説明

再生砂又は土工材及びその製造方法

【課題】コンクリート廃材を主体とする材料から得られる再生砂又は土工材であって、コンクリート廃材等からの6価クロムの溶出が高度に抑制される再生砂又は土工材を提供する。
【解決手段】コンクリート廃材を主体とする材料であって、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)と、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合する。材料(A)の粒度に適合した最適な粒度の高炉徐冷スラグ(B)が配合されるので、高炉徐冷スラグがその還元能力を最大限に発揮でき、このためコンクリート廃材中の6価クロムが効果的に還元され、コンクリート廃材からの6価クロムの溶出が高度に抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設廃材等として発生するコンクリート廃材を主体とする材料から得られる再生砂又は土工材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設廃材等として発生するコンクリート廃材を、路盤材、再生砂、土工材(例えば、埋め戻し材)等のような土木材料として利用することが広く行われている。
ところで、セメントには、その製造工程で混入するクロムに由来する6価クロムが微量に含まれることがあるが、セメントが一旦コンクリートとして固化してしまえば、セメントからの6価クロム溶出のおそれは殆どない。ただし、中性化(劣化)が進んだコンクリートを細かく砕いた場合には、土壌環境基準を超える6価クロムの溶出の可能性が指摘されている。
【0003】
このような観点から、特許文献1には、路盤材用に破砕されたコンクリート廃材に高炉徐冷スラグの粉砕物を混合し、路盤材(コンクリート廃材)からの6価クロムの溶出を抑制するようにした方法が提案されている。
この方法は、高炉徐冷スラグがもつ還元能力に着目し、その粉砕物をコンクリート廃材と混合することにより、コンクリート廃材中の6価クロムを3価クロムに還元することを狙いとしている。
【特許文献1】特開2005−240313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが詳細に検討したところによれば、再生砂や土工材(埋め戻し材等)は、路盤材に比べて粒子径が小さいことから比表面積が大きくなり、6価クロムの溶出量が多くなる懸念がある。また、路盤材と比較して、土壌との接触や透過水分が地下水に合流する可能性がより高くなると考えられるので、6価クロムの溶出をより確実に押さえ込むことが好ましいことが判った。
さらに、再生砂等の場合、コンクリート廃材に建設発生土なども混入する場合がある。このような場合、土壌は粒子が細かいため、再生砂等の溶出特性に少なからず影響を与える可能性がある。また、土壌のクロム含有量などによって、6価クロムの溶出値が変動する恐れもある。
【0005】
また、資源の有効利用をより高度に図るために、コンクリート廃材などからの再生骨材の回収技術が実用化されており、これについては、JIS A5021の「コンクリート用再生骨材」やJIS A5022の「再生骨材Mを用いたコンクリート」に規定される再生骨材などが標準的な技術として確立されている。この再生骨材は、粗骨材と呼ばれる粒径5mm以上の粒子と、細骨材と呼ばれる粒径5mm未満の粒子とに分けられる。コンクリート廃材は、元々セメントペーストだった部分の強度が低下しており、コンクリート廃材から再生骨材を回収する場合、そのような粉末の多くが粒径5mm未満の方に入る。そのため、粒径5mm以上のものについては、強度が要求されるコンクリートの原料(粗骨材)として利用されるものの、粒径5mm未満のものについては、コンクリートに混ぜる用途以外に、土工材や路盤材に混合利用されるケースも多い。さきに述べたように、6価クロム溶出はセメントペーストが起因する可能性が高いため、そのような土工材や路盤材をそのまま使用した場合、6価クロム溶出の恐れがある。
【0006】
したがって本発明の目的は、コンクリート廃材を主体とする材料から得られる再生砂又は土工材であって、コンクリート廃材等からの6価クロムの溶出が高度に抑制される再生砂又は土工材を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような再生砂又は土工材を安定して製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、再生砂等を製造するにあたり、高炉徐冷スラグの還元能力を最大限に発現させ、かつ、確実にクロムを処理できる方法を見出すべく検討した結果、以下のような知見を得た。まず、従来技術などで使用していた高炉徐冷スラグは粒子の大きさが各種あるため、再生砂に対して適切な粒度でない場合があり、混合しても相応の還元能力が発揮されない場合があることが判った。また、再生砂等の使用環境により6価クロムの溶出値が大きく変動し、加えて、土壌等の混入がある場合には、さらにクロム溶出挙動が変化することが判った。
また、高炉徐冷スラグについても、計算上のS含有量ほどは還元能力は発現せず、また、他のイオン類との共存の影響によって、理論還元能力よりも大きな還元能力が必要であることが判った。
【0008】
これらの点から、(i)再生砂等は、比表面積が大きいことなどもあり、従来技術だけではクロム溶出を確実に抑制することは難しいこと、(ii)特に、再生砂等の製造の場合には、コンクリート廃材と建設発生土の混在によるバラツキの影響が顕著になり、これに対応する技術が必要であること、(iii)材料中の6価クロムを確実に還元するには、高炉徐冷スラグの還元能力を管理することが好ましいこと、などが判った。そして、これを実現する方法について検討した結果、コンクリート廃材を主体とする材料を破砕して再生砂や土工材とする際に、その材料の粒度に応じた粒度を有する高炉徐冷スラグを添加する必要があること、また、その際に高炉徐冷スラグの最適な添加量があることが判った。
【0009】
また、使用する高炉徐冷スラグについては、水に浸出する成分のうち、6価クロムの還元に対して最も影響が大きいチオ硫酸イオンの溶出量を規定することで、6価クロムの溶出をより確実に抑制できること、そして、破砕後の高炉徐冷スラグの管理形態を最適化することにより、チオ硫酸イオンの溶出量を適切に確保できることを見出した。
さらに、事前に材料からの6価クロム溶出量を測定し、その測定値に応じた量の高炉徐冷スラグを添加することにより、6価クロムの溶出を確実かつ経済的に抑制できることが判った。
【0010】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]コンクリート廃材を主体とする材料(但し、材料がコンクリート廃材のみからなる場合を含む。)であって、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)と、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合したことを特徴とする再生砂又は土工材。
[2]上記[1]の再生砂又は土工材において、材料(A)が建設発生土を含むことを特徴とする再生砂又は土工材。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]の再生砂又は土工材において、高炉徐冷スラグ(B)が、水:スラグ=10:1の質量部割合で水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したときのチオ硫酸イオンの浸出量が30mg/L以上となる高炉徐冷スラグであることを特徴とする再生砂又は土工材。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの再生砂又は土工材において、高炉徐冷スラグ(B)の配合量が、材料(A)のコンクリート廃材100質量部に対して2.5〜10質量部であることを特徴とする再生砂又は土工材。
[5]上記[1]〜[3]のいずれかの再生砂又は土工材において、材料(A)が、コンクリート廃材を破砕し、粗骨材部分を取り除いた後に回収される材料であり、高炉徐冷スラグ(B)の配合量が、材料(A)のコンクリート廃材100質量部に対して5〜10質量部であることを特徴とする再生砂又は土工材。
【0012】
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの再生砂又は土工材を製造する方法であって、コンクリート廃材を主体とする材料(但し、材料がコンクリート廃材のみからなる場合を含む。)を長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)とし、該材料(A)と長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合することを特徴とする再生砂又は土工材の製造方法。
[7]上記[6]の製造方法において、高炉徐冷スラグ(B)を、スラグ100質量部に対して水分を5〜15質量部を含んだ状態で1週間以上保管した後、材料(A)と混合することを特徴とする再生砂又は土工材の製造方法。
[8]上記[6]又は[7]の製造方法において、予め材料(A)の6価クロム溶出量を測定しておき、該6価クロム溶出量に応じて高炉徐冷スラグ(B)の配合割合を決定し、材料(A)と高炉徐冷スラグ(B)を混合することを特徴とする再生砂又は土工材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の再生砂又は土工材は、コンクリート廃材を主体とする材料(A)の粒度に適合した最適な粒度の高炉徐冷スラグ(B)が配合されるので、高炉徐冷スラグがその還元能力を最大限に発揮でき、このためコンクリート廃材中の6価クロムが効果的に還元され、コンクリート廃材からの6価クロムの溶出が高度に抑制される。特に、高炉徐冷スラグ(B)として、チオ硫酸イオンの浸出量が所定レベル以上のものを用いることにより、コンクリート廃材からの6価クロムの溶出をより効果的に抑制することができる。
【0014】
また、本発明の製造方法では、上記のような再生砂又は土工材を安定して製造することができる。特に、高炉徐冷スラグ(B)を所定レベルの水分を含んだ状態で保管した後、材料(A)と混合することにより、高炉徐冷スラグ(B)の還元能力を最大限に発揮させることができる。また、事前に材料(A)の6価クロム溶出量を測定しておき、その溶出量に応じて高炉徐冷スラグ(B)の配合割合を決定して高炉徐冷スラグ(B)と混合することにより、6価クロムの溶出抑制をより適正に行うことができるとともに、高炉徐冷スラグ(B)の過剰な配合による黄水の発生等の問題を最小限に抑え、且つクロム溶出が少ない再生砂等を経済的に生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の再生砂又は土工材は、コンクリート廃材を主体とする材料(但し、材料がコンクリート廃材のみからなる場合を含む。)であって、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)と、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合したものである。なお、本発明及び以下の説明において使用する材料(A)及び高炉徐冷スラグ(B)などの粒径は、当該篩い目を有する篩いを用いて規定される粒径を意味する。篩いの寸法は、JIS Z8801等に代表されるものが使用できる。
【0016】
本発明の再生砂又は土工材(以下、便宜上「再生砂等」という場合がある)は、路盤材に代表される最大径が25mmあるいは40mmといったものではなく、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上であるような小さい粒度のものである。この再生砂又は土工材は、コンクリート塊や路盤材などを破砕し、再利用する砂状材料を対象としており、コンクリートを主体とするが、一部土壌などが混入する場合がある。用途としては、例えば、埋め戻し材、配管類の緩衝材、炉床材、路盤材以外の敷設材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
コンクリート廃材を主体とする材料(A)は、コンクリート廃材を50体積%以上含むもので、この材料(A)を上記の粒度とする方法や工程に特別な制限はないが、通常、材料(A)は破砕されたもの(コンクリート廃材の破砕物)である。材料(A)は、コンクリート廃材のみからなる場合を含むが、建設発生土などのようなコンクリート廃材以外の材料を含むことがある。
また、材料(A)は、コンクリート廃材を破砕し、粗骨材部分を取り除いた後に回収される材料であってもよい。この材料は、コンクリート用再生骨材H、M、Lとして規定される粗骨材を回収した残りの部分からなる材料である。なお、再生骨材の回収方法に特別な制限はない。
【0018】
前記コンクリート廃材としては、建設廃材が最も代表的なものであるが、これに限定されるものではない。また、廃材という性質上、不可避的にコンクリート以外の廃材が混入することを妨げない。
前記建設発生土は、コンクリート廃材に付着するなどして材料(A)に混入するものであり、コンクリート廃材によって含まれる量に差があるが、材料(A)はコンクリート廃材が主材であるため、建設発生土は全体の50体積%未満である。
【0019】
高炉徐冷スラグ(B)は、高炉スラグ(溶融スラグ)を徐冷して得られる結晶質主体のスラグであり、生成した状態においては還元性硫黄を含んでいる。高炉徐冷スラグは、高炉水砕スラグが細粒状の形態で生成するのに対して、溶融スラグが塊状に固化して生成するものであり、破砕および分級によって、任意の粒径をもつスラグを容易に得ることができる。
このような高炉徐冷スラグとコンクリート廃材を混合すると、スラグ中の還元性硫黄がコンクリート廃材から溶出してくる6価クロムを3価クロムに還元し、その結果、コンクリート廃材からの6価クロムの溶出を抑制する。しかし、さきに述べたように、再生砂等を対象とする場合、路盤材等を製造する場合と比較して粒度が小さいため、6価クロムの溶出量が多くなり易い。したがって、還元性のある高炉徐冷スラグを適用しても、還元が不十分になる場合がある。
【0020】
これに対して本発明では、粒度が限定されたコンクリート廃材に対して、粒度を同等範囲に限定した高炉徐冷スラグを混合するので、安定した混合と還元能力を発揮することができる。従来技術では、路盤材や土工材用の粒径に破砕されたコンクリート廃材(通常、粒径が数十mm以下)に高炉徐冷スラグの粉砕物(通常、粒径が数mm以下)を混合しているが、このように粒径が大きく異なるものどうしを均一に混合することは難しく、このためコンクリート廃材中の6価クロムに及ぼされる高炉徐冷スラグの還元作用にバラツキを生じやすい。このような還元作用のバラツキを抑えるには、高炉徐冷スラグの粉砕物を定量供給するための特別な設備が必要であり、設備的な負担が大きくなる。これに対して本発明では、再生砂等として破砕されるコンクリート廃材と同等のサイズの高炉徐冷スラグを配合するため、コンクリート廃材と高炉徐冷スラグの粒径差が小さく、このため従来技術に較べてコンクリート廃材と高炉徐冷スラグを均一に混合することができる。これらの結果、コンクリート廃材中の6価クロムに及ぼされる高炉徐冷スラグの還元作用を均一化できる。その結果、本発明の再生砂等は、コンクリート廃材中の6価クロムが効果的に還元され、コンクリート廃材からの6価クロムの溶出が高度に抑制される。
【0021】
図1は、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%のコンクリート廃材100質量部に対し、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%になるように破砕した高炉徐冷スラグ(b1)と、粒径25mm以下に破砕し、長径が10mm以下の粒子の割合が70質量%程度である高炉徐冷スラグ(b2)を、それぞれ3質量部混合した再生砂(本発明例、比較例)について、6価クロムの溶出試験(JIS K0102)を行った結果を示している。この溶出試験では、再生砂を蒸留水:再生砂=10:1の質量部割合で蒸留水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したろ液中の6価クロム量を測定した。図1によれば、本発明例と比較例では、高炉徐冷スラグを同じ配合量で添加していても、6価クロムの溶出量のバラツキ範囲が大きく異なっている。すなわち、本発明例のように高炉徐冷スラグをコンクリート廃材の粒度に合わせることにより、安定した還元能力が発現されることが判る。
【0022】
高炉徐冷スラグ(B)は還元能力が高いものが望ましく、特に、水:スラグ=10:1の質量部割合で水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したときのチオ硫酸イオンの浸出量が30mg/L以上となる高炉徐冷スラグを用いることが好ましい。
チオ硫酸イオンは、還元剤として知られるイオンであるが、高炉徐冷スラグに含まれる硫黄成分が一部酸化された状態で溶出してくる。チオ硫酸イオンによる6価クロムの還元は、原理的には下記のような反応であると考えられる。
8CrO2−+3SO2−+17HO → 8Cr(OH)+6SO2−+10OH …(1)
2CrO2−+6SO2−+8HO → 2Cr(OH)+3SO2−+10OH …(2)
【0023】
したがって、高炉徐冷スラグから溶出するチオ硫酸イオンによって0.05mg/Lの6価クロムを還元するためには、上記(2)式から0.185mg/Lのチオ硫酸イオンの溶出量が必要となり、例えば、0.05mg/Lの6価クロムの溶出が起こるコンクリート廃材100質量部に対して3質量部の高炉徐冷スラグを添加するとした場合、チオ硫酸イオンの溶出量は0.185/3%=6.15mg/Lあれば足りることになる。しかしながら、実際にはチオ硫酸イオンは6価クロムの還元のみに消費されるわけではなく、コンクリート廃材からの他のイオンも浸出することにより、さらに他イオンによる消費傾向は強まることになる。加えて、6価クロムの濃度は極めて低いレベルにあることから、その反応活性も決して高いとはいえない。したがって、実際に必要な高炉徐冷スラグからのチオ硫酸イオンの浸出量は、より高いものとなる。
【0024】
図2に、コンクリート廃材(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上であるコンクリート廃材)に対して、チオ硫酸イオンの浸出量が異なる高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)を添加・混合した再生砂について、6価クロムの溶出試験(JIS K0102)を行い、6価クロムの溶出値の低下量(還元された6価クロム量)を調べた結果を示す。この溶出試験では、再生砂を蒸留水:再生砂=10:1の質量部割合で蒸留水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したろ液中の6価クロム量を測定し、6価クロムの溶出値の低下量を調べた。図2によると、コンクリート廃材に対して効果を発現させるためには、30mg/L以上のチオ硫酸イオンの浸出量がある高炉徐冷スラグが望ましいことが判る。また、より安定してクロム溶出抑制を行うためには、70mg/L以上のチオ硫酸イオンの浸出量がある高炉徐冷スラグを用いることがより望ましい。
【0025】
本発明では、高炉徐冷スラグ(B)の配合量は特に限定しないが、材料(A)のコンクリート廃材100質量部に対して2.5〜10質量部程度とすることが好ましい。コンクリート廃材100質量部に対する高炉徐冷スラグ(B)の配合量が2.5質量部未満では、プラント等で混合して再生砂等を製造する際に混合ムラが発生し、部分的に高炉徐冷スラグによる還元作用が不足するおそれがある。一方、高炉徐冷スラグ(B)の配合量が10質量部を超えても還元作用の面では問題はないが、コンクリート廃材からのCr溶出が少ない場合は、過剰な硫黄分によって溶出水がやや黄色を呈する可能性がある。また、材料(A)として、コンクリート廃材を破砕し、粗骨材部分を取り除いた後に回収される材料を用いる場合には、上記と同様の観点から、高炉徐冷スラグ(B)の配合量は、材料(A)のコンクリート廃材100質量部に対して5〜10質量部程度とすることが好ましい。
【0026】
図3は、コンクリート廃材(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上であるコンクリート廃材)100質量部に対する高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)の配合量を変えた再生砂について、6価クロムの溶出試験(JIS K0102)を行い、高炉徐冷スラグの配合量と6価クロムの溶出量との関係を調べた結果を示している。この溶出試験では、再生砂を蒸留水:再生砂=10:1の質量部割合で蒸留水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したろ液中の6価クロム量を測定した。図3によると、コンクリート廃材100質量部に対する高炉徐冷スラグの配合量が2.5質量部以上において、6価クロム溶出量が特に安定して低下していることが判る。
【0027】
また、コンクリート廃材を破砕し、粗骨材部分を取り除いた後に回収される材料(長径が10mm以下の割合が90質量%以上である材料)による再生砂について、上記と同様の試験を行った。すなわち、同材料100質量部に対する高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)の配合量を変えた再生砂について、6価クロムの溶出試験(JIS K0102)を行い、高炉徐冷スラグの配合量と6価クロム溶出量との関係を調べた。その結果を図4に示す。これによれば、高炉徐冷スラグの配合量が2.5質量部程度から効果が認められる一方で、配合量が比較的少ない領域ではバラツキが大きい傾向となった。これは、骨材回収時のセメントペースト分の量などが影響していると推定される。このような材料に対しては、高炉徐冷スラグの配合量が5質量部以上において、6価クロム溶出量が特に安定して低下していることが判る。
【0028】
本発明の再生砂又は土工材を製造するには、上述したようなコンクリート廃材を主体とする材料(但し、材料がコンクリート廃材のみからなる場合を含む。)を長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)とし、この材料(A)と長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合する。ここで、コンクリート廃材を主体とする材料(A)、高炉徐冷スラグ(B)については、さきに述べたとおりである。
この製造方法において、高炉徐冷スラグからチオ硫酸イオンを安定して浸出させるために、高炉徐冷スラグ(B)を、スラグ100質量部に対して水分を5〜15質量部含んだ状態で1週間以上保管した後、材料(A)と混合することが好ましい。
【0029】
図5に、添加条件を変えて高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)に水を添加し、その水分量(平均値)で1ヶ月保管した後の高炉徐冷スラグのチオ硫酸イオンの浸出量を調べた結果を示す。図5は初期チオ硫酸イオンの濃度(溶出量)に対する保管後の相対濃度(溶出量)を示しており、これによると、スラグの水分量によってチオ硫酸イオンの浸出量に差があり、特にスラグ100質量部に対する水分量が5〜15質量部の範囲において、初期チオ硫酸イオンの濃度(溶出量)よりも保管後の濃度(溶出量)が高くなり、最適であることが判る。
また、図6に、高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)に水を添加し(高炉徐冷スラグ100質量部に対する水分量10質量部)、その水分量(平均値)で保管期間を変えて保管した後の高炉徐冷スラグのチオ硫酸イオンの浸出量を調べた結果を示す。図6によると、1週間以上保管することにより、初期よりもチオ硫酸イオン濃度(溶出量)が増大していることが判る。
【0030】
高炉徐冷スラグに水を含ませるには、雨水、散水、水中への浸漬など適宜な方法を採ることができる。また、高炉徐冷スラグに水を含ませる時期などについても特別な制限はなく、高炉徐冷スラグを破砕した直後の段階、破砕してから1週間程度エージングした段階、或いは材料(A)に配合するまでの仮保管の段階など、適宜なタイミングで水を含ませることができる。
保管状態は特に限定するものではないが、大量の降雨などにさらされた場合には、高炉徐冷スラグから浸出するべきチオ硫酸イオンが流出してしまうため、そのようなことは防止することが望ましい。例えば、屋根の下で保管した上で水分量を維持したり、水分を付与した後に、シート養生等によって蒸発や降雨の影響を抑制する方法などがある。特段のシート養生をせずに、晴天が続いた場合には散水し、少雨の場合には散水せずに水分を制御する方法もある。但し、50mm以上のまとまった降雨がある場合には、内部水の流出が顕著なためシート等での養生を行うことが望ましい。
【0031】
また、高炉徐冷スラグ(B)の配合量をより適正化するには、事前にコンクリート廃材を主体とする材料(A)の6価クロム溶出量を測定し、その溶出量に応じて高炉徐冷スラグ(B)の配合割合を決定し、材料(A)と高炉徐冷スラグ(B)を混合することが好ましい。これにより、クロム溶出抑制のバラツキを少なくして6価クロムの溶出抑制をより適正に行うことができるとともに、高炉徐冷スラグ(B)の過剰な配合による黄水の発生等の問題を最小限に抑え、且つ再生砂等を経済的に生産することが可能となる。
【0032】
図2に示したように、高炉徐冷スラグからのチオ硫酸イオンの浸出量によって、還元される6価クロム量はほぼ推定され、さらに、1つの高炉から発生するスラグの品質は安定しているため、高炉徐冷スラグからのチオ硫酸イオンの浸出量も平均的な値を用いることで、実際の還元能力を決定することができる。これに対して上記の手法は、材料(A)の6価クロム溶出量を測定することで必要となるクロム還元量を算定し、そこから必要な高炉徐冷スラグ配合量を求めて、その量を添加するという方法である。
【0033】
本発明の再生砂又は土工材の製造方法において、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)と、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合するタイミングについては特に制限はない。したがって、例えば、(i)破砕した直後の材料(A)に高炉徐冷スラグ(B)を混合する、(ii)破砕した材料(A)を施工場所に運搬した後に高炉徐冷スラグ(B)を混合する、(iii)施工時に材料(A)に高炉徐冷スラグ(B)を混合する、などのいずれの形態でもよい。
なお、コンクリート廃材の破砕と高炉徐冷スラグの破砕とを同時に行う方法も考えられるが、その場合はコンクリートとスラグの硬さがやや異なるため、粗粒と細粒の分布が異なってしまい、再生砂のように比表面積が大きい材料を製造するためには適していない。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
コンクリート廃材を主体とする材料を粒径10mm以下に破砕して、ベースとなる材料A(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料)とした。この材料Aには、コンクリート廃材に付着していた建設発生土も一部混合し、全体の5質量%程度を占めた。また、使用する高炉徐冷スラグBについては、水:スラグ=10:1の質量部割合で水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したときのチオ硫酸イオンの浸出量を調べた。
材料Aに高炉徐冷スラグBを添加・混合して再生砂とし、この再生砂に対して6価クロムの溶出試験(JIS K0102)を実施した。この溶出試験では、再生砂を蒸留水:再生砂=10:1の質量部割合で蒸留水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したろ液中の6価クロム量を測定した。その結果を、高炉徐冷スラグBの粒度、チオ硫酸イオンの浸出量、材料Aに対する配合量とともに表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
[実施例2]
材料Aとして、コンクリート廃材を破砕し、粗骨材部分を取り除いた後に回収される材料(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料)を用いた。また、使用する高炉徐冷スラグBについては、実施例1と同様の方法でチオ硫酸イオンの浸出量を調べた。
材料Aに高炉徐冷スラグBを添加・混合して再生砂とし、この再生砂に対して、実施例1と同様の6価クロムの溶出試験(JIS K0102)を実施した。その結果を、高炉徐冷スラグBの粒度、チオ硫酸イオンの浸出量、材料Aに対する配合量とともに表2に示す。
【0037】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%のコンクリート廃材100質量部に対し、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%になるように破砕した高炉徐冷スラグ(b1)と、粒径25mm以下に破砕し、長径が10mm以下の粒子の割合が70質量%程度である高炉徐冷スラグ(b2)を、それぞれ3質量部混合した再生砂について、JIS K0102に準拠した6価クロムの溶出試験を行った結果を示すグラフ
【図2】コンクリート廃材(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上であるコンクリート廃材)に対して、チオ硫酸イオンの浸出量が異なる高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)を添加・混合した再生砂について、JIS K0102に準拠した6価クロムの溶出試験を行い、6価クロムの溶出値の低下量を調べた結果を示すグラフ
【図3】コンクリート廃材(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上であるコンクリート廃材)100質量部に対する高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)の配合量を変えた再生砂について、JIS K0102に準拠した6価クロムの溶出試験を行った結果を示すグラフ
【図4】コンクリート廃材を破砕し、粗骨材部分を取り除いた後に回収される材料(長径が10mm以下の割合が90質量%以上である材料)100質量部に対する高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)の配合量を変えた再生砂について、JIS K0102に準拠した6価クロムの溶出試験を行った結果を示すグラフ
【図5】添加条件を変えて高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)に水を添加し、その水分量(平均値)で1ヶ月保管した後の高炉徐冷スラグのチオ硫酸イオンの浸出量を調べた結果を示すグラフ
【図6】高炉徐冷スラグ(長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ)に一定量の水を添加し、その水分量(平均値)で保管期間を変えて保管した後の高炉徐冷スラグのチオ硫酸イオンの浸出量を調べた結果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート廃材を主体とする材料(但し、材料がコンクリート廃材のみからなる場合を含む。)であって、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)と、長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合したことを特徴とする再生砂又は土工材。
【請求項2】
材料(A)が建設発生土を含むことを特徴とする請求項1に記載の再生砂又は土工材。
【請求項3】
高炉徐冷スラグ(B)が、水:スラグ=10:1の質量部割合で水と混合し、200rpmで6時間振とう後、ろ過したときのチオ硫酸イオンの浸出量が30mg/L以上となる高炉徐冷スラグであることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生砂又は土工材。
【請求項4】
高炉徐冷スラグ(B)の配合量が、材料(A)のコンクリート廃材100質量部に対して2.5〜10質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再生砂又は土工材。
【請求項5】
材料(A)が、コンクリート廃材を破砕し、粗骨材部分を取り除いた後に回収される材料であり、高炉徐冷スラグ(B)の配合量が、材料(A)のコンクリート廃材100質量部に対して5〜10質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再生砂又は土工材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の再生砂又は土工材を製造する方法であって、
コンクリート廃材を主体とする材料(但し、材料がコンクリート廃材のみからなる場合を含む。)を長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である材料(A)とし、該材料(A)と長径が10mm以下の粒子の割合が90質量%以上である高炉徐冷スラグ(B)を混合することを特徴とする再生砂又は土工材の製造方法。
【請求項7】
高炉徐冷スラグ(B)を、スラグ100質量部に対して水分を5〜15質量部を含んだ状態で1週間以上保管した後、材料(A)と混合することを特徴とする請求項6に記載の再生砂又は土工材の製造方法。
【請求項8】
予め材料(A)の6価クロム溶出量を測定しておき、該6価クロム溶出量に応じて高炉徐冷スラグ(B)の配合割合を決定し、材料(A)と高炉徐冷スラグ(B)を混合することを特徴とする請求項6又は7に記載の再生砂又は土工材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12456(P2010−12456A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272734(P2008−272734)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【Fターム(参考)】