説明

再構成可能な相関器セットを用いたパスサーチャ

【課題】変動するセル条件に適合可能なノードB/基地局パスサーチャを備えることが望ましい。
【解決手段】ノードB/基地局は、ユーザ信号を受信する複数のアンテナ(281〜28M)およびパスサーチャを含む。パスサーチャは、相関器のセット(42−1、42−2、・・・42−P)を含む。相関器セットの各相関器は、入力されたユーザ符号を入力されたアンテナ出力と相関させる。アンテナ制御装置は、複数のアンテナのうちの1つの出力をそれぞれの入力に選択的に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、無線符号分割多元接続通信システムに関する。詳細には、本発明は、かかるシステムにおけるパスサーチに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、アンテナから送信された信号は、通常、その宛先に至る複数のパスをたどる。多くの通信システムでは、これらのパスが受信機で結合されて、それらのパスのいずれか1つだけが提供できるものより信号品質のよい受信信号が生成される。これら複数のパスを結合する一手法が、指定された数のより強いパスを結合するRAKE受信機である。RAKE受信機は、強いパスのそれぞれを介した受信信号を回復し、各回復パス信号を振幅と位相で重み付けし、結果として生じる重み付け信号を結合する。
【0003】
結合すべき部分およびそれらの部分に使用すべき対応する重みを決定するために、通常は、パスサーチャが使用される。パスサーチャは、通常、伝送信号のマルチパス成分での符号位相をサーチする。最も強い受信成分を有する符号位相がRAKE受信機のために選択される。それらの成分の受信エネルギに基づき、パスサーチャは、各成分がRAKEによって与えられるべき振幅を決定する。
【0004】
図1Aおよび1Bは、パスサーチャが利用することのできるセル24A、24Bの簡略化した図である。これらの図は、図示のために極度に簡略化されている。図1Aで、セル24Aはセクタ化されていない。基地局20は1個のアンテナ素子を使用して各ユーザ、UE22から22から信号を受信する。セル24Aのパスサーチャは各ユーザを、その遅延拡散に不確実さのために多少のマージンを加えたもの、例えば100チップ程度にわたって解析する。その結果、セル24Aのパスサーチャによって300チップの拡散だけが解析される。
【0005】
それに対して、図1Bで、セル24Bは6つのセクタ27から27を持つ。セル24Bの基地局20は、セクタ27から27につきそれぞれ2個ずつのアンテナ素子2611〜2662を使用する。UE22では、その伝送のパスは、そのセクタ27の各アンテナ素子2661、2662によって、そのUEの伝送の遅延拡散、例えば100チップ程度にわたって解析される。その結果、UE22では、実際上、合わせて200チップの拡散(1アンテナ当たり100チップ)が解析される。UE22はセクタ27と27の間を移動しており、ソフタハンドオーバが行われている。ソフタハンドオーバでは、基地局20は両方のセクタのアンテナ素子2611、2612、2661、2662を介してUEの伝送を受信する。セル24Bでソフタハンドオーバが行われているUEでは、実際上、合わせて400チップの拡散(2セクタにそれぞれ2アンテナ素子ずつでそれぞれ100チップずつ)が解析される。セル24BのUE22から22すべてのパスを解析するには、合わせて1600チップの遅延拡散(1つのセクタにある6ユーザで各200チップずつ、ソフタハンドオーバが行われている1ユーザで400チップ)がパスサーチャによって解析される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1Aおよび1Bで示すように、セル24AのノードB/基地局のパスサーチャは、セル24Bのパスサーチャよりはるかに少数のパスを解析するだけでよい。両方のセルを処理するパスサーチャを設計する一手法は、セル24Bのような最悪の場合の負荷のためのパスサーチャを設計するものである。かかるパスサーチャの1つの欠点は、セル24Aのような負荷の軽いセルで使用されるときに、そのリソースの大部分が利用されないことである。その結果、セル24Aの運用者は、必要以上に高くつく非効率なパスサーチャに投資することになり得る。
【0007】
別の手法は、各セルごとにカスタマイズされたパスサーチャを設計するものである。あるパスサーチャ設計は、セル24Aなどの軽負荷のセルを処理する。別のパスサーチャ設計は、セル24Bなどの重負荷のセルを処理する。かかる手法は、軽負荷のセルでの空きリソース量を最小限に抑えるが、2つ以上の異なる設計を必要とするものであり、望ましくない。また、セル負荷は時間の経過と共に変化し得る。セル24Aの負荷は、セル24Bのレベルまでロードする際に増大する可能性がある。かかる状況では、軽負荷のパスサーチャが重負荷のパスサーチャと置き換えられるはずである。そうした改造は、高くつき、望ましくない。
【0008】
したがって、変動するセル条件に適合可能なノードB/基地局パスサーチャを備えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ノードB/基地局は、ユーザ信号を受信する複数のアンテナおよびパスサーチャを含む。このパスサーチャは相関器のセットを含む。この相関器セットの各相関器は、入力されたユーザ符号を入力されたアンテナ出力と相関させる。アンテナ制御装置は、複数のアンテナのうちの1つの出力をそれぞれの入力に選択的に結合する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、好ましい基地局/ノードBパスサーチャを示す簡略化した構成図である。基地局/ノードBの各アンテナ28から28は、アンテナ制御装置30に結合される。アンテナ数Mは変動する。1個の全方向アンテナを用いる基地局/ノードBでは、アンテナ数は1(M=1)である。各セクタごとのアンテナアレイを用いるセクタ化されたセルでは、アンテナ素子数は大きくなり得る。図1Bを例に取ると、1セクタ当たり2個のアンテナ素子を持つ6セクタのセルは、合計12個のアンテナ素子(M=12)を持つことになる。アンテナ制御装置30は、実際上、アンテナ出力の相関器セット34から34への結合を制御する。
【0011】
パスサーチャが追跡している各UE22は、それに割り当てられた符号を持つ。提案する第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)広帯域符号分割多元接続(W−CDMA)通信システムでは、各UEの符号は、拡散符号とスクランブル符号との組み合わせになるはずである。符号制御装置32は、各相関器セット34に入力されるUE符号を制御する。
【0012】
図3に、相関器セット34を示す。各相関器セット34は、一定数(P)の相関器42から42(42)を持つ。相関器42は、整合フィルタなど、任意の符号相関装置とし得る。好ましくは、相関器42の数は、各ユーザからの期待される遅延拡散に不確実さのための追加マージンを加えたもの、例えば100チップ程度をカバーするのに十分な数とする。ただし、相関器42の数は、複数の相関器セット42を使用して1ユーザの遅延拡散を処理する場合には、遅延拡散より少なくすることもできる。かかる実装形態は、パスサーチャが異なる遅延拡散が行われるシステムに適用され得る場合には望ましいはずである。
【0013】
相関器セット34の各相関器42への入力は、アンテナ制御装置30からの出力である。実際上、特定の時間における各相関器セット34は、アンテナ制御装置30を介して、基地局/ノードBのアンテナ素子28の1つに結合されている。また、各相関器への入力は、個々のユーザの符号である。各相関器42は、ユーザの符号のいずれか1つを相関させるように再構成可能である。各相関器符号入力の間には、遅延装置40から40P−1(40)がある。その結果、各相関器42は、個々のアンテナ素子28から受け取った信号を、個々のユーザ符号の符号位相遅延バージョンと相関させる。
【0014】
好ましくは、各遅延装置40は、例えば1チップなど所定の量だけユーザ符号を遅延させる。その結果、相関器42のセット34は、遅延拡散のウィンドウに均一な幅で広げて配置される。例えば、1セット34に100個の相関器42が割り当てられ、各遅延装置40が1チップ分だけ符号を遅延させた場合、この相関器セット34は、各チップ遅延ごとに相関器サンプルが行われる100チップのウィンドウに広げて配置されることになる。各相関器出力は、ソータ/ポストプロセッサ36に入力される。
【0015】
相関器セット34は、実際上、再構成可能な相関器プールを形成する。各セットは、任意のユーザ符号での任意のアンテナ出力を処理することができる。各セット34が一様に再構成可能であることは、小規模な拡張可能設計を用いた相関器42の実装を容易にし、特定用途向け集積回路(ASIC)での使用に非常に有利である。チップレートを超えるクロックレートを有するASICでは、各再構成可能相関器セット34を使用して複数のアンテナ/符号組み合わせを処理することができる。48×のチップレートクロックでの例をあげると、各相関器セット34は、48通りのアンテナ/符号組み合わせを処理することができる。
【0016】
各相関器42の出力は、ソータ/ポストプロセッサ36によって処理される。ソータ/ポストプロセッサ36は、最高のエネルギレベルを有するユーザごとにパスを識別する。パスセレクタ38は、各ユーザごとのパスプロファイル、UE1パスプロファイルからUE Nパスプロファイルを作成する。各ユーザごとのパスプロファイルを使用し、例えば、符号位相および重みをRAKE受信機のフィンガに適用することによってそのユーザの信号データが回復される。1ユーザが複数のアンテナおよび/またはセクタにわたって受信された場合には、プロファイルは、各アンテナ/セクタごとに作成され、あるいはそれらのアンテナ/セクタのすべてにわたる結合プロファイルが作成される。
【0017】
好ましい相関器セット34は、ノードB/基地局パスサーチャハードウェアの利用に際して柔軟性を与える。相関器セットの再構成可能性のために、ソフトウェアは、セル条件が変化するに際にハードウェアを変更することができる。通常、パスサーチャハードウェアは、期待されるピークセル負荷でのパスプロファイルを作成するのに十分である必要がある。非ピーク期間中の柔軟性のない実装形態では、ハードウェアはアイドル状態のままとされる。再構成可能相関器セット34の柔軟性を用いれば、潜在的にアイドル状態のハードウェアが、現在のユーザのサービスを向上させるために適用され得る。例えば、あるセルのユーザ負荷は低いとする。ソフトウェアは、現在サービスを提供されているユーザのためのパスプロファイルをより頻繁に更新するようにハードウェアを再構成する。その結果、そのパスプロファイルの品質が向上し、各ユーザごとの受信品質が改善される。
【0018】
さらに、この再構成可能性には他の利点もある。より高いサービス品質(QOS)を必要とするユーザには、より低いQOSを必要とするユーザより頻繁にパスプロファイルを更新することができる。その結果、再構成可能な相関器セット34の柔軟性は、より高いQOSのユーザがその所望のQOSを満たすのに役立つ。
【0019】
図4は、ASICで実装されたときのパスサーチャの拡張可能性を示す図である。最初に、ノードB/基地局は、最大数のN通りのユーザ/アンテナ組み合わせにサービスを提供する。ASIC46は、N通りのユーザ/アンテナ組み合わせを処理することができる。アンテナ制御装置30および符号制御装置32はソフトウェア44によって、セルのアンテナおよびセクタの数、ならびにユーザ符号に従って構成される。セル負荷が増大するに従って、追加のASIC46から46が付加される。各相関器セット34は任意のアンテナ/ユーザ符号組み合わせに対して構成可能であるため、ソフトウェア44は、ASIC46から46にわたってアンテナ/ユーザ組み合わせを分配することができる。
【0020】
好ましくは、複数のASIC46から46を有する受信機では、複数のアンテナ素子28およびセクタ27にわたるパスプロファイルの作成を容易にするために、ソフトウェア44によって各ユーザに特定のASICが割り当てられる。あるいは、ASIC46から46を各セクタに割り当てることも可能であり、別の割り当て方法を用いることもできる。
【0021】
図5は、3GPPパスサーチャでの好ましい相関器セット68を示す図である。相関器セット90は、アンテナ28から出力を受け取る。3GPPシステムでは、通信は、4相位相偏移変調(QPSK)を用いて送られる。同相のサンプリング装置48および直交位相のサンプリング装置50は、選択されたアンテナ出力の同相(I)および直交位相(Q)のサンプルを生成する。それらのサンプルは、マルチプレクサ52によって処理されて合成された結果を生成する。
【0022】
好ましくは、48スクランブル符号生成器56によって48符号が生成される。好ましい実装形態では、48×のチップレートクロックが使用される。所与のチップ期間に、相関器54から54100(54)は、各クロック期間中の48アクセスコードのそれぞれを順次相関させる。
【0023】
各相関器54は、アクセスコードの1つを複合サンプルと効果的に混合するためのMUX58から58100を有する。バッファ60から60100(60)は混合された結果を格納する。相関させた結果を生成するために、合計/ダンプ回路が使用される。48符号の1つについて、混合された結果がバッファ66から66100に格納される。バッファされた結果は、48レジスタ68から68100の1つに格納される。それらのレジスタは、合計/ダンプ回路が複数のチップにわたる値を累算することを可能にする。MUX70から70100は、符号の1つに累算された結果を選択する。バッファ80から80100は、選択された結果をバッファする。複数のチップにわたる結果を累算するために、ある符号について先に累算された結果はMUX62から62100まで渡され、加算器64から64100は、先に累算された結果を次の混合サンプルに加算する。
【0024】
指定された数のチップの後で、振幅装置82から82100が複合結果の振幅を決定する。48符号のそれぞれの振幅がそれぞれのレジスタ84から84100に格納される。MUX86からMUX86100は、各相関器54から54100ごとにそれぞれの符号での結果を出力する。
【0025】
図5の実装形態を使用すれば、1つの相関器セット90は100チップのチップ遅延拡散にわたって48符号を処理することができる。ノードBの範囲を拡大するために、生成された符号の半分を、他の符号の100チップ遅延バージョンとすることもできる。その結果、相関器バンク68は、1チップ期間に200チップの遅延にわたって24符号を処理することができる。
【0026】
別の実装形態では、相関器54を相関器セット90に加えることによって、セット90のチップ範囲を拡大することもできる。また、生成された符号およびクロックレートを変動させることによって、処理される符号の数を変えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】1個の全方向性アンテナを用いる基地局を有するセルを示す図である。
【図1B】1セクタ当たり2個のアンテナ素子を用いる基地局を有する、6セクタを有するセルを示す図である。
【図2】パスサーチャを簡略化した図である。
【図3】相関器セットを簡略化した図である。
【図4】ASICを付加することによるパスサーチャのスケーリングを示す図である。
【図5】好ましい3GPP相関器セットを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
28・・・28 アンテナ
30 アンテナ制御装置
32 符号制御装置
34・・・34 相関器セット
36 ソータ/ポストプロセッサ
38 パスセレクタ
40、40P−1 遅延装置
42・・・42 相関器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザから信号を受信する少なくとも1個のアンテナと、
各相関器が入力されたユーザ符号を前記少なくとも1個のアンテナの入力されたアンテナ出力と相関させる相関器のセット、
前記少なくとも1個のアンテナの任意の出力を前記相関器のセットの各相関器の入力に選択的に結合するアンテナ制御装置、
前記相関器のセットへの入力のためにユーザ符号を選択する符号位相制御装置、
各遅延が前記選択されたユーザ符号を所定の量だけ遅延させ、前記相関器のセットの各相関器が前記選択されたユーザ符号の異なる符号位相遅延を受け取る一連の遅延、および
前記相関器のセットの各相関器の出力エネルギレベルをソートし、前記ソートされた出力エネルギレベルに基づいてユーザに対するパスプロファイルを作成するソータおよびパスセレクタを含むパスサーチャと
を備えることを特徴とするノードB/基地局。
【請求項2】
前記一連の遅延の各遅延は前記選択されたユーザ符号を1チップ遅延だけ遅延させることを特徴とする請求項1に記載のノードB/基地局。
【請求項3】
前記パスサーチャは受信ユーザ信号のチップレートの倍数で動作し、前記相関器セットは前記チップレートの各倍数ごとに異なるユーザ符号とアンテナの組み合わせとを相関させることを特徴とする請求項1に記載のノードB/基地局。
【請求項4】
前記ソータおよびパスセレクタは、各ユーザごとのパスプロファイルを、そのユーザの信号を受信する各アンテナごとに作成することを特徴とする請求項1に記載のノードB/基地局。
【請求項5】
前記ソータおよびパスサーチャは、複数のアンテナを介して受信するそのユーザの信号のパスを含む各ユーザごとのパスプロファイルを作成することを特徴とする請求項1に記載のノードB/基地局。
【請求項6】
前記パスプロファイルの少なくとも1つはセルの異なるセクタからのパスを含むことを特徴とする請求項5に記載のノードB/基地局。
【請求項7】
各相関器は整合フィルタであることを特徴とする請求項1に記載のノードB/基地局。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−104729(P2007−104729A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−803(P2007−803)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【分割の表示】特願2003−585313(P2003−585313)の分割
【原出願日】平成15年4月11日(2003.4.11)
【出願人】(594164900)インターディジタル テクノロジー コーポレイション (153)
【氏名又は名称原語表記】InterDigital Technology Corporation
【Fターム(参考)】