説明

写真プリントをベースに、立体写真の製造方法及び立体写真プリント

【課題】あらかじめ印刷された写真プリント(平面)に、積層技術によって築盛された立体的なプリントの作成法、及び加圧技術を提供する。
【解決手段】・あらかじめ印刷された写真プリント上の被写体データを元に、術者の感性と正確なデータを元に樹脂粘土で積層し、立体的な凹凸部をした原型を造る。
・原型が硬化後に枠取りを施して、普通石膏を注入し加圧用の鋳型を造る。
・画像の位置を確認しながら原型と鋳型の間に写真プリントを挟み、加圧すると出来上がったプリントは、最初の平面のみの写真プリントでしかなかったものが、立体的な凹凸部が写真表面に形成されている。
・立体化された写真プリントを原型に接着剤を塗布し貼る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらかじめ印刷された写真プリントを利用して、樹脂粘土を積層して立体写真を造る方法と、それによって出来た立体写真プリントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の写真印刷面は平面になっており、且つ立体感は撮影者の技術力で表現されるため、個人の力量で左右されることが多く立体感や臨場感は乏しかった。
この発明は、通常の写真プリントの画像データを元に樹脂粘土を積層したものを加圧によって立体加工するこの方法は、奥行きや遠近などの立体感は凹凸として顕著に写真表面に表現されており、加圧後のプリントは浮き出るような立体感がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−95781号 公報
【発明の概要】
【0004】
あらかじめ印刷された写真プリントの画像を忠実に再現するよう、被写体のデータを元にアクリルシートに転写、立体的に築盛材を積層して原型を造る。その原型を直接加圧加工すると、これまでの平面写真では表現できなかった写真プリント表面に、凹凸部の立体化された画像を造る発明。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に記載したような従来のプリントは、平面の印刷画に画像処理がなされており立体感を求めるには無理があった。立体の表現は撮影者の撮影技術による限られた範囲やカメラの機能や機材に頼ったり又、写真を固定する台紙やケースなどでカバーされていたのが一般的である。又これらは購入費用も高額になり使用者には負担が大きかった。
【0006】
又、上述した特許文献1では次のような問題があった。例えば、立体的な写真媒体を造るには高度な技術や機材、装置など設備に高額な費用が求められ、ユーザー個人が作業するには困難である。
【0007】
しかし、この発明はあらかじめ印刷された写真プリントそのものを、立体化するという最大の違いが有り、高額な設置費用や高度な技術を必要としないため、ユーザー個人が手軽に作業が出来る特徴がある。
【0008】
平面のプリントに、凹凸のある立体的なプリントに仕上げるためには、築盛材の厚みが増すことと比例するため、その行為によって写真表面に傷や変色、シワ等が生じやすい。又、写真プリントは熱に弱い欠点があるため吸引式の成型器などは使用できず、簡易型の垂直加圧式にするなど加圧の方法も工夫が必要である。又、データにない積層の技術によっては、実情より表現がゆがめられる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明はあらかじめ印刷されたプリントに、積層技術と加圧技術を加味することで、直接プリント表面に立体表現をすることに成功した。
しかし、写真プリントは補強のために紙質層と画像が印刷されているコラーゲン層で出来ており伸縮性が低い。更に表面のコラーゲン層は軟らかく、傷や破損が生じやすい欠点があったが、これらプリント表面の課題は次の方法で解決できた。
1傷や変色 ・コスレや位置のズレが主な原因に付き、作業のステップごとに輪郭をマーキングする
・写真と鋳型の間にラップフイルムで緩衝材の役割をする
・接着剤は専用セメダインを使う
2シワ対策 ・画像で、しわの寄りやすいところに切れ目を入れる
・シワの寄りやすい部分を別個につくり合成する
3立体感の表現 ・立体部分の積層を正確、且つ立体的に表現する
・強調したい被写体部分を別個に造り背景写真に合成する
・写真プリントの目や口唇周辺の立体的な部分を別個に造り、同じ部位の背景写真に貼る。
・印画紙はコラーゲン部分を残して半分に剥がす。
【発明の効果】
【0010】
この発明によって、あらかじめ印刷された写真プリントの画像を、今までにない鮮明さと立体感を持つものとすることが出来た。
【0011】
プリント表面が立体的且つ顕著に出来ているため、指で触ったり、なぞる行為で写真の画像表現が分かるため、視覚障害者には画期的な効果を奏する。又、立体感が強調されているため画像が浮き出たり、飛び出す感覚は臨場感に優れ、更にデジタル映像の立体感とは違う、手に取って見るという身近な体験が出来る。
【0012】
同一プリントで、独立した個別の立体的な物体を造ることによって、背景写真に貼ると立体感が依り強くなったり、又その独立した物体は癒し系として携帯できるなど利用範囲が広くなった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 本発明の実施例1に係る立体写真作成の基本工程を示した図
【図2】 本発明の実施例2に係る被写体の一部分を取り出して独立した物体を造る工程を示した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明をする。尚、本発明の実施例2において、樹脂粘土の積層から加圧までの工程は、実施例1と同じ方法で作成されます。
【実施例1】
【0015】
この発明は、あらかじめ印刷された写真プリントを、立体的に加工する実施例1に係る形態について説明する。
【0016】
図1では、あらかじめ印刷されたプリントを立体的に加工する作成工程を表した図です。尚、以下の説明においての写真は人間の上半身の写真とする。
【0017】
ステップ1では、あらかじめ印刷された写真プリント(1)の上を、透明のアクリルシート(2)で全体を覆って固定し、被写体の輪郭及び目や鼻などの位置や特徴などのデータを元に、目視によってアクリルシート(2)上に技術者自らが転写、印字などを行う。
【0018】
ステップ2では、アクリルシート(2)上に転写されたデータを元に、樹脂粘土(3)で築盛し、積層された粘土が硬化して出来た物が原型(s1)となる。樹脂粘土以外に工作用粘土や大理石粘土などがあるが、扱いやすさ等で樹脂脂粘土が適している。
【0019】
ステップ3では立体化された原型(S1)の周辺を、位置確認のためマーキングをしてからアクリルシート(2)に接着剤で固定し、BOX型の枠取り(4)をする。原型表面に石膏分離材を塗布し、錬和した普通石膏(5)を注入する。
普通石膏が硬化後に取り外すと石膏の鋳型(S2)が出来上がる。これは次のステップとなる加圧用の鋳型として使用する。
【0020】
ステップ4では、ステップ2で出来た原型(S1)とステップ3で出来た鋳型(S2)に、印刷されたプリント(1)を正しい位置に仮留めし、傷の防止としてプリント表面にラップフイルム(6)で全体を覆う。
画像の輪郭が複雑な場合は、鋳型の輪郭周辺をナイフで削ってスペースを造り、そこに麻縄などの軟らかい素材を固定して緩衝スペースを作る。
【0021】
ステップ5では、原型(S1)と鋳型(S2)に挟んだ写真プリントをプレス器(7)で60キログラムの圧力で2日間加圧する。加圧期間については印刷されたプリント画像の表現状況によって判断され、必要に応じて変更する。又加圧する前に、あらかじめ印刷された写真プリントは、紙質層とコラーゲン層で出来ていますが、ここでは紙質層の半分を剥離し削除して、薄くなったコラーゲン層のみのプリントが使用されています。このことでより鮮明に立体的に仕上がる工夫がされている。
【0022】
ステップ6では加圧後の側面観(P1)、を示し、この立体化された写真プリント(8)をステップ2の原型(S1)に接着する(8+s1)。それを写真台紙に専用接着剤で接着し完成する。尚原型が薄く出来ている場合は、強度を高めるためあらかじめ厚みのある紙を補強してからプリントを接着する。
【0023】
実施例1における形態において、あらかじめ印刷された写真プリントの表面にシワ等が発生しやすい場合、その部分を切り離して別々に造ってから背景写真に合成させる。
【0024】
例えば、写真プリントの上半身と、頭の部分を別々に作成して合成させると、写真プリント表面のシワ防止と同時に、より立体感の拡大を計れる。
【0025】
実施例1における形態において、あらかじめ印刷された写真プリントの画像で、特に強調したい部分を更に立体化すると超立体的表現になる。
【0026】
例えば、目の周辺を超立体的に表現させるためには、あらかじめ印刷された写真プリントを2枚用意し、1枚目は実施例1と同じ方法で造られた全体の立体写真で、その際眼球部分はあらかじめカットしてオープンにしておく。もう1枚の写真プリントは、眼球部分のみを切り取り、1枚目の全体写真でオープンにされた眼球に接着しておく。硬化後、1枚目の全体写真プリントの目の周辺が、原型に合致するように調整してから、写真全体を接着する。このように強調したい部分と全体写真を2段階に分けて作業することによって、依り立体感が増幅する。
又、市販のまつ毛を直接、立体写真プリントに接着すると、より立体感が増す。
【0027】
口唇周辺の場合も同様に、印刷された写真画像で歯が見える場合においては、歯のデータを元に、歯科用の義歯用人工歯を削合、形成して実施例1で作成された立体写真プリント被写体の歯列部分に合成、接着すると依り立体感が増す。
【0028】
結婚式でのブーケや小物、ペット愛用のバンダナなどを直接、立体化された写真表面に貼ると思い出が強く残ったり又、芸術的な表現を楽しむことができる。
【実施例2】
【0029】
あらかじめ印刷された写真プリント(1)から、目的の部分の被写体を取り出して、その部分だけを立体化させて物体を造る、実施例2に係る形態について説明する。
【0030】
図2は,あらかじめ印刷された写真プリント(1)から目的の部分(p5)のみを取り出して、その部分だけを立体的な物体に加工するための作成工程図です
実施例2における物体の加工方法は、おおむね厚み、及び全長も大きくなるために、上半身と頭の部分を別々に造ってから合成させます(シワ防止対策)が、ここでは1枚の写真プリントでの作成工程を示します。
【0031】
ステップ1では、あらかじめ印刷された写真プリント(1)の上に、透明のアクリルシート(2)を載せて固定し、目的の被写体(p5)の輪郭や特徴などのデータを元に、目視によってアクリルシート(2)上に技術者自らが転写、印字などを行う。
【0032】
ステップ2ではアクリルシート(2)の上に転写されたデータを元に、樹脂粘土(3)で立体的に築盛し、硬化したものが原型(S1)となる。原形の厚みが多い場合は、厚紙を樹脂粘土と併用してもいい。その場合は防水対策と補強を兼ねてマニュキアを塗布する。
【0033】
ステップ3では立体化された原型(S1)の周辺を枠取り(4)し、原型に石膏分離材を塗布した後に、錬和した普通石膏(5)を注入する。普通石膏が硬化すると鋳型(S2)が出来、これは次のステップの加圧用となる
【0034】
ステップ4では、あらかじめ印刷された写真プリント(1)を、正しい位置に仮り留めをして、その表面をラップフイルム(6)で覆い保護する。ステップ2の原型(S1)とステップ3の鋳型(S2)の間に写真プリント(1)を挟み、2日間60キログラムの圧力をもってプレス器(7)で加圧をする(4−1)
【0035】
ステップ5では、立体化され独立した写真プリント(8)の正面観(p2)及び側面観(p1)。その写真プリント周辺の余分な部分をカットしてから、ステップ2で造られた原型(S1)に正確な位置を確認しながら、専用接着剤で接着する(8+s1)。
立体化された写真プリント(8)と原型(S!)は、独立した物体(p5)として出来上がります。
完成した立体的な物体は、元の印刷された写真プリンとの背景写真に貼ったり、単体としてば、携帯用の機能を持つ癒し系や手元供養などの用途がある。又、全く違う背景写真に貼ると新しい写真画像ができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は以下に記載する項目について利用することが出来る
1家族の記念日や絆等の思い出を立体的に保存、記録。
2胸像写真 顔から胸の1/3を表現する超立体写真。
3広告、宣伝などの立体的な商品見本。
4手元供養の癒し効果としての携帯商品やストラップなど
【符号の説明】
【0037】
1 プリント あらかじめ印刷された写真プリント
2 アクリルシート プリント上に載せてデータを克明に印記するシート
3 樹脂粘土 原型を造るための築盛材
4 枠取り 鋳型を造るための枠
5 普通石膏 工作用普通石膏を錬和する
6 ラップフイルム プリントを保護するための緩衝材1
7 プレス器 簡易型加圧成型器で、垂直に加圧するタイプ
8 立体形成された写真プリント
s1 原型で樹脂粘土から造られる
s2 鋳型で原型を元に石膏で造られた型
p1 側面観
p2 正面観
p5 男性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ印刷された写真プリント上に、樹脂粘土を積層して造った原型を元に石膏で鋳型を造り、前記原型と鋳型の間に写真プリントを挟んで、加圧成型する事を特徴とする立体写真製造方法及び写真プリント
【請求項2】
請求項1の方法において、あらかじめ印刷された写真プリントから、目的の被写体の部分のみを加圧成型を施して、立体とすることを特徴とする独立した物体の製造方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−71570(P2012−71570A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233034(P2010−233034)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(510275703)
【Fターム(参考)】