説明

円筒状エアフィルタおよびその製造方法

【課題】紡糸装置に使用する円筒状エアフィルタにおいて、円筒状エアフィルタが焼けないようにし、高い空隙率が得られるようにする。
【解決手段】特別の構成の円筒状エアフィルタが新たに提供される。円筒状エアフィルタは素線で織られた一定長さの金網1からなる。そして、その金網1が円筒状に多層に巻かれ、積層され、堅固に焼結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紡糸装置に使用する円筒状エアフィルタおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒状エアフィルタが紡糸装置に使用されることがある。たとえば、特開2002−309431号公報(特許文献1)に記載されている紡糸装置がそれである。同公報の紡糸装置では、溶融ポリマが口金から吐出され、円筒状エアフィルタ内を通過する。さらに、円筒状エアフィルタによってエアが濾過され、これが溶融ポリマに吹き付けられる。したがって、エアによって溶融ポリマが冷却され、単糸が形成される。その後、集束ガイドによって単糸が集束され、集束糸が形成され、巻取装置によって集束糸が巻き取られる。
【0003】
ところで、この場合、重要視されるものに円筒状エアフィルタの空隙率がある。空隙率とは全体に対する空隙の面積の割合のことである。したがって、空隙率によってエアの流量が増加または減少し、冷却効果が決定される。
【0004】
この関係上、紙によって円筒状エアフィルタが製造されることが多い。紙の場合、その空隙率は相当大きい。しかしながら、その反面、溶融ポリマによって円筒状エアフィルタが加熱され、焼けるという問題がある。
【0005】
一方、加熱炉によって金属粉末を熱処理し、焼結し、金属粉末によって円筒状エアフィルタを製造することも考えられる。金属粉末の場合、溶融ポリマによって円筒状エアフィルタが加熱され、焼けることはない。しかしながら、その空隙率はきわめて小さく、30%程度である。このため、円筒状エアフィルタによってエアが濾過され、これが溶融ポリマに吹き付けられるとき、その流量が不足し、冷却効果が低いという問題がある。
【0006】
したがって、この発明は、紡糸装置に使用する円筒状エアフィルタにおいて、円筒状エアフィルタが焼けないようにすること、および高い空隙率が得られるようにすることを目的としてなされたものである。
【特許文献1】特開2002−309431号公報
【発明の開示】
【0007】
この発明によれば、特別の構成の円筒状エアフィルタが新たに提供され、円筒状エアフィルタは素線で織られた一定長さの金網からなる。そして、その金網が円筒状に多層に巻かれ、積層され、堅固に焼結される。
【0008】
素線はおよそ1mmの直径であり、金網は10〜350メッシュのもので、10〜20層に巻かれていることが好ましい。
【0009】
金網として細かい金網と粗い金網を使用し、細かい金網を数層に巻き、粗い金網を細かい金網のまわりに巻いてもよい。
【0010】
さらに、この発明によれば、円筒状エアフィルタの製造方法が新たに提供される。その製造方法では、素線で織られた一定長さの金網がマンドレルに導かれ、マンドレルのまわりにおいて、金網が円筒状に多層に巻かれ、積層される。その後、金網およびマンドレルが真空炉に入れられ、真空炉によって金網が熱処理され、焼結される。さらに、真空炉によって金網が炉冷され、その後、金網およびマンドレルが真空炉から取り出され、マンドレルが金網から抜き取られる。
【0011】
金網を巻く前、金網を一対のローラ間に導き、ローラによって金網をカレンダ処理することが好ましい。
【0012】
他の実施例では、円筒状エアフィルタは素線で編まれた円筒状の多数の金網からなる。そして、各金網が同心に多層に重ね合わされ、積層され、堅固に焼結される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施例を説明する。
【0014】
図1はこの発明にかかる円筒状エアフィルタを示す。このエアフィルタは素線で織られた一定長さの金網1からなる。そして、その金網1が円筒状に多層に巻かれ、積層され、堅固に焼結されている。したがって、金網1の外端2および内端3によってシームが形成される。
【0015】
素線はおよそ1mmの直径であり、金網1は10〜350メッシュのもので、10〜20層に巻かれていることが好ましい。この実施例では、素線はステンレス線(SUS304またはSUS316)であり、0.8mmの直径をもち、金網1は60メッシュのもので、16層に巻かれている。したがって、金網1によって円筒状エアフィルタが製造される。その外径D1はおよそ60mmであり、内径D2はおよそ50mmであり、壁厚tはおよそ5mmである。
【0016】
図1のエアフィルタを製造するには、図3Aに示すように、金網1をマンドレル4に導き、マンドレル4のまわりにおいて、金網1を円筒状に多層に巻き、積層する。この実施例では、図3Bに示すように、マンドレル4に一対のフランジ5が設けられており、フランジ5はマンドレル4に沿って移動可能である。止めねじ6によってフランジ5を固定することもできる。したがって、各フランジ5をマンドレル4に沿って移動させ、その間隔を金網1の幅に対応させ、その位置で各フランジ5を固定し、各フランジ5間で金網1を巻くことができ、各フランジ5によって金網1が案内され、これを的確に巻くことができる。マンドレル4およびフランジ5はセラミック製のものである。
【0017】
金網1を巻くとき、図3Cに示すように、最初、金網1を所定位置で折り曲げ、折り返し、その始端7を折り返し部分8に挿入し、係合させると、折り返し部分8によって始端7が固定され、金網1を容易に巻くことができる。その後、図3Dに示すように、金網1を円筒状に多層に巻き、その外端2を接着剤で仮止めすればよい。
【0018】
金網1を巻く前、図2AおよびBに示すように、金網1を一対のローラ9間に導き、金網1の片面において、ローラ9によって金網1をカレンダ処理し、その素線を偏平化し、偏平部分10を形成する。そして、金網1をマンドレル4に導き、偏平部分10がマンドレル4に接触するようにすると、偏平部分10によって摩擦抵抗が増大し、金網1を的確に巻くことができる。
【0019】
その後、金網1およびマンドレル4を真空炉に入れ、真空炉によって金網1を熱処理し、焼結する。さらに、真空炉によって金網1を炉冷し、その後、金網1およびマンドレル4を真空炉から取り出し、フランジ5をマンドレル4から取り外し、マンドレル4を金網1から抜き取ればよい。これによって図1のエアフィルタを製造することができる。マンドレル4にわずかにテーパのあるものを使用すると、金網1から抜き取るとき、マンドレル4を容易に抜き取ることができ、好ましい。
【0020】
このエアフィルタは紡糸装置に使用するためのものである。紡糸装置では、特開2002−309431号公報に記載されているように、溶融ポリマが口金から吐出され、円筒状エアフィルタ内を通過する。さらに、円筒状エアフィルタによってエアが濾過され、これが溶融ポリマに吹き付けられる。したがって、エアによって溶融ポリマが冷却され、単糸が形成される。その後、集束ガイドによって単糸が集束され、集束糸が形成され、巻取装置によって集束糸が巻き取られる。
【0021】
したがって、溶融ポリマによって円筒状エアフィルタが加熱されるが、このエアフィルタは円筒状に多層に巻かれた金網1からなり、加熱されても、それによって円筒状エアフィルタが焼けることはない。しかも、素線はおよそ1mmの直径であり、金網1は10〜350メッシュのもので、10〜20層に巻かれている。そして、それが堅固に焼結されていることは前述したとおりである。したがって、円筒状エアフィルタに大きい強度をもたせ、大きい空隙率をもたせることができ、これを紡糸装置に使用することができるものである。
【0022】
実験によれば、素線が0.8mmの直径をもち、金網1は60メッシュのもので、16層に巻かれているとき、その空隙率はおよそ70%に達することが確認されている。したがって、円筒状エアフィルタによってエアが濾過され、これが溶融ポリマに吹き付けられるとき、その流量が大きく、冷却効果は高い。
【0023】
さらに、溶融ポリマに吹き付けられるエアの流量については、溶融ポリマの糸径によって種々の流量が要求されるが、このエアフィルタの場合、金網1のメッシュによってエアフィルタの空隙率が決定され、それによってエアの流量が増加または減少する。したがって、金網1のメッシュを適宜選定し、エアフィルタの空隙率を任意に選定することができ、エアの流量を任意に変化させることができる。たとえば、金網1に350メッシュのものを使用すると、空隙率は30%程度に低下する。金網1に500メッシュのものを使用し、空隙率を大幅に低下させることもできる。
【0024】
このエアフィルタはステンレス線(SUS304またはSUS316)の金網1からなり、錆びることもない。
【0025】
さらに、このエアフィルタは逆洗可能であり、再使用可能である。たとえば、図4に示すように、エアフィルタの使用後、複数のエアフィルタを間隔を置いて配置し、その一端に治具11の突起12をはめ込み、他端に治具13の突起14をはめ込めばよい。治具11は流路15および孔16を有し、孔16は各突起12に形成されており、流路15に連通する。したがって、たとえば、純水をおよそ80°Cの温度に加熱し、これを流路15および孔16に送り、各エアフィルタに導入すると、純水がエアフィルタの周壁を通り、排出され、純水によって各エアフィルタを逆洗することができる。その後、各エアフィルタを適宜乾燥させ、これを再度使用することができる。
【0026】
金網として細かい金網と粗い金網を使用し、細かい金網を数層に巻き、粗い金網を細かい金網のまわりに巻いてもよい。たとえば、細かい金網を2〜3層に巻き、そのまわりにおいて、粗い金網を10〜20層に巻き、積層する。そして、これを堅固に焼結してもよい。この場合、純水を円筒状エアフィルタに導入し、純水によって円筒状エアフィルタを逆洗するとき、純水によってフィルタの不純物が取り除かれ、流されやすく、円筒状エアフィルタを容易に逆洗することができる。さらに、円筒状エアフィルタによってエアが濾過されるとき、粗い不純物が粗い金網に捕獲され、細かい不純物は細かい金網に捕獲される。これによってエアフィルタの寿命が延長され、好ましい。
【0027】
図5は他の実施例を示す。このエアフィルタは素線で編まれた円筒状の多数の金網17からなる。そして、各金網17が同心に多層に重ね合わされ、積層され、堅固に焼結されている。したがって、図1のエアフィルアと異なり、シームは形成されない。
【0028】
図5のエアフィルタを紡糸装置に使用し、そのエアフィルタによってエアを濾過し、エアによって溶融ポリマを冷却することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施例を示す斜視図である。
【図2】Aは図1の金網をカレンダ処理する状態を示す側面図であり、BはAの金網の断面図である。
【図3】Aは図2の金網を巻く状態を示す斜視図であり、BはAのマンドレルの斜視図であり、CはAの金網の説明図であり、DはAの金網を巻いた状態を示す斜視図である。
【図4】図1のエアフィルタを逆洗する状態を示す断面図である。
【図5】他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 金網
4 マンドレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸装置に使用する円筒状エアフィルタであって、素線で織られた一定長さの金網からなり、前記金網が円筒状に多層に巻かれ、積層され、堅固に焼結されていることを特徴とする円筒状エアフィルタ。
【請求項2】
前記素線はおよそ1mmの直径であり、前記金網は10〜350メッシュのもので、10〜20層に巻かれていることを特徴とする請求項1に記載の円筒状エアフィルタ。
【請求項3】
前記金網として細かい金網と粗い金網が使用され、前記細かい金網が数層に巻かれ、前記粗い金網が前記細かい金網のまわりに巻かれていることを特徴とする請求項3に記載の円筒状エアフィルタ。
【請求項4】
紡糸装置に使用する円筒状エアフィルタの製造方法であって、素線で織った一定長さの金網をマンドレルに導き、前記マンドレルのまわりにおいて、前記金網を円筒状に多層に巻き、積層し、その後、前記金網およびマンドレルを真空炉に入れ、前記真空炉によって前記金網を熱処理し、焼結し、さらに、前記真空炉によって前記金網を炉冷し、その後、前記金網およびマンドレルを前記真空炉から取り出し、前記マンドレルを前記金網から抜き取ることを特徴とする円筒状エアフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記金網を巻く前、前記金網を一対のローラ間に導き、前記ローラによって前記金網をカレンダ処理することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
紡糸装置に使用する円筒状エアフィルタであって、素線で編まれた円筒状の多数の金網からなり、前記各金網が同心に多層に重ね合わされ、積層され、堅固に焼結されていることを特徴とする円筒状エアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−115490(P2008−115490A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298867(P2006−298867)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(391062610)株式会社渡邊義一製作所 (4)
【Fターム(参考)】