説明

再帰性反射シート

【課題】 衣服等に貼着又は縫着することにより、夜間時において自動車からの光を再帰反射させて運転者に着用者の存在を視認させることができる再帰性反射シートであって、優れた通気性及び意匠性を付与している再帰性反射シートを提供する。
【解決手段】 軟質樹脂からなる結合層1aの表層部に金属蒸着層からなる反射層1bを介して無数のガラスビース1cを敷きつめてなる再帰性反射シート主体1に、全面的に多数の透孔2を穿設してなり、この再帰性反射シートを適宜な文字や図柄等に裁断して衣服や袋物等の生地の表面に熱接着又は縫着することにより、透孔2によって通気性を付与すると共に意匠的にも優れた外観を呈する各種製品を作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間に着用する工事用ベストや作業服、或いは通常の衣服、さらには鞄や靴などの商品の表面に貼着等することによって自動車からの光を反射させ、視認性を向上させて安全を確保するすることができると共にデザイン的にも優れた再帰性反射シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
再帰性反射シートとしては、オープンビーズタイプや封入ビーズタイプ、カプセル式レンズタイプ、ブリズム式レンズタイプなどの構造のものが知られているが、いずれの再帰性反射シートも夜間時において走行する自動車からのヘッドライトを再帰反射して運転者に着用者の存在を素早く視認させるためのシート材として広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているように、再帰性反射シートを帯状に裁断してこの帯状シート材を帯状生地の表面に貼着、又は、縫着することによって再帰性反射帯状体を形成し、複数本の再帰性反射帯状体を接合させることによって光反射チョッキを縫製したり、さらには、特許文献2に記載されているように、再帰性反射シートを帯状に裁断してこの帯状の再帰性反射シート材を衣服の一部に貼着、又は、縫着したり、このような帯状の再帰性反射シート材ではデザイン的に単調となるため、再帰性反射シートから文字や図柄のシート片を裁断してこのシート片を衣服の一部に貼着、又は、縫着することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3055002号公報
【特許文献2】特開平9−216499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、再帰性反射シート、例えば、ビーズタイプの再帰性反射シートは、軟質樹脂よりなる結合層にアルミ蒸着層等の金属反射層を介して微細なガラスビーズをその一部を結合層に埋入させた状態で敷きつめた構造を有しているため、極めて通気性に乏しく、衣服又は鞄や帽子等の商品にこの再帰性反射シート片を貼着又は縫着によって装着した場合には、蒸れが生じるばかりでなく、これらの商品のもつ色彩や模様等の充分に生かすことができなくなる。又、上記再帰性反射シートを鞄や帽子等の生地として使用した場合には、再帰性反射シートの有するシルバー色のみが強調された商品価値が低下することになる。さらに、この再帰性反射シートを蛍光織編物からなる衣服等に貼着した場合には、再帰性反射シートによって被覆された蛍光織編物部分が全面的に隠蔽された状態となって蛍光織編物としての機能が低下するといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、優れた通気性及び意匠性を備えていると共に、衣服等に貼着又は縫着した場合には、その部分の衣服等の一部を外部に露出させて雅趣に富んだ外観を呈することができ、又、裏生地を装着している場合にはその裏生地の色彩等を生かすことができる再帰性反射シートを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の再帰性反射シートは、請求項1に記載したように、再帰性反射シート主体に、表裏面間に貫通した多数の透孔を全面に亘って穿設してなることを特徴とする。
【0008】
このように構成した再帰性反射シートにおいて、請求項2に係る発明は、再帰性反射シート主体を帯状に裁断してなることを特徴とし、請求項3に係る発明は、再帰性反射シート主体を文字、図柄模様に裁断してなることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項4に係る発明は、再帰性反射シート主体の裏面に織地又は網地からなる裏生地を一体に設けていることを特徴とし、請求項5に係る発明は、再帰性反射シート主体の裏面に蛍光織編物からなる裏生地を一体に設けていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、再帰性反射シート主体の構造に関するものであって、軟質樹脂よりなる結合層の表面に金属反射層を介して無数の微細なガラスビーズをその一部を結合層に埋入させた状態で敷きつめてなり、上記結合層の裏面にホットメルト層又は裏生地を層着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、再帰性反射シート主体に表裏面間に貫通した多数の透孔を全面に亘って穿設しているので、この再帰性反射シートを適宜形状に裁断して作業服や消防服等の衣服に貼着又は縫着すれば、自動車のヘッドライトからの光を該再帰性反射シートによって再起反射して運転者に着用者の存在を素早く視認させることができ、着用者の安全を確保し得るのは勿論、この再帰性反射シート主体に穿設した多数の透孔によって衣服の通気性を保持することができて蒸れることなく快適な着用を可能にすることができるものであり、さらに、再帰性反射シートによって隠蔽されている衣服の一部がこの透孔を通じて外部に露出して再帰性反射シートを一層引き立たせることができると共に、この透孔を模様状或いは文字を描くようにシート主体に穿設することによって意匠的にも優れた外観を呈する再帰性反射シートを提供することができる。
【0012】
この再帰性反射シートの利用は作業服などの衣服に限らず、例えば、鞄や靴等の生地の表面に貼着した場合には、シート主体に穿設している多数の透孔によってこれらの生地の一部を外部に露呈させて生地本来の持つ色彩、図柄等を生かすことができ、優れたファッション性を付与することができると共に、夜間においては、上述したように光を再帰反射して安全性を高めることができる。
【0013】
また、上記再帰性反射シート主体の裏面に織地又は網地からなる裏生地を裏打ちしておくことによって、強度を増大させることができるばかりでなく、帯状やその他の形状に容易に裁断することができ、且つ、衣服等への取り付けが形状を崩すことなく正確に行うことができると共に、この再帰性反射シートによって衣服のポケットや襟、袖などを作製することによってワンポイント的な機能を発揮して衣服としてのファッション性を向上させることができる。さらに、この再帰性反射シートによって鞄や帽子等の商品を作製すれば、再帰性反射シートのもつシルバー色以外にこの再帰性反射シートに穿設している多数の孔と該孔から露出する裏生地の持つ色彩等によって意匠的にも優れた外観を呈する商品を得ることができる。
【0014】
また、再帰性反射シート主体の裏面に蛍光織編物からなる裏生地を層着しておけば、該蛍光織物の一部が再帰性反射シート主体に穿設している多数の透孔から露出して蛍光と光反射との両機能を奏するシートを提供することができると共に上記同様に再帰性反射シート主体に穿設している多数の透孔による通気性と意匠的効果も合わせて発揮させることができる。なお、再帰性反射シート主体の裏面に蓄光剤を用いて得た蓄光織編物からなる裏生地を層着しておけば、暗闇において蓄光織物に蓄光された光が再帰性反射シート主体に穿設している多数の透孔から外部に発光して着用者の存在を明確に知らしめることができ、安全性を一層高めることができる。
【0015】
再帰性反射シート主体としては、軟質樹脂よりなる結合層の表面に金属反射層を介して多数の微細なガラスビーズをその一部を結合層に埋入させた状態で敷きつめていると共に上記結合層の裏面にホットメルト層を層着してなる構造のものが好ましく使用することができるが、結合層の裏面に裏生地を層着している再帰性反射シートであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明再帰性反射シートの一部の拡大縦断正面図。
【図2】その一部の平面図。
【図3】再帰性反射シート主体の一部の拡大縦断正面図。
【図4】帯状に裁断された再帰性反射シート片の一部の簡略斜視図。
【図5】再帰性反射シート片を衣服に装着した使用状態の簡略正面図。
【図6】別な使用状態を示す衣服の正面図。
【図7】再帰性反射シートの別な構造を示す一部の拡大縦断正面図。
【図8】その再帰性反射シート主体の拡大縦断正面図。
【図9】平面形状の異なる透孔を穿設している再帰性反射シートの一部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、再帰性反射シートは図1、図2に示すように、再帰性反射シート主体1に表裏面間に貫通した多数の透孔2、2、2・・・2を全面に亘って穿設してなるものであり、上記再帰性反射シート主体1としては、特に限定されないが、図3に示すように、ポリエステルなどの透明な軟質樹脂からなる結合層1aの表面にアルミ等の薄い金属蒸着層からなる反射層1bを層着していると共にこの反射層1b上に無数の微細な球状のガラスビーズ1cを敷きつめてその一部を反射層1bとともに結合層1aの表層部を凹円弧状に窪ませた状態にして結合層1aの表層部に埋入、固着させ、さらに、結合層1aの裏面にホットメルト層1dを層着してなる構造を有している。また、このように構成した再帰性反射シートの反射層表面には、再帰性反射シートを生地等に貼着したのち剥離するポリエステルフィルム等からなる保護紙3が仮接着していると共に、上記ホートメルト層1dの裏面(露出面)には剥離紙4が剥離可能に仮接着している。
【0018】
なお、再帰性反射シート主体1に穿設している上記透孔2は、保護紙3の表面から剥離紙4の裏面に亘って貫通するように穿設しておいてもよく、また、保護紙3や剥離紙4に穿設することなくガラスビーズ1cの表面からホットメルト層1dの裏面に亘って貫通するように穿設しておいてもよい。
【0019】
このように構成した再帰性反射シートの使用態様の一例を説明すると、図4に示すように、再帰性反射シートを帯状に裁断してこの帯状再帰性反射シート片Aを図5に示すように、衣服Bの正面や背面部分に肩掛けベルト状に、さらには胴回りのベルト状に重ね合わせてそのホットメルト層1dを衣服Bに熱圧、貼着することによって、工事用等の安全作業服として使用する。
【0020】
而して、夜間において道路工事等の作業を行う際にこの衣服Bを着用すると、帯状シート片Aに穿設している多数の透孔2によってこの帯状再帰性反射シート片Aを貼着している部分を含めて衣服Bの通気性を確保することができ、又、走行する自動車からのヘッドライトの光が再帰性反射シートからなる帯状再帰性反射シート片Aによって再帰反射し、運転者に作業者の存在を明確に視認させることができる。
【0021】
この際、衣服Bが蛍光織物や蛍光編物からなる場合には、帯状再帰性反射シート片Aによって隠蔽されている蛍光衣服Bの一部分が帯状再帰性反射シート片Aに穿設している多数の透孔2から露呈して蛍光織編物による蛍光機能と光反射機能との両機能を発揮させることができ、視認性を高めることができる。また、衣服Bが蓄光剤を含有する織物によって形成されている場合には、日中の太陽光や照明器具の光を蓄光し、夜間の作業時等において暗闇で自然発光し、帯状再帰性反射シート片Aによって隠蔽されている一部分が帯状シート片Aに穿設されている多数の透孔2を通じて点在状に発光して安全性を高めることができる。
【0022】
図6は、上記再帰性反射シートの別な使用態様を示すもので、再帰性反射シートを裁断して適宜な文字や図柄の再帰性反射シート片A'を形成し、この再帰性反射シート片A'を衣服B'の正面や背面に貼着してなるものである。この場合、図においては文字を描いている再帰性反射シート片A'を上記帯状再帰性反射シート片Aによって枠状に囲んでいるが、この帯状再帰性反射シート片Aは必ずしも貼着しておく必要はない。
【0023】
このように構成したので、夜間においてこの衣服B'を着用すると、自動車からのヘッドライトの光を再帰性反射シート片A'によって反射してこの再帰性反射シート片A'によって描いている文字を運転者に視認させることができる。なお、衣服B'が蛍光織編物からなる場合には、上述したように、蛍光織編物による蛍光機能と光反射機能との両機能を発揮させることができる。
【0024】
また、上記再帰性反射シート片A、A'は、作業服に限らず、通常の衣服のポケット等の適所に貼着しておいてもよく、さらには、衣服ではなく鞄や靴、帽子等の商品の表面に貼着しておいてもよく、このように構成することによって商品の生地そのものを生かすことができると共に商品の色彩、模様等とマッチしてファッション性を向上させることができる。
【0025】
以上の実施例においては、再帰性反射シート主体1として、裏面にホットメルト層1dを設けてこのホットメルト層1dによって衣服等に熱圧貼着するように形成している構造のものを示したが、このようなホットメルト層を設けることなく、図7、図8に示すように、表層にアルミ等の薄い金属蒸着層からなる反射層1bを介して無数の微細な球状のガラスビーズを満遍なく敷きつめているポリエステルなどの透明な軟質樹脂からなる結合層1aの裏面に織地又は網地からなる裏生地5を一体に層着した構造の再帰性反射シート主体1'を形成し、この再帰性反射シート主体1'に多数の透孔2を穿設することによって形成された再帰性反射シートであってもよい。この場合、裏生地5が良好な通気性を有する生地からなる場合には、この裏生地5に透孔2を設けることなく再帰性反射シート主体1'の表面から結合層1aの裏面に達するように透孔2を穿設しておいてもよい。
【0026】
このように構成した再帰性反射シートの使用態様は上記実施例と同様であるが、適宜形状に裁断して衣服等に取り付ける際には、貼着によることなく縫着によって行うものである。また、上記多数の透孔2を穿設している再帰性反射シート主体1'の裏面に透孔2が穿設されていない織物又は編物からなる裏生地5を一体に設けてなる再帰性反射シートの使用例として、この再帰性反射シートによって、衣服のポケットや襟、袖などを作製してもよく、このように構成することによって、再帰性反射シートによる光反射機能と共に、衣服にワンポイント的なアクセントを付与することができてファッション性を向上させることができる。
【0027】
なお、上記実施例において、再帰性反射シート主体1、1'に穿設している透孔2の形状としては円形状のものを示しているが、このような形状に限定されることなく、例えば、図9(イ)〜(ハ)等に示すように、星形状の透孔、或いは、三角形や楕円等の異形の透孔2、2を組み合わせてデザイン化した形状であってもよく、さらには、多数の透孔によって文字や図柄模様を描いた穿孔形態であってもよい。また、再帰性反射シート片A、A'の使用例としては、衣服Bに限らず鞄や靴、或いは帽子等であってもよく、さらにはワッペンとして衣服等に取り付けるように構成しておいてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 再帰性反射シート主体
1a 結合層
1b 反射層
1c ガラスビーズ
1d ホットメルト層
2 透孔
3 保護紙
4 剥離紙
5 裏生地
A 再帰性反射シート片
B 衣服

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰性反射シート主体に、表裏面間に貫通した多数の透孔を全面に亘って穿設してなることを特徴とする再帰性反射シート。
【請求項2】
再帰性反射シート主体を帯状に裁断してなることを特徴とする請求項1に記載の再帰性反射シート。
【請求項3】
再帰性反射シート主体を文字、図柄模様に裁断してなることを特徴とする請求項1に記載の再帰性反射シート。
【請求項4】
再帰性反射シート主体の裏面に織地又は網地からなる裏生地を一体に設けていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の再帰性反射シート。
【請求項5】
再帰性反射シート主体の裏面に蛍光織編物からなる裏生地を一体に設けていることを特徴とするとする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の再帰性反射シート。
【請求項6】
再帰性反射シート主体は、軟質樹脂よりなる結合層の表面に金属反射層を介して無数の微細なガラスビーズをその一部を結合層に埋入させた状態で敷きつめてなり、上記結合層の裏面にホットメルト層又は裏生地を層着していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のうち、いずれか1項に記載の再帰性反射シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−20169(P2013−20169A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154722(P2011−154722)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(511170803)
【Fターム(参考)】