説明

再帰反射性集積回路封入製品

【課題】 ICカードとリーダーライターとによる相互通信以前に、確認者がICカードの存在を事前認識することを可能とする。
【解決手段】 再帰反射性集積回路封入製品は、少くとも、集積回路を内蔵する集積回路モジュールと、光の再帰反射要素と、これらの担持層とからなとからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少くとも、集積回路を内蔵する集積回路モジュールと、光の再帰反射要素と、これらの担持層とからなることを特徴とする再帰反射性集積回路封入製品に関する。
【0002】
詳しくは、集積回路モジュールが電波方式認識型集積回路を内蔵しており、該電波方式認識型集積回路に接続された通信用アンテナが設置されている再帰反射性集積回路封入製品に関し、外部端子やアンテナを介して集積回路モジュールとの情報交換を行うと共に、特に夜間において本発明の製品の所在や所有者の接近を、光を照射することにより再帰反射原理で遠方より認知できる再帰反射性集積回路封入製品に関する。
【0003】
さらに詳しくは、上記通信用アンテナが、再帰反射要素の反射面上に形成されている再帰反射性集積回路封入製品に関する。
【背景技術】
【0004】
従来のICカードにおいては、集積回路を内蔵する集積回路モジュール、該モジュールを担持するコア層および/またはインナー層よりなる担持層、担持層の上部及び下部面を保護する上部保護層ならびに下部保護層からなっており、該積層品は、たとえば、上部保護層に設置されている外部接触端子や担持層上に設置された通信アンテナなどを通じて、集積回路と外部との情報交換を行っている。
【0005】
従来の外部接触端子が設置された接触型ICカードにおいては、たとえば、上部保護層に設置されている外部触端子を通じて外部の読取り兼書込み機(以降、リーダーライターと言う)との電子信号情報の交換や電力の供給を行っている。
【0006】
また通信アンテナ(以降、単にアンテナとも言う)が設置された非接触型ICカードにおいては、担持層上に設置されたアンテナなどを介して、集積回路、たとえば、電波方式認識型集積回路などの集積回路モジュールと外部のリーダーライターとの間で、電力の供給や電子信号情報の交換を行っている。非接触型ICカードにおいては集積回路封入積層品とリーダーライターとの距離によりさらに、密着型(2mm以内)、近接型(10cm以内)、近傍型(70cm以内)および遠隔型(70cm以上)に分類され、電波を飛ばす距離が短い密着型と近接型は短波、近傍型は長波、遠隔型においてはマイクロ波が通常用いられる。
【0007】
上記アンテナが設置された非接触型ICカードの形成方法に関しては、従来よりさまざまな方法が提案されてきた。これらアンテナを形成する方法としてはあらかじめ設置された金属層をエッチングなどの手段で部分的に除去してアンテナを形成する方法、部分的に金属層を設置してアンテナを形成する方法、導電性のインキを用いてアンテナを形成する方法、および、金属製の細線を巻きつけてコイル状に形成してアンテナにする方法が知られている。
【0008】
これらのアンテナの形成方法を開示した従来技術としては、堀尾の特開平11−134461および同公報の対応米国特許USP6,160,526、生藤らの特開平10−320519および同公報の対応欧州公開公報EP1014301A1、折原らの特開平8−287208および同公報の対応米国特許USP5,705,852、岡村らの特開2002−074301および同公報の対応米国公開公報US2002/24475、林らの特開2000−251047および同公報の対応欧州公開公報EP1033778A2さらに特開2000−105810および同公報の対応欧州公開公報EP1039411A1があげられ、これら特許の記載を持って説明にかえる。
【0009】
一方、多数の再帰反射素子が設置されてなる再帰反射シートや再帰反射成形物品(以降、あわせもって再帰反射シートという)は交通標識、安全器具、反射ステッカー、商業看板や光センサー反射体として、特に夜間において、光源に向けて光を反射させる安全、表示器具として用いられている。
【0010】
上記再帰反射シートはシートの内部に微小硝子球型やキューブコーナープリズム型再帰反射素子が多数設置されており、光源から再帰反射素子に入射した光がふたたび光源に向かって反射されるように設計されている。
【0011】
例えば、McGrathの米国特許第4,025,159号には微小硝子型再帰反射素子を用いた再帰反射シートに関して記載されており、また、Hoopmanの米国特許第4,588,258号にはキューブコーナープリズム型再帰反射素子を用いた再帰反射シートに関して記載されている。また、三村の米国特許第6,083,607号には再帰反射の角度特性が改善されたキューブコーナープリズム型再帰反射素子を用いた再帰反射シートに関して記載されている。
【0012】
さらに、再帰反射シートと記憶媒体を具備した製品としては、塚根らの特開昭59−58630にはガラスビーズからなる再帰反射層と磁気記録層とをもつ製品が開示されている。
【0013】
パントリによる特表平9−508983には一体型再帰反射式電子表示装置が開示されている。この特許の記載によれば、視覚及び電磁情報通信用の再帰反射式装置であって、入射光を再帰反射するための、視覚情報を有した再帰反射シートにして、単層の再帰反射式微小球体群を一面に埋め込んで有するベースシートを具備し、該ベースシートか、該微小球体群の下方に透明材料を介して離間配置された光の正反射手段を備えてなる再帰反射シートと、電磁通信のためのアンテナ手段と、前記アンテナ手段への結合を可能にする結合手段、とを具備した装置が開示されている。
【0014】
さらに、パントリによる特表平11−505050には安全識別装置を有する電子ライセンスプレートが開示されている。この特許の記載によれば、複数の遠隔交通管理ステーションが電子ライセンスプレートと通信する電子車両通信装置に使用するための電子ライセンスプレート装置であって、視覚識別情報、および限定情報であって少なくとも1つのタイプの車両識別情報を含む限定情報であって前記遠隔ステーション又は車両によって変更することができない限定情報を保存するための識別手段を含むライセンスプレート、非限定的情報であって、少なくとも1つの遠隔ステーションまたは車両によって変更することができる非限定情報を保存するための情報手段、前記識別手段および前記情報手段に動作的に接続されて前記遠隔ステーションとの通信内容を処理するための通信手段、前記通信ステーションとの通信内容を送受信するためのアンテナ手段、車両に固定され、前記ライセンスプレート部分を、情報手段を交換することを必要とせずに交換するように、前記ライセンスプレート部分を車両に交換自在に取り付けるための取付手段を含む、電子ライセンスプレート装置が開示されている。
【0015】
マーチンの特開平4−229244号においては、逆反射マイクロプリズム面上に形成された金属付着層に部分的に接着層を形成し、接着層により保護されていない金属層を引き剥がすことにより、部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法が開示されている。また、部分的に設置する接着剤層(保護コーティング材)は、後工程における溶剤処理段階にて甚だしい悪影響を受けない感圧接着剤であるのが望ましいと記載されている。さらに、設置する方法としては印刷法が記載されている。
【0016】
さらに、マーチンの特開平1−231004号においては、逆反射マイクロプリズム面上に形成された金属付着層に部分的に接着層を形成し、接着層により保護されていない金属層を引き剥がすことにより、部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法と、逆反射マイクロプリズム面上に部分的に被覆材料を設置した後に、金属蒸着をほどこし、しかる後に、部分的に被覆した材料を除去することにより部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法が開示されている。
【0017】
また、レーザーにより蒸着層を除去する方法も一般的に用いられている。
【0018】
ガラノス(Galanos)による米国特許第4,200,875号には、露出レンズ型再帰反射シートに、あらかじめ決められたパターンでレーザー法により像を形成する方法が開示されている。
【0019】
しかしながら、上記いずれの特許にも、少くとも、集積回路を内蔵する集積回路モジュールと、光の再帰反射要素と、これらの担持層とからなることを特徴とする再帰反射性集積回路封入製品、詳しくは、集積回路モジュールが電波方式認識型集積回路を内蔵しており、該電波方式認識型集積回路に接続された通信用アンテナが設置されている再帰反射性集積回路封入製品、さらに詳しくは、通信用アンテナが、再帰反射要素の反射面上に形成されている再帰反射性集積回路封入製品はいずれも開示されていない。
【特許文献1】特開平11−134461号公報
【特許文献2】特開平10−320519号公報
【特許文献3】特開平8−287208号公報
【特許文献4】特開2002−074301号公報
【特許文献5】特開2000−251047号公報
【特許文献6】特開2000−105810号公報
【特許文献7】米国特許第4,025,159号明細書
【特許文献8】米国特許第4,588,258号明細書
【特許文献9】米国特許第6,083,607号明細書
【特許文献10】特表平9−508983号公報
【特許文献11】特表平11−505050号公報
【特許文献12】特開平4−229244号公報
【特許文献13】特開平1−231004号号公報
【特許文献14】米国特許第4,200,875号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のICカードにおいては、ICカードに記憶されている情報内容は、接触型ICカードにおいてはリーダーライターにカードを挿入しなければ通信できないという不具合があった。また、非接触型ICカードにおいても電波が認識可能な距離まで接近することが必要で認識距離以前に事前認識できないという問題があった。
【0021】
また、有料道路における非接触型ICカードを利用した双方向無線通信による料金精算システム(以降、ノンストップ自動料金システムと言う)においては、該ICカードとリーダーライター(路側通信アンテナ)との距離が長いために、通常は車内に車載器を搭載しICカードとの通信を補助する必要があるという不具合があった。
【0022】
そのために、ICカードとリーダーライター(路側通信アンテナ)とが通信可能な距離まで接近するまではICカード搭載の車両であるか、通常の現金支払いの車両であるかの判別が困難であり、特に、ノンストップ自動料金システムと現金支払い混在の料金所において特に夜間において料金徴収者が目視で事前認識できないという問題がある。
【0023】
また、駐車許可証明、社員証明、納税証明、車両証明などの目的で車両のガラス窓などに貼付するICカードを内蔵した車両認証ステッカー(以降、ICステッカーという)においては、昼間においてはICステッカーの貼付を遠方より事前認識することは不可能ではないが、とくに夜間においては、特に遠距離からのステッカーの貼付の有無を確認することは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記のような問題点を解決する手段として、ICカードとリーダーライターとによる相互通信以前に、確認者がICカードの存在を事前認識することを可能とならしめる手段として、集積回路モジュールが封入されたICカードに多数の再帰反射素子が設置され、外部からの光を光源に向けて反射することを可能とする。
【0025】
さらに詳しくは、少くとも、集積回路を内蔵する集積回路モジュールと、光の再帰反射要素と、これらの担持層とからなることを特徴とする再帰反射性集積回路封入製品において、上記のいずれかの担持層に多数の再帰反射要素を設置して、外部からの光を光源に向けて反射することを可能とする。
【0026】
本発明に用いる再帰反射要素とは、キューブコーナープリズム型再帰反射素子(以降、CC素子とも言う。)または微小硝子球型再帰反射素子によって構成されている。
【0027】
本発明の好ましい形態の再帰反射素子であるCC素子は、互いに垂直な3つの反射面をもったCC素子、例えば、三角錐型CC素子、六角形CC素子、テント型CC素子などを用いる事ができる。なかでも、三角錐型CC素子が微小な再帰反射要素を形成しやすく、薄い製品を形成することが容易なために好ましい。
【0028】
これらCC素子は微小硝子球型再帰反射素子のように金属薄膜層を設置して光をプリズム反射面上で反射する鏡面反射型CC素子や、プリズム背面に空気などの屈折率の小さな層を設置した素子とすることにより内部全反射原理により光をプリズム反射面上で反射する内部全反射型CC素子を用いることができる。この内部全反射型CC素子は微小硝子球型再帰反射素子のように金属薄膜層を設置する必要が無いので、金属薄膜層の色により再帰反射性集積回路封入製品の外観が暗くならないので事前認識性の面で好ましい。
【0029】
さらに、非接触型再帰反射性集積回路封入製品においては、内部全反射型CC素子は金属薄膜層が通信に用いる電波の吸収を起こさないので、上記の微小硝子球型再帰反射素子や鏡面反射型CC素子にくらべて好ましい。このような電波吸収の防止は微小硝子球型再帰反射素子の金属薄膜層を設置しなければ、同様な効果を得ることができるが、再帰反射面積の減少により事前認識性が低下するという欠点がある。
【0030】
微小硝子球型再帰反射素子は好ましくは直径が30〜500μmで屈折率が1.4〜2.5の微小な硝子球に、焦点距離を調整する樹脂の薄膜層を必要に応じて設置した後に、再帰反射効率を高めるために微小硝子球の40〜70%の表面面積をたとえばアルミニウムや銀などの金属を蒸着や化学メッキなどの手段で金属薄膜層を設置して作成することが出来る封入レンズ型を用いることができる。
【0031】
封入型の再帰反射素子の例としては、再帰反射部分を構成する再帰反射素子の直径が30〜500μmの微小硝子球型再帰反射素子よりなる再帰反射シートが好ましく、表面が平滑で透明な表面保護層により覆われている。30μm未満の直径の反射素子においては、回折効果による光の発散が過大となり再帰反射性能が低下し好ましくなく、500μmを超える直径の反射素子においてはシートの厚さが過大となり好ましくない。
【0032】
さらに、他の微小硝子球型再帰反射要素としてはカプセルレンズ型再帰反射素子を用いることができる。再帰反射部分を構成する再帰反射素子の直径が30〜500μmの微小硝子球型再帰反射素子よりなる再帰反射シートが好ましく、表面保護層を構成するプラスチックフィルムは表面が平滑で透明である。封入レンズ型再帰反射シートと同様に30μm未満の直径の反射素子においては、回折効果による光の発散が過大となり再帰反射性能が低下し好ましくなく、500μmを超える直径の反射素子においてはシートの厚さが過大となり、また、形成される像の鮮明度が低下するので好ましくない。
【0033】
本発明の製品を構成する担持層は、集積回路モジュールを担持するコア層、さらに、このコア層や再帰反射要素またはアンテナを担持するインナー層に分割されてもよい。さらに、担持層には本発明の製品の表裏を保護するための上下部保護層を設置することができる。
【0034】
これらの集積回路モジュールと光の再帰反射素要素は本発明による製品の上下部保護層、コア層および/またはインナー層よりなる担持層に設置することができる。
【0035】
本発明に用いる上下部保護層には多数の再帰反射素子を設置することができ、さらに、必要に応じて、印刷層、再帰反射性でない金属薄膜層やフォログラム層などの改竄防止層、磁気ストライプや凹凸エンボスなどの層をあわせて設置することができる。
【0036】
特に、フォログラム層は改竄防止に優れた効果を有しており各層に、それ自体公知の方法でフォログラムを形成する凹凸層を形成して、必要に応じてアルミニウムなどの金属薄層を設置することで形成することができる。さらに、フォログラムのための金属薄層を形成する際に、フォログラム金属薄層の下層部にシリコン樹脂などの剥離層を部分的に設けることができる。これにより、貼付した本発明による製品を再度剥離させようとしたさいに剥離層とフォログラム金属薄層との間で部分的な剥離が生じるためにシート全体の再剥離が困難とすることができ盗難防止に有効である。
【0037】
また、上部保護層やコア層、インナー層、とくに再帰反射素子を設置する層に用いる樹脂としては塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂などの全光透過率が50%以上の透明樹脂シートを用いることができるが、耐熱性の観点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。とくに、車両に設置する目的で用いる再帰反射性集積回路封入製品においては、炎天下の駐車時など高温に設置されるので90度の高温においても再帰反射性が低下しないような耐熱性を持った樹脂が好ましい。
【0038】
さらに、上部保護層には外観を改善する目的で各種の顔料、染料、蛍光顔料や蛍光染料などの着色剤、さらに、耐侯性や耐熱性を改善する目的で紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などを添加する事ができる。蛍光性の着色剤は昼間における視認性が優れているので好ましい。
【0039】
紫外線吸収剤の好適な例としては、配合しうる紫外線吸収剤としては例えば以下のものが挙げられる。
ハイドロキノン系:ハイドロキノン、ハイドロキノンジサリチレートなど。
サリチル酸系:フェニルサリチレート、パラオクチルフェニルサリチレートなど。
ベンゾフェノン系:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ヒドロキシ4,4−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2,2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフェノン、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ヒドロキシ−4,4−ジメトキシ−5−ナトリウムスルホベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ハイドロキシ−5−クロルベンゾフェノンなど。
ベンゾトリアゾール系:2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5,6−ジクロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5 第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ステアリルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−カルボン酸フェニル)ベンゾトリアゾールエチルエステル、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロル−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4,5−ジメチルフェニル−5−カルボン酸ベンゾトリアゾールブチルエステル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4,5−ジクロル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−カルボン酸エステルベンゾトリアゾール、2−(2−アセトキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなど。
【0040】
これらの紫外線吸収剤のうち、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系のものが好適であり、就中、ベンゾフェノン系では、2,3−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン;ベンゾトリアゾール系では2−(2−ハイドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロル−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが有効である。
【0041】
また、市販品では、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いることができ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、シプロ化成株式会社製のシーソーブ701、702、703、704、706、709;旭電化株式会社製のアデカスタブLA31、LA32;住友化学株式会社製のスミソーブ250;共同薬品株式会社製バイオソーブ590などが挙げられ、また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、旭電化株式会社製のアデカスタブ1413、LA51;シプロ化成株式会社製のシーソープ1001、103;住友株式会社製のスミソーブ110Sなどが挙げられる。
【0042】
光安定剤の好適な例としては、とくに、ヒンダードアミン型光安定剤が好ましく、たとえば、さらに、本発明の再帰反射シートの蛍光染料を含有する層には、耐候性の改善等を目的として、必要により、ヒンダードアミン光安定剤を配合することもできる。その際に使用しうるヒンダードアミン光安定剤としては、耐候性を保持することができることから、分子量が600以上の第3級アミン構造を持つピペクジン型ヒンダードアミン光安定剤が特に好ましい。
【0043】
市販品としては、例えば、日本チバガイギー株式会社製のチヌビン622LD、765、144、キマソーブ119FL;旭電化工業株式会社製のアデカスタブLA52、LA62;三共株式会社製のサノールLS2626などを挙げることができる。
【0044】
これらのヒンダードアミン光安定剤は、単独であるいは紫外線吸収剤や酸化防止剤と併用して、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内の量で蛍光染料を含有する層に配合することができる。
さらに、上記の光安定剤はたとえば(メタ)アクリル酸とのエステルの形で蛍光染料を含有する層を構成する樹脂の骨格中に導入することも可能である。そのような反応型光安定剤としては1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジルメタアクリレートや2,2,6,6−テトラメチルピペリジルメタアクリレートなどが挙げられ、これらは樹脂を構成する他の反応性モノマー、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、塩化ビニルなどと共重合させることにより樹脂骨格中に光安定剤の基を導入することができる。
【0045】
さらに、染料、蛍光染料などの着色剤を含有する層には、耐候性を付与する目的で、ベンゾエート系光安定剤などを配合することもできる。用いることのできるベンゾエート系光安定剤としては、ベンゾエートタイプのクエンチャー、例えば、日本チバガイギー(株)製チヌビン120(商品名)を例示することができる。
【0046】
酸化防止剤の例としては、アミン系酸化防止剤としてナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、フェニレンジアミン系、フェノール系酸化防止剤としてキノリン系、ヒドロキノン系、モノフェノール系ポリフェノール系、チオビスフェノール系などが使用できる。
【0047】
本発明に用いる下部保護層においても、多数の再帰反射要素を設置することができ、さらに、必要に応じて印刷層、金属蒸着やフォログラムなどの改竄防止層、磁気ストライプや凹凸エンボスなどの層を設置することができる。また、用いる樹脂としては塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂などの樹脂シートを用いることができるが、特に耐熱性の観点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
【0048】
上記で説明した、上下部保護層、コア層、インナー層等の間は、各種の感熱接着剤、感圧接着剤、熱硬化、紫外線硬化や電子線硬化タイプの架橋型接着剤あるいは熱融着などの手段で結合する事が出来る。
【0049】
また、内部全反射型CC素子を設置した層のプリズム反射面を有する面の側には、空気層を設置する事が好ましい。このためには前記McGrath特許に記載の方法を採用することができる。
【0050】
また、上下部保護層の表面には、ICカードを硝子、プラスチックなどの外部支持体に貼付するための接着剤層が設置しうる。用いる接着剤としては、感熱接着剤、感圧接着剤、架橋型接着剤などが適宜用いられる。
【0051】
とくに、車両硝子内面などの光透過性基材に貼付する際には、光透過性と耐熱性の観点からポリ(メタ)アクリル樹脂型感圧接着剤が好ましい。また、耐侯性や耐熱性を改善する目的で、前記上部保護層で用いたと同じ紫外線吸収剤、光安定剤や酸化防止剤などをそれぞれ0.05〜5重量%の割合で添加する事が好ましい。
【0052】
本発明で用いる集積回路モジュールにはCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read only Memory)やEEPROM(Electronically Erasable Programmable ROM)などの電子回路により構成され、処理機能、記憶機能及び入出力制御機能が実行できるように設計されている。接触型ICカードにおいては外部接触端子が設置されている。
【0053】
本発明の好適な態様である外部端子の無い非接触型ICカードにおいては、集積モジュールに例えば電波方式認識型集積回路、所謂、RF−ID(Radio Frequency−identification IC)などと一般に呼ばれる非接触型の電波方式認識型集積回路を内蔵している。
【0054】
さらにこの電波方式認識型集積回路と外部との通信を可能とする通信アンテナが設置される。本発明におけるアンテナは金属の箔や蒸着金属をメッシュ状、線状やループ状に、担持層(コア層やインナー層)の上にアンテナを設置することができる。
【0055】
電波方式認識型集積回路と通信アンテナは、共に本発明の製品内に封入されており、外部からの電力を供給するための給電コネクターや電子信号を伝えるための、誘電体を介した電磁結合構造などを必要としない。したがって、本発明におけるアンテナと集積回路モジュールは直接またはジャンパーを介して結合されており、薄くて柔軟なシート状の製品として得ることができる。結合の方法としては導電性接着剤、異方性接着シート、はんだ法、蝋付けおよび溶接法を用いることができる。
【0056】
非接触型ICカードにおいては集積回路封入積層品とリーダーライターとの距離や用いるアンテナの種類により、密着型(2mm以内)、近接型(10cm以内)、近傍型(70cm以内)および遠隔型(70cm以上)に分類される。利用する周波数は電波を飛ばす距離が短い密着型と近接型は短波、近傍型は長波、遠隔型においてはマイクロ波が通常用いられる。
【0057】
本発明に用いるアンテナを形成する方法としては、部分的に金属薄膜層を設置する部分的設置法、金属薄膜層を部分的に除去する部分的除去法および機械的加工法を採用することができる。
【0058】
部分的設置法としては、印刷法、マスク法やリソグラフィー法により、マスクをアンテナを設置するシートの層の上に設置した後に、真空蒸着法、スパッタリング法、電気メッキ法あるいは化学メッキ法などの手段で金属薄膜層を所望するアンテナ形状に設置する方法をとることができる。
【0059】
再帰反射シートに部分的設置法によりアンテナを設置する際には、微小硝子球型再帰反射シートにおいては微小硝子球を埋め込み、必要に応じて微小硝子球型素子及びその上に樹脂の薄膜層を介して設ける微小硝子球の金属薄膜層を設置する側にマスクを設置した後にアルミニウムを真空蒸着法によって、アンテナと金属薄膜層とを同時に同一の層に設置することができる。この様にして形成したアンテナは再帰反射性能を有している。また、プリズム型再帰反射シートにおいても同様にプリズムの反射側面にアンテナと金属薄膜層とを同時に同一の層に設置することができる。
【0060】
部分的除去法としては、アンテナを設置するシートの上に真空蒸着法、スパッタリング法、電気メッキ法あるいは化学メッキ法などの手段であらかじめ金属薄膜層を設置した後に、化学エッチング法、ドライエッチング法、レーザー法およびサンドブラストなどの機械的な除去法により、所望するアンテナ形状に金属薄膜層を部分的に除去をする方法をとることができる。
【0061】
再帰反射シートに部分的除去法によりアンテナを設置する際には、微小硝子球型再帰反射シートやプリズム型再帰反射シートに従来公知の方法でアルミニウム等を真空蒸着法によって金属薄膜層として全面に設置した後に、たとえば、印刷法によりエッチング液をアンテナの形状に部分的に塗布して化学エッチング法によりアンテナを形成し、その後に、エッチング液を中和、水洗する方法をとることが好ましい。
【0062】
化学エッチング液に用いることのできる薬剤としては、各種の酸やアルカリ類を用いることができる。用いることのできる酸類の例としては、塩酸、硝酸、硫酸およびリン酸の水溶液、アルカリ類の例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液を用いることができる。化学エッチング液の濃度は酸やアルカリの種類、金属薄膜層の厚さやエッチング処理の速度により適宜選択されなければならないが、5〜40重量%が例示できる。
【0063】
化学エッチング処理を印刷法で行う際には、印刷性を改善する目的で粘度調節剤として各種の高分子化合物、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸塩、ポリビニールアルコールおよびヒドロキシエチルセルロース、カルボキシル化メチルセルロースやメチルセルロースなどの各種セルロース誘導体などを加えることが好ましいが、用いることのできる粘度調節剤の種類と濃度は印刷方法や速度により適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
【0064】
さらに、化学エッチング液には金属薄層との濡れや浸透性を改善する目的で各種の界面活性剤をくわえることが好ましい。用いることのできる界面活性剤の種類は特に制限されるものではないが、アミンタイプ、アンモニウム塩タイプ、ピリジン誘導体などの陽イオン系界面活性剤、また硫酸化油、脂肪酸塩、硫酸化エステル油、アルキル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、さらに多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪酸エチレンオキサイド付加物などの非イオン系活性剤が好ましい。
【0065】
印刷方法は特に制限されるものではないが、グラビア印刷法、スクリーン印刷法およびインクジェット法が好ましい。また、他の除去法としてドライエッチング法、レーザー法およびサンドブラスト法などの機械的な除去法も採用することが可能である。
【0066】
機械的加工法としては、金属薄板を打抜き法やレーザー加工法でアンテナ形状に加工する方法、細線状の金属線をループ状に加工する方法によりアンテナを加工した後に、担持層に設置する方法が採用できる。
【0067】
いずれの方法においても、金属薄膜層やアンテナの材質として用いることのできる金属としては、アルミニウム、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−マンガン合金、銀、銅、ニッケル、銅−ニッケル合金、真鍮およびリン青銅をそれぞれ単独に、あるいは複合、積層して設置することができ、その中でも、アルミニウムと銅が電波受信の性能が優れており好ましい。
【0068】
好ましい、アンテナ部分の金属薄膜層の厚さは0.5〜500μmである。0.5μm未満の金属薄膜層の厚さにおいては、電波受信の性能が低下する、再帰反射シートの反射層として用いる際には鏡面反射特性が低下するなどの問題点を生じやすく好ましくない。また、500μmを超える金属薄膜層の厚さにおいては、シートの厚さが過大になる、シートの柔軟性が低下する、屈曲性が低下する、アンテナを形成する際に解像度が低下して鮮明なパターンとして得られにくいなどの問題点を生じやすく好ましくない。
【0069】
さらに、アルミニウムは再帰反射シートの金属薄膜層として用いる際には優れた光学特性を示すので特に好ましい。アルミニウム金属薄膜層の連続蒸着処理装置は、真空度が7〜9×10−4mmHg程度に維持できる真空容器、その中に設置された基体シート及びその光入射側表面上に積層された表面保護層からなるプリズム原反シートを繰り出す巻き出し装置、蒸着処理されたプリズム原反シートを巻き取る巻き取り装置、並びにそれらの間にあって、電熱ヒーターで黒鉛坩堝中に置かれたアルミニウムを溶融させることが可能な加熱装置よりなっている。黒鉛坩堝中には純度が99.99重量%以上の純アルミニウムペレットが投入され、例えば、交流電圧350〜360V、電流が115〜120A、処理速度が30〜70m/分の条件で、溶融され蒸気化されたアルミニウム原子によって再帰反射素子の表面に金属薄膜層を例えば0.2〜2μmの厚さで蒸着処理することができる。
【0070】
このようにしてプリズム反射面上に設置された通信アンテナにおいては、通信アンテナが設置されていないCC素子部分はもちろん通信アンテナが設置されているCC素子部分のいずれの領域においても、光を光源に向けて再帰反射することが可能であり、夜間における事前認識性に特に優れている。また、従来技術における通信アンテナの設置は平坦部分に限られていたのに対して、本発明におけるCC素子のプリズム反射面や微小硝子球上に設置された通信アンテナは凹凸形状の為に増大したアンテナ面積を得ることができて通信性に優れている。
【0071】
本発明における担持層とはコア層および/またはインナー層により構成されており、それぞれ又はいずれかの層によって集積回路モジュールや通信アンテナ、外部端子を保持する。また、いずれの担持層にも多数の再帰反射素子が設置されても良い。
【0072】
コア層は、貫通部分または窪み部分を有しておりその部分に集積モジュールを挿入して用いる。コア層に用いる材料の材質としては適宜選択できるが、透明性の高い材質が好ましく、例えば、塩化ビニール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂などの全光透過率が50%以上の透明樹脂シートを用いることができるが、特に耐熱性の観点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
【0073】
インナー層はその上部または下部表面に集積モジュールを積載して用いる。インナー層に用いる材質としては適宜選択できるが、透明性の高い材質が好ましく、例えば、塩化ビニール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂などの全光透過率が50%以上の透明樹脂シートを用いることができるが、特に耐熱性の観点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、インナー層は2層以上設置することもできる。
【0074】
上記で記載した上下部保護層、コア層、インナー層および接着剤層は厚さや硬度などに特に制限が加えられるものではないが、用いる目的に従って、耐熱性、耐候性、光透過度、たとえばJIS X6321−11998に規定されている各種の機械強度、耐静電気特性などが考慮されなければならない。
【0075】
製品形状に関しても所謂一般に用いられるICカードサイズ(85.6mm×54mm×0.76mm)に限定されることはなく、大型で柔軟な形状も適宜選択し得る。
【作用】
【0076】
上記のように構成された本発明における再帰反射性集積回路封入製品は、リーダーライターとによる相互通信以前に、確認者が本発明の製品の存在を夜間においても格別な認識手段を用いずに事前認識することを可能とならしめる手段として、集積回路モジュールが封入された再帰反射性集積回路封入製品に多数の再帰反射素子が設置されて、外部からの光を光源に向けて反射することができる。
【0077】
さらに詳しくは、本発明における再帰反射性集積回路封入製品は、集積回路を内蔵する集積回路モジュール、該モジュールを担持するコア層および/またはインナー層よりなる担持層、担持層の上部及び下部面を保護する上部保護層ならびに下部保護層からなる再帰反射性集積回路封入製品において、上記のいずれかの層に多数の再帰反射素子が設置されて、外部からの光を光源に向けて反射することができるために事前認識性を高める。
【0078】
本発明の好適な態様である非接触型製品においては外部との通信を可能とするアンテナが設置されており、アンテナは金属の箔や蒸着金属をメッシュ状、線状やループ状に、コア層やインナー層の上にアンテナを設置されて、特段の電力供給のための外部結合装置や、アンテナと集積回路モジュールとの電子情報を介するための電磁的結合装置なしに、外部との通信を行うことができる。
【0079】
特に多数のCC素子が設置された本発明の製品においては、CC素子のプリズム反射素子面上に直接にアルミニウムや銀などの金属を蒸着、スパッタリングや化学メッキなどの手段を用いておなじく線状やループ状にアンテナを設置することができる。あるいは、CC素子のプリズム反射素子面をやはりアルミニウムや銀などの金属を蒸着、スパッタリングや化学メッキなどの手段を用いて金属化した後に、エッチングなどの手段で一部の金属領域を取り除いて作成しても良い。
【0080】
このようにしてプリズム反射面上に直接設置されたアンテナにおいては、アンテナが設置されていないCC素子部分はもちろんアンテナが設置されているCC素子部分のいずれの領域においても、光を光源に向けて再帰反射することが可能であり、夜間における事前認識性に優れている。また、従来技術におけるアンテナの設置は平坦部分に限られていたのに対して、本発明におけるCC素子のプリズム反射面上に設置されたアンテナはプリズムの凹凸形状の為に約1.5倍のアンテナ面積を得ることができて、優れた通信を行うことができる。
【0081】
本発明における、再帰反射性製品は前記で述べたように、視覚による事前認識性の改善に優れているが、本発明の製品を用いる他の形態としては、例えば、駐車場ゲートや料金所における光学式の通過センサーに用いるリフレクターとして用いることができる。本発明による製品に設置された多数の再帰反射素子は、例えば、料金徴収者や駐車場管理者に視覚による事前認識情報を与えると共に、反射型センサーの光源より発せられた光を光源近傍の受光器に再帰反射して車の接近を伝える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
本発明の好適な実施態様を図面を参照して説明を行う。
【0083】
図1は、本発明との比較に用いる従来公知の接触型ICカードの構造を示している。集積回路を内蔵する集積回路モジュール(5)、該モジュールを担持するコア層(2)および/またはインナー層(3)よりなる担持層(4)、担持層(4)の上部及び下部面を保護する上部保護層(1)ならびに下部保護層(7)からなり、集積回路モジュール(5)は上部保護層に開口されて設置されている外部端子を通じて通信を行う。
【0084】
また、図2は、本発明との比較に用いる従来公知の非接触型ICカードの構造を示している。集積回路を内蔵する集積回路モジュール(5)、該モジュールを担持するコア層(2)および/またはインナー層(3)よりなる担持層(4)、担持層(4)の上部及び下部面を保護する上部保護層(1)ならびに下部保護層(7)からなり、通信アンテナ(6)がコア層(2)上に設置されており、集積回路モジュール(5)は通信アンテナ(6)を介して外部との通信を行う。
【0085】
図3は、本発明における接触型再帰反射性集積回路封入製品の好適な態様を示す。集積回路を内蔵する集積回路モジュール(5)、該モジュールを担持する、インナー層(3)の上部を保護する上部保護層(1)からなり、集積回路モジュール(5)は上部保護層に開口されて設置されている外部端子を通じて通信を行う。
【0086】
上部保護層(1)は光学的に透明な樹脂が用いられており、文字情報などの印刷層や改竄防止層が設置されている。インナー層(3)はやはり光学的に透明な樹脂が用いられており、多数の再帰反射素子が設置されていて、入射した光を光源の方向に反射する。
【0087】
図4は、本発明における非接触型再帰反射性集積回路封入製品の好適な態様を示す。集積回路を内蔵する集積回路モジュール(5)、該モジュールを担持するコア層(2)およびインナー層(3)からなる担持層、該担持層の上下部を保護する上部保護層(1)と下部保護層(7)からなり、集積回路モジュール(5)はコア層上に設置されたループ状の通信アンテナ(6)を通じて通信を行う。
【0088】
上部保護層(1)は光学的に透明な樹脂が用いられており、文字情報などの印刷層や改竄防止層が設置されている。コア層(2)はやはり光学的に透明な樹脂が用いられており、多数の再帰反射素子が設置されていて、入射した光を光源の方向に反射する。
【0089】
図5は、本発明における非接触型再帰反射性集積回路封入製品の好適な態様を示す。集積回路を内蔵する集積回路モジュール(5)、該モジュールを担持するインナー層(3)、該インナー層の上下部を保護する上部保護層(1)と下部保護層(7)からなり、集積回路モジュール(5)はコア層上に設置されたループ状の通信アンテナ(6)を通じて通信を行う。
【0090】
上部保護層(1)は光学的に透明な樹脂が用いられており、文字情報などの印刷層が設置されている。インナー層(3)はやはり光学的に透明な樹脂が用いられており、多数の再帰反射素子が設置されていて入射した光を光源の方向に反射する。
【0091】
さらに、上部保護層(1)の表面には、車両硝子内面などの光透過性基材に貼付するための、透明性接着剤層(8)が設置されており、光透過性基材に貼付されている。
【0092】
図6は、本発明における非接触型再帰反射性集積回路封入製品の好適な態様を示す。集積回路を内蔵する集積回路モジュール(5)、該モジュールを担持する下部のインナー層(3)、該下部インナー層の下部表面を保護する下部保護層(7)、さらに、多数のキューブコーナープリズム型再帰反射素子が設置された上部のインナー層(3)、該上部インナー層の上部表面を保護する上部保護層(1)からなりなっている。集積回路モジュール(5)は多数の再帰反射素子が設置された上部インナー層(3)の下層に設置されたループ状の通信アンテナ(6)を通じて通信を行う。
【0093】
上部保護層(1)は光学的に透明な樹脂が用いられており、文字情報などの印刷層が設置されている。上部のインナー層(3)はやはり光学的に透明な樹脂を用いた多数のキューブコーナープリズム型再帰反射素子が設置されており、ループ状の通信アンテナ(6)が該上部のインナー層の下層に設置されているために入射した光をICカードの全面にわたって光源の方向に反射する。
【0094】
さらに、上部保護層(1)の表面には、車両硝子内面などの光透過性基材に貼付するための、透明性接着剤層(8)が設置されており、光透過性基材に貼付されている。
【0095】
図7は、図6で示される非接触型再帰反射性集積回路封入製品の断面を示している。金属薄膜層によりなるループ状の通信アンテナ(6)はキューブコーナープリズム型再帰反射素子の反射面に直接設置されている。集積回路モジュール(5)は接着剤層(13)によって多数のキューブコーナープリズム型再帰反射素子が設置された上部のインナー層(3)に設置されている。上部保護層(1)の表面には改竄防止層(15)および下部には印刷層(11)が設置されている。
【0096】
さらに、多数のキューブコーナープリズム型再帰反射素子が設置された上部のインナー層(3)は下部のインナー層(3)と下部表面保護層(7)によって、例えば、製品の四辺にわたって密封封入されて空気層(14)が形成されている。
【0097】
図8には本発明による封入型の微小硝子球型再帰反射要素(9)が設置され、該再帰反射要素を構成する微小硝子球(10)の反射面上に設置された金属薄膜層(鏡面反射層)が部分的に除去されてアンテナ(6)が形成されている非接触型再帰反射性集積回路封入製品を示す。
【0098】
このアンテナ(6)は微小硝子球(10)の反射面上に設置された金属薄膜層(鏡面反射層)をエッチングなどの部分的除去法で形成してもよく、あるいは、蒸着などの手段で金属薄膜層を設置する際にマスクを微小硝子球の表面に設置して形成する部分的設置法のいずれにおいても形成することが出来る。
【0099】
アンテナ(6)は電波方式認識型集積回路モジュール(5)と直接結合されており、コネクターや誘電体を介した電磁結合構造は採用されていない。集積回路モジュール(5)は微小硝子球型再帰反射要素(9)によりなる担持層と接着剤などを介して接合されていても良い。
【0100】
微小硝子球型再帰反射要素(9)によりなる担持層は再帰反射する側の面に光学的に透明な上部保護層(1)およびその裏面に下部保護層(7)が積層されて密封封入構造となるように、端部が接着や熱融着などの方法で結合されている。上部保護層(1)およびと微小硝子球型再帰反射要素(9)との間は接着剤(8)により結合されている。
【0101】
さらに、上部保護層(1)の表面には、車両硝子内面などの光透過性基材に貼付するための、透明性接着剤層(8)が設置されて光透過性基材に貼付されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】従来技術による接触型ICカードを示す図。
【図2】従来技術による非接触型ICカードを示す図。
【図3】本発明によるインナー層に多数の再帰反射素子が設置された接触型再帰反射性集積回路封入製品を示す図。
【図4】本発明によるコア層に多数の再帰反射素子が設置された非接触型再帰反射性集積回路封入製品を示す図。
【図5】本発明によるインナー層に多数の再帰反射素子が設置され、また上部保護層表面に接着剤層が設置された非接触型再帰反射性集積回路封入製品を示す図。
【図6】本発明によるインナー層に多数の再帰反射素子が設置され、また上部保護層表面に接着剤層が設置された非接触型再帰反射性集積回路封入製品を示す図。
【図7】図6を説明する断面図
【図8】本発明による多数の微小硝子球型再帰反射要素が設置されており、該再帰反射要素を構成する微小硝子球の反射面上に設置された金属薄膜層(鏡面反射層)が部分的に除去されてアンテナを形成されている非接触型再帰反射性集積回路封入製品を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少くとも、集積回路を内蔵する集積回路モジュールと、光の再帰反射要素と、これらの担持層とからなることを特徴とする再帰反射性集積回路封入製品。
【請求項2】
該再帰反射要素が、多数のキューブコーナープリズム型再帰反射素子によって構成されている請求項に記載の再帰反射性集積回路封入製品。
【請求項3】
該キューブコーナープリズム型再帰反射素子が、内部全反射型キューブコーナープリズムによって構成されている請求項に記載の再帰反射性集積回路封入製品。
【請求項4】
該キューブコーナープリズム型再帰反射素子が、キューブコーナープリズム及びその上に設けられた金属薄膜層とから成る鏡面反射型キューブコーナープリズムによって構成されている請求項に記載の再帰反射性集積回路封入製品。
【請求項5】
該再帰反射要素が、多数の微小硝子球型再帰反射素子によって構成されている請求項に記載の再帰反射性集積回路封入製品。
【請求項6】
該微小硝子球型再帰反射素子が、微小硝子球型素子及びその上に設けられた金属薄膜層によって構成されている請求項に記載の再帰反射性集積回路封入製品。
【請求項7】
該微小硝子球型再帰反射素子が、微小硝子球型素子及びその上に樹脂の薄膜層を介して設けられた金属薄膜層によって構成されている請求項に記載の再帰反射性集積回路封入製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−282427(P2008−282427A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206629(P2008−206629)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【分割の表示】特願2003−505874(P2003−505874)の分割
【原出願日】平成14年6月18日(2002.6.18)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】