断の結果を表示する表示手段と、
前記スイッチのON操作による診断開始にともなって前記湿度センサの測定結果が入力されると共に、該測定結果が所定値以下の場合にのみ前記バッテリーから前記固体撮像素子に給電して診断を行い、診断結果を前記表示手段に出力するCPUと、を備え、
前記備えた診断機構の全ての構成を前記内視鏡に搭載したことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記CPUは、前記バッテリーから前記固体撮像素子へ給電して該固体撮像素子の駆動電源回路の電圧を規定電圧まで徐々に上げていき、規定電圧に達した場合のみ固体撮像素子を駆動して該固体撮像素子からの出力の有無を検知することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記駆動電源回路の電圧を階段状に上げていくことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記診断は前記内視鏡を滅菌バックに収納した状態で行うと共に、前記滅菌バックの外側から前記スイッチをONにすることによって診断を開始することを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記CPUは、前記湿度センサの測定結果が所定値を超えた場合、前記規定電圧にならなかった場合、前記出力を検知できなかった場合には、前記表示手段に不合格であることを表示することを特徴とする請求項2〜4の何れか1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記湿度センサは、
前記内視鏡に前記固体撮像素子や周辺回路の漏れ電流を検出する漏れ電流検出回路を設け、前記CPUが前記検出された漏れ電流を予め入力されている湿度と漏れ電流の関係に基づいて湿度に換算するものであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85714(P2013−85714A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229164(P2011−229164)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】