説明

冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物

【課題】ジフルオロメタン冷媒とともに用いた場合に、冷媒相溶性、潤滑性および低温流動性の全てを高水準で達成することが可能な冷凍機油、ならびにそれを用いた冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍機油は、ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルであって、前記脂肪酸において、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のモル比が20:80〜80:20であり、上記脂肪酸に占める炭素数6の脂肪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の合計の割合が20モル%以上であるエステルを、冷凍機油全量基準で10質量%以上含有し、ジフルオロメタン冷媒と共に用いられることを特徴とする。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、上記本発明の冷凍機油と、ジフルオロメタン冷媒とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関するものであり、詳しくは、ジフルオロメタン冷媒(HFC−32)とともに用いた場合に有用な冷凍機油、並びにその冷凍機油を用いた冷凍機用作動流体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに替わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。
【0003】
CFCやHCFCを冷媒とする場合は、冷凍機油として鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油が好適に使用されてきたが、冷媒が替わると共存下で使用される冷凍機油は、冷媒との相溶性、潤滑性、冷媒との溶解粘度、熱・化学的安定性など予想し得ない挙動を示すため、冷媒ごとに冷凍機油の開発が必要となる。そこで、HFC冷媒用冷凍機油として、例えば、ポリアルキレングリコール(特許文献1を参照)、エステル(特許文献2を参照)、炭酸エステル(特許文献3を参照)、ポリビニルエーテル(特許文献4を参照)などが開発されている。これらの冷凍機油の中でも、エステルは冷蔵庫やエアコン用などとして広く使用されている。
【0004】
HFC冷媒のうち、HFC−134a、R407C、R410Aは、カーエアコン用、冷蔵庫用またはルームエアコン用の冷媒として標準的に用いられている。しかし、これらのHFC冷媒は、オゾン破壊係数(ODP)がゼロであるものの地球温暖化係数(GWP)が高いため、規制の対象となりつつある。そこで、これらHFCに替わる冷媒の開発が急務となっている。
【0005】
このような背景の下、上記HFCに代わる冷媒として、ODPおよびGWPの双方が非常に小さく、不燃性であり、かつ、冷媒性能の尺度である熱力学的特性が上記HFCとほぼ同等であるフルオロプロペン類の冷媒の使用が提案されている。さらに、フルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒の使用も提案されている(特許文献5を参照)。また、ジフルオロメタン冷媒(HFC−32)はHFC冷媒の中でも地球温暖化係数が比較的低く冷凍効率が高く、注目されつつある。
【0006】
ところで、冷凍機器の冷媒循環サイクルにおいては、通常、冷媒圧縮機を潤滑する冷凍機油が冷媒とともにサイクル内を循環するため、冷凍機油には冷媒との相溶性が要求される。しかしながら、HFC冷媒用として従来より使用されている冷凍機油をジフルオロメタン冷媒とともに用いると、冷媒と冷凍機油との十分な相溶性が得られず、冷媒圧縮機から吐出された冷凍機油がサイクル内に滞留しやすくなり、その結果、冷媒圧縮機内の冷凍機油量が低下して潤滑不良を起こしたり、キャピラリ等の膨張機構を閉塞したりするといった問題を生じる。
【0007】
そこで、かかる現象を回避すべく、ジフルオロメタン冷媒用冷凍機油の開発が進められており、例えば、特許文献6〜12に開示されているようなエステル系冷凍機油が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平02−242888号公報
【特許文献2】特開平03−200895号公報
【特許文献3】特開平03−217495号公報
【特許文献4】特開平06−128578号公報
【特許文献5】国際公開WO2006/094303号パンフレット
【特許文献6】特開平6−17073号公報
【特許文献7】特開平10−298572号公報
【特許文献8】特開2002−060771号公報
【特許文献9】特開2002−105471号公報
【特許文献10】特開2002−129177号公報
【特許文献11】特開2002−129178号公報
【特許文献12】特開2002−129179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のエステル系冷凍機油を用いた場合であっても、ジフルオロメタン冷媒との相溶性と、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性とを両立することは非常に困難である。例えば、従来のエステル系冷凍機油のうちジフルオロメタン冷媒に対して良好な相溶性を示すものは、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性が不十分となる傾向にある。なお、潤滑性の影響因子として粘性(動粘度等)が挙げられるが、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性において問題となるのは冷凍機油とジフルオロメタン冷媒との混合物(すなわち作動流体組成物)の粘性であり、その制御は必ずしも容易ではない。さらに、粘度制御の対象が冷凍機油または作動流体組成物のいずれであるかによらず、粘性を調整するだけでは潤滑性を十分に改善することができない。
【0010】
さらに、冷媒循環サイクル内における冷凍機油の使用環境は、高温から低温まで幅広い温度域にわたるものであり、また、冷凍機油とジフルオロメタン冷媒の存在比率は冷媒循環サイクルの位置によって大きく異なる。しかし、従来のエステル系冷凍機油は、このような使用環境に対する適合性が必ずしも十分とはいえない。特に、低温流動性が不十分なものが多く、この問題は特許文献10および11に開示されているエステルの場合に顕著である。
【0011】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ジフルオロメタン冷媒とともに用いた場合に、冷媒相溶性、潤滑性および低温流動性の全てを高水準で達成することが可能な冷凍機油、ならびにそれを用いた冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルであって、上記脂肪酸において、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のモル比が20:80〜80:20であり、上記脂肪酸に占める炭素数6の脂肪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の合計の割合が20モル%以上であるエステルを、冷凍機油全量基準で10質量%以上含有し、ジフルオロメタン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油を提供する。
【0013】
本発明の冷凍機油は、密閉容器にジフルオロメタンとともに封入し、温度40℃、圧力2MPaに保持したときに、冷凍機油に対するジフルオロメタンの溶解率25〜35質量%を与えるものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記本発明の冷凍機油と、ジフルオロメタン冷媒とを含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ジフルオロメタン冷媒とともに用いた場合に、冷媒相溶性、潤滑性および低温流動性の全てを高水準で達成することが可能な冷凍機油、ならびにそれを用いた冷凍機用作動流体組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る冷凍機油は、ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルであって、上記脂肪酸において、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のモル比が20:80〜80:20であり、上記脂肪酸に占める炭素数6の脂肪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の合計の割合が20モル%以上であるエステル(以下、場合により「ペンタエリスリトール脂肪酸エステル」という)を、冷凍機油全量基準で10質量%以上含有するものであり、ジフルオロメタン冷媒と共に用いられる。
【0018】
本実施形態に係る冷凍機油において、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルの含有量は、冷凍機油全量基準で10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。本実施形態に係る冷凍機油は、後述するようにペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の潤滑油基油や添加剤を含有してもよいが、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルが10質量%未満であると、潤滑性と相溶性とを高水準で両立することができなくなる。なお、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルには、ペンタエリスリトールの全ての水酸基がエステル化された完全エステルと、ペンタエリスリトールの水酸基の一部がエステル化せずに残っている部分エステルと、完全エステルと部分エステルとの混合物と、が包含されるが、完全エステルであることが好ましい。
【0019】
また、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸において、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のモル比は、20:80〜80:20であり、好ましくは25:75〜75:25であり、より好ましくは30:70〜70:30である。また、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸に占める炭素数6の脂肪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の合計の割合は20モル%以上である。脂肪酸組成に関する上記の条件を満たさない場合には、ジフルオロメタン冷媒との十分な相溶性、ジフルオロメタン冷媒との適度な溶解度、および低温流動性とが高水準で両立されにくくなる。なお、本発明でいう脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含有されるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
【0020】
分岐を有する炭素数6の脂肪酸としては、具体的には例えば、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2、3−ジメチルブタン酸などがあげられるが、中でも2−メチルペンタン酸および2−エチルブタン酸が好ましい。
【0021】
本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のモル比が20:80〜80:20である限りにおいて、分岐を有する炭素数6の脂肪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸以外の脂肪酸を構成酸成分として含有してもよい。
【0022】
分岐を有する炭素数6の脂肪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸以外の脂肪酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、2−メチルプロピオン酸、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸、1−エチル−2−メチルブタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、ノナン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロピオン酸等の炭素数2〜9の脂肪酸;デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の炭素数10〜20の脂肪酸、等が挙げられる。
【0023】
分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とそれ以外の脂肪酸とを組み合わせる場合、それ以外の脂肪酸としては、炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸を用いることが好ましい。なお、以下の説明において、「炭素数5〜7の脂肪酸」には「分岐を有する炭素数6の脂肪酸」は含まれず、また、「炭素数8〜9の分岐脂肪酸」には「3,5,5−トリメチルヘキサン酸」は含まれない。
【0024】
分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸とを組み合わせて用いた場合、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸以外の脂肪酸とを組み合わせて用いた場合に比べて、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性とジフルオロメタン冷媒との相溶性との双方がより向上する傾向にある。また、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸とを組み合わせて用いる場合、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸における炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合は80モル%以下であることが必要であり、75モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合が80モル%を超えるとジフルオロメタン冷媒との相溶性が不十分となる。
【0025】
また、炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸に加えて、これらの脂肪酸以外の脂肪酸を使用する場合、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸における炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合が60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合が前記の範囲内であると、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性とジフルオロメタン冷媒との相溶性との双方がより高水準で両立される傾向にある。
【0026】
本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステルの中でも、酸構成成分が分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のみからなるものが、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性とジフルオロメタン冷媒との相溶性との両立の面で特に好ましい。
【0027】
本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、分子構造の異なるエステルの2種以上の混合物であってもよく、かかる場合には個々の分子が必ずしも上記の条件を満たしている必要はなく、冷凍機油中に含まれるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全体として上記条件を満たしていればよい。
【0028】
上記した通り、本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、分岐を有する炭素数6の脂肪酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸を必須とし、必要に応じてその他の脂肪酸を構成成分として含むものである。すなわち、本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、1種のみの脂肪酸を酸構成成分としているものであっても、2種以上の構造の異なる脂肪酸を酸構成成分としているものであってもよいが、当該ペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、酸構成成分として、カルボニル炭素と隣接する炭素原子(α位炭素原子)が四級炭素でない脂肪酸のみを含有することが好ましい。ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中に、α位炭素原子が四級炭素である脂肪酸が含まれる場合には、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性が不十分となる傾向にある。
【0029】
本発明にかかるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する酸構成成分の好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
(i)2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸および2、3−ジメチルブタン酸から選ばれる1〜6種と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸との組合せ;
(ii)2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸および2、3−ジメチルブタン酸から選ばれる1〜6種と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2,4−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸および1−エチル−2−メチルブタン酸から選ばれる1〜30種との組合せ;
(iii)2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸および2、3−ジメチルブタン酸から選ばれる1〜6種と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸および2,2−ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1〜22種との組合せ;
(iv)2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸および2、3−ジメチルブタン酸から選ばれる1〜6種と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2,4−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸および1−エチル−2−メチルブタン酸から選ばれる1〜30種と、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸および2,2−ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1〜22種との組合せ。
【0030】
本実施形態に係る冷凍機油において、上記ペンタエリスリトール脂肪酸エステルは主として基油として用いられる。本実施形態に係る冷凍機油の基油としては、上記ペンタエリスリトール脂肪酸エステルのみを単独で(すなわち本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステルの含有量が100質量%)用いてもよいが、これに加えて、その優れた性能を損なわない程度に、上記ペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の他のポリオールエステルやコンプレックスエステル、脂環式ジカルボン酸エステル等のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油(以下、場合により「他の含酸素合成油」という)を併用してもよい。
【0031】
本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体アルキルジフェニルアルカン、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、並びに本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のエステル系基油(モノエステル、ペンタエリスリトール以外の多価アルコールと脂肪酸のエステル、脂肪酸組成が上記の条件を満たさない脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル、アルキル芳香族エステル、脂環式カルボン酸エステル等)、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でも本発明にかかるポリオールエステル以外のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテルが好ましく用いられる。
【0032】
上記の他の含酸素合成油の中でも特に好ましいのは、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルである。ペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられ、特に好ましいものは、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステル及びジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルである。
【0033】
ネオペンチルグリコールエステルとしては、炭素数5〜9の脂肪酸エステルであることが好ましい。このようなネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には例えば、ネオペンチルグリコールジ3,5,5−トリメチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルペンタネート、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルペンタン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3−メチルヘキサン酸・5−メチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3,5−ジメチルヘキサン酸・4,5−ジメチルヘキサン酸・3,4−ジメチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールジペンタネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルブタネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルペンタネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルブタネート、ネオペンチルグリコールジ3−メチルブタネート等が挙げられる。
【0034】
ジペンタエリスリトールエステルとしては、ジペンタエリスリトールと炭素数5〜7の脂肪酸のエステル、ジペンタエリスリトールと炭素数5〜7の脂肪酸及び炭素数8〜9の脂肪酸のエステルが好ましい。このようなジペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ジペンタエリスリトールと、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および2−エチルヘキサン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る冷凍機油がペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の含酸素合成油を配合する場合、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の含酸素合成油の配合量は、本実施形態に係る冷凍機油の優れた潤滑性と相溶性とを損なわない限りにおいて特に制限はないが、本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルを配合する場合、冷凍機油全量基準で、90質量%以下であることが必要であり、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらにより好ましく、60質量%以下であることがさらにより一層好ましく、50質量%以下であることが最も好ましく;ポリオールエステル以外の含酸素合成油を配合する場合、冷凍機油全量基準で50質量%以下であることが必要であり、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。ペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルや他の含酸素合成油の配合量が前記上限値を超えると、本発明の特徴が得られない。
【0036】
なお、本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、水酸基価が好ましくは10mgKOH/g以下、さらには5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0037】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物はそれぞれ、本実施形態にかかるペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルとして、単一の構造のポリオールエステルの1種からなるものを含有してもよく、また、構造の異なる2種以上のポリオールエステルの混合物を含有してもよい。
【0038】
また、本実施形態に係るペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルは、1種の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、1種の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステルのいずれであってもよい。
【0039】
本実施形態に係る冷凍機油は、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルのみからなるものであってもよく、また、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルとその他の基油とからなるものであってもよいが、後述する各種添加剤をさらに含有してもよい。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物においても、各種添加剤をさらに含有してもよい。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油全量を基準として示すが、冷凍機用作動流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0040】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0041】
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリプチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0042】
酸性リン酸エステルとしては、モノプチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0043】
チオリン酸エステルとしては、トリプチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
【0044】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、酸性リン酸エステルと、炭素数1〜24、好ましくは5〜18の1〜3級の直鎖または分岐アルキル基のアミンとのアミン塩が挙げられる。
【0045】
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、直鎖またば分岐のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミントリテトラコシルアミン、などのアミンとの塩が挙げられる。アミンは単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
【0046】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシァルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリプチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0047】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、テルペン化合物を添加することができる。本発明でいう「テルペン化合物」とは、イソプレンの重合した化合物およびこれらの誘導体を意味し、イソプレンの2〜8量体が好ましく用いられる。テルペン化合物としては、具体的には、グラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(グラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、リモネン、テルピネロール、カルポン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ボルネオールなどのモノテルペン、ファルネセン、ファルネソール、ネロリドルー、幼若ホルモン、フムレン、カリオフイレン、エレメン、カジノール、カジネン、ツチンなどのセスキテルペン、グラニルグラニオール、フィトール、アビエチン酸、ピマラジェン、ダフネトキシン、タキソール、アビエチン酸、ピマール酸などのジテルペン、グラニルファルネセンなどのセスタテルペン、スクアレン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロールなどのトリテルペン、カロテノイドなどのテトラテルペンなどが挙げられる。
【0049】
これらのテルペン化合物の中でも、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンが好ましく、セスキテルペンがより好ましく、αファルネセン(3,7,11−トリメチルドデカー1,3,6,10−テトラエン)および/またはβファルネセン(7,11−ジメチルー3−メチリデンドデカー1,6,10−トリエン)が特に好ましい。本発明において、テルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本実施形態に係る冷凍機油におけるテルペン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。テルペン化合物の含有量が0.001質量%未満であると熱・化学的安定性の向上効果が不十分となる傾向にあり、また、10質量%を超えると潤滑性が不十分となる傾向にある。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物におけるテルペン化合物の含有量については、冷凍機油全量を基準とした場合に上記の好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0051】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0052】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0053】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロルプローパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0054】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾェート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0055】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0056】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0057】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルー3,4−エポキシシクロヘキサンカルポキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルポルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペ−ト、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0058】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0059】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0060】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、プチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0061】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0063】
本実施形態に係る冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm/s、より好ましくは4〜500mm/s、最も好ましくは5〜400mm/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm/s、より好ましくは2〜50mm/sとすることができる。動粘度が前記下限値未満の場合には潤滑性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えるとジフルオロメタン冷媒との相溶性が不十分となる傾向にある。
【0064】
また、本実施形態に係る冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1013Ω・cm以上、最も好ましくは1.0×1014Ω・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
【0065】
また、本実施形態に係る冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0066】
また、本実施形態に係る冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品および潤滑油一中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0067】
また、本実施形態に係る冷凍機油の灰分は特に限定されないが、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油および石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0068】
本実施形態に係る冷凍機油は、ジフルオロメタン冷媒とともに用いた場合に十分に高い潤滑性と十分に高い相溶性とを示すものであり、ジフルオロメタン冷媒用冷凍機用の冷凍機油として幅広く使用することができる。本実施形態に係る冷凍機油が使用される冷凍機としては、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷蔵庫、自動車用エアコン、除湿機、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等が挙げられるが、中でも、密閉型圧縮機を有する冷凍機において特に好ましく用いられる。また、本発明のジフルオロメタン冷媒用冷凍機油は、往復動式、回転式、遠心式等の何れの形式の圧縮機にも使用可能である。なお、これらの冷凍機において、本発明のジフルオロメタン冷媒用冷凍機油は、後述するように、ジフルオロメタン冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物として用いられる。
【0069】
ずなわち、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、上記本実施形態に係る冷凍機油とジフルオロメタン冷媒とを含有することを特徴とするものである。ここで、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物中の冷凍機油とジフルオロメタン冷媒との配合比は特に制限されないが、冷凍機油の配合量は、通常、ジフルオロメタン100重量部に対して1〜1000重量部であり、好ましくは2〜800重量部である。
【0070】
なお、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物においては、従来の冷凍機油を用いた場合には得られなかった十分に高い潤滑性と十分に高い相溶性とを両立することができるという点で、冷媒成分としてジフルオロメタン冷媒のみを含有する場合に最もその有用性が発揮されるが、ジフルオロメタン冷媒以外のHFC冷媒、不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル等の非フッ素含有エーテル系冷媒、アンモニア、二酸化炭素や炭化水素等の自然系冷媒を含有してもよい。
【0071】
ジフルオロメタン以外のHFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0072】
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒としては、フッ素数が3〜5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−C1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO−1225ye、HFO−1234zeおよびHFO−1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。HFO冷媒との混合冷媒として好ましいものは、ジフルオロメタン/1234yf=40〜60/60〜40重量%のもので、中でもジフルオロメタン/1234yf=50/50重量%のものが好ましい。
【0073】
炭化水素冷媒としては、炭素数3〜5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタンまたはこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0074】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。
【0075】
本実施形態に係る冷凍機油は、通常、冷凍空調機器において、ジフルオロメタン冷媒あるいはジフルオロメタン冷媒と上述したような冷媒との混合冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物の形で存在している。この組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合、並びに本発明の冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜1000質量部、より好ましくは2〜800質量部である。
【0076】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型または密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【0077】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、前述の通り様々なジフルオロメタン冷媒用冷凍機に好適に用いることが可能であるが、その冷凍機が備える冷媒循環サイクルの代表的な構成としては、圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器、並びに必要に応じて乾燥器を具備するものが例示される。
【0078】
圧縮機としては、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器内に滞留する高圧容器方式の圧縮機、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器外へ直接排出される低圧容器方式の圧縮機、等が例示される。
【0079】
モーター部の電機絶縁システム材料である絶縁フィルムとしては、ガラス転移点50℃以上の結晶性プラスチックフィルム、具体的には例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミド群から選ばれる少なくとも一種の絶縁フィルム、あるいはガラス転移温度の低いフィルム上にガラス転移温度の高い樹脂層を被覆した複合フィルムが、引っ張り強度特性、電気絶縁特性の劣化現象が生じにくく、好ましく用いられる。また、モーター部に使用されるマグネットワイヤとしては、ガラス転移温度120℃以上のエナメル被覆、例えば、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド及びポリアミドイミド等の単一層、あるいはガラス転移温度の低い層を下層に、高い層を上層に複合被覆したエナメル被覆を有するものが好ましく用いられる。複合被覆したエナメル線としては、ポリエステルイミドを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/EI)、ポリエステルを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/PE)等が挙げられる。
【0080】
乾燥器に充填する乾燥剤としては、細孔径3.3オングストローム以下、25℃の炭酸ガス分圧250mmHgにおける炭酸ガス吸収容量が、1.0%以下であるケイ酸、アルミン酸アルカリ金属複合塩よりなる合成ゼオライトが好ましく用いられる。具体的には例えば、ユニオン昭和(株)製の商品名XH−9,XH−10,XH−11,XH−600等が挙げられる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0082】
[実施例1〜10及び比較例1〜11]
実施例1〜10及び比較例1〜11においては、それぞれ以下に示す基油1〜13及び添加剤1〜4を表1又は表2に示す組成比となるように配合して試料油を調製した。得られた各試料油の性状を表1〜4に示す。
(基油)
基油1:ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2−メチルペンタン酸70モル%、3,5,5−トリメチルヘキサン酸30モル%の混合物)とのテトラエステル
基油2:ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2−メチルペンタン酸30モル%、3,5,5−トリメチルヘキサン酸70モル%の混合物)とのテトラエステル
基油3:ペンタエリスリトールとn−ペンタン酸とのテトラエステル
基油4:ジペンタエリスリトールとn−ペンタン酸とのヘキサエステル
基油5:ネオペンチルグリコールと2−メチルペンタン酸とのジエステル
基油6:トリメチロールプロパンと2−メチルペンタン酸とのトリエステル
基油7:ペンタエリスリトールと2−メチルペンタン酸とのテトラエステル
基油8:ペンタエリスリトールと2−エチルブタン酸とのテトラエステル
基油9:ジペンタエリスリトールと2−エチルブタン酸とのヘキサエステル
基油10:ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2−メチルヘキサン酸70モル%、2−エチルペンタン酸30モル%)とのテトラエステル
基油11:ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2−エチルヘキサン酸50モル%、3,5,5−トリメチルヘキサン酸50モル%)とのテトラエステル
基油12:ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2−メチルペンタン酸90モル%、2−3,5,5−トリメチルヘキサン酸10モル%の混合物)とのテトラエステル
基油13:ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2−メチルペンタン酸10モル%、2−3,5,5−トリメチルヘキサン酸90モル%の混合物)とのテトラエステル
(添加剤)
添加剤1:トリクレジルホスフェート
添加剤2:トリフェニルホスフォロチオネート
添加剤3:グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート
添加剤4:p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル
【0083】
次に、上記の各試料油について、以下に示す試験を行った。
【0084】
(冷媒との相溶性試験)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、ジフルオロメタン冷媒(HFC−32)18gと試料油2gとの混合物を30℃から−40℃まで徐々に冷却し、混合物が相分離又は白濁した温度を二層分離温度として評価した。なお、「<−40」とは、本試験の測定温度域において相分離及び白濁が認められなかったことを表す。また、表4中、「分離」とは、30℃で既に相分離又は白濁していたことを表す。
【0085】
(潤滑性試験)
密閉容器の内部に上側試験片にベーン(SKH−51)、下側試験片にディスク(FC250 HRC40)を用いた摩擦試験機を装着した。摩擦試験部位に試料油を600g導入し、系内を真空脱気した後、HFC−32を導入して加熱した。密閉容器内の温度を100℃、冷媒圧力を1.5Mpaとした後、荷重ステップ10kgf(ステップ時間2分)で段階的に荷重を100kgfまで上げ、100kgfにおいて60分間摩耗試験を行った。各試料油について60分間の試験後のベーンの摩耗巾及びディスクの摩耗深さを計測した。
【0086】
(低温析出性試験)
試料油を試験管に入れ、ドライアイスを入れたエタノール浴(−70℃)に24時間浸漬し、白濁の有無を観察した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルであって、前記脂肪酸において、分岐を有する炭素数6の脂肪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸のモル比が20:80〜80:20であり、前記脂肪酸に占める炭素数6の脂肪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の合計の割合が20モル%以上であるエステルを、冷凍機油全量基準で10質量%以上含有し、ジフルオロメタン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍機油と、ジフルオロメタン冷媒とを含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。


【公開番号】特開2011−195631(P2011−195631A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61201(P2010−61201)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】