冷却ジャケットおよび冷却ガーメント
【課題】内部の液体や物体を冷却するため浸透気化冷却法を用いる、容器ならびに包装体を提供する。
【解決手段】
浸透気化冷却は好適には、水やアルコールなどの液体の少量の揮発成分を通過させることが可能な多孔質基材を用いておこなわれ、このような液体の気化による潜熱によって容器を冷却するものである。または、浸透気化スリーブを用いて、該スリーブの内部またはそれと接触している容器を冷却することもできる。
【解決手段】
浸透気化冷却は好適には、水やアルコールなどの液体の少量の揮発成分を通過させることが可能な多孔質基材を用いておこなわれ、このような液体の気化による潜熱によって容器を冷却するものである。または、浸透気化スリーブを用いて、該スリーブの内部またはそれと接触している容器を冷却することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーベーパレーション(浸透気化法)により液体を冷却するのに使用される容器または閉止具を製造する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住居および水ともに、気化による冷却法は古代エジプトに源を発し、その後東へは中東・イランを経て北部インドまで、西へは北アフリカを経て南スペインその他、暑く乾燥した気候に悩む地域へと広まった。この方法が使われ始めた段階では、水を貯えておくのに釉を施さない粘土の甕が何世紀にもわたって使われており、そのため水が粘土に吸収され外部表面へと滲出し、表面から気化することによって内部の水が冷却されるという思わぬ恩恵が得られた。残念ながら、粘土の外部表面から直接気化することによって水垢が形成され、ミネラル分が堆積して水の透過を抑制して気化圧力を低下させ、その結果冷却効率は下がっていった。
【0003】
周囲の大気から液体への熱伝達低減に基づく他の方法が使われるようになった。このような方法としては真空や空隙式魔法瓶や発泡断熱包装材などがある。氷や冷凍したコールドパックやスティックなどを用いた他の装置も、周囲の大気による熱上昇や容器内の液体が大気温度に戻るのを抑制するのに使われている。これらのあらゆる場合において、システムの設計の際は液体内容物、分離された貯蔵室および/またはボトルの外殻のいずれかが冷却されることが必然的な要件であり、それが容器内の液体の蒸発による損失のみならず、重量が過剰となるという問題につながっていた。どのような方法であっても液体の温度は平衡し、いずれは大気温度に戻ってしまうものである。
【0004】
パーベーパレーション(浸透気化)とは、ある基質に対し蒸気の透過と気化現象とが共に起こることを言う。1987年以来、膜浸透気化法が化学業界に広く採り入れられ、混合液の分離や再生に用いられるようになった(Chemical Engineering Progress誌、1992年7月号、45〜52ページ)。この技術の特徴は液相と気相の間にバリア基材を導入することにある。液体は基材の一方の面に密着している。蒸気の大量移動が基材の気体側へと選択的に起こり、その結果液体の減少または液体の揮発成分の減少、および気化潜熱の低減が起こる。このプロセスは、蒸気の多孔質基材の「透過」と、液体から気体への位相変化である「気化」との独特な結合であるがゆえに、「浸透気化」と呼ばれることになったものである。液体に熱を加えることなく、気化潜熱により温度が下がり、やがて周囲から吸収した熱と基材表面またはポア内で気化のため失われた潜熱とが等しくなる平衡温度に達する。
【0005】
米国特許第5,946,931は膜の上で層状を呈する液体の流動を利用した気化冷却PTFE膜装置を用いてそこに取り付けられた装置または周囲の大気を冷却する方法を開示している。米国特許第4,824,741は気化冷却基材を用いて化学電池のプレート表面を冷却する方法を開示している。湿板は無触媒PTFE接合電極材、適切な多孔質焼成粉末、多孔質繊維、さらには多孔質ポリマーフィルムなどで構成できる。米国特許第4,007,601は流体を冷却するため、循環する多孔質中空熱交換器で気化冷却をおこなう方法を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここに開示するものは飲料および液体の容器を浸透気化により冷却する簡便なシステムであって、上記従来の技術のごとく浸透気化基材表面に液体を供給するのに機械式ポンプを用いたり、冷却効率を高めるために真空に依存する必要のないシステムである。容器とは、外気に対して開放または閉鎖されているかを問わず、液体を保持するあらゆる装置または包装体を指す。ある実施の形態ではこの方法の実行に、好ましくは容器本体またはハウジングの一部を形成し、該容器の全表面積の5〜100%を占める浸透気化基材が用いられている。容器内の液体は水の気化による潜熱のため周囲の液体と膜の界面で直接冷却される。液体から発生した蒸気は基材を介して周囲の大気に放散するか、吸収剤などを備えた回収装置や捕集装置へ向かう。好適な容器としてはボトル、ジャー、ガラス瓶、ポーチなどがある。いくつかの実施の形態では、容器はケース、ディスペンサー、外装物などより大きな構造としてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態では、ひとつ以上の壁を有する容器本体部を備え、前記ひとつ以上の壁の少なくとも一部が浸透気化基材を有し、該基材は疎水性多孔質材を含み、前記基材は揮発性液体の蒸気の少量の分子を該基材を介して通過させ、前記液体の気化によって内容物も含め前記容器が冷却されることを特徴とする、浸透気化冷却容器が提供される。ある実施の形態では、外部浸透気化層を含む細長い中空の管状構造を有し、前記外部浸透気化層は親水性物質を含む多孔質内部層と重なる疎水性物質を含み、前記内部層は液体が通過できる内腔を形成していることを特徴とする、浸透気化冷却チューブまたはストローが提供される。ある実施の形態では、前記管状構造は疎水性多孔質チューブで形成され、該チューブ内部では内表面が親水性となるよう加工された結果、内部層が形成されている。
【0008】
ある実施の形態では、疎水性多孔質材を含む外部層を有するジャケット本体と、前記外部層と重なっておりかつ前記外部層と流体連通する内部層とを有し、該内部層は揮発性液体を保持することが可能であり、前記ジャケット本体は前記内部層が容器の少なくとも一部と接触できる形状をなしていることを特徴とする、容器冷却用ジャケットが提供される。
【0009】
ある好適な実施の形態では、前記容器および冷却用ジャケットは、浸透気化層と直接隣接または接触しており、かつ乾燥剤、吸収剤または他の、浸透気化により発生した水分や他の液体を吸収または吸着する物質を含む、再生可能または使い捨ての外部層をさらに有するものである。
【0010】
ある実施の形態では、疎水性浸透気化層を含む浸透気化材を有する外部層と、内部層との少なくとも二つの層を有し、前記浸透気化層のための液体バリア支持層である中間層を任意に有し、前記外部層は冷却液塊と流体連通し、前記内部層は該ガーメント着用者と熱接触状態にあることを特徴とする、冷却用ガーメントが提供される。ガーメントの着用者は冷却液が外部層の浸透気化材を介して浸透気化をおこなうことにより冷却される。ある好適な実施の形態では、冷却用ガーメントは防護服または防護スーツのような衣服に内装、または一体に形成される。このガーメントはさらに、その着用者が冷却液、好ましくは水を経口でも摂取できるよう、冷却液塊と流体連通するチューブを備えている。またある好適な実施の形態では、このガーメントは、浸透気化により発生した水分や他の液体を吸収する乾燥剤や吸収剤物質を含む、再生可能または使い捨ての外部層をさらに有するものである。
【0011】
いくつかの好適な実施の形態では、次のうちひとつ以上が実現されている:ガーメントは皮膚と直接の接触または布地などを介して熱接触をなしており、該布地などはガーメントの着用者によって着用されているか、ガーメント自体の一部であり、外部層は浸透気化のため表面積を増大させるようひだが形成され、中間層は生物学的または化学的に危険が潜在する物質の障壁として機能し、内部層はヒートシーリング(熱圧着法)により形成された規則的なまたは曲がりくねった領域を有している。
【0012】
関連する実施の形態では、ガーメントは新たな冷却液を保持する容器をさらに備えるか、それと流体連通している。この冷却液は、容器から浸透気化材と中間層との間隙へ重力または毛管作用で供給することができる。好適な冷却液には水、アルコール、またその混合液などがある。
【0013】
関連する実施の形態では、浸透気化材を含むボトルやバックパックなどの容器も提供されるが、これらは後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここに開示するものは、その内部の液体や物体を冷却するため浸透気化冷却法を用いる、容器ならびに包装体である。好適な実施の形態では、容器は多孔質通気材(多孔質基材ともいう)で構成されている。ある実施の形態では容器は浸透気化冷却ガーメントの一部をなす。
【0015】
多孔質基材はプラスチック、エラストマー、金属、ガラス、セラミック、またこれらに限定されず広範な材料のいずれで形成されてもよい。プラスチック、エラストマー、金属、ガラス、セラミックを組み合わせたものも使用できる。組み合わせとしては、二つ以上の材料を混合して同時焼成したり、二つ以上の材料を重ね合わせた多層構造とするなど、均質的なものであってよい。さまざまなプラスチック、エラストマー、金属、ガラス、セラミックなどを組み合わせたものを同時焼成したり、多層構造を形成して浸透気化容器に使用してもよい。多孔質通気材として好適に用いられるプラスチックとしては、熱可塑性ポリマー、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーなどがあるが、これらに限定されない。好適な熱可塑性ポリマーには低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)およびその共重合体、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、改質ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリアセタル、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリ(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(アクリルニトリル−スチレン−アクリレート)(AES)、ポリ(アクリルニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン)(ASA)、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルクロライド(浸透気化C)、クロリネートポリビニルクロライド(C浸透気化C)、ポリビニルジクロライド(浸透気化DC)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリビニルフルオライド(浸透気化F)、ポリビニリジンフルオライド(浸透気化DF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、セルロース系、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、ナイロン6(N6)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスチレン(PS)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン(PES)などがあるが、これらに限定されない。好適な熱硬化性エラストマーには、スチレン−ブタジエン、ポリブタジエン(BR)、エチレン−プロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン(NBR)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、シリコーン、フルオロシリコーン、ウレタン系、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ポリノルボレン(PNR)、クロロブチル(CIIR)やブロモブチル(BIIR)を含むブチルゴム(IIR)、Viton(登録商標)、Kalrez(登録商標)、Fluorel(商標)などのフッ化エラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンなどがある。好適な熱可塑性エラストマー(TPE)の種類としては、市販されているDexflex(登録商標)、Indure(登録商標)などの熱可塑性オレフィン(TPO)、エラストマー浸透気化Cの混合物または合金、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)などのスチレンブロック共重合体(SBC)、Kraton(登録商標)、Dynaflex(登録商標)、Chronoprene(商標)など市販のSBC、Versalloy(登録商標)、Santoprene(登録商標)、Sarlink(登録商標)などとして市販されている熱可塑性加硫物(T浸透気化、加硫合金としても知られている)、ChronoThane(登録商標)、Versollan(商標)、Texrin(登録商標)などとして市販されている熱可塑性ポリウレタン(TPU)、たとえばEcdel(登録商標)のような市販の共ポリエステル熱可塑性エラストマー(COPE)、REBAX(登録商標)などのような市販のポリエーテルブロック共ポリアミド(COPA)などがある。多孔質材として好適な金属には、ステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛、銅など、およびそれらの合金がある。多孔質材として好適なガラスやセラミックとしては、水晶、ボロシリケート、アルミノシリケート、ソディウムアルミノシリケートなどがあり、焼成された粒子、またはそれから形成したファイバーの形態で用いるのが好ましい。
【0016】
マクロ多孔質材を形成するには焼成と呼ばれる方法が好適に用いられるが、これは粉末または粒子状の熱可塑性ポリマーに熱と圧力を作用させて粒子を部分的に凝集させ、それによって結合力のあるマクロ多孔質のシートまたは部材を形成するものである。マクロ多孔質材は網の目のように互いにつながり合った多数の孔を含み、それらがシート全体にわたって不規則な曲がりくねった通路を形成している。典型的には、マクロ多孔質シートの孔部の体積すなわち有孔率は焼成の条件により30〜65%程度であるが、メーカーが採用している特定の条件のもとではこの範囲を上方または下方に外れるものもある。化学的また物理的物性を調整することにより、マクロ多孔質材の表面張力を液体をはじいたり吸収したりするよう調節できるが、空気や蒸気は常に通過することができる。Goldmanの米国特許3,051,993にはポリエチレンからマクロ多孔質材を形成する方法が詳述されているが、引用によりそのすべてをここに一体化する。
【0017】
好適な実施の形態にしたがい浸透気化冷却容器を形成するのに適したマクロ多孔質プラスチックを含む多孔質プラスチックは、シート状または規格形状に合わせた成型品として製造でき、多くのメーカーから購入可能である。POREX・コーポレーション(米国ジョージア州フェアバーン)はそのひとつであり、POREXの登録商標のもとに多孔質プラスチックを提供している。POREXの登録商標のもとに販売される多孔質プラスチックは、前述の熱可塑性ポリマーのいずれからでも、シート状または規格形状に合わせた成型品として購入できる。このPOREX材のポア(孔)の平均サイズはポリマーの粒子サイズや焼成条件などにより異なるが、約1〜350ミクロン程度の範囲である。GenPore社(米国ペンシルバニア州リーディング)も多孔質プラスチック製品のメーカーであり、ポアサイズは5〜1000ミクロン程度である。MAインダストリーズ社(米国ジョージア州ピーチトゥリー)も多孔質プラスチック製品を製造している。Porvair Technology社(英国ノースウエールズ州レクサム)もまた多孔質プラスチック製品のメーカーであり、多孔質プラスチック(Vyonの商標のもとに5〜200ミクロンの孔)および多孔質金属媒体(Sinterfloの登録商標)の双方を提供している。
【0018】
浸透気化冷却容器を形成すべく選択したプラスチックの基本的なサイズ、厚さ、有孔率などは通気材を一定時間に通過する蒸気の量(流量)および周囲の大気から液体への熱伝達率の計算により求められる。あるマクロ多孔質プラスチックにおける流動率(単位面積あたりの流量)は、ポアサイズ、有孔率、通気材の断面厚さなどにより異なるが、一般的には、単位面積当たり・単位時間当たりの量で表される。充分な浸透気化冷却効果を得るためには、基材を通過する蒸気の流量は、初めは室温である液体から気化により熱力学的に奪われる熱が、周囲の大気から吸収する熱より大きくなるような流量が必要である。浸透気化のプロセスでは、容器内の液体温度は、該液体が基材を介して気化することによりこうむる熱損失が周囲の大気から得る熱と平衡するまで、下がることになる。
【0019】
用語の通常の意味として、「マクロ有孔率」とは一般にある物質またはそのマクロ構造における空隙部の総量を指す。「マクロ多孔質」という用語は一般に、その物質の個々のポアサイズが大きいと考えられるものを指して用いられる。「ミクロ有孔率」という用語は一般に多孔質物質のミクロ構造における個々のポアサイズやサイズの分布を指す。「ミクロ多孔質」という用語は一般に、その物質の個々のポアサイズが小さいと考えられるものを指して用いられる。本明細書の記載においては、ポアサイズ(直径)は基礎・応用化学国際連盟(IUPAC)マクロ分子用語小委員会により2002年2月26日に策定された定義に基づき分類したものである。この基準によればポアサイズは3種に分類される。ミクロ多孔質(0.002μm未満)、メゾ多孔質(0.002〜0.050μm)、およびマクロ多孔質(0.050μm超)である。また本明細書においては、空隙量は当該物質の「有孔率(百分率)」で表すものとする。マクロ多孔質材、ならびにポアサイズが0.050μm以下のメゾ多孔質材の双方が、浸透気化冷却に使用できる。このような材料の好適な製造方法としては、鋳造や膜伸展法などがある。
【0020】
好適な多孔質材には、反対側の表面(外表面と内表面)にある孔同士が、双方の面が連通するように内部でつながったものがある。とはいえこのような連通は、物質が通過できるような管やポートを形成する直線的なものでないことが好ましい。逆に、孔のネットワークが曲がりくねった通路を形成し、そこを気体や液体が通過するのがよい。
【0021】
単層の浸透気化基材の場合、ポアサイズが0.05μm以上であるマクロ多孔質物質を用いるのが好ましく、より好ましくは0.25、0.5、1、5、15、20、40、60、80、100、150、200、250、300、350、400および450μmの場合など約0.1〜500μm、中でも約0.5〜10μmの範囲がよい。ある実施の形態においては、組み合わせて用いられる通気材のポアサイズは0.1〜100μmの範囲にあるのが好ましく、より好ましくは0.5〜75μmの範囲である。この通気材の有孔率(空隙部の百分率)は20%、40%、60%、80%など10〜90%の範囲が好ましく、さらには30〜75%、より好ましくは50〜70%とするのがよい。この多孔質材の厚さは1〜3mmなど、0.025〜7mmの範囲が好ましい。通気材の厚さとしては0.2、0.3、0.5、0.7、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.5mmなど、0.05〜5mmの範囲、さらには0.1〜3.0mmの範囲が好ましい。他の実施の形態においては、上記の各変数において上下に外れた数値を示す場合もある。単層基材の場合は、疎水性であること、または疎水性被膜を有することが好ましい。この章、あるいは本明細書の他の章で述べられた数値に対し、記述した範囲には、具体的に例示した数値の間にある数値も含まれる。他の実施の形態においては、材料の物性のひとつ以上が記述した範囲を外れることもある。
【0022】
基材はプラスチック、エラストマー、ガラス、金属、またはそれらを混合したものから作られる。熱可塑性ポリマー、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、金属、ガラスおよびセラミックなどの好適な基材はすでに詳述したとおりである。基材は市販のものを購入してもよく、さまざまな技術によって製造してもよい。Whiteらの米国特許4,076,656には溶解または溶融した状態の物質にポロゲンを加え、その物質が凝固して締まり的な形状となった後ポロゲンを溶剤で浸出または超臨界液で抽出する技術が開示されている。Rusincovitchらの米国特許5,262,444には物質を加工した後に気化して多孔質構造を残すポロゲンを加えることにより多孔質材を製作する技術が開示されている。これらの特許を引用によりその全体をここに一体化するものである。
【0023】
本明細書で取り上げる浸透気化基材の多くは疎水性であるが、浸透気化させる液体がアルコールなどの有機物である場合は、疎油性の浸透気化材も使用可能である。ナイロン、ポリスルフォン、またセルロース系など一般的なプラスチック材は疎水グレードのものが入手可能である。これらの材料は当業者に周知の方法によって粒子化して焼成し、高い液体流動率を有する親水性多孔質材を得ることができる。好適な実施の形態のとおり液体を供給するのに適した、マクロ多孔質プラスチックなどの親水性多孔質プラスチックは、シート状または規格形状に合わせた成型品として製造でき、またPOREX・コーポレーションをはじめ多くのメーカーから購入することもできる。親水性多孔質繊維のポアサイズは20〜120μmの範囲が好ましく、有孔率はポアの大きさにより25〜80%であるのが好ましい。また、疎水性多孔質材は、当業者には周知のたとえばプラズマエッチング、ケミカルエッチング、湿潤材の含浸、親水性コーティングなどのひとつ以上の加工法により、またこれらの方法に限らず、親水化することが可能である。さらに、これらのひとつ以上の方法にマスキング法を組み合わせることにより、疎水性多孔質材のあるパターン領域を選択的に親水化し高い液体流動率を得ることができる。
【0024】
たとえば、二層以上の多孔質材を含む多孔質多層構造材がある。薄い層を、当業者には周知の方法を用いて厚い層に積層することができる。多層構造はすでに試験済みのとおり機械的、物理的に優れた基材を形成するのに使用できる。たとえば、焼成したポリエチレンマクロ多孔質基材を容器の液体側で拡張PTFEの薄い層と結合させると、疎水性が増し、水の破過耐圧が5psiから30psiに向上し、かつ積層された基材は多孔質ポリエチレン単独で得られるのと同様な浸透気化流量を維持している。積層材の厚さは、ポアサイズ、有孔率その他の物性が上記の好ましい範囲にある場合、好ましくは約0.025〜7000μmである。
【0025】
浸透気化基材はまた、混合多孔質材から製作してもよい。ある好適な実施の形態では、多孔質材はポリビニルフルオライド(浸透気化F)、ポリビニリジンフルオライド(浸透気化DF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、および/またはZonyl(登録商標)のようなフッ素添加剤など、またこれらに限らないフッ素系樹脂と、以下のようなポリオレフィンまたは他の樹脂から選択されたひとつ以上のものとの混合材である。すなわち、ポリエチレン系(LLDPE、LDPE、MDPE、HDPE、UHMWPE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS、アクリル、スチレン、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリアセタル、ポリ(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(アクリルニトリル−スチレン−アクリレート)(AES)、ポリ(アクリルニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン)(ASA)、ポリエステル系、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルクロライド(浸透気化C)、ポリビニルジクロライド(浸透気化DC)、ナイロン6(N6)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルフォン(PES)などである。単独または混合のエラストマーを使用してもよい。好適なエラストマーは熱硬化性のもので、スチレン−ブタジエン、ポリブタジエン(BR)、エチレン−プロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン(NBR)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、シリコーン、フルオロシリコーン、ウレタン系、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ポリノルボレン(PNR)、クロロブチル(CIIR)やブロモブチル(BIIR)を含むブチルゴム(IIR)などがある。これらを混合した多孔質材は、焼成により混合したものも含め、有孔率、可撓性および機械的強度においては主として非PTFEまたは他の非フッ素系樹脂によりさまざまな値を示し、浸水耐圧の面では、焼成の過程でポア表面に移動しやすい性質のため主としてフッ素系樹脂により決定される。有孔率、ポアサイズおよび厚さについては上記のような数値が好ましい。混合基材は市販のものを購入してもよく、さまざまな技術によって製造してもよい。Wolbromの米国特許5,693,273には二つ以上の高分子樹脂からなる高有孔率多孔質プラスチックシートの同時焼成法の詳細が開示されており、Takiguchiらの米国特許5,804,074には二つ以上の高分子樹脂を型に入れて焼成しフィルター状とするプラスチックフィルターの製法が詳述されている。これら双方の特許を引用によりその全体をここに一体化するものである。
【0026】
浸透気化冷却
好適な実施の形態を通して、浸透気化基材表面に液体を供給するのに機械式ポンプを用いたり、冷却効率を高めるために真空に依存する必要のない、容器を簡便に浸透気化により冷却するシステムを以下に示す。これを実現する方法として容器の一部、好ましくは容器のハウジングを浸透気化基材を用いて形成するもので、該基材は容器の全表面積に対し約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%および90%などの場合を含め約5〜90%を占めるのが好ましい。液体内容物は、容器内にある水や、固体の水溶液などの液体が気化する際の潜熱によって液体と周囲の基材の界面で直接冷却されるのが好ましい。別の実施の形態では、浸透気化スリーブまたはハウジングが、それらと接触している飲料容器などの有形物を冷却するのに用いられる。液体から発生した蒸気は周囲の大気に放散されるか、基材を介して吸収剤へと向かう。ほとんどの容器の場合、自然に起こる対流および液体内の熱伝導が、容器以内の液体の冷却効果を実現する熱伝導の大部分を占めている。容器の寸法その他の属性によって、冷却効果を容器全体にわたって実質的に均一にすることができる。
【0027】
浸透気化容器またはスリーブ内部の液体が冷却液として機能する。液体量の減少率が低いことは好適である。たとえば、ある実施の形態では、液体量の減少は外部に相当な空気の循環があった場合でも、24時間でおよそ15%であった。水は気化潜熱が高いため(華氏75度で583カロリー/g)、気化による水の減少で得られるのと同じ冷却効果を得るには、たとえば氷であれば重量にして約7倍が必要となる。浸透気化冷却に加えて多孔質材が、飲料からの炭酸ガスの発散やそれ自身の減少によって起こる容器内の気圧低下を通気によって補償するという更なる利点を提供する。
【0028】
ここで図を参照すると、図1(A)および(B)には本発明にしたがい形成された通気式浸透気化冷却容器の実施の形態の一つが示されている。容器の壁501はその少なくとも一部が浸透気化基材で構成されている。この蒸気透過基材は容器の全表面積の約5〜100%を占めるよう形成できる。キャップ全体及びハウジング(上部500、壁501および底部502のすべて)を多孔質基材で形成すれば、ほぼ100%が達成できる。ある好適な実施の形態では、浸透気化材の占める表面積は容器の全表面積の約30%を越え、その場合に周囲の温度より低い温度まで内部の液体を有効に冷却しなおかつその温度を維持できる相当量の浸透気化流量が実現されている。
【0029】
図2に示された実施の形態では、二層以上からなる多層構造を採用できる。この実施の形態では3層の多孔質材503、504、505を使用して多層もしくは積層基材を形成している。ある実施の形態では焼成したポリエチレンマクロ多孔質基材505を容器の液体側で拡張PTFEの薄い層504と結合させると疎水性と浸水耐圧が増し、かつ多孔質ポリエチレン単独で得られるのと同様な浸透気化流量と良好な構造安定性が維持されている。さらに、拡張PTFEの層を中心に挟む3番目の層である多孔質ポリエチレン503は容器の内壁に接して耐擦傷性の表面を形成し、食器洗い機による洗浄に耐え柔らかい拡張PTFEの層が損傷するのを有効に防止している。関連する実施の形態では、積層材は3層より多くても少なくてもよく、および/または異なった多孔質材であってもよい。
【0030】
別の実施の形態では、内側の層503は浸透気化基材または積層基材で形成され、中間層504はポア、または蒸気が通過できる空間を有する断熱材で形成され、外側の層505は乾燥剤または吸収剤を含んでいる。
【0031】
基材の好ましい配列は、高い浸水耐圧を有する膜を容器の内側に配置し、多孔質の支持基材を容器外の空気に触れる側に配置するのがよい。好適な実施の形態におけるこれら多孔質材の厚さは、約1/1000インチ(0.025mm)〜1/4インチ(6.4mm)である。多孔質基材を用いると容器の壁が構造的に強固になり、また耐擦傷性および/または構造的一体性が向上する。
【0032】
ある好適な実施の形態では、ポアサイズが小さい(10μm以下)材料の膜または薄い層は、拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)など疎水性の高い物質のグループから選択され、充分な浸透気化流量を有する焼成ポリエチレンなどのより厚く有孔率の高い支持材の間に積層されている。二層しか形成しない場合は、単原子層の表面形成から1/4インチ(6.4mm)またはそれ以上の厚さの発泡断熱材または多孔質複合材に至るまで、厚さの異なる層を用いることができる。分子篩(ゼオライト)や多孔質高分子膜(CSP Technologies、アラバマ州Auburn)などの多孔質セラミック材および活性炭素など有機基材は大気の臭いを防ぎまたは低減させ、浸透気化冷却装置や容器に含まれる液体の汚染を防ぐ機能がある。
【0033】
ある好適な実施の形態では、積層材が5層からなっている。内側から順にePTFE層、多孔質ポリエチレン、ウレタンフォーム断熱材、ゼオライトのようなセラミック材、そしてもっとも外側は薄い無孔質のポリオレフィンまたはポリエステルで包まれている。この容器は湿度の高い環境下で浸透気化冷却効果を維持することができる。液体から発生した蒸気を吸収すると、ゼオライトまたは他の乾燥剤が熱を直接または間接に周囲の大気に伝達し、その間断熱された浸透気化スリーブ内の液体は冷却されている。ゼオライトと無孔質フィルムで構成される外側の二つの層は使い捨てとしても、たとえばオーブンで乾燥させて再利用可能としてもよい。
【0034】
構造中の多孔質基材に直接何らかの表面加工が施されていない限りは、基材または複合材の有孔率は約10〜95%であるのが好ましい。これにより基材の構造が安定し、利用しうる浸透気化表面積が、したがい全体的な容器の冷却率が増大する。基材のポアサイズも、ポアサイズが200nm以下ではクヌードセン拡散が優勢となり、それによって蒸気透過率が大きく下がり気液相転移と冷却ゾーンが基材の空気/蒸気に触れる表面にまで拡大するため、影響がある。ある実施の形態によれば、好適なポアサイズは約0.5〜30μmであり、これはクヌードセン拡散が起こる範囲より大きい。ポアサイズが100μmを超えると浸水耐圧が顕著に低下し、単層のマクロ多孔質剤を使用するのが不適切な場合が出てくる。膜とマクロ多孔質支持材との組み合わせをおこなう場合、ポアサイズの大きいマクロ多孔質支持材を使うことは、単独で使う場合に比べより大きな利点がある。
【0035】
図3I(A)、(B)、図3II(C)、(D)のとおり、リブ508、514を容器の壁の内側および/または外側に形成し、容器の構造的剛性を高め、浸透気化基材507、513の損傷を防止または低減し、および/またはより持ちやすくできる(514)。図3II(C)、(D)は首部512が絞られリブが形成されたスポーツバージョンの容器を示す。
【0036】
図4に示す実施の形態はオープンセル構造の多孔質断熱材の層518を有する。これは容器の外面に付加することができ、それによりシステムからの比較的自由な蒸気拡散が可能となりつつも、周囲の大気からの対流および放射による熱流が内部の容器の壁517を通り液体に影響することは防止されている。この断熱材518の有益な特徴として、構造上の補強材ともなること、容器が持ちやすくなること、また基材517の損傷を防止あるいは低減できることが挙げられる。ここで用いられているような「ひだ付き」形状はリップル状または他の、表面積を増大させる形状を含む。ひだ付き基材には、表面全体がひだ状となっているものも、ひとつ以上の区画にひだが形成され他の部分は平面のままのものも含まれる。
【0037】
図5のごとくひだ付きの膜またはひだ付き多孔質焼成基材520を用いると、浸透気化冷却の率は容器の表面積との直接の関数であるゆえに、浸透気化冷却の効率が向上する。
【0038】
浸透気化容器およびガーメントは浸透気化基材の外面に調節可能な、または可動式のスリーブを備えてもよく、これによって浸透気化基材の一部またはすべてを選択的に覆ったり露出したりすることが可能となる。浸透気化基材の一部を覆うと、浸透気化冷却効果を維持しつつ、蒸気流量を低減させられる。全面的に覆うと、浸透気化は実質的に停止するので、容器またはガーメントの一種のオン・オフスイッチとしても利用できる。
【0039】
たとえば図6(A)、(B)に示すスリーブ524,525は多孔質の露出表面積527と容器の全体的な気化冷却率を低減させる手段として機能し、したがい液体気化率と冷却率を下げることになり、これにより容器の内容物の温度調節がより自在におこなえるようになる。たとえば絶対気圧、相対湿度、および/または大気温度が低いときなどは、冷却効果を少なくするほうが望ましい場合もある。図6(B)のとおり、容器と周囲のスリーブの間の一箇所以上に空隙530が形成されるのが好ましい。この空隙は断熱領域および/または蒸気の自然な上昇対流領域となり、浸透気化冷却効果の維持と容器内の液体529への放射熱の伝達の抑制が可能となる。容器の多孔質基材523の外面に配置されたインナースリーブ524は容器ハウジングの少なくとも上部522と底部526においては、これらの部分が多孔質でない場合は特に、浸透気化基材に接合されているのが好ましい。
【0040】
ある実施の形態では、浸透気化ガーメントまたは容器の一部またはすべてが、水分をその内部に保持するとともに浸透気化により冷却効果を発揮する、浸透気化スポンジで構成されている。ある好適な実施の形態では二層式浸透気化スポンジが用いられ、これは内側に親水性材料を有し、その外側に疎水性の層を接合したものである。この構造では、内側のスポンジには使用前に水や他の気化性の液体を含浸させておき、疎水性多孔質の上層は浸透気化基材の外面において浸透気化する液体の漏洩を著しく抑制または低減することができる。このとき液体は濡れた基材を通り内部の容器の壁の表面まで直接通じる熱伝達経路を形成する。
【0041】
図7はガラス、ボトルおよび容器に使用可能な二層式浸透気化スポンジ533を示す。この構造では、内側のスポンジ層534には水や他の気化性の液体を含浸させておき、疎水性多孔質の上層535は浸透気化基材535の外面において冷却液の漏洩を著しく抑制または低減することができる。このとき液体は濡れた基材を通り内部の容器の壁の表面532まで直接通じる熱伝達経路を形成する。
【0042】
図8は、上記とは別の、水または他の浸透気化液体541を保持する冷却ジャケット542が注入口543から該液体を満たされ、包装された容器ハウジング539の内容物を冷却するのに使用されている構造を示す。ハウジングはひとつ以上の浸透気化基材537の区画を有し、また構造上の補強のためひとつ以上のリブ538が任意に設けられている。包装された中央ハウジング539内部の液体540はこのように封入され、この領域内での液量の損失あるいは炭酸ガスの放散は著しく抑制または低減される。さらに、容器の浸透気化冷却効率は容器内の液体の性質に影響されることはない。ハウジングを取り巻く水または液体541の揮発性、気化熱、イオン強度(張性)、溶質含有量によって決まるのみである。図7のとおり冷却ジャケットは、外側が疎水性浸透気化層535、内側が多孔質保水または吸収層534からなる着脱式スリーブとして形成してもよい。
【0043】
図10は浸透気化冷却される飲料カップであり、図1(A)、(B)、図2、図3I(A)、(B)に示された浸透気化ボトルと同様の機能を有している。カップに飲料が注がれるとすぐ、多孔質基材555が飲料に浸透気化による冷却を起こさせる。カップのハウジングおよび支持リブ556により構造が補強され断熱効果が得られる。
【0044】
533や542のタイプの冷却ジャケットは同じような構造のまま内容物568の温度を大気温度以下に下げかつその温度を維持する食品クーラーとしても使用できる。図11A、図11B、図11Cに示すようにある実施の形態では、バッフル560、565、573がクーラーに取り付けられ、浸透気化基材566を保護し、この貯蔵容器の構造的強度を増すとともに扱いやすいものとしている。クーラーの蓋558、572および底部563、559には注入口および排出口561、576から水や他の気化性の液体567、575を満たすことができる。容器の蓋の内側574と底の内側569は無孔質材で構成するのが好ましい。
【0045】
図12は5ガロンあるいは10ガロンほども入る大容量水タンク579および浸透気化冷却される供給タンク580を備える冷水ディスペンサーを示す。上のタンク579から供給タンク580へ飲料が常に補充されるので、供給タンクを包む浸透気化基材581はひとつ以上の供給バルブ583から注がれる前に飲料を冷却することができる。または、ひとつのバルブを冷却水用、別のバルブを温水用としてもよい。浸透気化冷却をおこなうことにより、冷却用コンプレッサーなど電気的冷却機構を用いる必要が低減、もしくは除去される。供給タンク580のプラスチックハウジング582は浸透気化基材581に対し構造上支持する役目も果たしている。
【0046】
ある実施の形態では、浸透気化容器に一本以上のストラップを設け、人手にて運搬可能としてもよい。容器の運搬の方法は、ストラップを胴体または手の回りにかけたり、バックパックまたはリュックのような形で担いだり、またこれらに限らずどのような形態でもよい。このような技術が応用できる潜在的な市場としては、スポーツ選手のパフォーマンスを高めるための浸透気化冷却式スポーツ飲料供給装置が考えられる。図13は浸透気化冷却水分補給パック585のひとつの実施の形態を示す。このパックは浸透気化基材591を含む本体588を有し、該基材はこの実施の形態では浸透気化の表面積を増大させるためリブが立てられている。パックは排出口587から浸透気化液が満たされ、一本以上のストラップ586により持ち運びが可能となっている。飲用チューブ589はパック内部と流体連通しており、これを設けるのはユーザーが飲用する際の利便のため有益である。浸透気化冷却水分補給パック、およびバックパック型の着用・運搬可能な容器は、少なくとも内袋部分を、業界では周知の市販されている数多くの水分補給パック(たとえばカリフォルニア州PetalumaのCamelBak、カリフォルニア州BerkeleyのHydraPakなど)のいずれかで構成し、ヒートシーリング、接着剤および/または縫合などで浸透気化基材と結合させて形成することができる。
【0047】
ある実施の形態では、水分補給パック585は少なくとも二層の積層材からなり、ひとつは疎水性浸透気化薄膜を含むひだ付きまたはひだ無しの浸透気化層よりなる外部層591、もうひとつは液体バリアとして機能する浸透気化層591を支持する、好ましくは薄い支持層593である。ある種の実施の形態ではより広い用途に応用され、水は重力により、または液体貯蔵部588から吸い出され浸透気化基材591と中間層593の間の空隙592へと落とし込まれて供給される。
【0048】
任意に設けてよい第三の層は、断熱材よりなり、ユーザーと水分補給パックとの間で熱を遮断するため皮膚に直接接触(または衣服を介して皮膚との熱接触)するのが好ましい。この層は平面状でも、ユーザーと水分補給パックの間を空気が通れるよう凹凸のある形状(たとえば溝をつける、ひだをつける、切込みを入れるなど)としてもよい。第三、あるいは第四の任意の層は乾燥剤または吸収剤を備えてもよい。
【0049】
図14は布地のストラップ式ホルダーを任意に備えた浸透気化冷却飲料ポーチ594を示す。ホルダーの材質は布地以外のものでもよい。ポーチを支持できるものであればよく、浸透気化を妨げないものであることが好ましい。このような浸透気化ポーチはたとえば取り付けストラップ600でベルト通しに取り付けたり、ベルトそのものに取り付けることもできる。布地601を用いることにより多孔質ポーチ基材595の浸透気化作用が充分に発揮される。ある好適な実施の形態では、ポーチ594は三つの主要部分からなり、(1)浸透気化基材を含む浸透気化本体595、(2)注入口596、(3)浸透気化冷却飲用チューブ597、602およびバルブ付き吸引口598である。本体595は実質的に全体が、または一部が浸透気化基材で構成される。ある実施の形態では浸透気化冷却飲用チューブ602は外側に疎水性浸透気化層604が設けられ、これは飲料の漏洩を著しく抑制または低減しつつ浸透気化冷却をおこなうもので、また内部液湿潤層605が設けられている。この積層構造602の中心部603に飲料が導入されると、飲料は親水性材料に滲み込んで液体の障壁605が形成され、これによって空気が多孔質基材604を通じて中心部603に入り込むことが実質的に防止される。このチューブ構造602の親水性基材605と疎水性基材604との組み合わせによって、浸透気化冷却貯蔵部594または別の実施の形態の浸透気化作用のない冷却貯蔵部との共用により、冷却された飲料がチューブの内部容積603から直接供給される利点が得られる。602のような装置を簡便に製造するには、疎水性多孔質PTFEチューブの中央をプラズマ処理する方法がある。または、飲用チューブを浸透気化作用のない材料で構成してもよい。
【0050】
ある実施の形態では、浸透気化容器は軽量の、液が満たされた(好ましくは水が満たされた)浸透気化冷却ガーメントの形態をとっており、これは通常のあるいは高い大気温度中で防護服を着用している人の熱ストレスを軽減するための簡便な個人用局地的冷却システムとして機能する。この種の冷却ガーメントは化学的または生物学的防護スーツ、あるいはNomex消防服などのような防護服の一部をなすように構成することができ、またこれらの防護服と併せて着用するようにも構成できる。または、このガーメントを防弾服の下に着用してもよい。
【0051】
好適な実施の形態による冷却ガーメントは、消防士、レスキュー隊員、軍人、(化学的、生物学的)危険物取扱者、あるいは運動中に耐熱をさらに発散させて耐久力を向上させたいスポーツ愛好者など、多くの目的に使用できるが、これらに限定されない。浸透気化ガーメントはまた、ユーザーから放射される赤外線の量を低減することもできる。好適な実施の形態によれば、水または水とエタノールの混合液(好ましくは約5〜15%)を浸透気化冷却用原液として使用した場合、その装置は実質的に無害であり、ユーザーが飲むことのできる浸透気化冷却飲料水のポーチとなるなどの付加機能も得ることができる。冷えた飲料水はまた、防護スーツやその種の服を着ている人、または運動中の人から熱負荷を軽減する働きがあり、特に耐久力が要求される場合に有益である。無害な、および/または飲用可能な冷却液が好ましいが、浸透気化冷却作用のあるものならどんな液体でもよく、たとえばメタノール、イソプロパノール、非飲用水、またその他の液体や溶液でもよい。冷却液は、ガーメント内部で接触する物質と親和性のあるものを選ぶのが好ましい。
【0052】
ある好適な実施の形態では、浸透気化冷却ガーメントはジャケットまたはベストの形状となっている。浸透気化ガーメントは単独で、または他の衣類や衣服たとえば防護スーツなどに組み込んで、または一体に形成して着用してもよい。他の衣服に組み込まれたり一体に形成された場合、浸透気化ガーメントはユーザーにできるだけ近く(熱接触できるよう)なるようもっとも内側に配置するのがよい。浸透気化冷却ガーメントは皮膚と直接接触してもよく、ユーザーが着用している他の衣料と接触していてもよい。ある実施の形態では、浸透気化ガーメントは、衣服のもっとも内側に配置された(ユーザーと直接接触しているか、熱接触状態にある)浸透気化基材の一部または前面を覆う布地または他の材料の層が備えられている。
【0053】
浸透気化ガーメントに関する記述が特定の形状を有するベストまたはジャケットに即してなされたが、本発明はこれらに限定されると解釈すべきではない。ここに述べられた原理は広範な浸透気化冷却ガーメント、たとえばジャケット、帽子、ベルト、ズボン、レギンスなど、また体のひとつ以上の部分を包む構造物たとえば足、腕(またはその一部)、首などに巻くものに応用可能である。
【0054】
図15は好適な実施の形態によるジャケット608のデザインを示す。このジャケットは単独で着用してもよく、またジャケットやベストを化学スーツ、Nomex消防服または防弾チョッキなどの防護服の下着として見えないように着用してもよい。
【0055】
好適な実施の形態では、このジャケットは三層または四層の積層材で構成される。
【0056】
(1)浸透気化による水分または他の液体を吸収する乾燥剤または吸収剤を含む、任意の再生可能または使い捨ての外部層610、
(2)疎水性であることが好ましい浸透気化材を有する、好ましくはひだ付きの浸透気化層611からなる外部層、
(3)液体バリアとして、またある実施の形態では生物学的または化学的に危険性のある物質のバリアとしても働く、浸透気化層のための薄い支持層からなる中間層613。他の用途に用いられるある実施の形態では、水または冷却液は重力により、またはジャケットの肩部に配置されている液体貯蔵部616から吸い出され浸透気化基材と中間層の間の空隙612へと落とし込まれて供給される。
【0057】
(4)皮膚と直接または布地や他の材料を介して接触する内部層615であり、該布地や他の材料はジャケット自体の一部であるか、および/またはユーザーが別途着用するものである。この内部層はヒートシーリングにより形成された、規則的なまたは曲がりくねった領域を有しているのが望ましい。ある実施の形態では上記の2と4だけからなる簡便なジャケットが提供される。
【0058】
冷却液はジャケット上のポート607からジャケット内へ注入される。好適な実施の形態では、内部層と中間層の間のスペース614は空気袋を形成し、ここに吹き口618から空気を吹き込んで膨らませると冷却ジャケット内部の液との断熱の働きをする。エアホース先端の吹き口から空気袋をしぼませると、液体層が中間層と内部層の重なりを介して皮膚と熱接触している状態となり、これによって所望のときに冷却をおこなうことができる。別の実施の形態では、ジャケット内で分離された貯蔵部が中間層と内部断熱層の間に挟まれて配置され、飲料水の冷えた源泉となっている。場合によって、水が内部で跳ね回って無用な、また不快な音を立てないよう、貯蔵部が折りたたみ式の袋を有していてもよい。また他の実施の形態では、ガーメントはユーザーがガーメント内の液体を飲めるよう飲用チューブ617を備えてもよい。
【0059】
外部の乾燥/吸収層を持たない浸透気化ガーメントを防護服や他の衣服の下に着用する場合は、その衣服は浸透気化液が透過できる材質であるか、または浸透気化液が通過できるよう衣服に通気部、開口部が設けられているのが望ましい。
【0060】
ある実施の形態では、浸透気化ガーメントは浸透気化により発生する水分や他の液体を吸収する乾燥剤や吸収剤を含む、再生可能または使い捨ての外部層をさらに有している。水溶性浸透気化液に好適な乾燥剤または吸収剤としては、硫酸アンモニウム、分子篩、ポリアクリル酸などがあるが、これらに限定されない。外部の乾燥/吸収層は使用後廃棄するか、または熱および/または減圧を与えることにより再生してもよい。好適な実施の形態では乾燥/吸収層はそれ自身の重量の3〜4倍に相当する水を吸収する能力を有している。水を吸収するプロセスは吸熱作用であることが、または最小限に発熱作用であることが望ましい。好適な実施の形態では、この層は高い吸収力、構造安定性を備え、および/またはこの層での蒸気の液化による発熱を低減する。当業者には容易に理解できることであるが、乾燥または吸収層は本明細書に開示されたあらゆる浸透気化容器と共用が可能である。この種の浸透気化ガーメント方の衣服とともに、または組み込まれて、または一体に形成されて使用された場合、その衣服には孔も通気部も開口部その他は、所望であれば設けてもよいが、必要はない。関連する実施の形態では、外部の乾燥/吸収層の少なくともひとつの表面は化学的および/または生物学的物質に対し化学的に耐性がありおよび/または実質的に不透過性である物質を含んでおり、ユーザーの安全をさらに高めている。
【0061】
以下、このような構造の熱力学的能力を概観する。多孔質基材を通る水蒸気の平均浸透気化流量を表1の無風状態の華氏75度で4*10−6g*cm2*s−1と仮定し、また水蒸気流量が華氏95度で2倍の8*10−6g*cm2*s−1と仮定する。華氏95度における気化のエンタルピーが2400J/gであるとすると、基材の単位面積あたりのエネルギー分散は1.9*10−2ワット*cm2となる。25ワットのエネルギー分散を実現しようとすれば、水分補給パックの形成には約1500cm2、すなわち1.5平方フィートの基材表面積が必要ということになる。浸透気化冷却力はジャケットの多孔質表面積の直接の関数であるゆえに、ひだ付きの膜またはひだ付きの焼成多孔質基材を用いると浸透気化冷却力は高まる。この率で4時間冷却を続ける場合、このプロセスで消費されるのは約150mlの水である。すなわち0.5ポンドにも達しない程度の水が使われるのみである。このことから、このような水を満たしたジャケットは約3ポンドまたはそれ以下の重量で製造できることが理解できよう。
【0062】
当業者には容易に理解できることであるが、上記のジャケット、ポーチ、バックパックなどの実施の形態で述べたさまざまな構成には互換性があり、またここに開示された他の容器の構成とも互換性がある。
【0063】
ある実施の形態に関わる多層構造の、また多機能型の基材の好適な配列は、浸水耐圧が高い基材表面がガーメントの内側に面しており、その基材の支持層がガーメント外部の空気に露出している状態である。好適な実施の形態におけるこのような多孔質材の厚さは、約1/128インチ(0.2mm)から1/8インチ(3.2mm)の範囲である。ある実施の形態では、薄く疎水性の高い物質を用いて液と基材の界面における高い浸水耐圧と、焼成ポリエチレンのような厚く有孔率の高い支持材の間に積層された拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のような小さなポアサイズとを実現して、大きな浸透気化流量が得られるよう、膜と浸透気化基材が積層された複合材が選択的に用いられる。
【0064】
製造方法
浸透気化容器または浸透気化ガーメントの浸透気化基材部分を製造する方法は数多くあり、たとえばミリ単位以下のサイズのプラスチック粒子を成型用の型で焼成し直接浸透気化壁材とする;ひとつ以上の浸透気化基材をそれら同士、または他の適当なフレームに超音波積層または溶着する;インサート成型、すなわちひとつ以上のシート状または円筒状の多孔質基材が型内に挿入されて熱可塑性ポリマーが挿入物の周囲に射出成型され、多孔質基材部分を有する所望の複合材を形成する;ヒートシーリングで融着する;接着剤を用いて部材を接着する;および/または浸透気化ガーメントまたは容器の一部または全部を結合するため縫製をおこなうなどであるが、これらに限定されない。
【0065】
二つ以上の多孔質基材層を有する多層構造は、機械的、物理的に優れた基材が必要な場合に用いるとよい。たとえば、ポリエチレンの焼成マクロ多孔質基材を容器の液体側で拡張PTFEの薄い層と結合させると疎水性が増し、水の破過耐圧が5psiから30psiに向上し、かつ多孔質ポリエチレン単独で得られるのと同様な浸透気化流量が維持されている。
【0066】
図1(A)、(B)は浸透気化基材からなる壁部501を有する浸透気化容器の好適な実施の形態の構造を示す。壁501はインサート成型、熱または超音波溶着、接着剤接合、または他の適切な方法により、容器の上部500および底部502に結合されている。インサート成型で、基材を容器の他の場所に取り付けてもよい。この例における上部500はネジが形成され、通気式ボトルキャップを取り付けられるようになっている。容器の上部500と底部502は射出成型や真空成型その他適切な方法で製造できる。
【0067】
図3I(A)、(B)は構造上の支持材を設けるのが望ましい薄い浸透気化基材507にリブ508が付けられた構造を示す。リブ508によって容器の壁は構造的強度が増し、手でしっかり握れるよう凹凸が形成されている。リブ508は外側にでも内側にでも、また浸透気化基材のひとつ以上の面に形成することができる。リブ508は浸透気化基材507を挿入するインサート成型方式で射出成型するのが好ましい。または、特に超音波、熱、接着剤などでリブ508を多孔質基材507に圧着するか、多孔質基材507をリブ付き容器ボディ508に圧着してもよい。
【0068】
図3II(C)、(D)はこの容器のスポーツバージョンを示し、これはネック部512で取り付けブラケットにしっかり固定できるようになっている。ボトルの口511はスナップ式の蓋やネジ式の蓋などいろいろな閉止具が取り付けられる。
【0069】
図4は断熱式、疎水性オープンセル発泡層518を示し、オープンセル構造によって水蒸気が通過可能であるが、容器の内容物の熱の対流または放射は抑制されている。表1は断熱基材は液体の損失を低減し、かつ大きな浸透気化冷却効果を維持することを示している。好適な実施の形態では、断熱発泡材518は伸縮性スリーブとしてボトルに着脱可能となっている。
【0070】
浸透気化冷却効果を高めるには、基材にひだを設けることによって、液体を接触する基材の表面積を増大させるとよい。図5には容器内の液体の単位体積あたりの浸透気化基材の表面積を増やすためひだが形成された容器本体520が示されている。この構成により、容器内容物を浸透気化冷却するのに要する時間が短縮される。このような構造の容器はインサート成型を用いるか、または両端を容器の底部521および上部519に対し接着剤または溶融プラスチックを用いたポッティングなどにより製作できる。
【0071】
図6(A)、(B)は基材523の外側に設けられた回転式スリーブ525を示す。アウタースリーブ525がインナースリーブ524に対して回転すると、縦方向スリット527のセットが形成され、この開閉の度合いによって浸透気化基材523の露出程度が可変となり、蒸気の流量を低減しつつ充分な浸透気化冷却効果を維持することができる。回転式でなく、縦方向にスライドするスリーブを設けてスリットの開き方を縦方向に調節する方法をこの構造に取り入れてもよい。インナーおよびアウタースリーブ524、525はプラスチックや金属など水蒸気を通さない実質的に無孔質の材料で作られる。図6(B)は、多孔質基材523とインナー固定スリーブ524との間にわずかな空隙530を維持するための環状スリーブを示している。この空隙530は容器本体の多孔質基材523に対する直接の熱伝導または放射熱伝達を効果的に抑制、低減する遮蔽物として有用である。さらに、この空隙530により蒸気流がこの環状の領域527から流出できる。スリーブ524、525は図5に示されたようなひだ付き浸透気化表面520の上に設けてもよい。この場合でも、スリーブ524、525は容器の外側にスライドさせるように取り付けてもよい。インナースリーブ524は所定の位置に取り付けるか圧着してもよい。
【0072】
図7、図8は浸透気化容器にジャケットを取り付けた実施形態を示す。図7の冷却ジャケットは、外側の疎水性浸透気化層535と内側の多孔質液体保持または吸収層534からなる着脱式スリーブで構成してもよい。図8の実施の形態では、外側のジャケット542が特別のポート543から水または他の揮発性液体541が満たされ、内部の飲料容器540の内容物は大気より低い温度に保たれる。このような構造の利点の一つは、炭酸飲料をこの容器に入れた場合に、炭酸が抜けないことである。さらに、電解質や糖分が高く浸透気化しにくい性質の液体を内部の収納室540に入れ、蒸留水または他の浸透気化しやすい液体541を外側の収納室に入れて適切な温度低下を起こすことができる。
【0073】
図7、図8に示されたスポンジ533やジャケット状浸透気化材542の実施の形態は、アルコールのような有機溶液を保持する疎油性浸透気化基材に用いるものである。この構成では外側のジャケット533、542はエタノールで満たされ、浸透気化冷却液534、541として機能する。
【0074】
図10は浸透気化冷却飲用カップを示し、これは図1(A)、(B)、図2、図3I(A)、(B)に示された浸透気化ボトルと同様の機能を有している。組み立て方法は、平面状の浸透気化基材を周囲に巻くか、または基材555を円筒状にしてカップ本体556に押し込みその後接着剤、ポッティング、熱溶着または超音波溶着などで接合できる。基材をボトルフレームや壁に直接接合するにはインサート成型を用いてもよい。
【0075】
図11A、図11B、図11Cは飲料や食料568を貯蔵する冷却容器の構造を示し、これに基づき製法を説明する。この構成では、蓋558、クーラー壁559、564、または蓋572および壁559、564の両方が液体を満たした浸透気化ジャケット566、578を含んでいる。この容器はひとつ以上の断熱層をさらに含んでもよい。この容器は飲食物568を大気より低い温度で一度に数日間保存するのに使用できる。ある実施の形態では、クーラー本体563の組み立ては平面状の浸透気化基材566をケース体564の内側に配し、接着剤、ポッティング、熱溶着または超音波溶着などで接合できる。または、基材566をボトルフレームや壁564に直接接合するにはインサート成型を用いてもよい。
【0076】
熱ストレス軽減のための解決法のひとつは、浸透気化の概念に基づくものである。ここに開示したような浸透気化冷却メカニズムを応用した冷却水分補給パックや他の冷却ガーメントは軍隊の個人用冷却システムとしてのみならず、競技中に体からより多くの熱を発散して持久力を向上させたいスポーツ愛好者にも適用が可能である。水または水とエタノールの混合液(好ましくは約5〜15%)を浸透気化冷却用原液として使用した場合、その装置は実質的に無害であり、ユーザーが飲むことのできる浸透気化冷却飲料水のポーチとなるなどの付加機能も得ることができる。冷えた飲料水はまた、防護スーツやその種の服を着ている人の熱負荷を軽減する働きがある。
【0077】
ここに記載された浸透気化水分補給パックは既にその構造を述べた浸透気化飲料冷却ボトルと同様の構成を採用することができる。浸透気化冷却(2400J/g)に対する融解熱(335J/g)および液体を室温(華氏77度)まで上げる熱量(105J/g)による冷却効率の比較により、浸透気化冷却のほうが氷を使うよりも体積ベースで5倍も効率的であることが判明している。表1、2、3では30〜40%の相対湿度の室温下でさまざまな風速や基材構成などの条件により浸透気化冷却ボトルにどのような変化があったかを示すデータが記載されている。
【0078】
図14は布地のストラップ式ホルダー599を任意に備えた浸透気化冷却飲料ポーチ594のひとつの実施の形態を示す。ある実施の形態では、ストラップは布地やそれ以外のホルダーを用いず本体595に直接取り付けられる。このような浸透気化ポーチはたとえば取り付けストラップ600または類似の取り付け具で肩にかけたりベルト通しや体の他の部分に取り付けたり、ユーザーのベルトの横に取り付けることもできる。ある実施の形態では、布地601はナイロンの編地から縫製され、ストラップ600はベルクロ、ナイロンとベルクロの組み合わせ、または他の天然もしくは合成材料で構成されている。ポーチのいろいろな部分と多孔質基材595とは、ヒートシーリング、熱溶着、超音波溶着、接着剤積層、その他他の容器に関して述べたような方法で接合することができる。ある実施の形態では浸透気化冷却飲用チューブ602は外側に疎水性浸透気化層604が設けられ、これは飲料の漏洩を著しく抑制または低減しつつ浸透気化冷却をおこなうものであり、また内部液湿潤層605が設けられている。この積層構造602の中心部603に飲料が導入されると、飲料は親水性材料に滲み込んで液体の障壁605が形成され、これによって空気が多孔質基材604を通じて中心部603に入り込むことが実質的に防止される。親水性基材605にしみ込んだ液体は外部疎水性基材604を介して自由に浸透気化できる。このチューブ構造602の親水性基材605と疎水性基材604との組み合わせによって、冷却された飲料がチューブの内部容積603から直接供給される利点が得られる。既に述べたとおり、このチューブは浸透気化作用のあるポーチとないポーチのいずれに使用してもよく、また浸透気化作用のある他の容器また無い容器のいずれにも使用できる。浸透気化チューブ602を製造するには、疎水性多孔質PTFEチューブの中央をプラズマ処理してチューブの内部605を親水化する方法がある。
【0079】
浸透気化冷却装置の作用
浸透気化冷却装置の好適な構成は簡便なものであり、通常の環境下で容器の中の液体や固体を冷却、またその低音を維持することができ、それには機械式ポンプ作業のような重量や運搬上の制限も無く、浸透気化冷却の効率を上げるために外部の真空機構を共用する必要もない。ある好適な実施の形態では、図1(A)のようなタイプの容器の半径寸法は中身の液体が自然対流により対流混合を起こすのに充分な大きさを持たせてある。その理由は、時として液体の熱伝導のみでは容器全体にわたって均一な温度分布を有効に維持するには不足することがあるからである。容器の内壁部分の液体が冷却されると、中心部に比べ内壁部分の液体の密度が下がる。この密度の差によって、冷たいほうの液体が容器の内壁に沿って下方へ流れ、底部に達した後は強制対流に対して自然対流と呼ばれる現象によって容器の中央部を循環するように上昇する。冷却率が充分に高くなると、対流の渦は容器の側方から離れていき、混合率が上昇する。
【0080】
このような現象とその発現は計算された大きさを持たない変数、すなわちグラショフ数(重力場における液体の浮力の変数)とプラントル数(液体の熱的・容量的性質を示す変数)との組み合わせによって予見することができる。これら二つの変数の組み合わせから、ヌセルト数(全体的な熱伝達の変数)の計算が導かれる。浸透気化容器内の自然対流は同じ液体中の熱伝導に代わり浮揚する液体を解しての対流熱伝達を促すことにより冷却効率と装置の冷却率を高める。
【0081】
表1は相対湿度30〜41%、異なった大気流速のもとでの水に対する終止点における浸透気化冷却データと多孔質断熱基材の効果を示すものである。表2および表3は暗所(表2)および直射日光下(表3)での異なった相対湿度下の水に対する終止点浸透気化冷却データを示している。浸透気化基材はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)または焼成UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)である。X−7744、X−6919および402HPとあるのはすべてUHMWPEで、有孔率、ポアサイズおよび厚さが表のとおり異なっている。
【表1】
【表2】
【表3】
【0082】
表1は相対湿度30%で異なった大気流速のもとでの水に対する終止点における浸透気化冷却データと、1/16インチオープンセル多孔質ウレタン断熱基材の効果を示すものである。表2および表3は暗所および直射日光下での異なった相対湿度下の水に対する終止点浸透気化冷却データを示している。三つの表すべてにおいて、浸透気化基材はPTFEまたは焼成UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)である。
【0083】
外部の相対湿度が下がった場合、また容器が直射日光下に置かれた場合は、容器の冷却効率の更なる上昇が見られるかもしれない。外部湿度が下がると、蒸気濃度勾配が上昇し、外部から加えられた熱は液体の温度と蒸気の圧力を上昇させ、それにより浸透気化流量の上昇が起こる。周囲の大気の条件や容器の形状や材質の選択によっては、このプロセスは大気温度より華氏22度低い容器内温度を維持することができる。(表3参照。)700mlの水がこの冷却温度に達するまでの時間は、図9に示すように、さまざまな浸透気化基材、またそれらの組み合わせに対しおよそ2時間であった。
【0084】
浸透気化冷却容器の好適な実施の形態のひとつとして、約0.025mm(0.001インチ)から10mm(約0.394インチ)の厚さを持つ浸透気化層を有する単独または結合された多孔質基材がある。さらに、浸透気化プロセスの効率を向上させるため、基材は熱伝導率が最小限である性質を持つことが好ましい。基材は実質的に蒸気の拡散を妨げないことが好ましく、それにはある実施の形態のようにポアサイズは約100nmより大きいことが望ましい。基材の好ましい表面有孔率は約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%および85%などを含め約15%〜90%の範囲である。過フッ化スチロフォーム、拡張多孔質基材、または中空溶融粒子からなるオープンセル多孔質基材などの熱伝導率の低い多孔質基材は、周囲の環境から容器内への好ましくない熱伝達を効果的に抑制または低減する働きがある。
【0085】
以上説明したさまざまな方法、技術は本発明を実現する多数の方法を示している。ただし、記述されたあらゆる目的や利点が個々の実施の形態のすべてにおいて実現されるとは限らないのは当然である。したがい、当業者であれば、たとえばここに開示または示唆された目的や利点のいくつかを必ずしも達成することなく、ここに開示された他の特定の一つまたは複数の利点をさらに高めるために上記の方法を実施し得ることが理解されよう。
【0086】
さらに、当業者であれば異なる実施の形態のさまざまな特徴が互いに交換可能であることも理解できよう。同様に、当業者は上記の特徴や工程、ならびに個々の特徴や工程の周知の均等物を併用または適用し、ここに記述した原則どおりの方法を実行することが可能であろう。
【0087】
本発明をある実施の形態や実施例に即して説明したが、本発明は具体的に説明した実施の形態のみならず、他の代替的な実施の形態および/または使用法、またそれらの明らかな改変物や均等物をも含むことは、当業者の理解するところである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(A)は略平面状の多孔質基材が円筒形の本体の周囲に巻かれているか圧着されたボトルを示す斜視図、(B)は同分解斜視図。
【図2】ひとつの実施の形態による、二つのマクロ多孔質相の間に間挿された薄い膜を有する多層構造を示す部分分解図。
【図3I】(A)は補強リブにより多孔質基材の剛性を増した実施の形態を示す斜視図、(B)は同部分断面図。
【図3II】(C)は補強リブにより多孔質基材の剛性を増した実施の形態を示す斜視図、(D)は同部分断面図。
【図4】外部多孔質断熱材を有する容器を示す斜視図。このスリーブは中のボトル表面の放射熱を抑制しつつ、浸透気化流動と潜熱低減が可能である。
【図5】容器の冷却のための有効表面積を増大させるためひだを形成した基材を有する容器の実施の形態を示す斜視図。表面積の増大により容器の冷却時間が短縮できる。
【図6】(A)は浸透気化流動と容器内の液体減少を制限する調節可能なスリーブを備えた容器の実施の形態を示す斜視図、(B)は同部分断面図。このスリーブはボトルの内表面の直接放射による温度上昇をも抑制し、かつ浸透気化流動と潜熱減少を可能とするものであるのが好ましい。
【図7】容器と共用可能なスポンジまたはスポンジ状の物質を含む二層式浸透気化スリーブを示す断面図。
【図8】炭酸飲料などの液体を収納する中央ハウジングに使用する浸透気化冷却ジャケットの別の実施の形態を示す部分断面図。
【図9】さまざまな多孔質基材を用いた浸透気化冷却平衡について時間と冷却度の関係を表すグラフ。
【図10】浸透気化冷却される飲用カップのひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図11A】浸透気化材の本体と浸透気化材の蓋とを有する浸透気化冷却式貯蔵容器(すなわちクーラー)のひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図11B】浸透気化材の本体と浸透気化材の蓋とを有する浸透気化冷却式貯蔵容器(すなわちクーラー)のひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図11C】浸透気化材の本体と浸透気化材の蓋とを有する浸透気化冷却式貯蔵容器(すなわちクーラー)のひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図12】浸透気化材を含む、好適な液体供給タンクを示す側面図。
【図13】液体を満たした、ひだ付き浸透気化冷却タンクを備えたバックパックのひとつの実施の形態を示す側面図。
【図14】ホルダーに多孔質布地ストラップを任意に装着した浸透気化冷却飲料ポーチを示す側面図。さらに、図示のポーチまたは他の容器と接合して瞬間冷却飲用または供給に使用できる、内部湿潤化可能な浸透気化冷却チューブも示されている。
【図15】ひとつの実施の形態による浸透気化冷却ジャケットを示す側面図。 これらの図面は好適な実施の形態を示すものであるが、ある実施の形態については単に例示または代表的な形態を示すに過ぎない。そのためいくつかの図面は、本発明のいずれの実施の形態にも含む必要はないが任意に設けることも可能な特徴を含んでおり、図示された容器や閉止具の形状、種類、あるいは特定の配置は本発明をそのように限定するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明はパーベーパレーション(浸透気化法)により液体を冷却するのに使用される容器または閉止具を製造する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住居および水ともに、気化による冷却法は古代エジプトに源を発し、その後東へは中東・イランを経て北部インドまで、西へは北アフリカを経て南スペインその他、暑く乾燥した気候に悩む地域へと広まった。この方法が使われ始めた段階では、水を貯えておくのに釉を施さない粘土の甕が何世紀にもわたって使われており、そのため水が粘土に吸収され外部表面へと滲出し、表面から気化することによって内部の水が冷却されるという思わぬ恩恵が得られた。残念ながら、粘土の外部表面から直接気化することによって水垢が形成され、ミネラル分が堆積して水の透過を抑制して気化圧力を低下させ、その結果冷却効率は下がっていった。
【0003】
周囲の大気から液体への熱伝達低減に基づく他の方法が使われるようになった。このような方法としては真空や空隙式魔法瓶や発泡断熱包装材などがある。氷や冷凍したコールドパックやスティックなどを用いた他の装置も、周囲の大気による熱上昇や容器内の液体が大気温度に戻るのを抑制するのに使われている。これらのあらゆる場合において、システムの設計の際は液体内容物、分離された貯蔵室および/またはボトルの外殻のいずれかが冷却されることが必然的な要件であり、それが容器内の液体の蒸発による損失のみならず、重量が過剰となるという問題につながっていた。どのような方法であっても液体の温度は平衡し、いずれは大気温度に戻ってしまうものである。
【0004】
パーベーパレーション(浸透気化)とは、ある基質に対し蒸気の透過と気化現象とが共に起こることを言う。1987年以来、膜浸透気化法が化学業界に広く採り入れられ、混合液の分離や再生に用いられるようになった(Chemical Engineering Progress誌、1992年7月号、45〜52ページ)。この技術の特徴は液相と気相の間にバリア基材を導入することにある。液体は基材の一方の面に密着している。蒸気の大量移動が基材の気体側へと選択的に起こり、その結果液体の減少または液体の揮発成分の減少、および気化潜熱の低減が起こる。このプロセスは、蒸気の多孔質基材の「透過」と、液体から気体への位相変化である「気化」との独特な結合であるがゆえに、「浸透気化」と呼ばれることになったものである。液体に熱を加えることなく、気化潜熱により温度が下がり、やがて周囲から吸収した熱と基材表面またはポア内で気化のため失われた潜熱とが等しくなる平衡温度に達する。
【0005】
米国特許第5,946,931は膜の上で層状を呈する液体の流動を利用した気化冷却PTFE膜装置を用いてそこに取り付けられた装置または周囲の大気を冷却する方法を開示している。米国特許第4,824,741は気化冷却基材を用いて化学電池のプレート表面を冷却する方法を開示している。湿板は無触媒PTFE接合電極材、適切な多孔質焼成粉末、多孔質繊維、さらには多孔質ポリマーフィルムなどで構成できる。米国特許第4,007,601は流体を冷却するため、循環する多孔質中空熱交換器で気化冷却をおこなう方法を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここに開示するものは飲料および液体の容器を浸透気化により冷却する簡便なシステムであって、上記従来の技術のごとく浸透気化基材表面に液体を供給するのに機械式ポンプを用いたり、冷却効率を高めるために真空に依存する必要のないシステムである。容器とは、外気に対して開放または閉鎖されているかを問わず、液体を保持するあらゆる装置または包装体を指す。ある実施の形態ではこの方法の実行に、好ましくは容器本体またはハウジングの一部を形成し、該容器の全表面積の5〜100%を占める浸透気化基材が用いられている。容器内の液体は水の気化による潜熱のため周囲の液体と膜の界面で直接冷却される。液体から発生した蒸気は基材を介して周囲の大気に放散するか、吸収剤などを備えた回収装置や捕集装置へ向かう。好適な容器としてはボトル、ジャー、ガラス瓶、ポーチなどがある。いくつかの実施の形態では、容器はケース、ディスペンサー、外装物などより大きな構造としてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態では、ひとつ以上の壁を有する容器本体部を備え、前記ひとつ以上の壁の少なくとも一部が浸透気化基材を有し、該基材は疎水性多孔質材を含み、前記基材は揮発性液体の蒸気の少量の分子を該基材を介して通過させ、前記液体の気化によって内容物も含め前記容器が冷却されることを特徴とする、浸透気化冷却容器が提供される。ある実施の形態では、外部浸透気化層を含む細長い中空の管状構造を有し、前記外部浸透気化層は親水性物質を含む多孔質内部層と重なる疎水性物質を含み、前記内部層は液体が通過できる内腔を形成していることを特徴とする、浸透気化冷却チューブまたはストローが提供される。ある実施の形態では、前記管状構造は疎水性多孔質チューブで形成され、該チューブ内部では内表面が親水性となるよう加工された結果、内部層が形成されている。
【0008】
ある実施の形態では、疎水性多孔質材を含む外部層を有するジャケット本体と、前記外部層と重なっておりかつ前記外部層と流体連通する内部層とを有し、該内部層は揮発性液体を保持することが可能であり、前記ジャケット本体は前記内部層が容器の少なくとも一部と接触できる形状をなしていることを特徴とする、容器冷却用ジャケットが提供される。
【0009】
ある好適な実施の形態では、前記容器および冷却用ジャケットは、浸透気化層と直接隣接または接触しており、かつ乾燥剤、吸収剤または他の、浸透気化により発生した水分や他の液体を吸収または吸着する物質を含む、再生可能または使い捨ての外部層をさらに有するものである。
【0010】
ある実施の形態では、疎水性浸透気化層を含む浸透気化材を有する外部層と、内部層との少なくとも二つの層を有し、前記浸透気化層のための液体バリア支持層である中間層を任意に有し、前記外部層は冷却液塊と流体連通し、前記内部層は該ガーメント着用者と熱接触状態にあることを特徴とする、冷却用ガーメントが提供される。ガーメントの着用者は冷却液が外部層の浸透気化材を介して浸透気化をおこなうことにより冷却される。ある好適な実施の形態では、冷却用ガーメントは防護服または防護スーツのような衣服に内装、または一体に形成される。このガーメントはさらに、その着用者が冷却液、好ましくは水を経口でも摂取できるよう、冷却液塊と流体連通するチューブを備えている。またある好適な実施の形態では、このガーメントは、浸透気化により発生した水分や他の液体を吸収する乾燥剤や吸収剤物質を含む、再生可能または使い捨ての外部層をさらに有するものである。
【0011】
いくつかの好適な実施の形態では、次のうちひとつ以上が実現されている:ガーメントは皮膚と直接の接触または布地などを介して熱接触をなしており、該布地などはガーメントの着用者によって着用されているか、ガーメント自体の一部であり、外部層は浸透気化のため表面積を増大させるようひだが形成され、中間層は生物学的または化学的に危険が潜在する物質の障壁として機能し、内部層はヒートシーリング(熱圧着法)により形成された規則的なまたは曲がりくねった領域を有している。
【0012】
関連する実施の形態では、ガーメントは新たな冷却液を保持する容器をさらに備えるか、それと流体連通している。この冷却液は、容器から浸透気化材と中間層との間隙へ重力または毛管作用で供給することができる。好適な冷却液には水、アルコール、またその混合液などがある。
【0013】
関連する実施の形態では、浸透気化材を含むボトルやバックパックなどの容器も提供されるが、これらは後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここに開示するものは、その内部の液体や物体を冷却するため浸透気化冷却法を用いる、容器ならびに包装体である。好適な実施の形態では、容器は多孔質通気材(多孔質基材ともいう)で構成されている。ある実施の形態では容器は浸透気化冷却ガーメントの一部をなす。
【0015】
多孔質基材はプラスチック、エラストマー、金属、ガラス、セラミック、またこれらに限定されず広範な材料のいずれで形成されてもよい。プラスチック、エラストマー、金属、ガラス、セラミックを組み合わせたものも使用できる。組み合わせとしては、二つ以上の材料を混合して同時焼成したり、二つ以上の材料を重ね合わせた多層構造とするなど、均質的なものであってよい。さまざまなプラスチック、エラストマー、金属、ガラス、セラミックなどを組み合わせたものを同時焼成したり、多層構造を形成して浸透気化容器に使用してもよい。多孔質通気材として好適に用いられるプラスチックとしては、熱可塑性ポリマー、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーなどがあるが、これらに限定されない。好適な熱可塑性ポリマーには低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)およびその共重合体、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、改質ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリアセタル、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリ(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(アクリルニトリル−スチレン−アクリレート)(AES)、ポリ(アクリルニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン)(ASA)、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルクロライド(浸透気化C)、クロリネートポリビニルクロライド(C浸透気化C)、ポリビニルジクロライド(浸透気化DC)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリビニルフルオライド(浸透気化F)、ポリビニリジンフルオライド(浸透気化DF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、セルロース系、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、ナイロン6(N6)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスチレン(PS)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン(PES)などがあるが、これらに限定されない。好適な熱硬化性エラストマーには、スチレン−ブタジエン、ポリブタジエン(BR)、エチレン−プロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン(NBR)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、シリコーン、フルオロシリコーン、ウレタン系、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ポリノルボレン(PNR)、クロロブチル(CIIR)やブロモブチル(BIIR)を含むブチルゴム(IIR)、Viton(登録商標)、Kalrez(登録商標)、Fluorel(商標)などのフッ化エラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンなどがある。好適な熱可塑性エラストマー(TPE)の種類としては、市販されているDexflex(登録商標)、Indure(登録商標)などの熱可塑性オレフィン(TPO)、エラストマー浸透気化Cの混合物または合金、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)などのスチレンブロック共重合体(SBC)、Kraton(登録商標)、Dynaflex(登録商標)、Chronoprene(商標)など市販のSBC、Versalloy(登録商標)、Santoprene(登録商標)、Sarlink(登録商標)などとして市販されている熱可塑性加硫物(T浸透気化、加硫合金としても知られている)、ChronoThane(登録商標)、Versollan(商標)、Texrin(登録商標)などとして市販されている熱可塑性ポリウレタン(TPU)、たとえばEcdel(登録商標)のような市販の共ポリエステル熱可塑性エラストマー(COPE)、REBAX(登録商標)などのような市販のポリエーテルブロック共ポリアミド(COPA)などがある。多孔質材として好適な金属には、ステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛、銅など、およびそれらの合金がある。多孔質材として好適なガラスやセラミックとしては、水晶、ボロシリケート、アルミノシリケート、ソディウムアルミノシリケートなどがあり、焼成された粒子、またはそれから形成したファイバーの形態で用いるのが好ましい。
【0016】
マクロ多孔質材を形成するには焼成と呼ばれる方法が好適に用いられるが、これは粉末または粒子状の熱可塑性ポリマーに熱と圧力を作用させて粒子を部分的に凝集させ、それによって結合力のあるマクロ多孔質のシートまたは部材を形成するものである。マクロ多孔質材は網の目のように互いにつながり合った多数の孔を含み、それらがシート全体にわたって不規則な曲がりくねった通路を形成している。典型的には、マクロ多孔質シートの孔部の体積すなわち有孔率は焼成の条件により30〜65%程度であるが、メーカーが採用している特定の条件のもとではこの範囲を上方または下方に外れるものもある。化学的また物理的物性を調整することにより、マクロ多孔質材の表面張力を液体をはじいたり吸収したりするよう調節できるが、空気や蒸気は常に通過することができる。Goldmanの米国特許3,051,993にはポリエチレンからマクロ多孔質材を形成する方法が詳述されているが、引用によりそのすべてをここに一体化する。
【0017】
好適な実施の形態にしたがい浸透気化冷却容器を形成するのに適したマクロ多孔質プラスチックを含む多孔質プラスチックは、シート状または規格形状に合わせた成型品として製造でき、多くのメーカーから購入可能である。POREX・コーポレーション(米国ジョージア州フェアバーン)はそのひとつであり、POREXの登録商標のもとに多孔質プラスチックを提供している。POREXの登録商標のもとに販売される多孔質プラスチックは、前述の熱可塑性ポリマーのいずれからでも、シート状または規格形状に合わせた成型品として購入できる。このPOREX材のポア(孔)の平均サイズはポリマーの粒子サイズや焼成条件などにより異なるが、約1〜350ミクロン程度の範囲である。GenPore社(米国ペンシルバニア州リーディング)も多孔質プラスチック製品のメーカーであり、ポアサイズは5〜1000ミクロン程度である。MAインダストリーズ社(米国ジョージア州ピーチトゥリー)も多孔質プラスチック製品を製造している。Porvair Technology社(英国ノースウエールズ州レクサム)もまた多孔質プラスチック製品のメーカーであり、多孔質プラスチック(Vyonの商標のもとに5〜200ミクロンの孔)および多孔質金属媒体(Sinterfloの登録商標)の双方を提供している。
【0018】
浸透気化冷却容器を形成すべく選択したプラスチックの基本的なサイズ、厚さ、有孔率などは通気材を一定時間に通過する蒸気の量(流量)および周囲の大気から液体への熱伝達率の計算により求められる。あるマクロ多孔質プラスチックにおける流動率(単位面積あたりの流量)は、ポアサイズ、有孔率、通気材の断面厚さなどにより異なるが、一般的には、単位面積当たり・単位時間当たりの量で表される。充分な浸透気化冷却効果を得るためには、基材を通過する蒸気の流量は、初めは室温である液体から気化により熱力学的に奪われる熱が、周囲の大気から吸収する熱より大きくなるような流量が必要である。浸透気化のプロセスでは、容器内の液体温度は、該液体が基材を介して気化することによりこうむる熱損失が周囲の大気から得る熱と平衡するまで、下がることになる。
【0019】
用語の通常の意味として、「マクロ有孔率」とは一般にある物質またはそのマクロ構造における空隙部の総量を指す。「マクロ多孔質」という用語は一般に、その物質の個々のポアサイズが大きいと考えられるものを指して用いられる。「ミクロ有孔率」という用語は一般に多孔質物質のミクロ構造における個々のポアサイズやサイズの分布を指す。「ミクロ多孔質」という用語は一般に、その物質の個々のポアサイズが小さいと考えられるものを指して用いられる。本明細書の記載においては、ポアサイズ(直径)は基礎・応用化学国際連盟(IUPAC)マクロ分子用語小委員会により2002年2月26日に策定された定義に基づき分類したものである。この基準によればポアサイズは3種に分類される。ミクロ多孔質(0.002μm未満)、メゾ多孔質(0.002〜0.050μm)、およびマクロ多孔質(0.050μm超)である。また本明細書においては、空隙量は当該物質の「有孔率(百分率)」で表すものとする。マクロ多孔質材、ならびにポアサイズが0.050μm以下のメゾ多孔質材の双方が、浸透気化冷却に使用できる。このような材料の好適な製造方法としては、鋳造や膜伸展法などがある。
【0020】
好適な多孔質材には、反対側の表面(外表面と内表面)にある孔同士が、双方の面が連通するように内部でつながったものがある。とはいえこのような連通は、物質が通過できるような管やポートを形成する直線的なものでないことが好ましい。逆に、孔のネットワークが曲がりくねった通路を形成し、そこを気体や液体が通過するのがよい。
【0021】
単層の浸透気化基材の場合、ポアサイズが0.05μm以上であるマクロ多孔質物質を用いるのが好ましく、より好ましくは0.25、0.5、1、5、15、20、40、60、80、100、150、200、250、300、350、400および450μmの場合など約0.1〜500μm、中でも約0.5〜10μmの範囲がよい。ある実施の形態においては、組み合わせて用いられる通気材のポアサイズは0.1〜100μmの範囲にあるのが好ましく、より好ましくは0.5〜75μmの範囲である。この通気材の有孔率(空隙部の百分率)は20%、40%、60%、80%など10〜90%の範囲が好ましく、さらには30〜75%、より好ましくは50〜70%とするのがよい。この多孔質材の厚さは1〜3mmなど、0.025〜7mmの範囲が好ましい。通気材の厚さとしては0.2、0.3、0.5、0.7、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.5mmなど、0.05〜5mmの範囲、さらには0.1〜3.0mmの範囲が好ましい。他の実施の形態においては、上記の各変数において上下に外れた数値を示す場合もある。単層基材の場合は、疎水性であること、または疎水性被膜を有することが好ましい。この章、あるいは本明細書の他の章で述べられた数値に対し、記述した範囲には、具体的に例示した数値の間にある数値も含まれる。他の実施の形態においては、材料の物性のひとつ以上が記述した範囲を外れることもある。
【0022】
基材はプラスチック、エラストマー、ガラス、金属、またはそれらを混合したものから作られる。熱可塑性ポリマー、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、金属、ガラスおよびセラミックなどの好適な基材はすでに詳述したとおりである。基材は市販のものを購入してもよく、さまざまな技術によって製造してもよい。Whiteらの米国特許4,076,656には溶解または溶融した状態の物質にポロゲンを加え、その物質が凝固して締まり的な形状となった後ポロゲンを溶剤で浸出または超臨界液で抽出する技術が開示されている。Rusincovitchらの米国特許5,262,444には物質を加工した後に気化して多孔質構造を残すポロゲンを加えることにより多孔質材を製作する技術が開示されている。これらの特許を引用によりその全体をここに一体化するものである。
【0023】
本明細書で取り上げる浸透気化基材の多くは疎水性であるが、浸透気化させる液体がアルコールなどの有機物である場合は、疎油性の浸透気化材も使用可能である。ナイロン、ポリスルフォン、またセルロース系など一般的なプラスチック材は疎水グレードのものが入手可能である。これらの材料は当業者に周知の方法によって粒子化して焼成し、高い液体流動率を有する親水性多孔質材を得ることができる。好適な実施の形態のとおり液体を供給するのに適した、マクロ多孔質プラスチックなどの親水性多孔質プラスチックは、シート状または規格形状に合わせた成型品として製造でき、またPOREX・コーポレーションをはじめ多くのメーカーから購入することもできる。親水性多孔質繊維のポアサイズは20〜120μmの範囲が好ましく、有孔率はポアの大きさにより25〜80%であるのが好ましい。また、疎水性多孔質材は、当業者には周知のたとえばプラズマエッチング、ケミカルエッチング、湿潤材の含浸、親水性コーティングなどのひとつ以上の加工法により、またこれらの方法に限らず、親水化することが可能である。さらに、これらのひとつ以上の方法にマスキング法を組み合わせることにより、疎水性多孔質材のあるパターン領域を選択的に親水化し高い液体流動率を得ることができる。
【0024】
たとえば、二層以上の多孔質材を含む多孔質多層構造材がある。薄い層を、当業者には周知の方法を用いて厚い層に積層することができる。多層構造はすでに試験済みのとおり機械的、物理的に優れた基材を形成するのに使用できる。たとえば、焼成したポリエチレンマクロ多孔質基材を容器の液体側で拡張PTFEの薄い層と結合させると、疎水性が増し、水の破過耐圧が5psiから30psiに向上し、かつ積層された基材は多孔質ポリエチレン単独で得られるのと同様な浸透気化流量を維持している。積層材の厚さは、ポアサイズ、有孔率その他の物性が上記の好ましい範囲にある場合、好ましくは約0.025〜7000μmである。
【0025】
浸透気化基材はまた、混合多孔質材から製作してもよい。ある好適な実施の形態では、多孔質材はポリビニルフルオライド(浸透気化F)、ポリビニリジンフルオライド(浸透気化DF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、および/またはZonyl(登録商標)のようなフッ素添加剤など、またこれらに限らないフッ素系樹脂と、以下のようなポリオレフィンまたは他の樹脂から選択されたひとつ以上のものとの混合材である。すなわち、ポリエチレン系(LLDPE、LDPE、MDPE、HDPE、UHMWPE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS、アクリル、スチレン、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリアセタル、ポリ(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(アクリルニトリル−スチレン−アクリレート)(AES)、ポリ(アクリルニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン)(ASA)、ポリエステル系、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルクロライド(浸透気化C)、ポリビニルジクロライド(浸透気化DC)、ナイロン6(N6)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルフォン(PES)などである。単独または混合のエラストマーを使用してもよい。好適なエラストマーは熱硬化性のもので、スチレン−ブタジエン、ポリブタジエン(BR)、エチレン−プロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン(NBR)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、シリコーン、フルオロシリコーン、ウレタン系、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ポリノルボレン(PNR)、クロロブチル(CIIR)やブロモブチル(BIIR)を含むブチルゴム(IIR)などがある。これらを混合した多孔質材は、焼成により混合したものも含め、有孔率、可撓性および機械的強度においては主として非PTFEまたは他の非フッ素系樹脂によりさまざまな値を示し、浸水耐圧の面では、焼成の過程でポア表面に移動しやすい性質のため主としてフッ素系樹脂により決定される。有孔率、ポアサイズおよび厚さについては上記のような数値が好ましい。混合基材は市販のものを購入してもよく、さまざまな技術によって製造してもよい。Wolbromの米国特許5,693,273には二つ以上の高分子樹脂からなる高有孔率多孔質プラスチックシートの同時焼成法の詳細が開示されており、Takiguchiらの米国特許5,804,074には二つ以上の高分子樹脂を型に入れて焼成しフィルター状とするプラスチックフィルターの製法が詳述されている。これら双方の特許を引用によりその全体をここに一体化するものである。
【0026】
浸透気化冷却
好適な実施の形態を通して、浸透気化基材表面に液体を供給するのに機械式ポンプを用いたり、冷却効率を高めるために真空に依存する必要のない、容器を簡便に浸透気化により冷却するシステムを以下に示す。これを実現する方法として容器の一部、好ましくは容器のハウジングを浸透気化基材を用いて形成するもので、該基材は容器の全表面積に対し約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%および90%などの場合を含め約5〜90%を占めるのが好ましい。液体内容物は、容器内にある水や、固体の水溶液などの液体が気化する際の潜熱によって液体と周囲の基材の界面で直接冷却されるのが好ましい。別の実施の形態では、浸透気化スリーブまたはハウジングが、それらと接触している飲料容器などの有形物を冷却するのに用いられる。液体から発生した蒸気は周囲の大気に放散されるか、基材を介して吸収剤へと向かう。ほとんどの容器の場合、自然に起こる対流および液体内の熱伝導が、容器以内の液体の冷却効果を実現する熱伝導の大部分を占めている。容器の寸法その他の属性によって、冷却効果を容器全体にわたって実質的に均一にすることができる。
【0027】
浸透気化容器またはスリーブ内部の液体が冷却液として機能する。液体量の減少率が低いことは好適である。たとえば、ある実施の形態では、液体量の減少は外部に相当な空気の循環があった場合でも、24時間でおよそ15%であった。水は気化潜熱が高いため(華氏75度で583カロリー/g)、気化による水の減少で得られるのと同じ冷却効果を得るには、たとえば氷であれば重量にして約7倍が必要となる。浸透気化冷却に加えて多孔質材が、飲料からの炭酸ガスの発散やそれ自身の減少によって起こる容器内の気圧低下を通気によって補償するという更なる利点を提供する。
【0028】
ここで図を参照すると、図1(A)および(B)には本発明にしたがい形成された通気式浸透気化冷却容器の実施の形態の一つが示されている。容器の壁501はその少なくとも一部が浸透気化基材で構成されている。この蒸気透過基材は容器の全表面積の約5〜100%を占めるよう形成できる。キャップ全体及びハウジング(上部500、壁501および底部502のすべて)を多孔質基材で形成すれば、ほぼ100%が達成できる。ある好適な実施の形態では、浸透気化材の占める表面積は容器の全表面積の約30%を越え、その場合に周囲の温度より低い温度まで内部の液体を有効に冷却しなおかつその温度を維持できる相当量の浸透気化流量が実現されている。
【0029】
図2に示された実施の形態では、二層以上からなる多層構造を採用できる。この実施の形態では3層の多孔質材503、504、505を使用して多層もしくは積層基材を形成している。ある実施の形態では焼成したポリエチレンマクロ多孔質基材505を容器の液体側で拡張PTFEの薄い層504と結合させると疎水性と浸水耐圧が増し、かつ多孔質ポリエチレン単独で得られるのと同様な浸透気化流量と良好な構造安定性が維持されている。さらに、拡張PTFEの層を中心に挟む3番目の層である多孔質ポリエチレン503は容器の内壁に接して耐擦傷性の表面を形成し、食器洗い機による洗浄に耐え柔らかい拡張PTFEの層が損傷するのを有効に防止している。関連する実施の形態では、積層材は3層より多くても少なくてもよく、および/または異なった多孔質材であってもよい。
【0030】
別の実施の形態では、内側の層503は浸透気化基材または積層基材で形成され、中間層504はポア、または蒸気が通過できる空間を有する断熱材で形成され、外側の層505は乾燥剤または吸収剤を含んでいる。
【0031】
基材の好ましい配列は、高い浸水耐圧を有する膜を容器の内側に配置し、多孔質の支持基材を容器外の空気に触れる側に配置するのがよい。好適な実施の形態におけるこれら多孔質材の厚さは、約1/1000インチ(0.025mm)〜1/4インチ(6.4mm)である。多孔質基材を用いると容器の壁が構造的に強固になり、また耐擦傷性および/または構造的一体性が向上する。
【0032】
ある好適な実施の形態では、ポアサイズが小さい(10μm以下)材料の膜または薄い層は、拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)など疎水性の高い物質のグループから選択され、充分な浸透気化流量を有する焼成ポリエチレンなどのより厚く有孔率の高い支持材の間に積層されている。二層しか形成しない場合は、単原子層の表面形成から1/4インチ(6.4mm)またはそれ以上の厚さの発泡断熱材または多孔質複合材に至るまで、厚さの異なる層を用いることができる。分子篩(ゼオライト)や多孔質高分子膜(CSP Technologies、アラバマ州Auburn)などの多孔質セラミック材および活性炭素など有機基材は大気の臭いを防ぎまたは低減させ、浸透気化冷却装置や容器に含まれる液体の汚染を防ぐ機能がある。
【0033】
ある好適な実施の形態では、積層材が5層からなっている。内側から順にePTFE層、多孔質ポリエチレン、ウレタンフォーム断熱材、ゼオライトのようなセラミック材、そしてもっとも外側は薄い無孔質のポリオレフィンまたはポリエステルで包まれている。この容器は湿度の高い環境下で浸透気化冷却効果を維持することができる。液体から発生した蒸気を吸収すると、ゼオライトまたは他の乾燥剤が熱を直接または間接に周囲の大気に伝達し、その間断熱された浸透気化スリーブ内の液体は冷却されている。ゼオライトと無孔質フィルムで構成される外側の二つの層は使い捨てとしても、たとえばオーブンで乾燥させて再利用可能としてもよい。
【0034】
構造中の多孔質基材に直接何らかの表面加工が施されていない限りは、基材または複合材の有孔率は約10〜95%であるのが好ましい。これにより基材の構造が安定し、利用しうる浸透気化表面積が、したがい全体的な容器の冷却率が増大する。基材のポアサイズも、ポアサイズが200nm以下ではクヌードセン拡散が優勢となり、それによって蒸気透過率が大きく下がり気液相転移と冷却ゾーンが基材の空気/蒸気に触れる表面にまで拡大するため、影響がある。ある実施の形態によれば、好適なポアサイズは約0.5〜30μmであり、これはクヌードセン拡散が起こる範囲より大きい。ポアサイズが100μmを超えると浸水耐圧が顕著に低下し、単層のマクロ多孔質剤を使用するのが不適切な場合が出てくる。膜とマクロ多孔質支持材との組み合わせをおこなう場合、ポアサイズの大きいマクロ多孔質支持材を使うことは、単独で使う場合に比べより大きな利点がある。
【0035】
図3I(A)、(B)、図3II(C)、(D)のとおり、リブ508、514を容器の壁の内側および/または外側に形成し、容器の構造的剛性を高め、浸透気化基材507、513の損傷を防止または低減し、および/またはより持ちやすくできる(514)。図3II(C)、(D)は首部512が絞られリブが形成されたスポーツバージョンの容器を示す。
【0036】
図4に示す実施の形態はオープンセル構造の多孔質断熱材の層518を有する。これは容器の外面に付加することができ、それによりシステムからの比較的自由な蒸気拡散が可能となりつつも、周囲の大気からの対流および放射による熱流が内部の容器の壁517を通り液体に影響することは防止されている。この断熱材518の有益な特徴として、構造上の補強材ともなること、容器が持ちやすくなること、また基材517の損傷を防止あるいは低減できることが挙げられる。ここで用いられているような「ひだ付き」形状はリップル状または他の、表面積を増大させる形状を含む。ひだ付き基材には、表面全体がひだ状となっているものも、ひとつ以上の区画にひだが形成され他の部分は平面のままのものも含まれる。
【0037】
図5のごとくひだ付きの膜またはひだ付き多孔質焼成基材520を用いると、浸透気化冷却の率は容器の表面積との直接の関数であるゆえに、浸透気化冷却の効率が向上する。
【0038】
浸透気化容器およびガーメントは浸透気化基材の外面に調節可能な、または可動式のスリーブを備えてもよく、これによって浸透気化基材の一部またはすべてを選択的に覆ったり露出したりすることが可能となる。浸透気化基材の一部を覆うと、浸透気化冷却効果を維持しつつ、蒸気流量を低減させられる。全面的に覆うと、浸透気化は実質的に停止するので、容器またはガーメントの一種のオン・オフスイッチとしても利用できる。
【0039】
たとえば図6(A)、(B)に示すスリーブ524,525は多孔質の露出表面積527と容器の全体的な気化冷却率を低減させる手段として機能し、したがい液体気化率と冷却率を下げることになり、これにより容器の内容物の温度調節がより自在におこなえるようになる。たとえば絶対気圧、相対湿度、および/または大気温度が低いときなどは、冷却効果を少なくするほうが望ましい場合もある。図6(B)のとおり、容器と周囲のスリーブの間の一箇所以上に空隙530が形成されるのが好ましい。この空隙は断熱領域および/または蒸気の自然な上昇対流領域となり、浸透気化冷却効果の維持と容器内の液体529への放射熱の伝達の抑制が可能となる。容器の多孔質基材523の外面に配置されたインナースリーブ524は容器ハウジングの少なくとも上部522と底部526においては、これらの部分が多孔質でない場合は特に、浸透気化基材に接合されているのが好ましい。
【0040】
ある実施の形態では、浸透気化ガーメントまたは容器の一部またはすべてが、水分をその内部に保持するとともに浸透気化により冷却効果を発揮する、浸透気化スポンジで構成されている。ある好適な実施の形態では二層式浸透気化スポンジが用いられ、これは内側に親水性材料を有し、その外側に疎水性の層を接合したものである。この構造では、内側のスポンジには使用前に水や他の気化性の液体を含浸させておき、疎水性多孔質の上層は浸透気化基材の外面において浸透気化する液体の漏洩を著しく抑制または低減することができる。このとき液体は濡れた基材を通り内部の容器の壁の表面まで直接通じる熱伝達経路を形成する。
【0041】
図7はガラス、ボトルおよび容器に使用可能な二層式浸透気化スポンジ533を示す。この構造では、内側のスポンジ層534には水や他の気化性の液体を含浸させておき、疎水性多孔質の上層535は浸透気化基材535の外面において冷却液の漏洩を著しく抑制または低減することができる。このとき液体は濡れた基材を通り内部の容器の壁の表面532まで直接通じる熱伝達経路を形成する。
【0042】
図8は、上記とは別の、水または他の浸透気化液体541を保持する冷却ジャケット542が注入口543から該液体を満たされ、包装された容器ハウジング539の内容物を冷却するのに使用されている構造を示す。ハウジングはひとつ以上の浸透気化基材537の区画を有し、また構造上の補強のためひとつ以上のリブ538が任意に設けられている。包装された中央ハウジング539内部の液体540はこのように封入され、この領域内での液量の損失あるいは炭酸ガスの放散は著しく抑制または低減される。さらに、容器の浸透気化冷却効率は容器内の液体の性質に影響されることはない。ハウジングを取り巻く水または液体541の揮発性、気化熱、イオン強度(張性)、溶質含有量によって決まるのみである。図7のとおり冷却ジャケットは、外側が疎水性浸透気化層535、内側が多孔質保水または吸収層534からなる着脱式スリーブとして形成してもよい。
【0043】
図10は浸透気化冷却される飲料カップであり、図1(A)、(B)、図2、図3I(A)、(B)に示された浸透気化ボトルと同様の機能を有している。カップに飲料が注がれるとすぐ、多孔質基材555が飲料に浸透気化による冷却を起こさせる。カップのハウジングおよび支持リブ556により構造が補強され断熱効果が得られる。
【0044】
533や542のタイプの冷却ジャケットは同じような構造のまま内容物568の温度を大気温度以下に下げかつその温度を維持する食品クーラーとしても使用できる。図11A、図11B、図11Cに示すようにある実施の形態では、バッフル560、565、573がクーラーに取り付けられ、浸透気化基材566を保護し、この貯蔵容器の構造的強度を増すとともに扱いやすいものとしている。クーラーの蓋558、572および底部563、559には注入口および排出口561、576から水や他の気化性の液体567、575を満たすことができる。容器の蓋の内側574と底の内側569は無孔質材で構成するのが好ましい。
【0045】
図12は5ガロンあるいは10ガロンほども入る大容量水タンク579および浸透気化冷却される供給タンク580を備える冷水ディスペンサーを示す。上のタンク579から供給タンク580へ飲料が常に補充されるので、供給タンクを包む浸透気化基材581はひとつ以上の供給バルブ583から注がれる前に飲料を冷却することができる。または、ひとつのバルブを冷却水用、別のバルブを温水用としてもよい。浸透気化冷却をおこなうことにより、冷却用コンプレッサーなど電気的冷却機構を用いる必要が低減、もしくは除去される。供給タンク580のプラスチックハウジング582は浸透気化基材581に対し構造上支持する役目も果たしている。
【0046】
ある実施の形態では、浸透気化容器に一本以上のストラップを設け、人手にて運搬可能としてもよい。容器の運搬の方法は、ストラップを胴体または手の回りにかけたり、バックパックまたはリュックのような形で担いだり、またこれらに限らずどのような形態でもよい。このような技術が応用できる潜在的な市場としては、スポーツ選手のパフォーマンスを高めるための浸透気化冷却式スポーツ飲料供給装置が考えられる。図13は浸透気化冷却水分補給パック585のひとつの実施の形態を示す。このパックは浸透気化基材591を含む本体588を有し、該基材はこの実施の形態では浸透気化の表面積を増大させるためリブが立てられている。パックは排出口587から浸透気化液が満たされ、一本以上のストラップ586により持ち運びが可能となっている。飲用チューブ589はパック内部と流体連通しており、これを設けるのはユーザーが飲用する際の利便のため有益である。浸透気化冷却水分補給パック、およびバックパック型の着用・運搬可能な容器は、少なくとも内袋部分を、業界では周知の市販されている数多くの水分補給パック(たとえばカリフォルニア州PetalumaのCamelBak、カリフォルニア州BerkeleyのHydraPakなど)のいずれかで構成し、ヒートシーリング、接着剤および/または縫合などで浸透気化基材と結合させて形成することができる。
【0047】
ある実施の形態では、水分補給パック585は少なくとも二層の積層材からなり、ひとつは疎水性浸透気化薄膜を含むひだ付きまたはひだ無しの浸透気化層よりなる外部層591、もうひとつは液体バリアとして機能する浸透気化層591を支持する、好ましくは薄い支持層593である。ある種の実施の形態ではより広い用途に応用され、水は重力により、または液体貯蔵部588から吸い出され浸透気化基材591と中間層593の間の空隙592へと落とし込まれて供給される。
【0048】
任意に設けてよい第三の層は、断熱材よりなり、ユーザーと水分補給パックとの間で熱を遮断するため皮膚に直接接触(または衣服を介して皮膚との熱接触)するのが好ましい。この層は平面状でも、ユーザーと水分補給パックの間を空気が通れるよう凹凸のある形状(たとえば溝をつける、ひだをつける、切込みを入れるなど)としてもよい。第三、あるいは第四の任意の層は乾燥剤または吸収剤を備えてもよい。
【0049】
図14は布地のストラップ式ホルダーを任意に備えた浸透気化冷却飲料ポーチ594を示す。ホルダーの材質は布地以外のものでもよい。ポーチを支持できるものであればよく、浸透気化を妨げないものであることが好ましい。このような浸透気化ポーチはたとえば取り付けストラップ600でベルト通しに取り付けたり、ベルトそのものに取り付けることもできる。布地601を用いることにより多孔質ポーチ基材595の浸透気化作用が充分に発揮される。ある好適な実施の形態では、ポーチ594は三つの主要部分からなり、(1)浸透気化基材を含む浸透気化本体595、(2)注入口596、(3)浸透気化冷却飲用チューブ597、602およびバルブ付き吸引口598である。本体595は実質的に全体が、または一部が浸透気化基材で構成される。ある実施の形態では浸透気化冷却飲用チューブ602は外側に疎水性浸透気化層604が設けられ、これは飲料の漏洩を著しく抑制または低減しつつ浸透気化冷却をおこなうもので、また内部液湿潤層605が設けられている。この積層構造602の中心部603に飲料が導入されると、飲料は親水性材料に滲み込んで液体の障壁605が形成され、これによって空気が多孔質基材604を通じて中心部603に入り込むことが実質的に防止される。このチューブ構造602の親水性基材605と疎水性基材604との組み合わせによって、浸透気化冷却貯蔵部594または別の実施の形態の浸透気化作用のない冷却貯蔵部との共用により、冷却された飲料がチューブの内部容積603から直接供給される利点が得られる。602のような装置を簡便に製造するには、疎水性多孔質PTFEチューブの中央をプラズマ処理する方法がある。または、飲用チューブを浸透気化作用のない材料で構成してもよい。
【0050】
ある実施の形態では、浸透気化容器は軽量の、液が満たされた(好ましくは水が満たされた)浸透気化冷却ガーメントの形態をとっており、これは通常のあるいは高い大気温度中で防護服を着用している人の熱ストレスを軽減するための簡便な個人用局地的冷却システムとして機能する。この種の冷却ガーメントは化学的または生物学的防護スーツ、あるいはNomex消防服などのような防護服の一部をなすように構成することができ、またこれらの防護服と併せて着用するようにも構成できる。または、このガーメントを防弾服の下に着用してもよい。
【0051】
好適な実施の形態による冷却ガーメントは、消防士、レスキュー隊員、軍人、(化学的、生物学的)危険物取扱者、あるいは運動中に耐熱をさらに発散させて耐久力を向上させたいスポーツ愛好者など、多くの目的に使用できるが、これらに限定されない。浸透気化ガーメントはまた、ユーザーから放射される赤外線の量を低減することもできる。好適な実施の形態によれば、水または水とエタノールの混合液(好ましくは約5〜15%)を浸透気化冷却用原液として使用した場合、その装置は実質的に無害であり、ユーザーが飲むことのできる浸透気化冷却飲料水のポーチとなるなどの付加機能も得ることができる。冷えた飲料水はまた、防護スーツやその種の服を着ている人、または運動中の人から熱負荷を軽減する働きがあり、特に耐久力が要求される場合に有益である。無害な、および/または飲用可能な冷却液が好ましいが、浸透気化冷却作用のあるものならどんな液体でもよく、たとえばメタノール、イソプロパノール、非飲用水、またその他の液体や溶液でもよい。冷却液は、ガーメント内部で接触する物質と親和性のあるものを選ぶのが好ましい。
【0052】
ある好適な実施の形態では、浸透気化冷却ガーメントはジャケットまたはベストの形状となっている。浸透気化ガーメントは単独で、または他の衣類や衣服たとえば防護スーツなどに組み込んで、または一体に形成して着用してもよい。他の衣服に組み込まれたり一体に形成された場合、浸透気化ガーメントはユーザーにできるだけ近く(熱接触できるよう)なるようもっとも内側に配置するのがよい。浸透気化冷却ガーメントは皮膚と直接接触してもよく、ユーザーが着用している他の衣料と接触していてもよい。ある実施の形態では、浸透気化ガーメントは、衣服のもっとも内側に配置された(ユーザーと直接接触しているか、熱接触状態にある)浸透気化基材の一部または前面を覆う布地または他の材料の層が備えられている。
【0053】
浸透気化ガーメントに関する記述が特定の形状を有するベストまたはジャケットに即してなされたが、本発明はこれらに限定されると解釈すべきではない。ここに述べられた原理は広範な浸透気化冷却ガーメント、たとえばジャケット、帽子、ベルト、ズボン、レギンスなど、また体のひとつ以上の部分を包む構造物たとえば足、腕(またはその一部)、首などに巻くものに応用可能である。
【0054】
図15は好適な実施の形態によるジャケット608のデザインを示す。このジャケットは単独で着用してもよく、またジャケットやベストを化学スーツ、Nomex消防服または防弾チョッキなどの防護服の下着として見えないように着用してもよい。
【0055】
好適な実施の形態では、このジャケットは三層または四層の積層材で構成される。
【0056】
(1)浸透気化による水分または他の液体を吸収する乾燥剤または吸収剤を含む、任意の再生可能または使い捨ての外部層610、
(2)疎水性であることが好ましい浸透気化材を有する、好ましくはひだ付きの浸透気化層611からなる外部層、
(3)液体バリアとして、またある実施の形態では生物学的または化学的に危険性のある物質のバリアとしても働く、浸透気化層のための薄い支持層からなる中間層613。他の用途に用いられるある実施の形態では、水または冷却液は重力により、またはジャケットの肩部に配置されている液体貯蔵部616から吸い出され浸透気化基材と中間層の間の空隙612へと落とし込まれて供給される。
【0057】
(4)皮膚と直接または布地や他の材料を介して接触する内部層615であり、該布地や他の材料はジャケット自体の一部であるか、および/またはユーザーが別途着用するものである。この内部層はヒートシーリングにより形成された、規則的なまたは曲がりくねった領域を有しているのが望ましい。ある実施の形態では上記の2と4だけからなる簡便なジャケットが提供される。
【0058】
冷却液はジャケット上のポート607からジャケット内へ注入される。好適な実施の形態では、内部層と中間層の間のスペース614は空気袋を形成し、ここに吹き口618から空気を吹き込んで膨らませると冷却ジャケット内部の液との断熱の働きをする。エアホース先端の吹き口から空気袋をしぼませると、液体層が中間層と内部層の重なりを介して皮膚と熱接触している状態となり、これによって所望のときに冷却をおこなうことができる。別の実施の形態では、ジャケット内で分離された貯蔵部が中間層と内部断熱層の間に挟まれて配置され、飲料水の冷えた源泉となっている。場合によって、水が内部で跳ね回って無用な、また不快な音を立てないよう、貯蔵部が折りたたみ式の袋を有していてもよい。また他の実施の形態では、ガーメントはユーザーがガーメント内の液体を飲めるよう飲用チューブ617を備えてもよい。
【0059】
外部の乾燥/吸収層を持たない浸透気化ガーメントを防護服や他の衣服の下に着用する場合は、その衣服は浸透気化液が透過できる材質であるか、または浸透気化液が通過できるよう衣服に通気部、開口部が設けられているのが望ましい。
【0060】
ある実施の形態では、浸透気化ガーメントは浸透気化により発生する水分や他の液体を吸収する乾燥剤や吸収剤を含む、再生可能または使い捨ての外部層をさらに有している。水溶性浸透気化液に好適な乾燥剤または吸収剤としては、硫酸アンモニウム、分子篩、ポリアクリル酸などがあるが、これらに限定されない。外部の乾燥/吸収層は使用後廃棄するか、または熱および/または減圧を与えることにより再生してもよい。好適な実施の形態では乾燥/吸収層はそれ自身の重量の3〜4倍に相当する水を吸収する能力を有している。水を吸収するプロセスは吸熱作用であることが、または最小限に発熱作用であることが望ましい。好適な実施の形態では、この層は高い吸収力、構造安定性を備え、および/またはこの層での蒸気の液化による発熱を低減する。当業者には容易に理解できることであるが、乾燥または吸収層は本明細書に開示されたあらゆる浸透気化容器と共用が可能である。この種の浸透気化ガーメント方の衣服とともに、または組み込まれて、または一体に形成されて使用された場合、その衣服には孔も通気部も開口部その他は、所望であれば設けてもよいが、必要はない。関連する実施の形態では、外部の乾燥/吸収層の少なくともひとつの表面は化学的および/または生物学的物質に対し化学的に耐性がありおよび/または実質的に不透過性である物質を含んでおり、ユーザーの安全をさらに高めている。
【0061】
以下、このような構造の熱力学的能力を概観する。多孔質基材を通る水蒸気の平均浸透気化流量を表1の無風状態の華氏75度で4*10−6g*cm2*s−1と仮定し、また水蒸気流量が華氏95度で2倍の8*10−6g*cm2*s−1と仮定する。華氏95度における気化のエンタルピーが2400J/gであるとすると、基材の単位面積あたりのエネルギー分散は1.9*10−2ワット*cm2となる。25ワットのエネルギー分散を実現しようとすれば、水分補給パックの形成には約1500cm2、すなわち1.5平方フィートの基材表面積が必要ということになる。浸透気化冷却力はジャケットの多孔質表面積の直接の関数であるゆえに、ひだ付きの膜またはひだ付きの焼成多孔質基材を用いると浸透気化冷却力は高まる。この率で4時間冷却を続ける場合、このプロセスで消費されるのは約150mlの水である。すなわち0.5ポンドにも達しない程度の水が使われるのみである。このことから、このような水を満たしたジャケットは約3ポンドまたはそれ以下の重量で製造できることが理解できよう。
【0062】
当業者には容易に理解できることであるが、上記のジャケット、ポーチ、バックパックなどの実施の形態で述べたさまざまな構成には互換性があり、またここに開示された他の容器の構成とも互換性がある。
【0063】
ある実施の形態に関わる多層構造の、また多機能型の基材の好適な配列は、浸水耐圧が高い基材表面がガーメントの内側に面しており、その基材の支持層がガーメント外部の空気に露出している状態である。好適な実施の形態におけるこのような多孔質材の厚さは、約1/128インチ(0.2mm)から1/8インチ(3.2mm)の範囲である。ある実施の形態では、薄く疎水性の高い物質を用いて液と基材の界面における高い浸水耐圧と、焼成ポリエチレンのような厚く有孔率の高い支持材の間に積層された拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のような小さなポアサイズとを実現して、大きな浸透気化流量が得られるよう、膜と浸透気化基材が積層された複合材が選択的に用いられる。
【0064】
製造方法
浸透気化容器または浸透気化ガーメントの浸透気化基材部分を製造する方法は数多くあり、たとえばミリ単位以下のサイズのプラスチック粒子を成型用の型で焼成し直接浸透気化壁材とする;ひとつ以上の浸透気化基材をそれら同士、または他の適当なフレームに超音波積層または溶着する;インサート成型、すなわちひとつ以上のシート状または円筒状の多孔質基材が型内に挿入されて熱可塑性ポリマーが挿入物の周囲に射出成型され、多孔質基材部分を有する所望の複合材を形成する;ヒートシーリングで融着する;接着剤を用いて部材を接着する;および/または浸透気化ガーメントまたは容器の一部または全部を結合するため縫製をおこなうなどであるが、これらに限定されない。
【0065】
二つ以上の多孔質基材層を有する多層構造は、機械的、物理的に優れた基材が必要な場合に用いるとよい。たとえば、ポリエチレンの焼成マクロ多孔質基材を容器の液体側で拡張PTFEの薄い層と結合させると疎水性が増し、水の破過耐圧が5psiから30psiに向上し、かつ多孔質ポリエチレン単独で得られるのと同様な浸透気化流量が維持されている。
【0066】
図1(A)、(B)は浸透気化基材からなる壁部501を有する浸透気化容器の好適な実施の形態の構造を示す。壁501はインサート成型、熱または超音波溶着、接着剤接合、または他の適切な方法により、容器の上部500および底部502に結合されている。インサート成型で、基材を容器の他の場所に取り付けてもよい。この例における上部500はネジが形成され、通気式ボトルキャップを取り付けられるようになっている。容器の上部500と底部502は射出成型や真空成型その他適切な方法で製造できる。
【0067】
図3I(A)、(B)は構造上の支持材を設けるのが望ましい薄い浸透気化基材507にリブ508が付けられた構造を示す。リブ508によって容器の壁は構造的強度が増し、手でしっかり握れるよう凹凸が形成されている。リブ508は外側にでも内側にでも、また浸透気化基材のひとつ以上の面に形成することができる。リブ508は浸透気化基材507を挿入するインサート成型方式で射出成型するのが好ましい。または、特に超音波、熱、接着剤などでリブ508を多孔質基材507に圧着するか、多孔質基材507をリブ付き容器ボディ508に圧着してもよい。
【0068】
図3II(C)、(D)はこの容器のスポーツバージョンを示し、これはネック部512で取り付けブラケットにしっかり固定できるようになっている。ボトルの口511はスナップ式の蓋やネジ式の蓋などいろいろな閉止具が取り付けられる。
【0069】
図4は断熱式、疎水性オープンセル発泡層518を示し、オープンセル構造によって水蒸気が通過可能であるが、容器の内容物の熱の対流または放射は抑制されている。表1は断熱基材は液体の損失を低減し、かつ大きな浸透気化冷却効果を維持することを示している。好適な実施の形態では、断熱発泡材518は伸縮性スリーブとしてボトルに着脱可能となっている。
【0070】
浸透気化冷却効果を高めるには、基材にひだを設けることによって、液体を接触する基材の表面積を増大させるとよい。図5には容器内の液体の単位体積あたりの浸透気化基材の表面積を増やすためひだが形成された容器本体520が示されている。この構成により、容器内容物を浸透気化冷却するのに要する時間が短縮される。このような構造の容器はインサート成型を用いるか、または両端を容器の底部521および上部519に対し接着剤または溶融プラスチックを用いたポッティングなどにより製作できる。
【0071】
図6(A)、(B)は基材523の外側に設けられた回転式スリーブ525を示す。アウタースリーブ525がインナースリーブ524に対して回転すると、縦方向スリット527のセットが形成され、この開閉の度合いによって浸透気化基材523の露出程度が可変となり、蒸気の流量を低減しつつ充分な浸透気化冷却効果を維持することができる。回転式でなく、縦方向にスライドするスリーブを設けてスリットの開き方を縦方向に調節する方法をこの構造に取り入れてもよい。インナーおよびアウタースリーブ524、525はプラスチックや金属など水蒸気を通さない実質的に無孔質の材料で作られる。図6(B)は、多孔質基材523とインナー固定スリーブ524との間にわずかな空隙530を維持するための環状スリーブを示している。この空隙530は容器本体の多孔質基材523に対する直接の熱伝導または放射熱伝達を効果的に抑制、低減する遮蔽物として有用である。さらに、この空隙530により蒸気流がこの環状の領域527から流出できる。スリーブ524、525は図5に示されたようなひだ付き浸透気化表面520の上に設けてもよい。この場合でも、スリーブ524、525は容器の外側にスライドさせるように取り付けてもよい。インナースリーブ524は所定の位置に取り付けるか圧着してもよい。
【0072】
図7、図8は浸透気化容器にジャケットを取り付けた実施形態を示す。図7の冷却ジャケットは、外側の疎水性浸透気化層535と内側の多孔質液体保持または吸収層534からなる着脱式スリーブで構成してもよい。図8の実施の形態では、外側のジャケット542が特別のポート543から水または他の揮発性液体541が満たされ、内部の飲料容器540の内容物は大気より低い温度に保たれる。このような構造の利点の一つは、炭酸飲料をこの容器に入れた場合に、炭酸が抜けないことである。さらに、電解質や糖分が高く浸透気化しにくい性質の液体を内部の収納室540に入れ、蒸留水または他の浸透気化しやすい液体541を外側の収納室に入れて適切な温度低下を起こすことができる。
【0073】
図7、図8に示されたスポンジ533やジャケット状浸透気化材542の実施の形態は、アルコールのような有機溶液を保持する疎油性浸透気化基材に用いるものである。この構成では外側のジャケット533、542はエタノールで満たされ、浸透気化冷却液534、541として機能する。
【0074】
図10は浸透気化冷却飲用カップを示し、これは図1(A)、(B)、図2、図3I(A)、(B)に示された浸透気化ボトルと同様の機能を有している。組み立て方法は、平面状の浸透気化基材を周囲に巻くか、または基材555を円筒状にしてカップ本体556に押し込みその後接着剤、ポッティング、熱溶着または超音波溶着などで接合できる。基材をボトルフレームや壁に直接接合するにはインサート成型を用いてもよい。
【0075】
図11A、図11B、図11Cは飲料や食料568を貯蔵する冷却容器の構造を示し、これに基づき製法を説明する。この構成では、蓋558、クーラー壁559、564、または蓋572および壁559、564の両方が液体を満たした浸透気化ジャケット566、578を含んでいる。この容器はひとつ以上の断熱層をさらに含んでもよい。この容器は飲食物568を大気より低い温度で一度に数日間保存するのに使用できる。ある実施の形態では、クーラー本体563の組み立ては平面状の浸透気化基材566をケース体564の内側に配し、接着剤、ポッティング、熱溶着または超音波溶着などで接合できる。または、基材566をボトルフレームや壁564に直接接合するにはインサート成型を用いてもよい。
【0076】
熱ストレス軽減のための解決法のひとつは、浸透気化の概念に基づくものである。ここに開示したような浸透気化冷却メカニズムを応用した冷却水分補給パックや他の冷却ガーメントは軍隊の個人用冷却システムとしてのみならず、競技中に体からより多くの熱を発散して持久力を向上させたいスポーツ愛好者にも適用が可能である。水または水とエタノールの混合液(好ましくは約5〜15%)を浸透気化冷却用原液として使用した場合、その装置は実質的に無害であり、ユーザーが飲むことのできる浸透気化冷却飲料水のポーチとなるなどの付加機能も得ることができる。冷えた飲料水はまた、防護スーツやその種の服を着ている人の熱負荷を軽減する働きがある。
【0077】
ここに記載された浸透気化水分補給パックは既にその構造を述べた浸透気化飲料冷却ボトルと同様の構成を採用することができる。浸透気化冷却(2400J/g)に対する融解熱(335J/g)および液体を室温(華氏77度)まで上げる熱量(105J/g)による冷却効率の比較により、浸透気化冷却のほうが氷を使うよりも体積ベースで5倍も効率的であることが判明している。表1、2、3では30〜40%の相対湿度の室温下でさまざまな風速や基材構成などの条件により浸透気化冷却ボトルにどのような変化があったかを示すデータが記載されている。
【0078】
図14は布地のストラップ式ホルダー599を任意に備えた浸透気化冷却飲料ポーチ594のひとつの実施の形態を示す。ある実施の形態では、ストラップは布地やそれ以外のホルダーを用いず本体595に直接取り付けられる。このような浸透気化ポーチはたとえば取り付けストラップ600または類似の取り付け具で肩にかけたりベルト通しや体の他の部分に取り付けたり、ユーザーのベルトの横に取り付けることもできる。ある実施の形態では、布地601はナイロンの編地から縫製され、ストラップ600はベルクロ、ナイロンとベルクロの組み合わせ、または他の天然もしくは合成材料で構成されている。ポーチのいろいろな部分と多孔質基材595とは、ヒートシーリング、熱溶着、超音波溶着、接着剤積層、その他他の容器に関して述べたような方法で接合することができる。ある実施の形態では浸透気化冷却飲用チューブ602は外側に疎水性浸透気化層604が設けられ、これは飲料の漏洩を著しく抑制または低減しつつ浸透気化冷却をおこなうものであり、また内部液湿潤層605が設けられている。この積層構造602の中心部603に飲料が導入されると、飲料は親水性材料に滲み込んで液体の障壁605が形成され、これによって空気が多孔質基材604を通じて中心部603に入り込むことが実質的に防止される。親水性基材605にしみ込んだ液体は外部疎水性基材604を介して自由に浸透気化できる。このチューブ構造602の親水性基材605と疎水性基材604との組み合わせによって、冷却された飲料がチューブの内部容積603から直接供給される利点が得られる。既に述べたとおり、このチューブは浸透気化作用のあるポーチとないポーチのいずれに使用してもよく、また浸透気化作用のある他の容器また無い容器のいずれにも使用できる。浸透気化チューブ602を製造するには、疎水性多孔質PTFEチューブの中央をプラズマ処理してチューブの内部605を親水化する方法がある。
【0079】
浸透気化冷却装置の作用
浸透気化冷却装置の好適な構成は簡便なものであり、通常の環境下で容器の中の液体や固体を冷却、またその低音を維持することができ、それには機械式ポンプ作業のような重量や運搬上の制限も無く、浸透気化冷却の効率を上げるために外部の真空機構を共用する必要もない。ある好適な実施の形態では、図1(A)のようなタイプの容器の半径寸法は中身の液体が自然対流により対流混合を起こすのに充分な大きさを持たせてある。その理由は、時として液体の熱伝導のみでは容器全体にわたって均一な温度分布を有効に維持するには不足することがあるからである。容器の内壁部分の液体が冷却されると、中心部に比べ内壁部分の液体の密度が下がる。この密度の差によって、冷たいほうの液体が容器の内壁に沿って下方へ流れ、底部に達した後は強制対流に対して自然対流と呼ばれる現象によって容器の中央部を循環するように上昇する。冷却率が充分に高くなると、対流の渦は容器の側方から離れていき、混合率が上昇する。
【0080】
このような現象とその発現は計算された大きさを持たない変数、すなわちグラショフ数(重力場における液体の浮力の変数)とプラントル数(液体の熱的・容量的性質を示す変数)との組み合わせによって予見することができる。これら二つの変数の組み合わせから、ヌセルト数(全体的な熱伝達の変数)の計算が導かれる。浸透気化容器内の自然対流は同じ液体中の熱伝導に代わり浮揚する液体を解しての対流熱伝達を促すことにより冷却効率と装置の冷却率を高める。
【0081】
表1は相対湿度30〜41%、異なった大気流速のもとでの水に対する終止点における浸透気化冷却データと多孔質断熱基材の効果を示すものである。表2および表3は暗所(表2)および直射日光下(表3)での異なった相対湿度下の水に対する終止点浸透気化冷却データを示している。浸透気化基材はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)または焼成UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)である。X−7744、X−6919および402HPとあるのはすべてUHMWPEで、有孔率、ポアサイズおよび厚さが表のとおり異なっている。
【表1】
【表2】
【表3】
【0082】
表1は相対湿度30%で異なった大気流速のもとでの水に対する終止点における浸透気化冷却データと、1/16インチオープンセル多孔質ウレタン断熱基材の効果を示すものである。表2および表3は暗所および直射日光下での異なった相対湿度下の水に対する終止点浸透気化冷却データを示している。三つの表すべてにおいて、浸透気化基材はPTFEまたは焼成UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)である。
【0083】
外部の相対湿度が下がった場合、また容器が直射日光下に置かれた場合は、容器の冷却効率の更なる上昇が見られるかもしれない。外部湿度が下がると、蒸気濃度勾配が上昇し、外部から加えられた熱は液体の温度と蒸気の圧力を上昇させ、それにより浸透気化流量の上昇が起こる。周囲の大気の条件や容器の形状や材質の選択によっては、このプロセスは大気温度より華氏22度低い容器内温度を維持することができる。(表3参照。)700mlの水がこの冷却温度に達するまでの時間は、図9に示すように、さまざまな浸透気化基材、またそれらの組み合わせに対しおよそ2時間であった。
【0084】
浸透気化冷却容器の好適な実施の形態のひとつとして、約0.025mm(0.001インチ)から10mm(約0.394インチ)の厚さを持つ浸透気化層を有する単独または結合された多孔質基材がある。さらに、浸透気化プロセスの効率を向上させるため、基材は熱伝導率が最小限である性質を持つことが好ましい。基材は実質的に蒸気の拡散を妨げないことが好ましく、それにはある実施の形態のようにポアサイズは約100nmより大きいことが望ましい。基材の好ましい表面有孔率は約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%および85%などを含め約15%〜90%の範囲である。過フッ化スチロフォーム、拡張多孔質基材、または中空溶融粒子からなるオープンセル多孔質基材などの熱伝導率の低い多孔質基材は、周囲の環境から容器内への好ましくない熱伝達を効果的に抑制または低減する働きがある。
【0085】
以上説明したさまざまな方法、技術は本発明を実現する多数の方法を示している。ただし、記述されたあらゆる目的や利点が個々の実施の形態のすべてにおいて実現されるとは限らないのは当然である。したがい、当業者であれば、たとえばここに開示または示唆された目的や利点のいくつかを必ずしも達成することなく、ここに開示された他の特定の一つまたは複数の利点をさらに高めるために上記の方法を実施し得ることが理解されよう。
【0086】
さらに、当業者であれば異なる実施の形態のさまざまな特徴が互いに交換可能であることも理解できよう。同様に、当業者は上記の特徴や工程、ならびに個々の特徴や工程の周知の均等物を併用または適用し、ここに記述した原則どおりの方法を実行することが可能であろう。
【0087】
本発明をある実施の形態や実施例に即して説明したが、本発明は具体的に説明した実施の形態のみならず、他の代替的な実施の形態および/または使用法、またそれらの明らかな改変物や均等物をも含むことは、当業者の理解するところである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(A)は略平面状の多孔質基材が円筒形の本体の周囲に巻かれているか圧着されたボトルを示す斜視図、(B)は同分解斜視図。
【図2】ひとつの実施の形態による、二つのマクロ多孔質相の間に間挿された薄い膜を有する多層構造を示す部分分解図。
【図3I】(A)は補強リブにより多孔質基材の剛性を増した実施の形態を示す斜視図、(B)は同部分断面図。
【図3II】(C)は補強リブにより多孔質基材の剛性を増した実施の形態を示す斜視図、(D)は同部分断面図。
【図4】外部多孔質断熱材を有する容器を示す斜視図。このスリーブは中のボトル表面の放射熱を抑制しつつ、浸透気化流動と潜熱低減が可能である。
【図5】容器の冷却のための有効表面積を増大させるためひだを形成した基材を有する容器の実施の形態を示す斜視図。表面積の増大により容器の冷却時間が短縮できる。
【図6】(A)は浸透気化流動と容器内の液体減少を制限する調節可能なスリーブを備えた容器の実施の形態を示す斜視図、(B)は同部分断面図。このスリーブはボトルの内表面の直接放射による温度上昇をも抑制し、かつ浸透気化流動と潜熱減少を可能とするものであるのが好ましい。
【図7】容器と共用可能なスポンジまたはスポンジ状の物質を含む二層式浸透気化スリーブを示す断面図。
【図8】炭酸飲料などの液体を収納する中央ハウジングに使用する浸透気化冷却ジャケットの別の実施の形態を示す部分断面図。
【図9】さまざまな多孔質基材を用いた浸透気化冷却平衡について時間と冷却度の関係を表すグラフ。
【図10】浸透気化冷却される飲用カップのひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図11A】浸透気化材の本体と浸透気化材の蓋とを有する浸透気化冷却式貯蔵容器(すなわちクーラー)のひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図11B】浸透気化材の本体と浸透気化材の蓋とを有する浸透気化冷却式貯蔵容器(すなわちクーラー)のひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図11C】浸透気化材の本体と浸透気化材の蓋とを有する浸透気化冷却式貯蔵容器(すなわちクーラー)のひとつの実施の形態を示す斜視図。
【図12】浸透気化材を含む、好適な液体供給タンクを示す側面図。
【図13】液体を満たした、ひだ付き浸透気化冷却タンクを備えたバックパックのひとつの実施の形態を示す側面図。
【図14】ホルダーに多孔質布地ストラップを任意に装着した浸透気化冷却飲料ポーチを示す側面図。さらに、図示のポーチまたは他の容器と接合して瞬間冷却飲用または供給に使用できる、内部湿潤化可能な浸透気化冷却チューブも示されている。
【図15】ひとつの実施の形態による浸透気化冷却ジャケットを示す側面図。 これらの図面は好適な実施の形態を示すものであるが、ある実施の形態については単に例示または代表的な形態を示すに過ぎない。そのためいくつかの図面は、本発明のいずれの実施の形態にも含む必要はないが任意に設けることも可能な特徴を含んでおり、図示された容器や閉止具の形状、種類、あるいは特定の配置は本発明をそのように限定するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性多孔質材を含む外部層を有するジャケット本体と、
前記外部層と重なっておりかつ前記外部層と流体連通する内部層とを有し、該内部層は揮発性液体を保持することが可能であり、
前記ジャケット本体は前記内部層が容器の少なくとも一部と接触できる形状をなしていることを特徴とする、容器冷却用ジャケット。
【請求項2】
前記内部層はスポンジ状の材料よりなることを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項3】
前記内部層はひとつ以上の空洞を有することを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項4】
前記内部層は、該内部層の再充填および密封のため密封可能な開口部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項5】
前記ジャケット本体は略円筒状であることを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項6】
前記内部層と前記外部層の間に中間層をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項7】
疎水性浸透気化層を含む浸透気化材を有する外部層と、
内部層とを有し、
前記外部層は冷却液塊と流体連通し、
前記内部層は該ガーメント着用者と熱接触状態にあることを特徴とする、冷却ガーメント。
【請求項8】
前記浸透気化層を支持する薄い液体バリア支持層よりなる中間層をさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項9】
一体の衣服または防護スーツに組み入れられまたは一体に形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項10】
該ガーメントの着用者が冷却液を経口消費できるよう、前記冷却液塊と流体連通するチューブをさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項11】
浸透気化により発生した水分または他の液体を吸収する乾燥剤または吸収剤を含む再生可能な外部層をさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項12】
前記外部層は浸透気化のための表面積を増大させるためひだを有することを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項13】
前記内部層はヒートシーリングにより形成された、規則的なまたは曲がりくねった領域を有することを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項14】
外部浸透気化層を含む細長い中空の管状構造を有し、前記外部浸透気化層は親水性物質を含む多孔質内部層と重なる疎水性物質を含み、前記内部層は液体が通過できる内腔を形成していることを特徴とする、浸透気化冷却チューブまたはストロー。
【請求項15】
使用中は液体が前記多孔質内部層に滲入し液体の障壁を形成し、もって前記外部層を介して前記管状構造に入る空気の量を低減することを特徴とする、請求項14に記載のチューブ。
【請求項16】
前記管状構造は該チューブの内表面が親水性である疎水性多孔質チューブからなることを特徴とする、請求項14に記載のチューブ。
【請求項17】
前記容器本体の周囲またはひとつの面に、浸透気化により発生した水分または他の液体を吸収する乾燥剤または吸収剤を含む再生可能な外部層としてのスリーブを配置可能にしたことを特徴とする請求項1の浸透気化冷却容器。
【請求項1】
疎水性多孔質材を含む外部層を有するジャケット本体と、
前記外部層と重なっておりかつ前記外部層と流体連通する内部層とを有し、該内部層は揮発性液体を保持することが可能であり、
前記ジャケット本体は前記内部層が容器の少なくとも一部と接触できる形状をなしていることを特徴とする、容器冷却用ジャケット。
【請求項2】
前記内部層はスポンジ状の材料よりなることを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項3】
前記内部層はひとつ以上の空洞を有することを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項4】
前記内部層は、該内部層の再充填および密封のため密封可能な開口部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項5】
前記ジャケット本体は略円筒状であることを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項6】
前記内部層と前記外部層の間に中間層をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の冷却ジャケット。
【請求項7】
疎水性浸透気化層を含む浸透気化材を有する外部層と、
内部層とを有し、
前記外部層は冷却液塊と流体連通し、
前記内部層は該ガーメント着用者と熱接触状態にあることを特徴とする、冷却ガーメント。
【請求項8】
前記浸透気化層を支持する薄い液体バリア支持層よりなる中間層をさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項9】
一体の衣服または防護スーツに組み入れられまたは一体に形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項10】
該ガーメントの着用者が冷却液を経口消費できるよう、前記冷却液塊と流体連通するチューブをさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項11】
浸透気化により発生した水分または他の液体を吸収する乾燥剤または吸収剤を含む再生可能な外部層をさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項12】
前記外部層は浸透気化のための表面積を増大させるためひだを有することを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項13】
前記内部層はヒートシーリングにより形成された、規則的なまたは曲がりくねった領域を有することを特徴とする、請求項7に記載の冷却ガーメント。
【請求項14】
外部浸透気化層を含む細長い中空の管状構造を有し、前記外部浸透気化層は親水性物質を含む多孔質内部層と重なる疎水性物質を含み、前記内部層は液体が通過できる内腔を形成していることを特徴とする、浸透気化冷却チューブまたはストロー。
【請求項15】
使用中は液体が前記多孔質内部層に滲入し液体の障壁を形成し、もって前記外部層を介して前記管状構造に入る空気の量を低減することを特徴とする、請求項14に記載のチューブ。
【請求項16】
前記管状構造は該チューブの内表面が親水性である疎水性多孔質チューブからなることを特徴とする、請求項14に記載のチューブ。
【請求項17】
前記容器本体の周囲またはひとつの面に、浸透気化により発生した水分または他の液体を吸収する乾燥剤または吸収剤を含む再生可能な外部層としてのスリーブを配置可能にしたことを特徴とする請求項1の浸透気化冷却容器。
【図1】
【図2】
【図3I】
【図3II】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3I】
【図3II】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−198728(P2007−198728A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29510(P2007−29510)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【分割の表示】特願2004−509324(P2004−509324)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(504442492)アドバンスド ポーラス テクノロジーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【分割の表示】特願2004−509324(P2004−509324)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(504442492)アドバンスド ポーラス テクノロジーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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