説明

内視鏡

【課題】湾曲部を小さい動作量で湾曲動作させる場合にも、適切に湾曲操作が行われる内視鏡を提供すること。
【解決手段】内視鏡は、湾曲可能な湾曲部を備える挿入部と、前記挿入部より基端方向側に設けられ、基準位置から移動させることにより、前記湾曲部の湾曲操作が行われる湾曲操作部と、を備える。また、内視鏡は、前記湾曲操作部の前記基準位置からの変位量に対して比例する状態に、前記湾曲部の湾曲動作の動作速度を決定する動作速度決定部と、前記湾曲操作部での前記湾曲操作によって駆動されることにより、前記湾曲部を湾曲動作させる駆動部材と、前記動作速度決定部によって決定された前記動作速度に基づいて、前記駆動部材を駆動制御する駆動制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲可能な湾曲部を備える挿入部と、湾曲部の湾曲操作を行う湾曲操作部とを備える内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、湾曲可能な湾曲部と、湾曲部の湾曲操作を行う湾曲操作部であるジョイスティックと、を備える内視鏡が開示されている。この内視鏡では、湾曲操作によって基準位置からジョイスティックを移動させることにより、湾曲部が湾曲動作を行う。この際、真直ぐな中立状態からの湾曲部の湾曲量は、基準位置からのジョイスティックの変位量に対して比例する。ジョイスティックは、基準位置を含む第1の領域及び基準位置からの変位量が第1の領域より大きくなる第2の領域を、移動可能である。第2の領域では、基準位置からのジョイスティックの変位量に対する中立状態からの湾曲部の湾曲量の比率が、第1の領域より大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−10172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の内視鏡では、真直ぐな中立状態からの湾曲部の湾曲量は、湾曲操作部であるジョイスティックの基準位置からの変位量に比例する。このため、湾曲部を小さい動作量で湾曲動作させる場合に、ジョイスティックを小さい移動量で移動する必要がある。実際に、ジョイスティックを小さい移動量で移動させることは、行い難い。したがって、湾曲部を小さい動作量で湾曲動作させる場合に、湾曲操作の操作性が低下してしまう。
【0005】
本発明は前記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、湾曲部を小さい動作量で湾曲動作させる場合にも、適切に湾曲操作が行われる内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のある態様では、湾曲可能な湾曲部を備える挿入部と、前記挿入部より基端方向側に設けられ、基準位置から移動させることにより、前記湾曲部の湾曲操作が行われる湾曲操作部と、前記湾曲操作部の前記基準位置からの変位量に対して比例する状態に、前記湾曲部の湾曲動作の動作速度を決定する動作速度決定部と、前記湾曲操作部での前記湾曲操作によって駆動されることにより、前記湾曲部を湾曲動作させる駆動部材と、前記動作速度決定部によって決定された前記動作速度に基づいて、前記駆動部材を駆動制御する駆動制御部と、を備える内視鏡を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、湾曲部を小さい動作量で湾曲動作させる場合にも、適切に湾曲操作が行われる内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡を概略的に示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る内視鏡を概略的に示すブロック図。
【図3】第1の実施形態に係る内視鏡のジョイスティックでの湾曲操作を説明する概略図。
【図4】第1の実施形態に係る内視鏡のモータの駆動状態を説明する概略図。
【図5】第1の実施形態に係る内視鏡のジョイスティックでの湾曲操作により湾曲部を湾曲動作させる作用を概略的に説明するブロック図。
【図6】第1の実施形態に係る内視鏡のジョイスティックの基準位置からの変位量と湾曲部の動作速度との関係を示す概略図。
【図7】第1の実施形態に係る内視鏡の湾曲部を中立状態から第1の湾曲方向に湾曲させる際の、ジョイスティックでの湾曲操作及び湾曲部の湾曲動作を示す概略図。
【図8】第1の実施形態に係る内視鏡の湾曲部を第1の湾曲方向に湾曲した状態で停止する際の、ジョイスティックでの湾曲操作及び湾曲部の湾曲動作を示す概略図。
【図9】第1の実施形態に係る内視鏡の湾曲部を図8の状態からさらに第1の湾曲方向に湾曲させる際の、ジョイスティックでの湾曲操作及び湾曲部の湾曲動作を示す概略図。
【図10】第1の実施形態に係る内視鏡の湾曲部を図9の状態から第2の湾曲方向に戻す際の、ジョイスティックでの湾曲操作及び湾曲部の湾曲動作を示す概略図。
【図11】第1の実施形態に係る内視鏡の湾曲部を図10の状態からさらに第2の湾曲方向に戻す際の、ジョイスティックでの湾曲操作及び湾曲部の湾曲動作を示す概略図。
【図12】第1の実施形態の変形例に係る内視鏡の湾曲操作部であるスライド部材を示す概略図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡の制御ユニットを概略的に示すブロック図。
【図14】第2の実施形態に係る内視鏡のジョイスティックでの湾曲操作を説明する概略図。
【図15】第2の実施形態に係る内視鏡の動作速度決定部の作用を概略的に説明するブロック図。
【図16】第2の実施形態に係る内視鏡のジョイスティックの中間位置からの変位量と湾曲部の動作速度との関係を示す概略図。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る内視鏡の制御ユニットを概略的に示すブロック図。
【図18】第3の実施形態に係る内視鏡の駆動指令生成部及び重み乗算部の作用を概略的に説明するブロック図。
【図19】第3の実施形態に係る内視鏡の重み乗算部で乗算される重み関数を示す概略図。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る内視鏡の制御ユニットを概略的に示すブロック図。
【図21】第4の実施形態に係る内視鏡の重み乗算部の作用を概略的に説明するブロック図。
【図22】第4の実施形態に係る内視鏡の重み乗算部で乗算される重み関数を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図11を参照して説明する。
【0010】
図1及び図2は、本実施形態の内視鏡1を示す図である。図1及び図2に示すように、内視鏡1は、体腔内に挿入され、長手方向に延設される挿入部2と、挿入部2より基端方向側に設けられる操作部3と、を備える。操作部3には、ユニバーサルコード5の一端が接続されている。ユニバーサルコード5の他端は、制御ユニット6に接続されている。制御ユニット6は、モニタケーブル7を介してモニタ8に接続されている。
【0011】
挿入部2は、可撓性を有する細長い可撓管部11と、可撓管部11より先端方向側に設けられる湾曲部12と、湾曲部12より先端方向側に設けられる先端硬性部13と、を備える。湾曲部12は、長手方向に垂直な第1の湾曲方向(図1の矢印A1の方向)及び第1の湾曲方向とは反対方向である第2の湾曲方向(図1の矢印A2の方向)に湾曲可能である。
【0012】
先端硬性部13の内部には、被写体の撮像を行う撮像素子15が設けられている。撮像素子15には、電気信号線17の一端が接続されている。制御ユニット6は、画像処理部である画像プロセッサ19を備える。電気信号線17は、挿入部2の内部、操作部3の内部、ユニバーサルコード5の内部を通って、他端が画像プロセッサ19に接続されている。撮像素子15により撮像された被写体像は、画像プロセッサ19によって画像処理され、モニタ8に表示される。また、挿入部2の内部には、ライトガイド(図示しない)が長手方向に沿って延設されている。ライトガイドは、操作部3の内部、ユニバーサルコード5の内部を通って、制御ユニット6の光源(図示しない)に接続されている。光源から出射された光は、ライトガイドによって導光され、被写体を照射する。
【0013】
操作部3には、湾曲部12を湾曲させる湾曲操作が行われる湾曲操作部であるジョイスティック21が設けられている。図3は、ジョイスティック21での湾曲操作を説明する図である。図3に示すように、ジョイスティック21は、基準位置T0から第1の移動方向(図3の矢印B1の方向)及び第1の移動方向とは反対方向である第2の移動方向(図3の矢印B2)の方向に移動可能である。ジョイスティック21を基準位置T0から第1の移動方向又は第2の移動方向に移動させることにより、湾曲操作が行われる。
【0014】
図2に示すように、制御ユニット6は、動作速度決定部22と、比率設定部23と、を備える。ジョイスティック21には、電気信号線25の一端が接続されている。電気信号線25は、操作部3の内部、ユニバーサルコード5の内部を通って動作速度決定部22に接続されている。動作速度決定部22は、比率設定部23に電気的に接続されている。
【0015】
操作部3の内部には、ジョイスティック21での湾曲操作によって駆動される駆動部材であるモータ27が設けられている。モータ27には、電気信号線28の一端が接続されている。制御ユニット6は、モータ27を駆動制御する駆動制御部29を備える。電気信号線28は、操作部3の内部、ユニバーサルコード5の内部を通って駆動制御部29に接続されている。また、駆動制御部29は、動作速度決定部22に電気的に接続されている。
【0016】
また、操作部3の内部には、プーリ31が設けられている。プーリ31は、モータ27が駆動されることにより、回動する。31には、2本の湾曲ワイヤ32A,32Bの基端が接続されている。湾曲ワイヤ32A,32Bは、可撓管部11の内部を通って、湾曲部12の先端部に先端が接続されている。プーリ31が回動することにより、湾曲ワイヤ32A,32Bの一方が牽引される。
【0017】
図4は、モータ27の駆動状態を説明する図である。図4に示すように、モータ27は駆動されることにより、第1の駆動方向(図4の矢印M1の方向)又は第1の駆動方向とは反対方向である第2の駆動方向(図4の矢印M2の方向)に回転する。湾曲部12が真直ぐな中立状態では、モータ27は中立位置に位置している。中立位置からモータ27が第1の駆動方向に回転することにより、湾曲ワイヤ32Aが牽引される。これにより、中立状態から湾曲部12が第1の湾曲方向(図2の矢印A1の方向)に湾曲する。一方、中立位置からモータ27が第2の駆動方向に回転することにより、湾曲ワイヤ32Bが牽引される。これにより、中立状態から湾曲部12が第2の湾曲方向(図2の矢印A2の方向)に湾曲する。以上のように、モータ27が駆動されることにより、湾曲部12が湾曲動作を行う。
【0018】
図5は、ジョイスティック21での湾曲操作により湾曲部12を湾曲動作させる作用を説明する図である。図5に示すように、ジョイスティック21での湾曲操作により、基準位置T0からのジョイスティック21の変位量を示す指令が、動作速度決定部22に入力される。動作速度決定部22は、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対して比例する状態に、湾曲部12の湾曲動作の動作速度を決定する(ステップS101)。そして、決定された動作速度に基づいて、速度指令を出力する。
【0019】
図6は、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量(δ)と湾曲部12の動作速度(v)との関係を示す図である。図6では、基準位置T0からの第1の移動方向への変位量を正で、基準位置T0からの第2の移動方向への変位量を負で示す。また、第1の湾曲方向への動作速度を正で、第2の湾曲方向への動作速度を負で示す。図6に示すように、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量(δ)と湾曲部の動作速度(v)との関係は、
【数1】

となる。
【0020】
すなわち、動作速度決定部22は、ジョイスティック21の基準位置T0からの第1の移動方向への変位量に対して比例する状態に、第1の湾曲方向への湾曲部12の動作速度を決定する。また、動作速度決定部22ジョイスティック21の基準位置T0からの第2の移動方向への変位量に対して比例する状態に、第2の湾曲方向への湾曲部12の動作速度を決定する。
【0021】
ここで、式(1)のパラメータa0は、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対する湾曲部12の動作速度の比率である。変位量(δ)に対する動作速度(v)の比率(a0)は、比率設定部23で設定される。そして、設定された比率(a0)が、動作速度決定部22に入力される。比率設定部23での比率(a0)の設定は、術者の操作等により行われる。
【0022】
図2に示すように、駆動制御部29は、駆動指令生成部33を備える。図5に示すように、動作速度決定部22からの速度指令は、駆動指令生成部33により時間積分される(ステップS102)。そして、モータ27を駆動させる駆動指令が生成される。生成された駆動指令に基づいて、モータ27は駆動される。
【0023】
図2に示すように、操作部3の内部には、中立位置からのモータ27の変位量を検出する位置センサ35が設けられている。位置センサ35は、駆動制御部29と電気的に接続されている。駆動制御部29は、モータ27の駆動後の位置を決定する駆動位置決定部36を備える。図5に示すように、位置センサ35により検出されたモータ27の変位量及び駆動指令生成部からの駆動指令に基づいて、駆動位置決定部36はモータ27の駆動後の位置を決定する(ステップS103)。
【0024】
図2に示すように、駆動制御部29は、微分実施部37と、駆動速度決定部38とを備える。図5に示すように、位置センサ35により検出されたモータ27の変位量の情報は、微分実施部37で時間微分される(ステップS105)。そして、変位量を時間微分した駆動速度の情報として、駆動速度決定部38に入力される。また、駆動速度決定部38には、モータ27の位置偏差が、駆動位置決定部36から入力される。ここで、モータ27の位置偏差とは、位置センサ35により検出されたモータ27の変位量の駆動位置決定部36により決定された駆動後の位置に対するズレである。モータ27の位置偏差が入力されることにより、駆動速度決定部38でモータ27の駆動速度が決定される(ステップS106)。
【0025】
図2に示すように、駆動制御部29は、駆動電流生成部39を備える。図5に示すように、駆動速度決定部38からのモータ27の速度偏差に基づいて、駆動電流生成部39はモータ27を駆動させる駆動電流を生成する(ステップS107)。ここで、モータ27の速度偏差とは、モータ27の変位量を時間微分した現在の駆動速度の駆動速度決定部38により決定された駆動速度に対するズレである。そして、生成された駆動電流により、モータ27が駆動される(ステップS108)。なお、モータ27が駆動した際の駆動電流値は、駆動電流生成部39にフィードバックされる。モータ27が駆動した際の駆動力が湾曲部12に伝達されることにより、湾曲部12が湾曲される。
【0026】
以上のように、駆動制御部29は、動作速度決定部22によって決定された動作速度に基づいて、モータ27の駆動制御している。これにより、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対して比例する動作速度で、湾曲部を湾曲させることが可能となる。
【0027】
図7乃至図11は、ジョイスティック21での湾曲操作及び湾曲部12の湾曲動作の一例を示す図である。図7に示すように、ジョイスティック21を基準位置T0から第1の移動方向(図7乃至図11の矢印B1の方向)に移動させた際には(図7の矢印C1)、湾曲部12は真直ぐな中立状態から第1の湾曲方向(図7乃至図11の矢印A1の方向)に湾曲する(図7の矢印D1)。この際、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に比例する動作速度で、湾曲部12は湾曲動作を行う。そして、図8に示すように、ジョイスティック21を基準位置T0まで戻すことにより(図8の矢印C2)、湾曲部12が湾曲動作を停止する。この状態から、図9に示すように、ジョイスティック21を基準位置T0から再び第1の移動方向に移動させる(図9の矢印C3)。これにより、図8に示す状態から第1の湾曲方向に湾曲部12がさらに湾曲する(図9の矢印D2)。
【0028】
図9に示す状態から湾曲部12を真直ぐな中立状態に戻す際には、ジョイスティック21を基準位置T0まで戻す。そして、図10に示すように、ジョイスティック21を基準位置T0から第2の移動方向(図7乃至図11の矢印B2の方向)に移動させる(図10の矢印C4)。これにより、図9に示す状態から第2の湾曲方向(図7乃至図11の矢印A2の方向)に戻る湾曲動作を行い、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さくなる(図10の矢印D3)。この際、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に、湾曲部12の動作速度は比例する。この状態から、ジョイスティック21を基準位置T0に戻し、図11に示すように、ジョイスティック21を基準位置T0から再び第2の移動方向に移動させる(図11の矢印C5)。これにより、図10に示す状態から第2の湾曲方向に湾曲部12がさらに戻り、真直ぐな中立状態になる(図11の矢印D4)。
【0029】
以上のように、本実施形態の内視鏡1では、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に、湾曲部12の動作速度が比例する。すなわち、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が比例する構成ではない。このため、現在の湾曲状態からの湾曲部12の動作量が小さい場合でも、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量を小さくする必要はない。したがって、湾曲部12の動作量が小さい場合でも、ジョイスティック21を小さい移動量で移動させる必要がなく、ジョイスティック21での湾曲操作を行い易い。
【0030】
また、内視鏡1では、移動させた位置から基準位置T0にジョイスティック21を戻す際には、湾曲部12の動作は停止する。このため、基準位置T0から第1の移動方向へジョイスティック21を移動させ、基準位置T0にジョイスティック21を戻す操作を繰り返すことにより、中立状態からの湾曲部12の第1の湾曲方向への湾曲量が大きくなる。同様に、基準位置T0から第2の移動方向へジョイスティック21を移動させ、基準位置T0にジョイスティック21を戻す操作を繰り返すことにより、中立状態からの湾曲部12の第2の湾曲方向への湾曲量が大きくなる。したがって、中立状態からの湾曲部12の湾曲量を大きくすることも可能である。
【0031】
また、内視鏡1では、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対する湾曲部12の動作速度の比率(a0)は、比率設定部23で設定される。このため、術者は、ジョイスティック21の変位量(δ)に対する湾曲部12の動作速度(v)の比率(a0)を、用途、使用状態、好み等に適した値に設定することが可能となる。
【0032】
そこで、前記構成の内視鏡1では、以下の効果を奏する。すなわち、内視鏡1では、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に、湾曲部12の動作速度が比例する。すなわち、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が比例する構成ではない。このため、現在の湾曲状態からの湾曲部12の動作量が小さい場合でも、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量を小さくする必要はない。したがって、湾曲部12の動作量が小さい場合でも、ジョイスティック21を小さい移動量で移動させる必要がなく、容易にジョイスティック21での湾曲操作を行うことができる。
【0033】
(第1の実施形態の変形例)
なお、第1の実施形態では、ジョイスティック21により湾曲操作が行われるが、これに限るものではない。例えば変形例として、図12に示すように、操作部3の外表面に対してスライド可能な湾曲操作部であるスライド部材41により、湾曲操作が行われてもよい。スライド部材41は、基準位置T0から第1の移動方向(図12の矢印B1の方向)及び第1の移動方向とは反対方向である第2の移動方向(図12の矢印B2の方向)に移動可能である。そして、スライド部材41の基準位置T0からの第1の移動方向への変位量に対して比例する状態に、第1の湾曲方向への湾曲部12の動作速度が決定される。同様に、スライド部材41の基準位置T0からの第2の移動方向への変位量に対して比例する状態に、第2の湾曲方向への湾曲部12の動作速度が決定される。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、図13乃至図16を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の部分及び同一の機能を有する部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0035】
図13は、本実施形態の内視鏡1の制御ユニット6を示す図である。図13に示すように、本実施形態の制御ユニット6は、記録部43を備える。記録部43は、動作速度決定部22に電気的に接続されている。
【0036】
図14は、本実施形態のジョイスティック21での湾曲操作を説明する図である。図14に示すように、ジョイスティック21は、中間位置T3から第1の移動方向(図14の矢印B1の方向)及び第1の移動方向とは反対方向である第2の移動方向(図14の矢印B2)の方向に移動可能である。中間位置T3より、第1の移動方向側に第1の基準位置T1が位置している。また、中間位置T3より、第2の移動方向側に第2の基準位置T2が位置している。すなわち、第2の基準位置T2は、第1の基準位置T1より第2の移動方向側に位置している。ここで、中間位置T3から第1の基準位置T1までのジョイスティック21の変位量と中間位置T3から第2の基準位置T2までのジョイスティック21の変位量は、δ0で同一である。
【0037】
図15は、動作速度決定部22の作用を説明する図である。図15に示すように、ジョイスティック21での湾曲操作により、中間位置T3からのジョイスティック21の変位量が、動作速度決定部22に入力される。また、記録部43には、第1の基準位置T1、第2の基準位置T2及び中間位置T3の位置情報が記録されている。第1の基準位置T1、第2の基準位置T2及び中間位置T3の位置情報は、動作速度決定部22に入力される。そして、動作速度決定部22は、湾曲部12の動作速度を決定する(ステップS111)。そして、決定された動作速度に基づいて、速度指令を出力する。
【0038】
図16は、ジョイスティック21の中間位置T3からの変位量(δ)と湾曲部12の動作速度(v)との関係を示す図である。図16では、中間位置T3からの第1の移動方向への変位量を正で、中間位置T3からの第2の移動方向への変位量を負で示す。また、第1の湾曲方向への動作速度を正で、第2の湾曲方向への動作速度を負で示す。図5に示すように、ジョイスティック21の中間位置T3からの変位量(δ)と湾曲部の動作速度(v)との関係は、
【数2】

となる。
【0039】
すなわち、中間位置T3からのジョイスティック21の第1の移動方向への変位量(δ)が中間位置T3から第1の基準位置T1までの変位量δ0より大きい場合は、第1の湾曲方向への動作速度が湾曲部12に生じる。この際、動作速度決定部22は、第1の基準位置T1からのジョイスティック21の変位量(δ−δ0)に比例する状態に、湾曲部12の第1の湾曲方向への動作速度(v)を決定する。また、中間位置T3からのジョイスティック21の第2の移動方向への変位量(|δ|)が中間位置T3から第2の基準位置T2までの変位量δ0より大きい場合は、動作速度決定部22により第2の湾曲方向への動作速度が湾曲部12に生じる。この際、動作速度決定部22は、第2の基準位置T2からのジョイスティック21の変位量(δ+δ0)に比例する状態に、湾曲部12の第2の湾曲方向への動作速度(v)を決定する。
【0040】
ここで、式(2)のパラメータa1は、ジョイスティック21の第1の基準位置T1からの第1の移動方向への変位量(δ−δ0)に対する湾曲部12の動作速度の比率、及び、ジョイスティック21の第2の基準位置T2からの第2の移動方向への変位量(δ+δ0)に対する湾曲部12の動作速度の比率である。変位量(δ−δ0,δ+δ0)に対する動作速度(v)の比率(a1)は、比率設定部23で設定される。そして、設定された比率(a1)が、動作速度決定部22に入力される。
【0041】
また、ジョイスティック21が第1の基準位置T1と第2の基準位置T2との間に位置する際には、中間位置T3からの変位量(δ)に関係なく、湾曲部12の動作速度(v)はゼロとなる。すなわち、第1の基準位置T1又は第2の基準位置T2からの変位量に関係なく、動作速度決定部22により湾曲部12の動作速度はゼロに設定される。このため、ジョイスティック21が第1の基準位置T1と第2の基準位置T2との間に位置する際には、湾曲部12は動作を停止する。
【0042】
ここで、中立状態から湾曲部12を第1の湾曲方向に湾曲させた後に、ジョイスティック21を第1の基準位置T1まで戻し、湾曲部12の動作を停止することを考える。この湾曲操作では、ジョイスティック21を第1の基準位置T1で正確に停止させ難く、ジョイスティック21が第1の基準位置T1より第2の移動方向側に移動することがある。本実施形態では、ジョイスティック21が第1の基準位置T1と第2の基準位置T2との間に位置する際には、第1の基準位置T1又は第2の基準位置T2からの変位量に関係なく、湾曲部12の動作速度はゼロとなる。このため、ジョイスティック21が第1の基準位置T1より第2の移動方向側に移動した場合も、湾曲部12に第2の湾曲方向への動作速度が生じることなく、確実に湾曲部12の動作が停止される。以上のように、本実施形態の内視鏡1では、湾曲部12の動作を停止する場合に、湾曲操作を行い易い。
なお、本実施形態では、中間位置T3から第1の基準位置T1までの変位量と中間位置T3から第2の基準位置T2までの変位量は、δ0で同一であるが、これに限るものではない。例えば、中間位置T3から第1の基準位置T1までの変位量をδ1、中間位置T3から第1の基準位置T1までの変位量をδ1とは異なるδ2に設定してもよい。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、図17乃至図19を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の部分及び同一の機能を有する部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0044】
図17は、本実施形態の内視鏡1の制御ユニット6を示す図である。図17に示すように、本実施形態の制御ユニット6の駆動制御部29は、駆動指令生成部33に加えて、重み乗算部45を備える。
【0045】
図18は、駆動指令生成部33及び重み乗算部45の作用を説明する図である。図18に示すように、動作速度決定部22からの速度指令は、第1の実施形態と同様に、駆動指令生成部33により時間積分される(ステップS113)。そして、モータ27を駆動させる駆動指令が生成される。そして、駆動指令には、重み乗算部45により重み関数が乗算される(ステップS115)。重み関数が乗算された駆動指令に基づいて、第1の実施形態で前述したように(図5参照)、モータ27は駆動制御される。以上のように、駆動制御部29は、動作速度決定部22によって決定された動作速度に基づいて、モータ27を駆動制御している。
【0046】
図19は、重み関数を示す図である。図19に示すように、重み関数Yは、
【数3】

となる。ここで、c0は正の定数である。
【0047】
すなわち、重み関数は原点を通る。また、原点から離れるにつれて重み関数の接線の傾きが小さくなる。例えば、関数の点(X1,Y1)での接線L1の傾きより、関数の点(X2,Y2)での接線L2の傾きが小さくなる。ここで、点(X2,Y2)は、点(X1,Y1)より原点から離れた位置に位置している。
【0048】
内視鏡1の使用時には、真直ぐな中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さい範囲で、湾曲部12の湾曲動作を行うことが多い。このため、中立位置からの変位量が小さい状態で、モータ27が駆動されることが多くなる。本実施形態では、中立位置からのモータ27の変位量が小さくなるにつれて、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対するモータ27の駆動量の比率が大きくなる。このため、中立位置からのモータ27の変位量が小さい場合、ジョイスティック21での湾曲操作によって、十分に大きい駆動量でモータ27が駆動される。このため、頻繁に湾曲動作が行われる中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さい範囲において、さらに適切に湾曲部12の湾曲動作が行われる。
【0049】
また、湾曲部12は、湾曲ワイヤ32A,32Bの一方が牽引されることにより、真直ぐな中立状態から湾曲する。このため、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さい場合、いずれの湾曲ワイヤ32A,32Bも緊張状態でないため、湾曲ワイヤ32A,32Bに弛みが生じ易い。湾曲ワイヤ32A,32Bの弛みの影響により、モータ27の駆動力の湾曲部12への伝達性が低下してしまう。このため、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さい範囲で湾曲動作を行う際に、モータ27の駆動量が小さくなると、湾曲部12が適切に湾曲されない。そこで、本実施形態の内視鏡1では、中立位置からのモータ27の変位量が小さくなるにつれて、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対するモータ27の駆動量の比率が大きくしている。すなわち、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さい範囲では、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対するモータ27の駆動量の比率が大きくなる。これにより、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さい範囲では、モータ27の駆動力の湾曲部12への伝達性に対する湾曲ワイヤ32A,32Bの弛みの影響が打ち消される。したがって、中立状態からの湾曲部12の湾曲量が小さい範囲でも、適切に湾曲部12の湾曲動作が行われる。
【0050】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について、図20乃至図22を参照して説明する。なお、第3の実施形態と同一の部分及び同一の機能を有する部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0051】
図20は、本実施形態の内視鏡1の制御ユニット6を示す図である。図20に示すように、本実施形態の制御ユニット6は、関数選択部47を備える。関数選択部47は、駆動制御部29に電気的に接続されている。
【0052】
図21は、駆動制御部29の重み乗算部45の作用を説明する図である。図21に示すように、重み乗算部45では、駆動指令生成部33からの駆動指令に重み関数が乗算される(ステップS117)。重み関数が乗算された駆動指令に基づいて、第1の実施形態で前述したように(図5参照)、モータ27は駆動制御される。
【0053】
図22は、重み関数を示す図である。図22に示すように、重み関数Yは、
【数4】

となる。ここで、b0は正の定数である。
【0054】
すなわち、第3の実施形態と同様に、重み関数は原点を通る。また、原点から離れるにつれて重み関数の接線の傾きが小さくなる。
また、関数選択部47では、重み関数の種類を設定する。重み関数は、重み関数が原点を通り、かつ、原点から離れるにつれて重み関数の接線の傾きが小さくなることを条件として、選択される。そして、図21に示すように、選択された重み関数の種類が、駆動制御部29の重み乗算部45に入力される。関数選択部47での重み関数の選択は、術者の操作等により行われる。
【0055】
そして、重み乗算部45は、選択された重み関数に基づいて、式(4)の定数b0の値を決定する。図22に示すように、b0が10の場合、b0が1の場合、b0が0.1の場合では、重み関数の種類が異なる。ただし、いずれの場合も、重み関数が原点を通り、かつ、原点から離れるにつれて重み関数の接線の傾きが小さくなる。
【0056】
以上のような構成にすることにより、本実施形態の内視鏡1では、重み関数の種類が、関数選択部47で設定される。これにより、中立位置からのモータ27の変位量が小さくなるにつれて、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量に対するモータ27の駆動量の比率が大きくなることを条件として、ジョイスティック21の基準位置T0からの変位量とモータ27の駆動量との関係が調整される。このため、術者は、前述の条件を満たす範囲で、ジョイスティック21の変位量とモータ27の駆動量との関係を、用途、使用状態、好み等に適した状態に設定することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前期の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1…内視鏡、2…挿入部、12…湾曲部、21…ジョイスティック、22…動作速度決定部、27…モータ、29…駆動制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能な湾曲部を備える挿入部と、
前記挿入部より基端方向側に設けられ、基準位置から移動させることにより、前記湾曲部の湾曲操作が行われる湾曲操作部と、
前記湾曲操作部の前記基準位置からの変位量に対して比例する状態に、前記湾曲部の湾曲動作の動作速度を決定する動作速度決定部と、
前記湾曲操作部での前記湾曲操作によって駆動されることにより、前記湾曲部を湾曲動作させる駆動部材と、
前記動作速度決定部によって決定された前記動作速度に基づいて、前記駆動部材を駆動制御する駆動制御部と、
を具備する内視鏡。
【請求項2】
前記湾曲部は、長手方向に垂直な第1の湾曲方向及び前記第1の湾曲方向とは反対方向である第2の湾曲方向に湾曲可能であり、
前記湾曲操作部は、前記基準位置から第1の移動方向及び前記第1の移動方向とは反対方向である第2の移動方向に移動可能であり、
前記動作速度決定部は、前記湾曲操作部の前記基準位置からの前記第1の移動方向への前記変位量に対して比例する状態に、前記第1の湾曲方向への前記湾曲部の前記動作速度を決定し、前記湾曲操作部の前記基準位置からの前記第2の移動方向への前記変位量に対して比例する状態に、前記第2の湾曲方向への前記湾曲部の前記動作速度を決定する請求項1の内視鏡。
【請求項3】
前記基準位置は、第1の基準位置と、前記第1の基準位置より前記第2の移動方向側に位置する第2の基準位置と、を含み、
前記動作速度決定部は、前記湾曲操作部の前記第1の基準位置からの前記第1の移動方向への前記変位量に対して比例する状態に、前記第1の湾曲方向への前記湾曲部の前記動作速度を決定し、前記湾曲操作部の前記第2の基準位置からの前記第2の移動方向への前記変位量に対して比例する状態に、前記第2の湾曲方向への前記湾曲部の前記動作速度を決定する請求項2の内視鏡。
【請求項4】
前記動作速度決定部は、前記湾曲操作部が前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との間に位置する際に、前記湾曲操作部の前記第1の基準位置又は前記第2の基準位置からの前記変位量に関係なく、前記湾曲部の前記動作速度をゼロに設定する請求項3の内視鏡。
【請求項5】
前記湾曲操作部の前記基準位置からの前記変位量に対する前記湾曲部の前記動作速度の比率を設定する比率設定部をさらに具備する請求項1の内視鏡。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記動作速度決定部によって決定された前記動作速度に基づく速度指令を時間積分し、前記駆動部材を駆動させる駆動指令を生成する駆動指令生成部を備える請求項1の内視鏡。
【請求項7】
前記駆動制御部は、原点を通り、かつ、前記原点から離れるにつれて接線の傾きが小さくなる重み関数を前記駆動指令に乗算する重み乗算部を備える請求項6の内視鏡。
【請求項8】
前記重み関数が前記原点を通り、かつ、前記原点から離れるにつれて前記重み関数の前記接線の傾きが小さくなることを条件として、前記重み関数の種類を選択する関数選択部をさらに具備する請求項7の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−22184(P2013−22184A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158850(P2011−158850)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】