説明

再灌流障害の減弱

虚血−再灌流障害(IRI)を減弱するおよび/または予防するための組成物および方法が提供される。一つの方法は、それを必要とする患者に、細胞表面に位置するホスファチジルセリン(PS)に結合する剤、すなわちPS結合剤、を投与することを含む。別の方法は、臓器移植レシピエントに、PS結合剤を含む療法用組成物を投与することを含む。細胞に対するIRIを予防する方法もまた提供される。当該方法は細胞を治療するために用いる療法用組成物にPS結合剤を添加することを含む。さらに提供されるのは、IRIになりやすい臓器または組織を保護する方法である。該方法は臓器または組織をPS結合剤と接触させることを含む。そのような剤は、例えば、脳卒中または心筋梗塞、または外科手術後の患者におけるIRIを減弱してもよい。PS結合剤は、修飾アネキシンタンパク質、PS分子に対する抗体、および他の抗PS分子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001] 本発明は一般的に、虚血後再灌流障害(IRI)の減弱に関し、そしてとりわけIRIの減弱において有用な組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 短期(一過的)または長期に渡る臓器または組織への血流の制限は、酸素を含む血液のその臓器または組織への不十分な供給である虚血、という結果となる。臨床的意義においては、虚血は、臓器への血液供給が減じられるまたは遮断される脳卒中、心筋梗塞、または外科手術によるような、部分的または完全な血管の閉塞により引き起こされる。それはまた、臓器または組織が、それぞれ移植(transplantation)または移植(grafting)される際に、体から除去した後に虚血性となる。再灌流は、例えば血栓の除去または溶解により、血流を制限または遮断される事象の後に臓器または組織への血液供給を再開する工程である。再灌流はまた、臓器移植後に循環が回復する際に起こる。
【0003】
[0003] 一過的虚血は、多くの臓器において可逆的障害を生ずる。しかしながら、循環の回復は、組織損傷を悪化させ、そして典型的にはIRIと称される病理学的変化に関連しする。この種の障害は脳卒中、心筋梗塞、臓器移植および他のタイプの外科手術からの回復の成功を著しく減少させる。
【0004】
[0004] IRIは複雑な過程であり、そして根底にある病原的機構は完全には理解されていない。しかしながら、いくつかの以前の実験動物および臨床研究はこの主題に関して洞察を与える。例えば、ウサギ心臓(Farbら、J. Am. Coll. Cardiol. 1993; 21: 1295)およびヒト心臓(Nijmeierら、Int. Immunopharmacol. 2001; 1: 403)における心筋梗塞は、IRIのモデルを提供する:単球は再灌流前は生存可能であるが、その後再灌流の間に不可逆性障害へと進行する。アポトーシスは再灌流の間の心筋細胞死に寄与することができることが、カスパーゼ阻害が致死性再灌流障害に対する保護になるという発見によって示された(Mocanuら、Br. J. Pharmacol. 2000; 130: 197)。IRIはまた、白血球が枯渇する場合に減少した(Nijmeijerら、2001中で言及)。
【0005】
[0005] リン脂質は、正常細胞の細胞膜二重層において非対称的に分布している。酸性リン脂質であるホスファチジルセリン(PS)は細胞質に面している内層に限局しており(DevauxおよびZachowski, Chem. Phys. Lipids 1994; 73: 107)、そしてATP依存性リン脂質トランスロカーゼによりこの配向で維持されている。ATPが枯渇するとき(例えば、無酸素の結果)、いくつかのPSは外層に転位置し、そして細胞表面上で接近可能となる。この過程は、標識されたアネキシンVのような、PSと高い親和性で結合する蛍光標識されたタンパク質を用いてフローサイトメトリーによりアッセイされてきた(Bossy-WetzelおよびGreen, Methods Enzymol. 2000; 322: 15)。
【0006】
[0006] 外科的技術、患者管理、および免疫抑制において多くの進歩がなされてきたにも関わらず、IRIは重要な臨床的問題として残っている。IRIは、移植肝の場合の初期段階の移植片機能喪失の10%程度を占めている(Amersiら、J. Clin. Invest. 1999; 104: 1631)。加えて、12時間以上の肝臓の保存は、移植後初期機能不全、ならびに急性および慢性拒絶の両方の増加した発生に高度に関連している(Fellstromら、Transplant Proc. 1998; 30: 4278)。
【0007】
[0007] Selznerら(Gastroenterology 2003; 125: 917)による総説で論じられるものを含む多くの研究にも関わらず、脳卒中または心筋梗塞の治療において、あるいは臓器移植もしくは組織移植において広く使用されるようになったIRIを減少させる方法は存在しない。脳卒中もしくは心筋梗塞のからの、臓器移植に続く、および他の外科手技におけるIRIを減弱または予防する療法剤または方法を開発することが望まれるであろう。
【0008】
[0008] d’Amicoら(FASEB J. 2000; 14: 1867)は、アネキシンVはラット心臓においてRIを阻害しなかったが、一方でリポコルチンI(アネキシンI)は阻害したと述べている。
【0009】
[0009] Peltonら(J. Exp. Med. 1991; 174: 305)は、ラット脳室へと注入したリポコルチンIの断片は、梗塞サイズを減少させ、そして脳虚血後の脳浮腫を減少させたことを述べている。
【0010】
[0010] この背景に反して、本開示は提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
まとめ
[0011] 本発明は、それを必要とする患者またはそれを必要とする臓器もしくは組織におけるIRIを減弱し、および/または予防するための組成物および方法を提供する。
【0012】
[0012] それを必要とする患者おけるIRIを減弱し、および/または予防するための新規な組成物が提供される。
[0013] それを必要とする臓器もしくは組織におけるIRIを減弱し、および/または予防するための新規な組成物が提供される。
【0013】
[0014] 上記の組成物は、細胞表面上のPSに高い親和性で結合する剤を含む。いくつかの態様において、当該剤は、アネキシンもしくは修飾アネキシン、PSに対するモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、PSに結合する抗体フラグメントもしくは構築物、またはPSに対して親和性を有することが見出される他のクラスの分子のような、PSに対するタンパク質または他のリガンドである。
【0014】
[0015] それを必要とする患者へのPS結合剤の投与を含む、IRIを減弱する方法もまた提供される。
[0016] 臓器移植のレシピエントに、PS結合剤を含む療法用組成物を投与することを含む、IRIを予防または制限する方法もまた提供される。
【0015】
[0017] 単離された細胞または細胞の群にPS結合剤を添加することを含む、単離された細胞または細胞の群に対しIRIを予防する方法がさらに提供される。
[0018] 臓器または組織をPS結合剤と接触させることを含む、IRIになりやすい臓器または組織を保護する方法がさらにまた提供される。
【0016】
[0019] 本発明のさらなる特性および利点が、本明細書を読むことにより当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】[0020] 図1A−Cは、二つの修飾アネキシンの態様の構造模式図を示す。図1Aは、Hisタグを伴うヒトアネキシンVホモ二量体の構造模式図でを示す;図1Bは、Hisタグを伴わないヒトアネキシンVホモ二量体の構造模式図を示す;図1Cは、アネキシンVのホモ二量体を製造するためのDNA構築物を示す。
【図2】[0021] 図2A−Dは、0.2μg/mlビオチン化AV(図2A);0.2μg/ml非ビオチン化DAV(図2B);0.2μg/mlビオチン化AVおよび0.2μg/ml非ビオチン化DAV(図2C);ならびに、0.2μg/mlビオチン化DAVおよび0.2μg/ml非ビオチン化AV(図2D);とともにインキュベートし、それぞれの場合について、続いてR−フィコエリトリン(phycoerythrein)−複合化ストレプトアビジンとインキュベートした、正常(1x10/ml)およびPS露出(1x10/ml)RBCsの混合物のフローサイトメトリー解析の結果を示す。
【図3】[0022] 図3は、放射性標識DAVの注射に続く、ラットにおける血液の放射活性。血液の放射性活性(白四角)の減少は、アルファ相(黒四角)およびベータ相(黒丸)の重ね合わせを伴う二相性である。
【図4】[0023] 図4は、PS露出RBCのPLA誘導性溶血を示す。正常(1x10/ml)およびPS露出(1x10/ml)RBCsの混合物を100ng/mlの膵臓PLA(pPLA)または分泌性PLA(sPLA)とともにインキュベートした。溶血は時間の関数として測定し、浸透圧ショックにより引き起こした100%溶血に対して表現した。PS露出細胞の割合は、ビオチン化DAVおよびR−フィコエリトリン(phycoerythrein)−複合化ストレプトアビジンで標識した後、細胞懸濁液のフローサイトメトリーにより決定した。図4Aは、2μg/ml DAV(丸)またはAV(四角)の存在下または非存在下(三角)における、100ng/ml pPLAにより引き起こされる溶血を示す。図4Bは、種々の量のDAV(丸)またはAV(四角)の存在下における、100ng/ml pPLAにより引き起こされる溶血を示す。図4Cは、2μg/ml DAVの存在下で100ng/ml pPLAとともに60分間インキュベーションした後の細胞懸濁液中のPS露出細胞を示す。
【図5】[0024] 図5は、偽手術されたマウス(Sham)、生理食塩水を与えられたマウス、肝動脈をクランプする6時間前にHEPESバッファーを与えられたマウス、肝動脈をクランプする6時間前にPEG化アネキシン(PEG Anex)またはアネキシン二量体を与えられたマウス、および単量体性アネキシン(Anex)を与えられたマウス、における血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。PEG AnexおよびAnex二量体の上のアスタリスクはp<0.001であることを示す。
【図6】[0025] 図6Aは、門脈周囲の類洞についてジアネキシンを伴うまたは伴わないIRIの間の内皮細胞への白血球の付着を示す。図6Bは、小葉中心性の類洞についてのジアネキシンを伴うまたは伴わないIRIの間の内皮細胞への白血球の付着を示す。
【図7】[0026] 図7Aは、門脈周囲の類洞についてジアネキシンを伴うまたは伴わない虚血再灌流障害の間の内皮細胞への血小板の付着を示す。図7Bは、小葉中心性の類洞についてジアネキシンを伴うまたは伴わない虚血再灌流障害の間の内皮細胞への血小板の付着を示す。
【0018】
[0027] 図面は本明細書の一部を形成し、そして本発明の特定の側面をさらに立証するために含められる。本発明は、本明細書において提示される具体的な態様の詳細な記載と組み合わせて、1またはそれより多くのこれら図面を参照することにより、理解がより深められてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
[0028] 本発明の態様は、脳卒中、心筋梗塞、臓器移植、組織移植、および臓器または組織への血液供給を制限または遮断する外科手術との関連においてIRIを減弱または予防する組成物および方法を提供する。
【0020】
組成物
[0029] 本明細書において提供されるのは、細胞表面上のPSに結合する1またはそれより多くの剤(本明細書において「PS結合剤」と称する)、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物である。そのような医薬組成物は、細胞、細胞の群、組織、もしくは臓器に添加、および/または患者に投与することができる。これらの組成物は本明細書に記載の、例えばそれを必要とする患者においてIRIを減弱または予防する、方法にしたがって使用することができる。
【0021】
治療方法
[0030] 本明細書で提供するのは、それを必要とする患者への1またはそれより多くのPS結合剤の投与を含む、IRIを減弱する方法である。
【0022】
[0031] 本明細書において「減弱する」とは、低下させるまたはそうでなければ減少させることを意味し、そして予防することおよび部分的に逆行させることを含む。本明細書において適用するように、IRIを減弱させることは、いくつかの例において、この種の障害を低下させるおよび/または減少させる効果を有する。他の例において、IRIを減弱させることは障害を部分的に逆行させる効果を有する。IRIを部分的に逆行させることは、PS結合剤の投与が、虚血によりすでに受けた損傷を逆行させる場合に起こる。IRIの予防は、PS結合剤の投与が、可能なIRIのいずれかの量、例えば約1%から約100%、を防いだ場合に起こる。
【0023】
[0032] また、本明細書において提供されるのは、臓器または組織をPS結合剤と接触させることを含む、IRIになりやすい臓器または組織を保護する方法である。
[0033] IRIになりやすい臓器または組織は、例えば、移植された臓器または組織、外科手術の間に虚血のリスクがある臓器または組織、脳卒中に冒された脳組織、および心筋梗塞に冒された心臓組織、が含まれる。
【0024】
細胞表面へのPSの転位置
[0034] 培養内皮細胞(EC)の低酸素症およびそれに続く再酸素負荷は、標識したアネキシンVの細胞表面への結合の増加を導く(Ranら、Cancer Res. 2002; 62: 6132)。これらの知見は、低酸素症の間にPSがECの表面に転位置することを示す。転位置は、炎症誘発性サイトカインIL−1αおよびTNFαにより、ならびに酸性度および酸化体ストレスにより増大し、これらすべてはIRIが起こるときの状態において存在する。
【0025】
[0035] 細胞表面へのPSの転位置は、アポトーシスの初期段階のマーカーとして同定されてきている。ヒト研究は、アポトーシスは心筋細胞死の過程と関係することを示している、なぜなら標識アネキシンVの結合により同定されたアポトーシス性の細胞は、急性心筋梗塞で亡くなった患者から得られた心筋サンプルの梗塞領域において存在していたからである(Krijnenら、2002、総説)。再灌流に伴う一連の事象は、以下のように起こることが提案されている:まだ生存可能なECの表面上のPSの露出、および白血球および血小板のECへの結合。これらの事象は、微小血管の血流を遮断し、無酸素症を長引かせ、そして先行する虚血の結果生じる損傷を増大させる。
【0026】
[0036] IRIに対する白血球の寄与は、このプロセスにおける単球に関する研究から明らかである。ケモカインMCP−1(単球ケモアトラクタントタンパク質−1)は、単球の動因において主要な役割を有する。例えば、再灌流を始めた直後に、MCP−1メッセンジャーRNAがイヌ心臓の血管において誘導される(Kumarら、Circulation 1997; 95: 693)。再灌流後1時間で、イヌ心臓への単球の実質的な動因があった(Birdsallら、Circulation 1997; 97: 684)。MCP−1に対する抗体は、ラット心臓での虚血および再灌流後24時間の梗塞サイズを有意に減少させた(Onoら、Lab. Invest. 1999; 79: 195)。MCP−1のドミナントネガティブな阻害剤を伴うトランスフェクションは、6時間の寒冷貯蔵後の心臓機能を向上させることが見出された(Kajiharaら、Circulation 2003; 108, supp. II: 213)。逆に、マウス脳におけるMCP−1の過発現は、炎症性細胞の動因を増加させ、そして虚血性脳障害を悪化させた(Chenら、J. Cerebral Blood Flow Matab. 2003; 23: 748)。
【0027】
[0037] 細胞表面へのPS転位置を含むアポトーシスの初期段階は可逆的である(Hammillら、Exp. Cell Res. 1999, 251: 16; Jeangirardら、J. Immunol. 1999, 162, 5712)。そのような前アポトーシス性細胞への単球または他の食作用性細胞の結合は、その後に開始することができ、これはアポトーシスの不可逆的な段階である。アポトーシスにおける食作用性細胞の役割は、カエノルハビディティス・エレガンス(Caenorhabiditis elegans)における遺伝学的研究から明らかになった。C・エレガンスにおけるプログラム細胞死は標的細胞と食作用性細胞の相互作用を必要とする。貪食が通常続くが、例えば遊離のDNA 3’−ヒドロキシル末端の発生といったアポトーシスに特徴的な変化はファゴサイトーシスなしに起こることができる(Wuら、Genes Develop. 2000; 14:536)。標的細胞または食作用性細胞における変異はアポトーシスを予防する(Reddienら、Nature 2001; 412: 198)。哺乳類の細胞におけるアポトーシスは同様の順序に従う。Reddienらは、食作用性細胞は、プログラム細胞死を開始する引き金をひかれた多くの(そしておそらくすべての)細胞の自殺を促進すると結論付けた。この考え方は、動員された単球は、IRIの間にECおよび他の細胞型におけるアポトーシスの後の段階の引き金をひくという仮定に拡張し得る。
【0028】
[0038] 上記で議論したように、アポトーシスの初期段階における細胞の識別マーカーは、その表面上のPSの存在である。活性化された単球およびマクロファージはPSに対する表面受容体を発現し(Fadokら、Nature 2000; 405: 85)、そしてこれらの受容体はアポトーシス性細胞への付着とそれのファゴサイトーシスを仲介する。しかしながら、C・エレガンスの場合のように、動員された単球のECおよび他のPSを発現する細胞への結合は、実際の貪食を伴わないTUNEL陽性度およびカスパーゼ3活性化を含む、アポトーシスの後の段階の引き金を引き得る。
【0029】
[0039] ホスホリパーゼA(PLA)活性を伴う酵素の群は、エイコサノイドならびに炎症、血栓症、および再灌流障害についての他の脂質メディエーターの産生において重要な役割を有する。分泌性PLA(sPLA)は、活性化単球および他の細胞型から放出され、そして、IRIの間検出可能である。循環におけるsPLAの上昇したレベルは、心血管性の事象についての増加したリスクと関連する(Kugiyamaら、Circulation 1999; 10: 1280)。末梢血におけるsPLAの有意な上昇は、急性心筋梗塞を伴うヒトにおいて示されてきた(Nijmeierら、Int. Immunopharmcol. 2001; 1: 403)。sPLAは、外面化したPSを伴う膜またはベシクル上で働き(Fourcadeら、Cell 1995; 80: 919)、リゾフォスファチジルコリン(LPC)およびリゾホスファチジン酸(LPA)を生じる。LPCは、単球について走化性であり(Lauberら、Cell 2003; 113: 717)、そしてIRIが起こっている部位へのこれらの細胞の動因において、MCP−1とともに相乗的な効果を有することができる。LPAは、タンパク質の血管外遊走および浮腫を促進する、ECのラウンディング(rounding)を誘導する(Amerongenら、Arterioscl. Thromb. Vasc. Biol. 2000; 20: 127)。LPCはまた、急性心筋梗塞に続く心室不整脈の誘導において重要であってもよい、心筋細胞へのCa2+流入を誘導する(Hashizumeら、Jpn. Heart J. 1997; 38: 11)。LPAは、いくつかの高親和性Gタンパク質(Edg)受容体に結合する。LPA3受容体の選択的遮断は、ネズミ腎臓IRIを減少させる(Okusaら、Am. J. Physiol. 2003; 285: F565)。sPLA活性の別の生成物は、IRIの間のラット心臓において蓄積するアラキドン酸である(van der Vusseら、Ann. NY Acad. Sci. 1994; 723: 1)。アラキドン酸は、それ自体でアポトーシスを誘導し、そしてプロスタグランジン類、および例えば再血栓化および血管収縮に寄与し得る、トロンボキサンAを含む他の脂質メディエーターの前駆体である。もしECが損傷を受ければ、トロンボキサンの効果は、プロスタサイクリンおよび一酸化窒素によって対抗されないであろう。
【0030】
外科手術、脳卒中および心筋梗塞
[0040] 1またはそれより多くのPS結合剤を外科手術を受ける患者に投与することにより、手術に続くIRIを予防することができ、そして血液供給が制限または遮断される臓器が保護できる。臓器または組織機能不全が寛解するかまたは完全に防げるので、術後救命医療は減少するであろう。臓器または組織への血液供給の制限を伴う外科手術を含む、いずれかの種類の外科手術が本明細書において意図される。本明細書において記載される方法の利益が得られる例示的な外科的手順は、腹部外科手術、腹壁形成術、アデノイド切除術、切断術、血管形成術、虫垂切除術、関節固定術、関節形成術、脳外科手術、帝王切開術、胆嚢摘出術、結腸切除術、人工肛門造設術、角膜移植、椎間板切除(discectomy)、動脈内膜切除術、胃切除術、皮膚または他の組織の移植、心臓移植、心臓外科手術、片側完全骨盤切除術(hemicorporectomy)、痔核切除術、肝切除術、ヘルニア修復、子宮摘出術、腎臓移植、椎弓切除術、咽頭切除術、乳腺腫瘍摘出術、肺移植、乳房形成術、乳房切除術、乳突削開術、筋切開術、腎摘出術、ニッセン胃底皺襞形成術(nissen fundoplication)、卵巣摘出術、精巣摘出術、整形外科手術、副甲状腺摘出、陰茎切除術、陰茎形成術、肺切除術、前立腺切除術、放射線手術、患肢温存的回転形成術(rotationplasty)、脾摘出術、アブミ骨切除術、開胸術、血栓除去術、胸腺摘除術、甲状腺摘除術、扁桃摘出術、尺骨側副靭帯再構築、膣切除術、および精管切除術、を含むがこれらに限定されない。
【0031】
[0041] いくつかの例において、IRIは組織または臓器への血液供給を制限または遮断する外科手術により引き起こされる。ここで、例えば、PS結合剤は、外科手術の前少なくとも6時間まで、外科手術の間、および/または外科手術後少なくとも7日まで、投与することができる。
【0032】
[0042] その他の例において、IRIは脳卒中または心筋梗塞により引き起こされる。
[0043] 世界保健機構の推定によれば、毎年1500万人が脳卒中を経験する(www.who.int.)。これらの中で、500万人は死亡し、そして500万人は永久的な身体障害が残る。脳卒中は、3番目の主な死因であり、米国および産業化されたヨーロッパ諸国における成人身体障害の主な原因であり、そして深刻な長期身体障害の主要な原因である。脳卒中は、脳の一部への血液供給が中断され、脳灌流における妨害により突然神経機能を失う結果となる、急性の神経学的障害である。この灌流における妨害は、通常動脈性であるが、静脈性であることもできる。脳卒中が生じた脳の領域は、虚血となり、そして冒された組織は死に至るか深刻な損傷を受けることもある。虚血性脳卒中において、血管は閉塞し、そして脳の一部への血液供給は完全にまたは部分的に遮断される。
【0033】
[0044] 虚血性脳卒中は、一般的に3つのカテゴリーに分けられる:血栓性脳卒中、塞栓性脳卒中、および全身性低灌流(流域(Watershed)または境界部(Border Zone)脳卒中)。
【0034】
[0045] 大多数(80%近く)の脳卒中は、血栓による脳動脈の閉塞に続く。血栓性脳卒中は、しばしばアテローム硬化性プラークの周囲での、血栓の発達、動脈の管腔を徐々に狭めること、および遠位組織への血流の妨害を伴う。動脈の遮断は徐々におこり、症候性の血栓性脳卒中の発症は、塞栓性脳卒中のそれより遅くてもよい。血栓は、閉塞していなくても、血栓が壊れて塞栓となれば塞栓性脳卒中につながり得る。脳血栓症は、血管灌流が深刻に損なわれた中心領域を生じ、そして迅速で不可逆的な脳損傷の結果となる。この梗塞を取り巻くのは、血管灌流が減少した領域である。早い段階での血流の再開(再灌流)が、この領域の脳組織を救助し、それによって神経学的身体障害を減少させる。
【0035】
[0046] 塞栓性脳卒中は、脳の外に由来する動脈血流中において移動する粒子またはデブリである、塞栓による脳の一部への動脈アクセスの遮断である。塞栓は、最も頻繁には血塊である;しかしながらアテローム硬化性血管から剥がれ落ちたプラーク、脂肪(例えば壊れた骨における骨髄由来の)、空気、または癌性細胞は、塞栓性脳卒中を引き起こすことができる。
【0036】
[0047] 虚血性脳卒中の別の原因である全身性低灌流は、体のすべての部分への血流の低下であり、一般に心停止もしくは不整脈による、または心筋梗塞、肺塞栓症、心膜液貯留、もしくは出血の間の減少した心臓アウトプットによる、心臓ポンプ不全の結果である。血流の減少は全体的なので、脳のすべての部分、特に主要な脳動脈により供給される境界部領域または「流域(watershed areas)」、が冒され得る。全身性低灌流の間の脳への血流は、必ずしも停止しないが、脳損傷が生じている部位へは減少し得る。
【0037】
[0048] 脳卒中後の再灌流を促進する二つの治療法が、規制当局により認可されている:血栓を溶解する組織プラスミノーゲンアクチベーターの静脈内投与、および脳血管の内側からの血栓の回収を可能にする機械的デバイス(Merci Concentric Retriever)。これら両方の治療法の制限は、再灌流の間に血管の透過性が増加し得るので、浮腫および結果的な脳機能の障害という結果を生じる(Maierら、Ann. Neurol. 2006; 59: 929-938)。さらにより深刻な再灌流の合併症は、出血につながる血管の完全性の崩壊である。再灌流後の出血は高い罹患率および死亡率と関連する。追加的な合併症は、もとの血栓の溶解または除去後の再血栓症(re-thrombosis)である。
【0038】
[0049] 脳卒中を治療する代替法が本明細書において意図され、そしてPS結合剤の投与を含む。いくつかの態様において、1またはそれより多くのPS結合剤は、例えば血栓を除去するための外科手術の前に、外科手術の間に、再灌流の間に、再灌流後に、またはそれらのいずれかの組合せによって、投与することができる。PS結合剤はまた、例えば全身性低灌流を患う患者に、特に介護者が低灌流の原因を判断および/または治療している間に、投与することができる。
【0039】
[0050] 本明細書において提供する治療的戦略は、血栓溶解剤または血栓の機械的除去との組合せで使用することもできる。神経保護剤、例えばエリスロポエチンまたはその類似体、の追加的使用は、脳血栓症後の回復をさらに改善することができる。
【0040】
[0051] 心臓発作として一般的に知られる急性心筋梗塞(MI)は、心臓の一部への血液供給が中断されたときに起こる疾患状態である。結果として生じる酸素不足(虚血)は心臓組織の損傷および潜在的な死を引き起こす。これは全世界の男女両方についての主な死因である(www.who.int.)。最も一般的な引き金事象は、心外膜冠状動脈におけるアテローム硬化性プラークの崩壊であり、これは凝固カスケードにつながり、そして時には動脈の完全な閉塞という結果を生じる。
【0041】
[0052] MIを治療するために、PS結合剤は、例えば血栓溶解剤治療法ととも、または経皮的な冠状動脈介入もしくは冠状動脈バイパス手術を含む、いずれかの再灌流に関連する外科手術の前に、に投与してもよい。PS結合剤はまた、例えば、MIの兆候または症状が明確になった後いつでも、投与することができる。いくつかの例において、これはMI事象の少なくとも約12時間以内であり、例えば、少なくとも約10時間以内、または少なくとも約8時間以内、またはMI事象の少なくとも6時間以内である。
【0042】
臓器移植および組織移植
[0053] いくつかの例において、IRIは臓器移植により起こる。他の例において、IRIは組織移植により起こる。いずれの状況においても、PS結合剤を、例えば移植片またはグラフトのレシピエントに再灌流の少なくとも約6時間前までに、再灌流の少なくとも約3時間前までに、再灌流の少なくとも約1時間前までに、再灌流の間に、および/または再灌流開始の約1時間後までに、投与することができる。
【0043】
[0054] 移植された臓器は、典型的にはドナーから回収され、そして生理食塩水溶液で灌流するまたはそのような溶液中に置く。Belzerらによって最初に紹介されたウイスコンシン大学の溶液(The University of Wisconsin solution)は、そのような溶液の一つである(Transplantation 1988; 45: 673)。臓器はその後、氷上で数時間保存され、その間にレシピエント患者へと運ばれる。この期間の間、臓器は無酸素状態で、ATPが枯渇し、そして内皮細胞(EC)および他の細胞種の細胞膜におけるリン脂質非対称性が失われる。通常の条件下では、ATP依存性リン脂質トランスロカーゼがこの非対称性を維持しており、PSが細胞膜二重層の内側リーフレットへと限局させている。無酸素に続いて、PSはECの細胞膜の外側リーフレットへと転位置する、これは無酸素状態で培養した細胞の表面にアネキシンVが結合したことにより示される(Ranら、Cancer Res. 2002; 62: 6132)。本明細書において我々は、ECおよび他の細胞におけるリン脂質非対称性の喪失が、IRIの原因における主な事象であることを提供する。ECの表面に露出したPSは、白血球および血小板のそれらへの付着を促進し、これは微小血管の血流を妨害する。活性化された単球のECへの結合は、その後ECにおけるアポトーシス性の事象の末期順序の引き金を引くことができる。肝細胞や心筋細胞のような標的臓器細胞への血流の機能障害は、アポトーシスおよび/またはネクローシスによるそれらの死へと導く。
【0044】
[0055] 一般的に、本明細書で提供する方法は、再灌流障害になりやすい臓器または組織を、該臓器をPS結合剤と接触させることにより、保護することを含む。例えば、臓器または組織をPS結合剤、例えば修飾アネキシンタンパク質と、10から1000μg/kgのPS結合剤を、該臓器が移植された脂肪肝である場合でも、IRIになりやすい臓器または組織を有する患者に静脈内投与することにより、接触させることができる。
【0045】
[0056] 臓器移植は、それ以外の方法では心臓、肝臓または肺の疾患で死に至る患者の生存を可能にし、そして、腎臓透析の患者についての生活の質の向上を提供する。移植用の臓器が不足しているので、理想的ではない、拡張された基準のドナーからの臓器がうまく移植できれば有利であろう。グラフト生存率の減少の移植前関連要因は、ドナーの年齢が高いこと、長期に渡るドナーの高血圧または糖尿病、心拍のない死体ドナーおよび長期の低温保管時間が含まれる(A. O. Ojoら、J. Am. Soc. Nephrol. 2001; 12: 589)。肝臓移植の結果は、ドナー臓器が脂肪性(steatotic)である場合に、よりうまくいかない(Amersiら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002; 99:8915)、これは特に歳をとったドナーの間で一般的に起こることである。
【0046】
[0057] したがって、本明細書において提供される方法および組成物は、臓器移植および組織移植の成功率を上昇させる、グラフトおよび患者の生存率を長くする、および候補ドナー臓器のプールを増加させる、ために有用である。臓器移植の利益を受けるである患者の数は、利用可能な臓器の数を上回るので、移植の成功の見込みが増加することは、生活の質を向上させ、移植患者の寿命を延ばし、そして究極的には命を救うであろう。これはまた病院でのケアの需要を減少させ、そして結果的にコストを減少させる。
【0047】
[0058] PS結合剤を臓器移植のレシピエントに移植のときにまたは直後に投与することにより、移植した組織におけるIRIの発症が減弱または予防できる。結果として、移植臓器の機能がより迅速に回復し、これは臓器移植の成功のためには必須である。腎臓移植において、移植後の腎機能不全の予防は、患者の血液透析への依存を減少させる。肝臓、心臓および肺移植において、移植臓器が早期に適切に機能することは、患者の罹患率および死亡率の減少に重要である。PS結合剤を、臓器灌流および/または低温保管に用いられる人工保存液に添加することにより、移植臓器におけるIRIもまた予防でき、その臓器は保護され、そして移植後の機能回復が促進される。
【0048】
細胞表面上のPSに結合する剤
[0059] 本明細書において、「PS結合剤」は細胞表面上に外面化したPSに結合し、そして、例えば受容体とPSの間の相互作用のような、それによる相互作用を阻害するいずれかの分子、として使用される。いくつかの態様において、該結合剤がPSに結合するので阻害が起こることができる。他の態様において、結合剤はPSと関連している。いくつかの側面において、この阻害は、PSおよびPSに相互作用する分子の間の生理学的、化学的、または酵素的作用を抑制または遅延させる。他の側面において、結合剤は、特定の化学反応または他の生物学的活性を遮断し、制限し、または干渉する。さらに他の側面において、結合剤は、白血球、単球および血小板のような細胞によるPSの認識を防ぎ、それによりPSを発現する細胞ならびに、単球、白血球および血小板、の間の相互作用を防ぐ。
【0049】
[0060] 本明細書に記載される組成物および方法によれば、結合剤は細胞表面上に露出したPSに結合するタンパク質または他の剤である。そのような剤は、PSに高い親和性で結合する、または脂質ラフトの構成物のようなPSに付随する細胞表面上のいくつかの構造に結合する、いずれかの分子であることができる。PS結合剤は、無酸素の結果としてECの表面に転位置したPSに、または血小板または他の細胞においてその活性化の間に外面化したPSに結合できる。細胞表面上のPSに結合することによって、そのような剤は、他の細胞型またはいくつかの酵素のそれへの付着を阻害することができる。ひとつの例は、IRIの間に白血球および血小板のECへの付着である。第二の例は、ドッキングおよびPLAの分泌型アイソフォームの活性である。第三の例は、集合および、血小板、ECおよび他の細胞型の表面に転位置したPS上のプロトロンビナーゼ複合体の活性である。
【0050】
細胞表面上のPSに結合する剤としてのアネキシン類
[0061] いくつかの側面において、PS結合剤は修飾アネキシンである。本明細書において、用語「修飾アネキシン」は、レシピエントにおいける半減期が延長される様式で修飾されたいずれかのアネキシンタンパク質を意味するように用いられる。本主題において言及される修飾アネキシンは、米国特許出願No.11/267,837号に開示されており、その内容は引用によりその全体が援用される。
【0051】
[0062] 循環系から尿中へのタンパク質のクリアランス速度は、主にそのタンパク質の分子量に依存する。天然に存在するタンパク質のクリアランス速度を、長さの異なるポリエチレングリコールでコンジュゲート化した同じタンパク質のクリアランス速度と比較する場合、その分子量を効果的に増加させると、約70kDで腎クリアランスの減少が示され、これは確立された腎臓の閾値である(Knaufら、J. Biol. Chem. 1998; 263: 15064)。例えば、カニクイザルの循環系におけるアネキシンV(36kDa)の半減期は、15分より短いことが見出された(Romischら、Thormb. Res. 1991; 61: 93)。そのタンパク質は循環器から腎臓へすばやく通過する(Thiagarajanら、Circulation 1997; 96: 2339)。実施例3で以下に示すように、ジアネキシン(新規リンカータンパク質で付着させた二つのアネキシンタンパク質を有する修飾アネキシン)のラットにおける末端側半減期はおおよそ、I125標識により5時間、そしてELISAにより2.5時間であることが見出された。カニクイザルにおいて、ELISAによりアッセイされた循環系におけるジアネキシンの末端半減期は5時間であった。療法剤としてのアネキシンタンパク質類の使用は、いくつかの場合において、循環系における残存を長くするため、そして治療効果を増加させるために、分子量における増加を要求することができる。
【0052】
[0063] アネキシン類は、アネキシンファミリーのタンパク質を含む、例えばアネキシンI、アネキシンII(リポコルチン2、カルパクチン1、プロテインI、p36、クロモビンジン(chromobindin)8)、アネキシンIII(リポコルチン3、PAP−III)、アネキシンIV(リポコルチン4、エンドネキシンI、プロテインII、クロモビンジン4)、アネキシンV(リポコルチン5、エンドネキシン2、VAC−アルファ、アンコリンCII、PAP−I)、アネキシンVI(リポコルチン6、プロテインIII、クロモビンジン20、p68、p70)、アネキシンVII(シネキシン)、アネキシンVIII(VAC−ベータ)、アネキシンXI(CAP−50)、およびアネキシンXIII(ISA)。
【0053】
[0064] アネキシン遺伝子は、天然のアネキシン遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えば当該遺伝子によりコードされるアネキシンタンパク質の産生を制御している制御領域(例えば、非限定的に、転写、翻訳または翻訳後制御領域)ならびにコード領域それ自体、を含む。本明細書の開示に従うアネキシン遺伝子は、アレル変異体を含む。アレル変異体は、ゲノムにおいて本質的に同じ座位に生じる遺伝子であるが、それは例えば突然変異または組換えにより引き起こされる天然の変化のため、同一ではないが類似の配列を有する。アレル変異体は、それらと比較される遺伝子によってコードされるの活性と類似の活性を有するタンパク質を、典型的にはコードする。アレル変異体は当業者に周知であり、ゲノムは二倍体であるのであるヒトにおいて、および/または2またはそれより多くのヒトを含む集団において見出されることが期待できるであろう。
【0054】
[0065] より詳細には、アネキシンIは、アネキシンスーパーファミリーのタンパク質の37kDaのメンバーである。このタンパク質は、好中球のゼラチナーゼ顆粒において優勢に発現し、そして内皮細胞への細胞接着後に細胞表面へと外面化する。
【0055】
[0066] アネキシンIIIは、「リポコルチン3」または「胎盤抗凝固タンパク質3」とも呼ばれ、リポコルチン/アネキシンファミリーのメンバーである。アネキシンIIIは、Ca2+依存的な様式でリン脂質および膜に結合し、そして、抗凝固剤および抗ホスホリパーゼAの特性を有することが示されてきている。アネキシンIII発現の抑制は、ラットの肝細胞においてDNA合成を阻害することが示されてきている(Nimmiら、Biol. Pharm. BUll. 2005; 28: 424)。
【0056】
[0067] アネキシンIV(エンドネキシン)は、32kDaの、Ca2+依存的膜結合タンパク質であり、アネキシンVの特性の多くを共有する。アネキシンIVの翻訳されたアミノ酸配列は、このクラスのタンパク質に特徴的な4つのドメイン構造を示す。アネキシンIVはアネキシンVの近縁の構造的ホモログであり、そのファミリーの他のメンバーと45〜59%の同一性を有しており、同様のサイズおよびエキソン−イントロン組成を共有する。アネキシンIVの配列はHammanら、Biochem. Biophys. Res. Comm., 156: 660-667. (1988) に示されている。ヒト胎盤から単離され、アネキシンIVはインビトロ抗凝固活性を有するタンパク質をコードし、カルシウムの存在下で酸性リン脂質膜に結合し、そしてホスホリパーゼA活性を阻害する。アネキシンIVは、ほぼ上皮細胞においてのみ発現する。
【0057】
[0068] アネキシンVは、Ca2+依存的リン脂質結合タンパク質のメンバーである。それはPSへ高い親和性で結合する。コアドメインは、リン脂質膜に近接して並列することができる凹面の円盤状の構造である。それは4つのサブドメインを含有し、それぞれが5つのアルファ−へリックスでできている70アミノ酸アネキシンリピートからなる。アネキシンVの配列は周知である(Funakoshiら、1987; 26: 8087を参照)。
【0058】
[0069] アネキシンVIIIは、Ca2+依存的リン脂質結合タンパク質(アネキシン類)のファミリーに属し、アネキシンVと高い配列同一性(56%)を有する(Hauptmannら、Eur. J. Biochem. 1989; 185(1): 63-71)。最初に2.2kbの血管抗凝固剤−ベータとして単離されたが、アネキシンVIIIは細胞外タンパク質でも、細胞表面に付随しているのでもなく、そして凝固における役割を有していないであろう。アネキシンVIIIはヒト胎盤において低いレベルで発現し、そして肺、血管EC、皮膚、肝臓、および腎臓において制限された発現を示す。
【0059】
[0070] 本発明の側面において、アネキシンVホモ二量体は、細胞表面上に位置する外面化したPSに結合する能力を有する。他のアネキシンホモ二量体、アネキシンヘテロ二量体、アネキシンへテロ四量体、または追加的な非アネキシンタンパク質と連結したアネキシン類についても、類似の特性を予測することができる。
【0060】
[0071] いくつかの側面において、アネキシンタンパク質は、ヒトまたは他の哺乳類における半減期を増加させるために修飾される。いくつかの態様において、アネキシンタンパク質は、アネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIである。アネキシンの一つの適した修飾は、その有効サイズの増加であり、それは修飾アネキシンの喪失、すなわち血管区画から血管外区画および尿中への喪失、を阻害することにより、血管区画におけるアネキシン活性を延長する。PSとの十分な結合活性を維持するアネキシンタンパク質の有効サイズの増加はどれでも、本明細書において意図される。
【0061】
[0072] ひとつの態様において、アネキシンタンパク質は、1またはそれより多くのアネキシンタンパク質とカップリングしている(ホモ二量体、ヘテロ二量体、など)か、または1またはそれより多くの非アネキシンタンパク質とカップリングしている。修飾は、融合セグメントを介して、またはイムノグロブリンのFc部分により達成できる。タンパク質の有効サイズを増加させるための代替法は、ポリエチレングリコール(PEG)または別の分子へのカップリングである。例えば、PEG化によるカップリングは、1またはそれより多くのPEG鎖を1またはそれより多くのアネキシンタンパク質へとカップリングすることにより達成される。PEG鎖は少なくとも約10kDa、少なくとも約20kDa、または少なくとも約35kDaの分子量を有することができる。アネキシンは、修飾アネキシンが細胞表面上のPSへ結合するアネキシンの機能を遂行することができる様式でPEGへとカップリングされる。
【0062】
[0073] いくつかの態様にしたがって、修飾アネキシンタンパク質およびその混合物は、上述した処置の治療法のいずれかにおいて使用するための医薬組成物を調製する方法において用いられる。
【0063】
[0074] ひとつの態様において、修飾アネキシンは、修飾アネキシンがホスファチジルセリン(PS)結合アッセイにおいてアネキシンの機能を遂行することが可能な様式で、PEGへとカップリングされた組換えヒトアネキシンタンパク質を含有する。静脈内に投与されたアネキシン−PEGコンジュゲートの活性は、遊離のまたは非修飾アネキシンのそれと比較して長くなっている。PEGへとカップリングされた組換えアネキシンタンパク質は、アネキシンVタンパク質または別のアネキシンタンパク質であることができる。ひとつの態様において、アネキシンタンパク質はアネキシンV、アネキシンIV、またはアネキシンVIIIである。
【0064】
[0075] PEGは、エチレンオキシドの繰り返しユニットからなり、直鎖、またはいくつかの場合、分枝鎖のいずれかの末端においてヒドロキシル基で終結している。カップリングしたPEG鎖のサイズおよび分子量は、それが含有するエチレンオキシドユニットの数に依存し、それは選択することができる。どんなサイズのPEGも、そしてアネキシン分子あたりのPEG鎖のどんな数も、修飾分子のPSへの結合についての機能を保存しながら、アネキシンと比較して修飾アネキシンの半減期が増加するように使用することができる。最適なコンジュゲート化されたPEGの分子量は、PEG鎖の数により変わる。ひとつの態様において、少なくとも約15kDaの分子量の2つのPEG分子が、ひとつのアネキシンタンパク質にそれぞれカップリングする。PEG分子は、直鎖状または分枝鎖状であることができる。アネキシンのPSへのCa2+依存性結合は、カップリングされたPEG分子のサイズのみならず、PEGが結合したタンパク質上の部位に影響される。最適な選択は、望ましい特性が保持されていることを保障する。PEG付着部位の選択は、分子の三次元構造についての知識、リン脂質膜との分子の相互作用についての変異解析および結晶学的解析により、促進される(Camposら、Biochemistry 37: 8004-8008 (1998)、引用により本明細書に援用される)。
【0065】
[0076] PEG誘導体は、溶解性を増強するために、そして抗原性、タンパク質分解性、および腎臓クリアランスを減少させるために、タンパク質への共有結合付着において広く使用されてきている(PEG化と呼ばれる)。PEGにカップリングした組換え産物の優れた臨床的効果はよく確立されている。例えば、週に1度投与されるPEG−インターフェロン アルファ−2aは、遊離のインターフェロンの週3回用量よりも、C型肝炎ウイルスに対して有意により効果的である(Heathcoteら、N. Engl. J. Med. 343: 1673-1680 (2000)、引用により本明細書に援用される)。PEGへのカップリングは、組換えタンパク質のインビボでの半減期を長くするのに(Knaufら、J. Biol. Chem. 266: 2796-2804 (1998)、引用により本明細書に援用される)、ならびに、組換えタンパク質の酵素的消化を防ぐため、およびホモログ産物において時々観察される抗原性を減少させるために用いられてきている(Hermanson, Bioconjugate techniques. New York, Academic Press (1996), pp. 173-176, において言及、参照引用により本明細書に援用する)。
【0066】
[0077] 別の態様において、修飾されたアネキシンタンパク質は、有効サイズが増加したアネキシンタンパク質のポリマーである。有効サイズの増加は、血管区画における半減期の延長および活性の向上という結果を導くと信じられている。そのような修飾アネキシンはアネキシンタンパク質の二量体である。ひとつの態様において、アネキシンの二量体は、アネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIのホモ二量体である。別の態様において、アネキシンの二量体は、アネキシンVおよび他のアネキシンタンパク質(例えば、アネキシンIVまたはアネキシンVIII)、アネキシンVIおよび他のアネキシンタンパク質(例えば、アネキシンVまたはアネキシンVIII)、またはアネキシンVIIIおよび他のアネキシンタンパク質(例えば、アネキシンVまたはアネキシンIV)のへテロ二量体である。アネキシンホモポリマーまたはヘテロポリマーは、バイオコンジュゲート法または組換え法により製造し、そしてそれ自体をまたはPEGコンジュゲート型で投与することができる。
【0067】
[0078] 1またはそれより多くの融合セグメントを、1またはそれより多くのアネキシンタンパク質をカップリングするのに使用することができ、典型的には「融合タンパク質」と呼ばれる。「融合タンパク質」とは、1またはそれより多くの追加的タンパク質に付着された第一のタンパク質をいう。タンパク質は、第一および第二のタンパク質がインフレームで発現するような、組換えDNA技術を使用して融合させることができる。
【0068】
[0079] 融合配列を修飾アネキシン核酸分子の一部として含めることは、製造の間の安定性、保管、および/または該核酸分子によりコードされるタンパク質の使用を高めることができる。融合セグメントは、目的の機能を有するいずれかのサイズのドメインであることができる。融合セグメントは、制限酵素部位を含有するように構築することができ、それにより目的のタンパク質の回収のための切断を可能にする。
【0069】
[0080] いくつかの態様において、修飾アネキシンは、PSに対する増加した親和性を有する。実施例1において記載するように、ヒトアネキシンVのホモ二量体(DAV)が組換えDNA技術のよく確立された方法を用いて調製された。ホモ二量体のアネキシン分子は、ペプチド結合を介してフレキシブルなリンカーへと連結される(図1)。
【0070】
[0081] 他の態様において、フレキシブルなリンカーは、スイベルとして働くように両端にグリシンおよびセリン残基が隣接したアミノ酸配列を含有する。そのようなスイベルは、各アネキシン単量体がリンカーの長軸の周りを回転することを許容する。リンカーは、1またはそれより多くのそのような「スイベル」を含むことができる。いくつかの側面において、リンカーは、少なくとも2アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、または少なくとも10アミノ酸、で隔てられることのできる2つのスイベルを含む。リンカーの全体の長さは、5ないし30アミノ酸、5ないし20アミノ酸、5ないし10アミノ酸、10ないし15アミノ酸、または10ないし20アミノ酸であることができる。二量体は、Ca2+およびPSが結合する単量体の凸面が、ともに外面化したPSへのアクセスを得る様式でフォールディングしてもよい。フレキシブルなリンカーは、当該技術分野において公知である、例えば、(GGGGS)(n)(配列番号24)(n=3〜4)、ならびにAraiら、Proteins. 2004 Dec. 1; 57(4): 829-38に記載されるより低いフレキシビリティのらせん状リンカーである(EAAAK)(n)(配列番号25)(n=2〜5)。
【0071】
[0082] 配列番号28で示される例示的なリンカーは、両末端にGly−Ser配列を伴う14アミノ酸を含む。当該リンカーは、二次構造を持たないように、そしてフレキシビリティとその長さの周りの回転を可能にするように設計された。リンカーの特定のアミノ酸はまた、それらの低い免疫原性について選ばれた。種々のリンカーアミノ酸配列および長さが、引用によりその全体が本明細書に援用される、2006年12月19日に出願された米国特許出願シリアルNo.11/613,125、に記載されている。
【0072】
[0083] 別の態様において、組換えアネキシンは、イムノグロブリンのFc部分のような他のタンパク質と共に発現する、または化学的に連結している。そのような発現またはカップリングは、分子の有効サイズを増加させ、血管区画からのアネキシンの喪失を防ぎ、その抗凝血性作用を延長させる。Fcは、Fc領域のCHドメインを1またはそれより多く含有する抗体のFc領域の天然型または変異型の双方を意味し、二量化促進ヒンジ領域を含有するFcポリペプチドの切断型を含む。ヒトIgG1抗体に由来するFcポリペプチドは、本明細書に記載される融合タンパク質において使用するための例示的なポリペプチドである。
【0073】
[0084] いくつかの側面において、細胞表面上のPSに結合する剤は、単離された修飾アネキシンタンパク質である。修飾アネキシンタンパク質は、アネキシンI、アネキシンII、アネキシンIV、アネキシンV、またはアネキシンVIIIを含有することができる。いくつかの態様において、タンパク質は修飾されたヒトアネキシンである。いくつかの態様において、修飾アネキシンは組換えヒトアネキシンを含有する。用語「単離された」および「生物学的に純粋な」は、必ずしもタンパク質が精製された度合いを反映しない。単離されたまたは生物学的に純粋なタンパク質は、その天然の環境から取り出されたタンパク質である。典型的には、「単離された」とは、通常は付随する少なくとも1つの夾雑物(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)から分離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。例えば、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、天然で見出されるのとは異なる状況または型であることを意味する。単離された修飾アネキシンタンパク質は、天然の源から得ることができ、組換えDNA技術を用いて製造することができ、または化学合成により製造することができる。本明細書において、単離された修飾アネキシンタンパク質は、完全長修飾タンパク質またはそのようなタンパク質のいずれかのホモログであることができる。それはまた、(例えばPEG化タンパク質のための)修飾完全長タンパク質またはそのようなタンパク質の修飾ホモログであることもできる。
【0074】
[0085] タンパク質ホモログの最小サイズは、対応する天然タンパク質をコードしている核酸分子の相補配列と安定なハイブリッドを形成することができる核酸分子によってコードされるのに十分なサイズである。そのようなものとして、そのようなタンパク質ホモログをコードする核酸分子のサイズは、核酸組成および該核酸分子と相補配列の間のパーセント相同性、ならびにハイブリダイゼーション条件それ自体(例えば、温度、塩濃度、およびホルムアミド濃度)に依存する。そのような核酸分子の最小サイズは、典型的には、核酸分子がGCに富んでいる場合は少なくとも約12から約15ヌクレオチドの長さ、そしてそれらがATに富んでいる場合は少なくとも約15から約17塩基の長さである。そのようなものとして、タンパク質ホモログをコードするために用いられる核酸分子の最小サイズは、約12から約18ヌクレオチドの長さである。そのような核酸分子の最大サイズには制限はなく、当該核酸分子は遺伝子の一部、遺伝子全体、または、複数の遺伝子もしくはその一部を含むことができる。同様に、アネキシンタンパク質ホモログまたは修飾アネキシンタンパク質ホモログの最小サイズは、完全長、多価(すなわち、ドメインのそれぞれが機能を有する、1より多くのドメインを有する融合タンパク質)タンパク質、またはそのようなタンパク質の機能的部分のいずれが望まれるのかに依存したサイズで、約4から約6アミノ酸の長さである。本明細書において使用されるアネキシンおよび修飾アネキシンホモログは、典型的には、再灌流障害を減弱するまたは予防すること可能であるような、天然型サブユニットに対応する活性を有する。
【0075】
[0086] アネキシンタンパク質および修飾アネキシンホモログは、天然のアレル変異または天然の突然変異の結果であることができる。タンパク質ホモログはまた、タンパク質への直接的修飾、または例えばランダムまたは標的性突然変異誘発をおこすための古典的または組換えDNA技術を用いてタンパク質をコードする遺伝子への修飾、を含むがこれらに限定されない当該技術分野において公知の技術を用いて製造することもできる。
【0076】
[0087] また、本発明の態様に含まれるのは、配列番号3、配列番号6、配列番号12、配列番号15、配列番号19、配列番号23のアミノ酸配列またはこれらの配列のいずれかを含有するタンパク質をコードする核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質、に対して少なくとも約70%および約100%の間、例えば、少なくなくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含有する修飾アネキシンタンパク質である。また含まれるのは、配列番号3、配列番号6、配列番号12、配列番号15、配列番号19、または配列番号23、の1より多くを含む修飾アネキシン;例えば、配列番号3および配列番号12を含み、そしてリンカーにより隔てられているタンパク質、である。本明細書で用いられる用語「同一性」は、核酸またはアミノ酸分子の対の間の比較を意味する。アミノ酸配列間および核酸配列間のパーセント同一性を決定する方法は、当業者に公知である。配列間のパーセント同一性を決定する方法は、例えば、SmithおよびWaterman(Adv. Appl. Math. 1981, 2: 482-489)のアルゴリズムを使用するCGC(登録商標)ウィスコンシン・パッケージTM(Accelrys Corporationより入手可能)、DNAsisTMプログラム(Hitachi Software, カリフォルニア州サン・ブルーノ、より入手可能)、Vector NTI Suite(Informax, Inc., メリーランド州ノースベセスダ、より入手可能)、またはNCBIウェブサイトで入手可能なBLASTソフトウェア、のようなコンピュータ・プログラムが含まれる。
【0077】
[0088] 別の態様において、修飾アネキシンタンパク質は少なくとも約5アミノ酸から約完全長タンパク質または約319アミノ酸のアミノ酸配列を含む、例えば、少なくとも50アミノ酸、少なくとも約100アミノ酸、少なくとも約200アミン酸、少なくとも約250アミノ酸、少なくとも約275アミノ酸、少なくとも約300アミノ酸、または少なくとも約319アミノ酸もしくは完全長アミノ酸タンパク質のいずれか短い方。別の態様において、アネキシンタンパク質は完全長タンパク質、すなわち、完全長コード領域によりコードされたタンパク質、またはその翻訳後修飾されたタンパク質、例えば開始メチオニンおよび/またはシグナル配列または「pro」配列が除去された成熟タンパク質、を含有する。
【0078】
[0089] 本明細書において使用される修飾アネキシンタンパク質のフラグメントは、少なくとも約5アミノ酸から少なくとも約100アミノ酸、例えば、少なくとも約10アミノ酸、少なくとも約15アミノ酸、少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約25アミノ酸、少なくとも約30アミノ酸、少なくとも約35アミノ酸、少なくとも約40アミノ酸、少なくとも約45アミノ酸、少なくとも約50アミノ酸、少なくとも約55アミノ酸、少なくとも約60アミノ酸、少なくとも約65アミノ酸、少なくとも約70アミノ酸、少なくとも約75アミノ酸、少なくとも約80アミノ酸、少なくとも約85アミノ酸、少なくとも約90アミノ酸、少なくとも約95アミノ酸、または少なくとも約100アミノ酸、の長さを含有することができる。
【0079】
[0090] 一つの態様において、単離された修飾アネキシンタンパク質は、配列番号4、配列番号17または配列番号21の核酸配列を有する核酸分子によってコードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、配列番号1の核酸配列を有する核酸分子により、またはこれらの配列の一つを有する核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、配列番号1、配列番号10、配列番号13の核酸配列を有する核酸分子により、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質配列の1より多くを含有する。
【0080】
[0091] 一つの態様において、単離された修飾アネキシンタンパク質は、配列番号10の核酸配列を有する核酸分子により、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、配列番号10の核酸配列を有する核酸分子により、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質配列の1より多くを含有する(例えば、配列番号12−リンカー−配列番号12;配列番号19)。
【0081】
[0092] 別の態様において、単離された修飾アネキシンタンパク質は、配列番号13の核酸配列を有する核酸分子により、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、配列番号13の核酸配列を有する核酸分子により、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質配列の1より多くを含有する(例えば、配列番号15−リンカー−配列番号15;配列番号23)。
【0082】
[0093] 別の態様において、単離された修飾アネキシンタンパク質は、配列番号1の核酸配列を有する核酸分子によりコードされるタンパク質、および、配列番号10の核酸配列を有する核酸分子により、またはこれらの核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質、を含有する(例えば、配列番号3−−リンカー−−配列番号12または配列番号12−−リンカー−−配列番号3)。
【0083】
[0094] 別の態様において、単離された修飾アネキシンタンパク質は、配列番号1の核酸配列を有する核酸分子によりコードされるタンパク質、および、配列番号13の核酸配列を有する核酸分子により、またはこれらの核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質、を含有する(例えば、配列番号3−−リンカー−−配列番号15または配列番号15−リンカー−配列番号3)。
【0084】
[0095] 別の態様において、単離された修飾アネキシンタンパク質は、配列番号10の核酸配列を有する核酸分子によりコードされるタンパク質、および、配列番号13の核酸配列を有する核酸分子により、またはこれらの核酸分子のアレル変異体により、コードされるタンパク質、を含有する(例えば、配列番号12−−リンカー−−配列番号15または配列番号15−−リンカー−−配列番号3)。
【0085】
[0096] 一つの態様は、アネキシン遺伝子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされる非天然修飾アネキシンタンパク質を含む。本明細書において使用される場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、オリゴヌクレオチドを含む核酸分子が、類似の核酸配列を有する分子を同定するために用いられる標準的なハイブリダイゼーション条件を意味する。そのような標準的な条件は、例えば、引用により本明細書に援用される、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Press (1989)に開示されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、典型的には、ハイブリダイゼーション反応において探索に用いられた核酸分子と少なくとも約70%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容する。30%またはそれ以下のヌクレオチドのミスマッチを許容するハイブリダイゼーションを達成するために適切なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を計算する式が、例えば、引用により本明細書に援用される、Meinkothら、Anal. Biochem. 138: 267-284 (1984)に開示されている。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探索に用いた核酸分子に対して少なくとも80%核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。他の態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探索に用いた核酸分子に対して少なくとも90%核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。さらに他の態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探索に用いた核酸分子に対して少なくとも95%核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。
【0086】
[0097] 修飾アネキシンタンパク質は、少なくとも50ヌクレオチドであり、そして、配列番号1、配列番号4、配列番号10、配列番号13、配列番号17、配列番号21、またはこれら核酸分子のいずれかの相補体、からなる群より選択される核酸分子と、約20%塩基対ミスマッチを許容する条件下で、約15%塩基対ミスマッチを許容する条件下で、約10%塩基対ミスマッチを許容する条件下で、約5%塩基対ミスマッチを許容する条件下で、約2%塩基対ミスマッチを許容する条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるタンパク質を含む。
【0087】
[0098] 本明細書で使用される場合、アネキシン遺伝子は、天然のアネキシン遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えば該遺伝子によりコードされるアネキシンタンパク質の産生を制御する調節領域(例えば、非限定的に、転写、翻訳または翻訳語制御領域)ならびにコード領域それ自体、を含む。一つの態様において、アネキシン遺伝子は配列番号1の核酸配列を含む。別の態様において、アネキシン遺伝子は配列番号10の核酸配列を含む。別の態様において、アネキシン遺伝子は配列番号13の核酸配列を含む。別の態様において、アネキシン遺伝子は配列番号17の核酸配列を含む。別の態様において、アネキシン遺伝子は配列番号21の核酸配列を含む。核酸配列技術は、完全にエラーがないわけではないので、配列番号1(ならびに本明細書で示した他の配列)は、せいぜい、アネキシンタンパク質をコードする核酸分子の明らかな核酸配列を表すことに注意すべきである。
【0088】
[0099] 別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号1に対して類似であるが同一ではない配列を含むアレル変異体であることもできる。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号10に対して類似であるが同一ではない配列を含むアレル変異体であることもできる。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号13に対して類似であるが同一ではない配列を含むアレル変異体であることもできる。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号17に対して類似であるが同一ではない配列を含むアレル変異体であることもできる。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号21に対して類似であるが同一ではない配列を含むアレル変異体であることもできる。配列番号1を含むアネキシン遺伝子のアレル変異体は、配列番号1を含む遺伝子とゲノム中の本質的に同じ座位(または複数の座位)に生じる遺伝子であるが、例えば突然変異や組換えにより引き起こされる天然の変異のために類似であるが同一ではない配列を有するものである。アレル変異体は、典型的には、比較される遺伝子によってコードされるタンパク質の活性と類似の活性を有するタンパク質をコードする。アレル変異体はまた、該遺伝子の5’または3’非翻訳領域において(例えば、調節制御領域において)変化を含むことができる。アレル変異体は当業者に周知であり、ゲノムは二倍体であるから所与のヒトにおいて、および/または2またはそれより多くのヒトを含む集団の間で、見出されることが期待されるであろう。
【0089】
[00100] 単離されたアネキシンタンパク質(それから修飾アネキシンが調製される)は、天然の源から取得することができ、組換えDNA技術を用いて製造することができ、または化学合成により製造することができる。本明細書において使用する場合、単離された修飾アネキシンタンパク質は完全長タンパク質またはそのようなタンパク質のいずれかのホモログを含有することができる。アネキシンおよび修飾アネキシンホモログの例は、アミノ酸が欠失された(例えば該タンパク質の切除型、例えばペプチド、またはイントロンが除去されるもしくは二つのエクソンが連結されるタンパク質スプライシング反応によるもの)、挿入された、変換された、置換されたおよび/または誘導体化された(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、メチル化、ミリスチル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化、および/またはグリセロホスファチジルイノシトールの付加による)アネキシンおよび修飾アネキシンタンパク質を含み、当該ホモログはアネキシンタンパク質に対する免疫応答を誘発することのできるエピトープを少なくとも1つ含む。すなわち、ホモログが免疫原として当業者に公知の技術を用いて動物に投与される場合、該動物は、アネキシンタンパク質のエピトープの少なくとも1つに対する体液性および/または細胞性免疫応答を生じるであろう。アネキシンおよび修飾アネキシンホモログはまた、免疫血清に選択的に結合するそれらの能力によって同定することもできる。そのような活性を測定する方法が本明細書に開示される。アネキシンおよび修飾アネキシンホモログはまた、機能性アッセイにおいて天然型のアネキシンの機能を遂行することのできるタンパク質を含む:すなわち、ホスファチジルセリンに結合することができる、または他のPS結合分子とPSの結合もしくは相互作用を阻害することができる。
【0090】
[00101] 修飾アネキシンタンパク質は、機能性アッセイにおいてアネキシンタンパク質の機能を遂行する能力によって同定されてもよい。「機能性アッセイにおいてその機能を遂行することができる」との語句は、タンパク質または修飾タンパク質が、機能性アッセイにおいて天然のタンパク質の活性の少なくとも約10%の活性を有することを意味する。他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約20%の活性を有する。他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約30%の活性を有する。他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約40%の活性を有する。他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約50%の活性を有する。他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約60%の活性を有する。さらに他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約70%の活性を有する。さらなる他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約80%の活性を有する。他の態様において、それは機能性アッセイにおいて天然タンパク質の活性の少なくとも約90%の活性を有する。機能性アッセイの例は本明細書に記載されている。
【0091】
[00102] 単離されたタンパク質は種々の方法により製造することができ、それには組換え発現および、細菌からのアネキシンタンパク質の回収が含まれる。一つの態様は組換えDNA技術を用いる、単離された修飾アネキシンタンパク質を製造する方法を提供する。そのような方法は、(a)タンパク質を製造するための修飾アネキシンタンパク質をコードする核酸分子を含有する組換え細胞を培養する、そして(b)それからタンパク質を回収する、工程を含む。組換え細胞を製造し、そしてそれらを培養する際の詳細は、以下に示される。語句「タンパク質を回収する」とは、単純にタンパク質を含有する培養培地全体を集めることを意味し、必ずしも分離または精製の付加的な工程を暗示するものではない。タンパク質は、種々の標準的なタンパク質精製技術を用いて精製することができる。
【0092】
[00103] 単離されたタンパク質は、「実質的に純粋な」型で取り出すことができる。本明細書において使用される場合、「実質的に純粋な」とは、機能性アッセイにおいてタンパク質の有効な使用を可能にする純度を意味する。
【0093】
[00104] 別の態様は、アネキシンVのホモ二量体、アネキシンIVのホモ二量体、アネキシンVIIIのホモ二量体、アネキシンVおよびアネキシンVIIIのヘテロ二量体、アネキシンVおよびアネキシンIVのヘテロ二量体、またはアネキシンIVおよびアネキシンVIIIのヘテロ二量体のような修飾アネキシンタンパク質をコードする遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできる単離された核酸分子を提供する。そのような核酸分子もまた、本明細書において修飾アネキシン核酸分子と呼ばれる。含まれるのは修飾アネキシン遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離された核酸分子である。そのような遺伝子の特徴は本明細書において開示される。本明細書において使用される場合、単離された核酸分子は、その天然の環境から取り出された核酸分子である(すなわち、ヒトの操作にかけられた)。そのようなものとして、「単離された」とは、該核酸分子が精製された度合いを反映しない。単離された核酸分子は、DNA、RNA、またはDNAもしくはRNAいずれかの誘導体を含む。
【0094】
[00105] 上述したように、修飾アネキシン遺伝子は天然のアネキシン遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えば該遺伝子によってコードされるアネキシンタンパク質の生成を制御する調節領域(例えば、非限定的に、転写、翻訳または翻訳後制御領域)ならびにコード領域それ自体、を含む。核酸分子は、単離された修飾アネキシン核酸分子またはそのホモログであることができる。核酸分子は1またはそれより多くの調節領域、完全長もしくは部分コード領域、またはその組合せを含むことができる。修飾アネキシン核酸分子の最小サイズは、対応する天然の遺伝子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で安定なハイブリッドを形成することが可能な最小サイズである。アネキシン核酸分子はまた、ハイブリッドタンパク質、融合タンパク質、多価タンパク質、または切断型フラグメントをコードする核酸分子を含むことができる。
【0095】
[00106] 単離された核酸分子は、その天然の源から、全体(すなわち、完全な)遺伝子として、またはその遺伝子と安定なハイブリッドを形成可能なその一部としてのいずれかで得ることができる。本明細書で用いられる場合、ある実体の「少なくとも一部」との語句は、その実体の機能的側面を有するのに少なくとも十分である、その実体の量を意味する。例えば、本明細書で用いられる場合、核酸配列の少なくとも一部は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で対応する遺伝子と安定なハイブリッドを形成することができる核酸配列の量である。
【0096】
[00107] 単離された核酸分子はまた、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニングなど)または化学合成を用いて製造することができる。単離された修飾アネキシン核酸分子は、非限定的に、天然のアレル変異体および修飾核酸分子であってそれにおいてはヌクレオチドが挿入、欠失、置換および/または変換され、そのような修飾はアネキシンタンパク質をコードするもしくは天然の核酸分子単離体とストリンジェントな条件下で安定なハイブリッドを形成する核酸分子の能力を実質的に干渉しない様式である、を含む天然の核酸分子およびそのホモログ、を含む。
【0097】
[00108] 修飾アネキシン核酸分子ホモログは当業者に公知のいくらかの方法を用いて製造することができる(例えば、Sambrookら、1989を参照)。例えば、核酸分子は、部位特異的突然変異誘発、突然変異を誘導するための核酸分子の化学処理、核酸分子フラグメントの制限酵素切断、核酸フラグメントのライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および/または核酸配列の選択された領域の突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成、および混合物群をライゲーションして核酸分子の混合物を「構築」すること、ならびにその組合せ、のような古典的な突然変異誘発技術および組換えDNA技術を含むがこれらに限定されない種々の技術を用いて修飾することができる。核酸分子ホモログは、核酸によってコードされるタンパク質の機能(例えば、アネキシンタンパク質に対して免疫応答を誘発することのできるホモログの能力、および/または凝固アッセイもしくは他の機能性アッセイにおける機能)についてのスクリーニングにより、および/またはストリンジェントな条件下での単離されたアネキシンをコードする核酸とのハイブリダイゼーションにより、修飾された核酸の混合物から選択することができる。
【0098】
[00109] 単離された修飾アネキシン核酸分子は、少なくとも1つの修飾アネキシンタンパク質をコードする核酸配列を含むことができ、そのようなタンパク質の例は本明細書において開示される。「核酸分子」という語句は主として物理的な核酸分子を意味し、そして「核酸配列」という語句は主として該核酸分子上のヌクレオチドの配列を意味するが、ふたつの用語は、特に核酸分子または核酸配列が修飾アネキシンタンパク質をコード可能な場合において、互換的に使用することができる。
【0099】
[00110] 一つの態様は、修飾アネキシンタンパク質もしくはそのホモログの少なくとも一部をコードする核酸鎖またはそのような核酸鎖の相補体、に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な、修飾アネキシン核酸分子を提供する。いずれかの核酸配列の核酸配列相補体とは、配列が引用された鎖に対して相補的な(すなわち、それと完全な二重鎖を形成できる)核酸鎖の核酸配列を意味する。二本鎖核酸分子であってそれについて核酸配列が1つの鎖で決定され配列番号で表されたものは、その配列番号の相補体である配列を有する相補鎖もまた含むことに留意されたい。そのようなものとして、核酸分子は二本鎖または一本鎖のいずれかであることができ、本明細書において指し示す所与の配列番号および/または本明細書において示しても示さなくてもよいその配列番号の相補体のいずれかとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で安定なハイブリッドを形成する核酸分子を含む。相補配列を推定する方法は当業者に公知である。含まれるのは、修飾アネキシンタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸配列の対応する領域と少なくとも約65パーセントから約99%の相同性、例えば、少なくとも約70パーセント、少なくとも約75パーセント、少なくとも約80パーセント、少なくとも約85パーセント、少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセントの相同性、を有する核酸配列を含む、修飾アネキシン核酸分子である。含まれるのはアネキシンタンパク質またはそのホモログのホモ二量体をコードすることが可能な修飾アネキシン核酸分子である。
【0100】
[00111] アネキシン核酸分子は、配列番号4および配列番号4のアレル変異体、配列番号1および配列番号1のアレル変異体、配列番号10および配列番号10のアレル変異体;配列番号13および配列番号13のアレル変異体;配列番号17および配列番号17のアレル変異体;ならびに、配列番号21および配列番号21のアレル変異体;を含む。
【0101】
[00112] 本明細書に記載の修飾アネキシンタンパク質の核酸分子を知ることは、当業者がその核酸分子のコピーを作成すること、ならびにアネキシンタンパク質をコードする遺伝子の付加的部分を含む核酸分子を得ること(たとえば翻訳開始部位ならびに/または、転写および/もしくは翻訳制御領域を含む核酸分子)、および/またはアネキシン核酸分子ホモログを得ることを可能にする。アネキシンタンパク質のアミノ酸配列の一部を知ることは、当業者がそのようなアネキシンタンパク質をコードする遺伝子をクローニングすることを可能にする。加えて、望ましい修飾アネキシン核酸分子を、アネキシンタンパク質に結合する抗体を用いる適切な発現ライブラリーのスクリーニング;適切なライブラリーまたはDNAをスクリーニングするためのオリゴヌクレオチドプローブを用いた伝統的なクローニング技術;およびオリゴヌクレオチドプライマーを用いた適切なライブラリー、またはRNAまたはDNAのPCR増幅(ゲノムおよび/またはcDNAライブラリーを用いることができる);を含む、種々の方法で得ることができる。
【0102】
[00113] また、本明細書に含まれるのは、修飾アネキシンタンパク質の少なくとも一部をコードする他の、典型的にはより長い、核酸分子の相補領域と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドである、核酸分子である。オリゴヌクレオチドは、RNA、DNA、またはいずれかの誘導体であることができる。そのようなオリゴヌクレオチドの最小サイズは、所与のオリゴヌクレオチドと別の核酸分子上の相補配列との間で安定なハイブリッドを形成するために必要なサイズである。最小サイズの特徴は本明細書に開示される。オリゴヌクレオチドのサイズはまた、本明細書に提供される方法に関連したオリゴヌクレオチドの使用のために十分でなければならない。オリゴヌクレオチドは、追加的な核酸分子を同定するためのプローブとして、核酸分子を増幅または伸長するためのプライマーとして、または修飾アネキシン産生を調節するための療法的適用において、を含むがこれらに限定されない種々の適用において使用することができる。そのような療法的適用は、例えば、アンチセンス技術、三重鎖形成技術、リボザイム技術、および/またはRNA薬に基づく技術、におけるそのようなオリゴヌクレオチドの使用を含む。したがって、本明細書に含まれるのは、そのようなオリゴヌクレオチド、およびそのような技術の1またはそれより多くを使用することによる修飾アネキシンタンパク質の産生を調節する方法である。
【0103】
[00114] また、本明細書で提供されるのは、宿主細胞へと核酸分子を送達することが可能ないずれかのベクターへと挿入された修飾アネキシン核酸分子を含む、組換えベクターである。そのようなベクターは、異種性の核酸配列、すなわち、修飾アネキシン核酸分子に隣接しては天然に見出されない核酸配列、を含有する。ベクターは、RNAまたはDNAのいずれか、原核生物性または真核生物性のいずれか、であることができ、そして典型的にはウイルスまたはプラスミドである。組換えベクターは、クローニング、配列決定、および/またはそうでなければ本明細書で提供される修飾アネキシン核酸分子の操作において使用することができる。一つの組換えベクターの型は、本明細書において組換え分子と呼び、そして以下により詳細を記載するが、核酸分子の発現において使用することができる。いくつかの組換えベクターは形質転換細胞中で複製することが可能である。組換えベクターに含められる核酸分子が本明細書に開示される。
【0104】
[00115] 本明細書で提供される一つの態様は、タンパク質を産生するのに有効な条件下でタンパク質を発現することが可能な細胞を培養し、そしてタンパク質を回収する、ことによる修飾アネキシンタンパク質を製造する方法である。別の態様において、当該方法はアネキシンタンパク質を産生するのに有効な条件下でタンパク質を発現することが可能な細胞を培養し、タンパク質を回収し、そしてその有効サイズを増加させる剤とカップリングすることにより該タンパク質を修飾する、ことによりアネキシンタンパク質を製造することを含む。
【0105】
[00116] 別の態様において、培養する細胞は天然の細菌細胞であり、そして修飾アネキシンはこれらの細胞から単離される。さらに別の態様において、培養する細胞は、修飾アネキシンタンパク質を発現することが可能な組換え細胞であり、該組換え細胞は1またはそれより多くの核酸分子で宿主細胞を形質転換することにより製造されるものである。細胞への核酸分子の形質転換は、細胞へと核酸分子が挿入されるいずれかの方法により達成することができる。形質転換技術は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合を含むがこれらに限定されない。組換え細胞は、単細胞性のままであってもよく、組織、臓器、または多細胞性生物体へと成長してもよい。形質転換した核酸分子は、染色体外に残ることができ、またはそれらの発現する能力が維持される様式で形質転換(すなわち、組換え)細胞の染色体内の1またはそれより多くの部位へと組み込まれることもできる。宿主細胞を形質転換するのに用いる核酸分子は本明細書に開示される。
【0106】
[00117] 形質転換するのに適切な宿主細胞は、形質転換されることができ、および導入された修飾アネキシンタンパク質を発現することができる、いずれかの細胞を含む。そのような細胞は、したがって、少なくとも1つの核酸分子で形質転換された後に、修飾アネキシンタンパク質を産生することが可能である。宿主細胞は、形質転換されていない細胞または、少なくとも1つの核酸分子で既に形質転換された細胞のいずれかであることができる。適切な宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞(酵母を含む)、昆虫細胞、動物細胞および植物細胞を含むことができる。宿主細胞は細菌細胞を含み、E.Coli細胞が特に有用である。別の宿主細胞は、同族の修飾アネキシンタンパク質を産生する、形質転換されていない(野生型)細菌細胞であり、適切な場合、病原性を低下させた弱毒化株を含む。
【0107】
[00118] 組換え細胞は、宿主細胞を1またはそれより多くの組換え分子であって、それぞれは1またはそれより多くの転写制御配列を含有する発現ベクターに機能可能に連結した1またはそれより多くの核酸分子を含む、で形質転換することにより製造することができる。語句「機能可能に連結した」とは、宿主細胞へと形質転換されたときに分子が発現することが可能な様式での発現ベクターへの核酸分子の挿入を意味する。本明細書において用いられる場合、発現ベクターは宿主細胞を形質転換することが可能で、かつ特定された核酸分子の発現をもたらすことが可能な、DNAまたはRNAベクターである。発現ベクターはまた宿主細胞内で複製することも可能である。発現ベクターは、原核生物性または真核生物性のいずれかであることができ、そして典型的にはウイルスまたはプラスミドである。発現ベクターは、細菌細胞内、真菌細胞内、昆虫細胞内、動物細胞内および/または植物細胞内を含む、組換え細胞内で作用する(すなわち、直接遺伝子発現)いずれのベクターをも含む。そのようなものとして、核酸分子は、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、終止配列、複製オリジン、および、組換え細胞において適合性で核酸分子の発現を制御する他の調節配列のような、制御配列を含有する発現ベクターに機能可能に連結されることができる。本明細書において用いられる場合、転写制御配列は、転写の開始、伸長、および終止を制御することが可能な配列を含む。特に重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列のような転写開始を制御するものである。適切な転写制御配列は、少なくとも1つの組換え細胞において機能することができる転写制御配列のいずれかを含む。種々の転写制御配列が当該技術分野において公知である。転写制御配列は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞において作用するものが含まれ、例えば、非限定的に、tac、lac、tzp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージラムダ(λ)(例えばλpおよびλp、ならびにそのようなプロモーターを含む融合)、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ・メイティング・ファクター、ピキアアルコールオキシダーゼ、アルファウイルス・サブゲノミック・プロモーター(例えばSindbisウイルス・サブゲノミック・プロモーター)、バキュロウイルス、Heliothiszea昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、サルウイルス40、レトロウイルス・アクチン、レトロウイルスの末端反復配列、ラウス肉腫ウイルス、ヒートショック、ホスフェートおよびニトレート転写制御配列、ならびに原核生物細胞または真核生物細胞における遺伝子発現を制御することが可能な他の配列を含む。追加的な適切な転写制御配列は、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンにより誘導可能なプロモーター)を含む。転写制御配列はまた、アネキシンタンパク質をコードするDNA配列に天然において関連する、天然に存在する転写制御配列を含むことができる。一つの転写制御配列は、Kozak強プロモーターおよび開始配列である。
【0108】
[00119] 発現ベクターはまた、発現したアネキシンタンパク質が、当該タンパク質を産生する細胞から分泌されることを可能にする、分泌シグナル(すなわち、シグナルセグメント核酸配列)を含有してもよい。適切なシグナルセグメントは、アネキシンタンパク質シグナルセグメントまたは、融合タンパク質を含むアネキシンタンパク質の分泌を指示する異種性のいずれかのシグナルセグメントを含む。シグナルセグメントは、非限定的に、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、インターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、組織適合性およびウイルスエンベロープ糖タンパク質シグナルセグメントを含む。
【0109】
[00120] 発現ベクターはまた、融合タンパク質として挿入された核酸分子の発現に導く融合配列を含有することができる。修飾アネキシン核酸分子の一部として融合配列を包含することは、該核酸分子によりコードされるタンパク質の産生、保管および/または使用の間の安定性を高めることができる。さらに、融合セグメントは、修飾アネキシンタンパク質の精製を単純化するための道具として機能することができる、たとえば、アフィニティクロマトグラフィーを用いて得られた融合タンパク質の精製を可能にする。タンパク質精製のために使用することができる一つの融合セグメントは、8アミノ酸ペプチド配列 asp−tyr−lys−asp−asp−asp−asp−lys(配列番号9)である。
【0110】
[00121] 適切な融合セグメントは、望まれる機能(例えば、増加した安定性および/または精製ツール)を有するいずれかのサイズのドメインであることができる。1またはそれより多くの融合セグメントを用いてアネキシンタンパク質に連結することができる。融合セグメントは、アネキシンタンパク質のアミノ末端および/またはカルボキシル末端に連結することができる。別の型の融合タンパク質は、融合セグメントが2またはそれより多くのアネキシンタンパク質または修飾アネキシンタンパク質と繋がっている融合タンパク質である。融合セグメントおよびアネキシンタンパク質の間のリンケージは、アネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質の直接的な回収を可能にするために切断に対して感受性であるように構築することができる。融合タンパク質は、アネキシンタンパク質のカルボキシル末端および/またはアミノ末端のいずれかに連結した融合セグメントを含むタンパク質をコードする融合核酸配列で形質転換した組換え細胞を培養することにより製造することができる。
【0111】
[00122] 組換え分子は、形質転換される細胞において核酸分子の発現を効果的に調節することが可能ないずれかの転写制御配列の少なくとも1つに機能可能に連結された、これまでに記載されたいずれかの核酸分子のいずれか1つを含むことができる。組換え分子は、1またはそれより多くの修飾アネキシンタンパク質をコードするものを含む1またはそれより多くの核酸分子を含む。組換え分子およびその製造は、実施例の項目において記載する。同様に、組換え細胞は、1またはそれより多くのアネキシンタンパク質をコードする1またはそれより多くの核酸分子を含む。組換え細胞は、実施例の項目において開示したものを含む。
【0112】
[00123] 組換えDNA技術の使用は、例えば宿主細胞内の核酸分子のコピー数、それらの核酸分子が転写される効率、得られた転写物が翻訳される効率、そして、翻訳後修飾の効率、を操作することにより、形質転換した核酸分子の発現を向上できることは当業者に理解されるであろう。核酸分子の発現を増加させるために有用な組換え技術は、非限定的に、核酸分子を高コピー数プラスミドに機能可能に連結すること、1またはそれより多くの宿主細胞染色体の中への核酸分子を組み込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合サイト、シャイン−ダルガノ配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン使用頻度に対応させるための核酸分子の修飾、転写物を不安定化させる配列の欠失、および発酵の間、組換え細胞の増殖を組換えタンパク質の産生と一時的に分離する制御シグナルの使用、を含む。発現した組換えタンパク質の活性は、得られたタンパク質のフラグメント化、修飾、または誘導体化により向上されてもよい。
【0113】
[00124] 組換え細胞は、アネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質を、そのようなタンパク質を産生するのに効果的な条件下でそのような細胞を培養し、そして該タンパク質を回収することにより製造するために、使用することができる。タンパク質を産生するための効果的な条件は、非限定的に、タよンパク質産生を許容する適切な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれる。適切な、または効果的な、培地は、細胞が培養されたときに、アネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質を賛成することが可能ないずれかの培地を意味する。そのような培地は、典型的には吸収可能な(assimilable)炭水化物、窒素およびホスフェート源、ならびに適切な塩、ミネラル、金属、およびビタミン類のような他の栄養素を含む水性培地である。該培地は、複合的な栄養素を含んでもよく、または最少培地として定義されてもよい。
【0114】
[00125] 細胞は、伝統的な発酵バイオリアクター中で培養されることができ、それは非限定的に、バッチ発酵槽、流加培養(fed-batch)発酵槽、細胞リサイクル発酵槽、および継続発酵槽を含む。培養はまた、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイター・ディッシュ、およびペトリ皿中で行うこともできる。培養は、組換え細胞のために適切な温度、pHおよび酸素含量で行われる。そのような培養条件は十分に当業者の専門知識の範囲内である。
【0115】
[00126] 産生のために使用したベクターおよび宿主システムによって、得られるアネキシンタンパク質は組換え細胞内に残るか;発酵培地中へと分泌されるか;E.coliの細胞膜周辺腔のように、二つの細胞膜の間の空間に分泌されるか;または、細胞またはウイルス膜の外表面上に保持されるか;のいずれかであってもよい。そのようなタンパク質を精製する方法は、実施例の項目に開示される。
【0116】
[00127] 最初の梗塞の周囲の減少した血流の領域において、神経保護剤を修飾アネキシンタンパク質と共に投与することは、脳機能の保存を改善するであろうことを、本明細書は意図する。神経保護活性、おそらくその抗酸化活性に関連する、を伴う小分子の例は、抗生物質ミルコサイクリン(mircocycline)である。神経保護活性を有するタンパク質の例はエリスロポエチンである(Ehrenreichら、Molec Med 2002; 8: 495-505)。エリスロポエチンの誘導体およびペプチドもまた、神経保護活性を有する。
【0117】
細胞表面上のPSに結合する剤としての抗体
[00128] いくつかの側面において、PS結合剤は細胞表面上のPSを認識することが可能な抗体である。単離された抗体は、それらの天然の環境から取り出された抗体であるが、「単離された」という用語はそのような抗体の純度の状態を意味しない。語句「認識する」はPSに優先的に結合するそのような抗体の能力を意味する。平衡結合定数として一般に表現される結合親和性は典型的には約10−1から約1012−1の範囲である。結合は当業者に公知の種々の方法を用いて測定することができ、それには免疫ブロット・アッセイ、免疫沈降アッセイ、放射性免疫測定法、酵素免疫測定法、免疫蛍光抗体アッセイ、免疫電子顕微鏡観察、およびPSをその表面に伴う細胞またはリポソームへの結合、が含まれる。
【0118】
[00129] 用語「抗体」は、抗原結合部位の対、ヒンジ領域、および定常領域を有するY字型の分子を意味する。本明細書に記載される方法にしたがって使用されるPS抗体は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。機能的均等物もまた意図され、これには例えば、抗体フラグメント、遺伝子操作された抗体、一本鎖抗体、およびキメラ抗体が含まれる。有用な抗体には、PSが投与された動物において生じるものが含まれ、そして当業者に公知の技術を用いて血清または血漿が回収される。他の有用な抗体は、組換え法により製造されたものが含まれる。定義された抗原に対して製造された抗体は、他の物質に対する抗体が実質的に混入していないので、特に有用であることができる。
【0119】
[00130] 本明細書に記載の方法に従って有用であることができる例示的なモノクローナル抗体は、Ranらによって腫瘍脈管構造上の細胞表面リン脂質を検出するために作成された(Cancer Research, 2002; 62: 6132)。9D2抗体は、Ca2+の存在を必要とせずに、PSならびに他のアニオン性リン脂質へと特異性をもって結合した。同様に、Ranらは、腫瘍脈管構造上のPSを標的するために、ネズミモノクローナル抗体3G4を開発した、そしてそれは本明細書の方法においても有用であってもよい(Clin. Cancer Res. 2005; 11: 1551)。したがって、9D2抗体および3G4抗体は、PS結合剤の例である。
【0120】
細胞表面上のPSに結合する他の剤
[00131] いくつかの態様において、結合剤は、PSに対するアネキシンVの親和性の少なくとも約10%であるPSに対する親和性を有するリガンドである。そのようなリガンドは、例えば、PSと相互作用するタンパク質、ポリペプチド、レセプター、およびペプチドが含まれる。リガンドは、いくつかの態様において、1またはそれより多くのタンパク質、ポリペプチド、レセプター、またはペプチドが抗体のFc部分とカップリングしたコンストラクトであることができる。本明細書で用いられる場合、Fc領域は、抗体またはイムノグロブリンに由来する。抗体のFc部分に付着させたときに、リガンドはPS結合性の性質を保持することが必要である。リガンドの例は、US公開番号2006/0228299(Thorpeら)に記載されたもの、たとえば、ベータ2−糖タンパク質I、Mer、αβインテグリンおよび他のインテグリン類、CD3、CD4、CD14、CD93、SRB(CD36)、SRC、PSOCおよびPSr、ならびにタンパク質、ポリペプチドおよびそれらのペプチド、が含まれる。
【0121】
[00132] Fc部分およびリガンドは、それぞれが意図するように十分に機能するように機能可能に付着させることができる。いくつかの態様において、二つのリガンドがFc部分にカップリングして、それらは二量体を形成する。本明細書において使用する場合、「Fc」とは、1またはそれより多くのFc領域のCHドメインを含有する抗体のFc領域の天然型および変異型の両方を意味し、二量化促進ヒンジ領域を含有するFcポリペプチドの切断型を含む。
【0122】
療法的適用
[00133] 本発明のPS結合剤は、剤および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物の形で投与することができる。そのような組成物は、時折「療法用組成物」と称される。潜在的な療法用組成物の有用な側面は本明細書に記載される。
【0123】
[00134] PS結合剤は、細胞表面上のPSとの他の分子の相互作用を効果的に防ぐ。本明細書で提供される方法において、PS結合剤は、IRIを減弱するまたは予防するのに用いられる。
【0124】
[00135] 本明細書で提供されるのは、選ばれた投与経路に適応させたいずれかの型での、細胞表面上のPS結合剤を含む療法用組成物である。そのような組成物はまた、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバントおよび/または担体のような他の構成成分を含むことができる。例えば、組成物は、患者が許容できる賦形剤中で製剤化することができる。例示的な賦形剤は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス液、The University of Wisconsin Belzer溶液、および他の水性の生理学的に平衡化した塩溶液、を含む。非水性のビヒクル、例えばトリグリセリド、もまた使用してもよい。賦形剤は、少量の添加物を含有することができ、それには等張性および化学的安定性を促進させる物質が含まれる。緩衝剤の例は、リン酸バッファー、炭酸水素バッファー、Trisバッファー、ヒスチジン、シトレート、およびグリシン、またはその混合物を含み、一方保存剤の例は、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールを含む。標準的な製剤は、液体注射剤、または注射のための懸濁液もしくは溶液として適した液体中に溶かすことができる固体、のいずれかとすることができる。よって、非液体製剤において、賦形剤はデキストロース、ヒト結成アルブミン、保存剤、等を含むことができ、それには投与前に滅菌した水または生理食塩水を加えることができる。剤はさらに、標的化抗体および/またはサイトカインを含む特定の送達剤と組み合わせるまたはそれと複合体化することができる。
【0125】
[00136] 療法的に有効な量は、IRIを十分に予防、減弱または部分的に反転させる量を含む。療法的に有効な量はまた、臓器移植片または組織移植片の寿命を増加させるのに十分な量を含む。療法的に有効な量はさらに、脳卒中または心筋梗塞によるIRIを減弱するのに十分な量を含む。療法的に有効な量はまたさらに、患者の平均余命を増加させるのに十分な量を含む。療法的に有効な量は、出血のリスクを、PS結合剤が与えられていない同じ患者におけるリスクと比較して、実質的に増加させてはならない。療法的に有効な量は、IRIからの保護の望ましい量、またはIRIの望ましい減弱をもたらすのに十分な量または用量であることができる。この量は、部分的には、治療において使用される剤、投与頻度および期間、臓器または組織の状態、虚血の時間の長さ、ならびに、組織もしくは臓器がPS結合剤で組織移植または臓器移植の前もしくは後に治療されたかどうか、に依存することができる。患者の大きさおよび健康状態のような他の因子は当業者に公知であり、そして投与時に考慮される。本明細書において言及される「療法的に有効な」量とは、本明細書において、薬剤が単一のそのような量で投与された場合にのみ療法的に有効であることを必ずしも必要としない;いくつかの状況において有効な治療を提供するために繰り返し投与が必要であってもよい。
【0126】
[00137] PS結合剤は、当該技術分野において公知のいずれかの方法により投与することができる。剤は、単回投与で、あるいはいくつかの用量で、例えば1日2回、または2日もしくは3日または1週間以上を網羅する投与計画で、投与することができる。
【0127】
[00138] 剤または療法用組成物の投与は、いずれかの適した経路で行うことができ、これには非限定的に、非経口(例えば、静脈内、皮下、胸骨内、筋肉内、または注入技術)、経口、舌下、頬側、鼻腔内、肺、局所、経皮、皮内、粘膜、眼、耳、直腸、膣、胃内、滑膜内、および関節内経路が含まれる。非経口のような全身性送達を提供する経路が一般的に望ましい。いくつかの側面において、方法は、剤または組成物の静脈内投与を含む。他の側面において、方法はボーラス注射による投与を含む。さらに他の側面において、方法は注射または静脈内点滴への導入による投与を含む。
【0128】
[00139] 医薬組成物は、滅菌された注射可能な調製物、または鼻の粘膜または肺を通じての吸収を可能にするエアロゾール・スプレーの形であることができる。
[00140] 吸入またはエアロゾールによる投与のために、組成物は医薬製剤の技術分野において周知の技術にしたがって調製することができる。組成物は、ベンジルアルコールまたは他の適した保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、または当該技術分野において公知の溶解剤もしくは分解剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0129】
[00141] 注射溶液または懸濁液としての投与のために、合成モノ−またはジグリセリドおよび脂肪酸(オレイン酸を含む)を含む滅菌された油のような、適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、組成物を当該技術分野において周知の技術にしたがって製剤化することができる。阻害剤の溶液または懸濁液は、水または等張性の生理食塩水(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)中で調製することができ、所望により非毒性の界面活性剤と混合する。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレン、グリコール類、DNA、植物油、トリアセチン、およびそれらの混合物中で調製することができる。保管または使用の通常の条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐために保存剤を含有することができる。
【0130】
[00142] 注射または注入のための医薬的用量は、滅菌水性溶液、滅菌分散液、または滅菌粉末を含むことができ、それらは滅菌注射溶液、滅菌注入溶液または滅菌分散液の即席調製物のために適応させた活性成分を含む。すべての場合において、最終的な剤形は、無菌、流体、および製造および保管の条件下で安定である。液体担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、非限定的に、グリセロール、プロピレングリコール、または液体ポリエチレングリコールを含む)、植物油、非毒性グリセリルエステル、またはそれらの適した混合物、を含む、溶媒または液体分散媒体であることができる。望ましい流動性を、例えば、リポソームの形成により、必要な粒子径を維持することにより(分散液の場合)、または非毒性の界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物作用の阻害は、種々の抗菌剤および抗真菌剤を使用することにより、達成することができる。例示的な抗菌剤および抗真菌剤は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどが含まれる。いくつかの側面において、等張化剤が望まれ、そしてそれには糖、緩衝剤、または塩化ナトリウムが含まれる。
【0131】
[00143] 一つの態様は、組成物を患者へとゆっくりと放出することが可能な制御放出製剤である。本明細書において使用される場合、制御放出製剤は、制御放出ビヒクル中に本明細書に記載の組成物を含む。適した制御放出ビヒクルは、生体適合性ポリマー、他のポリマー性マトリックス、カプセル、マイクロカプセル、微粒子、ボーラス調製物、浸透圧ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、リポスフェア(liposphere)、および経皮的送達システム、を含むがこれらに限定されない。他の制御放出製剤は、患者への投与の際に、その場で(in situ)固体またはゲルを形成する液体を含む。いくつかの態様において、制御放出製剤は生分解性(biodegradable)(すなわち、生体内分解性(bioerodible))である。注射用組成物の延長された吸収は、吸収を遅らせる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムハイドロゲルおよびゼラチン、を組成物中に含めることによりもたらされることができる。
【0132】
[00144] 滅菌注射用溶液は、上記に列挙したような種々の他の成分とともに適切な溶媒中に必要な量の化合物を組み込むことにより調製される。そのような溶液は続いて、典型的にはフィルターを用いて、滅菌される。滅菌注射用溶液の調製に用いる滅菌粉末は、真空乾燥または凍結乾燥され、前述の滅菌フィルターにかけた溶液中に存在する活性成分およびいずれかの付加的な望まれる成分の粉末を生じる。
【0133】
[00145] いくつかの態様において、PS結合剤は、約50から約500μg/kgの範囲で、例えば約200、または約300、または約400μg/kbで、投与することのできる、修飾アネキシンタンパク質である。(PS結合剤μg/患者の体重kg)。修飾アネキシンタンパク質は、脂肪肝を伴うドナーの場合であったとしても、臓器移植におけるIRIを減弱するものとして、本明細書において示される。脂肪性肝臓移植の場合におけるIRIを減弱する能力は、使用に適していると考えられる肝臓の数を増加させるであろう。
【0134】
[00146] 患者は非ヒトまたはヒトであることができる。いくつかの場合、患者は臓器移植または組織移植のために選ばれたヒト患者である。他の例において、患者は、組織または臓器への血液供給が遮断または制限される外科手術を受けるヒト患者である。さらに他の例において、患者は脳卒中または心筋梗塞のリスクがある、または罹患しているヒト患者である。「必要とする患者」との語句は、IRIのリスクがある、またはIRI事象を有している患者を意味する。PS結合剤を含む療法用組成物は、臓器移植、組織移植、外科手術、心筋梗塞、または脳卒中の前、その間および/またはその後に患者に投与することができる。
【0135】
[00147] よって、さらに提供されるのは、PS結合剤を含む療法用組成物を臓器移植レシピエントに投与することを含むIRIを予防する方法である。
[00148] また、提供されるのは、単離された細胞または細胞の群に対する再灌流障害を予防する方法であって、当該方法は療法用組成物へとPS結合剤を添加することを含む。上述したように、虚血は無酸素状態の結果であり、例えば、ドナーまたはドナー部位からの臓器または組織の摘出により、または、脳卒中、心筋梗塞もしくは外科手術により、もたらされることができる。よって、虚血性細胞は、その血液供給の遮断または制限を受けたものである。この態様のいくつかの側面において、療法用組成物へのPS結合剤の添加は、単離された膵島のような、虚血細胞または単離された細胞または細胞の群上のPSとの相互作用を阻害する。この態様の他の側面において、療法用組成物へのPS結合剤の添加は、ECの表面上のPSについての、単球の認識を阻害する。
【0136】
[00149] 一つの態様において、IRIは臓器移植により引き起こされる。ここで、PS結合剤を含有する療法用組成物は、例えば再灌流の前約3時間ま以内に、または再灌流の開始後約1時間までに、ドナー臓器と接触させる。療法用組成物はまた、ドナーから臓器を取り出す前にドナー臓器と接触させることもできる。
【0137】
[00150] 別の態様において、IRIは組織移植により引き起こされる。この場合、PS結合剤を含有する療法用組成物は、再灌流の前約6時間以内に、例えば、再灌流の前約3時間以内に、または再灌流の開始後約1時間までに、ドナー組織と接触させる。ドナー組織は、しばしば同じ患者のひとつの区域から取り出されそして別の区域へ移植されるため、療法用組成物は、組成物を当該患者に直接投与することによりドナー組織と接触させることができる。あるいは、または付加的に、ドナー組織は、切除後に、または、ドナー組織の切除前にレシピエントにおよび組織移植前の切除組織の両方に投与することにより、療法用組成物と接触させることできる。
【0138】
[00151] さらに別の態様において、IRIは外科手術、例えば胃腸管外科手術、により引き起こされる。ここで、PS結合剤を含有する療法用組成物は、外科手術の前に、その間に、および/またはその後に患者に投与される。
【0139】
[00152] いくつかの側面において、療法用組成物は、保存液、灌流液、リンス溶液、または静脈内点滴溶液である。他の側面において、療法用組成物は、ボーラス注射のために製剤化される。
【0140】
[00153] したがって、一つの態様において、虚血性細胞もしくは単離された細胞または細胞の群、をIRIから保護するために、PS結合剤を、in situ臓器灌流および冷却(ドナーから臓器が取り出される前)、そして臓器が回収された後は冷蔵保存または灌流、に用いる保存液に加える。臓器または組織移植片は、PS結合剤を含む溶液で灌流または流すことができる。典型的には、臓器または組織は、PS結合剤に加えて、電解質および細胞保護剤のような構成成分を含有する溶液で灌流される。
【0141】
[00154] 例示的に、本発明者らは上述したUniversity of Wisconsin溶液にジアネキシン(PS結合剤の一例)を加えた。この溶液は、次いで2つの時点においてラット肝臓を灌流するために用いた:(1)4℃での一晩保管の前、および(2)移植直後。これらの実験は、ジアネキシンは移植後のIRIから臓器を保護したことを示した。肝臓において有効であることが示されものであるが、療法用組成物にPS結合剤を添加することは、腎臓、心臓、肺、膵臓、腸などを含む他の移植臓器についてもまた利益を得ることができる。
【0142】
[00155] PS結合剤は、電解質(例えばNa、K、Mg++、Cl、SO、HPO2−、Ca2+、およびHCO)を典型的に含有し、そして冷蔵保存中に細胞を保護するための付加的な剤を含有してもよい、異なる種類の保存液に添加することができる。
【0143】
[00156] 適した細胞内保存溶液はthe University of Wisconsin Belzer溶液を含む。この溶液は50g/l ヒドロキシエチルスターチ、35.83g/l ラクトビオン酸、3.4g/l 一塩基性リン酸カリウム、1.23g/l 硫酸マグネシウム7水和物、17.83g/l ラフィノース5水和物、1.34g/l アデノシン、0.136g/l アロプリノール、0.922g/l グルタチオニン、5.61g/l 水酸化カリウム、および水酸化ナトリウム(溶液をpH7.4に調整するため)を含有する。Euro-Collins溶液もまた、本明細書に記載される方法および組成物に用いるのに適しており、2.05g/l リン酸モノカリウム、7.4g/l リン酸二カリウム、1.12g/l 塩化カリウム、0.84g/l 炭酸水素ナトリウム、および35g/lグルコース、を含有する。他の細胞内保存溶液は、本開示の範囲内として想定される。
【0144】
[00157] 同様に、PS結合剤は細胞外型保存溶液に添加することができる。例示的な細胞外型保存溶液は、PEFADEX(Vitrolife、スウェーデン)であり、それは50g/l デキストラン、8g/l 塩化ナトリウム、400mg/l 塩化カリウム、98mg/l 硫酸マグネシウム、46mg/l リン酸二ナトリウム、63mg/l リン酸カリウム、および910mg/l グルコースを含有する。
【0145】
[00158] レシピエントへの移植を完了する前に、保存溶液は、生理学的な注入溶液、例えばリンガー溶液でドナー臓器からリンスして流す。さらに別の態様において、PS結合剤は注入溶液に添加することができる。
【0146】
[00159] 新規な保存およびリンス溶液は、上述した3つの市販の溶液のいずれかに本質的に対応する組成物を有していてもよい。しかしながら、従来の構成成分の実際の濃度は、いくらか変化してもよく、典型的には上記に挙げた平均値の約±50%、または約±30%の範囲内である。
【0147】
[00160] 一つの態様において、PS結合剤は、最大の活性を確保するために、既製の保存またはリンス溶液に、使用の直前に添加される。あるいは、PS結合剤を含有する適した保存溶液を事前に調製することができる。
【実施例】
【0148】
実施例1
修飾アネキシンの調製
A.PEG化アネキシン
[00161] アネキシンはヒト組織から精製する、または組換え技術により製造することができる。例えば、アネキシンVはFunakoshiら(1987)に記載されるように、ヒト胎盤から精製することができる。組換え産物の例は、大腸菌(Escherichia coli)におけるアネキシンIIおよびアネキシンVの発現を含む(Kang, H.-M., Trends Cardiovasc. Med. 9: 92-102 (1999); ThiagarajanおよびBenedict, 1997, 2000)。ホスファチジルセリン含有リポソームへのCa2+−増強性結合およびそれに続くEDTAによる溶出に基づく、組換えアネキシンVのための迅速かつ効果的な精製方法は、Berger, FEBS Lett. 329: 25-28 (1993)に記載されている。この手法は、固相支持体にカップリングしたホスファチジルセリンの使用により向上させることができる。
【0149】
[00162] アネキシンは、PEG化と呼ばれる工程における、いくつかのよく確立された手法(Hermanson, 1996により総説された)のいずれかにより、ポリエチレングリコール(PEG)へとカップリングすることができる。意図されるPEG化アネキシンは、モノ−またはポリ−(例えば、2〜4)PEG部分を有する、化学的に誘導体化されたアネキシン分子を含む。PEG化アネキシンを調製するための方法は、一般的には(a)アネキシンを、アネキシンが1またはそれより多くのPEG基に付着する条件下で、ポリエチレングリコール(例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と反応させる、および(b)反応生成物(単数)または生成物(複数)を得る、の工程を含む。一般的に、公知のパラメータおよび望ましい結果に基づいて、ケース・バイ・ケースで当該反応についての最適な反応条件が決定されなければならない。さらに、当該反応は、異なるPEG鎖の数を有する異なる生成物を生じてもよく、望ましい生成物を得るためにさらなる生成が必要であってもよい。
【0150】
[00163] PEGとアネキシンVの複合体化は、EDCおよびスルホ−NHSの方法を用いて行うことができる。EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩)は、スルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホスクシンアミド)を用いてカルボキシレート基で活性エステル基を形成するのに用いられる。これは、アミンと反応して安定なアミド結合を与える、活性中間体の安定性を高める。複合体化は、Hermanson, 1996に記載されるように行うことができる。
【0151】
[00164] バイオコンジュゲート法は、アネキシンのホモポリマーまたはヘテロポリマーを製造するのに用いることができる;方法はHermanson, 1996に総説されている。組換え法はまた、融合タンパク質、例えばイムノグロブリンのFc部分または別のタンパク質と共に発現するアネキシン、を製造するのに用いることができる。アネキシンIIおよびP11のヘテロ四量体は、大腸菌で製造されてきた(Kangら、1999)。これらの手法のすべてはアネキシンの分子量を増加させ、循環系におけるアネキシンの半減期を増加させる、およびその抗凝固効果を長くする潜在性がある。
【0152】
B.アネキシンVのホモ二量体(ジアネキシン、DAV)
[0165] アネキシンVのホモ二量体は、図1Cに図式的に示され(5’−3’センス鎖)(配列番号4)そして配列番号6で示されるアミノ酸配列をコードするDNAコンストラクトを用いて製造することができる。本実施例において、アネキシンV遺伝子は、発現ベクターpCMV FLAG2(Sigma-Aldrichより入手可能)中に、EcoRIおよびBglIIサイトでクローニングされる。アネキシンV配列の前および後の正確な配列は未知であり、“x”として示している。したがって、適切なコドンアラインメントを確実にするために修飾の前にコンストラクトの配列決定をする必要がある。pCMV FLAG2ベクターには、強力なプロモーターおよび開始配列(Kozak)および開始サイト(ATG)が組み込まれて付いてくる。したがって、それぞれのアネキシンV遺伝子の前の開始コドンは除去されなくてはならず、そして緊密な発現のための強力な終止が第二のアネキシンV遺伝子の終端に付加されるべきである。ベクターにはまた、タンパク質精製のために用いることができる8アミノ酸配列(asp−tyr−lys−asp−asp−asp−asp−lys)(配列番号9)が付いてくる。グリシン−セリン・スイベル末端を伴う14アミノ酸スペーサーは、タンデムな遺伝子にコードされるタンパク質の最適な回転を可能にする。制限部位PvuIIおよびScaIの付加は、必要であればリンカーの除去を可能にする。プロテアーゼ部位の付加は、発現の後にタンデムなタンパク質の切断を可能にする。PreScissionTMプロテアーゼは、Amersham Pharmacia Biotechから入手可能であり、そしてタンデムなタンパク質を切断するのに用いることができる。二つのアネキシンVホモ二量体が生じた。第一に、精製を容易にするために“Hisタグ”が二量体のアミノ末端に置かれた(図1A)。12アミノ酸のリンカー配列は、両端をグリシンおよびセリン残基で隣接され、スイベルとしての役割を果たした。構造模式図は図1Aに示す。Hisタグ化したアネキシンVホモ二量体のアミノ酸配列は、以下に提供される:
[00166]
【0153】
【化1】

【0154】
[00167] リンカーの“スイベル”のアミノ酸には太字および下線を付した。このHisタグ化したアネキシンVホモ二量体は大腸菌において高レベルで発現し、そしてニッケルカラムを用いて精製した。コンストラクト中のDNAは、正しい配列を有することが示され、そして二量体は予測した分子量(74kDa)を有した。MALDI−TOF質量分析を、PerSeptive Biosystems Voyager-DE Proワークステーションを用いて、リニア、ポジティブイオンモードで、25kVの静的加速電圧、および40nsecのディレイ時間で作動させて行った。
【0155】
[00168] 第二のヒトアネキシンVホモ二量体は、Hisタグなしに合成された。構造模式図は図1Bに示す。(Hisタグ化していない)アネキシンVホモ二量体のアミノ酸配列は以下に提供される:
[00169]
【0156】
【化2】

【0157】
[00170] 再び、リンカーの“スイベル”のアミノ酸には太字および下線を付した。この二量体は、大腸菌において高レベルで発現し、そして、イオン交換クロマトグラフィーに続いてヘパリンアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。イオン交換カラムはBio-Radからのもの(Econo-pak HighQ Support)であり、そしてヘパリンアフィニティカラムはAmersham Biosciencesからのもの(HiTrap Heparin HP)であった。両方とも、製造者の指示に従って用いた。再び、アネキシンVホモ二量体のDNA配列は正しいことが見出された。質量分析は、予想したとおり、73kDaのタンパク質を示した。アネキシンおよび他のタンパク質のアミノ酸配列は、ペプチドフラグメントの質量分析により、本実験室においてルーチン的に決定された。予想した配列が得られた。
【0158】
[00171] ヒトアネキシンVは、以下のアミノ酸配列を有する:
[00172]
【0159】
【化3】

【0160】
[00173] 図1Cに示したDNAコンストラクト中に示したように挿入されたヒトアネキシンVのヌクレオチド配列は、以下のとおりである:
[00174]
【0161】
【化4】

【0162】
C.アネキシンIVホモ二量体
[00175] アネキシンIVのホモ二量体は、実施例1Bにおいて記載したアネキシンVホモ二量体と同様にして調製した。用いたベクターはpET−29a(+)であり、Novagen(ウイスコンシン州、マディソン)から入手可能である。プラスミド配列は、pET−ANXA4−2Xとして表示し、そして7221bpであった(配列番号16)。pET−ANXA4−2Xは、ヌクレオチド番号5076から7049(3つの終止コドンを含む)のオープンリーディングフレームを含有する。アネキシンIVの第一コピーは配列番号16のヌクレオチド5076−6038に渡り、第一のスイベルリンカーは配列番号16のヌクレオチド6039−6044に渡り、PreScissionプロテアーゼ認識部位は配列番号16のヌクレオチド6045−6068に渡り、第二のスイベルリンカーは配列番号16のヌクレオチド6069−6074に渡り、アネキシンIVの第二コピーは配列番号16のヌクレオチド6081−7043に渡り、そしてカナマイシン耐性遺伝子が配列番号16のヌクレオチド1375−1560に渡っている。ヌクレオチド番号5076から7049由来の配列は、配列番号17として本明細書にさらに表される。配列番号17の翻訳は、以下の配列を有するアネキシンIVホモ二量体ポリペプチドとなる:
[00176]
【0163】
【化5】

【0164】
[00175] 上記の配列において、スイベル部位は太字および下線で、PreScissionプロテアーゼ部位は小文字で、そして導入した制限部位は斜体で表示した。クローニングしたアネキシンIV遺伝子は、公表された配列(GenBankアクセッション番号NM.sub.−−001153)と比較して1塩基置換を含有し、それにより137位のアミノ酸がセリンからアルギニンに変化した。この変化は、上記の二量体のアミノ酸配列において太字および二重下線で表示した。
【0165】
D.アネキシンVIIIホモ二量体
[00178] アネキシンIVのホモ二量体は実施例1Bに記載したアネキシンVホモ二量体と同様にして調製した。用いたベクターは、pET−29a(+)であり、Novagen(ウイスコンシン州、マディソン)から入手可能であった。プラスミド配列は、pET−ANXA8−2Xとして表示され、そして7257bpであった(配列番号20)。pET−ANXA4−2Xは、ヌクレオチド番号5076から7085(3つの終止コドンを含む)のオープンリーディングフレームを含有する。アネキシンVIIIの第一コピーは配列番号20のヌクレオチド5076−6056に渡り、第一のスイベルリンカーは配列番号20のヌクレオチド6057−6062に渡り、PreScissionプロテアーゼ認識部位は配列番号20のヌクレオチド6063−6086に渡り、第二のスイベルリンカーは配列番号20のヌクレオチド6087−6092に渡り、アネキシンVIIIの第二コピーは配列番号20の6099−7079に渡り、そしてカナマイシン耐性遺伝子は配列番号20のヌクレオチド1375−560に渡っている。ヌクレオチド番号5076から7085からの配列は、配列番号21として本明細書においてさらに表される。配列番号21の翻訳は、以下のアミノ酸配列を有するアネキシンVIIIホモ二量体ペプチドを生じる:
[00179]
【0166】
【化6】

【0167】
[00180] 上記の配列において、スイベル部位は太字および下線で、PreScissionプロテアーゼ部位は小文字で、そして導入した制限部位は斜体で表示する。クローニングしたアネキシンVIII遺伝子は、公表された配列(GenBankアクセッション番号NM001630)と比較して1塩基置換を含有する。この結果、位置92のチロシンにおいて、TATからTACへのコドン変化となる。
【0168】
実施例2
PSに対するアネキシンVおよびアネキシンVホモ二量体の親和性
[00181] アネキシンVの組換えホモ二量体(ジアネキシン、DAV)は、単量体のアネキシンV(AV)よりも細胞表面上のPSにより高い親和性で結合する。細胞表面上のPSに対する組換えアネキシンV(AV)および組換えアネキシンVホモ二量体(DAV、ジアネキシン)の親和性を比較した。PSがその表面に露出した細胞を製造するために、ヒトの末梢性の赤血球(RBC)をCa2+イオノフォア(A23187)で処理した。PSを細胞膜二重層の内部リーフレット(inner leaflet)へとPSを動かすリン脂質トランスロカーゼ(フリッパーゼ)を、遊離のスルフヒドリル基に共有結合するN−エチルマレイミド(NEM)での処理により、不活化した。細胞内Ca2+の上昇はスクランブラーゼ酵素を活性化し、よって細胞膜二重層の外部リーフレット(outer leaflet)におけるPSの量を増加させる。
【0169】
[00182] 洗浄したヒトRBCを、K−バッファー(80mM KCl、7mM NACl、10mM HEPES、pH7.4)中、30%血球容量で再懸濁した。それらは、フリッパーゼを阻害するために10mM NEMの存在下で、37℃で30分間インキュベートした。NEMで処理した細胞を洗浄し、そして2mM CaClを添加した同バッファー中に16%血球容量で懸濁した。A23187(最終濃度4μM)とともに37℃で30分インキュベートすることにより、スクランブラーゼ酵素を活性化した。この手順の結果、RBCの95%より多くが、それらの表面にPSをフローサイトメトリーにより実証可能であった。
【0170】
[00183] 組換えAVおよびDAVを、FluReporterタンパク質標識キット(Molecular Probes、オレゴン州、ユージーン)を用いてビオチン化した。ビオチン−AVおよびビオチン−DAV複合体は、2μg/mlの最終濃度のR−フィコエリトリン−複合体化ストレプトアビジン(PE−SA)で可視化した。Becton Dickinson FACScaliber上でフローサイトメトリーを行い、データをCell Questソフトウェア(Becton Dickinson、カリフォルニア州、サンホセ)で解析した。
【0171】
[00184] 通常のRBCを用いた場合、AVおよびDAVの結合は検出されなかった。しかしながら、AVおよびDAVはともに、少なくとも95%のPSを露出しているRBSに結合した。PSを露出しているRBCは、種々の量のAVおよびDAVとともに、(a)別々にまたは(b)1:1のモル比で混合された状態のいずれかで、PE−SAの添加およびフローサイトメトリーの前に、インキュベートした。そのような測定において、上述したようにAVまたはDAVのいずれか一方がビオチン化され、そして結合したそれぞれのタンパク質の量がアッセイされた。実験は、AVよりもDAVにおいてより高度にビオチン標識されるよう制御された。
【0172】
[00185] 代表的な結果を図2に示す。この一連の実験において、PSを露出しているRBCを、(a)0.2μgのビオチン化DAV(図2A);(b)0.2μgの非ビオチン化DAV(図2B);(c)0.2μgのビオチン化AVおよび0.2μgの非ビオチン化DAV;および(d)0.2μgのビオチン化DAVおよび0.2μgの非ビオチン化AV(図2D);とともにインキュベートした。図2Bおよび図2Dの比較は、0.2μgの非ビオチン化AVの存在は、ビオチン化DAVの結合に何の影響も与えていないことを示している。しかしながら、図2Aおよび図2Cの比較は、0.2μgの非ビオチン化DAVの存在は、PS露出細胞へ結合したビオチン化AVの量を強く減少させていることを示している。これらの結果は、DAVおよびAVは、RBC上の同じPS結合部位について競合しているが、異なる親和性であることを示している;DAVは、AVよりも高い親和性で細胞の表面上に露出されたPSに結合する。我々はこのモデルを、アネキシンVIIIホモ二量体が、アネキシンVホモ二量体よりも細胞表面上のPSに対していくらかより高い親和性を有する、一方でアネキシンIVホモ二量体の親和性がいくらか低い、ことを示すために用いた。
【0173】
実施例3
ジアネキシンクリアランス
[00186] ヒトアネキシンVの組換え二量体(ジアネキシン、DAV、73kDa)は、単量体のアネキシンV(AV、36kDa)よりも循環におけるより長い半減期を有する。ジアネキシンの分子量は腎臓ろ過の閾値を越えている一方、アネキシンVのそれは越えていない。このことはラットの末梢血からの放射ヨウ素標識したジアネキシンのクリアランスの追跡により示された。ウサギ(ThiagarajanおよびBenedict、Circulation 96: 2339, 1977)、ラット、カニクイザル、(Romischら、Thrombosis Res. 61: 93, 1991)およびヒト(Kemerinkら、J. Nucl. Med. 44: 947, 2003)における観察は、AVは循環において、腎臓への主な損失を伴う、短い半減期(それぞれ、7から24分)を有することを示している。
【0174】
[00187] 本明細書で示されるように、ラットに放射性標識したジアネキシンを注射し、血液サンプルを5、10、15、20、30、45および60分、ならびに2、3、4、8、16、および24時間で得て、そして血液の放射活性を決定して、血液消失曲線を構築した(図3)。血液からのジアネキシンの消失は、ツー・コンパートメント・モデルで記載することができ、α相(約10分のt/2)で約75〜80%が消失し、そしてβ相(約400分のt/2)で約15〜20%が消失した。クリアランスは、ツー・コンパートメント・モデルで記載することができ、それぞれ、9〜14分および6〜7時間の半減期であった。2つの実験を、それぞれ3匹の雄のWisterラット(300グラム)で行った。Macfarlaneの方法によりジアネキシンを125Iで標識し、そして標識したタンパク質を遊離のSephadex G-50から分離した。標識の甲状腺への取り込みを防ぐためにNaI(5mg/kg)の注射した後、大腿静脈カテーテルを介して(ラット1および2)または陰茎の静脈を介して(ラット3)、約8x10cpm(生理食塩水で50μLのタンパク質溶液を希釈して0.5mLとした)を注入した。特定の時間の後、尾静脈から血液サンプル(150μL)を得て、そして100μLをカウントした。
【0175】
[00188] β相のパラメータを45分から24時間の間に集めたデータから計算した。α相のパラメータを5および45分の間のデータから、サブトラクション法により計算した。血液放射活性曲線は、サブトラクション法を用いて、ツー・コンパートメント・モデルによって解析した。α−およびβ−相についての線形相関係数は、実験1で−0.99および−0.99であり、実験2で−0.95および−0.96であった。クリアランスパラメータは、表1に示す。
【0176】
【表1】

【0177】
これらの観察結果は、アネキシンVの二量体化は、循環におけるその残存時間を延長したことを示す。
[00189] ジアネキシンの薬物動態はまた、雄および雌のSprague-Dawleyラットの成体へのいくつかの用量の静脈内投与にしたがって研究した。雄および雌別々に(性別ごとに9ラット)、ELISAアッセイにより決定された平均ジアネキシン濃度−時間データは、名目上の時間(nominal times)で、WinNonlin 1:5を用いた非コンパートメント薬物動態解析にかけた。結果は以下の表2にまとめる。
【0178】
【表2】

【0179】
[00190] よって、2つの独立した方法により、ジアネキシンは、アネキシンV単量体について報告されているものよりも、循環系中においてずっと長い半減期を有することが示されてきている。ジアネキシンの循環における延長された残存時間は、その療法的効果を増大させるであろう。
【0180】
実施例4
ジアネキシンは分泌性ホスホリパーゼAの強力な阻害剤である
[00191] アネキシンV(AV)およびアネキシンVホモ二量体(DAV)の、ヒトsPLA(Cayman、ミシガン州、アン・アーバー)の活性についての阻害効果を比較した。上述したようにNEMおよびA123187で処理したRBC上に露出したPSを基質として用いた。対照細胞において、フローサイトメトリーにより示されるように、AVおよびDAVはPSを露出しているRBCへと結合することが見出された。PSを露出している細胞とsPLAのインキュベーションはPSを除去し、それにより細胞はもはやアネキシンを結合しない。PLAでインキュベーションする前にPSを露出している細胞がAVまたはDAVで処理された場合は、PSは除去されない。細胞はCa2+をキレートする剤に曝露することができ、それはAVまたはDAVをPSから解離させ、そしてそれに続く標識されたAVの結合は細胞表面上の残りのPSを明らかにする。そのようなアッセイにおけるAVおよびDAVの滴定は、双方が細胞表面PSについてのsPLAの活性の強力な阻害剤であることを示す。
【0181】
[00192] ホスホリパーゼの阻害はまた、別の方法によっても実証可能である。sPLAの活性は、溶血性であるリゾホスファチジルコリンを放出する。したがって、溶血性アッセイにおいてPLAについてのAVおよびDAVの阻害効果を比較することが可能である。図4に示されるように、AVおよびDAVの両方がPLAの作用を阻害し、DAVの方がいくらかより効果的である。pPLAとの60分のインキュベーション後に誘発された溶血は、DAVまたはAVの存在下で、それらの非存在下での溶血と比較して、強く減少した。これらの結果から、アネキシンVのホモ二量体は、分泌性PLAの強力な阻害剤であることを結論付けることができる。したがってそれは、IRIの原因として寄与すると信じられている、トロンボキサンAならびにリゾホスファチジルコリンおよびリゾホスファチジン酸のようなメディエーターの形成を減少させるであろう(Hashizumeら、Jpn. Heart J., 38: 11, 1997; Ozukaら、J. Physiol., 285: F565, 2003)。
【0182】
実施例5
修飾アネキシンはIRIに対して保護する
[00193] 温IRI(warm IRI)のマウス肝臓モデルを、修飾アネキシンがこの型の障害に対する保護となるのかを確かめるために、アネキシンVの活性を修飾アネキシンと比較するために、そして修飾アネキシンの活性の持続時間を決定するために、使用した。当該モデルはTeohら(Hepatology 36: 94, 2002)によって記載されている。18から25gの重さの雌C57BL6マウスを使用した。ケタミン/キシラジン麻酔下で、肝臓の左側方葉および中葉への血液供給を非侵襲的な微小血管クランプで90分間閉塞した。次いで、再灌流は血管クランプの除去により確立した。動物は回復させ、そしてそれらは24時間後に全採血により屠殺した。肝臓損傷を、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性の測定および組織学的試験により評価した。対照群は麻酔し、偽の開腹手術を行った。アネキシンVおよび修飾アネキシンの活性をアッセイするために、4匹のマウスの群を使用した。第一の群の各マウスには25マイクログラムのアネキシンV(AV)を静脈に注入し、第二の群のそれぞれは25マイクログラムのアネキシンホモ二量体(DAV)を受け、そして第三の群のそれぞれは2.5マイクログラムのポリエチレングリコールとカップリングしたアネキシンV(PEG−AV、57kDa)を受けた。対照は、アネキシンを保管した生理食塩水またはHEPESバッファーを受けた。実験の第1セットにおいては、肝臓動脈の分枝部をクランプする数分前にアネキシンを投与した。実験の第2セットにおいては、アネキシンおよびHEPESは、虚血を開始する6時間前に投与した。代表的な実験結果は図5にまとめられている。
【0183】
[00194] 虚血の直前にアネキシンV(AV)を受けている動物において、わずかな保護が観察された。対照的に、アネキシン二量体(DAV)またはPEG−AVを受けている動物は、虚血の直前または6時間前に受けたもののいずれにおいても、IRIに対する劇的な保護を示した。組織学的研究は、これらの群において肝細胞ネクローシスがほとんどないかまたはまったくないことを確認した。この結果は修飾アネキシン(DAVおよびPEG−AV)は、AVよりも肝臓における虚血再灌流障害に対して有意により保護的であることを示している。さらに、修飾アネキシン(DAVおよびPEG−AV)は、少なくとも6時間の間、IRIを減弱するそれらの能力を保持する。
【0184】
[00195] 偽の手術をした動物において、循環中のALTのレベルは非常に低かった。虚血の直前に生理食塩水または虚血の6時間前にHEPESを受けた動物においては、ALTのレベルは非常に高く、そして組織学は深刻な肝細胞ネクローシスの存在を確認した。
【0185】
実施例6
IRIおよびジアネキシン
[00196] IRIの病因およびジアネキシンの作用機序についての本発明の態様を試験するために研究を行った。虚血の間、PSは肝臓の類洞中の内皮細胞(EC)の管腔表面上に接近可能となる。再灌流の間に白血球および血小板がECの表面上のPSに付着し、そして肝臓中の微小循環における血流を減少させる。ジアネキシンはECの表面上のPSに結合し、それらへの白血球および血小板の付着を減少させる。このメカニズムにより、ジアネキシンは肝臓の微小循環における血流を維持し、それによりIRIを減弱する。
【0186】
[00197] 本実施例は、公表された方法(McCuskeyら、Hepatology 40: 386, 2004)を用いての、インビボでのマウス肝臓における微小循環の観察を提供する。実施例5に記載したように、90分の虚血に続いて種々の回数の再灌流を行った。図6Aおよび6Bは、再灌流の間に、多くの白血球が門脈周囲および小葉中心性区域(IR)の両方におけるECに付着したことを示す。ジアネキシン(1mg/kg、静脈内)はそのような付着を統計的に有意な様式で減少させる(IR+D)。図7Aおよび7Bは、このことが再灌流の間のECへの血小板の吸着についてもあてはまることを示す。本実施例はしたがって、IRIの減弱におけるジアネキシンの作用機序が確認されたことを示す。ジアネキシンは、いずれの位置においてもクッパー細胞の食作用に影響を与えない。したがって、ジアネキシンは病原性の生物体に対する防御メカニズムに対してなんらの効果も奏しない。この知見は、ジアネキシンが副作用を有しない他の証拠を支持する。
【0187】
実施例7
ジアネキシンおよび肝臓IRI
[00198] 本実施例は、ジアネキシンは、再灌流の開始後まで該タンパク質の投与を遅らせた場合に、肝臓をIRIから保護することができるかどうかを確かめるために行った。マウス肝臓の温IRIについての我々の標準的なプロトコルを使用した:成体の雌C57BL6マウス、90分の虚血および24時間の再灌流。終点は、24時間での血清ALTレベルおよび肝臓の病態であった。ジアネキシン(1mg/kg)を再灌流の開始後10分および60分で投与した(実施例5)。表3に示すように、これらの手法は共に、ALTレベルを有意に減少させ、そして肝臓の組織学により保護効果が確認された。これらの観察結果はジアネキシン投与が、再灌流の開始の少なくとも1時間後まで遅らせることができることを示し、最初の1時間の間のECの変化は可逆性であることを暗示している。この知見はまた、移植臓器のレシピエントにおける灌流の再確立後1時間までのジアネキシンの投与は、IRIを減弱するであろうことを示している。
【0188】
【表3】

【0189】
実施例8
ジアネキシン投与のタイミング
[00199] 冷虚血−温再灌流障害の間の臓器の保護におけるジアネキシンの効力は、よく特定されたラット肝臓移植モデル(Sawitzki, B. ら、Human Gene Therapy 13: 1495, 2002)で評価した。肝臓は成体の雄Sprague-Dawleyラットから回収し、University of Wisconsin溶液で灌流し、4℃で24時間保管し、そして同系のレシピエントへと正所的に(orthotopically)移植した。これらの条件下で、同様の実験において以前に観察されたように、処置しないレシピエントの60%は移植の48時間以内に死亡した。別の肝臓移植片の10レシピエントには、移植後10分および24時間にジアネキシン(0.2mg/kg、静脈内)を与えた。これらの動物すべては14日より長く生存し、以前の経験に基づいてこれは手術によって制限のない生存を暗示する。
【0190】
[00200] 表4に示されるように、処置していないレシピエントの移植後6時間および24時間での循環系中の肝臓の酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルはジアネキシンで処置したレシピエントのそれよりも有意に高かった。ジアネキシンに仲介される細胞保護作用は、移植レシピエントの肝臓の組織学的試験によって確認された。移植後7日までに、すべてのレシピエントにおいてALTレベルは通常の範囲に戻った。
【0191】
[00201] 10レシピエントの第二の群において、ジアネキシンは異なる様式で使用された。ラット肝臓はSprague-Dawleyドナーから得て、そして、4℃の冷蔵保存の24時間前、および正所的(orthotopic)移植の直前に、ジアネキシン(0.2mg/リットル)を含有するUniversity of Wisconsin溶液で2回エクスビボで灌流した。これらのレシピエントには移植後はジアネキシンを与えなかった、そしてそれらのすべては>14日間で生存した。再び、6および24時間でのALTレベルは、処置しない動物のそれよりも有意に低く、そして組織学的試験は、ジアネキシンで処置した移植片レシピエントの良く保存された肝臓と、対照移植片レシピエントの部分的に壊死した肝臓の間で相当な違いを示した。
【0192】
[00202] これらの観察結果は、ジアネキシンは、ヒト肝臓移植の状況と類似する冷虚血−温再灌流ラット肝臓モデルにおけるIRIを顕著に減弱することを示す。ジアネキシンは、肝臓をエクスビボで灌流するのに用いる溶液に含められた場合と、移植の直後に肝臓移植片のレシピエントに投与された場合とで等しく有効である。
【0193】
【表4】

【0194】
実施例9:
ジアネキシンは脂肪性肝臓におけるIRIを減弱する
[00203] ヒトの肝臓が20%より多い脂肪を含有するとき、それらは脂肪性(steatotic)であると名づけられている。そのような肝臓の移植後のIRIのリスクは増加し、そしてこの合併症を減弱することが望ましい。2型糖尿病に先行するメタボリック症候群に関連した型である脂肪症の認知されたモデルは、Zucker(レプチン欠損)ラットによって提供される(Amersiら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002; 99: 8915)。ジアネキシンが移植後のラット脂肪性肝臓を保護できるかどうかを決定するために、このモデルを使用した。
【0195】
[00204] 実験手順は、Amersiら(上記引用文中)によって記載されたのと同様であった。脂肪肝はZuckerラットから回収され、University of Wisconsin溶液中で4°で4時間保管した。この結果、痩せた肝臓の24時間の保管後に観察されるのと同程度のIRIの重篤度となる。保管後、該脂肪性肝臓は同系の痩せたレシピエントへと正所的に移植した。ジアネキシン(200μg/kg)を10レシピエントに対して、再灌流のときおよび移植後2日目に投与した。10の脂肪肝レシピエントの対照群および偽の手術をしたラットの別の群が含められた。ジアネキシンを与えられなかった脂肪肝のレシピエントは、50%致死率を示し;ジアネキシンを受けたものは100%生存を示した(p<0.01)。ジアネキシンで処置した脂肪肝レシピエントは、処置していない対照脂肪肝レシピエントよりも、有意により低いALTレベルを示した(p<0.05)。これらの機能性データは、肝障害についてのSuzukiの組織学的類別によりよく相関した。処置しない脂肪肝移植片レシピエントとは異なり、ジアネキシンで処置した動物におけるそれは最小限の類洞鬱血および壊死を示し、そして小葉構造のよい保存を示した。これらの観察結果は、辺縁性脂肪性肝臓が移植されたときのIRIの減弱を通じて移植ドナープールを増加させる、ジアネキシンの潜在的有用性を実証する。
【0196】
実施例10
ジアネキシンは血栓症、鬱血、および脳卒中において効果を有する
[00205] 先述の実施例において記載した観察結果は、ジアネキシンはマウス肝臓におけるIRIを著しく減弱し、そして脳を含む他の臓器おけるIRIについても同様であろうという可能性を生んだ。ジアネキシンのIRI障害を減弱する能力は、上述のように、脳卒中の治療のための探索に結びつくプロフィールの重要な部分であった。該プロフィールの他の重要な部分は、ジアネキシンは、鬱血について最小限の効果を有する強力な抗血栓活性を有するということである。
【0197】
血栓症および鬱血に対する効果の間の区別
[00206] アネキシンVが鬱血に関する最小限の効果を伴って動脈性および静脈性血栓症を阻害することが確立されてきており(Romischら、Thrombosis Res. 1991; 61: 93; ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 1977; 96: 2339)、これは注目すべきそして臨床的に望ましい解離である。ジアネキシンが臓器移植の主要な外科手術におけるIRIを予防するために用いられる際に増加した出血がないことと合わせて、実施例8に記載されたこれらの観察結果は、鬱血および血栓症を仲介するメカニズムの間になんらかの区別があるのかという疑問を投げかける。明らかに、フィブリン沈着のような同じ事象が両方の経路に共通しているが、しかし証拠は、経路の部分的な分離があることを蓄積している。鬱血における主要な事象は:(1)血管障害の部位への血小板の動員、ならびにそれらの活性化および凝集;(2)組織因子(TF)/因子VIIa複合体の活性;を含む。アネキシンVは、損傷した血管への血小板の動員を仲介するいくつかの接着分子へと結合しない。血小板は最初に細胞外マトリクス(ECM)にフォンウィルブランド因子の血小板因子Ibへの結合を通じて付着する。付着は、血小板インテグリンαβとECMの相互作用を介して続く(Klenschnitzら、J. Exp. Med. 2006; 203: 513-518を参照)。
【0198】
[00207] アネキシンVは、トロンビンまたはコラーゲンによって誘導される血小板凝集を阻害しない(Sunら、Thromb. Res. 1993; 62: 289-296)、そして同じことがジアネキシンについてもいえる(データは示さない)。TF/VIIa活性は、障害の部位におけるフィブリンの局所沈着を仲介する。鬱血におけるこの経路の重要性は、2つのセットの観察結果により示される。第一に、TFまたは因子VII遺伝子のいずれかについて標的不活性化されたマウスは、胚性または出生後初期の間、重篤な出血を呈した(Kleinschnitzら、上記引用文中、で言及)。これらの出血性の傾向は、他の血液凝固性タンパク質が欠損したマウスにおける傾向よりも明白であった。第二に、組換え因子VIIaは、血友病のみならず外傷および他の臨床的状態の、出血を伴うヒト患者の治療において高度に効果的である(Hender, Semin. Hematol. 2004; 41: 35-39)。
【0199】
[00208] アネキシンVは、それがプロトロンビナーゼ活性を強く阻害する実験において比較して(side-by-side)試験したとき、TF/VIIa複合体の活性を阻害しない(Raoら、Thrombosis Res. 1992; 67: 517-531)。TF−アネキシンVキメラタンパク質を、TFを血管損傷の部位へと標的化するために生じさせた(Huangら、Blood 2006; 107: 980-986)。療法的濃度においてこのコンストラクトは実験動物において出血を減少させ、このことはアネキシンVコンポーネントは複合体中のTFの止血活性を損なわなかったことを示している。鬱血におけるこれらの最小限の効果に対して、アネキシンVおよびジアネキシンは、抗血栓性活性、プロトロンビナーゼ活性の著しい阻害、を発揮する。
【0200】
ジアネキシンは脳卒中モデルにおける再灌流障害を減弱する
[00209] 本実験は、脳卒中の治療におけるジアネキシンの有効性を確認するために行った。
【0201】
[00210] 特徴がはっきりしたマウスモデルを用いた。これは、ヒト脳卒中を合併する、中大脳動脈閉塞後の病変は再灌流の領域への浮腫および出血を含むので、発生させた(Maierら、Ann. Neurol. 2006; 59: 929-938)。誘導可能なミトコンドリアのマンガン含有スーパーオキシドジスムターゼを標的破壊したノックアウト(KO)マウスは、穏やかな脳卒中にし、続いて早期の再灌流および3日まで生存させる。ヘテロ接合性(SOD2−/+)マウスは、その野生型の対応物よりもIRIになりやすい。再灌流開始後1から3日の期間の間に、エバンスブルー色素の血管外遊出により示される浮腫が生じる。脳損傷の領域は有意に増加し、そして多くの動物において、再灌流領域への出血が生じる(Maierら、上記引用文中)。これらの動物は、大脳の再灌流の合併症を減少させるために設計された治療戦略の評価を可能にする。
【0202】
[00211] ジアネキシンがこのモデルおけるIRIを減弱できるかどうかを確認するために、SOD2(−/+)マウスの2つの群を、一過性の(30分)大脳動脈閉塞(MCAO)にさせた。再灌流開始10分前に、一方の群にジアネキシン(200マイクログラム/kg)を静脈内注射した。他の群は治療しない対照とした。二つの異なる実験において、ジアネキシン注射は、再灌流開始後24時間での一次梗塞サイズにより評価される脳損傷において、実証可能な効果を示さなかった。しかしながら、ジアネキシン治療は、再灌流開始後72時間に測定された浮腫を減少させ、そして24から72時間の間の脳損傷の領域の拡大を排除した。特に著しいのは出血の割合の減少である(対照で12/15であるのと比較して、ジアネキシン治療マウスでは3/13であった、p=0.003)。ジアネキシンは血栓症を阻害できるので、それは出血も増加させるという理論上の可能性があった。しかしながら、逆のことが観察され、血管の完全性を保存し、そして止血に関与するメカニズムにおいて最少の効果を有することにより、ジアネキシンが出血のリスク増加を伴うことなくIRIを減弱できることを示している。このことは、機械的血栓除去または血栓溶解を補完するいずれかの治療に対して、重要な考察である。
【0203】
[00212] 内皮下結合組織を露出することにより、上述の手法は、血小板、白血球および微小粒子の付着を可能にする。これには二つの重要な意義がある:再血栓症の可能性および再狭窄症の見込みを増加させること。動脈壁における平滑筋および結合組織の領域の拡大の結果である再狭窄症は、冠状動脈の血管形成術後の主要な合併症である。血小板および白血球からの増殖因子およびサイトカインの放出は、再狭窄を開始すると考えられている。血小板、白血球、および微小粒子の内皮下層への付着を減らすことができれば、再血栓症および再狭窄症の見込みを減少させることができる。アネキシンVは、基底膜の構成物であるコラーゲンX(von der MarkおよびMollenhauer, Cell Mol. Life Sci., 1997; 53;539)、および細胞外結合組織マトリックスの構成物であるヘパラン硫酸(Ishitzukaら、J. Biol. Chem. 1998; 273: 9935)に結合する。ジアネキシンは同様の効果を有し、そしてEC裏打ち(lining)が血栓の外科的除去または血栓除去後に損傷を受けた場合の血小板、白血球および微小粒子の脳動脈の内皮下層への付着を減少させることができると予測される。さらに、ジアネキシン治療によって、再血栓症および再狭窄症のリスクが減少するであろうことが予測される。
【0204】
[00213] 上記に引用されたすべての文献は、引用により本明細書にその全体が援用される。
[00214] 「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む・含んでいる(comprising)」は、排他的よりむしろ包含的なものとして解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PS結合剤をそれを必要とする患者に投与することにより虚血−再灌流障害(IRI)を減弱する方法であって、ここで該PS結合剤は細胞表面上のフォスファチジルセリン(PS)に高い親和性で結合する、前記方法。
【請求項2】
PS結合剤が、PSについての受容体を発現する単球または血小板の、虚血性または活性化細胞への付着を阻害する、ここで該虚血性または活性化細胞はその細胞表面上にPSを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PS結合剤が、PSをドッキング部位として使用する酵素、例えば分泌性ホスホリパーゼAまたはプロトロンビナーゼ複合体の、虚血性または活性化細胞への付着を阻害する、ここで該虚血性または活性化細胞はその細胞表面上にPSを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
IRIが臓器移植により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
IRIが組織移植により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
IRIが外科手術により引き起こされる、ここで該外科手術は標的部位への血流を遮断および/または制限する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
IRIが臓器移植により引き起こされ、そしてPS結合剤が再灌流の前約6時間以内に患者に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
IRIが臓器移植により引き起こされ、そしてPS結合剤が再灌流開始後約1時間までに患者に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
IRIが外科手術による血流の遮断および/または制限により引き起こされ、そしてPS結合剤が外科手技の約6時間以内に患者に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
PS結合剤が、虚血性または活性化細胞の表面上に位置するPSとの相互作用を阻害するいずれかの分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
PS結合剤が、修飾アネキシン、PSに対するモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、またはPSに対する別のリガンドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PS結合剤が、アネキシンの親和性の少なくとも約10%のPSに対する親和性を有するペプチドリガンドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PS結合剤が、修飾アネキシンI、修飾アネキシンII、修飾アネキシンIII、修飾アネキシンIV、修飾アネキシンV、および修飾アネキシンVIIIからなる群より選択される修飾アネキシンである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
剤が、アネキシンホモ二量体、アネキシンヘテロ二量体、アネキシンヘテロ四量体、および追加的なタンパク質とカップリングしたアネキシンタンパク質からなる群より選択される修飾アネキシンであり、ここでそれぞれの修飾アネキシンはアネキシン単量体よりも大きな有効サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
アネキシンとカップリングしたタンパク質が、免疫グロブリンのFc部分である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
修飾アネキシンが、融合セグメントを介して第二のアネキシンタンパク質とカップリングした第一のアネキシンタンパク質を含むアネキシン二量体である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
IRIを予防する方法であって、臓器移植レシピエントにPS結合剤を含む療法用組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項18】
虚血性細胞(例えば、EC)、活性化細胞(例えば、血小板)または細胞の群(例えば単離された膵島)に対するIRIを予防する方法であって、虚血性細胞、活性化細胞または細胞の群にPS結合剤を接触させることを含む、前記方法。
【請求項19】
IRIが臓器移植により引き起こされ、そしてPS結合剤を含有する療法用組成物を再灌流の前約24時間以内に、再灌流開始後1時間までにドナー臓器と接触させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
IRIが組織移植により引き起こされ、そしてPS結合剤を含有する療法用組成物を再灌流の前約24時間以内に、ドナー臓器と接触させる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
IRIが外科手術により引き起こされ、そしてPS結合剤を含有する療法用組成物を、外科手技の前、その間、および/またはその後に患者に投与する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
療法用組成物へのPS結合剤の添加が、虚血性細胞の表面上に位置するPSとの相互作用を阻害する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
療法用組成物へのPS結合剤の添加が、虚血性または活性化細胞の表面上における単球−マクロファージ認識を阻害する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
IRIになりやすい臓器または組織を保護する方法であって、臓器または組織をPS結合剤と接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
IRIを減弱する方法であって、PS結合剤を脳卒中の患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
IRIを減弱する方法であって、PS結合剤を心筋梗塞を患う患者に投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−543876(P2009−543876A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520867(P2009−520867)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/066561
【国際公開番号】WO2008/008561
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(506306813)アラビタ・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】