説明

再構成米粒およびその調製方法

本発明は、米ベース米粒様食品の製造方法、特に、1種または複数の微量栄養素で強化された再構成米(以後、「強化再構成米粒」と称する)およびその方法で得ることができる前記強化再構成米粒に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、米をベースとした米粒様食品(以後、「再構成米粒(reconstituted rice kernels)」または「リコン米粒(recon rice kernels)」と称する)の製造方法、特に、1種または複数の微量栄養素で強化された再構成米粒(以後、「強化再構成米粒」と称する)およびその方法によって得ることができる前記(強化)再構成米粒に関する。
【0002】
人口の大部分にとって、特に極東およびラテンアメリカの農村地域において、米は主食であり、1日のカロリー摂取量の50%超を供給し得る。しかし、玄米の搗米後、元のビタミン含有量のごく一部分が穀粒中に残存するにすぎない。大部分のビタミンは、籾殻および胚乳とともに除去される。
【0003】
さらに、米は、新興国および発展途上国の栄養不良の人々に最も不足したビタミンの一つであるビタミンAの重要な供給源ではない。現在、ビタミンA欠乏症は、依然としてそれらの国々の子供の失明の主要原因である。顕在的な疾患を予防するだけでなく、消耗性の限界に近い欠乏症が広く蔓延することを予防するためにも、食事において必要量に満たないビタミンを、これらの人々に規則的に与えるようにする必要性は明らかにある。このために、他の主食の強化の中でも米強化プログラムは、政府、国連機関および他の非営利組織によって目標とされてきた。
【0004】
この数十年間、科学者および公職者は、食事に不足しているビタミンおよび他の微量栄養素で米を強化する、低価格で、簡単でかつ効率的な方法を開発するために多くの試みを行ってきており、それらの試みの目的は、例えば、1:20〜1:1000まで、特に1:50〜最大1:500までの関係で天然穀粒と混合され得る人造穀粒を製造することであった。
【0005】
実際のところ、試みのいずれもいまだ満足に機能してきていない。米は、世界の広い地域において好ましい担体であるが、穀粒の大きさのために、ビタミン粉末、またはいわゆるビードレットと簡単な混合操作ができない。それらのビタミン形態が米粒から直ちに分離するからである。米強化におけるさらなる難点は、米は通常、調理前に水ですすぎ洗いされ、さらに、食べられる状態になる前に20〜30分間調理されなければならないことであり、これは、ビタミンのような損なわれやすい微量栄養素にとってかなり過酷な状況である。さらに、穀粒の形状および質感でかなり異なる膨大な数の米の品種が存在するので、種々の米の品種をビタミンおよび他の微量栄養素で強化する普遍的な1つの方法を見出すことは困難である。
【0006】
上述の難点を克服する1つの手法は、ビタミンが埋め込まれており、そのため米粒から分離しない人造米粒を調製することである。さらに、埋め込みにより、すすぎ洗いまたは調理によるビタミンの抽出がされにくくなり、しかもビタミンが保護マトリックスによって包囲されているので、酸化に対して一定の保護が与えられ得る。
【0007】
仏国特許出願公開第1,530,248号明細書には、モノ/ジグリセリドまたはタンパク質のような加工助剤をさらに含み得る、セモリナまたは小麦粉とビタミンとからなる生地から調製される強化人造穀粒が記載されている。生地は、生地プレスを通してプレスすることによってパスタ様構造体に形成される。次いで、ストランドは、断片に切断され、これは最終的に乾燥される。しかし、この方法で調製される穀粒は、必ずしも十分な調理安定性を示すとは限らず、これは、人造穀物は調理中に分解する傾向があり、したがって、最終的に除去される調理水にビタミンが放出されることを意味する。
【0008】
米国特許第3,620,762号明細書には、米粉、栄養素および必要に応じて結合剤を混練し、次いで、その澱粉を半糊化させるために混合物を蒸熱することによって強化人造米を製造する方法が開示されている。その後、その生成物は、米と類似した穀粒を得るために顆粒化され、最終的にコーティングされ得る。しかし、この方法は、蒸熱処理に約15〜30分間のきわめて長時間を要し、これは、ビタミンのような損なわれやすい微量栄養素の加工損失をもたらし得、さらに過酷な加熱条件は、この人造穀物の味に悪影響を与える。両方の不利点は、糊化がオートクレーブ中で飽和水蒸気により行われる米国特許第4,446,163号明細書に開示されている方法についても当てはまる。
【0009】
加熱時間を減らす方法は押出しであり、これについては人造米粒の調製に関して数回記載がなされている。しかし、ほとんどの発表において、調製条件は、高速調理製品またはさらにはインスタント製品をもたらすものであり、これは、通常米の強化に利用できない。調理時間の減少によって、人造米粒は、通常の米粒が軟らかくなる前に分解する傾向があり、したがって、その微量栄養素は調理水に放出される。
【0010】
特開昭61−037068号公報にも、押出しによる人造米の調製について記載されているが、調製条件は膨化製品をもたらす。一般に知られているように、膨化製品は低下した密度を有する。それらは、天然米粒から容易に分離し、したがって、天然米の強化に適さない。この問題は、特開昭58−005148号公報にも記載されている。これを解決するために、比較的多量の密度増加剤の添加が必要である。
【0011】
特開2002−233317号公報に開示されている方法は、押出しにより人造米を製造するために、デンプン物質および玄米または粉砕玄米とともに、ビタミンおよびミネラルを含む米由来の健康成分を組み合わせて使用する。しかし、この方法は、ゼラチン、ペクチン、ガムまたは他の結合剤のような「ゲル化剤」を必要とする。さらに、ごく低いビタミン強化が得られるだけであり、製品は、天然で米に存在しないビタミンAのような微量栄養素を与えない。
【0012】
米国特許第5,609,896号明細書に開示されている方法はこの場合にも、人造強化米粒を調製するために押出し技術を使用し、特定の成分、すなわち、熱安定剤(例えば、亜硫酸塩剤);結合剤(例えば、可溶化タンパク質、ガム、ポリサッカライド);架橋剤(例えば、可食性アルデヒド、グルタルアルデヒド、揮発性酸);および水性剤(主に水)を添加することによって、安定性が十分でない穀粒および連続的なビタミン損失の問題を克服する。
【0013】
しかし、必要成分のいくつか(特に、熱安定剤および架橋剤からなる群由来の成分)は、アレルギー反応を引き起こすか、または発癌可能性があるか検討中である。さらに、この製造方法は、いくつかの工程からなり、その実施はより困難でかつ費用がかかる。
【0014】
本発明の目的は、状来技術の欠点を回避しつつ、米ベースの米粒様食品の製造方法を提供することである。特に、この方法は、強化再構成米粒を調製するために押出し技術を使用すべきであり、かつ種々の米の品種をビタミンおよび他の微量栄養素で強化するのに適切であるべきである。
【0015】
本明細書で用いられる「微量栄養素」という用語は、ヒトの食事の生理学的必須成分、例えば、ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、葉酸、ナイアシンおよびビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンEおよびC、ビオチン、パントテン酸塩、ビタミンKおよびその誘導体、ならびにミネラルおよび微量元素(鉄、セレン、亜鉛およびカルシウムなど)を意味する。微量栄養素は、本発明により提供される強化再構成米中に、最終組成物の重量に基づいて0.1〜5%の量で存在する。好ましくは、微量栄養素は、本発明により提供される強化再構成米中に、1g中RDA(成人の推奨一日摂取量)の約5%〜300%を与えるのに十分な量で存在する。
【0016】
意外なことに、本発明の目的は、強化再生米粒の製造方法であって、
(a)米マトリックスを乾燥加熱処理する工程(前処理工程);
(b)米マトリックスを粉砕する工程;
(c)粉砕された米マトリックス材に少なくとも1種の乳化剤ならびに水および/または水蒸気を加えて、約15〜40重量%の水を含有するペーストを得る工程(水和工程);
(d)ペーストに少なくとも1種の微量栄養素を加える工程;
(e)前の工程で得られたペーストを、米澱粉が半糊化されるまで約70〜100℃に約5分間以下加熱しながら、せん断力にさらす工程;(前調整工程);
(f)半糊化された塊をストランドに成形し、それらを切断して、米粒の大きさと同様のまたは等しい穀粒を得る工程;および(成形工程);
(g)穀粒を15重量%以下の含水率に乾燥させる工程(乾燥工程)
を含む方法によって達成されることが見出された。
【0017】
本発明により得ることができる強化再構成米粒が、上述の課題を解決することは当業者によって予測されるものではなかった。
【0018】
工程(a)および工程(b)の順序は、交換することができる。
工程(c)、工程(d)および工程(e)の順序も交換することができる。
【0019】
本発明の方法で用いられる米マトリックス材は、無傷の米粒であるか、または(より好ましくは)砕けた米粒、胴割米粒または別の方法で分解された米粒であることができる。このマトリックス材は、(粉砕される前または後に)適当な乾燥機で約60〜300℃、好ましくは80〜90℃に加熱される。冷却後に、この前処理マトリックス材は、15〜40重量%、好ましくは20〜30重量%の含水率が得られるまで、水および/または水蒸気を加えることによって水和される。
【0020】
乳化剤の例は、レシチンまたはC14−18脂肪酸のモノもしくはジグリセリド、あるいはそれらの混合物である。好ましくは、工程(c)で得られたペーストの全重量に基づいて、約0.5重量%〜約3重量%の乳化剤が用いられる。
【0021】
微量栄養素は通常、粉末形態で添加されるが、ビタミンAまたはビタミンEのような油状ビタミンは、油として用いることもできる。しかし、油溶性ビタミンの粉末製品形態(乾燥粉末、ビードレットまたは顆粒など)が、これらの種類の調製物の取扱いがより容易であるために好ましい。さらに、粉末製品形態それら自体が、損なわれやすい微量栄養素に一定の保護を与え得る。
【0022】
本明細書で用いられる「ビードレット」という用語は、直径50〜1000μmの平均粒径を有し、通常ほぼ球形である小さい分離している粒子を意味する。ビードレットは、カプセル化形態で1種または複数の活性成分を含む。ビードレットは、水性マトリックス相に分散した活性成分の小さい親油性液滴からなる乳濁液または懸濁液を乾燥させる場合に得られる。親油性液滴および/またはマトリックスは、酸化防止剤、可塑剤、および乳化剤のようなさらなる成分を含み得る。
【0023】
水和混合物は、せん断力にさらされ、例えば、混練され、同時に70〜100℃に5分間以下加熱処理されることによって、ペースト様混合物を形成する。この加熱/混練操作は、以後「前調整」と称する。加熱は、外部加熱源によって、または好ましくは、ペースト様混合物を生成する過程の間に水蒸気を導入することによって行うことができる。
【0024】
すべての成分、すなわち、マトリックス材、乳化剤および微量栄養素は、湿潤前に混合することができるが、最初に米マトリックス材と乳化剤とのペースト様混合物を生成させ、前調整後に、すなわち、工程(f)の直前にこのペースト様混合物に微量栄養素を導入することが好ましい。工程(f)において、前の工程で得られたとおりの前調整された塊のさらなる加工は、生地をストランドに加工する食品技術で使用される任意の方法によって行うことができ、好ましくは従来の装置を用いる押出しによって行われる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、二軸押出機が用いられる。押出機における温度は、60℃〜120℃であることができ、押出機における混合物の滞留時間は、好ましくは約10〜90秒である。押出機を出たストランドは、米粒と同様の直径に調整され、米粒の大きさに切断される。このように得られた穀粒は、適当な乾燥機、例えば、流動床式乾燥機またはベルト乾燥機で15重量%以下の含水率に乾燥される。得られた穀粒は、天然米に対して、例えば、1重量%の比で通常米に混合することができる。
【0026】
本発明は、以下の実施例でさらに例証される。
【0027】
[実施例1]
米粒または砕け米を米粉に粉砕した。次いで、この乾燥米粉を80〜90℃まで加熱し、この温度で約30分間維持した。この工程は、水を加えることなく行った。加熱後に、粉末を約30℃に冷却した。960gのニコチンアミド、420gのビタミンAパルミテート(ビタミン製品形態中500,000IU/g)、84gのチアミン硝酸塩、26gの葉酸および150gのビタミンB12(製品形態中0.1%ビタミンB12)を混合した。このビタミンプレミックスを前処理した米粉および1kgの乳化剤(デンマーク国、ダニスコA/S(Danisco A/S、Denmark)により「ディモダン PH100NS/B」(Dimodan PH100NS/B)という商品名で、販売されている蒸留モノグリセリド)と混合して、7.5kgのビタミン/乳化剤/米粉プレブレンドを得た。このプレブレンドを、185kg/時間の米粉が供給された押出機ユニットに15kg/時間で添加する。最初に第1室において、粉粒子を流動化および蒸熱して、それらの表面を湿潤させ、次いで第2室において、湿潤させた粉粒子をゆっくりと混合し、その水を粉粒子中に浸透させることによって、80℃〜98℃の温度で約1〜2分間2室の前調整装置中で塊を半糊化させた。その後、生地を二軸押出機で押し出し、ダイの後でストランドを切断することによって類似の米粒に成形した。この穀粒は28〜29%の含水率を有し、流動床式乾燥機において70℃で40分間乾燥させた。乾燥後、得られたビタミン添加された類似の米粒を天然米と1%の比率で混合した。
【0028】
このように得られたビタミン強化米中のそれぞれのビタミンの含有量は、以下の通りであった:
【0029】
【表1】



【0030】
得られた人造米は、天然米のような類似の外観、色および味を有した。それは、非常に良好な調理安定性を示し、したがって、ビタミンは穀粒内に保護および埋め込まれていた。天然米中に希釈した状態で、それらは区別できなかった。押し出しされた米粒を水で洗浄または調理した場合、ビタミンの有意な損失は検出できなかった。
【0031】
[実施例2]
乾燥米粒または乾燥砕け米を、第1工程において流動床式乾燥機中で(80〜90℃で30分間)加熱処理し、その後約30℃に冷却し、その後粉砕した。乾燥混合物を押出加工の間に30重量%の水で湿潤させた。ビタミン混合物の代わりに、ビタミンA(ビタミンAパルミテートとして、500,000IU/g粉末)のみを用いた。加工後のビタミンAの保持率は90%であった。
【0032】
[実施例3]
前調整後にビタミンAを添加した以外は、実施例1の手順に従った。このために、420gのビタミンAパルミテート(ビタミン製品形態中500,000IU/g)および4580gの米粉を混合して、5kgのビタミン/米粉プレミックスを得た。このプレミックスを前調整後に生地に添加した。加工後のビタミンAの保持率は86%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化再構成米粒の製造方法であって、
(a)前記米マトリックスを乾燥加熱処理する工程(前処理工程);
(b)前記米マトリックスを粉砕する工程;
(c)前記粉砕された米マトリックス材に少なくとも1種の乳化剤ならびに水ならびに/または水蒸気を加えて、約15〜40重量%の水を含有するペーストを得る工程(水和工程);
(d)前記ペーストに少なくとも1種の微量栄養素を加える工程;
(e)前の工程で得られた前記ペーストを、前記米澱粉が半糊化されるまで約70〜100℃に約5分間以下加熱しながら、せん断力にさらす工程;(前調整工程);
(f)前記半糊化された塊をストランドに成形し、それらを切断して、米粒の大きさと同様のまたは等しい穀粒を得る工程;および(成形工程);
(g)前記穀粒を15重量%以下の含水率に乾燥させる工程(乾燥工程)
を含む、強化再構成米粒の製造方法。
【請求項2】
前記微量栄養素が、前記前調整工程(e)後に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微量栄養素が、最終組成物1g中RDA値の5%〜300%を与える量で添加される、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記微量栄養素が、ビタミンA、ビタミンB1、B2、B6、葉酸、ナイアシン、ビタミンB12、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンEおよびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記微量栄養素が、前記強化再構成米粒中に、45〜2700mg/kgのビタミンA当量(レチニルエステルとして)、60〜3600mg/kgのビタミンB1、20〜1200mg/kgの葉酸、0.8〜48g/kgのナイアシン、および0.12〜7.2mg/kgのビタミン12を与える量で添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる強化再構成米粒。
【請求項7】
天然米と請求項6に記載されたとおりの強化再構成米粒との混合物を含む微量栄養素強化米。

【公表番号】特表2012−500014(P2012−500014A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523413(P2011−523413)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060671
【国際公開番号】WO2010/020640
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】