説明

冊子処理装置

【課題】圧着力の設定が容易となるとともに、安定的な搬送が可能な冊子処理装置を提供する。
【解決手段】一形態にかかる冊子処理装置は、複数のページが綴られた冊子の一方側部分を厚み方向に支持して所定の搬送方向に沿って搬送する第1の搬送部と、前記第1の搬送部とは前記搬送方向と交差する方向において異なる位置に配置され、前記冊子の他方側部分を厚み方向に支持して前記搬送方向に沿って搬送する第2の搬送部と、を備え、前記搬送方向は前記冊子の綴じ線に沿って設けられ、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段の、前記冊子の厚み方向における支持位置を、独立して設定可能に構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冊子処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通帳やパスポートなどの複数ページが綴られた冊子の中ページに印字などの処理を行う冊子処理装置として、冊子を搬送する搬送装置と、搬送経路に沿って印字装置などの処理装置を備えた冊子処理装置が提供されている。このような冊子処理装置では例えば上下に配置された搬送ローラ対のニップで冊子を保持してローラの回転により冊子を搬送している。一般的に、冊子を開いて所定のページを上に向けた状態で、冊子の綴じ線の方向と直交する方向に搬送している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−238006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の技術では以下の問題がある。すなわち、途中で綴じ線を乗り越えて搬送をすることになる。このとき綴じ線の一方と他方でページ数が異なることがあり、綴じ線の前後で冊子の厚みが変化する際に搬送不能やジャムの原因になる。例えば設計された圧着力が大きい場合には段差の乗り越えができなくなり、圧着力が小さいとローラにおける摩擦が不足して搬送不能に陥る。さらに、厚みに応じて適切な圧着力が異なるため、ばね設計による圧着力の設定が困難である。
【0005】
そこで、本発明は、圧着力の設定が容易で、安定的な搬送が行える冊子処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の他の一形態にかかる冊子処理装置は、複数のページが綴られた冊子の一方側部分を厚み方向に支持して所定の搬送方向に沿って搬送する第1の搬送部と、前記第1の搬送部とは前記搬送方向と交差する方向において異なる位置に配置され、前記冊子の他方側部分を厚み方向に支持して前記搬送方向に沿って搬送する第2の搬送部と、を備え、前記搬送方向は前記冊子の綴じ線に沿って設けられ、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段の、前記冊子の厚み方向における支持位置を、独立して設定可能に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る冊子処理装置によれば、圧着力の設定が容易となるとともに、安定的な搬送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冊子搬送装置の構成を示す側面図。
【図2】同実施形態の冊子搬送装置を示す平面図。
【図3】同実施形態の冊子搬送装置の搬送動作を示す説明図。
【図4】同実施形態の冊子搬送装置の搬送動作を示す説明図。
【図5】同実施形態の冊子搬送装置の搬送動作を示す説明図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る冊子処理装置の構成を示す側面図。
【図7】同実施形態の冊子処理装置を示す平面図。
【図8】同実施形態の冊子処理装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態にかかる搬送装置10(冊子処理装置)について、図1乃至図5参照して説明する。なお、各図において説明のため、適宜、構成を拡大、縮小または省略して概略的に示している。図中矢印X,Y及びZはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。ここでは一例として、X軸は搬送方向、Y軸は幅方向、Z軸は上下方向に沿っている。
【0010】
図1は本実施形態に係る搬送装置10の構成を示す側面図であり、図2は平面図である。
【0011】
搬送装置10は、装置の外郭を構成するケース11と、Y方向に2列に配置された第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bと、これらの各装置の動作を制御する制御部100と、を備えている。第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bはそれぞれ、冊子40を下側から支持する下側支持部20と、冊子40を上方から支持する上側支持部30と、を備え、下側支持部20と上側支持部30により冊子40を厚み方向(Z方向)に圧着挟持して搬送方向(X方向)に搬送する。
【0012】
搬送物は、例えば複数のページが綴られた通帳やパスポートなどの冊子40である。図2に示すように冊子40を開いた状態において中央に綴じ線41が配置され、この綴じ線41を挟んで幅方向(Y方向)一方側部分42に複数枚のページが重ねて配置され、他方側部分43に複数のページが重ねて配置され、これらが一体になっている。一方側部分42と他方側部分43のページ数は開くページによって異なり、これによって厚みも変化する。搬送装置10では、この冊子40を綴じ線41に沿う所定の搬送経路に沿って搬送する。冊子40の一方側部分42は第1の搬送部10Aによって搬送され、他方側部分43は第2の搬送部10Bによって搬送されるようになっている。冊子40は支持面としての上面及び下面が後述する下側支持部20と上側支持部30の間に挟持され、図中X方向に沿う搬送経路を上流側から下流側に向かって搬送される。
【0013】
ケース11は、一端側に挿入口11a、他端側に排出口11bが形成されている。さらに、挿入口11aの外側にはガイドトレイ12が配置されている。このガイドトレイ12に案内されて挿入口11a内に冊子40が挿入される。排出口11bの外側には排出トレイ13が設けられている。
【0014】
第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bは同様の構成である。下側支持部20は、ベルト駆動式の搬送装置であって、ベルトベース21と、ベルトベース21の搬送方向下流側の端部に設けられた駆動ローラ22と、ベルトベース21の搬送方向上流側の端部に設けられた従動ローラ23と、これら駆動ローラ22および従動ローラ23間に架け渡された無端のベルト24と、ベルトベース21に設置されるとともに駆動ローラ22を回転させる駆動モータ25と、ベルトベース21をZ方向に昇降移動させる移動機構部としてのパルスモータ26と、を備えて構成されている。
【0015】
ベルトベース21は搬送経路に沿って挿入口11aから排出口11bに至って設けられており、駆動ローラ22および従動ローラ23を支持している。駆動ローラ22、従動ローラ23、ベルト24及び駆動モータ25を搭載したベルトベース21は、パルスモータ26によって上下方向(図中Z軸)に昇降移動可能であり、上昇して冊子40を圧着する圧着位置と、下降して圧着を解放する退避位置との間で移動可能になっている。
【0016】
駆動ローラ22は、軸心がY方向に延びるようにベルトベース21に支持される駆動軸部22aと、駆動軸部22aの外周に設けられY方向に所定の長さを有する円筒部22bと、を備えて構成されている。駆動軸部22aは駆動モータ25に接続され、制御部100の制御に応じて所定の回転速度およびタイミングで駆動されて回転する。
【0017】
従動ローラ23は軸心がY方向に延びるようにベルトベース21に支持される従動軸部23aと、軸部23aの外周に設けられY方向に所定の長さを有する円筒部23bと、を備えて構成されている。
【0018】
ベルト24は駆動ローラ22及び従動ローラ23の周りに掛け渡されて張設されており、ローラ22,23の回転とともに搬送方向に移送される。ベルト24の上面は下側支持部20における支持部となる。
【0019】
パルスモータ26は制御部100に接続され、制御部100の制御に応じて所定のタイミングでベルトベース21をZ方向に移動させることで支持部の位置(支持位置)を調整する。ベルトベース21の昇降に伴ってこれに支持されたローラ22,23及び無端ベルト24もともに昇降移動する。
【0020】
上側支持部30は冊子40の上側を支持する圧着ローラ部31(ローラ部)を搬送経路に沿って複数並列配置して備えている。各圧着ローラ部31は、ケース11に支持されるローラ軸部32と、ローラ軸部32を中心に回動可能に支持されたアーム33と、このアーム33の先端に回転可能に支持されたローラ34と、アーム33を下方向に付勢する付勢部35と、を備えて構成されている。
【0021】
ローラ軸部32は軸心がY方向に延びるように配置され、搬送装置のケース11に固定されている。アーム33は基端側が軸部32に回転可能に支持され、Y軸と交差する方向に延びている。アーム33の先端は付勢部35によって下方に向かって付勢されている。
【0022】
ローラ34はアーム33の先端に回転可能に支持されており、付勢部35の付勢力によって下方に対向配置されるベルト24または冊子40の上面に所定の圧力で押しつけられるようになっている。ローラ34の外面が冊子40の上面を支持する支持部となる。
【0023】
ケース11の搬送方向上流側の端部に設けられた挿入口11aに一番近い圧着ローラ部31は、軸部から挿入口11a側(上流側)にアーム33が延び、アーム33の上流側の先端にローラ34が設けられる配置になっている。この他の6つの圧着ローラ部31は軸部から排出口11b側(下流側)にアーム33が延び、アーム33の下流側の先端にローラ34が設けられる配置になっている。ローラ34が所定の圧着力で下方のベルト24または冊子40の上面に当接するようになっている。ベルトの24駆動によって下流側に搬送される冊子40の上側の面に当接し、摩擦力によって従動的に回転する。
【0024】
さらにケース11内の挿入口11a近傍には冊子40の先端位置を検出するセンサ14が設けられている。センサ14は冊子40の先端位置を検出して制御部100に送信する。
【0025】
以下、本実施形態に係る搬送装置の動作について図3乃至5を参照して説明する。図3は本実施形態に係る冊子40搬送処理の動作を示す説明図である。
【0026】
図3<a>に搬送装置の待機状態を示す。この待機状態では、ベルトベース21が下方の退避位置に配置され、ローラ34とベルト24上面とが離間している。
【0027】
この状態でユーザが挿入口11aから冊子40を挿入すると、最初に挿入口11a側に配置された圧着ローラ部31のローラ34と対向するベルト24との間に、冊子40が挿入される。
【0028】
そして、センサ14により冊子40の搬入を検知すると、パルスモータ26を駆動し、図3<b>に示すように、ベルトベース21を上方に移動させる。これにより、ベルトベース21とともに、ベルトベース21に支持される駆動ローラ22、従動ローラ23、およびベルト24が上昇する。そして、所定の位置に達するとベルト24の上面とローラ34表面とで冊子40を挟み、冊子40の上面がローラ34に圧着される圧着状態となる。
【0029】
このとき、パルスモータ26は冊子40の厚みによって設定された適性パルス数分だけ回転し、ベルトベース21の位置を調整する。以上により厚み方向の位置決めが終了する。
【0030】
なお、第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bはそれぞれ独立してこれらの位置決め制御を行う。このため、一方側42と他方側43とで冊子40の厚みが異なる場合であっても、いずれも所望の圧着力に設定することができる。すなわち、第1の搬送部10Aと第2の搬送部10Bにおいて、ベルトベース21の位置はそれぞれ独立して設定可能であり、冊子40の厚さ方向の圧着力を独立して設定可能に構成されている。
【0031】
また、複数の圧着ローラ部31はいずれも同じ構成であり高さ方向の位置が揃えられているため、いずれの搬送ローラ部34においてもベルトベース21の位置に対応した所定の圧着力が得られるように設定されている。
【0032】
次に、一方側部分42の冊子40のページ数が多く、他方側部分43の冊子40のページ数が薄い場合の動作について図4,5に示す。図4は第1の搬送部10A、図5は第2の搬送部10Bにおける動作をそれぞれ示している。
【0033】
待機状態ではベルトベース21が下方の退避位置に配置されていて、ローラ34とベルト24の間に隙間が形成されている。この状態で、挿入口11aから冊子40を挿入する。このとき、1搬送部10Aに挿入される冊子40の厚みは厚く、第2の搬送部10Bに挿入される冊子40は比較的薄いものとなる。この状態で、第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bのそれぞれにおいて、ベルトベース21の上昇を行い、所定の圧力に設定する。このとき、冊子40の厚みの厚い第1の搬送部10Aでは、厚みの小さい第2の搬送部10Bよりも低い位置において所定の圧力に達する。すなわち、図4,5に示すように、同じ圧力に設定する場合にはベルトベース21の位置が異なる位置に調整される。
【0034】
この状態で駆動モータ25により駆動ローラ22を回転させる。すると、従動ローラ23が回転するとともに駆動ローラ22によって無端ベルト24が搬送方向に送られ、図4−6の<c>に示すように、ベルト上に配置された冊子40が下流側に送られる。さらに下流側において冊子40が排出口11bから排出され、搬送処理が終了する。
【0035】
本実施形態に係る搬送装置10では、以下のような効果が得られる。すなわち、冊子40の綴じ線41が搬送方向に沿うようになっているので、搬送方向において、冊子40のページ数が変わることはない。したがって、冊子40の搬送方向先端の位置から後端の位置まで厚さはほぼ一定となり、安定した搬送が可能となる。
【0036】
例えば綴じ線41と交差する方向を搬送方向に設定した場合には綴じ線41を乗り越えて搬送することとなるので、搬送途中で厚さが大きく変わり、位置ずれや搬送不能などの原因となる。またこのような搬送方向では用紙が撓んで綴じ線41位置に皺が寄りやすいため、冊子の損傷やジャムが発生しやすくなる。本実施形態では搬送方向を綴じ線と平行にしたため、厚み方向に挟持した圧着状態でも安定的に搬送でき、冊子の変形、損傷、ジャム、位置ずれなどの搬送不良が解消できる。
【0037】
さらに、第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bはそれぞれ独立して支持位置調整制御を行うため、一方側と他方側とで厚みが異なる場合であっても、いずれも所望の圧着力に設定することができる。
【0038】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態に係るプリンタ110(冊子処理装置)について、図6および図7を参照して説明する。図6は本実施形態に係るプリンタ110の構成を示す側面図、図7は平面図である。
【0039】
本実施形態に係るプリンタ110は例えば複数のページが綴られた通帳やパスポートなどの冊子40を開いた状態で、冊子40上面に印字を行うものである。
【0040】
プリンタ110は、一端側に挿入口11a、他端側に排出口11bがそれぞれ形成されたケース11と、ケース11内において冊子40を搬送する搬送装置10と、ケース11部内の搬送装置10の搬送経路に沿って配置された印字部50と、ケース11外側に設けられ冊子40を案内するガイドトレイ12と、各部の動作を制御する制御部100とを備えている。
【0041】
印字部50は中間転写方式のプリントユニットであって、冊子40の下側を支持する支持ローラ51と、冊子40の上面に圧着されて印字を施すヒートプラテンローラ52と、中間転写フィルム53と、中間転写フィルム53を搬送してヒートプラテンローラ52に供給するフィルム供給部54と、を備える。
【0042】
中間転写フィルム53には印字画像が印刷されて受像層が形成されており、このフィルム53の裏側にあるヒートプラテンローラ52が下降して、フィルム53の裏側からフィルム53を冊子40の上面40に熱圧着する。ヒートプラテンローラ52の回転とともにフィルム供給部54によりフィルム53が送られ、フィルム53に形成された受像層が熱により冊子40の上面に転写されながら所定の画像を形成する。
【0043】
本実施形態に係る搬送装置10は、基本的な構成は上記第実施形態に係る搬送装置10と同様であるが、この実施形態においては第2の搬送部10Bはローラ駆動式の下側支持部70を備えている。また第2の搬送部10Bは上流側と下流側の2つの搬送ユニットU1,U2に分割して配置し、これらのユニットU1,U2間に印字部50を配置している。また本実施形態に係る搬送装置10ではY方向に位置決めをする補正ユニット60を備えている。
【0044】
この他の構成は上記第1実施形態に係る搬送装置10と同様であるため、共通する説明を省略する。なお、第1の搬送部10Aの構成は上記第1実施形態の第1の搬送部10Aと同様である。
【0045】
下側支持部70は冊子40を載置する面を形成するプレート71と、プレート71に形成された複数の開口部71aから露出可能に設けられた複数の搬送ローラ72と、これらローラ72を上下方向に移動させる移動機構部としてのパルスモータ73と、搬送ローラ72を回転駆動する駆動部74と、を備えて構成されている。
【0046】
第2の搬送部10Bの下側支持部70は、上流側ユニットに3つの搬送ローラ72を備え、下流側ユニットに2つのローラ72を備えている。パルスモータ73は制御部100に接続され、制御部100の制御に応じて所定のタイミングで複数の搬送ローラ72をZ方向に移動させることで支持部の位置(支持位置)を調整する。
【0047】
搬送ローラ72はプレート71の上面よりも上に位置して冊子40を挟んで上側のローラ34に押し付ける高位置と、下方に退避して冊子40の保持を解除する第低位置との間で移動可能になっている。駆動部74は制御部100に接続され、制御部100の制御に応じて所定のタイミングで複数の搬送ローラ72を回転駆動する。搬送ローラ72が高位置において冊子40を挟んで上側のローラ34に押し付けた状態で回転駆動することにより、冊子40が搬送経路に沿って下流側に搬送される。
【0048】
第2の搬送部10Bの上側支持部30は、上流側ユニットU1に3つの圧着ローラ部31を備え、下流側ユニットU2に2つの圧着ローラ部31を備えている。いずれのユニットU1,U2においても搬送方向上流側の端部に設けられた圧着ローラ部31は、軸部32から挿入口11a側(上流側)にアーム33が延び、アーム33の上流側の先端にローラが設けられる配置になっている。この他の圧着ローラ部31は軸部32から排出口11b側(下流側)にアーム33が延び、アーム33の下流側の先端にローラ34が設けられる配置になっている。ローラ34はアーム33の先端に回転可能に支持されており、付勢部35の付勢力によって下方に対向配置されるプレート71、ローラ72、または冊子40の上面に所定の圧力で押しつけられるようになっている。ローラ34が所定の圧着力で下方のベルトまたは冊子40の上面に当接し、摩擦力によって従動的に回転する。
【0049】
補正ユニット60は、搬送経路に沿って起立して配置された位置決めプレート61と、制御部100の制御によって位置決めプレート61をY軸方向に移動させるプレート移動機構62と、を備えて構成されている。位置決めプレート61は、搬送路の側方に退避して冊子40の搬送を許容する第1プレート位置と、冊子40の端部に対応する設定位置に配置されて冊子40を位置決めする第2プレート位置との間で移動可能になっている。
【0050】
以上のように構成されたプリンタ110の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
待機状態にあっては、第1搬送部10Aではベルトベース21が下方の退避位置に配置され、ローラ34とベルト24の上面とが離間して、隙間が形成されている。また第2搬送部10Bではローラ72が下方の退避位置に配置され、ローラ34とローラ72とが離間して、隙間が形成されている。
【0052】
このとき、位置決め機構の位置決めプレート61は搬送路の側方に外れた第1プレート位置に配置され、冊子40の挿入が可能になっている。
【0053】
この状態でユーザが挿入口11aから冊子40を挿入すると、挿入口11a側に配置された圧着ローラ部31のローラと対向するベルト24またはローラ72の間に、冊子40が挿入される。
【0054】
そして、センサ14により例えば冊子40の先端40a位置を検出する(ST1)。そしてセンサ14により冊子40の挿入を検知したら、パルスモータ26を駆動し、ベルトベース21及びローラ72をそれぞれ独立して上方に移動させる(ST2)。
【0055】
これに伴い、ベルトベース21とともに、支持された駆動ローラ22、従動ローラ23、および無端ベルト24が上昇する。そして、第1の搬送部10Aでは、ベルトベース21が所定の位置に達するとベルト上面とローラ表面とで冊子40を挟んだ状態で冊子40の上面がローラ34に圧着される。
【0056】
このとき、パルスモータ26を駆動して冊子40の厚みによって設定された適性パルス数になるまでベルトベース21の移動を続け、ばねの圧力があらかじめ設定された適正値となるように制御し(ST3)、パルスモータ26を停止する(ST4)。以上により第2の搬送部10Bにおける厚み方向の位置決めが終了する。
【0057】
同時に、第2の搬送部10Bでは、所定の位置に達するとローラ72とローラ34との間に冊子40を挟んだ状態で冊子40の上面がローラ34に圧着される。
【0058】
パルスモータ73を駆動して冊子40の厚みによって設定された適性パルス数になるまでローラ72の上昇を続け、ばねの圧力があらかじめ設定された適正値となるように制御し(ST3)、パルスモータ73を停止する(ST4)。以上により第2の搬送部10Bにおける厚み方向の位置決めが終了する。
【0059】
このとき、第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bはそれぞれ独立してベルトベース21またはローラ72の位置決め制御を行う。このため、一方側と他方側とで厚みが異なる場合であっても、いずれも所望の圧着力に設定することができる。すなわち、第1の搬送部10Aと前記第2の搬送部10Bはそれぞれ独立して冊子40の厚さ方向の圧着力を設定可能に構成されている。
【0060】
この状態で搬送処理を行う(ST5)。搬送処理として、第1搬送部10Aでは駆動モータ25により駆動ローラ22を回転させる、従動ローラ23が回転するとともに駆動ローラ22によってベルト24が搬送方向に送られる。これと同時に第2搬送部10Bでは駆動部74によりローラ72を回転させる。すると、ローラ72上に配置された冊子40が下流側に送られる。
【0061】
冊子40が下流側に搬送され、位置センサ14により冊子40の後端部40bの位置を検出し(ST6)、冊子40が挿入口11aを通ってケース11内に配置されたことを確認したら、一旦厚み方向の圧着を解除し(ST7)、Y方向の位置決め処理を行う(ST8)。
【0062】
厚み方向の圧着解除処理として、移動機構部としてのパルスモータ26によりベルトベース21を退避位置に下降させるとともに、移動機構部としてのパルスモータ73によりローラ72を退避位置に下降させることで、一旦冊子40の圧着が解放され、支持が解除される。したがって冊子40は移動可能な状態となる。
【0063】
この状態で、Y方向の位置決め処理として、制御部100の制御によりプレート移動機構62を駆動し、位置決めプレート61をY軸方向に移動させる。位置決めプレート61は、第1プレート位置から第2プレート位置に移動し、冊子40のY方向を規制する。
【0064】
Y方向の位置決め終了後、再びベルトベース21及びローラ72を上昇させ、圧着解除前の位置に戻し、圧着状態とする(ST9)。
【0065】
この状態で再度駆動ローラ22を駆動して、搬送処理を開始する。そして、下流側に設けられた印字部50によって印字処理を行う。印字処理としては受像層が形成された中間転写フィルム53の裏側からヒートプラテンローラ52を下降させ、フィルムを冊子40の上面40に熱圧着する(ST10)。
【0066】
次に、ベルトベース21及びローラ72を再度下降させて圧着を解除する(ST11)。この状態で、ヒートプラテンローラ52の回転とともにフィルム供給部54によりフィルム53を送ることにより、フィルム53に形成された受像層が熱により冊子40の上面に転写されながら所定の画像を形成する印字処理が行われる(ST12)。
【0067】
印字処理の終了後、再びベルトベース21及びローラ72を上昇させ、圧着解除前の位置に戻し、圧着状態とする(ST13)。そして、下流側ユニットで上流側ユニットと同様の搬送処理(ST14)を行い、冊子40を下流側の排出口11bから排出する。
【0068】
本実施形態に係るプリンタ110および搬送装置10においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち冊子40の綴じ線41が搬送方向に沿うようになっているので、搬送方向において、冊子40のページ数が変わることはない。したがって、冊子40の搬送方向先端の位置から後端の位置まで厚さはほぼ一定となり、安定した搬送が可能となる。また、第1の搬送部10Aおよび第2の搬送部10Bはそれぞれ独立してこれらの位置決め制御を行うため、一方側と他方側とで厚みが異なる場合であっても、いずれも所望の圧着力に設定することができる。
【0069】
また、本実施形態ではY方向の位置決め機構を設けたことにより、Y方向における位置決めを可能とし、印字位置を正確に設定することができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、各搬送機構の具体的な構造や部材の形状などは上記に限られるものではなく適宜変更可能である。
【0071】
上記実施形態では印字処理を施す冊子処理装置を例示したがこれに限られるものではない。例えば通帳やパスポートなどの冊子に付されたICチップの情報を読み取る処理やデータ書き換え等、他の処理装置であっても本発明を適用可能である。
【0072】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…搬送装置、10A…第1の搬送部、10B…第2の搬送部、11a…挿入口、11b…排出口、11…ケース、12…案内トレイ、20…下側支持部20A…第1搬送ユニット、20B…第2搬送ユニット、21…ベルトベース、22…駆動ローラ、22a…駆動軸部、22b…円筒部、23…従動ローラ、23a…従動軸部、23b…円筒部、24…無端ベルト、25…駆動モータ、26…パルスモータ(移動機構部)、30…上側支持部、31…圧着ローラ部、32…ローラ軸部、33…アーム、34…ローラ、35…付勢部、36…検知センサ、40…冊子、50…印字部、51…支持ローラ、52…印字ローラ、60…補正ユニット、61…プレート、62…プレート移動機構、71…プレート、72…搬送ローラ、73…パルスモータ(移動機構部)、74…駆動部、100…制御部、110…プリンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のページが綴られた冊子の一方側部分を厚み方向に支持して所定の搬送方向に沿って搬送する第1の搬送部と、
前記第1の搬送部とは前記搬送方向と交差する方向において異なる位置に配置され、前記冊子の他方側部分を厚み方向に支持して前記搬送方向に沿って搬送する第2の搬送部と、
を備え、
前記搬送方向は前記冊子の綴じ線に沿って設けられ、
前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段の、前記冊子の厚み方向における支持位置を、独立して設定可能に構成されたことを特徴とする冊子処理装置。
【請求項2】
前記第1の搬送部および前記第2の搬送部の少なくとも一方は、前記冊子を厚み方向に挟持して搬送することを特徴とする請求項1記載の冊子処理装置。
【請求項3】
前記第1の搬送部および前記第2の搬送部の少なくとも一方は、冊子の下面を支持する下側支持部と、前記冊子の上面を支持する上側支持部とを備え、
前記上側支持部および下側支持部の少なくともいずれか一方は前記冊子の厚み方向において支持位置を移動可能に構成されたことを特徴とする請求項2記載の冊子処理装置。
【請求項4】
前記第1の搬送部および前記第2の搬送部の少なくとも一方は、前記冊子の支持面に対向配置される回転可能なローラを有するローラ部を備えたことを特徴とする請求項2ないし3のいずれか記載の冊子処理装置。
【請求項5】
前記第1の搬送部および前記第2の搬送部の少なくとも一方は、前記冊子が載置されるベルトを有するベルト駆動式の搬送機構を備えることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか記載の冊子処理装置。
【請求項6】
前記搬送経路と交差する方向に前記冊子を移動させて前記冊子の位置決めを行う位置補正ユニットを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の冊子処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−1551(P2013−1551A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136682(P2011−136682)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】