説明

冷凍機油の回収方法及び冷凍機油の回収装置

【課題】使用済み冷蔵庫などの低温機器から回収した冷凍機油に溶存して残留する冷媒を、効率的に且つ安全に除去する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】連通気泡を有する多孔体を通過する際に、気泡が破壊することによって気泡内の冷媒を気散させる。多孔体内を通過する際に気泡が破壊して冷媒を容易に脱離するものである。さらに、気泡を生成しないものは、下方に繊維状物体の集合体(冷媒気散エレメト)を設けて、冷凍機油がこれを通過する際に冷媒の気散に供する表面積が拡大することによって効率的な気化、分離を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、使用済みの低温機器から冷媒と同時に回収した冷凍機油に溶存する冷媒を除去する手段に関するものであって、さらに詳しくは、冷凍機油を通過させることによって効率的に冷凍機油に溶存する冷媒を気散させる冷凍機油の回収方法及び冷凍機油の回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
故障や使用済みなどの理由から冷蔵庫やショーケースなどの低温機器が具備する冷媒回路から冷媒を回収する際に、同時に回収した冷凍機油にはフロン類または炭化水素などの冷媒が溶存している。回収した冷凍機油の開放状態での取り扱いによって、フロン類の場合には大気中に残留冷媒が飛散したことに伴う環境への悪影響が危惧される。さらに、燃料油等として燃焼させるとフッ酸などの強酸の発生、炭化水素の場合には漏洩した冷媒ガスへの引火によって火災や爆発などの可能性が危惧される。このため、溶存している前記冷媒の除去、または焼却などによる分解を伴う生成物の無害化処理を行う必要があった。
【0003】
そこで、簡単な構成で安価な設備でフロンを効率的に回収できるフロン回収装置を提供するために、上部に大気開放口を有する上部油槽を配置し、下部には上部油槽とを開閉弁を有する配管で接続して下部油槽を配置し、上部油槽の油中に空気と混在するフロンを導き、フロンを油に吸収させ、空気は大気開放口から排出されるように構成し、上部油槽でフロンを吸収したフロンリッチな油は比重差にて下部油槽の油と交換し得るように構成し、下部油槽はオイルヒータを具備すると共に、下部油槽に開閉弁を有する配管で分離器を接続し、下部油槽に上部油槽から移動してきたフロンリッチな油を加熱し、油槽中からフロンを分離し、分離したフロンを分離器で分離し、回収するフロン回収装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、コンプレッサの吸引力によって被フロン回収装置からオイルを含むフロンガスを回収するフロン回収装置において、フロン回収通路に耐圧容器で構成したオイルセパレータを設け、このオイルセパレータでフロンから分離したオイルを他の耐圧容器で構成したオイル回収容器に移し、このオイル回収容器をフロン回収装置の吸引口に接続し、オイル回収容器を負圧に保ってオイルに残留するフロンを放出させる構造のフロン回収オイルセパレータが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、2の手段では、回収した冷凍機油の上層表面から冷媒が飛散するが、それより下層にある冷凍機油に溶存した冷媒の蒸発が困難であるという課題があった。
【0006】
そこで、冷媒サイクルを利用した被回収機から既存の冷媒を回収する装置を利用して、ドリル装置により圧縮機に負圧状態で穴を空け、ガス状の冷媒と共に冷凍機油に溶存している冷媒及び冷凍機油も冷凍機油/冷媒分離装置に回収することにより、冷凍機油中に溶存している冷媒も分離回収する冷媒回収装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、冷凍機から得た冷媒が溶存する冷凍機油を所定のフロン分離タンク内に入れ、超音波加振装置で加振することにより、効率良く冷媒を気化させて冷凍機油と分離するようにした冷媒又は冷凍機油の分離回収装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
前記特許文献3、4の手段は、表面層の冷媒含有濃度の低下抑制に伴う冷媒蒸発速度を維持して回収量を向上するものである。
【0009】
一方、冷媒を含む廃油がポンプ装置を介して供給される蒸留タンクと、廃油を加熱する加熱手段とを備え、蒸留タンク内に供給された廃油からガス冷媒を蒸発させて分離する冷媒分離装置において、蒸留タンク内に、供給される廃油を霧状に噴出させるシャワーノズルを設けて、蒸留タンク内に供給される廃油の蒸発面積が拡大されるようにした冷媒分離装置が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
同様に、被回収装置にあるフルオロカーボンとオイルの混合体を第1容器に回収し、第1容器内の混合体の液量が所定の量になると、第1容器内の液をポンプで蒸発管に送り、ここで粒状にして第2容器内に散布し、第2容器を加熱してフルオロカーボンを気化させ、フルオロカーボンを殆ど含まないオイルにして回収することができ、第1容器では混合体の回収をし、第2容器でフルオロカーボンとオイルとを分離回収するようにすることができるフルオロカーボンの回収装置が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0011】
前記特許文献5、6の方法によれば、下層部分にある冷凍機油が供給されるので、蒸発面積が拡大する効果を併せ持つ霧状または粒状が落下する際に冷媒が飛散した冷凍機油が蓄積する上層より、常に高い濃度の冷媒を含有した前記冷凍機油が冷媒の蒸発面を形成するので、より優れた冷媒の蒸散効果が得られる。
【0012】
前記特許文献5に記載された、冷凍機油を加温後、減圧状態に保持した密閉容器内に噴出させることによって微細な粒子を形成して冷媒が蒸発する冷凍機油の表面積を拡大する方法について、さらに説明する。
【0013】
冷媒を含んだ冷凍機油は、ポンプ装置を用いて蒸留タンク内部にあるシャワーノズルに供給されて粒状で落下する。供給に際しては電気ヒータを用いて加温するから、冷媒の飛散が促進される。分離された冷媒は、蒸留タンクの上部に備えたガス出口に接続された配管を介して冷媒回収装置に送られた後、冷媒貯溜タンクに液冷媒として貯溜される一方、残った冷凍機油は、蒸留タンクの底部に形成された油出口に接続された配管を介して別途の油貯溜タンクに貯溜される。蒸留容器内部に冷媒を含む冷凍機油は、再度にポンプ装置を用いて冷媒貯溜タンクの下部から排出されて蒸留タンク内部にあるシャワーノズルに供給され、再度、冷媒の飛散が行われることになる。
【0014】
以上の前記特許文献5の手段によれば、減圧および加温下にフロン系冷媒を含有する冷凍機油を供給して放置できるようにしたこと、さらに粒状で供給することによって蒸発面積を拡大して冷媒速度を高め、該冷凍機油から冷媒の分離を効率的に行うようにしている。
【特許文献1】特開平03−158667号公報
【特許文献2】特開平08−014713号公報
【特許文献3】特開平09−229521号公報
【特許文献4】特開2000−130894号公報
【特許文献5】特開2000−257999号公報
【特許文献6】特開2001−162102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
使用済みの冷凍機器などから回収した冷媒を含有する冷凍機油を霧状および粒状で減圧下の密閉容器中に放出する手段にあって、前記冷凍機油が微細な粒子を成すために相応の圧力で細孔から放出する際に、長期の使用過程で生成するオリゴマーや回収時に混入する異物などの固形物が含まれていることがあり、これが前記細孔を通過できずに閉塞させることによって安定した当該装置を運転し難いという課題がある。
【0016】
また、霧状や微細な粒状に形成された冷凍機油のいくつかは気中に漂った後に、冷凍機油から蒸発した冷媒とともに吸引されて蒸散した冷媒と共にボンベに流入するという課題が生じる。
【0017】
また、冷凍機油に溶存した濃度が減圧や加温の状態下で気化した冷媒が気泡を形成して内部に封じ込められる状態を形成するので、前記気泡が破壊すること無しに浮遊した状態のままであれば、冷媒が分離されず、回収の効率が著しく低下するという課題が生じる。
【0018】
また、可燃性冷媒を含む冷凍機油の場合、何れの手段であっても、短時間の処理であれば残留する冷媒量が、貯蔵タンクなどの密閉容器内で気散して燃焼を可能とする条件が形成される可能性を否定できない。このため、更なる冷媒の残留量を軽減する手段を追加することを必須としていた。
【0019】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、冷媒を溶存する冷凍機油から効率的に冷媒を除去する冷凍機油の回収方法及び冷凍機油の回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明に係る冷凍機油の回収方法は、低温機器から冷媒を溶存する冷凍機油を回収し、冷凍機油を、油分離器の上部に配置される連続した気孔を備えた多孔体を減圧下で通過させ、さらに、油分離器の下部に配置される冷媒気散エレメントを通過させることによって冷媒を減圧吸引して冷凍機油から除去することを特徴とする。
つまり、連通気泡を有する多孔体を通過する際に、気泡が破壊することによって冷媒を容易に脱離するものである。さらに、気泡を生成しないものは、下方に繊維状物体の集合体(冷媒気散エレメト)を設けて、冷凍機油がこれを通過する際に冷媒の気散に供する表面積が拡大することによって効率的な気化、分離を達成する。要するに、高濃度に冷媒を含有する冷凍機油を気泡破壊により分離、残余冷媒が低濃度にある冷凍機油を繊維状物体の集合体を通過する際の面積拡大と落下時間延長によって気散効率を向上した。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る冷凍機油の回収方法は、高濃度に冷媒を含有する冷凍機油を気泡破壊により分離、残余冷媒が低濃度にある冷凍機油を繊維状物体の集合体を通過する際の面積拡大と落下時間延長によって気散効率を向上させる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施の形態1.
図1乃至図6は実施の形態1を示す図で、図1は冷媒回収の工程概念図、図2は使用済み冷蔵庫50の圧縮機1からの冷媒回収状態を示す斜視図、図3は冷媒回収装置の構造概念を表す回路図、図4は油分離器の内部構造を示す構造概念断面図、図5はエジェクタの断面図、図6は各工程における冷媒気散の状況を示す工程図である。
【0023】
可燃性を呈する冷媒であるイソブタンの回収方法と冷凍機油からの除去方法について、図1の工程概念図を用いて説明する。
【0024】
先ず、使用済み冷蔵庫50(低温機器の一例)からの冷媒回収方法の一例を述べる。図2に示す如く、圧縮機1の封入管2に、ピアス3(冷凍機油回収部の一例)が備える中空の針を挿入して冷媒を回収する。
【0025】
冷媒の回収は図3の冷媒回収装置の構造概念を表す回路図で示すように、冷媒と冷凍機油13とを回収ポンプ12の減圧吸引によって回収する。冷媒と冷凍機油13とを油分離器10に導入し、冷凍機油13は油分離器10下部に蓄積して、冷媒のみを回収ポンプ12によって加圧しながら冷媒回収タンク11に搬送する。
【0026】
加圧により発熱した冷媒は、放熱器17で冷却された後、冷媒回収タンク11が備える冷却器15による冷却と回収ポンプ12の加圧によって液化し、冷媒回収タンク11に保持される。
【0027】
外部の冷却装置14から供給して冷却器15に循環する冷媒の温度は−5℃であり、このときの冷媒回収タンク11内のゲージ圧力は30〜60KPaの低圧で、安全に密閉保持できる。もしも、ピアス3による冷媒吸引の際に、非凝縮ガスの空気が混入した場合にはゲージ圧力が前記範囲(30〜60KPa)を超過して回収の効率(速度)も低下するので、冷媒回収タンク11の開放弁16を解放して燃焼の上限値を下回らないように爆発などに対する安全措置を施す。
【0028】
冷媒を除去して浄油した冷凍機油13は、油分離器10の下部にある排出弁18を通じて排出できる。
【0029】
次に、本実施の形態の冷媒分離装置である油分離器10の動作原理を、図4に示す内部構造の概念図を用いて、以下に説明する。冷媒と、冷媒を相溶する冷凍機油13が冷蔵庫50から回収され、油分離器10上部の受部20にピアス3から導入するように構成される。受部20内には直径が3〜5mmのグラファイト化したカーボンの破砕片が充填される。グラファイト化したカーボンの破砕片は、連続した気孔を備えた多孔体の一例である。多孔体は、100μm以上5mm以下の連続した気孔を備える。また、多孔体は、間隙を設けて複数段に配列している。受部20は、油分離器10内の上部に配置されて密閉した箱状を成し、上部に冷凍機油13を投入する配管である供給管21が設けられる。受部20の側壁上部には、冷媒排気管22aが配置される。
【0030】
受部20の下方に、冷媒気散エレメント23が設けられる。冷媒気散エレメント23は、幅3mm、厚さ20μmの磁性を備えるステンレスで、長さが10mのテープ状のものを100cc程度の無定形で粗密の少ない固まり状のものである。冷媒気散エレメント23は、受部20よりやや大きい直径を有し、少なくとも側面が金属製の網から成る筒内に投入されて構成される。
【0031】
この冷媒気散エレメント23は、1〜5mmの空隙を備え、冷凍機油13がテープ状ステンレスを伝って落下するように構成されている。受部20と冷媒気散エレメント23の内部には、冷凍機油13などの侵入を防止する目的で、アルミ管内に配置された誘電加熱用コイルが環状に設けられ、カーボン破砕片または磁性ステンレスを加熱して、60℃を保持している。冷媒気散エレメント23は、少なくとも、繊維状または短冊状の長尺物を不定形で不規則な折り返しを設けた態様を成す構造体か、又は1〜5mmの貫通孔(空隙)を有する粒状のものである。
【0032】
また、油分離器10の側壁下部に、冷媒排気管22bが設けられる。さらに、油分離器10の底部に冷凍機油の排出管24が設けられる。油分離器10内の最下部に、冷凍機油13を蓄積する貯蔵部25があり、冷凍機油13に浸漬する位置に気泡発生器26を備える。
【0033】
冷凍機油13に溶存する冷媒分離の概念を以下に述べる。図3に示す冷媒回収装置で用いた回収ポンプ12を併用して、油分離器10の側壁下部に設けた冷媒排気管22bに回収ポンプ12を接続して減圧状態を確保した後、冷凍機油13を上部にある供給管21から受部20に投入する。
【0034】
冷媒を溶存する冷凍機油13は、受部20内部に対して外部は減圧状態であるから、減圧状態に応じて溶存した冷媒が気化して気泡を形成しながら連続した気孔を通じて受部20外部に移動する。この気泡が、受部20内にあって連続した気孔内を拡大と縮減を繰り返して移動する際にカーボン破砕片の鋭角な角に接して破損し、気泡内部にある冷媒ガスが気散する。なおも残留する冷媒は、再度の気泡の発生と破壊を繰り返して効率的に冷媒ガスが分離される。
【0035】
冷媒が受部20から漏出して残留冷媒量が低下した冷凍機油13は、受部20の直下に配置された冷媒気散エレメント23に滴下し、内部に備える粗い固まりであるテープ状ステンレスの表面を伝って下方に流れ落ちていく。このとき、薄膜状態を成してゆっくりと落下していく間に、溶存している冷媒が気散することになる。
【0036】
また、誘電加熱用の外部をシールドしたコイルを設けた受部20内のカーボン粒子や冷媒気散エレメント23内のテープ状ステンレスは、電磁誘導加熱によって安全に直接的に加熱されて50〜70℃の雰囲気を形成するので、効率よく冷媒を気散させることができる。
【0037】
本実施の形態で述べた誘電加熱に代えて、蛇管を内部に配した加熱器を設けても良く、60℃程度の温水を流通させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0038】
以上のようにして気散した冷媒は、図3の冷媒回収装置で回収されて、冷媒回収装置が備える冷媒回収タンク11に保持されることになる。
【0039】
次に、油分離器10の冷媒排気管22bと冷凍機油13の排出管24を閉塞後、例えば、図5に示す断面構造のエジェクタを油分離器10に接続する。エジェクタの二次側(真空)に油分離器10の冷媒排気管22aを接続する。
【0040】
図5に示すエジェクタは、圧縮空気を利用して真空(負圧)を発生させる真空発生機器である。圧縮空気をノズルから放出させて真空を発生させる。エジェクタの真空発生原理を簡単に説明する。
(1)圧縮空気を供給ポート(一次側)に供給すると、供給空気はノズルに導かれる。
(2)圧縮空気はノズルで絞られ、拡散室に高速(音速)で放出され、膨張拡散しディフューザに流入する。
(3)高速流により拡散室の圧力が低下し(ベルヌーイの定理)、拡散室へ真空ポート(二次側)の空気が流入する。
(4)流入した二次側の空気はノズルから放出された圧縮空気と共に希薄化されて大気へ放出される。
【0041】
エジェクタに圧縮空気を導入し、油分離器10の側壁上部に設けた冷媒排気管22aから排気することによって油分離器10内部の減圧状態を確保し、油分離器10の最下部にあって冷凍機油13を蓄積する貯蔵部25にある気泡発生器26が冷凍機油13に浸漬するまで供給する。
【0042】
冷媒気散エレメント23を通過した冷凍機油13は、油分離器10最下部の貯蔵部25に蓄積される。冷凍機油13に気泡発生器26が浸漬するまで冷凍機油13を蓄積した後、空気取り入れ弁27を開放して気泡発生器26に外気(空気)を導入する。減圧状態の油分離器10内に、気泡発生器26が備える微細な気孔を通じて空気が細かな泡となって冷凍機油13内に分散しながら浮上する。この細かな泡が冷凍機油13内を浮上する際、冷凍機油13に溶存する冷媒が気泡内に侵入して、冷凍機油13中の冷媒濃度が低減する。ここで気散した可燃性冷媒は、エジェクタの作動に用いた圧縮空気とともに冷媒排気管22aから大気中に放散する。
【0043】
約1時間の気泡導入後、エジェクタへの圧縮空気導入を停止、油分離器10の最下部にある冷凍機油13の排出管24を解放して浄油された冷凍機油13を回収する。
【0044】
以上の冷凍機油13から冷媒の気散プロセスを図6に示す工程図にまとめた。各工程通過の際の可燃性冷媒の溶存量を併記した。
(1)ステップ101で、冷凍機油13を供給管21から油分離器10に投入する。この状態では、冷凍機油13への可燃性冷媒の溶存量は、42000ppmである。
(2)ステップ102で、受部20内部に対して外部は減圧状態であるから、減圧状態に応じて冷凍機油13に溶存した冷媒が気化して気泡を形成しながら連続した気孔を通じて受部20外部に移動する。この状態では、冷凍機油13への可燃性冷媒の溶存量は、11000ppmである。
(3)ステップ103で、冷媒が受部20から漏出して残留冷媒量が低下した冷凍機油13は、受部20の直下に配置された冷媒気散エレメント23に滴下し、内部に備える粗い固まりであるテープ状ステンレスの表面を伝って下方に流れ落ちていく。このとき、薄膜状態を成してゆっくりと落下していく間に、溶存している冷媒が気散する。この状態では、冷凍機油13への可燃性冷媒の溶存量は、4600ppmである。
(4)ステップ104で、冷凍機油13に気泡発生器26が浸漬するまで冷凍機油13を蓄積した後、空気取り入れ弁27を開放して気泡発生器26に外気(空気)を導入する。減圧状態の油分離器10内に、気泡発生器26が備える微細な気孔を通じて空気が細かな泡となって冷凍機油13内に分散しながら浮上する。この細かな泡が冷凍機油13内を浮上する際、冷凍機油13に溶存する冷媒が気泡内に侵入して、冷凍機油13中の冷媒濃度が低減する。この状態では、冷凍機油13への可燃性冷媒の溶存量は、400ppmである。
【0045】
本実施の形態の、受部20と冷媒気散エレメント23および微細気泡を冷凍機油13に導入する気泡発生器26に代えて、垂直に配した板の表面が濡れる程度に50℃に加温した冷凍機油13を流下させる装置の場合は、40000ppmであった冷媒含有率が25000ppm程度にしか低下しなかった。このことから、減圧下で溶存する冷媒の気化に伴って発生する気泡は極めて破泡し難く、常圧に戻した場合に再度の溶存を来したと考えられ、本実施の形態による冷媒の気散、つまり分離が有効に行えることを確認した。
【0046】
なお、本実施の形態では、受部20内に直径が3〜5mmのグラファイト化したカーボンの破砕片を充填して用いたが、これに代えて、連通した気泡から成る発泡体やパイプを切断したような円筒状の充填物を用いても同様の効果を得ることが出来る。
【0047】
本実施の形態では、冷凍機油13の処理量が冷蔵庫50の50〜150台に相当する15L(リットル)の冷凍機油13を1回で処理が可能な油分離器10であって、空間容量を含めて50Lの排気を行うために50L/minの排気速度を有するエアーエジェクターを用いたので、使用する圧縮空気量は100L/minを要した。この条件下での大気中の空気を吸気する速度が50L/minであって、一方の残留可燃性冷媒の減圧下での飛散速度が1L/min以下であることから、イソブタンの燃焼下限濃度である1.8%を超えることのない大気への放散濃度が確保されることになり、安全な処理が確保できた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態1を示す図で、冷媒回収の工程概念図。
【図2】実施の形態1を示す図で、使用済み冷蔵庫50の圧縮機1からの冷媒回収状態を示す斜視図。
【図3】実施の形態1を示す図で、冷媒回収装置の構造概念を表す回路図。
【図4】実施の形態1を示す図で、油分離器10の内部構造を示す構造概念断面図。
【図5】実施の形態1を示す図で、エジェクタの断面図。
【図6】実施の形態1を示す図で、各工程における冷媒気散の状況を示す工程図。
【符号の説明】
【0049】
1 圧縮機、2 封入管、3 ピアス、10 油分離器、11 冷媒回収タンク、12 回収ポンプ、13 冷凍機油、14 冷却装置、15 冷却器、16 開放弁、17 放熱器、18 排出弁、20 受部、21 供給管、22a 冷媒排気管、22b 冷媒排気管、23 冷媒気散エレメント、24 排出管、25 貯蔵部、26 気泡発生器、27 空気取り入れ弁、50 冷蔵庫。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温機器から冷媒を溶存する冷凍機油を回収し、
前記冷凍機油を、油分離器の上部に配置される連続した気孔を備えた多孔体を減圧下で通過させ、
さらに、前記油分離器の下部に配置される冷媒気散エレメントを通過させることによって冷媒を減圧吸引して前記冷凍機油から除去することを特徴とする冷凍機油の回収方法。
【請求項2】
前記減圧吸引に供する前記多孔体および前記冷媒気散エレメントが、加温された状態を維持して成ることを特徴とする請求項1記載の冷凍機油の回収方法。
【請求項3】
前記減圧吸引に供する前記多孔体および前記冷媒気散エレメントが、誘電加熱によって加温されることを特徴とする請求項2記載の冷凍機油の回収方法。
【請求項4】
低温機器から冷媒を溶存する冷凍機油を回収する冷凍機油回収部と、
この冷凍機油回収部で回収された前記冷凍機油を、減圧下で通過させる多孔体と、
この多孔体の下方に位置し、前記多孔体から落下する前記冷凍機油から冷媒を気散させる冷媒気散エレメントと、
前記気散した冷媒を吸引して回収する冷媒回収装置とを備えたことを特徴とする冷凍機油の回収装置。
【請求項5】
前記多孔体が前記冷凍機油を滞留させる密閉構造の受部内に保持され、前記冷媒気散エレメントの上方に位置する冷媒排気管を備えることを特徴とする請求項4記載の冷凍機油の回収装置。
【請求項6】
前記多孔体が、間隙を設けて複数段を配列して成ることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の冷凍機油の回収装置。
【請求項7】
前記冷媒気散エレメントが、少なくとも、繊維状または短冊状の長尺物を不定形で不規則な折り返しを設けた態様を成す構造体、又は1〜5mmの貫通孔を備えた粒状体を備えて成ることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の冷凍機油の回収装置。
【請求項8】
前記減圧吸引に供する前記多孔体および前記冷媒気散エレメントが、誘電加熱によって加温されることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の冷凍機油の回収装置。
【請求項9】
低温機器から冷媒を溶存する冷凍機油を回収する冷凍機油回収部と、
この冷凍機油回収部で回収された前記冷凍機油を、減圧下で通過させる多孔体と、
この多孔体の下方に位置し、前記多孔体から落下する前記冷凍機油から冷媒を気散させる冷媒気散エレメントと、
冷媒を気散除去した前記冷凍機油を貯蔵する貯蔵部と、
この貯蔵部に設けられ、外気を吸引して前記冷凍機油中に気泡を分散させて冷媒を気散させる気泡発生器とを備えたことを特徴とする冷凍機油の回収装置。
【請求項10】
前記気泡発生器により気散された冷媒を、エジェクタを用いて、圧縮空気で希薄化させて大気に放散させることを特徴とする請求項9記載の冷凍機油の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−175495(P2008−175495A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10920(P2007−10920)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】