説明

冷凍システムおよび貯蔵装置

【課題】冷蔵あるいは冷凍に利用する比較的蒸発温度が低い冷凍システムにおいて、圧縮機の耐久性を損なうことなく、電源投入時の冷凍能力および安定時の冷凍システム性能を向上する。
【解決手段】蒸発器4の温度を検知する蒸発温度検知センサー23と、蒸発器4と圧縮機21を繋ぐ吸入配管の入口部の温度を検知する吸入配管入口温度検知センサー25とを備え、蒸発温度検知センサー23で検知された蒸発温度から決定される目標温度より、吸入配管入口温度検知センサー25で検知された実測値が高い場合は膨張弁の開度を大きくし、吸入配管入口温度検知センサー25で検知された実測値が低い場合は膨張弁の開度を小さくすることで蒸発温度を制御し、吸入配管内での油滞留を防止するとともに、電源投入時および安定時における圧縮機21の吐出冷媒の温度を略一定に保ち、圧縮機21の耐久性を損なうことなく冷凍能力を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒として二酸化炭素を使用した冷凍システムにおいて、冷蔵あるいは冷凍に利用する比較的蒸発温度が低い冷凍システムおよび、この冷凍システムを搭載する保冷庫等の貯蔵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍システムに使用される冷媒による地球温暖化に対する影響を削減するために、自然冷媒として二酸化炭素を使用した冷凍システムが提案されている。また、二酸化炭素を使用した冷凍システムは、主に遷臨界サイクルである点を利用して高い出湯温度を得る給湯機に適用され、また、不燃性である点を利用してカーエアコンに適用されている。
【0003】
ここで、前記二酸化炭素の遷臨界サイクルを使用した冷凍システムは、高い外気温度においては高い高圧圧力に制御する方が高効率な運転ができるため、蒸発器出口に設置されたアキュームレータ内に滞留する液冷媒の量を調整して高圧圧力を制御する構成が適用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、冷蔵あるいは冷凍に利用する比較的蒸発温度が低い冷凍システムにおいては、蒸発温度の低下に伴って吐出ガス温度が非常に高くなるという問題があり、適用が進んでいない。そこで、内部熱交換量を制御して吐出ガス温度の上昇を抑える冷凍システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、一般に冷媒として二酸化炭素を用いた冷凍システムにおいては、圧縮機の冷凍機油として、40℃での動粘度が100mm2/s程度、100℃での動粘度が20mm2/s程度のポリアルキレングリコール冷凍機油が使用される(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
前記ポリアルキレングリコール冷凍機油を前記冷凍機油に用いる主な理由は、蒸発器内の低温低圧条件において分離した油相が二酸化炭素冷媒を良く溶解して低粘度となるとともに、圧縮機内の超臨界状態においては二酸化炭素冷媒をあまり溶解せず圧縮機の潤滑に必要な粘度を維持することができるためである。
【0007】
以下、図面を参照しながら従来の冷凍システムを説明する。
【0008】
図6は従来の冷凍システムの回路構成図、図7は従来の冷凍システムのモリエル線図である。
【0009】
図6に示すように、従来の冷凍システムは、冷媒として二酸化炭素を使用するとともに、圧縮機1、放熱器2、膨張弁3、蒸発器4、アキュームレータ5からなる回路構成を有する。また、放熱器2から膨張弁3へ向かうガス冷媒と、アキュームレータ5から圧縮機1へ向かうガス冷媒との熱交換を行う内部熱交換器6、放熱器2と圧縮機1を外気で空冷する放熱器ファン7、蒸発器4で生成した冷気を保冷庫の庫内(図示せず)へ循環する蒸発器ファン8、放熱器2の出口の冷媒圧力と温度を検知するセンサー9をそれぞれ備えている。
【0010】
ここで、膨張弁3は、センサー9で検知された放熱器2の出口の冷媒圧力と温度に基づいて、膨張弁制御装置(図示せず)によってその絞り量が最適制御されるものである。
【0011】
以上のように構成された従来の冷凍システムについて、以下その動作を説明する。
【0012】
圧縮機1で圧縮されて吐出された冷媒は、放熱器2で外気温度近傍まで冷却され、さらに内部熱交換器6で冷却された後、膨張弁3で減圧されて、蒸発器4で蒸発する。そして、蒸発器4で蒸発できなかった液冷媒をアキュームレータ5内部に貯留しながら、アキュームレータ5からガス冷媒のみが内部熱交換器6を介して圧縮機1へ還流する。
【0013】
ここで、外気温度が高い場合、センサー9で検知される放熱器2の出口の冷媒温度が高くなり、膨張弁制御装置によって放熱器2の出口の冷媒圧力が最適な所定量まで高くなるように膨張弁3の開度が絞られる。膨張弁3の開度を絞ることで放熱器2の出口の冷媒圧力が増大するのは、膨張弁3の開度を絞ることによって蒸発温度が低下して、蒸発器4での熱交換量が大きくなるとともに冷媒循環量が低下する結果、蒸発器4における出口の冷媒の乾き度が増大してアキュームレータ5内部に貯留される冷媒量が減少するためである。
【0014】
また、外気温度が低い場合、センサー9で検知される放熱器2の出口の冷媒温度が低くなり、膨張弁制御装置(図示せず)によって放熱器2の出口の冷媒圧力が最適な所定量まで低くなるように膨張弁3の開度が開き方向に調整される。膨張弁3の開度を調整することで放熱器2の出口の冷媒圧力が低下するのは、膨張弁3の開度を開けることによって蒸発温度が上昇して、蒸発器4での熱交換量が小さくなるとともに冷媒循環量が増大する結果、蒸発器4における出口の冷媒の乾き度が減少してアキュームレータ5内部に貯留される冷媒量が増加するためである。
【0015】
次に、従来の冷凍システムの冷媒の状態変化について図7を用いて詳細に説明する。
【0016】
図7は、横軸を冷媒のエンタルピーh、縦軸を冷媒の圧力Pとするモリエル線図であり、a、b、c、d、eで示す各点は、保冷庫の庫内(図示せず)が所定温度まで低下した定常状態にある安定時の冷媒の状態変化を示し、a’、b’、c’、d’、e’で示す各点は、前記保冷庫の庫内(図示せず)が外気温度の近傍にある電源投入時の冷媒の状態変化を示す。
【0017】
安定時において、圧縮機1から吐出された冷媒は温度T2のa点であり、放熱器2で冷却されて温度T1のb点となる。このb点において、冷媒は超臨界状態にあり、液化しないことが遷臨界サイクルの特長である。
【0018】
次に、膨張弁3で減圧されて気液混合状態のc点となり、蒸発器4に供給される。蒸発器4で蒸発した冷媒はd点となり、液冷媒が滞留するアキュームレータ5をそのまま通過した後、内部熱交換器6等で加熱されて温度T0のe点となって圧縮機1に還流する。
【0019】
ここで、温度T1は外気温度の近傍にあり、外気温度の変動によって変化する。この時、膨張弁制御装置によって、外気温度が高ければa点およびb点で示される高圧圧力がより高い所定値に調整され、外気温度が低ければa点およびb点で示される高圧圧力がより低い所定値に調整される。
【0020】
この結果、広範囲の外気温度においてその外気温度で得られる最適な冷凍効率が実現できる。また、この調整範囲内でアキュームレータ5内に液冷媒が貯留していれば、d点が冷媒の飽和気相線上にあり、e点の温度T0がT1より低く保たれることで、圧縮機1から吐出されるa点の冷媒温度T2が異常に上昇することが抑制できる。
【0021】
一方、電源投入時においては、圧縮機1から吐出された冷媒は温度T3のa’点であり、放熱器2で冷却されて温度T1のb’点となる。b’点において冷媒は安定時と同様に超臨界状態にある。
【0022】
次に、膨張弁3で減圧されて気液混合状態のc’点となり、蒸発器4に供給される。蒸発器4では冷媒が完全に蒸発してd’点となり、アキュームレータ5をそのまま通過した後、内部熱交換器6等で加熱されて温度T1のe’点となって圧縮機1に還流する。
【0023】
ここで、電源投入時に、蒸発器4およびアキュームレータ5において、冷媒が完全に蒸発して冷媒の飽和気相線よりも高い温度であるd’点になるのは、保冷庫の庫内(図示せず)が外気温度の近傍にあるために、安定時に比べて蒸発器4での蒸発能力が著しく大きくなるためである。そして、安定時にアキュームレータ5内に滞留するべき液冷媒が高圧側に供給されて、a’点およびb’点で示される高圧圧力をa点およびb点で示される安定時の高圧圧力よりも高く保つことになる。
【0024】
なお、電源投入時においては、膨張弁制御装置によって膨張弁3の絞り量を変化させてもアキュームレータ5には液冷媒が滞留せず、高圧圧力が大きく変化しないので、保冷庫の庫内(図示せず)が所定温度まで低下した定常状態になるまで、安定時と同程度の蒸発温度となるように絞り量を固定値としている。
【0025】
その結果、d’点とc’点のエンタルピーhの差で示される電源投入時の冷凍効果を、d点とc点のエンタルピーhの差で示される安定時の冷凍効果よりも増大することができ、冷蔵あるいは冷凍機器に要求される定常状態到達までの時間を短縮することができる。
【特許文献1】特表平3−503206号公報
【特許文献2】特開2000−346466号公報
【非特許文献1】出光トライボレビュー、No.25、P1552−1557(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上記従来の構成では、圧縮機内の超臨界状態において圧縮機1の潤滑に必要な粘度を維持するために、二酸化炭素冷媒をあまり溶解しない高粘度の冷凍機油を使用しなければならないが、比較的高い蒸発温度0℃〜20℃で運転されるカーエアコン等に比べて、比較的低い蒸発温度−50℃〜0℃で運転される冷蔵あるいは冷凍機器においては、圧縮機1に還流するe点あるいはe’点の冷媒温度が高く、かつ冷媒圧力が低いために配管内で分離した冷凍機油に冷媒があまり溶解せず、高粘度な冷凍機油が滞留することで配管が閉塞したり、起動時に滞留した油が一度に大量に還流して、圧縮機1の耐久性を損なう恐れがあった。
【0027】
特に、冷凍システムを上部に配置する冷蔵あるいは冷凍機器においては、蒸発器4から圧縮機1に還流する際の揚程が大きく、この問題が顕著に現れる。
【0028】
一方、圧縮機1に還流するe点あるいはe’点の冷媒温度を蒸発温度と同一になるまで下げると、液冷媒が連続的に圧縮機1に還流するため、冷凍機油の滞留の問題は解消されるが液冷媒の圧縮に伴い圧縮機1の耐久性を損なう恐れがあった。
【0029】
さらに、e点あるいはe’点の冷媒温度が高く、かつ冷媒圧力が低いために、電源投入時において圧縮機1から吐出されたa’点の冷媒温度T3が異常に上昇して圧縮機の耐久性を損なう恐れがあった。
【0030】
本発明は、従来の課題を解決するもので、冷蔵あるいは冷凍機器に要求される圧縮機の耐久性を損なうことなく、電源投入時の冷凍能力および安定時における冷凍効率等の冷凍システム性能の向上を図る冷凍システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記従来の課題を解決するために、本発明の冷凍システムおよびこれを備えた貯蔵装置は、アキュームレータと内部熱交換器を搭載せず、蒸発器の蒸発温度と、蒸発器と圧縮機を繋ぐ吸入配管の温度の差を20℃以内に保つようにしたものである。
【0032】
これによって、吸入配管内で分離した冷凍機油中の冷媒溶解量を確保することで、動粘度を30mm2/s以下、望ましくは10mm2/s以下に抑制し、配管内での油滞留を防止することができる。さらに、電源投入時および安定時における圧縮機の吐出冷媒の温度を略一定に保つことで圧縮機の耐久性を損なうことなく、電源投入時に蒸発温度を高く保つことで冷媒循環量を増大させて冷凍能力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の冷凍システムおよびこれを備えた貯蔵装置は、簡易な構成で膨張弁の開度と圧縮機の能力を制御することで、冷蔵あるいは冷凍機器に要求される圧縮機の耐久性を損なうことなく、電源投入時の冷凍能力および安定時における冷凍効率等の冷凍システム性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の請求項1に記載の発明は、圧縮機と、放熱器と、膨張弁と、蒸発器を具備した冷凍システムにおいて、冷媒として二酸化炭素を主成分とする自然冷媒を使用するとともに、前記蒸発器の蒸発温度を−50℃〜0℃の範囲として、前記蒸発器の蒸発温度と前記圧縮機の吸入配管温度との差を20℃以内に保つようにしたものである。
【0035】
これにより、前記圧縮機の吸入配管内で分離した冷凍機油中の冷媒溶解量を確保し、配管内での油滞留を防止することができる。
【0036】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記圧縮機の潤滑油として40℃での動粘度が30mm2/s〜300mm2/sであるポリアルキレングリコール冷凍機油を使用したものである。
【0037】
かかることにより、前記吸入配管内で分離した冷凍機油中の冷媒溶解量を確保でき、動粘度を30mm2/s以下、望ましくは10mm2/s以下に抑制し、配管内での油滞留を防止することができる。
【0038】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記蒸発器の蒸発温度を検知する蒸発温度センサーと、前記圧縮機の吸入配管における圧縮機近傍の温度を検知する吸入配管出口温度センサーを備え、前記蒸発温度センサーで検知した蒸発温度から決定される目標温度より、前記吸入配管出口温度センサーで検知された吸入配管温度が高い場合に前記膨張弁の開度を大きくし、低い場合に前記は膨張弁の開度を小さくすることで蒸発温度を制御するようにしたものである。
【0039】
かかることにより、前記吸入配管内で分離した冷凍機油中の冷媒溶解量を確保し、動粘度を30mm2/s以下、望ましくは10mm2/s以下に抑制し、配管内での油滞留を防止することができるとともに、電源投入時および安定時における圧縮機の吐出冷媒の温度を略一定に保つことができる。その結果、圧縮機の耐久性を損なうことなく、電源投入時に蒸発温度を高く保つことで冷媒循環量を増大させて冷凍能力の向上を図ることができる。
【0040】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記蒸発器の蒸発温度を検知する蒸発温度センサーと、前記圧縮機の吸入配管における蒸発器近傍の温度を検知する吸入配管入口温度センサーを備え、前記蒸発温度センサーで検知した蒸発温度から決定される目標温度より、前記吸入配管入口温度センサーで検知された吸入配管温度が高い場合に前記膨張弁の開度を大きくし、低い場合に前記膨張弁の開度を小さくすることで蒸発温度を制御するものである。
【0041】
かかることにより、比較的外気温度の影響を受けない圧縮機の吸入配管における蒸発器近傍の温度を基に制御することができ、液バックを防止しながら精度よく吸入配管の温度を調整することができる。また、前記吸入配管内で分離した冷凍機油中の冷媒溶解量を確保することで、動粘度を30mm2/s以下、望ましくは10mm2/s以下に抑制し、配管内での油滞留を防止することができ、電源投入時および安定時における圧縮機の吐出冷媒の温度を略一定に保ち、前記圧縮機の耐久性を損なうことなく、電源投入時に蒸発温度を高く保つことができ、冷媒循環量を増大させて冷凍能力の向上を図ることができる。
【0042】
本発明の請求項5に記載の発明は、前記圧縮機を能力可変可能な圧縮機とし、被冷却室内の空気温度の高低で圧縮機の能力を制御するものである。
【0043】
かかることにより、特に被冷却室内の空気温度が高い電源投入時において、前記圧縮機の能力を増大することで蒸発器出口温度および吸入配管の温度を速やかに低下させることができ、電源投入時の吸入配管内での油滞留を防止することができるとともに、被冷却室内の空気温度が低下した安定時には、圧縮機の能力を減少することで効率の高い運転が実現できる。
【0044】
本発明の請求項6に記載の発明は、前記圧縮機のシェルの温度、あるいは吐出配管における圧縮機近傍の温度を検知する高温保護検知センサーを備え、前記高温保護検知センサーによって検出した温度が所定値を超えた場合に、前記圧縮機の能力を所定時間毎に低下させる制御を行うものである。
【0045】
かかることにより、前記放熱器が埃等によって目詰まりする等、放熱能力の低下に起因して前記圧縮機の能力を低下させ、これによって生じる異常高温により、圧縮機の耐久性を低下させるといった不具合を防止することができる。
【0046】
本発明の請求項7に記載の発明は、上記の冷凍システムを搭載して、食品を冷蔵あるいは冷凍温度で保存する貯蔵装置としたものである。
【0047】
かかる貯蔵装置は、特に蒸発温度が低い運転条件であっても簡易な構成で膨張弁の開度と圧縮機の能力を制御することで、圧縮機の耐久性を損なうことなく、電源投入時の冷凍能力および安定時における冷凍効率等の冷凍システム性能の向上を図ることができ、信頼性の高い貯蔵装置が得られる。
【0048】
以下、本発明による冷凍システムの実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0050】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷凍システムの冷媒回路図、図2は、同実施の形態1における冷凍システムの制御基準線を示す図、図3は、同実施の形態1における冷凍システムの冷凍機油の動粘度特性を示す図、図4は、同実施の形態1における冷凍システムのモリエル線図である。
【0051】
図1に示すように、実施の形態1の冷凍システムは、冷媒として二酸化炭素を使用し、また、圧縮機21は、回転数に比例して能力が変化する能力可変型の圧縮機(以下、圧縮機と称す)を採用している。そして、本冷凍システムの冷凍サイクルは、圧縮機21、放熱器2、電動膨張弁22、蒸発器4を配管により環状に連結することによって構成されている。
【0052】
また、前記冷凍サイクルは、蒸発器4の蒸発温度を検知する蒸発温度検知センサー23と、蒸発器4と圧縮機21を接続する吸入管24の入口部の温度を検知する吸入配管入口温度検知センサー25と、被冷却室(図示せず)の室内空気温度を検知する室内温度センサー26を備えている。
【0053】
ここで、圧縮機21の潤滑油として、40℃の動粘度が約100mm2/sであるポリアルキレングリコール冷凍機油を使用している。また、図1中の実線矢印は冷媒の流れを示し、破線矢印は、蒸発器4および放熱器2を通過する風の流れを示している。
【0054】
以上のように構成された実施の形態1の冷凍システムについて、以下その動作を説明する。
【0055】
圧縮機21で圧縮され、吐出された冷媒は、放熱器2で外気温度近傍まで冷却された後、電動膨張弁22で減圧されて、蒸発器4で蒸発する。そして、蒸発器4で蒸発したガス冷媒が圧縮機21へ還流する。
【0056】
ここで、圧縮機21は、室内温度センサー26で検知された被冷却室の室内空気温度Trと設定温度に基づいて、圧縮機制御装置27によりその回転数が最適制御されるものである。
【0057】
また、電動膨張弁22は、蒸発温度検知センサー23で検知された蒸発器4の蒸発温度と吸入配管入口温度検知センサー25で検知された吸入管24の入口部の温度に基づいて、膨張弁制御装置28によりその絞り量が最適制御されるものである。
【0058】
かかる膨張弁22の制御は、具体的には図2に示すように、蒸発温度検知センサー23で検知された蒸発器4の蒸発温度Teに対応して予め規定された吸入管24の入口部の目標温度Tsと、吸入配管入口温度検知センサー25で検知された実際の温度とを比較して、実際の温度の方が高い場合(図2の領域A)は電動膨張弁22の開度を所定量開け、実際の温度の方が低い場合(図2の領域B)は電動膨張弁22の開度を所定量閉じるものである。
【0059】
これによって、図2の領域Aでは蒸発器4の蒸発温度を高く、かつ吸入管24の入口部の温度を低く変化させ、また、図2の領域Bでは蒸発器4の蒸発温度を低く、かつ吸入管24の入口部の温度を高く変化させることができ、結果として図2で示した制御基準線上で冷凍システムの状態を安定させることができる。
【0060】
また、蒸発器4の任意の蒸発温度Teに対応して予め規定された吸入管24の入口部の目標温度Tsを定める制御基準線を、圧縮機21で圧縮され、吐出された冷媒の温度が略同一となるように予め決めておけば、被冷却室(図示せず)の室内空気温度や圧縮機21の能力が変化しても圧縮機21で圧縮され、吐出された冷媒の温度を略同一に保つことができる。
【0061】
例えば、高圧圧力の設計値を9MPaとし、下記の(式1)に基づいて制御基準線を設定すれば、蒸発器4の蒸発温度Teが−9℃においては目標温度Tsが−5℃となり、冷媒が吸入管24から圧縮機21に流入するまでに3℃程度昇温して−2℃程度になると推定され、さらに9MPaまで圧縮されると吐出された冷媒の温度は120℃程度になる。
【0062】
Ts=αTe・Te+βTe+γ …(式1)
α=0.0037,β=1.26,γ=6
同様に、式1によれば、蒸発器4の蒸発温度Teが−15℃においては目標温度Tsが−12℃となり、冷媒が吸入管24から圧縮機21に流入するまでに同様に3℃程度昇温して−9℃程度なると推定され、さらに9MPaまで圧縮されると吐出された冷媒の温度は120℃程度になる。
【0063】
このように、蒸発器4の蒸発温度Teが低い場合には、目標温度Tsを低く制御することで、蒸発温度と吸入管24内の冷媒および冷凍機油の温度との差を10℃以内にすることができるとともに、吸入管24内の冷媒の温度を下げることにより圧縮機21から吐出される冷媒温度の上昇を120℃以内に抑えることができる。
【0064】
なお、安定時における目標温度Tsが、被冷却室の設定温度と同程度になるように、蒸発器4の蒸発能力を設計することが望ましい。すなわち、目標温度Tsが被冷却室の設定温度と同程度であれば、冷媒の冷凍効果が最大限利用できるので高い冷凍効率が期待できる。
【0065】
そして、蒸発器4の蒸発能力が不足すると、目標温度Tsが被冷却室の設定温度を下回るとともに、蒸発温度Teがより低いレベルで安定する。
【0066】
また、吸入管24の断熱を強化して、冷媒が吸入管24から圧縮機21に流入するまでの昇温を抑制することが望ましい。これは、圧縮機21から吐出される冷媒温度の上昇を抑えるために、圧縮機21に流入する冷媒の温度をさらに下げる必要があるためである。
【0067】
ここで、吸入管24内における冷凍機油の動粘度の変化について、図3を用いて説明する。
【0068】
図3は横軸を温度、縦軸を動粘度とし、冷凍機油および冷凍機油と冷媒の混合物の温度と動粘度の関係を示している。例えば、冷媒重量比=0%で示した線は冷凍機油の温度と動粘度の関係を示しており、40℃での動粘度が約100mm2/s、100℃での動粘度が約16mm2/sである。また、冷凍機油と冷媒の混合物については、混合物中の冷媒の重量比10%、20%、30%、40%、50%における温度と動粘度の関係をそれぞれ異なる記号(○、□、◇、△、×)毎にそれを結ぶ線で示している。
【0069】
また、図3において、線A、線B、線C、線Dは、それぞれ蒸発温度が−20℃、−10℃、0℃、10℃における吸入管24内の冷凍機油と、冷媒の混合物の温度と、動粘度の関係を示したものである。これらの線は、それぞれの蒸発温度に相当する冷媒圧力下における冷媒の溶解量を測定した結果から、冷凍機油と冷媒の混合物の動粘度を推定したものである。
【0070】
これらの線A、線B、線C、線Dの形状から、吸入管24内の冷凍機油と冷媒の混合物の温度が常温近傍の20℃〜40℃の範囲において、その動粘度は10mm2/sを大きく越えた極大値を持ち、かつ蒸発温度が低いほど動粘度の極大値が大きくなることがわかる。
【0071】
これは、蒸発温度が低いほど吸入管24内の冷媒圧力が低くなることで、冷凍機油に溶解する冷媒量が小さくなり、冷凍機油単独の動粘度に近づくためである。このことから、前記蒸発温度が−20℃よりさらに低くなると動粘度の極大値がさらに大きくなることが推定される。
【0072】
この結果から、内部熱交換器を用いて吸入管24を常温程度まで加温する従来の構成に比べて、蒸発温度と吸入管24内の冷媒および冷凍機油の温度との差を10℃以内にする本実施の形態1では、吸入管24内の冷凍機油と冷媒の混合物の動粘度をほぼ10mm2/s以下に抑えることができ、吸入配管24内での油滞留を防止することができる。したがって、電源投入時および安定時における圧縮機21の吐出冷媒の温度を略一定に保つことができ、能力可変型の圧縮機21の耐久性を損なうことなく、電源投入時に蒸発温度を高く保ち、冷媒循環量を増大させて冷凍能力の向上を実現できることがわかる。
【0073】
なお、比較的高い蒸発温度0℃〜20℃で運転されるカーエアコンと同等の油滞留特性を確保するには、吸入配管24内の冷凍機油と冷媒の混合物の動粘度を30mm2/s以下に保つ必要がある。さらに、冷凍システムを上部に設置した冷蔵庫等の保冷庫の場合は、蒸発器4が圧縮機21の下側にあり、吸入配管24の揚程が大きくなるのでさらに低い動粘度10mm2/s以下に抑えることが望ましい。
【0074】
次に、本実施の形態1における冷凍システムの冷媒の状態変化について図4を用いて詳細に説明する。
【0075】
図4は、横軸を冷媒のエンタルピーh、縦軸を冷媒の圧力Pとするモリエル線図であり、p、q、r、s、tで示す各点は、被冷却室(冷蔵庫の場合は冷蔵室あるいは冷凍室が相当)の室内空気温度Trが所定温度まで低下した定常状態にある安定時の冷媒の状態変化を示し、p’、q’、r’、s’、t’で示す各点は、室内空気温度Trが外気温度の近傍にある電源投入時の冷媒の状態変化を示す。
【0076】
図4において、安定時は、前記能力可変型の圧縮機21から吐出された冷媒は温度T6のp点であり、放熱器2で冷却されて温度T5のq点となる。q点において冷媒は超臨界状態にあり液化しないことが遷臨界サイクルの特長である。
【0077】
次に、電動膨張弁22で減圧されて気液混合状態のr点となり、蒸発器4に供給される。蒸発器4で蒸発した冷媒はs点となり、吸入管24の入口部に流入した後、吸入管24から圧縮機21に流入するまでに加熱されて温度T4のt点となって圧縮機21に還流する。
【0078】
ここで、蒸発器4で蒸発した冷媒のs点の温度は、吸入配管入口温度検知センサー25で検知されるとともに、前記したように目標温度Tsに近づくように膨張弁制御装置28により電動膨張弁22の開度が調整されている。そして、s点からt点までの温度変化は、吸入管24の断熱構造等によって決まり、また、t点からp点までの温度変化は、蒸発温度Teと高圧圧力の設計値と圧縮機21の圧縮機効率でほぼ決まる。これらのことから、s点の温度を任意の蒸発温度Teに対して予め決められた目標温度Tsに近づけると、p点の温度T6をほぼ任意の値に保つことができる。
【0079】
なお、室内空気温度Trの変化に応じて圧縮機21の能力を変化させても、同様にs点の温度を任意の蒸発温度Teに対して予め決められた目標温度Tsに近づけると、p点の温度T6をほぼ任意の値(所定値)に保つことができる。ただし、圧縮機21を、低能力で運転される安定時に最高効率が得られるように設計した場合、低速運転時においてt点からp点までの温度上昇が小さくなるので、室内空気温度Trを越えない範囲で目標温度Tsを高速運転時よりも高く設定してもよい。
【0080】
さらに、室内空気温度Trを越えない範囲で目標温度Tsを高く設定する方が、r点からs点までのエンタルピー変化で示される冷凍効果を高めることができ、冷凍効率の向上を図ることができる。
【0081】
また、温度T5は外気温度の近傍にあり、外気温度の変動によって変化する。この時、q点の圧力はほとんど変化せず、エンタルピーが変化する。これは、蒸発器4内に液冷媒が滞留するアキュームレータ等の構造を持たないためである。
【0082】
この結果、高圧圧力を通常使用される9〜12MPa程度に設計すると、25℃以下の低外気温ではr点からs点までのエンタルピー変化で示される冷凍効果が大きくなり、高い冷凍効率が実現できるが、35℃以上の高外気温ではr点からs点までのエンタルピー変化で示される冷凍効果が小さくなり、冷凍効率は著しく低下する。
【0083】
したがって、常に高外気温度で使用される場合は、高圧圧力の設計値を15MPa程度のより高い値にすることが望ましい。
【0084】
一方、電源投入時においては、圧縮機21から吐出された冷媒は、温度T6のp’点であり、放熱器2で冷却されて温度T5のq’点となる。これらのp’点、q’点はそれぞれ安定時のp点、q点とほぼ同じ状態にある。
【0085】
次に、電動膨張弁22で減圧されて気液混合状態のr’点となり、蒸発器4に供給される。蒸発器4で蒸発した冷媒はs’点となり、吸入管24の入口部に流入した後、吸入管24から圧縮機21に流入するまでに加熱され、温度T5のt’点となって圧縮機21に還流する。
【0086】
ここで、r’、s’、t’の各点で示される電源投入時の低圧圧力がr、s、tの各点で示される安定時の低圧圧力よりも高いのは、前述の如く膨張弁制御装置28により電動膨張弁22の開度が調整されているためであり、吸入配管入口温度検知センサー25で検知されるs’点の温度Tsが定常時よりも高くなると、蒸発温度Teが定常時よりも高くなる結果である。
【0087】
また、吸入配管入口温度検知センサー25で検知されるs’点の温度Tsが定常時よりも高くなるのは、室内空気温度Trが高いことに起因して、蒸発器4での蒸発能力が過剰であるとともに、吸入管24入口部の周辺温度が高いためである。
【0088】
この結果、電源投入時における圧縮機21の吐出冷媒の温度を略一定に保ちながら、電源投入時に蒸発温度Teを高く保つことにより、冷媒循環量を増大させて冷凍能力を向上することができる。さらに、電源投入時は、室内温度Trが高いので、圧縮機制御装置27により圧縮機21を増速して冷凍能力を向上することが期待できる。
【0089】
以上のように、本実施の形態1においては、冷凍システムにアキュームレータと内部熱交換器を搭載しない構成とし、また、蒸発器4の温度を検知する蒸発温度検知センサー23と、蒸発器4と能力可変型の圧縮機21を繋ぐ吸入配管24の入口部の温度を検知する吸入配管入口温度検知センサー25を備え、蒸発温度検知センサー23で検知された蒸発温度Teから決定される目標温度Tsと比較して吸入配管入口温度検知センサー25で検知された実測値が高い場合は、電動膨張弁22の開度を大きくし、逆に吸入配管入口温度検知センサー25で検知された実測値が低い場合は、電動膨張弁22の開度を小さくする制御を行うものである。
【0090】
そして、かかる制御により、蒸発温度Teを制御することが可能となり、その結果、蒸発器4と圧縮機21を繋ぐ吸入配管の温度の差を10℃以内に保つことにより、吸入管24内の冷凍機油と冷媒の混合物の動粘度をほぼ10mm2/s以下に抑えることができ、吸入配管24内での油滞留を防止することができる。さらに、電源投入時および安定時における圧縮機21の吐出冷媒の温度を略一定に保つことにより、圧縮機21の耐久性を損なうことなく、電源投入時に蒸発温度Teを高く保つことができ、その結果、冷媒循環量を増大させて冷凍能力の向上を図ることができる。
【0091】
なお、本実施の形態1においては、自然冷媒として二酸化炭素の単独冷媒を使用したが、図4のT6で示した能力可変型の圧縮機21から吐出される冷媒温度等の熱物性を改善するために、二酸化炭素に炭化水素等の自然冷媒を混合した混合冷媒を使用しても、q点において液化せずに遷臨界サイクルを形成していれば同様の効果が期待できる。
【0092】
また、本実施の形態1においては、外気温度の影響を受けにくくするために、蒸発器4に近い吸入管24の入口部に吸入配管入口温度検知センサー25を備えて、吸入管24の温度を制御したが、図1において符号25aで示す如く前記能力可変型の圧縮機21に近く、外気温あるいは圧縮機からの熱伝導を受けて最も温度が高くなる吸入管24の出口付近の温度を検知して吸入管24の温度を制御してもよい。この場合、外気温度の影響を受けないように、吸入管24の出口付近の温度を検知するセンサー25aを断熱材で被覆することが望ましい。
【0093】
さらに、本実施の形態1においては、室内空気温度Trに基づいて圧縮機制御装置27により能力可変型の圧縮機21の能力を制御したが、室内温度検知センサー26を、図1において符号26aで示す如く圧縮機21から吐出される冷媒が通過する吐出配管の温度あるいは、符号26bで示す如く圧縮機21の外表面の温度を検出するセンサーに置き換え、もしくは付加し、その検出温度が基準値を越えた場合に、前述の制御(膨張弁制御)に優先して所定時間毎に圧縮機21の能力を低下するように制御することが望ましい。これによって、放熱器7が何らかの原因で放熱能力が低下した場合に、圧縮機21の能力を低下させ、これに起因して冷凍システムが異常高温となり、圧縮機21の耐久性が低下するといった弊害が防止できる。
【0094】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における保冷庫の構成模式図である。なお、先の実施の形態1における冷凍システムと同一の構成については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0095】
図5に示すように、本実施の形態2における保冷庫の冷凍システムは、先の実施の形態1と同様に、冷媒として二酸化炭素を使用するとともに、回転数を可変することで能力可変可能な能力可変型の圧縮機21、スパイラルフィン放熱器30、電動膨張弁22、蒸発器4を環状に連結し、冷媒循環回路を構成している。また、蒸発器4の蒸発温度を検知する蒸発温度検知センサー23と、蒸発器4と圧縮機21を接続する吸入管24の入口部の温度を検知する吸入配管入口温度検知センサー25と、被冷却室である貯蔵室32の室内空気温度を検知する室内温度センサー26を備えている。
【0096】
ここで、スパイラルフィン放熱器30は、周知の如く1本の冷媒配管にスパイラル状の1枚のフィンプレート31を圧着固定したものであり、スパイラルフィン放熱器30内の超臨界状態にある冷媒の温度勾配に従って、1枚のフィンプレート31も同様の温度勾配となる特徴がある。
【0097】
また、スパイラルフィン放熱器30は、1本の冷媒配管を蛇行状に折曲した構成を基本としているため、高い耐圧設計が容易であり、高圧圧力が9〜15MPaと比較的高い冷凍システムに適用する場合、同一放熱能力を有するフィンチューブ熱交換器より安価に実現することができる。
【0098】
また、本実施の形態2の保冷庫は、図5に示すように、食品等の熱負荷を冷蔵する貯蔵室32の上部に機械室33を設け、能力可変型の圧縮機21やスパイラルフィン放熱器30等を配置している。さらに、貯蔵室32と機械室33の間に設けた断熱壁34の中には、蒸発器4や電動膨張弁22等を配置している。
【0099】
このように、上部に冷凍システムを設けた業務用冷蔵庫等の保冷庫においては、蒸発器4が圧縮機21よりも下に配置されることが多く、吸入配管24の揚程が大きくなることから、吸入配管24内における冷凍機油と冷媒の混合物における動粘度の挙動が特に重要となる。
【0100】
以上のように構成された実施の形態2の保冷庫について、以下その動作を説明する。
【0101】
能力可変型の圧縮機21で圧縮され、吐出された冷媒は、スパイラルフィン放熱器30で外気と熱交換し、外気温度近傍まで冷却された後、電動膨張弁22で減圧されて、蒸発器4へ流れ、ここで蒸発する。そして、蒸発器4で蒸発したガス冷媒が圧縮機21へ還流し、以下前述の流れを繰り返す。
【0102】
ここで、スパイラルフィン放熱器30は、破線矢印で示す如く放熱器ファン7により機械室33内に導入した空気(外気)の流れとほぼ対向するように配置されている。したがって、スパイラルフィン放熱器30の内部では、圧縮機21に近い側が最も冷媒温度が高く、放熱器ファン7に近づくにつれて冷媒温度が低下する温度勾配が形成されている。これによって、比較的小さい放熱能力で、スパイラルフィン放熱器30の出口部の冷媒温度を略外気温度まで低下させることができ、簡素かつ安価に冷凍効率を向上することができる。
【0103】
また、先の実施の形態1における冷凍システムと同様に、電動膨張弁22は、蒸発温度検知センサー23で検知された蒸発器4の蒸発温度と吸入配管入口温度検知センサー25で検知された吸入管24の入口部の温度に基づいて、膨張弁制御装置28によりその絞り量が最適制御されるものである。
【0104】
この結果、内部熱交換器を用いて吸入管24を常温程度まで加温する従来の構成に比べて、蒸発温度と吸入管24内の冷媒および冷凍機油の温度との差を10℃以内にする本実施の形態2では、吸入管24内の冷凍機油と冷媒の混合物の動粘度をほぼ10mm2/s以下に抑えることができ、吸入配管24内での油の滞留を防止することができる。
【0105】
また、先の実施の形態1における冷凍システムと同様に、能力可変型の圧縮機21は、室内温度センサー26で検知された貯蔵室32の室内空気温度と設定温度に基づいて、圧縮機制御装置27によりその回転数が最適制御されるものである。
【0106】
以上のように、本実施の形態2においては、先の実施の形態1における冷凍システムと同様に、冷凍システムにアキュームレータと内部熱交換器を搭載せず、蒸発器4の温度を検知する蒸発温度検知センサー23と、蒸発器4と能力可変型の圧縮機21を繋ぐ吸入配管24の入口部の温度を検知する吸入配管入口温度検知センサー25を備え、蒸発温度検知センサー23で検知された蒸発温度Teから決定される目標温度Tsと比較して、吸入配管入口温度検知センサー25で検知された実測値が高い場合は、電動膨張弁22の開度を大きくし、逆に吸入配管入口温度検知センサー23で検知された実測値が低い場合は、電動膨張弁22の開度を小さくする制御を行い、蒸発温度Teを制御することによって、蒸発器4と圧縮機21を繋ぐ吸入配管24の温度の差を10℃以内に保つことができる。
【0107】
その結果、吸入管24内の冷凍機油と冷媒の混合物の動粘度をほぼ10mm2/s以下に抑えることができ、機械室33を上部に配置した構成において、大きな揚程を持つ吸入配管24内での油の滞留を防止することができるとともに、電源投入時および安定時における圧縮機21の吐出冷媒の温度を略一定に保つことが可能となり、これにより圧縮機21の耐久性を損なうことがなく、また、電源投入時に蒸発温度Teを高く保つことがかのうとなり、これにより冷媒循環量を増大させ、冷凍能力の向上を図ることができる。
【0108】
なお、本実施の形態2においては、スパイラルフィン放熱器30から電動膨張弁22までの配管を最短距離で結んだが、冷蔵あるいは冷凍機器等で使用される結露防止ヒータに換えて、スパイラルフィン放熱器30から電動膨張弁22までの配管を利用してもよい。かかる構成とすれば、外部に漏洩する冷熱を利用して電動膨張弁22に流入する冷媒温度を低下することができ、さらに冷凍効率の向上を図ることが期待できる。
【0109】
なお、本発明は、実施の形態の保冷庫に限るものではなく、冷蔵庫、冷凍庫あるいは自動販売機等の貯蔵装置にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本発明にかかる冷凍システムおよびこれを備えた貯蔵装置は、吸入配管内での油の滞留を防止することができるとともに、電源投入時および安定時における圧縮機の吐出冷媒の温度を略一定に保つことができ、これにより圧縮機の耐久性を損なうことなく、冷蔵あるいは冷凍機器に要求される電源投入時の冷凍能力および安定時における冷凍効率等の冷凍システム性能の向上を図ることができる。したがって、冷媒のノンフロン化と機器の省エネルギー化が要求されるショーケースや業務用冷凍冷蔵庫、自動販売機等の冷蔵あるいは冷凍機器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施の形態1における冷凍システムの冷媒回路図
【図2】同実施の形態1における冷凍システムの制御基準線を示す図
【図3】同実施の形態1における冷凍システムの冷凍機油の動粘度特性を示す図
【図4】同実施の形態1における冷凍システムのモリエル線図
【図5】本発明の実施の形態2にける保冷庫の構成模式図
【図6】従来の冷凍システムの冷媒回路図
【図7】従来の冷凍システムのモリエル線図
【符号の説明】
【0112】
2 放熱器
4 蒸発器
21 圧縮機(能力可変型の圧縮機)
22 電動膨張弁
24 吸入管
23 蒸発温度検知センサー
25 吸入配管入口温度検知センサー
26 室内温度検知センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、放熱器と、膨張弁と、蒸発器を具備した冷凍システムにおいて、冷媒として二酸化炭素を主成分とする自然冷媒を使用するとともに、前記蒸発器の蒸発温度を−50℃〜0℃の範囲として、前記蒸発器の蒸発温度と前記圧縮機の吸入配管温度との差を20℃以内に保つようにした冷凍システム。
【請求項2】
前記圧縮機の潤滑油として、40℃での動粘度が30mm2/s〜300mm2/sであるポリアルキレングリコール冷凍機油を使用した請求項1に記載の冷凍システム。
【請求項3】
前記蒸発器の蒸発温度を検知する蒸発温度センサーと、前記圧縮機の吸入配管における圧縮機近傍の温度を検知する吸入配管出口温度センサーを備え、前記蒸発温度センサーで検知した蒸発温度から決定される目標温度より、前記吸入配管出口温度センサーで検知された吸入配管温度が高い場合に前記膨張弁の開度を大きくし、低い場合に前記膨張弁の開度を小さくすることで蒸発温度を制御する請求項1または2に記載の冷凍システム。
【請求項4】
前記蒸発器の蒸発温度を検知する蒸発温度センサーと、前記圧縮機の吸入配管における蒸発器近傍の温度を検知する吸入配管入口温度センサーを備え、前記蒸発温度センサーで検知した蒸発温度から決定される目標温度より、前記吸入配管入口温度センサーで検知された吸入配管温度が高い場合に前記膨張弁の開度を大きくし、低い場合に前記膨張弁の開度を小さくすることで蒸発温度を制御する請求項1または2に記載の冷凍システム。
【請求項5】
前記圧縮機を能力可変可能な圧縮機とし、被冷却室内の空気温度の高低で圧縮機の能力を制御する請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍システム。
【請求項6】
前記圧縮機のシェルの温度、あるいは吐出配管における圧縮機近傍の温度を検知する高温保護検知センサーを備え、前記高温保護検知センサーによって検出した温度が所定値を越えた場合に、前記圧縮機の能力を所定時間毎に低下させる制御を行う請求項5に記載の冷凍システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の冷凍システムを搭載した貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−292423(P2007−292423A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123254(P2006−123254)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】