説明

冷凍装置

【課題】フロン規制の対象冷媒を使用することなく、オイルキャリアの役割を果たす冷媒を使用すると共に、−150℃という超低温を実現できる冷凍装置を提供する。
【解決手段】本発明は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮した後、蒸発せしめて冷却作用を発揮する独立した冷媒閉回路1を構成する高温側冷媒回路2と低温側冷媒回路3とからなり、高温側冷媒回路2の蒸発器14と低温側冷媒回路3の凝縮器23とでカスケードコンデンサ25を構成した冷凍装置において、低温側冷媒回路3に、R245fa、R600、R404A、R508A、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒、又は、R245fa、R600、R404A、R23、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒、又は、R245fa、R600、R404A、R508B、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒を封入した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立した二系統の冷媒回路を構成し、高温側冷媒回路の蒸発器と低温側冷媒回路の凝縮器とで熱交換器を構成する所謂二次元冷凍方式の冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の所謂二次元冷凍方式の冷凍装置には、高温側と低温側の冷媒回路をそれぞれ独立した二系統の冷媒閉回路にて構成し、高温側冷媒回路の蒸発器と低温側冷媒回路の凝縮器とで熱交換器を構成し、高温側冷媒回路の冷媒の蒸発によって低温側冷媒回路の冷媒を凝縮するものがある(例えば、特許文献1に示す。)。これによって、低温側冷媒回路にはより低い沸点(蒸発温度)の冷媒を用いることができるので、低温側冷媒回路の蒸発器によって極めて低い温度を得ることが可能となる。
【0003】
係る二次元冷凍方式では低温側冷媒回路の蒸発器において通常−80℃程度の低温を得るものであるが、より低い温度例えば−150℃という温度を得るためには、冷媒回路構成に改良を加えたり、封入冷媒組成に種々の工夫をする必要がある。
【0004】
本件出願人は特許文献2において、上述した後者の方法、即ち、封入冷媒組成を工夫する方法にて−150℃という超低温を実現した。具体的には、高温側冷媒回路にR22(クロロジフルオロメタン:CHClF2)、R142b(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン:CH3CClF2)及びR21(ジクロロフルオロメタン:CHCl2F)を封入し、低温側冷媒回路にR21、R22、R23(トリフルオロメタン:CHF3)、R14(四弗化炭素:CF4)、R50(メタン:CH4)及びR740(アルゴン:Ar)からなる混合冷媒を封入したものである。
【特許文献1】実公昭58−23101号公報
【特許文献2】特許第3208151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の構成によると、R21、R22といった所謂HCFCに属する冷媒は、オゾン層を破壊する原因とされる塩素原子が含まれているため、フロン規制の対象冷媒とされている。このため、オゾン層を破壊する危険性が無く、且つ従来からの冷凍回路を変更することなくその性能を維持できる代替可能な冷媒組成物の開発が要望されている。
【0006】
しかしながら、従来用いられていたR21は、オイル(アルキルベンゼン)との相溶性が高いことから、オイルキャリアとしてオイルを圧縮機に戻す役割を果たしている。これにより、圧縮機の潤滑不良やロックを防止していたが、上述したようにR21は、塩素を含む冷媒であるため、オイルキャリア能力が高いもので代替する必要がある。
【0007】
本発明は係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、フロン規制の対象冷媒を使用することなく、オイルキャリアの役割を果たす冷媒を使用すると共に、−150℃という超低温を実現できる冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮した後、蒸発せしめて冷却作用を発揮する独立した冷媒閉回路を構成する高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とからなり、高温側冷媒回路の蒸発器と低温側冷媒回路の凝縮器とで熱交換器を構成した冷凍装置において、低温側冷媒回路に、R245fa、R600、R404A、R508A、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒、又は、R245fa、R600、R404A、R23、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒、又は、R245fa、R600、R404A、R508B、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒を封入したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、上記発明において、R245faとR600を合わせた総重量に対してR245faを70重量%以上としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、上記各発明において、非共沸混合冷媒の総重量に対して、R245faとR600を合わせた総重量を5〜24重量%、R404Aを13〜28重量%、R508A、又は、R23、又はR508Bを21〜37重量%、R14とR50を合わせた総重量を25〜43重量%、R740を4〜10重量%としたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、上記各発明において、n−ペンタンを0.5〜2重量%加えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、上記各発明において、高温側冷媒回路に、R407DあるいはR404Aとn−ペンタンからなる非共沸混合冷媒を封入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フロン規制対象冷媒を使用することなく、各冷媒の蒸発温度の差を利用して複数の熱交換器で未だ気相状態である冷媒を順次凝縮させ、最終段の蒸発器において−150℃という超低温を実現することができるようになる。これにより、冷媒組成の変更に伴う従来からの冷凍回路を変更することなく、その性能を維持することができると共に、オゾン層の破壊という環境問題に対処することができるようになる。また、本発明の冷媒組成により−150℃という超低温を実現することができることから、生体や検体の長期保存をより安定化させることができ、信頼度の向上を図ることができる。
【0014】
特に、本発明によれば、沸点が高く(+8.9℃)、オイル(アルキルベンゼン、鉱物油)との相溶性が高い従来のR21(ジクロロフルオロメタン)の代替として沸点が高くオイルとの相溶性が高いR600(−0.5℃)を含むR245fa(沸点:+15.3℃)とR600との混合冷媒を封入することにより、冷媒回路に吐出されたオイルをその中に溶け込ませた状態で圧縮機に帰還させることができる。これにより、圧縮機の循環不良を防止することができると共に、液状態のまま圧縮機へ帰還するR600及びR245faを圧縮機内で蒸発させることができ、圧縮機の温度を低下させることができる。
【0015】
また、本発明では、単独で用いると可燃性を有するR600(n−ブタン)を請求項2の発明のように、R245faとR600を合わせた総重量に対してR245faを70重量%以上とすることで、不燃性とすることができ、漏れた際に燃える不都合を回避することができ、安全面においても信頼度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に図面を参照して本発明の実施例を詳述する。図1は本発明の冷凍装置の冷媒回路1を示している。冷媒回路1はそれぞれ独立した第1の冷媒回路としての高温側冷媒回路2と第2の冷媒回路としての低温側冷媒回路3とから構成されている。
【0017】
高温側冷媒回路2は、電動圧縮機4と、補助凝縮器5と、露付き防止パイプ6と、凝縮器8と、乾燥器12と、減圧器13と、蒸発器14と、アキュームレータ15とから構成される。電動圧縮機4は、一相若しくは三相交流電源を用いる電動圧縮機であり、当該電動圧縮機4の吐出側配管4Dには補助凝縮器5が接続される。この補助凝縮器5は、当該冷凍装置1が搭載される図示しない冷凍庫の貯蔵室開口縁を加熱する露付き防止パイプ6に接続される。また、この露付き防止パイプ6は、電動圧縮機4のオイルクーラー7に接続された後、凝縮器8に接続される。尚、当該凝縮器8は、凝縮器用送風機9により冷却される。そして、凝縮器8の出口側冷媒配管は、乾燥器12及び減圧器13を順次介して蒸発器を構成する蒸発器部分としての蒸発器14に接続される。蒸発器14の出口側冷媒配管には、冷媒液溜めとしてのアキュムレータ15が接続され、当該アキュームレータ15を出た冷媒配管は、電動圧縮機4の吸入側配管4Sに接続される。
【0018】
高温側冷媒回路2には沸点の異なる非共沸冷媒として、R407Dとn−ペンタンとからなる冷媒が充填される。R407Dは、R32(ジフルオロメタン:CH22)と、R125(ペンタフルオロエタン:CHF2CF3)と、R134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン:CH2FCF3)とから構成され、その組成は、R32が15重量%、R125が15重量%、R134aが70重量%である。各冷媒の沸点は、R32が−51.7℃、R125が−48.1℃、R134aが−26℃である。また、n−ペンタンの沸点は、+36.1℃である。
【0019】
電動圧縮機4から吐出された高温ガス状冷媒は、補助凝縮器5、露付き防止パイプ6、オイルクーラー7及び凝縮器8で凝縮されて放熱液化した後、乾燥器12で含有する水分が除去され、減圧器13にて減圧されて蒸発器14に次々に流入して冷媒R32、R125及びR134aが蒸発し、気化熱を周囲から吸収して蒸発器14を冷却し、冷媒液溜めとしてのアキュムレータ15を経て電動圧縮機4に帰還する。
【0020】
このとき、電動圧縮機4の能力は例えば1.5HPであり、運転中の蒸発器14の最終到達温度は−27℃乃至−35℃になる。かかる低温下では冷媒中のn−ペンタンは沸点が+36.1℃であるので蒸発器14では蒸発せず液状態のままであり、従って冷却には殆ど寄与しないが、電動圧縮機4の潤滑油や乾燥器12で吸収しきれなかった混入水分をその中に溶け込ませた状態で電動圧縮機4に帰還せしめる機能と、その液冷媒の電動圧縮機4内での蒸発により、圧縮機4の温度を低減させる機能を奏する。
【0021】
他方、低温側冷媒回路3は、電動圧縮機10と、油分離器18と、前記蒸発器14内に挿入された高圧側配管としての凝縮パイプ23と、第1の気液分離器29と、第1の中間熱交換器32と、第2の気液分離器33と、乾燥器35と、減圧器36と、乾燥器39と、減圧器40と、第2の中間熱交換器42と、第3の中間熱交換器44と、乾燥器45と、減圧器46と、蒸発パイプ47と、膨張タンク51と減圧器52とから構成される。
【0022】
電動圧縮機10は、前記電動圧縮機4と同様に一相若しくは三相交流電源を用いる電動圧縮機であり、当該電動圧縮機10の吐出側配管10Dには油分離器18が接続される。この油分離器18は、電動圧縮機10に戻る油戻し管19が接続される。油分離器18の出口側に接続された冷媒配管は、蒸発器14内に挿入された高圧側配管としての前記凝縮パイプ23に接続される。この凝縮パイプ23は、蒸発器14と共に、カスケードコンデンサ25を構成している。
【0023】
そして、凝縮パイプ23の出口側に接続される吐出配管は乾燥器28を介して第1の気液分離器29に接続される。気液分離器29により分離された気相は、気相配管30を介して第1の中間熱交換器32内を通過し、第2の気液分離器33に流入する。気液分離器29により分離された液相は、液相配管34を介して乾燥器35、減圧器36を経て第1の中間熱交換器32に流入する。
【0024】
第2の気液分離器33により分離された液相は、液相配管38により、乾燥器39を経た後減圧器40を経て第2の中間熱交換器42に流入する。第2の気液分離器33により分離された気相は、気相配管43を介して、第2の中間熱交換器42内を通過し、第3の中間熱交換器44内を通過し、更に乾燥器45を経て減圧器46に流入する。減圧器46は、蒸発器としての蒸発パイプ47に接続され、更に蒸発パイプ47は第3の中間熱交換器44に接続される。
【0025】
第3の中間熱交換器44は第2及び第1の中間熱交換器33に次々に接続された後、電動圧縮機10の吸入側配管10Sに接続される。吸入側配管10Sには更に電動圧縮機10停止時に冷媒を貯溜する膨張タンク51が減圧器52を介して接続される。
【0026】
低温側冷媒回路3には沸点の異なる6種類の混合冷媒として、R245faと、R600と、R404Aと、R508Aと、R14と、R50とを含む非共沸混合冷媒が封入される。R245faは、1,1,1,−3,3−ペンタフルオロプロパン(CF3CH2CHF2 )であり、R600はブタン(CH3CH2CH2CH3)である。R245faの沸点は、+15.3℃、R600の沸点は、−0.5℃である。そのため、これらを所定割合で混合することで、従来用いられていた沸点が+8.9℃のR21の代替として使用可能となる。
【0027】
尚、R600は、可燃性物質であるため、不燃性であるR245faと所定割合、本実施例ではR245fa/R600:70/30の割合で混合することにより、不燃性として冷媒回路3に封入するものとする。尚、本実施例では、R245faとR600を合わせた総重量に対してR245faを70重量%としているが、それ以上であれば不燃性となるため、それ以上であっても良いものとする。
【0028】
当該R245faとR600の混合冷媒が不燃性であることを示す実験結果を図2に示す。これによると、R245faが70重量%以上となることで、不燃域となることが分かる。また、これらR245faとR600の混合冷媒を液相部から充填した場合の組成変化は、最大で0.6%以内であるため、可燃域となる問題はない。
【0029】
また、R404Aは、R125(ペンタフルオロエタン:CHF2CF3)と、R143a(1,1,1−トリフルオロエタン:CH3CF3)と、R134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン:CH2FCF3)とから構成され、その組成は、R125が44重量%、R143aが52重量%、R134aが4重量%である。当該混合冷媒の沸点は、−46.5℃である。そのため、従来用いられていた沸点が−40.8℃のR22の代替として使用可能となる。
【0030】
また、R508Aは、R23(トリフルオロメタン:CHF3)と、R116(ヘキサフルオロエタン:CF3CF3)とから構成され、その組成は、R23が39重量%、R116が61重量%である。当該混合冷媒の沸点は、−85.7℃である。
【0031】
また、R14は、テトラフルオロメタン(四弗化炭素:CF4)であり、R50は、メタン(CH4)、R740は、アルゴン(Ar)である。これらの沸点は、R14が−127.9℃、R50が−161.5℃、R740が−185.7℃である。尚、R50は酸素との結合にて爆発を生じる危険があるが、R14と混合することによって爆発の危険は無くなる。従って、混合冷媒の漏洩事故が発生したとしても爆発は発生しない。
【0032】
尚、これら上述した如き冷媒は、一旦、R245faとR600、及び、R14とR50を予め混合し、不燃化状態とした後、R245faとR600の混合冷媒と、R404Aと、R508Aと、R14とR50の混合冷媒と、R740とを予め混合した状態で、冷媒回路に封入される。若しくは、R245faとR600、次にR404A、R5080A、R14とR50、最後にR740と沸点の高い順に封入される。各冷媒の組成は、例えば、R245faとR600の混合冷媒が13重量%、R404Aが20重量%、R508Aが27重量%、R14とR50の混合冷媒が33重量%、R740が7重量%であるものとする。
【0033】
次に低温側の冷媒の循環を説明する。電動圧縮機10から吐出された高温高圧のガス状混合冷媒は油分離器18にて冷媒と混在している電動圧縮機10の潤滑油の大部分を油戻し管19にて電動圧縮機10に戻し、冷媒自体はカスケードコンデンサ25にて蒸発器14より冷却されて混合冷媒中の沸点の高い一部の冷媒(R245fa、R600、R404A、R508A)を凝縮液化する。
【0034】
凝縮パイプ23を出た混合冷媒は乾燥器28を経て第1の気液分離器29に流入する。この時点では混合冷媒中のR14とR50とR740は沸点が極めて低いために未だ凝縮されておらずガス状態であり、R245fa、R600、R404A、R508Aの一部のみが凝縮液化されているため、R14とR50とR740は気相配管30に、R245faとR600とR404AとR508Aは液相配管34へと分離される。
【0035】
気相配管30に流入した冷媒混合物は第1の中間熱交換器32と熱交換して凝縮された後、第2の気液分離器33に至る。ここで第1の中間熱交換器32には蒸発パイプ47より帰還してくる低温の冷媒が流入し、更に液相配管34に流入した液冷媒が乾燥器35を経て減圧器36で減圧された後、第1の中間熱交換器32に流入してそこで蒸発することにより、冷却に寄与するため、未凝縮のR14、R50、R740、及びR508Aの一部を冷却する結果、第1の中間熱交換器32の中間温度は−50.7℃程となっている。従って、気相配管30を通過した混合冷媒中のR508Aは完全に凝縮液化され、第2の気液分離器33に分流される。R14、R50、R740は更に沸点が低いために未だガス状態である。
【0036】
第2の中間熱交換器42では、第2の気液分離器33で分流されたR508Aが乾燥器39で水分が除去され、減圧器40で減圧された後、第2の中間熱交換器42へ流入し、蒸発パイプ47から帰還してくる低温の冷媒と共に気相配管43中のR14、R50及びR740を冷却し、このうちで蒸発温度が最も高いR14を凝縮させる。この結果、第2の中間熱交換器42の中間温度は−76.4℃となる。
【0037】
この第2の中間熱交換器42を通過する気相配管43は、続いて第3の中間熱交換器44を通過する。ここで、第3の中間熱交換器44には蒸発器47を出て直ぐの冷媒が帰還されており、実験によれば第3の中間熱交換器44の中間温度が−121.4℃、入口付近の温度が−151.5℃とかなり低い温度に達する。
【0038】
このため、第3の中間熱交換器44では気相配管43中のR50及びR740の一部が凝縮器、これら液化したR14、R50及びR740の一部が減圧器46で減圧された後、蒸発パイプ47に流入し、そこで蒸発して周囲を冷却する。実験によれば、このとき、蒸発パイプ47の温度は−160.3℃〜−157.3℃という超低温となった。
【0039】
係る蒸発パイプ47を例えば冷凍庫に設置して庫内の冷却に使用することにより−157.5℃の庫内温度を実現できる。
【0040】
蒸発パイプ47を出た冷媒は、第3の中間熱交換器44、第2の中間熱交換器42、第1の中間熱交換器32に次々に流入し、各熱交換器で蒸発した冷媒と合流して吸入配管10Sから電動圧縮機10に帰還する。
【0041】
電動圧縮機10から冷媒に混入して吐出されるオイルは、大部分が油分離器18により分離されて圧縮機10に戻されているが、ミスト状となって冷媒と共に油分離器18から吐出されてしまったものは、オイルとの相溶性の高いR600に溶け込んだ状態で圧縮機10に戻される。これにより、圧縮機10の潤滑不良やロックを防止できる。また、R600は液状態のまま圧縮機10へ帰還してこの圧縮機10内で蒸発されるので、圧縮機10の吐出温度を低減できる。
【0042】
尚、本実施例では、R404A中に4重量%のn−ペンタン(非共沸冷媒の総重量に対して0.5〜2重量%の範囲)を添加しても良いものとする。当該n−ペンタンは、R600と同様にオイルとの相溶性が高いため、ミスト状となって冷媒と共に油分離器18から吐出されたオイルを圧縮機10に戻すことができる。
【0043】
但し、装置によってはn−ペンタンが圧縮機に液として溜まったり、低温側冷媒回路3中に流れ出て冷却性能が逆に不安定となる場合がある。その場合にはn−ペンタンを混合しないこととする。かかる場合であっても、本実施例の混合冷媒には、オイルキャリアの役割を果たすR600が混合されていることから、圧縮機10を円滑に運転することができる。
【0044】
尚、これらの各冷媒の組成は上述した実施例に限定されるものではなく、実験結果によれば、請求項3に記載の如く、非共沸混合冷媒の総重量に対して、R245faとR600を合わせた総重量を5〜24重量%、R404Aを13〜28重量%、R508Aを21〜37重量%、R14とR50を合わせた総重量を25〜43重量%、R740を4〜10重量%の範囲で非共沸混合冷媒を組成すれば、蒸発パイプ47において−150℃前後の超低温が得られる。
【0045】
また、上記実施例における低温側冷媒回路3に封入される冷媒において、R508Aに代えてR23とR116との混合比率が異なるR508B(R23/R116:46/54)又はR23を封入しても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例を示す冷凍装置の冷媒回路図である。
【図2】R245faとR600の混合冷媒総重量%に対する245faの重量%における不燃又は可燃状態を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 冷媒回路
2 高温側冷媒回路
3 低温側冷媒回路
4、10 電動圧縮機
25 カスケードコンデンサ
29 第1の気液分離器
32 第1の中間熱交換器
33 第2の気液分離器
42 第2の中間熱交換器
44 第3の中間熱交換器
47 蒸発パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機から吐出された冷媒を凝縮した後、蒸発せしめて冷却作用を発揮する独立した冷媒閉回路を構成する高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とからなり、前記高温側冷媒回路の蒸発器と前記低温側冷媒回路の凝縮器とで熱交換器を構成した冷凍装置において、
前記低温側冷媒回路に、
R245fa、R600、R404A、R508A、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒、又は、
R245fa、R600、R404A、R23、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒、又は、
R245fa、R600、R404A、R508B、R14、R50、R740を含む非共沸混合冷媒、
を封入したことを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
R245faとR600を合わせた総重量に対してR245faを70重量%以上としたことを特徴とする請求項1の冷凍装置。
【請求項3】
非共沸混合冷媒の総重量に対して、
R245faとR600を合わせた総重量を5〜24重量%、
R404Aを13〜28重量%、
R508A、又は、R23、又はR508Bを21〜37重量%、
R14とR50を合わせた総重量を25〜43重量%、
R740を4〜10重量%、
としたことを特徴とする請求項1又は請求項2の冷凍装置。
【請求項4】
n−ペンタンを0.5〜2重量%加えたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3の冷凍装置。
【請求項5】
高温側冷媒回路に、R407DあるいはR404Aとn−ペンタンからなる非共沸混合冷媒を封入したことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−170487(P2006−170487A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361093(P2004−361093)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302010448)三洋電機バイオメディカ株式会社 (14)