説明

冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物

【課題】フルオロプロペン冷媒を用いる冷凍システムにおいて、冷媒相溶性と熱・化学的安定性との双方を高水準で達成することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍機油は、カルボキシル基を1〜6個有する芳香族カルボン酸と水酸基を1〜6個有する脂肪族アルコールとのエステルを含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられる。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、カルボキシル基を1〜6個有する芳香族カルボン酸と水酸基を1〜6個有する脂肪族アルコールとのエステルと、フルオロプロペン冷媒と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。
【0003】
CFCやHCFCを冷媒とする場合は、冷凍機油として鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油が好適に使用されてきたが、冷媒が替わると共存下で使用される冷凍機油は、冷媒との相溶性、潤滑性、冷媒との溶解粘度、熱・化学的安定性など予想し得ない挙動を示すため、冷媒ごとに冷凍機油の開発が必要となる。そこで、HFC冷媒用冷凍機油として、例えば、ポリアルキレングリコール(特許文献1を参照)、エステル(特許文献2を参照)、炭酸エステル(特許文献3を参照)、ポリビニルエーテル(特許文献4を参照)などが開発されている。
【0004】
HFC冷媒のうち、カーエアコン用冷媒として標準的に用いられているHFC−134aはオゾン破壊係数(ODP)がゼロであるものの地球温暖化係数(GWP)が高いため、欧州では規制の対象となっている。そこで、HFC−134aに替わる冷媒の開発が急務となっている。
【0005】
このような背景の下、HFC−134aに代わる冷媒として、ODPおよびGWPの双方が非常に小さく、不燃性であり、かつ、冷媒性能の尺度である熱力学的特性がHFC−134aとほぼ同等かそれ以上である、フルオロプロペン類の冷媒の使用が提案されている。さらに、フルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒の使用も提案されている(特許文献5を参照)。
【0006】
また、フルオロプロペン冷媒あるいはフルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒と共に使用可能な冷凍機油としては、鉱油、アルキルベンゼン類、ポリアルファオレフィン類、ポリアルキレングリコール類、モノエステル類、ジエステル類、ポリオールエステル類、フタル酸エステル類、アルキルエーテル類、ケトン類、炭酸エステル類、ポリビニルエーテル類などを用いた冷凍機油が提案されている(特許文献5〜7を参照)。
【特許文献1】特開平02−242888号公報
【特許文献2】特開平03−200895号公報
【特許文献3】特開平03−217495号公報
【特許文献4】特開平06−128578号公報
【特許文献5】国際公開WO2006/094303号パンフレット
【特許文献6】特表2006−512426号公報
【特許文献7】国際公開WO2005/103190号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献5、6、7に記載されているように、フルオロプロペン冷媒を用いる冷凍システムにおいては、CFCやHCFCに使用されている鉱油やアルキルベンゼン等の炭化水素類、HFCに使用されているポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、ポリビニルエーテルなどの冷凍機油のいずれも適用可能であると考えられている。しかし、本発明者らの検討によれば、これら従来の冷凍機油を当該システムにそのまま転用しただけでは、冷媒相溶性を高水準で達成することができない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、フルオロプロペン冷媒を用いる冷凍システムにおいて、冷媒相溶性を高水準で達成することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族カルボン酸エステルを用いることによって、フルオロプロペン冷媒の共存下で冷媒との十分な相溶性を有する冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、カルボキシル基を1〜6個有する芳香族カルボン酸と水酸基を1〜6個有する脂肪族アルコールとのエステルと、フルオロプロペン冷媒と、を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記カルボキシル基を1〜6個有する芳香族カルボン酸と水酸基を1〜6個有する脂肪族アルコールとのエステルを含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油を提供する。
【0012】
本発明の冷凍機用作動流体組成物は、フルオロプロペン冷媒として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC1234ye)および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0013】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、フルオロプロペン冷媒の少なくとも1種(以下、「冷媒(A)」という。)を単独で用いてもよく、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドおよび3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(B)」という。)をさらに含有していてもよい。
【0014】
さらに、冷媒(A)と冷媒(B)との混合冷媒において、フルオロプロペン冷媒としては、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC1234ye)および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)から選ばれる少なくとも1種が好ましく;
飽和ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)から選ばれる少なくとも1種が好ましく;
炭素数3〜5の炭化水素としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンおよびノルマルペンタンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、本発明によれば、冷媒相溶性を高水準で達成することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明の冷凍機油は、カルボキシル基を1〜6個有する芳香族カルボン酸と水酸基を1〜6個有する脂肪族アルコールとのエステル(以下、「本発明にかかる芳香族エステル」ともいう。)を含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられることを特徴とする。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、本発明にかかる芳香族エステルとフルオロプロペン冷媒とを含有することを特徴とする。ここで、本発明の冷凍機用作動流体組成物には、本発明の冷凍機油と、フルオロプロペン冷媒を含有する態様が包含される。
【0018】
ここでいう芳香族エステルとは、カルボキシル基を1〜6個、好ましくは1〜5個、より好ましくは2〜4個有する芳香族カルボン酸と、炭素数1〜18、好ましくは2〜15の飽和または不飽和脂肪族1価アルコール及び/又は水酸基を2〜6個有する脂肪族多価アルコールとのエステルである。
【0019】
1〜6価の芳香族カルボン酸としては、具体的には例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0020】
炭素数1〜18の脂肪族1価アルコールとしては、飽和でも不飽和のものでもよいが、飽和のものであることが好ましい。また、このような脂肪族1価アルコールとしては、直鎖状でも分岐状のものであってもよく、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐状のプロパノール、直鎖状または分岐状のブタノール、直鎖状または分岐状のペンタノール、直鎖状または分岐状のヘキサノール、直鎖状または分岐状のヘプタノール、直鎖状または分岐状のオクタノール、直鎖状または分岐状のノナノール、直鎖状または分岐状のデカノール、直鎖状または分岐状のウンデカノール、直鎖状または分岐状のドデカノール、直鎖状または分岐状のトリデカノール、直鎖状または分岐状のテトラデカノール、直鎖状または分岐状のペンタデカノール、直鎖状または分岐状のヘキサデカノール、直鎖状または分岐状のヘプタデカノール、直鎖状または分岐状のオクタデカノール等が挙げられる。
【0021】
2価アルコール(ジオール)としては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。
【0022】
また、3価以上のアルコールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオースなどが挙げられる。
【0023】
本発明にかかる芳香族エステルは、単一の構造の芳香族エステルの1種からなるものであっても良く、構造の異なる2種以上の芳香族エステルの混合物であっても良い。
【0024】
また、本発明にかかる芳香族エステルは、
1種の芳香族カルボン酸と1種の1価アルコールとの完全エステル、
1種の芳香族カルボン酸と2種以上の1価アルコールとの完全エステル、
1種の芳香族カルボン酸と1種の多価アルコールとの完全エステル、
1種の芳香族カルボン酸と2種以上の多価アルコールとの完全エステル、
2種以上の芳香族カルボン酸と1種の1価アルコールとの完全エステル、
2種以上の芳香族カルボン酸と2種以上の1価アルコールとの完全エステル、
2種以上の芳香族カルボン酸と1種の多価アルコールとの完全エステル
2種以上の芳香族カルボン酸と2種以上の多価アルコールとの完全エステル
のいずれであってもよい。
【0025】
なお、本発明にかかる芳香族エステルは、多価アルコールの全ての水酸基がエステル化された完全エステルであるが、本発明の冷凍機油は、本発明にかかる芳香族エステルの優れた効果が損なわれない限りにおいて部分エステルを含有してもよい。ここで、部分エステルとは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている芳香族エステルを意味する。合成して得られた本発明にかかる芳香族エステルの純度は、合成物の水酸基価で規定され、水酸基価が0.2mgKOH/g以下が好ましく、0.1mgKOH/g以下がより好ましく、0.05mgKOH/g以下がさらに好ましい
【0026】
また、本発明にかかる芳香族エステルは、芳香族多価カルボン酸の全てのカルボキシル基がエステル化された完全エステルであるが、本発明の冷凍機油は、本発明にかかる芳香族エステルの優れた効果が損なわれない限りにおいて部分エステルを含有してもよい。ここで、部分エステルとは、芳香族多価カルボン酸のカルボキシル基の一部がエステル化されずにカルボキシル基のまま残っている芳香族エステルを意味する。合成して得られた本発明にかかる芳香族エステルの純度は、合成物の酸価で規定され、酸価が2mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましく、0.5mgKOH/g以下がさらに好ましく、0.1mgKOH/g以下が最も好ましい。
【0027】
芳香族エステルとしては、具体的には例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジブチル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジペンチル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジヘキシル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジヘプチル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジオクチル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジノニル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジデシル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジウンデシル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジドデシル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジトリデシル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジテトラデシル(直鎖状または分岐状)、フタル酸ジペンタデシル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジプロピル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジブチル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジペンチル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジヘキシル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジヘプチル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジオクチル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジノニル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジデシル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジウンデシル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジドデシル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジトリデシル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジテトラデシル(直鎖状または分岐状)、イソフタル酸ジペンタデシル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジブチル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジペンチル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジヘキシル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジヘプチル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジオクチル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジノニル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジデシル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジウンデシル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジドデシル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジトリデシル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジテトラデシル(直鎖状または分岐状)、テレフタル酸ジペンタデシル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリプロピル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリブチル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリペンチル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリヘキシル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリヘプチル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリオクチル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリノニル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリデシル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリウンデシル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリドデシル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリトリデシル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリテトラデシル(直鎖状または分岐状)、トリメリット酸トリペンタデシル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトラプロピル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラブチル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラペンチル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラヘキシル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラヘプチル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラオクチル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラノニル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラデシル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラウンデシル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラドデシル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラトリデシル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラテトラデシル(直鎖状または分岐状)、ピロメリット酸テトラペンタデシル(直鎖状または分岐状)などが挙げられる。
【0028】
本発明にかかる冷凍機油は、本発明にかかる芳香族エステルのみからなるものであってもよいが、当該芳香族エステル以外の基油をさらに含有してもよい。
【0029】
本発明にかかる芳香族エステル以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、並びにエステル系基油(モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル等)、ポリアルキレングリコール、本発明以外のポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でもポリオールエステル、ポリアルキレングリコールが好ましく用いられる。
【0030】
また、本発明の冷凍機油は、必要に応じてさらに各種添加剤を配合した形で使用することもできる。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油組成物全量を基準として示すが、冷凍機用流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油組成物全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0031】
本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0032】
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0033】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0034】
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
【0035】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。
【0036】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0037】
本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
また、本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0039】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0040】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0041】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0042】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0043】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0044】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0045】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0046】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0047】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0048】
本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
また、本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0050】
本発明の冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm/s、より好ましくは4〜500mm/s、最も好ましくは5〜400mm/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm/s、より好ましくは2〜50mm/sとすることができる。
【0051】
また、本発明の冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、最も好ましくは200ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0052】
また、本発明の冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、および本発明の冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0053】
また、本発明の冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本発明の冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油および石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0054】
本発明の冷凍機油はフルオロプロペン冷媒と共に用いられるものであり、また、本発明の冷凍機用作動流体組成物はフルオロプロペン冷媒を含有するものである。
【0055】
フルオロプロペン冷媒としては、フッ素数が3〜5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFC−1225ye、HFC−1234zeおよびHFC−1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0056】
また、本発明において使用される冷媒は、フルオロプロペン冷媒と他の冷媒との混合冷媒であってもよい。他の冷媒としては、HFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル、アンモニアおよび炭化水素等の自然系冷媒が挙げられる。
【0057】
HFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0058】
また、HFC冷媒のうち、飽和ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましく、冷媒物性の観点から、さらにHFC−32、HFC−125、HFC−134a、HFC−152a、またはHFC−32とHFC−134aの混合物であることが好ましい。
【0059】
炭化水素冷媒としては、炭素数3〜5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタンまたはこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0060】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。
【0061】
本発明において使用される冷媒が混合冷媒である場合、当該混合冷媒は、フルオロプロペン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(A)」という。)と、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドおよび3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(B)」という。)とを含有することが好ましい。
【0062】
また、本発明において使用される冷媒が冷媒(A)と冷媒(B)とを含有する混合冷媒である場合、当該混合冷媒は共沸混合物であることが好ましいが、冷媒として必要な物性を有していれば特に共沸混合物である必要はなく、両者の混合比は1:99〜99:1が好ましく、5:95〜95:5がより好ましい。
【0063】
さらに、本発明において使用される冷媒が冷媒(A)と冷媒(B)とを含有する混合冷媒である場合、当該混合冷媒は、フルオロプロペン冷媒又は飽和ハイドロフルオロカーボン以外のHFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、炭素数3〜5の炭化水素以外の炭化水素あるいはアンモニア等の自然系冷媒を更に含有してもよい。
【0064】
本発明の冷凍機油は、通常、冷凍空調機器において、上述したようなフルオロプロペン冷媒あるいは混合冷媒と混合された冷凍機用流体組成物の形で存在している。この組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合、並びに本発明の冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
【0065】
本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型または密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本発明の冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
[実施例1〜2、比較例1〜4]
実施例1〜2および比較例1〜4においては、それぞれ以下に示す基油1〜6を用いて冷凍機油を調製した。得られた冷凍機油の各種性状を表1に示す。
【0068】
(基油)
基油1:フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)
基油2:フタル酸ジ−(3,5,5−トリメチルへキシル)
基油3:トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)
基油4:ピロメリット酸テトラエステル(アルコールはn−ヘプタノールとn−ノナノールの等モル混合物)
基油5:ポリエチレンプロピレングリコールジメチルエーテル。(エチレン基/プロピレン基のモル比:50/50)
基油6:n−ヘプタン酸とペンタエリスリトールとのエステル。
基油7:ナフテン系鉱油。
【0069】
次に、実施例1〜4および比較例1〜3の各冷凍機油について、以下に示す評価試験を実施した。
【0070】
(冷媒相溶性の評価1)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと3フッ化ヨウ化メタンの混合冷媒(混合比(質量比):2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/3フッ化ヨウ化メタン=70/30)19gに対して冷凍機油を1g配合し、冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察した。得られた結果を表1〜2に示す。表1〜11中、「相溶」は冷媒と冷凍機油とが相互に溶解したことを意味し、「分離」は冷媒と冷凍機油とが2層に分離したことを意味する。
【0071】
(冷媒相溶性の評価2)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン19gに対して冷凍機油を1g配合し、冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察した。得られた結果を表1〜2に示す。表1中、「相溶」は冷媒と冷凍機油とが相互に溶解したことを意味し、「分離」は冷媒と冷凍機油とが2層に分離したことを意味する。
【0072】
(熱・化学的安定性の評価1)
JIS−K−2211に準拠し、水分を10ppm以下に調整した冷凍機油組成物(初期色相L0.5)1gと、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと3フッ化ヨウ化メタンの混合冷媒(混合比(質量比):2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/3フッ化ヨウ化メタン=70/30)1gと、触媒(鉄、銅、アルミの各線)とをガラス管に封入した後、150℃に加熱して1週間保持し試験した。試験後は冷凍機油組成物の色相および触媒の色変化を評価した。色相は、ASTM D156に準拠して評価した。また、触媒の色変化は、外観を目視で観察し、変化なし、光沢なし、黒化のいずれに該当するかを評価した。得られた結果を表1〜2に示す。
【0073】
(熱・化学的安定性の評価2)
JIS−K−2211に準拠し、水分を100ppm以下に調整した冷凍機油(初期色相L0.5)1gと、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン1gと、触媒(鉄、銅、アルミの各線)とをガラス管に封入した後、150℃に加熱して1週間保持し試験した。試験後は冷凍機油組成物の色相および触媒の色変化を評価した。色相は、ASTM D156に準拠して評価した。また、触媒の色変化は、外観を目視で観察し、変化なし、光沢なし、黒化のいずれに該当するかを評価した。得られた結果を表1〜2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4の冷凍機油は、フルオロプロペン冷媒と共に用いた場合に、冷媒相溶性及び熱・化学的安定性に優れていることがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を1〜6個有する芳香族カルボン酸と水酸基を1〜6個有する脂肪族アルコールとのエステルと、フルオロプロペン冷媒と、を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。
【請求項2】
前記フルオロプロペン冷媒として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペンおよび3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項3】
フルオロプロペン冷媒の少なくとも1種と、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドおよび3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項4】
前記フルオロプロペン冷媒が、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペンおよび3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種であり、前記飽和ハイドロフルオロカーボンが、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンから選ばれる少なくとも1種であり、前記炭素数3〜5の炭化水素が、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンおよびノルマルペンタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項5】
カルボキシル基を1〜6個有する芳香族カルボン酸と水酸基を1〜6個有する脂肪族アルコールとのエステルを含有し、フルオロプロペン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油。

【公開番号】特開2009−155463(P2009−155463A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334916(P2007−334916)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】