説明

写真プリントシステム及び写真プリント装置の管理方法

【課題】写真プリント装置を複数台有する場合において、それの調整作業負担や写真感光材料のロスを可及的に低減する。
【解決手段】写真プリント装置PPが複数台備えられ、写真感光材料PMに形成したテストプリントの濃度測定結果に基づいて写真プリント装置PPにおける画像露光条件を定期的に調整する写真プリントシステムにおいて、機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する写真プリント装置PPの複数台を1つのグループにまとめて、そのグループ内の一部の写真プリント装置PPにて前記テストプリントを作製させ、そのテストプリントによって得られた画像露光条件調整用のデータを同じグループに属する他の全ての写真プリント装置PPに適用して画像露光条件の調整を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真感光材料に画像を露光形成して写真プリントを作製する写真プリント装置が複数台と、前記写真プリント装置にて装置調整用の設定画像を写真感光材料に形成したテストプリントの濃度測定結果に基づいて前記写真プリント装置における画像露光条件を定期的に調整するプリント条件調整装置とが備えられた写真プリントシステム、及び、複数台の写真プリント装置が備えられた写真プリントシステムにおいて、前記写真プリント装置にて装置調整用の設定画像を写真感光材料に形成したテストプリントの濃度測定結果に基づいて前記写真プリント装置における画像露光条件を定期的に調整する写真プリント装置の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる写真プリントシステムでは、写真感光材料に画像を露光形成してそれを現像処理することで写真プリントを作製するという写真プリント装置の機能上、各種の要因によって、写真プリント上で得られる画像の発色特性が日々変化してしまうという特質が良く知られている。
このような特質に対処して写真プリントの画像品質を安定させるために、下記特許文献1に記載のように、テストプリントを作製して、そのテストプリントの濃度測定結果から、写真感光材料に対する露光量を調整することが一般的に行われている。
そして、規模の大きなプリントショップのように複数台の写真プリント装置を保有する店舗では、従来、各写真プリント装置毎に上記のテストプリントを作製して画像露光条件を調整するという作業が行われていた。
【特許文献1】特開2006−126257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、保有する写真プリント装置の台数が多くなると、日々の画像露光条件の調整作業の作業負担は極めて大となり、熟練した作業者を十分には確保し難いという状況もあいまって、装置の調整作業負担の軽減が求められていた。
更には、テストプリントの作製は装置調整をする上で必須のものではあるが、顧客に提供するものではないので、その分については写真感光材料のロスになり、個々の写真プリント装置でテストプリントを作製すると、全体としては写真感光材料の大きなロスになってしまう。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、写真プリント装置を複数台有する場合において、それの調整作業負担や写真感光材料のロスを可及的に低減する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願の第1の発明は、写真感光材料に画像を露光形成して写真プリントを作製する写真プリント装置が複数台と、前記写真プリント装置にて装置調整用の設定画像を写真感光材料に形成したテストプリントの濃度測定結果に基づいて前記写真プリント装置における画像露光条件を定期的に調整するプリント条件調整装置とが備えられた写真プリントシステムにおいて、前記プリント条件調整装置は、機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する前記写真プリント装置の複数台を1つのグループにまとめて、そのグループ内の一部の前記写真プリント装置にて前記テストプリントを作製するように指示すると共に、そのテストプリントによって得られた画像露光条件調整用のデータを同じグループに属する他の全ての前記写真プリント装置に適用して画像露光条件の調整を行わせるように構成されている。
【0005】
すなわち、複数台の写真プリント装置が存在する場合、厳密に見ると、個々の写真プリント装置でプリント特性(例えば、所定の画像の画像データで写真感光材料を露光して作製した写真プリント上でどのような濃度の画像が得られるかを示す特性として把握できる)の経時変化の仕方は異なるものである。
しかしながら、複数台の写真プリント装置におけるプリント特性の経時変化を全体的に観察すると、夫々の写真プリント装置のプリント特性が無秩序に経時変化するのではなく、機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似し、実用的には同一の経時変化量とみなして差し支えないものが複数台存在する場合がある。
このような場合に、それらの同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する写真プリント装置を1つのグループにまとめて管理し、そのグループに属する写真プリント装置については、全ての写真プリント装置でテストプリントを作製して画像露光条件を調整するのではなく、そのグループに属する写真プリント装置のうちの一部の写真プリント装置を選択してテストプリントを作製し、作製したテストプリントの濃度測定結果に基づいて画像露光条件の調整を行う。
そして、テストプリントを作製しなかった残りの写真プリント装置についても、上記一部の写真プリント装置で作製したテストプリントの濃度測定結果に基づいて画像露光条件の調整を行うのである。
【0006】
又、本出願の第2の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記プリント条件調整装置は、前記写真感光材料の取扱い態様が同一又は類似する前記写真プリント装置を1つの前記グループに属するものとして管理するように構成されている。
すなわち、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が互いに類似する写真プリント装置は、前記写真感光材料の取扱い態様が同一又は類似するものである場合が顕著である。
そこで、写真感光材料の取扱い態様に着目して、同一期間でのプリント特性の経時変化の量の類否を推定しているのである。
【0007】
又、本出願の第3の発明は、上記第2の発明の構成に加えて、前記写真プリント装置が1つの前記グループに属するか否かは、前記写真感光材料に画像を露光形成する画像露光装置の露光方式が同一であるか否か、前記写真プリント装置で使用する前記写真感光材料の発色特性が同一又は類似するか否か、前記写真プリント装置のプリント処理速度が同一又は類似するか否か、及び、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量が同一又は類似するか否かのうちの少なくとも1つの基準によって分類されて構成されている。
【0008】
すなわち、前記グループを構成する場合の判断基準とする前記写真感光材料の取扱い態様が同一又は類似するか否かについて、それの具体的な基準として、前記写真感光材料に画像を露光形成する画像露光装置の露光方式が同一であるか否か、前記写真プリント装置で使用する前記写真感光材料の発色特性が同一又は類似するか否か、前記写真プリント装置のプリント処理速度が同一又は類似するか否か、及び、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量が同一又は類似するか否かのうちの少なくとも1つの基準を用いる。
【0009】
前記写真感光材料に画像を露光形成する画像露光装置の露光方式としては、写真感光材料上でレーザビームを走査して画像を露光形成するレーザビーム露光方式、PLZT光シャッタや液晶式光シャッタ等により光源からの光を入り切りして写真感光材料上に画像を露光形成する光シャッタ方式、更には、蛍光管による微小な発光部のアレイにて写真感光材料上に画像を露光形成する蛍光管方式等がある。
これらは、画像を形成する基となる光を写真感光材料上に照射するものであるので、それの動作特性の経時変化が写真プリント装置全体のプリント特性の経時変化に大きく影響し、写真感光材料上に照射する光の生成方式が異なることからも露光方式によって特性の経時変化の量が異なってくる。
【0010】
又、写真感光材料の発色特性は写真感光材料の品種によって異なり、発色特性の経時変化も同様に異なってくるので、その影響によって写真プリント装置全体のプリント特性の経時変化の量が異なってくる。
更に、プリント処理速度は写真プリント装置の処理能力であり写真プリント装置の機種に依存するものであるが、このプリント処理速度が異なると、例えば、写真感光材料の現像処理液の劣化の進行速度が異なること等によって写真感光材料の発色特性の変化の仕方も異なり、写真プリント装置全体のプリント特性の経時変化の量が異なってくる。
更に又、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量が異なる場合も、写真感光材料の現像処理液の劣化の進行度合いが異なり、写真プリント装置全体のプリント特性の経時変化の量が異なってくる。
【0011】
又、本出願の第4の発明は、上記第1〜第3のいずれかの発明の構成に加えて、前記プリント条件調整装置は、1つの前記グループに属する複数台の前記写真プリント装置について、定期的に繰り返される画像露光条件の調整作業で、前記テストプリントを作製する前記写真プリント装置を順次に変更して行くように構成されている。
すなわち、1つのグループに属する写真プリント装置は同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似するので、その1つのグループ内では、テストプリントを作製しない写真プリント装置の画像露光条件の調整を、他の写真プリント装置で作製したテストプリントの濃度測定結果に基づいて補正することができる。
但し、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が全く同一というわけではないので、他の写真プリント装置で作製したテストプリントによる画像露光条件の調整を繰り返すと、徐々に誤差が蓄積されることになる。
そこで、1つのグループ内でテストプリントを作製する写真プリント装置を順次に変更して行くことで、上記のような誤差の蓄積を防止している。
【0012】
又、本出願の第5の発明は、写真感光材料に画像を露光形成して写真プリントを作製する写真プリント装置が複数台備えられた写真プリントシステムで、前記写真プリント装置にて装置調整用の設定画像を写真感光材料に形成したテストプリントの濃度測定結果に基づいて前記写真プリント装置における画像露光条件を定期的に調整する写真プリント装置の管理方法において、機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する前記写真プリント装置の複数台を1つのグループにまとめて、そのグループ内の一部の前記写真プリント装置にて前記テストプリントを作製し、そのテストプリントによって得られた画像露光条件調整用のデータを同じグループに属する他の全ての前記写真プリント装置に適用して画像露光条件の調整を行う。
【0013】
複数台の写真プリント装置におけるプリント特性の経時変化を全体的に観察すると、夫々の写真プリント装置のプリント特性が無秩序に経時変化するのではなく、機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似し、実用的には同一の経時変化量とみなして差し支えないものが複数台存在する場合がある。
このような場合に、それらのプリント特性の経時変化の量が類似する写真プリント装置を1つのグループにまとめて管理し、そのグループに属する写真プリント装置については、全ての写真プリント装置でテストプリントを作製して画像露光条件を調整するのではなく、そのグループに属する写真プリント装置のうちの一部の写真プリント装置を選択してテストプリントを作製し、作製したテストプリントの濃度測定結果に基づいて画像露光条件の調整を行う。
そして、テストプリントを作製しなかった残りの写真プリント装置についても、上記一部の写真プリント装置で作製したテストプリントの濃度測定結果に基づいて画像露光条件の調整を行うのである。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明によれば、1つのグループ内の一部の写真プリント装置でテストプリントを作製し、そのテストプリントの濃度測定結果に基づいてテストプリントを作製しなかった残りの写真プリント装置の画像露光条件の調整をも行うので、画像露光条件の調整作業のほとんどの部分を占めるテストプリントの作製作業とそのテストプリントの濃度測定作業とを一部の写真プリント装置について行うのみで良く、写真プリント装置を複数台有する場合において、それの調整作業負担や写真感光材料のロスを可及的に低減できるものとなった。
【0015】
又、上記第2の発明によれば、写真感光材料の取扱い態様に着目して、同一期間でのプリント特性の経時変化の量の類否を推定しているので、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似するもののグループ分けを的確に行うことができる。
又、上記第3の発明によれば、前記写真感光材料に画像を露光形成する画像露光装置の露光方式が同一であるか否か、前記写真プリント装置で使用する前記写真感光材料の発色特性が同一又は類似するか否か、前記写真プリント装置のプリント処理速度が同一又は類似するか否か、及び、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量が同一又は類似するか否かのうちの少なくとも1つの基準を用いて、同一期間でのプリント特性の経時変化の量の類否を推定しているので、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似するもののグループ分けを一層的確に行うことができる。
【0016】
又、上記第4の発明によれば、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似するグループ内で、テストプリントを作製する写真プリント装置を順次に変更して行くことで、調整誤差の蓄積を防止することができ、1つのグループに属する写真プリント装置全体の調整精度を高精度に維持することができる。
又、上記第5の発明によれば、1つのグループ内の一部の写真プリント装置でテストプリントを作製し、そのテストプリントの濃度測定結果に基づいてテストプリントを作製しなかった残りの写真プリント装置の画像露光条件の調整をも行うので、画像露光条件の調整作業のほとんどの部分を占めるテストプリントの作製作業とそのテストプリントの濃度測定作業とを一部の写真プリント装置について行うのみで良く、写真プリント装置を複数台有する場合において、それの調整作業負担や写真感光材料のロスを可及的に低減できるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の写真プリントシステムの実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態の写真プリントシステムPSは、ブロック構成図として示す図1及び店舗に設置した状態の外観を示す図2に示すように、ネットワークNTにて通信可能に接続された複数台(より具体的には、4台)の写真プリント装置PPを備えて構成されている。
各写真プリント装置PPは、いわゆるミニラボと称されるもので、図1等に示すように、各種のソースから画像データを取込んで写真プリント作製用の画像データを生成する画像入力装置IRと、画像入力装置IRから送られてくる写真プリント作製用の画像データに基づいて写真感光材料PMの一例である印画紙2に画像を露光形成して写真プリントとして仕上げる露光・現像装置EPとを主要部として構成されている。
尚、本実施の形態では、4台の写真プリント装置PPは全て同一の機種である場合を例示しており、図1では、そのうちの1台の写真プリント装置PPについてのみ内部構成等をブロック図で示している。
【0018】
〔画像入力装置IRの概略構成〕
画像入力装置IRには、図1等に概略的に示すように、写真フィルムの駒画像を読み取るフィルムスキャナ3と、メモリーカードリーダ,光磁気ドライブ及びCD−Rドライブ等を備えた外部入出力装置4と、パーソナルコンピュータにて構成されてフィルムスキャナ3や外部入出力装置4の制御等を実行する主制御装置5とが備えられ、更に、主制御装置5には、仕上がりプリント画像をシミュレートしたシミュレート画像や各種の制御用の情報を表示するモニタ5aと、露光条件の手動設定等や制御情報の入力操作をするための操作卓5bと、後述するテストプリントの画像濃度を測定する濃度計6とが接続されている。
主制御装置5には、図示を省略するが、更に、フィルムスキャナ3から入力された写真フィルムの駒画像の画像データを写真プリントの作製に適した画像に画像処理して写真プリント作製用の画像データとして出力する画像処理装置が備えられている。
【0019】
〔露光・現像装置EPの概略構成〕
露光・現像装置EPは、筐体内部に、レーザビーム露光方式で印画紙2上に画像を露光形成する露光ユニット20と、露光ユニット20を制御する露光制御装置21と、露光ユニット20にて露光された印画紙2を現像処理する現像処理装置22と、筐体上面に配置された印画紙マガジン11から引き出された印画紙2を多数の搬送ローラ23等にて現像処理装置22へ搬送する印画紙搬送系PTとが設けられている。
【0020】
写真プリント装置EPの筐体外部には、図2に概略的に示すように、現像処理装置22にて現像処理及び乾燥処理された印画紙2(仕上がり写真プリント)をオーダ毎に分類するためのソータ24と、排出口から排出された印画紙2をソータ24へ搬送するコンベア25とが設けられている。
更に、印画紙搬送系PTの搬送経路の途中には、印画紙マガジン11から引き出された長尺の印画紙2を設定プリントサイズに切断するカッタ26が備えられている。
そのカッタ26にて所定のプリントサイズに切断された印画紙2は、露光ユニット20による露光位置まで搬送されて来ると、主制御装置5から送られてきた写真プリント作製用の画像データに基づいて露光ユニット20にて画像が露光形成される。
画像が露光形成された印画紙2は更に現像処理装置22へと搬送され、夫々所定の現像処理液が充填された現像処理槽を順次に通過することで現像処理され、更に乾燥処理された後に仕上がり写真プリントとして排出される。
【0021】
〔セットアップ作業〕
上記構成の写真プリントシステムPSでは、各写真プリント装置PPで作製される写真プリントのプリント画質を高品質に維持するために、各写真プリント装置PPの画像露光条件を調整するセットアップ作業を実施する。
このセットアップ作業には、写真プリント装置PPが店舗に搬入された際に実施されるイニシャルセットアップ作業と、写真プリント装置の稼働開始後に定期的(より具体的には、1日に1回)に実施されるデイリーセットアップ作業とがある。
イニシャルセットアップ作業とデイリーセットアップ作業とは基本的に同様の調整作業であり、何れも、装置調整用の設定画像を印画紙2に形成したテストプリントを作製し、そのテストプリントの濃度測定結果に基づいて、写真プリント装置PPの画像露光条件を調整する。
但し、イニシャルセットアップ作業はデイリーセットアップ作業に比較して、より高精度の調整作業が実施され、店舗に設置された当初の写真プリント装置PPの写真プリント作製品質を高精度に所定の品質に設定する。
【0022】
上記のイニシャルセットアップ作業は各写真プリント装置PP毎に実施されるものであるが、デイリーセットアップ作業については実施の態様を選択することができる。
デイリーセットアップ作業の実施形態の選択肢は標準セットアップと簡略セットアップとの2通りあり、標準セットアップは各写真プリント装置PP毎に個別に実施する形態である。
又、簡略セットアップは、機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する写真プリント装置PPの複数台を1つのグループにまとめて、そのグループ内の一部の写真プリント装置PPにてテストプリントを作製し、そのテストプリントによって得られた画像露光条件調整用のデータを同じグループに属する他の全ての写真プリント装置PPに適用して画像露光条件の調整を行わせる形態である。
尚、ここで言う「類似」とは、設計者又は操作者が複数台の写真プリント装置間のテストプリントの発色特性を比較した場合、実用的に同一の経時変化とみなして差し支えない範囲の発色特性差を示すものである。
【0023】
以下、この簡略セットアップについて説明する。
簡略セットアップにおけるグループは、上記の通り、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する写真プリント装置PPの複数台を1つのグループにまとめたものであるが、より具体的には、写真感光材料PMの1例である印画紙2の取扱い態様が同一又は類似する写真プリント装置PPが1つのグループに属するものとして管理されている。
上記の印画紙2の取扱い態様が同一又は類似するか否かは、次の4つの基準によって分類されている。
すなわち、印画紙2に画像を露光形成する画像露光装置(本実施の形態では露光ユニット20)の露光方式が同一であるか否か、写真プリント装置PPで使用する印画紙2の発色特性が同一又は類似するか否か、写真プリント装置PPのプリント処理速度が同一又は類似するか否か、及び、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量が同一又は類似するか否かの4つの基準である。
【0024】
本実施の形態では、この4つの基準の全てにおいて「同一又は類似する」となる写真プリント装置PPを、印画紙2の取扱い態様が同一又は類似するものとし、そのような写真プリント装置PPを、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する写真プリント装置PPとして1つのグループにまとめて管理する。
但し、写真プリント装置PP間の調整ばらつきの許容範囲によっては、更に条件を緩和しても良く、上記の4つの基準のうちの少なくとも1つの基準によって前記グループへの属否が分類されるものであれば良いが、画像露光装置の露光方式が同一であるか否かの基準を必ず含める状態で上記の基準を適宜に組合わせることが好ましい。
【0025】
前記簡略セットアップでの動作は、4台の写真プリント装置PPの主制御装置5のうちの1台が中心となり、図3のフローチャートに示す「調整指令処理」を実行して全体の進行を管理する。もちろん、4台の写真プリント装置PPの主制御装置5とは別に管理用のコンピュータを備えて図3の処理を実行させるようにしても良い。
写真プリント装置PPが1日の作業を開始する際の初期動作の一部として実行される図3の処理が開始されると、他の全ての写真プリント装置PPの主制御装置5に対して、画像露光装置(露光ユニット20)の露光方式(ステップ#1)、使用している印画紙2の品種(ステップ#2)、処理能力(ステップ#3)、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量(ステップ#4)を順次に問い合わせる。
【0026】
ステップ#1〜ステップ#4の問い合わせを受けた各主制御装置5では、夫々、上記の問い合わせに対応するものとして、自己の画像露光装置の露光方式、使用している印画紙2の品番、単位時間当たりの写真プリント作製可能枚数、及び、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント枚数のデータを、図3の処理を実行している主制御装置5へ直ちに送り返す。
【0027】
図3の処理を実行している主制御装置5は、ステップ#1〜ステップ#4の問い合わせに対して他の主制御装置5から送られてきた返答に基づいて、テストプリントを作製させる写真プリント装置PPを特定する(ステップ#5)。
この処理は、先ず、他の主制御装置5から送られてきた返答と、自身についてのそれらの情報とを合わせて、前記グループの属否を分類する。
すなわち、上記の4つの基準での判断結果が全て一致するもの同士を1つのグループにまとめる。
【0028】
上記の各基準における具体的な判断について説明すると、印画紙2に画像を露光形成する画像露光装置の露光方式が同一であるか否かについては、各写真プリント装置PPの露光方式名が一致するときに、この基準を満たすものと判断する。
写真プリント装置PPで使用する印画紙2の発色特性が同一又は類似するか否かについては、各写真プリント装置PPで使用している印画紙2の品番が一致するときに、この基準を満たすものと判断する。
写真プリント装置PPのプリント処理速度が同一又は類似するか否かについては、各写真プリント装置PPの単位時間当たりの写真プリント作製可能枚数が一致するときに、この基準を満たすものと判断する。
更に、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量が同一又は類似するか否かについては、プリント枚数を設定枚数毎に段階的に区分し、各写真プリント装置PPでの前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント枚数のデータが属する段階が同じであるときに、この基準を満たすものと判断する。
本実施の形態では、上述のように4台の写真プリント装置PPが同一機種である場合を例示しているので、上記の4基準のうち、画像露光装置の露光方式、及び、機種の仕様として決まっている単位時間当たりの写真プリント作製可能枚数に関しては、4台の写真プリント装置PPで常に一致しており、残りの2つの基準については、各写真プリント装置PPの運用状態によって変化する。
【0029】
上記のグループ分けを行った後、1つのグループ内の一部(具体的には、1台)の写真プリント装置PPをテストプリントを作製する写真プリント装置PPとして特定する。
この1つのグループ内で1台を選択する手法としては、そのグループに属する写真プリント装置PPのうちで前回にテストプリントを作製してからの経過期間が最も長い1台を選択する。この選択を行うために、図3の処理を実行している写真プリント装置PPは、4台全ての写真プリント装置PPについて、過去にテストプリントを作製した日付情報を少なくとも最新のテストプリント作製日の情報を含む状態で記憶保持している。
上記のグループ分けの結果、夫々2台の写真プリント装置PPが属する2つのグループが存在する場合もあるが、そのような場合にも、2つのグループ夫々について1台の写真プリント装置PPをテストプリントを作製する写真プリント装置PPとして特定する。
このような手法でテストプリントを作製する写真プリント装置PPを特定することで、1つのグループに属する複数台の写真プリント装置PPについて、定期的に繰り返される画像露光条件の調整作業で、テストプリントを作製する写真プリント装置PPを順次に変更していくことになっている。
尚、上記のグループに属さない写真プリント装置PPが存在する場合もあるが、その場合には、その写真プリント装置PPがテストプリントを作製する写真プリント装置PPとして特定される。
【0030】
以上のようにして、テストプリントを作製する写真プリント装置PPを特定すると、その特定した写真プリント装置PPに対してテストプリント作製指令を送信する(ステップ#6)。
このテストプリント作製指令を送信する際、送信先の写真プリント装置PPが1つのグループ内から選択された1台である場合には、そのグループに属する他の全ての写真プリント装置PPの識別情報を併せて送信する。
又、何れのグループにも属さない写真プリント装置PPに対しては、何れのグループにも属していないことを示すデータを併せて送信する。
【0031】
以上の図3の処理に対応して、各写真プリント装置PPの主制御装置5は、図4のフローチャートに示す調整処理を実行する。
図4に示す調整処理は、図3の処理を実行している写真プリント装置PPからテストプリント作製指令を受け取ったとき、又は、他の写真プリント装置PPから画像露光条件調整用のデータを受け取ったときに開始される。これは、図3の処理を実行している写真プリント装置PPが自身にテストプリント作製指令を送信したときも同様である。
【0032】
図4の処理では、先ず、テストプリント作製指令を受け取って処理を開始しているときは(ステップ#11)、装置調整用の設定画像の画像データを露光・現像装置EPの露光制御装置21へ送り、テストプリントを作製させる(ステップ#12)。
テストプリントを作製する印画紙2は、調整精度をより向上させるために、特定の品種の印画紙2を使用するように規定しておいても良いが、日々のプリント状況のデータを蓄積しておき、その店舗で最も使用量の多い品種(ペーパー幅及び乳剤面の構成により特定される)の印画紙2を使用してテストプリントを作製しても良い。このようにすれば、その店舗で最もよく利用するいわばメインペーパによって写真プリント装置PPが調整されるので、機器の状態を最適に維持できる。
テストプリントを作製する印画紙2の品種をこのようにして指定する場合は、その品種の印画紙2が印画紙搬送系PTに引き出されていなければ、テストプリントの作製に先立って、操作者に対して使用する印画紙2の交換を要求する。
もちろん、そのような印画紙2の交換を要求せずに、その時点で使用可能な印画紙2をそのまま使用してテストプリントを作製するようにしても良い。
【0033】
このテストプリントに形成される装置調整用の設定画像は、例えば18段階に濃度階調を段階的に変化させたもので良い。
このテストプリントが仕上がりプリントとしてコンベア25上に排出されると、操作者はその仕上がったテストプリントを濃度計6にセットする。
濃度計6は、テストプリントがセットされると自動的にテストプリントの濃度測定を開始し、18段階の濃度階調毎に濃度を測定し、その測定結果を主制御装置5へ送る。
【0034】
主制御装置5は、濃度計6から濃度測定結果を受け取ると(ステップ#13)、画像露光条件調整用のデータを算出する(ステップ#14)。
この画像露光条件は、主制御装置5から送られてくる写真プリント作製用の画像データと、印画紙2に対する露光強度(本実施の形態ではレーザビームの光強度)との対応関係を設定するものであるが、本実施の形態ではその対応関係をルックアップテーブルにて設定しており、ルックアップテーブルのテーブルデータが画像露光条件を意味することになっている。
主制御装置5は、テストプリントの18段階の濃度階調が本来有するべき濃度値と、テストプリントの18段階の濃度測定値との差から、テストプリントの18段階の濃度階調を本来有するべき濃度とするための上記ルックアップテーブルのデーブルデータの補正量を算出し、上記の画像露光条件調整用のデータとする。
【0035】
以上のようにして画像露光条件調整用のデータを求めると、その画像露光条件調整用のデータを、前記テストプリント作製指令と共に送られてきた写真プリント装置PPの識別情報に対応する全ての写真プリント装置PPに対して、その画像露光条件調整用のデータを送信する(ステップ#15)。
前記テストプリント作製指令と共に送られてきたのが、何れのグループにも属していないことを示すデータであれば、ステップ#15ではなにもしない。
主制御装置5は、この後、求めた画像露光条件調整用のデータによって、自己のルックアップテーブルのデータを補正し、画像露光条件を更新する(ステップ#16)。
【0036】
一方、ステップ#15で送信された露光条件調整用のデータを受け取った写真プリント装置PPは、それに伴って図4の処理を開始する。
すなわち、露光条件調整用のデータを受け取った場合であるので(ステップ#11)、ステップ#12〜#15を飛ばして、受け取った露光条件調整用のデータにて自己のルックアップテーブルのテーブルデータを補正する(ステップ#16)。
以上の処理を実行することによって、各写真プリント装置PPの主制御装置5は、テストプリントの濃度測定結果に基づいて写真プリント装置PPにおける画像露光条件を定期的に調整するプリント条件調整装置CCとして機能している。
【0037】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)上記実施の形態では、1つのグループに属する複数台の写真プリント装置PPについて、定期的に繰り返される画像露光条件の調整作業で、テストプリントを作製する写真プリント装置PPを順次に変更していく場合を例示しているが、1つのグループ内からテストプリントを作製する写真プリント装置PPを選び出す手法については適宜に変更可能である。
例えば、1つのグループ内で積算プリント枚数の最も多い印画紙2の品種(ペーパ幅及び乳剤面の構成により特定される)を特定し、その品種の印画紙2を搭載する写真プリント装置PPをテストプリントを作製する写真プリント装置PPとして特定しても良い。
これによって、最も利用頻度の高い印画紙2に対して写真プリント装置PPの調整状態が最適化されることになる。
【0038】
(2)上記実施の形態では、同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する写真プリント装置PPをまとめた1つのグループ内において、テストプリントを作製する写真プリント装置PPを1台だけ選択する場合を例示しているが、1つのグループ内で2台以上の写真プリント装置PPをテストプリントを作製する写真プリント装置PPとして選択するようにしても良い。
この場合、画像露光条件調整用のデータは、複数台の写真プリント装置PPで作製したテストプリントから得られたものを平均する等して求めれば良い。
(3)上記実施の形態では、写真プリント装置PPに搭載する画像露光装置である露光ユニット20は、いずれもレーザビーム露光方式である場合を例示しているが、PLZT光シャッタ方式等の他の露光方式の画像露光装置を備える写真プリント装置がシステム内に存在する場合にも本発明を適用できる。
【0039】
(4)上記実施の形態では、写真感光材料PMとして印画紙2を例示しているが、感光フィルム等の各種の写真感光材料PMを使用する場合にも本発明を適用できる。
(5)上記実施の形態では、テストプリントを作製した写真プリント装置PPから、同じグループに属する他の全ての写真プリント装置PPに対して画像露光条件調整用のデータを送信する場合を例示しているが、画像露光条件調整用のデータの代わりにテストプリントの濃度測定結果自体を同じグループに属する他の全ての写真プリント装置PPに対して送信するようにしても良い。
この場合、画像露光条件調整用のデータは、受け取ったテストプリントの濃度測定結果に基づいて、各写真プリント装置PPにて作成する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態にかかる写真プリントシステムのブロック構成図
【図2】本発明の実施の形態にかかる写真プリントシステムの外観斜視図
【図3】本発明の実施の形態にかかるフローチャート
【図4】本発明の実施の形態にかかるフローチャート
【符号の説明】
【0041】
CC プリント条件調整装置
PM 写真感光材料
PP 写真プリント装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真感光材料に画像を露光形成して写真プリントを作製する写真プリント装置が複数台と、前記写真プリント装置にて装置調整用の設定画像を写真感光材料に形成したテストプリントの濃度測定結果に基づいて前記写真プリント装置における画像露光条件を定期的に調整するプリント条件調整装置とが備えられた写真プリントシステムであって、
前記プリント条件調整装置は、
機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する前記写真プリント装置の複数台を1つのグループにまとめて、そのグループ内の一部の前記写真プリント装置にて前記テストプリントを作製するように指示すると共に、そのテストプリントによって得られた画像露光条件調整用のデータを同じグループに属する他の全ての前記写真プリント装置に適用して画像露光条件の調整を行わせるように構成されている写真プリントシステム。
【請求項2】
前記プリント条件調整装置は、前記写真感光材料の取扱い態様が同一又は類似する前記写真プリント装置を1つの前記グループに属するものとして管理するように構成されている請求項1記載の写真プリントシステム。
【請求項3】
前記写真プリント装置が1つの前記グループに属するか否かは、前記写真感光材料に画像を露光形成する画像露光装置の露光方式が同一であるか否か、前記写真プリント装置で使用する前記写真感光材料の発色特性が同一又は類似するか否か、前記写真プリント装置のプリント処理速度が同一又は類似するか否か、及び、前回の画像露光条件の調整時からの積算プリント処理量が同一又は類似するか否かのうちの少なくとも1つの基準によって分類されて構成されている請求項2記載の写真プリントシステム。
【請求項4】
前記プリント条件調整装置は、1つの前記グループに属する複数台の前記写真プリント装置について、定期的に繰り返される画像露光条件の調整作業で、前記テストプリントを作製する前記写真プリント装置を順次に変更して行くように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の写真プリントシステム。
【請求項5】
写真感光材料に画像を露光形成して写真プリントを作製する写真プリント装置が複数台備えられた写真プリントシステムにおいて、前記写真プリント装置にて装置調整用の設定画像を写真感光材料に形成したテストプリントの濃度測定結果に基づいて前記写真プリント装置における画像露光条件を定期的に調整する写真プリント装置の管理方法であって、
機器の構成、機能又は取扱いが同一であるか又は類似するために同一期間でのプリント特性の経時変化の量が類似する前記写真プリント装置の複数台を1つのグループにまとめて、そのグループ内のいずれかの前記写真プリント装置にて前記テストプリントを作製し、そのテストプリントによって得られた画像露光条件調整用のデータを同じグループに属する他の全ての前記写真プリント装置に適用して画像露光条件の調整を行う写真プリント装置の管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate