説明

円形ニードリングテーブル

【課題】完璧に綺麗でありかつ材料がクリープ作用の影響を受けることを防ぐ縁部を有する、織物構造を得ることを可能にするニードリングテーブルを提案する。
【解決手段】本発明は、環状繊維プリフォームから作られる織物構造をニードリングするための円形ニードリングテーブル(10)であって、当該テーブルが、水平環状プラテン(14)であって、その上に置かれる環状繊維プリフォーム(12)を有するための水平環状プラテンと、プラテンの軸線(16)回りに繊維プリフォームを回転駆動するための駆動手段と、プラテンの扇状部にわたって拡がるニードリングヘッド(24)を有しかつプラテンに対する垂直移動により駆動されるニードリング装置(22)と、ニードリングヘッドの下に繊維プリフォームを案内するための案内手段(38a,38b)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状繊維プリフォームからニードリングされた織物構造を作るための円形ニードリングテーブルの一般的な分野に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料から作られる環状部品の、特に飛行機のブレーキのための炭素繊維強化炭素複合材料(carbon/carbon (C/C) composite material)から作られるディクスなどのブレーキディスクの、繊維補強材を構成する環状織物構造を製作するための円形タイプのニードリングテーブルを使用することが知られている。
【0003】
円形ニードリングテーブルは概して、環状繊維プリフォームが置かれる水平環状プラテン(platen)と、プラテンの軸線回りに繊維プリフォームを回転駆動するための駆動手段(通常は摩擦駆動手段)と、プラテンの扇状部(angular sector)にわたって拡がりかつプラテンに対する垂直往復移動により駆動されるニードリングヘッドを有するニードリング装置とを含む。そのようなニードリングテーブルの実施形態を説明する特許文献1を参照することができる。
【0004】
そのようなテーブルの場合、ニードリングヘッドの下の繊維プリフォームの第1の層に可撓性があるならば、当該第1の層を位置決めするという課題が存在する。以降の層がニードリングヘッドの下に適切に位置合わせされないならば、以降の層にも同じことが当てはまり、したがって、もたらされる繊維構造は概して、適切に連続でなく綺麗でない縁部を有することになる。加えて、ニードリングヘッドの下を通過する位置で、材料は縁部に向かって広がる傾向がある(クリープ現象)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/088451号
【特許文献2】国際公開第02/088449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の主な目的は、完璧に綺麗でありかつ材料がクリープ作用の影響を受けることを防ぐ縁部を有する織物構造を得ることを可能にするニードリングテーブルを提案することによって、そのような欠点を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、環状繊維プリフォームから作られた織物構造をニードリングするための円形ニードリングテーブルによって達せられ、
テーブルは、
水平環状プラテンであって、その上に置かれる環状繊維プリフォームを有するための水平環状プラテンと、
プラテンの軸線回りに繊維プリフォームを回転駆動するための駆動手段と、
プラテンの扇状部にわたって拡がるニードリングヘッドを有し、かつ、
プラテンに対する垂直移動により駆動される、
ニードリング装置と
を具備し、
さらに、本発明により、
ニードリングヘッドの下に繊維プリフォームを案内するための案内手段
を具備する。
【0008】
ニードリングヘッドの下に繊維プリフォームを案内するための案内手段の存在は、第1の層がニードリングヘッドの下に精密に位置決めされることを確保することを可能にする。同様に、繊維プリフォームの以降の層は正確に、互いに積み重ねられる。結果として、得られた繊維構造は綺麗な縁部を有し、材料の如何なるクリープ現象をも防ぐことができる。
【0009】
一実施形態において、ニードリングテーブルは、繊維プリフォームを案内するための複数の案内部材を含み、これらの部材は、ニードリングヘッドとプラテンとの間に狭装されるストリッパを構成する板に固定される。
【0010】
この実施形態において、案内部材は、
ストリッパからプラテンに向かって鉛直方向に延び、かつ、
繊維プリフォームのための外側及び内側の誘導作用を形成するように角度的に位置決めされた、
複数のピンによって形成されることができる。
そのような状況下において、プラテンは、有利には、複数の孔を含み、各孔は、ストリッパの案内ピンのうちの1つと一致するように置かれる。あるいは、案内部材は、ストリッパからプラテンに向かって鉛直方向に延びる内側壁及び外側壁によって形成されることができる。
【0011】
別実施形態において、ニードリングテーブルは、繊維シートを案内するための内側鉛直壁及び外側鉛直壁を含み、内側鉛直壁及び外側鉛直壁は、プラテンに固定され、繊維プリフォームのための外側及び内側の誘導作用を提供するように角度的に位置決めされる。
【0012】
この別実施形態において、さらに、ニードリングテーブルは、ニードリングヘッドとプラテンとの間に狭装されたストリッパを形成する板を具備し、繊維プリフォームを案内するための外側案内壁又はストリッパは、ストリッパを下げることを可能にする鉛直ノッチを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における円形ニードリングテーブルを示す側面線図。
【図2】本発明の実施形態における円形ニードリングテーブルを示す平面線図。
【図3】異なる位置にある図1及び図2のテーブルのニードリング装置の斜視図。
【図4】異なる位置にある図1及び図2のテーブルのニードリング装置の斜視図。
【図5A】本発明の別実施形態における円形ニードリングテーブルを示す側面線図。
【図5B】本発明の別実施形態における円形ニードリングテーブルを示す斜視線図。
【図6A】他の位置にある図5Aのニードリングテーブルの側面図。
【図6B】他の位置にある図5Bのニードリングテーブルの斜視図。
【図7】本発明の円形ニードリングテーブルの他の変形実施形態を示す図。
【図8】本発明の円形ニードリングテーブルの他の変形実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照する以下の記載から現れ、添付図面は特徴を制限することなく実施形態を示す。
【0015】
本発明の第1の実施形態における円形ニードリングテーブル10は、図1及び図2に極めて略図化したやり方で示される。
【0016】
本発明は、複数の環状織物層(又は複数の環状織物プライ(plies))が環状形状のニードリングされる繊維プリフォームを形成するために、プラテン又は台に互いに積み重ねられニードリングされる任意の円形ニードリング工程に適用される。層を、単方向の又は多方向の繊維から作り上げられた織物から又は不織材料から並べられ切り取られた輪状体又は扇状体として、事前に形成することができる。層を、特許文献2で開示されたような供給装置から平坦に巻かれた巻状体として形成し、又は変形した編物から形成された巻状体により、若しくは、実際には、変形可能な二次元構造(らせん状織物又は編物)から形成された巻状体により、形成することもできる。
【0017】
ニードリング用の繊維環状プリフォーム12は、ニードリングテーブルの水平環状プラテン14上に直接載せる。当該プリフォームは、環状プリフォームと永続的に接触し続けられる円錐ローラ18a,18bの組によって、鉛直軸線16回りに回転駆動される。この組は、120°だけ互いに離間される2つの円錐ローラを具備し、独立した歯車モータユニット20a,20bによって各円錐ローラを作動することができる。それにもかかわらず、適切なトランスミッションに結合される通常の駆動機構がさらに想定され得る。
【0018】
このやり方で回転させられる環状プリフォーム12はニードリング装置22を通過し、ニードリング装置22は特に、水平プラテン14の事前に決められた扇状体を覆うニードリングヘッド24を具備する。このニードリングヘッドは、(例えば、クランク及び接続棒タイプの)適切な駆動装置26によりプラテン14に対して垂直往復移動により駆動される。
【0019】
ニードリングヘッド24は、決められた数の針28を支持し、針28には、針がプリフォームを貫通するときに、環状プリフォームの互いに積み重ねられた層に繊維を保持しかつ層を貫いて繊維を移送するための複数の鉤若しくは返し(barbs)、フック、又は叉(forks)が取り付けられる。この目的のために、ニードリングテーブルのプラテン14は、針28が環状プリフォームの第1の層をニードリングしている間に針28が通過できるように、ニードリングヘッドの針28と一致するように置かれる一連の鉛直穿孔30を有する。さらに、新しいプライがニードリングされるたびに、ニードリングテーブルのプラテンが、1つのニードリングされる層の厚さに対応する決められたサイズの下向きの段差による適切な駆動手段32によって鉛直に移動される。
【0020】
さらに、図3及び図4により正確に示されるように、ニードリング装置22はさらに、ストリッパ34を形成する板を含み、この板は、ニードリングヘッド22とプラテン14との間に狭装される。
【0021】
ストリッパは、針28が環状プリフォームを貫通する間に、ニードリングヘッドの下に位置する環状プリフォームの部分を所定の位置に保持する機能を果たす。この目的のために、ストリッパ34は、例えばニードリングヘッドを駆動するための駆動装置26により、プラテン14に対して垂直方向に移動されるのに適している。この移動はニードリングヘッドの移動と同期が取られ、したがって、(図4に示されるように)針が貫通している間に、ストリッパ34は、下げられてニードリングヘッドの下に位置する環状プリフォームの部分に押圧される。さらに、ストリッパは、ストリッパを貫通しかつニードリングヘッドの針28と一致するように置かれる一連の穿孔36を含み、したがって、針28は、環状プリフォームのプライをニードリングしつつ、ストリッパを貫通する。
【0022】
本発明によれば、ニードリングヘッド24の下に環状プリフォーム12を案内するための手段がさらに提供される。
【0023】
これらの案内手段の第1の実施形態において、図1〜図4に示されるように、ストリッパ34は案内ピン38a,38bを有し、案内ピン38a,38bは、ストリッパの内面からプラテンに向かって鉛直方向に延び、環状プリフォームの外側及び内側の誘導作用を提供するように角度的に位置決めされる。
【0024】
特に図3に示されるように、ストリッパ34は、例えば、内側において鉛直軸線16に中心合わせされる円弧を画定する4つの内側ピン38aと、外側において軸線16に中心合わせされる円弧を画定する6つの外側ピン38bとを具備することができる。これらの内側ピン及び外側ピンは、環状プリフォームがニードリングヘッドの下を通過するこれらの内側ピンと外側ピンとの間に通路を画定する。したがって、ストリッパが下げられて環状プリフォームに押圧されると(図4)、プリフォームは、ニードリングヘッドに適用される前に、ニードリングヘッドの下に正確に位置決めされる。
【0025】
さらに、プラテン14は、一連の孔40を含み、各孔がストリッパ34の案内ピン38a,38bのそれぞれ1つと一致するように置かれ、それにより、案内ピン38a,38bは、ストリッパが下げられたときに、孔の内部に入ることができる。
【0026】
例として、案内ピン38a,38bは金属から作られ、さらに金属から作られるストリッパに溶接される。ニードリング用の環状プリフォームの寸法、特に環状プリフォームの幅に応じて、内側ピンと外側ピンとの間隔をストリッパの変更によってプリフォームの寸法に適合するように、当該間隔を調節することができる。
【0027】
図5A、図5B、図6A及び図6Bは、これらの案内手段の第2の実施形態を示す。第1の実施形態を参照しつつ説明される要素と一致する、第2の実施形態のニードリングテーブルの様々な要素には、同じ参照符号が付与される。
【0028】
さらにここで、ニードリングテーブルの水平プラテン14は、環状プリフォームを案内するための鉛直方向壁を有し、プリフォームの外側及び内側の誘導作用を形成するように、当該壁が角度的に位置決めされる。
【0029】
さらに正確には、プラテンは、プラテンの縁部に取り付けられた外側案内壁44aを有する外側水平板42aを支持し、外側案内壁44aは、当該外側板42aからニードリングヘッド24に向かって鉛直方向に延びる。プラテンはさらに、プラテンの縁部に取り付けられた内側案内壁44bを有する内側水平板42bを支持し、内側案内壁44bは、ニードリングヘッドに向かって当該内側板42bから鉛直方向に延びる。これらの壁44a、44bは、ニードリングヘッドの下に位置決めされる環状プリフォームの部分のための外側の誘導作用及び内側の誘導作用を提供する。さらに、これらの案内壁は、水平プラテン14に対して固定されている。
【0030】
ストリッパを下げることができるように、外側案内壁44aは、ストリッパを形成する板の縁部を通過させるための鉛直切欠き46を含むことができる(図5A、図5B、図6A及び図6B)。あるいは、図7に示される変形実施形態において、ストリッパを形成する板の縁部は、ストリッパを下げることができるように、そのような鉛直ノッチ46’を含むことができる。
【0031】
図8は、円形ニードリングテーブルのさらに他の変形実施形態を示し、当該実施形態において、ニードリングヘッド24の下でプリフォームを案内するための鉛直壁44’a,44’bが(プラテンの代わりに)ストリッパ34に固定され、これらの壁は、ストリッパを形成する板からテーブルのプラテン14に向かって鉛直方向に延びる。さらに、案内壁44’a,44’bと相補的な形状の開口48は、ストリッパを下げることができるように、壁に面するプラテンに形成される。
【0032】
最後に、ニードリングされるべき環状プリフォームの寸法の機能として、特に当該環状プリフォームの幅の機能として、外側壁と内側壁との間隔を変更することと、外側壁及び内側壁の曲率半径を変更することとによって、プリフォームの寸法に適合するように、外側案内壁と内側案内壁との間隔を調節することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状繊維プリフォームから作られる織物構造をニードリングするための円形ニードリングテーブル(10)であって、
当該テーブルが、
水平環状プラテン(14)であって、その上に置かれる環状繊維プリフォーム(12)を有するための水平環状プラテンと、
プラテンの軸線(16)回りに繊維プリフォームを回転駆動するための駆動手段(18a,18b,18c)と、
プラテンの扇状部にわたって拡がるニードリングヘッド(24)を有し、かつ、
プラテンに対する垂直移動により駆動される、
ニードリング装置(22)と
を具備する、
ニードリングテーブルにおいて、
さらに、ニードリングヘッドの下に繊維プリフォームを案内するための案内手段(38a,38b;44a,44b)
を含む、
テーブル。
【請求項2】
繊維プリフォームを案内するための複数の案内部材(38a,38b)を含み、
これらの部材が、ニードリングヘッド(24)とプラテン(14)との間に狭装されるストリッパを構成する板(34)に固定される、
請求項1に記載のテーブル。
【請求項3】
案内部材が、
ストリッパからプラテンに向かって鉛直方向に延び、かつ、
繊維プリフォームのための外側及び内側の誘導作用を形成するように角度的に位置決めされた、
複数のピン(38a,38b)によって形成される、
請求項2に記載のテーブル。
【請求項4】
プラテンが複数の孔(40)を含み、
各孔が、ストリッパの案内ピンのうちの1つと一致するように置かれる、
請求項3に記載のテーブル。
【請求項5】
案内部材が、ストリッパからプラテンに向かって鉛直方向に延びる内側壁(44’a)及び外側壁(44’b)によって形成される、
請求項2に記載のテーブル。
【請求項6】
繊維シートを案内するための内側鉛直壁(44a)及び外側鉛直壁(44b)を含み、
内側鉛直壁及び外側鉛直壁が、
プラテン(14)に固定され、
繊維プリフォームのための外側及び内側の誘導作用を提供するように角度的に位置決めされる、
請求項1に記載のテーブル。
【請求項7】
さらに、ニードリングヘッド(24)とプラテン(14)との間に狭装されたストリッパを形成する板(34)を具備し、
繊維プリフォームを案内するための外側案内壁(44a)又はストリッパが、ストリッパを下げることを可能にする鉛直ノッチ(46,46’)を有する、
請求項6に記載のテーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−132656(P2011−132656A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286172(P2010−286172)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(591131361)メシエ−ブガッティ (64)
【氏名又は名称原語表記】MESSIER BUGATTI
【Fターム(参考)】