説明

再生熱可塑性樹脂を用いた三次元立体繊維複合体

【課題】使用済みの樹脂を原料として使用し、物性や品質上問題のない三次元立体繊維複合体を提供する。
【解決手段】アラミド短繊維を含有する再生熱可塑性樹脂100重量部に対しオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂を1〜100重量部添加して溶融重合して圧縮強度が高く、へたりにくい三次元立体繊維複合体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
使用済みの樹脂成形品、製造工程で発生する不良品、クズなどを再生熱可塑性樹脂として使用し、立体三次元繊維集合体として再利用する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を使用した立体繊維集合体を製造する方法は、多数提案されている。例えば、溶融状態を呈している糸条をノズルより自然落下させるときその速度より遅く引き取り、しかる後直ちにこれを急冷固化させる方法、また、これらの製造方法を基本にしてノズルを振動させる方法、金属性通気性コンベアベルトを設け空気吸引装置を装着した引取機を用いて糸条を相互に融着させようとする方法などがあげられる。
【0003】
これらに使用される原料には、分子量、粘度が調節された新品の樹脂が使用され、重合度や粘度が低下したり、色相の不均一、不純物の混入した廃棄物、再利用樹脂は使用されていなかった。今迄、使用済みの樹脂成形品、製造工程で発生する不良品、クズなどは、物性や上品質の面から埋立て、焼却、投棄されていた。しかしながら、現在、環境問題、少資源の観点から、循環型リサイクルを基本とした再利用の要望が強く求められている。こうした現状に鑑み、再生樹脂を利用して物性や品質上問題のないレベルの成形物に向上させる技術が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、今迄廃棄されていた使用済みの樹脂を原料として使用し、物性や品質上問題のない三次元立体繊維集合体となし、暗渠、盛土、擁壁裏込み等の土木用排水材、ベッドなどのクッション部材、パレット部材などに使用しても必要とされる十分な強度、性能、繊維間の接着性を有する立体繊維集合体を提供し、資源の再利用、環境問題となる廃棄物の低減、コストダウンの推進を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、再生熱可塑性樹脂に対してアラミド短繊維を添加することにより、繊維強化樹脂複合体となし、物性上問題のあった再生樹脂を再利用できるようにするものであり、アラミド短繊維含有熱可塑性樹脂100重量部に対してオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂の1種又は2種以上を1〜100重量部添加して溶融紡出して自然落下させ、褶曲させて得られる多数の糸条又は線条が相互に点接着してなる三次元立体繊維複合体とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアラミド短繊維を含有する再生樹脂を利用した三次元立体繊維複合体は圧縮強度が高く、圧縮在留歪率も大きく、へたりにくいため、暗渠、盛土、擁壁裏込み等の土木用排水材、ベッドなどのクッション部材、パレット部材などに好適であり、いままで使用できずに廃棄していた使用後の成形品、不良品などの樹脂を再利用し、環境問題、少資源問題の解決、循環型リサイクルに役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明において、アラミド短繊維を含有する熱可塑性樹脂としては、使用後そのまま廃棄されていた樹脂成形品の再使用可能な原料樹脂が好適に使用される。糸条または線条の多数をノズルより紡出して自然落下させ、褶曲させる溶融押出において基材となる再生熱可塑性樹脂として必要とされる強度に耐えうる機械的強度を持つものであれば何れでも良く、例えばポリエチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリルニトリル系のうちから選ばれるホモポリマー又はコポリマーからなる再生熱可塑性樹脂が好ましく、なかでもジオグリッド、樹脂ボトル、その他成形品として大量に利用され、回収、選別が容易で、耐薬品性にも優れたポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル系、ポリアミド系樹脂が好適である。
【0008】
また配合量としては、アラミド短繊維を含有する熱可塑性樹脂100重量部に対してオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂の1種又は2種以上を1〜100重量部添加しなければならない。これは、粘度が低下した再生熱可塑性樹脂の圧縮強度及び粘度を上げるためであり、アラミド繊維を含有した再生熱可塑性樹脂に対して相溶性の悪いオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂等の末端基との反応性がある高分子量物質を少量添加することにより、低剪断域での溶融粘度を容易に上昇させることができる。
【0009】
なお、1重量部未満の場合には粘度が低いため糸条が細く、また、固化が速くなり、線条間の接着性が低くなり、圧縮強度、たわみ、回復性が不足して好ましくない。他方、100重量部をこえると再生熱可塑性樹脂として使用するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどは、相溶性の悪いオレフィン系樹脂によってノズルから紡出される糸条が不安定になり、連続的な糸条が得られにくくなり、目的とする三次元立体繊維集合体が得られにくくなり好ましくない。
【0010】
前記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンのうちから選ばれるホモポリマー又はコポリマーからなる熱可塑性樹脂が好ましい。また、ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレンおよびこれらの共重合物が好ましい。これらオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂は、1種又は2種以上を添加する。なお、アラミド短繊維を含有する再生熱可塑性樹脂に悪い影響を与えない範囲内に限られる。また、三次元立体繊維集合体の性質を損なわない程度に繊維補強材、充填材、着色剤、安定剤、結晶化促進剤その他各種剤を適時配合してもよい。
【0011】
本発明の立体繊維集合体の基材となるアラミド短繊維を含有する再生熱可塑性樹脂とオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂との混合方法としては、これらの樹脂をドライブレンドし押出機に直接供給し、押出機により溶融混合し、糸条または線条の多数をノズルより紡出する方法、又はこれらの樹脂をドライブレンドした後押出機により溶融混合しペレットを作成した後、これを用いて糸条または線条の多数をノズルより紡出する方法により自然落下させ褶曲させて溶融押出を行なう方法があげられる。
【0012】
本発明において、三次元立体繊維集合体の基材となるアラミド短繊維を含有した再生熱可塑性樹脂にオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂及び/又はビニル系樹脂を添加することにより、アラミド短繊維を含有した再生熱可塑性樹脂の溶融粘度が上昇し糸条または線条の多数をノズルより紡出して自然落下させ、褶曲させる溶融押出性が改善され、糸条または線条の相互の点接着が向上し圧縮時の強度、歪み、回復各特性に優れた三次元立体繊維複合体が得られる。
【実施例】
【0013】
以下、実施によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、諸物性の測定法は下記の通りである。
【0014】
1) 圧縮強度:JIS K7208で測定し、圧縮強度を歪率20%のときの値で求める。
【0015】
2)圧縮残留歪率:立体繊維集合体の圧縮強度の測定時に最初の試料の厚みに対して1/2の歪量になるまで荷重をかけ、その後荷重をはずすことを5回繰り返した後、3時間後に試料の厚みを測定し、次の式により圧縮残留歪率を算出する。
圧縮残留歪率=試験後の試料の厚さ(mm)/最初の試料の厚さ(mm)
【0016】
[実施例1]
還元粘度0.7のポリエチレン製ジオグリッドの成形時に発生した不良品、発生不用品を溶融しアラミド短繊維(繊度0.5de、繊維長3mm 帝人テクノプロダクツ製)を1〜20重量部添加して、アラミド繊維含有再生ポリエチレン樹脂を作成した。この再生樹脂を粉砕したもの100重量部に、230℃でのメルトフローレートが8g/10分のポリエチレンを20重量部配合しドライブレンドしたものを用いて、スクリュー径50mmの単軸押出機にてシリンダー温度を275℃に設定し、内径1mmよりなる50穴のノズル群から毎時300Nの吐出量にて紡出し、このノズル面より30cm下方に冷却水を配するとともに同冷却水中に一対の引き取り用コンベアーを設置し、これを毎分0.8mの速度で水中に引き取り、厚さ3cm幅20cmの三次元立体繊維複合体を作成した。得られた三次元立体繊維複合体の圧縮特性を測定した結果を表1に示す。
【0017】
[実施例2]
相対粘度2.5のポリエチレンの射出成形時に発生した不良品、発生不要品を溶融しアラミド繊維(繊度0.5de、繊維長3mm 帝人テクノプロダクツ製)を1〜20重量部添加して、アラミド繊維含有再生ポリエチレン樹脂を作成した。この再生樹脂を用いて実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0018】
[比較例1]
実施例1で、アラミド繊維を含有しない再生ポリエチレン樹脂で行った他は実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0019】
[比較例2]
実施例2で、アラミド繊維を含有しない再生ポリエチレン樹脂で行った他は実施例2と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
得られた三次元立体繊維複合体は表1に示すように、アラミド短繊維を添加することにより圧縮強度が高くなり、また圧縮残留歪率も大きな値を示し回復性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明はアラミド短繊維を添加することにより、使用済み製品の樹脂成形品、製造工程で発生する不良品、屑などを埋立て、焼却、廃棄することなく再利用することができるので環境問題や少資源化に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド短繊維を含有した熱可塑性樹脂100重量部に対してオレフィン系樹脂及び/又はビニル系樹脂の1種又は2種以上を1〜100重量部添加して溶融紡出して自然落下させ、褶曲させて得られる多数の糸条又は線条が相互に点接着してなることを特徴とする三次元立体繊維複合体。
【請求項2】
熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂である請求項1記載の三次元立体繊維複合体。
【請求項3】
オレフィン系樹脂がポリプロピレン、ポリエチレンである請求項1、2記載の三次元立体繊維集合体。
【請求項4】
アラミド短繊維がパラ型及び/又はメタ型全芳香族ポリアミド短繊維である請求項1〜3記載の三次元立体繊維集合体。