再生装置及び再生方法
【課題】隣接トラックからの干渉が発生した時の誤り率を改善する。
【解決手段】ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出し、前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定し、前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出し、前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う。
【解決手段】ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出し、前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定し、前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出し、前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク媒体から記録信号を再生する再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば磁気記録再生装置において、ディスク媒体への記録再生ヘッド(以下、ヘッドと呼ぶ)の接触や、ディスク媒体上の磁性体の欠損、およびヘッドの位置決め精度により、SNR(Signal to Noise Ratio)が大幅に低下し、記録データがバースト的に誤り(バースト誤り)、再生が不可能になるという問題点がある。
【0003】
これらのバースト誤り(バーストエラー)のうち、ディスク媒体へヘッドが接触することにより発生するバースト誤りは、通常の再生時と比べて、ヘッドのディスク媒体への接触した時に再生信号に大きな直流成分が乗るという特徴を有する。この特徴を利用し、従来の磁気記録再生装置では、ヘッドによってディスク媒体から読み取られた信号をA/D(Analog to Digital)変換した後、A/D変換後の信号の直流成分を検出することで、該バースト誤りの発生位置を検出していた。その結果、ある程度のバースト誤りに対して誤り訂正処理を用いた補償が可能である。
【0004】
従来の磁気記録再生装置は、ヘッドでディスク媒体(磁気記録媒体)から読み出されたアナログの再生信号が、A/D変換部に入力されて、デジタル信号に変換される。この時、ヘッドがディスク媒体に接触し大きな直流成分が信号に乗ることによって、A/D変換後のサンプル値に対してヘッドから出力されたアナログ信号がA/D変換部への最大入力値を超えるような場合、A/D変換後のデジタル出力は、A/D変換部の最大出力値で飽和し、再生波形が消失する。
【0005】
バースト検出部は、A/D変換部から出力されるデジタル化された再生信号の波形が、A/D変換部に予め定められている最大出力値で飽和しているかどうかを検出する。バースト検出部が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出する。
【0006】
該バースト干渉によって消失したA/D変換後の再生波形はFIR(Finite Impulse Response)等化部に入力され、FIR等化部は、任意のPR(Partial Response)ターゲット(例えばPR(1,2,2,2,1)などのPRターゲット)へ等化する。さらに、該PRターゲットの状態遷移を有するビタビ等化部が再度等化処理を行なうことで、「0」と「1」とに硬判定された、バースト誤りを被った状態での再生データを得る。ビタビ等化部では、PRターゲットへ等化された再生信号と、PRターゲットによって定義される信号点との距離を、尤度情報として用いてビタビ等化を行ない、「0」と「1」とに硬判定された再生データを得る。
【0007】
誤り訂正復号部は、ビタビ等化部から得られたバースト誤りを含む硬判定データと、バースト位置検出部で再生信号から検出されたバースト位置情報を用いて、誤り訂正復号処理を行う。
【0008】
誤り訂正復号部は、ビタビ等化によって得られた硬判定データに対して、更に、復号時に硬判定データを必要とするRS(Reed-Solomon)符号などの誤り訂正符号を用いることで、ビタビ等化後のデータに含まれる誤りを訂正し、ユーザデータを得る。
【0009】
以上の処理動作により、ヘッドがディスク媒体に接触することにより生ずるバースト誤り/消失が再生信号に含まれている場合においても、再生データ中の誤りを訂正することができる。しかしながら、上記のバースト位置検出方法によっては、隣接トラックからの干渉を検出し、適切に処理することができない。
【0010】
隣接したデータトラックを有するディスク媒体からその記録データを再生する磁気記録再生装置の場合、ヘッドの位置ずれにより、隣接トラックに対する記録信号が、目的トラック上の記録信号へ上書きされるとき、あるいは、再生時に隣接トラックへヘッド位置がずれることにより、目的トラックの信号と隣接トラックの信号が同時に再生されるときには、隣接トラックの信号が、目的トラックを再生した信号に対してバースト的な干渉雑音となるが、上述のように直流成分は発生しない。従って、A/D変換後の信号に際だった特徴がなく、バースト誤り位置を検出できないため、再生時の誤り率特性を大きく劣化させる。
【0011】
このとき、誤り訂正復号の際に尤度情報を用いる誤り訂正符号を用いた場合には、再生データ中の隣接トラックからのバースト干渉を受けた部分の尤度情報の信頼性が著しく低いものとなってしまう。このため、本来の誤り訂正符号の訂正能力が発揮できなくなり、誤り訂正後の再生データの誤り率が不必要に劣化するという問題点がある。
【0012】
特許文献1には、ディスク媒体へヘッドが接触することにより発生したバースト誤りに対する復号化機能を向上するための技術が開示されている。しかし、特許文献1で開示されている技術では、隣接トラックからのバースト干渉に対しては考慮されていない。特許文献1では、隣接トラックからの干渉発生時の誤り率を向上することはできない。
【特許文献1】特開2005−166089
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の磁気記録再生装置では、ヘッドの位置ずれによる、隣接トラックからの干渉雑音を検出することが不可能なため、再生データ中の干渉を受けた部分における尤度情報を正確に計算することができない。そのため、誤り訂正復号時に尤度情報を用いる誤り訂正符号を用いた場合には、干渉部分の信頼性の低い尤度情報に影響され、十分な誤り訂正能力を発揮することができないという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、隣接トラックからの干渉が発生した時の誤り率特性を改善することができる再生装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の再生装置は、(a)ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出し、(b)前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定し、(c)前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出し、(d)前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う。
【発明の効果】
【0016】
隣接トラックからの干渉が発生した時の誤り率を改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態では、誤り訂正符号として、復号時に、再生データの「0」と「1」に対する軟判定尤度情報が必要であるターボ符号やLDPC(Low Density Parity Check)符号を用いる。また、従来のビタビ等化アルゴリズムの代わりに、該軟判定尤度情報を出力する、上記ビタビ等化と等価であるMax−Log−MAPアルゴリズムやSOVA(Soft-Output Viterbi Algorithm)などを用いることで、ビタビ等化後に、ターボ符号やLDPC符号に対する誤り訂正復号を行う。
【0019】
一般的に、RS符号などより、軟判定尤度情報を用いるターボ符号やLDPC符号の方が通常時の誤り率特性は優れており、高密度記録などデータ誤りの多く発生する記録環境で有効である。
【0020】
しかしながら、軟判定尤度情報を得ることができるMax−log−MAPアルゴリズムやSOVAを用いた場合、PRターゲットへ等化された信号点における雑音電力値をアルゴリズム中で用いる必要がある。そのため、実際とは異なった雑音電力値をアルゴリズム中で用いた場合、得られる軟判定尤度情報は信頼性が低く、大きな特性劣化につながる。
【0021】
従来の再生装置では、通常時のPRターゲットへの等化後の再生信号点における雑音電力を、あらかじめトレーニングを行なうことで既知のものとして利用することができる。
【0022】
しかしながら、隣接トラックからの干渉のような、突発的な干渉雑音に対しては、トレーニングをすることが不可能なため、干渉部分の雑音電力値を正確にアルゴリズム中で設定することができない。
【0023】
このため、従来方式では隣接トラックからの干渉が入った部分の雑音電力は、トレーニング時のものと大きく異なるため、Max−Log−MAPアルゴリズムのような雑音電力値を必要とするアルゴリズムを用いた場合、干渉を被った部分の軟判定尤度情報は大きく信頼性を失い、誤り率特性を劣化させる。
【0024】
さらに、この信頼性の低い軟判定尤度情報を用いて、ターボ符号やLDPC符号に対する復号処理を行なったとしても、本来の誤り訂正能力を発揮できず、誤り率特性を劣化させてしまう。
【0025】
そこで、以下の実施形態に係る磁気記録装置では、このように突発的に発生する隣接トラックからの干渉による雑音電力を逐次推定し、干渉部分の雑音電力値を適切にMax−Log−MAPアルゴリズムなどへ逐次適用することで、干渉部分の軟判定尤度情報の信頼性を維持することが可能となる。
【0026】
図1は、隣接トラックからの干渉が発生するメカニズムについて説明するための図である。
【0027】
ヘッド201が何らかの外因によって、ディスク媒体上の目的トラック302の軌跡から位置ずれを起こして、ディスク媒体から再生信号を得た場合、該再生信号は、目的トラック302から得られる信号と、隣接トラック303から得られる信号とを合成したものとなる。
【0028】
ヘッド201の隣接トラックへのずれの度合い、すなわち、トラック幅を「1」に正規化し、隣接トラックへのヘッド201の位置ずれのトラック幅に対する割合を、W(時刻tにおけるずれの度合い)とした時、A/D変換され、さらにFIR等化された後の、時刻tにおける再生信号s(t)は次式(1)のように表すことができる。
【0029】
s(t)=(1−W)son(t)+WsITI(t) …(1)
ここで、son(t)は目的トラックから得られる再生信号であり、sITI(t)は隣接トラックから得られる再生信号である。s(t)は、隣接トラックからの干渉を受けたFIR等化後の再生信号である。
【0030】
このような再生信号が得られた場合、上述のヘッド201が記録媒体へ接触するわけではないため、得られる再生信号がA/D変換によって波形が飽和するようなことはない。そのため、A/D変換後の再生信号の波形の飽和による消失を検出していたとしても、従来の再生装置の構成では、隣接トラックからの干渉を検出することはできない。
【0031】
FIR等化された再生信号を用いて、尤度値(メトリック値)を計算し、ビタビ等化を行なう場合、ビタビ等化で用いるメトリック値λは、一般的に次式(2)で与えられる。
【数1】
【0032】
ここで、rはFIR等化後の再生信号のサンプル点(再生信号の時刻tにおける信号点)であり、sは用いたPRターゲットで定義される基準信号点であり、σ2は再生信号に含まれる雑音の分散である。式(2)で計算されるλは、再生信号のサンプル点rの、PRターゲットにおける各基準信号点sに対する確からしさ(尤度)である。
【0033】
通常、再生信号のサンプル点における雑音分散(雑音電力)は、事前にトレーニングシーケンスを用いて測定しておく。隣接トラックからの干渉がない場合には、あらかじめ測定されている雑音分散値σ2を用いる。
【0034】
しかしながら隣接トラックからの干渉が含まれる場合には、通常の雑音分散に加えて、隣接トラックからの再生信号による干渉成分σ2ITIが加えられるため、FIR等化後の雑音分散値はσ2+σ2ITIとならなければならない。σ2ITIの値を得ることができない場合、隣接トラックからの干渉を被った部分のメトリックは不正確なものとなり、誤り率特性を劣化させる要因となる。
【0035】
Max−Log−MAPアルゴリズムやSOVAなどにより得られる、再生信号のサンプル点rに最も確からしいビット(「0」「1」)を求めるための再生信号のサンプル点rの軟判定尤度値Λは、
【数2】
【0036】
と与えられる。ここで、λ(1)は、PRターゲットにおける複数の信号点(基準信号点)のうち、「1」となる(PRターゲットにより定義される)状態遷移パスに対し式(2)により計算されるメトリックである。また、λ(0)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「0」になる状態遷移パスに対し式(2)により計算されるメトリックである。αj、βj(j=0、1)は、Max−Log−MAPアルゴリズムにより求められる,「0」「1」となる状態遷移確率値であり、着目するビットが、PRターゲットにおける「0」もしくは「1」となる信号点に繋がる、前方および後方累積状態遷移確率である。
【0037】
式(2)及び(3)から、誤った雑音分散値を用いて計算される軟判定尤度値は信頼性が低いことがわかる。
【0038】
このように隣接トラックからの干渉を被った場合に、適切な雑音分散を設定しないと、得られる軟判定尤度情報Λの信頼性が低下するため、特に軟判定尤度情報を復号時に必要とするターボ符号やLDPC符号を誤り訂正符号に用いた場合に特性劣化に繋がることとなる。
【0039】
このような問題点を踏まえて、式(2)及び式(3)の尤度の計算に、隣接トラックからの干渉による雑音分散値を加味することを考える。
【0040】
今、隣接トラックからの干渉のない通常の再生信号son(t)の分散をδon2とする。この分散値については、隣接するトラックにおいても統計的性質は同じものである。
【0041】
この時、1に正規化されたトラック幅に対して、ヘッドが目的トラックの軌跡よりWだけずれて再生信号を得た場合には、得られる目的トラックの再生信号の分散値は、
(1−W)δon2 …(4)
となり、同時に隣接トラックから得られる再生信号の分散は、
W2δon2 …(5)
となる。
【0042】
ここで、最終的に得られる、これら両方の信号が合成された再生信号の分散は、
【数3】
【0043】
となる。
【0044】
再生信号の分散値δB2は、別途、隣接トラックからの干渉を含む再生されたFIR等化後の信号から逐次求める必要がある。
【0045】
上述の関係式より、トラック幅に対するヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合いWを求めることで、隣接トラックからの干渉による雑音の分散値と、目的トラックからのヘッドがずれたことによる目的トラックからの再生信号の減衰分を求めることが可能となる。
【0046】
ヘッドの隣接トラックへのずれの度合いWは、式(6)を変形することにより、次式(7)で表すことができる。
【数4】
【0047】
そこで、二次方程式の解の公式を用いることで、式(7)から、Wについて解くと、
【数5】
【0048】
という2つの解が得られる。一方の解が目的トラックから見たヘッドのずれの割合、もう一方が隣接トラックから見たヘッドのずれの割合となる。
【0049】
このように、隣接トラックからの干渉成分を含んだFIR等化後の再生信号の分散値
δB2を求め、式(8)を用いて、得られた分散値δB2と、トレーニングによってあらかじめ求めた隣接トラックからの干渉のない場合の再生信号の分散値δon2とから、ヘッドのずれの度合いWを求める。
【0050】
次に、得られたヘッドのずれの度合いWと、再生信号の分散値δon2とから、隣接トラックからの干渉による雑音分散値(雑音電力)σ2ITIを次式(9)を用いて求めることができる。
【0051】
σ2ITI=W2δon2 …(9)
さらに、隣接トラックへヘッドがずれたことによる目的トラックの再生信号の振幅減衰分は、(1−W)となる。
【0052】
これら、隣接トラックからの干渉による雑音の分散と、目的トラックにおける信号減衰分を加味することで、式(2)のメトリック値λは、次式(10)に示すように書き換えることができる。すなわち、式(2)のsを、(1−W)sに置き換え、σ2をσ2+σ2ITIに置き換えることにより、隣接トラックからの干渉を考慮した場合のビタビ等化で用いるメトリック値λGが得られる。
【数6】
【0053】
次に、以上の原理を踏まえて、第1の実施形態に係る再生装置について説明する。
【0054】
図2は、隣接トラックからの干渉を検出するための、再生信号の分散を逐次求める再生装置の構成例を示したものである。
【0055】
図2の再生装置では、記録再生ヘッド(以下簡単にヘッドと呼ぶ)301によりディスク媒体(磁気記録媒体)から読み出されたアナログの再生信号は、A/D変換部1によりデジタル信号に変換された後、FIR等化部2によって、任意のPRターゲット信号となるように等化される。
【0056】
次に、図2の再生装置では、積算部3が、FIR等化後の再生信号に対して、サンプル値の自乗値を求め、さらに、M(Mは、2以上の正の整数)タップの移動平均フィルタ4が、Mタップ分のサンプル値から得られる自乗後の再生信号の平均値を求めることにより、再生信号の分散値、すなわち、式(6)の分散値δB2を求める。
【0057】
なお、ここでは、再生信号そのものの移動平均が0となるので、再生信号の二乗の移動平均を求めることにより、該再生信号の分散を算出している。
【0058】
隣接トラック干渉検出部5は、式(8)を用いて、得られた分散値δB2と、トレーニングによってあらかじめ求めた隣接トラックからの干渉のない場合の再生信号の分散値δon2とから、ヘッド301のずれの度合いWを求める。さらに、隣接トラック干渉検出部5は、式(9)と、得られたヘッドのずれの度合いWと、予め与えられている再生信号の分散値δon2とを用いて、隣接トラックからの干渉による雑音分散値W2δon2=σ2ITIを求める。得られたW及びσ2ITIはビタビ等化部7へ出力される。
【0059】
なお、隣接トラック干渉検出部5には、トレーニングによってあらかじめ求めた隣接トラックからの干渉のない場合の再生信号の分散値δon2が記憶されている。
【0060】
FIR等化部2からの出力は、上記積算部3に入力されるとともに、遅延バッファ6にも入力される。遅延バッファは、FIR等化後の再生信号に対し、隣接トラック干渉検出部5で、ヘッドのずれの度合いWと隣接トラックからの干渉による雑音分散値σ2ITIを求めるまでの時間、該再生信号を遅延させて、ビタビ等化部7へ入力する。
【0061】
ビタビ等化部7は、入力された再生信号に対し、ビタビ復号、あるいはMax−Log−MAPアルゴリズム、あるいはSOVAを適用する。すなわち、ビタビ等化部7は、式(10)、ヘッド301のずれの度合いW、及び予め与えられた再生信号の分散値δon2を用いて、FIR等化後の再生信号rと、PRターゲットにおける各信号点sとの間のメトリックλGを計算する。さらに、PRターゲットにおける各信号点に対し求めたメトリックλGと、式(3)とを用いて、軟判定尤度値Λを計算する。
【0062】
ここで、λ(1)はλG(1)に置き換え、λ(0)はλG(0)に置き換えて、式(3)を適用する。この場合、λG(1)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「1」となる状態遷移パスに対し、式(10)により計算されたメトリックであり、λG(0)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「0」となる状態遷移パスに対し、式(10)により計算されたメトリックである。すなわち、ビタビ等化部7は、次式(11)を用いて、軟判定尤度値Λを算出する。
【数7】
【0063】
ビタビ等化部7は、得られた軟判定尤度値Λを誤り訂正復号部8へ出力する。このようにして、ビタビ等化部7から、再生データの各ビット(「0」、「1」)に対し、隣接トラックからの干渉雑音の考慮された、高い信頼性を有する軟判定尤度値Λが得られた。
【0064】
誤り訂正復号部8は、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ビタビ等化部7から得られた軟判定尤度値Λを用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行い、再生データ(ユーザデータ)を得る。
【0065】
以上説明したように、上記第1の実施形態によれば、ディスク媒体から読み出された信号(等化後の信号)の分散δB2から、ヘッドの隣接トラックへのずれの度合いW及び隣接トラックからの干渉電力σ2ITIを推定し、ずれの度合い及び隣接トラックからの干渉電力を加味した式(11)に示すような軟判定尤度Λを計算することにより、再生データ中の隣接トラックからの干渉を受けた部分の軟判定尤度情報の信頼性が向上する。そして、この軟判定尤度Λを用いて誤り訂正復号を行って、再生データ(ユーザデータ)を得ることにより、隣接トラックからの干渉発生時の誤り率特性を改善することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
一般的に、連続した磁気記録媒体を用いた磁気記録システムでは、磁気記録媒体の磁化反転特性や、前回に記録された磁気記録パターンによって発生するジッター性の雑音と、その他の電気的な回路で発生する熱雑音による雑音とが、再生信号中に含まれている。このジッター性雑音と熱雑音は、常時再生信号中に含まれるものである。
【0067】
また、これらの雑音の特徴として、ジッター性雑音は書き込まれるデータ系列に依存した雑音成分が発生し、書き込まれた前後の再生信号間で強い相関を持ち、しかも、再生信号と同様の周波数特性を持っている。
【0068】
一方熱雑音は、書き込み系列および前後の信号間で無相関な雑音成分を持っており、再生信号とは無相関に全周波数帯で一様な周波数特性を有している。
【0069】
この時、隣接トラックへのヘッドのずれにより、目的トラックから得られた再生信号の振幅が(1−W)だけ減少した場合、熱雑音は再生信号に無相関なため、雑音分散は変化しないが、ジッター性雑音は、目的とする再生信号の減少分にあわせて減少する。
【0070】
この時のジッター性雑音の減少量は、(1−W)の振幅の信号減衰に対して、目的トラックの電力の減衰と同様に(1−W)2だけ減少し、
【数8】
【0071】
しかしながら、トレーニングにより求めることのできる雑音電力σ2は、ジッター性および熱雑音の両方を含む電力である。
【0072】
この雑音電力のうちのジッター性雑音と、熱雑音との割合(「ジッター性雑音」対「熱雑音」)が「ε:1−ε」と定義される場合には、事前に測定された全雑音電力σ2のうち、
【数9】
【0073】
なお、εは予め測定されて、再生装置に与えられている値である。
【0074】
今、バースト干渉による目的信号の電力減衰が(1−W)2となる場合、上述の議論から、バースト干渉部分の全雑音電力σ2+σ2ITIは、上記ジッター性雑音及び熱雑音と、式(9)に示した、隣接トラックからの干渉による雑音分散値σ2ITIとを用いて、
【数10】
【0075】
となる。
【0076】
このように、再生信号中の雑音配分を考慮した場合のバースト干渉時のビタビ等化で用いられるメトリック値λGは、式(10)と式(12)とから、次式(13)に示すようになる。
【数11】
【0077】
式(13)により計算されるメトリック値λGは、ジッター性雑音、熱雑音およびバースト干渉の雑音分散を考慮した高信頼性のメトリック値である。特にMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いたときに、バースト干渉部分の軟判定尤度値の信頼性が、バースト干渉に応じたものであるから、該軟判定尤度値が必要なターボ符号やLDPC符号の利用に適し、誤り訂正符号の訂正能力を十分に発揮させることが可能となる。
【0078】
上述のビタビ等化に対して、更にジッター雑音に対する雑音特性を考慮した等化アルゴリズムとして、AR(Auto-Regressive)モデルがある。
【0079】
ARモデルでは、ジッター性雑音の書き込みデータパターンに依存した時間的な相関特性をメトリック値に利用することで、時間軸上でのジッター性雑音の抑圧を行ない、誤り率特性を向上することができる。
【0080】
ビタビ等化と同様に、通常のARモデルで用いるメトリック値は次式で表される。
【数12】
【0081】
ここで、μt-1…μt-Nは、現時刻tから1〜Nサンプル前までの雑音相関係数である。この雑音相関係数は、雑音分散を求めるトレーニングと同様に、バースト干渉のない状況で、時間方向の雑音の相関値を用いて求められるものである。また、この雑音相関は、利用するPRターゲットおよび、ディスク媒体への書き込みビット列に強く依存するものである。
【0082】
今、上述と同様にバースト干渉が発生した場合のARモデルにおけるメトリックの導出を考える。
【0083】
バースト干渉が発生した部分の雑音は、目的トラック上では無相関な雑音として扱うことができ、上記のARモデルで用いる雑音相関は、バースト干渉においては、トレーニング時と大きく異なるものとなり、直接用いることができない。
【0084】
この時、雑音の成分が完全にバースト干渉のみとなる場合は、時間方向の雑音間の相関係数は「0」に近づく。
【0085】
ヘッドが正規化されたトラック幅に対してWだけずれた場合、雑音の全電力はビタビ等化同様に、
【数13】
【0086】
となる。
【0087】
時間方向に相関のある雑音成分は、全雑音電力のうちバースト干渉成分以外の項に対しては、相関が保持されている。
【0088】
この時、ARモデルで用いる雑音相関係数は、バースト干渉と通常の雑音の電力割合から、(相関を有する雑音/全雑音電力)分だけ相関係数が減少することとなる。
【0089】
雑音相関係数は雑音の振幅値に対して求められているので、式(15)の全雑音電力と、式(15)の全雑音電力のうち、バースト干渉成分以外の雑音成分との電力比から、時刻t−nにおける雑音相関関数の減少分ρt-nは、次式(16)から計算することができる。
【数14】
【0090】
ここで、Wt-nは時刻t−nにおける、隣接トラックからの干渉度合い(ヘッドのずれの度合い)である。なお、nは、1以上N以下の正の整数である。また、前述同様、σ2は予め測定された再生信号に含まれる雑音分散値(雑音電力)であり、ε、ε−1は、雑音電力σ2のうち、予め測定されたジッター性雑音と熱雑音との割合である。
【0091】
これらを踏まえ、ARモデルの時刻tにおける雑音の全電力は、式(15)から、次式(17)に示すように表されるから、式(14)に示した、バースト干渉を伴った場合のARモデルの時刻tにおけるメトリック値は次式(18)のように書き換えることができる。
【数15】
【0092】
このメトリック値を用いて、ビタビ等化に代えてARモデルを用いた等化を行なうことで、書き込みパターンに依存する雑音も考慮した等化を行なうことが可能となり、バースト干渉部分の軟判定尤度値の信頼性を上げることができる。
【0093】
尚、ARモデルを用いてもビタビ等化同様に、軟判定尤度値を得るための手法として、Max−Log−MAPアルゴリズムや、SOVAが用いられる。
【0094】
また、ここまで述べてきた内容については、ヘッドが隣接トラックへずれ込むことによる、隣接トラックからの干渉を主としてきたが、記録ヘッドが、隣接トラックにずれ込むことで、目的トラックの記録データを部分的に上書きすることによっても、これまでと同様の議論となることに注意が必要である。
【0095】
図3は、上述のARモデルを適用した再生装置の構成例を示したものである。なお、図3において、図2と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。
【0096】
図3の再生装置において、図2と同様に、積算部3が、FIR等化後の再生信号から、サンプル値の自乗値を求め、Mタップの移動平均フィルタ4が、部分的な再生信号の分散値δB2を算出する。隣接トラック間干渉検出部5が、得られた再生信号の分散値δB2から、式(8)を用いて、時刻tにおける隣接トラックからの干渉度合い(ヘッドのずれの度合い)Wtを求める。さらに、隣接トラック間干渉検出部5が、式(9)と、得られたヘッドのずれの度合いWtと、予め与えられている再生信号の分散値δon2とを用いて、時刻tにおける隣接トラックからの干渉による雑音分散値Wtδon2を求める。
【0097】
図3の再生装置では、得られた時刻tにおける干渉度合いWt、隣接トラックからの干渉による雑音分散値Wtδon2が、ARモデル等化部11及び減少係数算出部12に出力される。
【0098】
雑音相関テーブル13には、予め測定された現時刻tから1〜Nサンプル前までの雑音相関係数μt-1…μt-Nが記憶されている。
【0099】
減少係数算出部12は、式(16)、現時刻より前に隣接トラック干渉検出部5から得られた干渉度合いWt-1…Wt-N、隣接トラックからの干渉による雑音分散値
Wt-1δon2…Wt-Nδon2、予め与えられている雑音分散値σ2、雑音分散値σ2のうちのジッター性雑音の割合εを用いて、ARモデル等化部11で考慮する再生信号の現在時刻よりも前のサンプル点におけるバースト干渉による雑音相関値のN個の減少係数ρt-n(nは、1≦n≦N)をそれぞれ算出する。得られたN個の減少係数は、積算部14で、雑音相関テーブル13に記憶されている相関係数μt-n(nは、1≦n≦N)と乗算される。その結果得られる、減少関数と相関係数との積ρt-1μt-1、…ρt-nμt-n、ρt-Nμt-Nは、ARモデル等化部11に入力され、雑音相関値として利用される。
【0100】
ARモデル等化部11は、式(18)を用いて、積算部14で算出された、減少関数と相関係数との積ρt-1μt-1、…ρt-nμt-n、ρt-Nμt-N、隣接トラック間干渉検出部5から出力された、時刻t−N、…t−1、tのそれぞれにおける干渉度合いWt-N、…Wt-1、Wt、時刻tにおける隣接トラックからの干渉による雑音分散値Wtδon2を用いて、時刻tにおける、FIR等化後の再生信号rと、PRターゲットにおける各信号点sとの間のメトリックλARを計算する。ここで、雑音分散値σ2、雑音分散値σ2のうちのジッター性雑音の割合εは、ARモデル等化部11に、予め与えられている(記憶されている)値である。
【0101】
さらに、PRターゲットにおける各信号点に対し求めたメトリックλARと、式(3)とを用いて、軟判定尤度値Λを計算する。
【0102】
ここで、λ(1)はλAR(1)に置き換え、λ(0)はλAR(0)に置き換えて、式(3)を適用する。この場合、λAR(1)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「1」となる信号点に対し、式(18)により計算されたメトリックであり、λAR(0)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「0」となる信号点に対し、式(18)により計算されたメトリックである。すなわち、ARモデル等化部11は、次式(19)を用いて、軟判定尤度値Λを算出する。
【数16】
【0103】
ARモデル等化部11は、得られた再生データと、上記軟判定尤度値Λを誤り訂正復号部8へ出力する。
【0104】
誤り訂正復号部8は、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ARモデル等化部11から得られた上記軟判定尤度値Λを用いて、誤り訂正復号(硬判定を含む)を行い、ユーザデータを得る。
【0105】
図4は、上述のARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号前の再生データのビット誤り率(BER)特性を示したものである。図4では、比較のために、従来のビタビ等化を行った場合の誤り訂正復号前の再生データのBER特性502と、理想の誤り率特性503も示している。ここでは、隣接トラックからの干渉の長さが1000ビット、ヘッドの隣接トラックへのずれの度合いWが「0.2」、移動平均フィルタのタップ長が「100」、という条件の下で測定されたBER特性を示している。
【0106】
図4に示した、ARモデルによる等化を行った場合のBER特性501は、ARモデル等化部11でのARモデルによる等化でMax−Log−MAPアルゴリズムを用いたときの等化直後の(ARモデル等化部11から出力された誤り訂正する前の)信号のBER特性である。
【0107】
図4から、従来の隣接トラックからの干渉を加味せずにビタビ等化を行った場合のBER特性502に比べ、ARモデルによる等化を行った場合のBER特性501は、誤り率特性が改善されていることがわかる。
【0108】
図5は、ARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号後の再生データのビット誤り率(BER)特性を示した図である。図5では、図4で用いた条件に、さらに誤り訂正符号にLDPC符号を用いたときの、上記3つの場合における再生データのBER特性を示したものである。
【0109】
従来の隣接トラックからの干渉を加味せずにビタビ等化を行った後に誤り訂正復号を行った場合のBER特性602が示すように、従来のビタビ等化では、隣接トラックからの雑音分散が干渉して、尤度情報の信頼性が低下し、該尤度情報が必要とされるLDPC符号を用いても、誤りを訂正することができない。
【0110】
しかしながら、第2の実施形態に係るARモデルによる等化を行った後に誤り訂正復号を行った場合のBER特性601が示すように、ARモデルによる等化を行った場合、干渉部分の軟判定尤度情報Λの信頼性が向上し、LDPC符号の本来の誤り訂正能力を発揮することができている。
【0111】
このように第1の実施形態によれば、隣接するトラック間の干渉成分を求めて、該干渉成分を加味した軟判定尤度Λを計算し、該軟判定尤度Λを用いて、LDPC符号等の誤り訂正復号を行うことにより、隣接トラックからの干渉がある場合の誤り率を大幅に改善することができる。
【0112】
(第3の実施形態)
次に、隣接トラックから大きな干渉がある場合には、再生データ中の該干渉の検出された部分が消失したものとして扱う機能を備えた、再生装置について説明する。
【0113】
図6は、第3の実施形態に係る再生装置の構成例を示したものである。なお、図6では、図3の再生装置と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。すなわち、図6では、消失位置検出部21が追加されている。
【0114】
隣接トラックへのヘッドのずれの度合いWが、正規化されたトラック幅に対して、ある値以上になると(再生装置により異なるが、例えば、W=0.3 or 0.5)、目的トラックの再生信号の信号電力より隣接トラックから信号電力のほうが大きくなる。この場合、FIR等化後の再生信号上では、見かけ上SNR(Signal to Noise Rate)が0dB以下となり、現実的に誤りを訂正することはできない。すなわち、トラック幅に対し予め与えられた閾値以上のヘッドのずれが発生した場合には、その部分の情報は消失したものとしても構わない。
【0115】
このように隣接トラックからの多大な干渉を扱った場合には、従来の再生装置のように、ヘッドが磁気記録面に接触した場合に起こるバースト消失を検出し、誤り訂正符号の復号時に消失の訂正を行なうような構成により対処できる。
【0116】
図6の消失位置検出部21は、隣接トラックからの干渉による、情報消失の検出機能を有する。
【0117】
図6の再生装置では、図3と同様に、ヘッド301でディスク媒体から読み出されたアナログの再生信号をA/D変換部1でデジタル信号に変換した後、FIR等化部2によって、所望のPRターゲットへ等化する。そして、積算部3がFIR等化後の再生信号のサンプル値の自乗値を求めた後、Mタップの移動平均フィルタ4により該再生信号の分散値が算出される。隣接トラック干渉検出部5は、得られた再生信号の分散値δB2などから、時刻tにおける隣接トラックからの干渉の度合い、すなわち、ヘッドのずれの度合いWt、隣接トラックからの干渉による雑音分散Wtδon2を求め、これらをARモデル等化部11、減少係数算出部12へ出力する。図6の再生装置の隣接トラック干渉検出部5では、ヘッドのずれの度合いWtを、さらに消失位置検出部21にも出力する。
【0118】
消失位置検出部21は、ヘッドのずれの度合いの値が、予め与えられた閾値Wth以上である場合には、記録情報が消失されたと決定し、当該記録情報の消失された位置(消失位置)を示す消失位置情報を生成する。
【0119】
一方、図6の再生装置では、図3と同様に、ARモデル等化部11が、隣接トラックからの干渉による雑音分散を考慮したメトリック値を用いたMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いて、ARモデルに従ったビタビ等化を行い、誤り訂正復号部8に軟判定尤度値Λを出力する。
【0120】
図6の誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、得られた軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、消失位置検出部21から出力された消失位置情報により指定されている消失位置では、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0121】
このように、極度に大きな隣接トラックからの干渉が発生した結果、記録情報が消失する場合に、記録情報が消失した部分に対しては、誤り訂正復号の代わりに消失訂正用の復号アルゴリズムを用いることにより、誤り率特性の劣化を抑えることが可能となる。
【0122】
なお、図6では、図3の再生装置に対し、消失位置検出部21を追加した構成を示したが、この場合に限らず、図7に示したように、図2の再生装置に、消失位置検出部21を追加した構成の場合も上述同様の効果が得られる。
【0123】
すなわち、図7の再生装置では、図2と同様に、ヘッド301でディスク媒体から読み出されたアナログの再生信号をA/D変換部1でデジタル信号に変換した後、FIR等化部2によって、所望のPRターゲットへ等化する。そして、積算部3がFIR等化後の再生信号のサンプル値の自乗値を求めた後、Mタップの移動平均フィルタ4により該再生信号の分散値δB2が算出される。隣接トラック干渉検出部5は、得られた再生信号の分散値などから隣接トラックからの干渉の度合い、すなわち、ヘッドのずれの度合いWを求めるとともに、隣接トラックからの干渉による雑音分散値σ2ITIを求める。得られたヘッドのずれの度合い及び雑音分散値は、ビタビ等化部7へ出力される。図7の再生装置の隣接トラック干渉検出部5では、ヘッドのずれの度合いWを、さらに消失位置検出部21にも出力する。消失位置検出部21は、ヘッドのずれの度合いWの値が閾値Wth以上である、記録情報の消失された位置(消失位置)を示す消失位置情報を生成し、誤り訂正復号部8へ出力する。
【0124】
図7の再生装置では、図2と同様に、ビタビ等化部7が、隣接トラックからの干渉による雑音分散を考慮したメトリック値を用いたMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いてタビ等化を行い、誤り訂正復号部8に軟判定尤度Λを出力する。誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、軟判定尤度を用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、消失位置検出部21から出力された消失位置情報により指定されている消失位置では、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0125】
(第4の実施形態)
次に、ディスク媒体にヘッドが接触することで発生するバースト消失にも対処できる再生装置について説明する。
【0126】
図8は、第4の実施形態に係る再生装置の構成例を示したものである。なお、図8では、図6の再生装置と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。すなわち、図8では、バースト検出部31とバースト位置検出部32がさらに追加されている。
【0127】
バースト検出部31及びバースト位置検出部32は、従来の再生装置におけるバースト検出部及びバースト位置検出部と同じ機能を有する。すなわち、バースト検出部31は、デジタル化された再生信号の波形がA/D変換部1に予め定められている最大出力値で飽和しているかどうかを検出する。バースト検出部31が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部32は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出し、該誤り発生位置を示す第1の消失位置情報を誤り訂正復号部8へ出力する。
【0128】
一方、第3の実施形態と同様、消失位置判定部21において、ヘッドのずれの度合いが閾値Wth以上である、記録情報の消失された位置(消失位置)を示す第2の消失位置情報が生成され、誤り訂正復号部8へ出力される。
【0129】
誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ARモデル等化部11から出力された軟判定尤度を用いて、誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、消失位置検出部21から出力された第2の消失位置情報により指定されている消失位置と、バースト位置検出部32から出力された第1の消失位置情報により指定されている誤り発生位置とについては、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0130】
このように、極度に大きな隣接トラックからの干渉が発生した結果、記録情報が消失する場合、及びディスク媒体にヘッドが接触することで記録情報が消失する場合に、再生データ中の記録情報が消失した部分に対しては、誤り訂正復号の代わりに消失訂正用の復号アルゴリズムを用いることにより、誤り率特性の劣化を抑えることが可能となる。
【0131】
なお、図8では、図6の再生装置に対し、バースト検出部31及びバースト位置検出部32を追加した構成を示したが、この場合に限らず、図9に示したように、図2の再生装置に、バースト検出部31及びバースト位置検出部32を追加した構成の場合も上述同様の効果が得られる。
【0132】
すなわち、図9の再生装置では、バースト検出部31が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部32は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出し、該誤り発生位置を示す消失位置情報を誤り訂正復号部8へ出力する。
【0133】
ビタビ等化部7が、隣接トラックからの干渉による雑音分散を考慮したメトリック値を用いたMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いてビタビ等化を行い、誤り訂正復号部8に軟判定尤度を出力する。誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、得られた軟判定尤度を用いて、誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、バースト位置検出部32から出力された消失位置情報により指定されている誤り発生位置については、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0134】
また、図10に示したように、図3の再生装置に、バースト検出部31及びバースト位置検出部32を追加した構成の場合も上述同様の効果が得られる。
【0135】
すなわち、図10の再生装置では、バースト検出部31が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部32は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出し、該誤り発生位置を示す消失位置情報を誤り訂正復号部8へ出力する。
【0136】
誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ARモデル等化部11から出力された軟判定尤度を用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、バースト位置検出部32から出力された消失位置情報により指定されている誤り発生位置については、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0137】
以上説明したように、上記第4の実施形態によれば、隣接トラックからの干渉を加味した軟判定尤度値Λを算出し、該軟判定尤度値を用いて誤り訂正を行うとともに、隣接トラックからの干渉により、あるいはヘッドがディスク媒体に接触することにより、再生信号中に発生した記録情報の消失を検出し、記録情報の消失位置では、誤り訂正の代わりに、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いることにより、ディスク媒体上の記録情報の再生データの誤り率が大幅に改善する。
【0138】
上記第1乃至第4の実施形態では、ディスク媒体が磁気記録媒体の場合を例にとり説明したが、上述の第1乃至第4の実施形態は、ディスク媒体が光記録媒体や光磁気記録媒体の場合にも上述同様にして適用可能である。
【0139】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】隣接トラック間干渉を説明するための図。
【図2】第1の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図3】第2の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図4】ARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号前の再生データのビット誤り率(BER)特性を示した図。
【図5】ARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号後の再生データのビット誤り率(BER)特性を示した図。
【図6】第3の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図7】第3の実施形態に係る再生装置の他の構成例を示した図。
【図8】第4の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図9】第3の実施形態に係る再生装置の他の構成例を示した図。
【図10】第3の実施形態に係る再生装置のさらに他の構成例を示した図。
【符号の説明】
【0141】
1…A/D((Analog to Digital))変換器、2…FIR(Finite Impulse Response)等化部、3…積算部、4…移動平均フィルタ、5…隣接トラック干渉検出部、6…遅延バッファ、7…ビタビ等化部、8…誤り訂正復号部、11…AR(Auto-Regressive)モデル等化部、12…減少関数算出部、13…雑音相関テーブル、14…積算部、21…消失位置検出部、31…バースト検出部、32…バースト位置検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク媒体から記録信号を再生する再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば磁気記録再生装置において、ディスク媒体への記録再生ヘッド(以下、ヘッドと呼ぶ)の接触や、ディスク媒体上の磁性体の欠損、およびヘッドの位置決め精度により、SNR(Signal to Noise Ratio)が大幅に低下し、記録データがバースト的に誤り(バースト誤り)、再生が不可能になるという問題点がある。
【0003】
これらのバースト誤り(バーストエラー)のうち、ディスク媒体へヘッドが接触することにより発生するバースト誤りは、通常の再生時と比べて、ヘッドのディスク媒体への接触した時に再生信号に大きな直流成分が乗るという特徴を有する。この特徴を利用し、従来の磁気記録再生装置では、ヘッドによってディスク媒体から読み取られた信号をA/D(Analog to Digital)変換した後、A/D変換後の信号の直流成分を検出することで、該バースト誤りの発生位置を検出していた。その結果、ある程度のバースト誤りに対して誤り訂正処理を用いた補償が可能である。
【0004】
従来の磁気記録再生装置は、ヘッドでディスク媒体(磁気記録媒体)から読み出されたアナログの再生信号が、A/D変換部に入力されて、デジタル信号に変換される。この時、ヘッドがディスク媒体に接触し大きな直流成分が信号に乗ることによって、A/D変換後のサンプル値に対してヘッドから出力されたアナログ信号がA/D変換部への最大入力値を超えるような場合、A/D変換後のデジタル出力は、A/D変換部の最大出力値で飽和し、再生波形が消失する。
【0005】
バースト検出部は、A/D変換部から出力されるデジタル化された再生信号の波形が、A/D変換部に予め定められている最大出力値で飽和しているかどうかを検出する。バースト検出部が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出する。
【0006】
該バースト干渉によって消失したA/D変換後の再生波形はFIR(Finite Impulse Response)等化部に入力され、FIR等化部は、任意のPR(Partial Response)ターゲット(例えばPR(1,2,2,2,1)などのPRターゲット)へ等化する。さらに、該PRターゲットの状態遷移を有するビタビ等化部が再度等化処理を行なうことで、「0」と「1」とに硬判定された、バースト誤りを被った状態での再生データを得る。ビタビ等化部では、PRターゲットへ等化された再生信号と、PRターゲットによって定義される信号点との距離を、尤度情報として用いてビタビ等化を行ない、「0」と「1」とに硬判定された再生データを得る。
【0007】
誤り訂正復号部は、ビタビ等化部から得られたバースト誤りを含む硬判定データと、バースト位置検出部で再生信号から検出されたバースト位置情報を用いて、誤り訂正復号処理を行う。
【0008】
誤り訂正復号部は、ビタビ等化によって得られた硬判定データに対して、更に、復号時に硬判定データを必要とするRS(Reed-Solomon)符号などの誤り訂正符号を用いることで、ビタビ等化後のデータに含まれる誤りを訂正し、ユーザデータを得る。
【0009】
以上の処理動作により、ヘッドがディスク媒体に接触することにより生ずるバースト誤り/消失が再生信号に含まれている場合においても、再生データ中の誤りを訂正することができる。しかしながら、上記のバースト位置検出方法によっては、隣接トラックからの干渉を検出し、適切に処理することができない。
【0010】
隣接したデータトラックを有するディスク媒体からその記録データを再生する磁気記録再生装置の場合、ヘッドの位置ずれにより、隣接トラックに対する記録信号が、目的トラック上の記録信号へ上書きされるとき、あるいは、再生時に隣接トラックへヘッド位置がずれることにより、目的トラックの信号と隣接トラックの信号が同時に再生されるときには、隣接トラックの信号が、目的トラックを再生した信号に対してバースト的な干渉雑音となるが、上述のように直流成分は発生しない。従って、A/D変換後の信号に際だった特徴がなく、バースト誤り位置を検出できないため、再生時の誤り率特性を大きく劣化させる。
【0011】
このとき、誤り訂正復号の際に尤度情報を用いる誤り訂正符号を用いた場合には、再生データ中の隣接トラックからのバースト干渉を受けた部分の尤度情報の信頼性が著しく低いものとなってしまう。このため、本来の誤り訂正符号の訂正能力が発揮できなくなり、誤り訂正後の再生データの誤り率が不必要に劣化するという問題点がある。
【0012】
特許文献1には、ディスク媒体へヘッドが接触することにより発生したバースト誤りに対する復号化機能を向上するための技術が開示されている。しかし、特許文献1で開示されている技術では、隣接トラックからのバースト干渉に対しては考慮されていない。特許文献1では、隣接トラックからの干渉発生時の誤り率を向上することはできない。
【特許文献1】特開2005−166089
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の磁気記録再生装置では、ヘッドの位置ずれによる、隣接トラックからの干渉雑音を検出することが不可能なため、再生データ中の干渉を受けた部分における尤度情報を正確に計算することができない。そのため、誤り訂正復号時に尤度情報を用いる誤り訂正符号を用いた場合には、干渉部分の信頼性の低い尤度情報に影響され、十分な誤り訂正能力を発揮することができないという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、隣接トラックからの干渉が発生した時の誤り率特性を改善することができる再生装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の再生装置は、(a)ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出し、(b)前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定し、(c)前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出し、(d)前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う。
【発明の効果】
【0016】
隣接トラックからの干渉が発生した時の誤り率を改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態では、誤り訂正符号として、復号時に、再生データの「0」と「1」に対する軟判定尤度情報が必要であるターボ符号やLDPC(Low Density Parity Check)符号を用いる。また、従来のビタビ等化アルゴリズムの代わりに、該軟判定尤度情報を出力する、上記ビタビ等化と等価であるMax−Log−MAPアルゴリズムやSOVA(Soft-Output Viterbi Algorithm)などを用いることで、ビタビ等化後に、ターボ符号やLDPC符号に対する誤り訂正復号を行う。
【0019】
一般的に、RS符号などより、軟判定尤度情報を用いるターボ符号やLDPC符号の方が通常時の誤り率特性は優れており、高密度記録などデータ誤りの多く発生する記録環境で有効である。
【0020】
しかしながら、軟判定尤度情報を得ることができるMax−log−MAPアルゴリズムやSOVAを用いた場合、PRターゲットへ等化された信号点における雑音電力値をアルゴリズム中で用いる必要がある。そのため、実際とは異なった雑音電力値をアルゴリズム中で用いた場合、得られる軟判定尤度情報は信頼性が低く、大きな特性劣化につながる。
【0021】
従来の再生装置では、通常時のPRターゲットへの等化後の再生信号点における雑音電力を、あらかじめトレーニングを行なうことで既知のものとして利用することができる。
【0022】
しかしながら、隣接トラックからの干渉のような、突発的な干渉雑音に対しては、トレーニングをすることが不可能なため、干渉部分の雑音電力値を正確にアルゴリズム中で設定することができない。
【0023】
このため、従来方式では隣接トラックからの干渉が入った部分の雑音電力は、トレーニング時のものと大きく異なるため、Max−Log−MAPアルゴリズムのような雑音電力値を必要とするアルゴリズムを用いた場合、干渉を被った部分の軟判定尤度情報は大きく信頼性を失い、誤り率特性を劣化させる。
【0024】
さらに、この信頼性の低い軟判定尤度情報を用いて、ターボ符号やLDPC符号に対する復号処理を行なったとしても、本来の誤り訂正能力を発揮できず、誤り率特性を劣化させてしまう。
【0025】
そこで、以下の実施形態に係る磁気記録装置では、このように突発的に発生する隣接トラックからの干渉による雑音電力を逐次推定し、干渉部分の雑音電力値を適切にMax−Log−MAPアルゴリズムなどへ逐次適用することで、干渉部分の軟判定尤度情報の信頼性を維持することが可能となる。
【0026】
図1は、隣接トラックからの干渉が発生するメカニズムについて説明するための図である。
【0027】
ヘッド201が何らかの外因によって、ディスク媒体上の目的トラック302の軌跡から位置ずれを起こして、ディスク媒体から再生信号を得た場合、該再生信号は、目的トラック302から得られる信号と、隣接トラック303から得られる信号とを合成したものとなる。
【0028】
ヘッド201の隣接トラックへのずれの度合い、すなわち、トラック幅を「1」に正規化し、隣接トラックへのヘッド201の位置ずれのトラック幅に対する割合を、W(時刻tにおけるずれの度合い)とした時、A/D変換され、さらにFIR等化された後の、時刻tにおける再生信号s(t)は次式(1)のように表すことができる。
【0029】
s(t)=(1−W)son(t)+WsITI(t) …(1)
ここで、son(t)は目的トラックから得られる再生信号であり、sITI(t)は隣接トラックから得られる再生信号である。s(t)は、隣接トラックからの干渉を受けたFIR等化後の再生信号である。
【0030】
このような再生信号が得られた場合、上述のヘッド201が記録媒体へ接触するわけではないため、得られる再生信号がA/D変換によって波形が飽和するようなことはない。そのため、A/D変換後の再生信号の波形の飽和による消失を検出していたとしても、従来の再生装置の構成では、隣接トラックからの干渉を検出することはできない。
【0031】
FIR等化された再生信号を用いて、尤度値(メトリック値)を計算し、ビタビ等化を行なう場合、ビタビ等化で用いるメトリック値λは、一般的に次式(2)で与えられる。
【数1】
【0032】
ここで、rはFIR等化後の再生信号のサンプル点(再生信号の時刻tにおける信号点)であり、sは用いたPRターゲットで定義される基準信号点であり、σ2は再生信号に含まれる雑音の分散である。式(2)で計算されるλは、再生信号のサンプル点rの、PRターゲットにおける各基準信号点sに対する確からしさ(尤度)である。
【0033】
通常、再生信号のサンプル点における雑音分散(雑音電力)は、事前にトレーニングシーケンスを用いて測定しておく。隣接トラックからの干渉がない場合には、あらかじめ測定されている雑音分散値σ2を用いる。
【0034】
しかしながら隣接トラックからの干渉が含まれる場合には、通常の雑音分散に加えて、隣接トラックからの再生信号による干渉成分σ2ITIが加えられるため、FIR等化後の雑音分散値はσ2+σ2ITIとならなければならない。σ2ITIの値を得ることができない場合、隣接トラックからの干渉を被った部分のメトリックは不正確なものとなり、誤り率特性を劣化させる要因となる。
【0035】
Max−Log−MAPアルゴリズムやSOVAなどにより得られる、再生信号のサンプル点rに最も確からしいビット(「0」「1」)を求めるための再生信号のサンプル点rの軟判定尤度値Λは、
【数2】
【0036】
と与えられる。ここで、λ(1)は、PRターゲットにおける複数の信号点(基準信号点)のうち、「1」となる(PRターゲットにより定義される)状態遷移パスに対し式(2)により計算されるメトリックである。また、λ(0)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「0」になる状態遷移パスに対し式(2)により計算されるメトリックである。αj、βj(j=0、1)は、Max−Log−MAPアルゴリズムにより求められる,「0」「1」となる状態遷移確率値であり、着目するビットが、PRターゲットにおける「0」もしくは「1」となる信号点に繋がる、前方および後方累積状態遷移確率である。
【0037】
式(2)及び(3)から、誤った雑音分散値を用いて計算される軟判定尤度値は信頼性が低いことがわかる。
【0038】
このように隣接トラックからの干渉を被った場合に、適切な雑音分散を設定しないと、得られる軟判定尤度情報Λの信頼性が低下するため、特に軟判定尤度情報を復号時に必要とするターボ符号やLDPC符号を誤り訂正符号に用いた場合に特性劣化に繋がることとなる。
【0039】
このような問題点を踏まえて、式(2)及び式(3)の尤度の計算に、隣接トラックからの干渉による雑音分散値を加味することを考える。
【0040】
今、隣接トラックからの干渉のない通常の再生信号son(t)の分散をδon2とする。この分散値については、隣接するトラックにおいても統計的性質は同じものである。
【0041】
この時、1に正規化されたトラック幅に対して、ヘッドが目的トラックの軌跡よりWだけずれて再生信号を得た場合には、得られる目的トラックの再生信号の分散値は、
(1−W)δon2 …(4)
となり、同時に隣接トラックから得られる再生信号の分散は、
W2δon2 …(5)
となる。
【0042】
ここで、最終的に得られる、これら両方の信号が合成された再生信号の分散は、
【数3】
【0043】
となる。
【0044】
再生信号の分散値δB2は、別途、隣接トラックからの干渉を含む再生されたFIR等化後の信号から逐次求める必要がある。
【0045】
上述の関係式より、トラック幅に対するヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合いWを求めることで、隣接トラックからの干渉による雑音の分散値と、目的トラックからのヘッドがずれたことによる目的トラックからの再生信号の減衰分を求めることが可能となる。
【0046】
ヘッドの隣接トラックへのずれの度合いWは、式(6)を変形することにより、次式(7)で表すことができる。
【数4】
【0047】
そこで、二次方程式の解の公式を用いることで、式(7)から、Wについて解くと、
【数5】
【0048】
という2つの解が得られる。一方の解が目的トラックから見たヘッドのずれの割合、もう一方が隣接トラックから見たヘッドのずれの割合となる。
【0049】
このように、隣接トラックからの干渉成分を含んだFIR等化後の再生信号の分散値
δB2を求め、式(8)を用いて、得られた分散値δB2と、トレーニングによってあらかじめ求めた隣接トラックからの干渉のない場合の再生信号の分散値δon2とから、ヘッドのずれの度合いWを求める。
【0050】
次に、得られたヘッドのずれの度合いWと、再生信号の分散値δon2とから、隣接トラックからの干渉による雑音分散値(雑音電力)σ2ITIを次式(9)を用いて求めることができる。
【0051】
σ2ITI=W2δon2 …(9)
さらに、隣接トラックへヘッドがずれたことによる目的トラックの再生信号の振幅減衰分は、(1−W)となる。
【0052】
これら、隣接トラックからの干渉による雑音の分散と、目的トラックにおける信号減衰分を加味することで、式(2)のメトリック値λは、次式(10)に示すように書き換えることができる。すなわち、式(2)のsを、(1−W)sに置き換え、σ2をσ2+σ2ITIに置き換えることにより、隣接トラックからの干渉を考慮した場合のビタビ等化で用いるメトリック値λGが得られる。
【数6】
【0053】
次に、以上の原理を踏まえて、第1の実施形態に係る再生装置について説明する。
【0054】
図2は、隣接トラックからの干渉を検出するための、再生信号の分散を逐次求める再生装置の構成例を示したものである。
【0055】
図2の再生装置では、記録再生ヘッド(以下簡単にヘッドと呼ぶ)301によりディスク媒体(磁気記録媒体)から読み出されたアナログの再生信号は、A/D変換部1によりデジタル信号に変換された後、FIR等化部2によって、任意のPRターゲット信号となるように等化される。
【0056】
次に、図2の再生装置では、積算部3が、FIR等化後の再生信号に対して、サンプル値の自乗値を求め、さらに、M(Mは、2以上の正の整数)タップの移動平均フィルタ4が、Mタップ分のサンプル値から得られる自乗後の再生信号の平均値を求めることにより、再生信号の分散値、すなわち、式(6)の分散値δB2を求める。
【0057】
なお、ここでは、再生信号そのものの移動平均が0となるので、再生信号の二乗の移動平均を求めることにより、該再生信号の分散を算出している。
【0058】
隣接トラック干渉検出部5は、式(8)を用いて、得られた分散値δB2と、トレーニングによってあらかじめ求めた隣接トラックからの干渉のない場合の再生信号の分散値δon2とから、ヘッド301のずれの度合いWを求める。さらに、隣接トラック干渉検出部5は、式(9)と、得られたヘッドのずれの度合いWと、予め与えられている再生信号の分散値δon2とを用いて、隣接トラックからの干渉による雑音分散値W2δon2=σ2ITIを求める。得られたW及びσ2ITIはビタビ等化部7へ出力される。
【0059】
なお、隣接トラック干渉検出部5には、トレーニングによってあらかじめ求めた隣接トラックからの干渉のない場合の再生信号の分散値δon2が記憶されている。
【0060】
FIR等化部2からの出力は、上記積算部3に入力されるとともに、遅延バッファ6にも入力される。遅延バッファは、FIR等化後の再生信号に対し、隣接トラック干渉検出部5で、ヘッドのずれの度合いWと隣接トラックからの干渉による雑音分散値σ2ITIを求めるまでの時間、該再生信号を遅延させて、ビタビ等化部7へ入力する。
【0061】
ビタビ等化部7は、入力された再生信号に対し、ビタビ復号、あるいはMax−Log−MAPアルゴリズム、あるいはSOVAを適用する。すなわち、ビタビ等化部7は、式(10)、ヘッド301のずれの度合いW、及び予め与えられた再生信号の分散値δon2を用いて、FIR等化後の再生信号rと、PRターゲットにおける各信号点sとの間のメトリックλGを計算する。さらに、PRターゲットにおける各信号点に対し求めたメトリックλGと、式(3)とを用いて、軟判定尤度値Λを計算する。
【0062】
ここで、λ(1)はλG(1)に置き換え、λ(0)はλG(0)に置き換えて、式(3)を適用する。この場合、λG(1)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「1」となる状態遷移パスに対し、式(10)により計算されたメトリックであり、λG(0)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「0」となる状態遷移パスに対し、式(10)により計算されたメトリックである。すなわち、ビタビ等化部7は、次式(11)を用いて、軟判定尤度値Λを算出する。
【数7】
【0063】
ビタビ等化部7は、得られた軟判定尤度値Λを誤り訂正復号部8へ出力する。このようにして、ビタビ等化部7から、再生データの各ビット(「0」、「1」)に対し、隣接トラックからの干渉雑音の考慮された、高い信頼性を有する軟判定尤度値Λが得られた。
【0064】
誤り訂正復号部8は、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ビタビ等化部7から得られた軟判定尤度値Λを用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行い、再生データ(ユーザデータ)を得る。
【0065】
以上説明したように、上記第1の実施形態によれば、ディスク媒体から読み出された信号(等化後の信号)の分散δB2から、ヘッドの隣接トラックへのずれの度合いW及び隣接トラックからの干渉電力σ2ITIを推定し、ずれの度合い及び隣接トラックからの干渉電力を加味した式(11)に示すような軟判定尤度Λを計算することにより、再生データ中の隣接トラックからの干渉を受けた部分の軟判定尤度情報の信頼性が向上する。そして、この軟判定尤度Λを用いて誤り訂正復号を行って、再生データ(ユーザデータ)を得ることにより、隣接トラックからの干渉発生時の誤り率特性を改善することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
一般的に、連続した磁気記録媒体を用いた磁気記録システムでは、磁気記録媒体の磁化反転特性や、前回に記録された磁気記録パターンによって発生するジッター性の雑音と、その他の電気的な回路で発生する熱雑音による雑音とが、再生信号中に含まれている。このジッター性雑音と熱雑音は、常時再生信号中に含まれるものである。
【0067】
また、これらの雑音の特徴として、ジッター性雑音は書き込まれるデータ系列に依存した雑音成分が発生し、書き込まれた前後の再生信号間で強い相関を持ち、しかも、再生信号と同様の周波数特性を持っている。
【0068】
一方熱雑音は、書き込み系列および前後の信号間で無相関な雑音成分を持っており、再生信号とは無相関に全周波数帯で一様な周波数特性を有している。
【0069】
この時、隣接トラックへのヘッドのずれにより、目的トラックから得られた再生信号の振幅が(1−W)だけ減少した場合、熱雑音は再生信号に無相関なため、雑音分散は変化しないが、ジッター性雑音は、目的とする再生信号の減少分にあわせて減少する。
【0070】
この時のジッター性雑音の減少量は、(1−W)の振幅の信号減衰に対して、目的トラックの電力の減衰と同様に(1−W)2だけ減少し、
【数8】
【0071】
しかしながら、トレーニングにより求めることのできる雑音電力σ2は、ジッター性および熱雑音の両方を含む電力である。
【0072】
この雑音電力のうちのジッター性雑音と、熱雑音との割合(「ジッター性雑音」対「熱雑音」)が「ε:1−ε」と定義される場合には、事前に測定された全雑音電力σ2のうち、
【数9】
【0073】
なお、εは予め測定されて、再生装置に与えられている値である。
【0074】
今、バースト干渉による目的信号の電力減衰が(1−W)2となる場合、上述の議論から、バースト干渉部分の全雑音電力σ2+σ2ITIは、上記ジッター性雑音及び熱雑音と、式(9)に示した、隣接トラックからの干渉による雑音分散値σ2ITIとを用いて、
【数10】
【0075】
となる。
【0076】
このように、再生信号中の雑音配分を考慮した場合のバースト干渉時のビタビ等化で用いられるメトリック値λGは、式(10)と式(12)とから、次式(13)に示すようになる。
【数11】
【0077】
式(13)により計算されるメトリック値λGは、ジッター性雑音、熱雑音およびバースト干渉の雑音分散を考慮した高信頼性のメトリック値である。特にMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いたときに、バースト干渉部分の軟判定尤度値の信頼性が、バースト干渉に応じたものであるから、該軟判定尤度値が必要なターボ符号やLDPC符号の利用に適し、誤り訂正符号の訂正能力を十分に発揮させることが可能となる。
【0078】
上述のビタビ等化に対して、更にジッター雑音に対する雑音特性を考慮した等化アルゴリズムとして、AR(Auto-Regressive)モデルがある。
【0079】
ARモデルでは、ジッター性雑音の書き込みデータパターンに依存した時間的な相関特性をメトリック値に利用することで、時間軸上でのジッター性雑音の抑圧を行ない、誤り率特性を向上することができる。
【0080】
ビタビ等化と同様に、通常のARモデルで用いるメトリック値は次式で表される。
【数12】
【0081】
ここで、μt-1…μt-Nは、現時刻tから1〜Nサンプル前までの雑音相関係数である。この雑音相関係数は、雑音分散を求めるトレーニングと同様に、バースト干渉のない状況で、時間方向の雑音の相関値を用いて求められるものである。また、この雑音相関は、利用するPRターゲットおよび、ディスク媒体への書き込みビット列に強く依存するものである。
【0082】
今、上述と同様にバースト干渉が発生した場合のARモデルにおけるメトリックの導出を考える。
【0083】
バースト干渉が発生した部分の雑音は、目的トラック上では無相関な雑音として扱うことができ、上記のARモデルで用いる雑音相関は、バースト干渉においては、トレーニング時と大きく異なるものとなり、直接用いることができない。
【0084】
この時、雑音の成分が完全にバースト干渉のみとなる場合は、時間方向の雑音間の相関係数は「0」に近づく。
【0085】
ヘッドが正規化されたトラック幅に対してWだけずれた場合、雑音の全電力はビタビ等化同様に、
【数13】
【0086】
となる。
【0087】
時間方向に相関のある雑音成分は、全雑音電力のうちバースト干渉成分以外の項に対しては、相関が保持されている。
【0088】
この時、ARモデルで用いる雑音相関係数は、バースト干渉と通常の雑音の電力割合から、(相関を有する雑音/全雑音電力)分だけ相関係数が減少することとなる。
【0089】
雑音相関係数は雑音の振幅値に対して求められているので、式(15)の全雑音電力と、式(15)の全雑音電力のうち、バースト干渉成分以外の雑音成分との電力比から、時刻t−nにおける雑音相関関数の減少分ρt-nは、次式(16)から計算することができる。
【数14】
【0090】
ここで、Wt-nは時刻t−nにおける、隣接トラックからの干渉度合い(ヘッドのずれの度合い)である。なお、nは、1以上N以下の正の整数である。また、前述同様、σ2は予め測定された再生信号に含まれる雑音分散値(雑音電力)であり、ε、ε−1は、雑音電力σ2のうち、予め測定されたジッター性雑音と熱雑音との割合である。
【0091】
これらを踏まえ、ARモデルの時刻tにおける雑音の全電力は、式(15)から、次式(17)に示すように表されるから、式(14)に示した、バースト干渉を伴った場合のARモデルの時刻tにおけるメトリック値は次式(18)のように書き換えることができる。
【数15】
【0092】
このメトリック値を用いて、ビタビ等化に代えてARモデルを用いた等化を行なうことで、書き込みパターンに依存する雑音も考慮した等化を行なうことが可能となり、バースト干渉部分の軟判定尤度値の信頼性を上げることができる。
【0093】
尚、ARモデルを用いてもビタビ等化同様に、軟判定尤度値を得るための手法として、Max−Log−MAPアルゴリズムや、SOVAが用いられる。
【0094】
また、ここまで述べてきた内容については、ヘッドが隣接トラックへずれ込むことによる、隣接トラックからの干渉を主としてきたが、記録ヘッドが、隣接トラックにずれ込むことで、目的トラックの記録データを部分的に上書きすることによっても、これまでと同様の議論となることに注意が必要である。
【0095】
図3は、上述のARモデルを適用した再生装置の構成例を示したものである。なお、図3において、図2と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。
【0096】
図3の再生装置において、図2と同様に、積算部3が、FIR等化後の再生信号から、サンプル値の自乗値を求め、Mタップの移動平均フィルタ4が、部分的な再生信号の分散値δB2を算出する。隣接トラック間干渉検出部5が、得られた再生信号の分散値δB2から、式(8)を用いて、時刻tにおける隣接トラックからの干渉度合い(ヘッドのずれの度合い)Wtを求める。さらに、隣接トラック間干渉検出部5が、式(9)と、得られたヘッドのずれの度合いWtと、予め与えられている再生信号の分散値δon2とを用いて、時刻tにおける隣接トラックからの干渉による雑音分散値Wtδon2を求める。
【0097】
図3の再生装置では、得られた時刻tにおける干渉度合いWt、隣接トラックからの干渉による雑音分散値Wtδon2が、ARモデル等化部11及び減少係数算出部12に出力される。
【0098】
雑音相関テーブル13には、予め測定された現時刻tから1〜Nサンプル前までの雑音相関係数μt-1…μt-Nが記憶されている。
【0099】
減少係数算出部12は、式(16)、現時刻より前に隣接トラック干渉検出部5から得られた干渉度合いWt-1…Wt-N、隣接トラックからの干渉による雑音分散値
Wt-1δon2…Wt-Nδon2、予め与えられている雑音分散値σ2、雑音分散値σ2のうちのジッター性雑音の割合εを用いて、ARモデル等化部11で考慮する再生信号の現在時刻よりも前のサンプル点におけるバースト干渉による雑音相関値のN個の減少係数ρt-n(nは、1≦n≦N)をそれぞれ算出する。得られたN個の減少係数は、積算部14で、雑音相関テーブル13に記憶されている相関係数μt-n(nは、1≦n≦N)と乗算される。その結果得られる、減少関数と相関係数との積ρt-1μt-1、…ρt-nμt-n、ρt-Nμt-Nは、ARモデル等化部11に入力され、雑音相関値として利用される。
【0100】
ARモデル等化部11は、式(18)を用いて、積算部14で算出された、減少関数と相関係数との積ρt-1μt-1、…ρt-nμt-n、ρt-Nμt-N、隣接トラック間干渉検出部5から出力された、時刻t−N、…t−1、tのそれぞれにおける干渉度合いWt-N、…Wt-1、Wt、時刻tにおける隣接トラックからの干渉による雑音分散値Wtδon2を用いて、時刻tにおける、FIR等化後の再生信号rと、PRターゲットにおける各信号点sとの間のメトリックλARを計算する。ここで、雑音分散値σ2、雑音分散値σ2のうちのジッター性雑音の割合εは、ARモデル等化部11に、予め与えられている(記憶されている)値である。
【0101】
さらに、PRターゲットにおける各信号点に対し求めたメトリックλARと、式(3)とを用いて、軟判定尤度値Λを計算する。
【0102】
ここで、λ(1)はλAR(1)に置き換え、λ(0)はλAR(0)に置き換えて、式(3)を適用する。この場合、λAR(1)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「1」となる信号点に対し、式(18)により計算されたメトリックであり、λAR(0)は、PRターゲットにおける複数の信号点のうち、「0」となる信号点に対し、式(18)により計算されたメトリックである。すなわち、ARモデル等化部11は、次式(19)を用いて、軟判定尤度値Λを算出する。
【数16】
【0103】
ARモデル等化部11は、得られた再生データと、上記軟判定尤度値Λを誤り訂正復号部8へ出力する。
【0104】
誤り訂正復号部8は、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ARモデル等化部11から得られた上記軟判定尤度値Λを用いて、誤り訂正復号(硬判定を含む)を行い、ユーザデータを得る。
【0105】
図4は、上述のARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号前の再生データのビット誤り率(BER)特性を示したものである。図4では、比較のために、従来のビタビ等化を行った場合の誤り訂正復号前の再生データのBER特性502と、理想の誤り率特性503も示している。ここでは、隣接トラックからの干渉の長さが1000ビット、ヘッドの隣接トラックへのずれの度合いWが「0.2」、移動平均フィルタのタップ長が「100」、という条件の下で測定されたBER特性を示している。
【0106】
図4に示した、ARモデルによる等化を行った場合のBER特性501は、ARモデル等化部11でのARモデルによる等化でMax−Log−MAPアルゴリズムを用いたときの等化直後の(ARモデル等化部11から出力された誤り訂正する前の)信号のBER特性である。
【0107】
図4から、従来の隣接トラックからの干渉を加味せずにビタビ等化を行った場合のBER特性502に比べ、ARモデルによる等化を行った場合のBER特性501は、誤り率特性が改善されていることがわかる。
【0108】
図5は、ARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号後の再生データのビット誤り率(BER)特性を示した図である。図5では、図4で用いた条件に、さらに誤り訂正符号にLDPC符号を用いたときの、上記3つの場合における再生データのBER特性を示したものである。
【0109】
従来の隣接トラックからの干渉を加味せずにビタビ等化を行った後に誤り訂正復号を行った場合のBER特性602が示すように、従来のビタビ等化では、隣接トラックからの雑音分散が干渉して、尤度情報の信頼性が低下し、該尤度情報が必要とされるLDPC符号を用いても、誤りを訂正することができない。
【0110】
しかしながら、第2の実施形態に係るARモデルによる等化を行った後に誤り訂正復号を行った場合のBER特性601が示すように、ARモデルによる等化を行った場合、干渉部分の軟判定尤度情報Λの信頼性が向上し、LDPC符号の本来の誤り訂正能力を発揮することができている。
【0111】
このように第1の実施形態によれば、隣接するトラック間の干渉成分を求めて、該干渉成分を加味した軟判定尤度Λを計算し、該軟判定尤度Λを用いて、LDPC符号等の誤り訂正復号を行うことにより、隣接トラックからの干渉がある場合の誤り率を大幅に改善することができる。
【0112】
(第3の実施形態)
次に、隣接トラックから大きな干渉がある場合には、再生データ中の該干渉の検出された部分が消失したものとして扱う機能を備えた、再生装置について説明する。
【0113】
図6は、第3の実施形態に係る再生装置の構成例を示したものである。なお、図6では、図3の再生装置と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。すなわち、図6では、消失位置検出部21が追加されている。
【0114】
隣接トラックへのヘッドのずれの度合いWが、正規化されたトラック幅に対して、ある値以上になると(再生装置により異なるが、例えば、W=0.3 or 0.5)、目的トラックの再生信号の信号電力より隣接トラックから信号電力のほうが大きくなる。この場合、FIR等化後の再生信号上では、見かけ上SNR(Signal to Noise Rate)が0dB以下となり、現実的に誤りを訂正することはできない。すなわち、トラック幅に対し予め与えられた閾値以上のヘッドのずれが発生した場合には、その部分の情報は消失したものとしても構わない。
【0115】
このように隣接トラックからの多大な干渉を扱った場合には、従来の再生装置のように、ヘッドが磁気記録面に接触した場合に起こるバースト消失を検出し、誤り訂正符号の復号時に消失の訂正を行なうような構成により対処できる。
【0116】
図6の消失位置検出部21は、隣接トラックからの干渉による、情報消失の検出機能を有する。
【0117】
図6の再生装置では、図3と同様に、ヘッド301でディスク媒体から読み出されたアナログの再生信号をA/D変換部1でデジタル信号に変換した後、FIR等化部2によって、所望のPRターゲットへ等化する。そして、積算部3がFIR等化後の再生信号のサンプル値の自乗値を求めた後、Mタップの移動平均フィルタ4により該再生信号の分散値が算出される。隣接トラック干渉検出部5は、得られた再生信号の分散値δB2などから、時刻tにおける隣接トラックからの干渉の度合い、すなわち、ヘッドのずれの度合いWt、隣接トラックからの干渉による雑音分散Wtδon2を求め、これらをARモデル等化部11、減少係数算出部12へ出力する。図6の再生装置の隣接トラック干渉検出部5では、ヘッドのずれの度合いWtを、さらに消失位置検出部21にも出力する。
【0118】
消失位置検出部21は、ヘッドのずれの度合いの値が、予め与えられた閾値Wth以上である場合には、記録情報が消失されたと決定し、当該記録情報の消失された位置(消失位置)を示す消失位置情報を生成する。
【0119】
一方、図6の再生装置では、図3と同様に、ARモデル等化部11が、隣接トラックからの干渉による雑音分散を考慮したメトリック値を用いたMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いて、ARモデルに従ったビタビ等化を行い、誤り訂正復号部8に軟判定尤度値Λを出力する。
【0120】
図6の誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、得られた軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、消失位置検出部21から出力された消失位置情報により指定されている消失位置では、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0121】
このように、極度に大きな隣接トラックからの干渉が発生した結果、記録情報が消失する場合に、記録情報が消失した部分に対しては、誤り訂正復号の代わりに消失訂正用の復号アルゴリズムを用いることにより、誤り率特性の劣化を抑えることが可能となる。
【0122】
なお、図6では、図3の再生装置に対し、消失位置検出部21を追加した構成を示したが、この場合に限らず、図7に示したように、図2の再生装置に、消失位置検出部21を追加した構成の場合も上述同様の効果が得られる。
【0123】
すなわち、図7の再生装置では、図2と同様に、ヘッド301でディスク媒体から読み出されたアナログの再生信号をA/D変換部1でデジタル信号に変換した後、FIR等化部2によって、所望のPRターゲットへ等化する。そして、積算部3がFIR等化後の再生信号のサンプル値の自乗値を求めた後、Mタップの移動平均フィルタ4により該再生信号の分散値δB2が算出される。隣接トラック干渉検出部5は、得られた再生信号の分散値などから隣接トラックからの干渉の度合い、すなわち、ヘッドのずれの度合いWを求めるとともに、隣接トラックからの干渉による雑音分散値σ2ITIを求める。得られたヘッドのずれの度合い及び雑音分散値は、ビタビ等化部7へ出力される。図7の再生装置の隣接トラック干渉検出部5では、ヘッドのずれの度合いWを、さらに消失位置検出部21にも出力する。消失位置検出部21は、ヘッドのずれの度合いWの値が閾値Wth以上である、記録情報の消失された位置(消失位置)を示す消失位置情報を生成し、誤り訂正復号部8へ出力する。
【0124】
図7の再生装置では、図2と同様に、ビタビ等化部7が、隣接トラックからの干渉による雑音分散を考慮したメトリック値を用いたMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いてタビ等化を行い、誤り訂正復号部8に軟判定尤度Λを出力する。誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、軟判定尤度を用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、消失位置検出部21から出力された消失位置情報により指定されている消失位置では、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0125】
(第4の実施形態)
次に、ディスク媒体にヘッドが接触することで発生するバースト消失にも対処できる再生装置について説明する。
【0126】
図8は、第4の実施形態に係る再生装置の構成例を示したものである。なお、図8では、図6の再生装置と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。すなわち、図8では、バースト検出部31とバースト位置検出部32がさらに追加されている。
【0127】
バースト検出部31及びバースト位置検出部32は、従来の再生装置におけるバースト検出部及びバースト位置検出部と同じ機能を有する。すなわち、バースト検出部31は、デジタル化された再生信号の波形がA/D変換部1に予め定められている最大出力値で飽和しているかどうかを検出する。バースト検出部31が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部32は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出し、該誤り発生位置を示す第1の消失位置情報を誤り訂正復号部8へ出力する。
【0128】
一方、第3の実施形態と同様、消失位置判定部21において、ヘッドのずれの度合いが閾値Wth以上である、記録情報の消失された位置(消失位置)を示す第2の消失位置情報が生成され、誤り訂正復号部8へ出力される。
【0129】
誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ARモデル等化部11から出力された軟判定尤度を用いて、誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、消失位置検出部21から出力された第2の消失位置情報により指定されている消失位置と、バースト位置検出部32から出力された第1の消失位置情報により指定されている誤り発生位置とについては、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0130】
このように、極度に大きな隣接トラックからの干渉が発生した結果、記録情報が消失する場合、及びディスク媒体にヘッドが接触することで記録情報が消失する場合に、再生データ中の記録情報が消失した部分に対しては、誤り訂正復号の代わりに消失訂正用の復号アルゴリズムを用いることにより、誤り率特性の劣化を抑えることが可能となる。
【0131】
なお、図8では、図6の再生装置に対し、バースト検出部31及びバースト位置検出部32を追加した構成を示したが、この場合に限らず、図9に示したように、図2の再生装置に、バースト検出部31及びバースト位置検出部32を追加した構成の場合も上述同様の効果が得られる。
【0132】
すなわち、図9の再生装置では、バースト検出部31が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部32は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出し、該誤り発生位置を示す消失位置情報を誤り訂正復号部8へ出力する。
【0133】
ビタビ等化部7が、隣接トラックからの干渉による雑音分散を考慮したメトリック値を用いたMax−Log−MAPアルゴリズム等を用いてビタビ等化を行い、誤り訂正復号部8に軟判定尤度を出力する。誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、得られた軟判定尤度を用いて、誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、バースト位置検出部32から出力された消失位置情報により指定されている誤り発生位置については、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0134】
また、図10に示したように、図3の再生装置に、バースト検出部31及びバースト位置検出部32を追加した構成の場合も上述同様の効果が得られる。
【0135】
すなわち、図10の再生装置では、バースト検出部31が、A/D変換後の再生信号が該最大出力値で飽和するバースト干渉を検出すると、バースト位置検出部32は、該バースト干渉により誤りの発生する位置を検出し、該誤り発生位置を示す消失位置情報を誤り訂正復号部8へ出力する。
【0136】
誤り訂正復号部8では、ターボ符号やLDPC符号などに対する復号方法を適用し、ARモデル等化部11から出力された軟判定尤度を用いて誤り訂正復号(硬判定を含む)を行う。このとき、バースト位置検出部32から出力された消失位置情報により指定されている誤り発生位置については、誤り訂正復号を行なわないで、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いる。
【0137】
以上説明したように、上記第4の実施形態によれば、隣接トラックからの干渉を加味した軟判定尤度値Λを算出し、該軟判定尤度値を用いて誤り訂正を行うとともに、隣接トラックからの干渉により、あるいはヘッドがディスク媒体に接触することにより、再生信号中に発生した記録情報の消失を検出し、記録情報の消失位置では、誤り訂正の代わりに、消失訂正用の復号アルゴリズムを用いることにより、ディスク媒体上の記録情報の再生データの誤り率が大幅に改善する。
【0138】
上記第1乃至第4の実施形態では、ディスク媒体が磁気記録媒体の場合を例にとり説明したが、上述の第1乃至第4の実施形態は、ディスク媒体が光記録媒体や光磁気記録媒体の場合にも上述同様にして適用可能である。
【0139】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】隣接トラック間干渉を説明するための図。
【図2】第1の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図3】第2の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図4】ARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号前の再生データのビット誤り率(BER)特性を示した図。
【図5】ARモデルによる等化を行った場合の誤り訂正復号後の再生データのビット誤り率(BER)特性を示した図。
【図6】第3の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図7】第3の実施形態に係る再生装置の他の構成例を示した図。
【図8】第4の実施形態に係る再生装置の構成例を示した図。
【図9】第3の実施形態に係る再生装置の他の構成例を示した図。
【図10】第3の実施形態に係る再生装置のさらに他の構成例を示した図。
【符号の説明】
【0141】
1…A/D((Analog to Digital))変換器、2…FIR(Finite Impulse Response)等化部、3…積算部、4…移動平均フィルタ、5…隣接トラック干渉検出部、6…遅延バッファ、7…ビタビ等化部、8…誤り訂正復号部、11…AR(Auto-Regressive)モデル等化部、12…減少関数算出部、13…雑音相関テーブル、14…積算部、21…消失位置検出部、31…バースト検出部、32…バースト位置検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出する分散算出手段と、
前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定する推定手段と、
前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出する尤度算出手段と、
前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う復号手段と、
を具備することを特徴とした再生装置。
【請求項2】
前記分散算出手段は、前記信号の二乗の移動平均を求めることにより、前記信号の分散値を算出することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記尤度算出手段は、
(a)前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号中の連続する雑音の相関を示す予め与えられた雑音相関値に対する減少係数を算出する減少係数算出手段と、
(b)前記雑音相関値に前記減少係数を乗じて該雑音相関値を修正する手段と、
(c)修正された雑音相関値、前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記軟判定尤度値を算出することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項4】
前記減少係数算出手段は、
前記隣接トラックからの干渉電力を含む前記信号中の全雑音電力と、該全雑音電力のうち前記隣接トラックからの干渉電力を除く、相関を有する雑音成分の雑音電力との比から前記減少係数を算出することを特徴とする請求項3記載の再生装置。
【請求項5】
前記ずれの割合を基に、前記信号中の情報が消失している第1の消失位置を検出する手段をさらに具備し、
前記復号手段は、前記第1の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項6】
前記ヘッドが前記ディスク媒体に接触することにより発生した、前記信号中の情報が消失している第2の消失位置を検出する手段をさらに具備し、
前記復号手段は、前記第2の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項7】
前記ヘッドにより前記ディスク媒体から読み出された信号を所望のPR(Partial Response)特性とすべく等化する等化手段をさらに具備し、
前記分散算出手段は、前記等化後の信号の分散値を算出することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項8】
ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出する分散算出ステップと、
前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定する推定ステップと、
前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出する尤度算出ステップと、
前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う復号ステップと、
を含む再生方法。
【請求項9】
前記分散算出ステップは、前記信号の二乗の移動平均を求めることにより、前記信号の分散値を算出することを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項10】
前記等化ステップは、
(a)前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号中の連続する雑音の相関を示す予め与えられた雑音相関値に対する減少係数を算出し、
(b)前記雑音相関値に前記減少係数を乗じて該雑音相関値を修正し、
(c)修正された雑音相関値、前記ずれの割合及び前記干渉電力を用いて、前記軟判定尤度値を算出することを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項11】
前記隣接トラックからの干渉電力を含む前記信号中の全雑音電力と、該全雑音電力のうち前記隣接トラックからの干渉電力を除く、相関を有する雑音成分の雑音電力との比から前記減少係数を算出することを特徴とする請求項10記載の再生方法。
【請求項12】
前記ずれの度合いを基に、前記信号中の情報が消失している第1の消失位置を検出する第1の検出ステップをさらに含み、
前記復号ステップは、前記第1の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項13】
前記ヘッドが前記ディスク媒体に接触することにより発生した、前記信号中の情報が消失している第2の消失位置を検出する第2の検出ステップをさらに含み、
前記復号ステップは、前記第2の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項14】
前記ヘッドにより前記ディスク媒体から読み出された信号を所望のPR(Partial Response)特性とすべく等化するステップをさらに含み、
前記分散算出ステップは、前記等化後の信号の分散値を算出することを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項1】
ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出する分散算出手段と、
前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定する推定手段と、
前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出する尤度算出手段と、
前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う復号手段と、
を具備することを特徴とした再生装置。
【請求項2】
前記分散算出手段は、前記信号の二乗の移動平均を求めることにより、前記信号の分散値を算出することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記尤度算出手段は、
(a)前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号中の連続する雑音の相関を示す予め与えられた雑音相関値に対する減少係数を算出する減少係数算出手段と、
(b)前記雑音相関値に前記減少係数を乗じて該雑音相関値を修正する手段と、
(c)修正された雑音相関値、前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記軟判定尤度値を算出することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項4】
前記減少係数算出手段は、
前記隣接トラックからの干渉電力を含む前記信号中の全雑音電力と、該全雑音電力のうち前記隣接トラックからの干渉電力を除く、相関を有する雑音成分の雑音電力との比から前記減少係数を算出することを特徴とする請求項3記載の再生装置。
【請求項5】
前記ずれの割合を基に、前記信号中の情報が消失している第1の消失位置を検出する手段をさらに具備し、
前記復号手段は、前記第1の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項6】
前記ヘッドが前記ディスク媒体に接触することにより発生した、前記信号中の情報が消失している第2の消失位置を検出する手段をさらに具備し、
前記復号手段は、前記第2の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項7】
前記ヘッドにより前記ディスク媒体から読み出された信号を所望のPR(Partial Response)特性とすべく等化する等化手段をさらに具備し、
前記分散算出手段は、前記等化後の信号の分散値を算出することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項8】
ヘッドによりディスク媒体から読み出された信号の分散値を算出する分散算出ステップと、
前記信号の分散値を用いて、前記ヘッドの目的トラックからその隣接トラックへのずれの度合い、及び該隣接トラックからの干渉電力を推定する推定ステップと、
前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号に対する軟判定尤度値を算出する尤度算出ステップと、
前記軟判定尤度値を用いて誤り訂正復号を行う復号ステップと、
を含む再生方法。
【請求項9】
前記分散算出ステップは、前記信号の二乗の移動平均を求めることにより、前記信号の分散値を算出することを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項10】
前記等化ステップは、
(a)前記ずれの度合い及び前記干渉電力を用いて、前記信号中の連続する雑音の相関を示す予め与えられた雑音相関値に対する減少係数を算出し、
(b)前記雑音相関値に前記減少係数を乗じて該雑音相関値を修正し、
(c)修正された雑音相関値、前記ずれの割合及び前記干渉電力を用いて、前記軟判定尤度値を算出することを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項11】
前記隣接トラックからの干渉電力を含む前記信号中の全雑音電力と、該全雑音電力のうち前記隣接トラックからの干渉電力を除く、相関を有する雑音成分の雑音電力との比から前記減少係数を算出することを特徴とする請求項10記載の再生方法。
【請求項12】
前記ずれの度合いを基に、前記信号中の情報が消失している第1の消失位置を検出する第1の検出ステップをさらに含み、
前記復号ステップは、前記第1の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項13】
前記ヘッドが前記ディスク媒体に接触することにより発生した、前記信号中の情報が消失している第2の消失位置を検出する第2の検出ステップをさらに含み、
前記復号ステップは、前記第2の消失位置では、前記誤り訂正復号に代えて消失訂正復号を行うことを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【請求項14】
前記ヘッドにより前記ディスク媒体から読み出された信号を所望のPR(Partial Response)特性とすべく等化するステップをさらに含み、
前記分散算出ステップは、前記等化後の信号の分散値を算出することを特徴とする請求項8記載の再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−159184(P2008−159184A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348003(P2006−348003)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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