説明

冷却又は加温用シート及び当該シートを用いた枕

【課題】 含水ゲル層とその周囲に位置する被覆層とを具備するシート状物であって、被複層の第一の面と第二の面との熱伝導性が異なる冷却又は加温用シート及び当該シートを用いた枕の提供。
【解決手段】 繊維層a、水蒸気バリア性シート層a、繊維層b、含水ゲル層、繊維層c、水蒸気バリア性シート層b及び繊維層dをこの順で具備し、含水ゲル層は露出していない冷却又は加温用シートであって、含水ゲル層が、特定の測定条件で測定して10乃至5,000gのゼリー強度を有し、水蒸気バリア性シート層a及びbは、各々、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)における透湿度が10g/m・24時間以下であり、繊維層a、水蒸気バリア性シート層a及び繊維層bを備える第一の面の熱伝導性と、繊維層c、水蒸気バリア性シート層b及び繊維層dを備える第二の面の熱伝導性とが、少なくとも1.0W/25cm・20℃異なるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や動物等の対象を冷却又は加温するために使用することができる冷却又は加温用シートと、当該シートを用いた枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸水性ポリマーと水をその主成分とするゲルが内包された、保冷や保温を目的とする各種製品が知られている。
【0003】
例えば本発明者は、特許文献1において、繊維層、非通気性シート層、含水ゲル層及び非通気性シート層をこの順で具備し、含水ゲル層は露出していない冷却又は加温用シートを提案した。
【0004】
特許文献2には、保温包装体であって、発熱のための材料が収納されてなるその袋体が、熱伝導率及び/又は触感が互いに異なる2枚のシート材で形成されてなるものが開示されている。このように構成した理由は、使用者が、温熱感や肌触りを選択することができるようにするためである。
【0005】
また、特許文献3には、発熱材料が充填されてなる保温シートであって、発熱材料が充填されてなる袋体の一方の面(第1シート)に対し、他方の面(第2シート)は、第1シートよりも低い熱伝導性を有するシートを用いてなるものが開示されている。このように構成した理由は、発熱材料から放散する熱が、主に第1シートを通じて上方に導かれるようにするためである。
【0006】
更に、特許文献4には、凹部が形成された枕であって、その凹部にはゲル状物が充填されてなる袋状体が配置されたものが開示されている。そして、特許文献5には、凹部が形成された枕であって、その凹部には、ポリプロピレン製のパイプ、ヒノキチップ及びポリエチレン製のパイプが収納袋に充填されてなる芯体が着脱可能に収容されているものが開示されている。
【0007】
【特許文献1】PCT/JP2007/51626
【特許文献2】特開2001−258922
【特許文献3】実用新案登録第3048066号
【特許文献4】特開平7−163448
【特許文献5】特開平9−140534
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された冷却又は加温用シートを使用した場合、使用者により、冷えすぎる又は冷え方が足りない、熱すぎる又は温まらないというように、感触が異なることが判明した。このような問題の解決手段の一つとして、冷却又は加温用シートの表面と裏面とで、熱伝導性を変えることが考えられた。ここで、特許文献2及び特許文献3には、発熱材料が充填されてなる袋体の2枚のシートとして、熱伝導率又は熱伝導性の異なるものを使用する旨の記載があるが、特許文献2には、具体的な熱伝導率の数値に関する記載はなく、また、特許文献3には、アルミニウムや銅といった金属の熱伝導性が記載されているのみである。
【0009】
冷却又は加温用シートを、主として冷却を目的として、枕の一部として使用することも考えられる。特許文献4及び5には、凹部が形成された枕であって、その凹部にはゲル状物が充填されてなる袋状体が配置されたもの(特許文献4)、その凹部には、ポリプロピレン製のパイプ、ヒノキチップ及びポリエチレン製のパイプが収納袋に充填されてなる芯体が着脱可能に収容されているもの(特許文献5)が開示されている。しかし、特許文献4及び5には、凹部に収納される袋状体等の袋を構成する材料の熱伝導性については、記載も示唆もない。
【0010】
本発明の目的は、使用者により感触が異なることに由来する冷えすぎ等の問題を解決できる、その表面と裏面とで熱伝導性が異なる冷却又は加温用シートを提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、冷却の程度を好みや用途に応じて変更することが可能な枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討し、下記の本発明を完成させた。
【0013】
即ち、第一の発明は、繊維層a、水蒸気バリア性シート層a、繊維層b、含水ゲル層、繊維層c、水蒸気バリア性シート層b及び繊維層dをこの順で具備し、含水ゲル層は露出していない冷却又は加温用シートであって、含水ゲル層が、下記の条件で測定して10乃至5,000gのゼリー強度を有し、水蒸気バリア性シート層a及びbは、各々、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)における透湿度が10g/m・24時間以下であり、繊維層a、水蒸気バリア性シート層a及び繊維層bを備える第一の面の熱伝導性と、繊維層c、水蒸気バリア性シート層b及び繊維層dを備える第二の面の熱伝導性とが、以下の条件及び方法で測定して少なくとも1.0W/25cm・20℃異なることを特徴とする冷却又は加温用シートに関する:
(ゼリー強度測定条件)
測定器: 圧縮型物性測定器
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
圧縮形状及び面積: 直径30mmの円、7.065cm
圧縮量(変位量): 2mm
圧縮速度: 1mm/秒
測定試料の大きさ: 20cm×30cm×6mm(厚さ)
(熱伝導性の測定条件及び方法)
測定器: 熱物性測定装置
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
測定方法: 恒温水槽から水循環され、20℃に維持されるように設定された熱板(5cm×5cm)上に、同寸法の試料片を置き、その上に同寸法で40℃の熱板(6g/cm)を重ね、試料片を通して伝わる熱量を40℃の熱板の温度を維持する熱量として測定し、試料片の熱伝導性とする。
【0014】
上記冷却又は加温用シートには、第一の面の熱伝導性と第二の面の熱伝導性との相違が、繊維層bと繊維層cとの熱伝導性の相違によって実現されているものが包含される。
【0015】
繊維層aと繊維層dの各々には、トリアゾール系防黴剤、ピリチオン系防黴剤、ベンズイミダゾール系防黴剤、ベンズチアゾール系防黴剤、イソチアゾリン系防黴剤、及びチアベンダゾール系防黴剤からなる群から選択される1種以上の防黴剤が、少なくともその両面に付着されており、その量は、0.1乃至40g/mであることが好ましい。
【0016】
上記冷却又は加温用シートには、含水ゲル層のゼリー強度が10乃至3,000gであるものが包含される。
【0017】
また、ゼリー強度が10乃至3,000gである本発明の冷却又は加温用シートの含水ゲルは、ポリアクリル酸類の架橋物を含有し、含水ゲル全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は1乃至10重量%であり、架橋剤の量は0.01乃至0.5重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.2重量%であり、水の量は30乃至95重量%である組成物から調製されたものであることが好ましい。
【0018】
第二の発明は、枕であって、その中央部に凹部又は孔を有し、その凹部又は孔には、請求項1乃至5のいずれかに記載の冷却又は加温用シートが着脱自在に収納されてなることを特徴とする枕に関する。
【0019】
前記凹部又は孔には、さらに、その内部に植物素材のチップ又は合成樹脂素材のチップ又はパイプが充填されてなる袋体が、前記冷却又は加温用シートに重ねあわされて着脱自在に収納されてなるものも、本発明の枕に包含される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷却又は加温用シートは、事前に冷却しなくても冷却効果を示す。しかし、冷蔵庫や冷凍庫で冷却して用いることもできる。このようなシートを用いることにより、適度な冷却効果が得られるので、例えば夏季に、快い就寝が実現される。
【0021】
また、本発明の冷却又は加温用シートは、含水ゲル層が水蒸気バリア性シート層a及びbをその構成要素として含む袋体内に配置されているため、含水ゲル中の水分の揮散がないか又は非常に少なく、ゲルが乾燥によって硬化し難いため、耐久性に優れる。
【0022】
本発明の冷却又は加温用シートは、表面と裏面とが異なる熱伝導性を示すため、使用者が表面と裏面とを使い分けることにより、好みに応じた冷却、加温を達成できる。また、季節や用途に応じた使い分けもできる。
【0023】
本発明の冷却又は加温用シートを電気毛布と共に用いると、電気毛布の使用(即ち通電)時間を短縮することができ、よって、省エネルギーに寄与する。また、本発明の冷却又は加温用シートにおいては、含水ゲル層のゲル自体が電磁波を遮蔽する機能を有しているが、更に、含水ゲル層が電磁波遮蔽性を有する物質を含有していたり、水蒸気バリア性シート層a及び/又はbが、金属系蒸着層を外側に有するポリマーシートからなる態様の場合には、より高い電磁波遮蔽性能を示すので、電磁波過敏症の人でも、本発明の冷却又は加温用シートと併用することにより、電気毛布を使用することが可能となる。
【0024】
本発明により、低反発性を示す、換言すれば、体圧分散が実現される、冷却又は加温用シートが提供される。このような本発明の冷却又は加温用シートを用いると、低反発性で体圧分散がなされるために、人体疲労が軽減され、快適に過ごすことができる。
【0025】
本発明の冷却又は加温用シートの中、その最外層である繊維層が特定の防黴剤で処理されているものは、結露や水蒸気バリア性シート層を通って外部に出てくる水蒸気が原因の黴の発生がない。また、前記特定の防黴剤は、皮膚への刺激が小さい。
【0026】
本発明の枕は、冷却又は加温用シートをそのまま使用したり、冷蔵庫で冷却して使用したり、冷凍庫で凍らせて使用するというように、また、凹部を有する枕の場合には、冷却又は加温用シートを内包するような形態で(通常の枕の使用と比べると、上下を変えて)使用することにより、冷却の程度を変更、調節することができる。
【0027】
本発明の枕の中、植物素材のチップ又は合成樹脂素材のチップ又はパイプが充填されてなる袋体も備えるものは、この袋体を冷却又は加温用シート上に載せて使用することで、首筋の指圧効果も発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明を、その実施のための最良の形態に基づいて説明する。
【0029】
本発明の冷却又は加温用シートには、請求項1に記載された要件を充足するものすべてが包含されるが、その具体例を挙げると、額冷却用シート、保冷枕、保冷枕用シート、枕被覆用シート、敷パッド、座布団被覆用シート、椅子の背もたれ用シート、靴用シート、カーペット、マット、電気カーペット用被覆シート、電気毛布用被覆シート、ペット用マット、及び足裏用加温シート等である。
【0030】
次に、本発明の冷却又は加温用シートの物理的構造を、当該シートの例を示す図1を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本発明の冷却又は加温用シートの一例を示す断面図である。
【0032】
冷却又は加温用シート300は、上から下に向かって順に、繊維層aである織布1、水蒸気バリア性シート層aであるポリマーシート3、繊維層bである不織布13、含水ゲル5、繊維層cである不織布15、水蒸気バリア性シート層bであるポリマーシート7及び繊維層dである織布9で構成されている。織布1とポリマーシート3と不織布13とは、全面的に接着されており、また、不織布15とポリマーシート7と織布9も、全面的に接着されている。不織布13と不織布15とが、袋体30を形成している。この冷却又は加温用シート300の四周は、糸2で縫製されている。
【0033】
なお、本明細書において、「ポリマーシート」という用語は、「ポリマーシート」のみならず、「ポリマーフィルム」をも包含する意味で使用されている。
【0034】
本発明の冷却又は加温用シートには、繊維層b及びcが存在するために、被冷却又は加熱体(例えばヒトの皮膚)への熱伝導が穏やかである。また、含水ゲル層が繊維層b及びcに接着し、ずれ難い。
【0035】
水蒸気バリア性シート層aやbは、単層のポリマーシートに限定されない。異なる二種以上のポリマーシートの積層体であってもよい。また、図2に示すように、二層のポリマーシート61,63(これらの材料は、同じであっても異なっていてもよい)と、それらの間に位置する金属箔65からなる積層体60であってもよい。このような構成の水蒸気バリア性シート層は、その透湿度(JIS Z0208;カップ法;40℃;90%RH)がほぼ0g/m・24時間である。
【0036】
さらに、水蒸気バリア性シート層aやbは、図3に示すように、ポリマーシート71の一方の面に、金属系又は無機物蒸着層75を有する金属系又は無機物蒸着ポリマーシート70であってもよい。このような構成の水蒸気バリア性シート層は、その透湿度(JIS Z0208;カップ法;40℃;90%RH)が、0g/m・24時間にかなり近い。
【0037】
例えば図1に示す例において、ポリマーシート7の代わりに金属系蒸着ポリマーシート70を金属系蒸着層75が外側(織布9に対向する側)に配置されるように用い、そして、製造されたその冷却又は加温用シートの織布1が人体と接するか又は向き合うように、また、冷却又は加温用シートの織布9が電気毛布と対向するような配置で、電気毛布と共に使用すると、電気毛布から発せられる電磁波を、金属系蒸着層75が遮蔽し、電磁波の人体への到達が大きく減衰される。
【0038】
含水ゲルと接触している二層(例えば、図1の冷却又は加温用シート300における不織布13と不織布15)の外周部、即ち四周は、含水ゲル層が露出しないように処理されていればよく、従って、接着剤で接着されていてもよいし、熱等によって融着されていてもよい。また、すべての層の外周部を布等で包んだ上で、縫製したものであってもよい。
【0039】
ポリマーシート3,7の織布1,9や不織布13,15と接触している面は、コロナ処理されていることが好ましい。また、ポリマーシートと織布や不織布とは、ドライ・ラミネーション法、ホット・メルト接着法又は押出しサンドイッチ・ラミネーション法によって接着されていることが好ましい。このような構成であると、ポリマーシートと織布や不織布とが、剥離することなくきちんと接着される。なお、ドライ・ラミネーションでは、ポリマーシートに有機溶剤に溶かした接着剤を塗布し、溶剤を熱風で蒸発させた後、織布や不織布をラミネートする。接着に用いる接着剤は、被着物の材質に応じて、公知のものから選択すればよい。さらに、織布や不織布の一方の面に、ポリエチレン等のポリマーの溶融物を塗工し、乾燥させ、ポリマーシートの層を形成してもよい(インフレーション法)。
【0040】
本発明の冷却又は加温用シートを例えばカーペットやマットとして使用する場合には、使用時にずれないものであることが好ましい。本発明のカーペットやマットは、その自重でずれ難いものではあるが、更にずれ難くするには、外側の一方の側の繊維層(繊維層a又はd)の外側の一部に、滑りにくい素材を貼付するとよい。
【0041】
「一部に滑りにくい素材を貼付する」とは、例えば、織布1の外側に、格子状、交差するバイアス状、多数の点形状、縞模様等の形状で、ゴムを貼付することをいう。
【0042】
続いて、本発明の冷却又は加温用シートを構成する各要素について、それらの例を示しながら、具体的に説明する。
【0043】
本発明の冷却又は加温用シートに用いる繊維層は、例えば、不織布、織布、編物及び紙からなる群から選択される一種以上で構成されている。
【0044】
繊維層が不織布製である場合、その素材は、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ビニロン、ポリエチレン、ウレタン、木綿、セルロース等である。その厚さは、熱伝導性に優れる面については、通常は10g/m乃至100g/m、好ましくは20g/m乃至80g/m、さらに好ましくは30g/m乃至70g/mであり、熱伝導性が小さい面については、通常は40g/m乃至200g/m、好ましくは60g/m乃至180g/m、さらに好ましくは80g/m乃至120g/mである。また、不織布の種類としては、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、スパンニードル不織布、スパンレース不織布等が挙げられ、本発明ではいずれも使用することができる。但し、繊維層b及びcについては、スパンボンド不織布、スパンニードル不織布、スパンレース不織布が好ましく、スパンレース不織布とスパンニードル不織布が更に好ましい。
【0045】
繊維層が織布製である場合、その素材は、例えば、綿、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等である。その厚さは、熱伝導性に優れる面については、通常は30乃至120g/m、好ましくは40g/m乃至100g/m、さらに好ましくは50g/m乃至80g/mであり、熱伝導性が小さい面については、通常は50g/m乃至250g/m、好ましくは60g/m乃至200g/m、さらに好ましくは70g/m乃至150g/mである。繊維層が編物製である場合、その素材は、例えば、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等である。その厚さは、熱伝導性に優れる面については、通常は50乃至150g/m、好ましくは60g/m乃至120g/m、さらに好ましくは70g/m乃至100g/mであり、熱伝導性が小さい面については、通常は80g/m乃至250g/m、好ましくは100g/m乃至200g/m、さらに好ましくは120g/m乃至150g/mである。
【0046】
繊維層a,b,c及びdの中、繊維層a及びdは、織布であることが好ましく、繊維層b及びcは、不織布であることが好ましい。また、繊維層b及びcとして、不織布の種類及び/又は厚さの異なるものを用い、それによって第一の面と第二の面の熱伝導性を異なるものとさせることが好ましい。
【0047】
本発明のシートに用いる水蒸気バリア性シート層は、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)における透湿度が10g/m・24時間以下のものである。水蒸気バリア性シート層は、好ましくは透湿度が8g/m・24時間以下のものであり、より好ましくは透湿度が5g/m・24時間以下のものであり、最も好ましくは透湿度がほぼ0g/m・24時間のものである。
【0048】
JIS Z0208(カップ法)の実施にあたり、水蒸気バリア性シートは、含水ゲルに対向する側を上(外側、塩化カルシウムのない方)とする。これにより、含水ゲルから外部に向かっての水及び/又は水蒸気の揮散量が特定される。
【0049】
水蒸気バリア性シート層の厚さは、シートが上記の透湿度を示し、使用に適する柔軟性を有し、且つ必要な強度を示す限り、特に限定されないが、通常は100μm以下、好ましくは10〜70μm、更に好ましくは20〜50μm、特に好ましくは25〜45μmである。
【0050】
水蒸気バリア性シート層は、上記のような透湿度を有する必要がある。したがって、水蒸気バリア性シート層を構成するポリマーシートは、例えば、その原料であるポリマーとして、透湿度の小さいポリマーシートを提供するポリ塩化ビニリデン系樹脂類、線状低密度ポリエチレン、ポリエステル類、ポリアミド類等を用いているものであるか、及び/又は、ポリマーに水蒸気バリア性付与剤を添加して製造されたものである。ここで、ポリ塩化ビニリデン系樹脂類の概念には、塩化ビニリデン単独重合体のみならず、塩化ビニリデンと他の単量体との共重合体も包含され、一般的には、加工の容易性から、共重合体が使用される。また、水蒸気バリア性付与剤としては、脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド、パラフィンロウ、カルナバロウ、モンタンロウ、ポリエチレン系ロウ、石油樹脂等が例示される。
【0051】
水蒸気バリア性シート層を構成するポリマーシートは、ポリマーのみで構成されていてもよく、また、上記の水蒸気バリア性付与剤をはじめとする各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤の例としては、可塑剤、熱安定剤等の安定剤、抗酸化剤、滑剤、分散助剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
水蒸気バリア性シート層を構成するポリマーシートは、通常の方法で製造することができる。例えばポリ塩化ビニリデン系樹脂や線状低密度ポリエチレンを主たる構成ポリマーとするポリマーシートの製造は、ポリマーと各種添加剤とを含有するコンパウンドを用い、溶融押出し成形と一軸又は二軸延伸とを行う。なお、このようなポリマーシートの製造方法は公知であるが、具体的には、例えば特開2003−26882、特開2003−192861及び特開2004−202752等の記載を参照されたい。
【0053】
前記したように、水蒸気バリア性シート層は、単層に限定されず、異なる材質の2層以上のポリマーシートが融着又は接着されてなる複層構造のものであってもよい。このような複層構造の水蒸気バリア性シートの構成は、そのシートが本発明で規定する透湿度を示し、使用上問題のない柔軟性や強度を有する限り、特に限定されない。例として、複数の層の中の少なくとも一層が、低い透湿度を示すポリ塩化ビニリデン系樹脂又は線状低密度ポリエチレンを主成分とするものであるものが挙げられる。この場合、他の層の主成分であるポリマーの例としては、強度に優れるポリエチレンテレフタレート(PET)、各種ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等が挙げられる。その他、PET以外のポリエステル類、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン等のポリマーも、ポリマーシートの材料として使用することが出来る。
【0054】
なお、ポリ塩化ビニリデン系のポリマーシートは、他の材質のポリマーシートとの接着性が乏しい傾向にあるので、他の材質のポリマーシートと積層させて複層構造とする場合には、ポリ塩化ビニリデン系ポリマーシートの表面であって、他のポリマーシートと対向する面を、コロナ処理することが好ましい。
【0055】
前記したように、水蒸気バリア性シート層は、ポリマーシート以外のものを含んでいてもよい。一例を挙げると、ポリマーシートと、金属箔とが積層されてなるものがある。このような金属箔を含む水蒸気バリア性シート層は、透湿度がほぼ0g/m・24時間である。また、金属箔を構成する金属の種類としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、プラチナ等及びこれらの合金が挙げられる。このような金属箔を有する水蒸気バリア性シート層は、電磁波遮蔽性も示す。なお、金属箔の厚さは、特に限定されないが、10nm乃至500μm程度が好ましい。金属箔が厚くなると柔軟性が低下することを考慮し、その厚さを選択する。
【0056】
ポリマーシートと金属箔とが積層されてなる水蒸気バリア性シート層において、金属箔が最外層を構成してもよいが、水蒸気バリア性シート層と繊維層等の他の層との接着の観点からは、最外層はポリマーシートであること、例えば図2に示すように、ポリマーシート61,63が金属箔65を挟む構造が好ましい。
【0057】
ポリマーシート以外のものを含んでいる水蒸気バリア性シート層の他の例としては、例えば図3に示すように、ポリマーシート71の一方の面に、金属系又は無機物蒸着層75を有する金属系又は無機物蒸着ポリマーシート70が挙げられる。もちろん、両面に蒸着層があってもよい。ここで、蒸着される金属系物質の例としては、金、銀、銅、パラジウム、プラチナ、アルミニウム、ニッケル、鉄、スズやこれらの合金(例えば銀−パラジウム合金)、これらの酸化物(例えば酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ)が挙げられる。また、蒸着される無機物としては、セラミック、シリカ等が挙げられる。金属を蒸着させた場合、水蒸気バリア性シート層は、電磁波遮蔽性をも示す。また、無機物を蒸着させたものは、透明性があり且つ電子レンジでの加温が可能である。
【0058】
蒸着層の厚さは、水蒸気バリア性シート層が所望の透湿度を示す限り特に限定されないが、通常は1乃至100nm程度である。蒸着層の厚さが厚くなると柔軟性が低下することを考慮し、その厚さを選択する。また、蒸着層の作製方法は限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、プラズマ化学蒸着法等を適用すればよい。
【0059】
本発明の冷却又は加温用シートにおいては、繊維層a、水蒸気バリア性シート層a及び繊維層bを備える第一の面と、繊維層c、水蒸気バリア性シート層b及び繊維層dを備える第二の面とは、熱伝導性が異なることが必須である。このような熱伝導性の相違を実現するためには、例えば、繊維層aとdの素材及び/又は厚さを異なるものとする、繊維層bとcの素材及び/又は厚さを異なるものとする、水蒸気バリア性シート層aとbの素材及び/又は厚さを異なるものとする、等の手段を採用すればよい。
【0060】
繊維層bとcとの相違によって第一の面と第二の面との熱伝導性を異なるものとする場合には、繊維層b及びcとして不織布を用い、不織布の種類及び/又は素材を異ならせることが好ましい。この場合、繊維層aとd、水蒸気バリア性シート層aとbは、各々同じ材質、同じ厚さであってもよい。繊維層b及びcに用いる不織布の素材は、レーヨン、ナイロン、ポリエステル又は木綿が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。また、不織布の種類としては、スパンレース不織布、スパンニードル不織布、スパンボンド不織布が好ましく、特に、含水ゲルを袋体に一体化させるという観点から、含水ゲルとの親和性に優れるスパンレース不織布とスパンニードル不織布が好ましい。例えば、繊維層bにスパンレース不織布を用い、繊維層cにスパンニードル不織布を用い、それ以外は同じ材質で第一の面と第二の面とを構成した場合、不織布の厚さが同じでも、第一の面と第二の面との熱伝導性は異なるものとなり(スパンニードルを用いた方が熱伝導性が小である)、さらに厚さを調整(通常はスパンニードル不織布の方を厚くする)すれば、熱伝導性の相違を一層大きくすることができる。
【0061】
より具体的には、繊維層bとして、厚さ(坪量)が10g/m乃至100g/m(好ましくは20g/m乃至80g/m、さらに好ましくは30g/m乃至70g/m、最も好ましくは40g/m乃至50g/m)のスパンレース不織布を用い、繊維層cとして、厚さ(坪量)が40g/m乃至200g/m(好ましくは60g/m乃至180g/m、さらに好ましくは80g/m乃至120g/m、最も好ましくは90g/m乃至110g/m)のスパンニードル不織布を用い、繊維層cの厚さは繊維層bの厚さの1.5倍以上(好ましくは1.5乃至4倍、更に好ましくは1.7乃至3倍)とするか、厚さの差を20g/m以上(好ましくは20g/m乃至150g/m、更に好ましくは30g/m乃至120g/m)とし、繊維層a及びdには、織布、好ましくは防黴処理された織布を用い、水蒸気バリア性シート層a及びbには線状低密度ポリエチレン等のポリマーのシートを用い、繊維層bとcとの熱伝導性の相違により、第一の面と第二の面の熱伝導性を異なるものとさせることができる。また、水蒸気バリア性シート層a,bの中の一方のみに、前記したポリマーシートと金属箔とが積層されてなるものを採用したり、ポリマーシートの一方の面に、金属系又は無機物蒸着層を有する金属系又は無機物蒸着ポリマーシートを採用することも、第一の面と第二の面との熱伝導性を異なるものとさせるための一手段である。
【0062】
本発明において、第一の面と第二の面との熱伝導性は、熱物性測定装置、例えばカトーテック株式会社製精密迅速熱物性測定装置KES−F7(THERMO LABO II TYPE)を用いて測定することができる。その概略断面図を図4に示す。熱物性測定装置50は、定温台(ウォータ・ボックス)51と、熱源台(ボトム・テンペラチャー・ボックス)53を有する。熱源台53の下面には、熱板57が取り付けられている。本発明における熱伝導性の数値は、測定雰囲気条件を20℃、65%RHとして、恒温水槽から水循環され、20℃に維持されるように設定された熱板、即ち定温台51の上面上に、試料片(5cm×5cm)55を置き、その上に同寸法で40℃の熱板(試料加圧力:6g/cm)57を重ね、試料片55を通して伝わる熱量を40℃の熱板57の温度を維持する熱量として、換言すれば熱源台53の熱流損失(単位:ワット)を測定することで得られる。
【0063】
第一の面と第二の面との熱伝導性の相違は、少なくとも1.0W/25cm・20℃であり、2.0乃至10W/25cm・20℃であることが好ましく、2.5乃至8.0W/25cm・20℃であることがさらに好ましく、3.0乃至6.0W/25cm・20℃であることが特に好ましい。また、この相違は、繊維層bと繊維層cとの熱伝導性の相違によって実現されていることが好ましい。なお、試料の熱伝導率K(W/cm・℃)は、熱流損失Wに試料片の厚さ(cm)を乗じ、それを熱板面積(25cm)及び試料の上下の温度差(20℃)で除することによって得られるものであり、本発明における熱伝導性とは異なる数値となる。
【0064】
含水ゲル層を構成する含水ゲルは、水を円滑且つ大量に吸収してゲル化するポリマーを、水その他の成分の存在下で架橋剤で架橋して形成される。含水ゲルの形成に使用される最も好ましいポリマーは、ポリアクリル酸類である。ポリアクリル酸類の例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸部分中和物(アクリル酸とアクリル酸塩との共重合体)、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸の塩及びメタクリル酸部分中和物(メタアクリル酸とメタアクリル酸塩との共重合体)を挙げることができる。また、塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0065】
本発明では、多量の水の存在下において、前記のゲル化するポリマー、好ましくはポリアクリル酸類を、例えば多価金属類で架橋して、含水ゲルを形成する。多価金属類には、多価金属、その塩及び多価金属化合物が包含される。これらの多価金属類として、二価以上であってポリアクリル酸類等を架橋できるものであれば、いずれも使用することもできる。
【0066】
多価金属類としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル等の多価金属、それらの塩又はそれらの化合物が例示される。安全性、生産性、ゲル特性の観点から、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム又はそれらを含む多価金属化合物が好ましく、特にアルミニウム化合物が好ましい。
【0067】
ここで、アルミニウム化合物の例としては、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムマグネシウムのような水酸化物;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、カオリン、ステアリン酸アルミニウムのような無機又は有機酸の正塩もしくはそれらの塩基性塩;アルミニウムみょうばんのような複塩;それにアルミン酸ナトリウムのようなアルミン酸塩、無機性アルミニウム錯塩及び有機性アルミニウムキレート化合物;合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、EDTA−アルミニウム、アルミニウムアラントイネート、酢酸アルミニウム、アルミニウムグリシナール等が挙げられる。
【0068】
なお、含水ゲル層を展膏によって製造する場合であって、例えばメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのような即効性の架橋剤を使用する場合には、架橋を制御する(即ち、ある程度遅延させる)必要があるため、EDTA−2Na等のエデト酸類の架橋遅延剤も使用する。
【0069】
本発明において、含水ゲルの形成には、水、上記のゲル化するポリマー(好ましくはポリアクリル酸類)及び架橋剤に加え、グリセリンやプロピレングリコール等の多価アルコール類や、ポリアクリル酸類以外のポリマーが使用されてもよい。そのような他のポリマーをも配合することにより、ゲルの安定性が向上する。
【0070】
ポリアクリル酸類以外のポリマーには、セルロース誘導体、デンプン誘導体、ビニル系ポリマーが包含される。具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースまたはそれらのアルカリ金属塩等のセルロース誘導体;カルボキシメチルデンプンやヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン誘導体;ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、カルボキシルビニルポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルアルキルアミノアクリル酸共重合体、、スチレンマレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−ポリビニルアルコール共重合体等のビニル系ポリマーを挙げることができる。これらの中で、セルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロース又はそのアルカリ金属塩が更に好ましい。
【0071】
含水ゲルは、電磁波遮蔽性を有する物質を含有していてもよい。電磁波遮蔽性を有する物質の例としては、フェライト、ゲルマニウム、カーボンブラック、炭、酸化スズ、酸化アンチモンスズ、酸化インジウムスズ、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、プラチナ等が挙げられる。電磁波遮蔽性を有する物質は、含水ゲルの物性、特にゼリー強度に悪影響を及ぼさない粒径、太さ、形状、長さのものを、含水ゲルの物性に悪影響を与えない範囲の量で用いる。
【0072】
含水ゲルの形成には、その物性に影響を及ぼさない範囲で、上記各成分に加え、防腐剤、保存剤、安定剤、着色料、pH調整剤、保型剤、増粘剤等を使用してもよい。
【0073】
本発明の冷却又は加温用シートを主として加温に使用する場合には、含水ゲルの形成にあたり、常温で液体の油脂を、界面活性剤とともに使用してもよい。油脂の使用により、含水ゲルの電気伝導性が改良され、短時間で含水ゲルが温まる。
【0074】
常温で液体の油脂の例を挙げると、オリブ油、胡麻油、紅花油、大豆油、とうもろこし油、菜種油、綿実油等の各種植物油がある。
【0075】
前記油脂を含水ゲル中に分散させるための界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が適する。非イオン性界面活性剤の例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等のエーテルエステル型非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型非イオン性界面活性剤がある。本発明においては、エーテル型非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0076】
本発明において、含水ゲル層、即ち含水ゲルは、下記の条件で測定して10乃至5,000gのゼリー強度を有する。
(ゼリー強度測定条件)
測定器: 圧縮型物性測定器
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
圧縮形状及び面積: 直径30mmの円、7.065cm
圧縮量(変位量): 2mm
圧縮速度: 1mm/秒
測定試料の大きさ: 20cm×30cm×6mm(厚さ)。
【0077】
含水ゲルのゼリー強度測定の概要は、図5に示すとおりである。即ち、アダプター(押付ける部分の形状及び大きさ:直径30mmの円である)41を、試料用架台45上に載置したゲル試料43に、圧縮速度1mm/秒にて変位量が2mmとなるように押し付け、その際の荷重を測定する。
【0078】
含水ゲルのゼリー強度は、ゲルが形成された後、ポリマーの架橋の進展に伴って上昇し、一定時間経過後に安定な数値となる。従って、上記ゼリー強度の数値は、少なくとも消費者が本発明にかかる製品を使用する際(通常は製造から5日以上経過後)に充足されるべき数値である。
【0079】
本発明における含水ゲルは、ポリマーが架橋されているために、形状保持性に優れると共に、上記のようなゼリー強度を有して低反発性を示す。
【0080】
なお、ゼリー強度の測定法は、膠及びゼラチンを対象として、JIS K6503−1996に定められているが、本発明で採用する方法とは、測定条件が異なる。
【0081】
含水ゲル層の重量は、用途によって異なるが、敷物の場合には、1乃至15kg/mであることが好ましく、2乃至10kg/mであることが更に好ましく、3乃至6kg/mであることが特に好ましい。また、額冷却用シート、保冷枕用シート、枕被覆用シート、靴用シート等の小物の場合には、0.01乃至2kg/mであることが好ましく、0.1乃至1.5kg/mであることが更に好ましく、0.2乃至1kg/mであることが特に好ましい。
【0082】
本発明の冷却又は加温用シートが、例えば額冷却用シート、保冷枕、枕被覆用シート、敷パッド、座布団被覆用シート、椅子の背もたれ用シート、靴用シート、足裏用加温シート等として使用される場合には、含水ゲルのゼリー強度は10乃至3,000gであることが好ましく、200乃至2,500gであることがさらに好ましく、300乃至2,000gであることが特に好ましい。
【0083】
上記のようなゼリー強度とするために、含水ゲル層は、ポリアクリル酸類の架橋物を含有し、含水ゲル用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は1乃至10重量%(より好ましくは1乃至8重量%)であり、架橋剤の量は0.01乃至0.5重量%(より好ましくは0.02乃至0.2重量%)であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.2重量%(より好ましくは0.03乃至0.1重量%)であり、水の量は30乃至95重量%である組成物から調製されたものであることが好ましい。
【0084】
本発明の冷却又は加温用シートが、例えばカーペット、マット、電気カーペット用被覆シート、電気毛布用被覆シート、ペット用マット等として使用される場合には、含水ゲルのゼリー強度は400乃至5,000gであることが好ましく、700乃至4,000gであることがさらに好ましく、1,000乃至3,500gであることが特に好ましい。
【0085】
上記のようなゼリー強度とするために、含水ゲル層は、ポリアクリル酸類の架橋物を含有し、含水ゲル用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は3乃至8重量%(より好ましくは3乃至6重量%)であり、架橋剤の量は0.06乃至2.0重量%(より好ましくは0.1乃至1.2重量%)であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.5重量%(より好ましくは0.02乃至0.25量%)であり、水の量は50乃至95重量%である組成物から調製されたものであることが好ましい。
【0086】
上記したように、本発明の冷却又は加温用シートにおける含水ゲル用組成物は、必須成分として水を含有する。その水分含有量は、含水ゲル用組成物全量を基準として30乃至95重量%であることが好ましく、50乃至95重量%であることが更に好ましい。
【0087】
本発明において、含水ゲル用組成物がセルロース誘導体等のポリアクリル酸類以外のポリマーも含有する場合、そのようなポリマーの量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは0.6乃至12重量%、さらに好ましくは1乃至8重量%である。また、多価アルコール類を含有する場合のその量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは6乃至15重量%、さらに好ましくは8乃至12重量%である。
【0088】
本発明において、上記含水ゲル用組成物が電磁波遮蔽性を有する物質を含有する場合のその量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは2乃至10重量%、さらに好ましくは3乃至8重量%である。
【0089】
本発明において、上記含水ゲル用組成物が常温で液体の油脂を含有する場合、その量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは3乃至15重量%、さらに好ましくは5乃至10重量%である。また、油脂と共に使用される界面活性剤の量は、油脂の重量を基準として、好ましくは0.5乃至5重量%、さらに好ましくは1乃至4重量%である。
【0090】
本発明において、上記含水ゲル用組成物の処方は、油脂の含有、不含有の影響を受ける。含水ゲル用組成物が前記油脂を含有しない場合には、水分含有量は80乃至95重量%程度であるが、前記油脂を含有する場合には、50乃至70重量%程度である。また、水以外に、多価アルコールの量も、前記油脂の有無の影響を受ける。多価アルコールの量は、含水ゲル用組成物の全重量を基準として、含水ゲルが前記油脂を含有しない場合には6乃至12重量%程度であるが、含水ゲルが前記油脂を含有する場合には、15乃至25重量%程度である。
【0091】
本発明の冷却又は加温用シートの繊維層a及びdには、好ましくは、トリアゾール系防黴剤、ピリチオン系防黴剤、ベンズイミダゾール系防黴剤、ベンズチアゾール系防黴剤、イソチアゾリン系防黴剤、及びチアベンダゾール系防黴剤からなる群から選択される1種以上の防黴剤が、少なくともその両面に付着されており、その量は、0.1乃至40g/mである。
【0092】
トリアゾール系防黴剤の例としては、2−(4−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−イル)−ブタン−2−オール、カルボキシベンゾトリアゾール、{1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1,2,4−トリアゾール)−1−イル}ブタン−2−オン等がある。ピリチオン系防黴剤の例としては、2−ピリジンチオール−1−オキサイドのナトリウム塩や亜鉛塩等がある。ベンズイミダゾール系防黴剤の例としては、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−(カルボメトキシアミノ)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1−ブチルカルバモイル−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、6−ベンゾイル−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、6−(2−チオフェンカルボニル)−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、2−チオシアノメチルチオベンズイミダゾール、1−ジメチルアミノスルフォニル−2−シアノ−4−ブロモ−6−トリフルオロメチルベンズイミダゾール、2−(2−クロロフェニル)ベンズイミダゾール、2−(1−(3,5−ジメチルピラゾリル)ベンズイミダゾール、2−(2−フリル)ベンズイミダゾール、パーベンダゾール、5,6−ジクロロ−1−フェノキシカルボニル−2−トリフルオロメチルベンズイミダゾール、4,5,6,7−テトラクロロ−2−トリフルオロメチルベンズイミダゾール等がある。
【0093】
ベンズチアゾール系防黴剤の例としては、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンズチアゾールの亜鉛塩、2−(チオシアノメチルスルホニル)ベンズチアゾール等がある。イソチアゾリン系防黴剤の例としては、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロー2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン等がある。また、チアベンダゾール系防黴剤の例としては、チアベンダゾール等がある。
【0094】
上記防黴剤は、いずれも皮膚への刺激が少ないという特徴を有する。上記の中で、トリアゾール系防黴剤、ピリチオン系防黴剤、ベンズチアゾール系防黴剤、イソチアゾリン系防黴剤、及びチアベンダゾール系防黴剤からなる群から選択される1種以上の防黴剤を使用することが好ましく、トリアゾール系防黴剤を含む1種以上の防黴剤を使用することが特に好ましい。
【0095】
本発明の冷却又は加温用シートの繊維層a及びdにおいて、防黴剤は、少なくとも繊維層の両面に付着されている。ここで、「両面」とは、防黴剤を例えば印刷や塗工で繊維層を構成する織布や不織布に付与した場合には、その織布や不織布の表面と裏面の両方に防黴剤が存在することを意味する。従って、この「少なくとも両面」の概念には、例えば布を防黴剤の入った液体に浸漬して乾燥した場合のような、繊維層全体に防黴剤が存在する場合を包含する。
【0096】
防黴剤の量は、0.1乃至40g/mであり、好ましくは1乃至40g/mであり、さらに好ましくは2乃至20g/mであり、さらにより好ましくは4乃至10g/mであり、最も好ましくは6乃至8g/mである。
【0097】
繊維層である織布や不織布への防黴剤の付着方法は、特に限定されない。例を挙げると、防黴剤を含有する溶液(バインダーを含有していてもよい)に織布等を浸漬させ、絞り、乾燥させて溶媒を気散させる方法、(2)防黴剤とバインダーとを含有する液体を用いた印刷、(3)防黴剤とバインダーとを含有する液体の塗布、(4)防黴剤を含有する溶液(バインダーを含有していてもよい)を織布等に噴霧し、乾燥させて溶媒を気散させる方法等がある。なお、後記するように、バインダーがモノマーである場合には、上記の方法の各々において、乾燥工程として又は別途の工程として加熱工程を加え、モノマーを重合させる。
【0098】
防黴剤を繊維層に確実に定着させるためには、防黴剤とバインダーとを含有する液体を用いることが好ましい。ここで、バインダーとして使用される物質は、水溶性又は水不溶性のモノマー、ポリマー、樹脂である。例えば、防黴剤が水溶性である場合には、その水溶液を調製するが、その際に水溶性又は水分散性のモノマー、ポリマー又は樹脂も用いる。また、防黴剤が水不溶性である場合には、その防黴剤を水に分散させたり、その防黴剤を溶解できるアルコール等の有機溶媒を用いるが、その際に、モノマー、ポリマー又は樹脂も用いる。
【0099】
上記水溶性又は水分散性のポリマーや樹脂の例としては、ポリビニルアルコール、セルロース系化合物(具体的には、天然セルロースに、硫酸化、リン酸化、硝酸化、カルボキシメチル化、カルボキシプロピル化、ヒドロキシエチル化等の化学処理を施したもの)、及びデンプン系化合物(具体的には、リン酸エステル化デンプン、エーテル化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン等)がある。上記有機溶媒に溶解又は分散するポリマーや樹脂の例としては、ウレタン系高分子化合物、スチレン−ブタジエン系高分子化合物及びアクリル系高分子化合物がある。
【0100】
自己架橋により高分子化合物となるモノマーの使用が好ましい。そのようなモノマーを含む溶液やエマルジョンに、防黴剤を加え、得られた溶液やエマルジョンを繊維層に付与した後、加熱してモノマーの重合を行わせる。そのようなモノマーから得られた高分子化合物は、繊維層に強く結合し、その結果、防黴剤を繊維層にきちんと付着させることとなり、よって、防黴剤の耐久性が高まるからである。溶液重合に適するものとしては、アクリルモノマーと重合開始剤とを含有するものが、また、エマルジョン重合に適するものとしては、耐溶剤性・耐磨耗性アクリルエマルジョン、高耐候性アクリルシリコンエマルジョン、コロイド安定型微粒子性アクリルシリコンエマルジョン、常温一液架橋型性アクリルエマルジョン、アルカリ硬化型カチオン微粒子アクリルシリコン、ハイブリッドアクリルエポキシエマルジョン等が知られている。
【0101】
防黴剤及びバインダーを含有する溶液又は分散液中の防黴剤の濃度は、好ましくは0.1乃至50重量%、さらに好ましくは1乃至40重量%、さらにより好ましくは2乃至30重量%である。また、バインダーの濃度は、好ましくは2乃至30重量%、さらに好ましくは4乃至20重量%、さらにより好ましくは6乃至15重量%である。
【0102】
次に、本発明の冷却又は加温用シートの製造方法について説明する。図1に示された冷却又は加温用シート300は、例えば、次のようにして製造される。
【0103】
図1に示された冷却又は加温用シート300を製造する際には、先ず、繊維層aとなる織布1(予め防黴剤が付着されてなるもの)と、水蒸気バリア性シート層aとなるポリマーシート3と、繊維層bとなる不織布13とを、接着剤を用いて又は熱融着によって、全面に亘って又は部分的に接着し、複合体zを製造する。この場合、ポリマーシート3は、その両面がコロナ処理されているものであることが好ましい。また、接着方法として、ドライ・ラミネーション法、ホット・メルト接着法又は押出しサンドイッチ・ラミネーション法の採用が好ましい。
【0104】
同様に、繊維層dとなる織布9(予め防黴剤が付着されてなるもの)と、水蒸気バリア性シート層bとなるポリマーシート7(コロナ処理がなされているもの)と、繊維層cとなる不織布15とを、接着剤を用いて又は熱融着によって、好ましくはドライ・ラミネーションラミネーション法、ホット・メルト接着法又は押出しサンドイッチ・ラミネーション法によって、全面に亘って又は部分的に接着し、複合体wを製造しておく。ここで、ドライ・ラミネーション用接着剤の例を挙げると、ポリエステル系及びアクリル共重合体系のものがある。
【0105】
複合体wの不織布15上に、含水ゲル層用組成物を展膏し、所望の厚さを有する含水ゲル層を形成する。この際、シート300の四周となる部分や、複合体wが長尺物である場合には少なくともその両側は、含水ゲル層を形成しない。
【0106】
展膏された含水ゲル層用組成物の表面を、その展膏とほぼ同時に、前記複合体zで被覆する。この際、不織布13の面をゲルに向ける。次いで、シート300の四周を、外周の切断面が露出しないように、巻縫い等の方法で縫製する。
【0107】
本発明の冷却又は加温用シートの製造に際し、含水ゲル層は、含水ゲル用組成物の展膏によるのではなく、流し込みによって製造することもできる。例えば、図1に示されたシート300(但し、糸2で縫製されていないもの)は、次のように製造することもできる。
【0108】
前記複合体z(長尺物)と前記複合体w(長尺物)とを、不織布13と不織布15とが向かい合うように配置し、その幅方向をヒートシール又は接着する。次に、それらの長尺物の両側をヒートシール又は接着し、袋状部分を形成する。この袋状部分に含水ゲル用組成物を流し込み、押圧によってシート状とし、前記長尺物の幅方向をヒートシール又は接着する。幅方向に形成されたヒートシール又は接着部(後で形成した方)の長さ方向のほぼ中央部で切断し、本発明の冷却又は加温用シート一つを得る。以下、同様にして、本発明の冷却又は加温用シートを連続的に製造する。
【0109】
続いて、本発明の枕について説明する。本発明の枕の例を、図6(斜視図)、図7(断面図)、図8(斜視図)及び図9(断面模式図)を参照して説明する。
【0110】
図7(1)に示す本発明の枕1,000は、その中央部に孔501を有する枕本体500(図6を参照のこと)の孔501に、本発明の冷却又は加温用シート300が着脱自在に収納されてなるものである。また、図7(2)及び(3)に示す本発明の枕1,100,1,200は、その中央部に孔501を有する枕本体500の孔501に、本発明の冷却又は加温用シート300と、内部に竹チップが充填されてなる袋体400とが、重ねあわされて着脱自在に収納されてなるものである。
【0111】
図9に示す本発明の枕2,000、2,100、2,200及び2,300は、その中央部に凹部601を有する枕本体600(図8を参照のこと)の凹部601に、本発明の冷却又は加温用シート300と、内部に竹チップが充填されてなる袋体400とが、重ねあわされて着脱自在に収納されてなるものである。冷却又は加温用シート300中、破線は、含水ゲル層と袋体との境界部を示している。また、図示していないが、凹部に601に本発明の冷却又は加温用シート300のみが着脱自在に収納されてなるものも、本発明の枕である。
【0112】
図9において、(1)は、春期及び秋期の使用に適する態様であり、枕本体600の凹部601に、先ず、内部に竹チップが充填されてなる袋体400が収納され、その上に、冷却又は加温用シート300が、熱伝導性が低い(繊維層が厚い)方の面が上方(人体と接する方)に向けられて収納されている。なお、冷却又は加温用シート300の含水ゲル層を予め凍結させておけば、この態様で、氷枕として使用することができる。
【0113】
図9において、(2)は、夏期の使用に適する態様であり、枕本体600の凹部601に、先ず、内部に竹チップが充填されてなる袋体400が収納され、その上に、冷却又は加温用シート300が、熱伝導性が高い(繊維層が薄い)方の面が、上方(人体と接する方)に向けられている。なお、冷却又は加温用シート300を予め冷蔵庫で冷却しておけば、この態様で、熱帯夜等において冷枕として使用することができる。
【0114】
図9において、(3)は、冬期の使用に適する態様であり、枕本体600の凹部601に、先ず、冷却又は加温用シート300が熱伝導性が高い(繊維層が薄い)方の面が下(枕本体600の凹部601と接する方)に向けられて収納され、その上に、内部に竹チップが充填されてなる袋体400が収納されている。この態様での使用においては、竹チップによる指圧効果も得られる。
【0115】
図9において、(4)は、枕にクッション性を求める使用者に適する使用態様を示している。即ち、竹チップを充填した袋体400の上に、本発明の冷却又は加温用シート300を積重ね、その上に、枕本体600を凹部601下に向けてかぶせたものである。なお、上記何れの態様で使用する際にも、全体をピロー・ケースに収納する。
【0116】
上記例では、竹チップを充填した袋体400を使用したが、これに限定されない。その内部に植物素材のチップ又は合成樹脂素材のチップ又はパイプが充填されてなる袋体を使用することができる。具体的には、竹チップ、ヒノキ・チップ、炭チップ等の植物素材のチップ、ポリエチレン又はポリプロピレン製のチップ又はパイプ等が、袋体に充填されて使用される。
【0117】
また、枕本体の材質は、通常、枕に使用されているものであればいずれでもよい。その例としては、軟質ポリウレタンフォーム、パンヤ、そば殻、小豆等が挙げられ、軟質ポリウレタンフォームが好ましい。
【0118】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0119】
含水ゲルのゼリー強度の測定
以下のようにして、含水ゲルのゼリー強度測定用試料を製造し、ゼリー強度を測定した。尚、この実験はゼリー強度の測定を目的としているので、繊維層b及びcは省略した。
【0120】
(a)各層を構成する材料
(繊維層a) ポリエステル製スパンレース不織布; 坪量:45g/m
(水蒸気バリア性シート層a) 線状低密度ポリエチレン系シート; 厚さ:40μm
(含水ゲル層) 表1に示す処方の組成物を使用して調製; 厚さ:6mm
(水蒸気バリア性シート層b) 線状低密度ポリエチレン系シート; 厚さ:40μm
(繊維層d) ポリエステル製スパンレース不織布; 坪量:45g/m
【0121】
なお、ポリエステル製スパンレース不織布(繊維層a又はd)と線状低密度ポリエチレン系シート(水蒸気バリア性シート層a又はb)とは、ポリエステル系のドライ・ラミネーション用接着剤によってその全面が貼り合わされていた。
【0122】
(b)含水ゲル用組成物の調製
ここに、本発明の冷却又は加温用シートの製造に用いる含水ゲル用組成物の製造方法の概略を述べる。なお、その処方は、表1に示すとおりである。
【0123】
【表1】

【0124】
(1)先ず、D(グリセリン)の一部にカルボキシメチルセルロースナトリウムを溶解させる。これに酒石酸とE(水)のほぼ全量とを加え、溶液とする。
(2)Bの混合物を調製し、これを(1)で調製した溶液に加える。
(3)D(グリセリン)の残りにCを加え、溶液を調製する。
(4)(2)で調製した溶液に(3)で調製した溶液を加えて撹拌し、必要であれば(水分の揮発等によって、総量が設計量よりも少ない場合には)、必要量の水を加えてバランスする。
【0125】
(c)製造方法
(i)ポリエステル製スパンレース不織布(繊維層d)と線状低密度ポリエチレン系シート(水蒸気バリア性シート層b)とが貼り合わされてなるベース基材の線状低密度ポリエチレン系シート上に、表1に示す処方の組成物(発明例1乃至6)各々を、厚さが6mmとなるように展膏した。
【0126】
(ii)展膏とほぼ同時に、ポリエステル製スパンレース不織布(繊維層a)と線状低密度ポリエチレン系シート(水蒸気バリア性シート層a)とが貼り合わされてなるオーバーラップ基材の線状低密度ポリエチレン系シートの面をゲルに向け、そのオーバーラップ基材でゲル表面を被覆し、四周を縫製した。
【0127】
(iii)このように製造した冷却又は加温用シート試料(20cm×30cm×6mm)を、40℃の恒温室に2日間放置して含水ゲル層中のポリマーの架橋を促進させた後、20℃の恒温室に放置した。
【0128】
(d)ゼリー強度の測定
展膏後14日目及び30日目に、オーバーラップ基材を剥がし、(株)サン化学製の簡易型物性測定器レオテックスSD−700DPを用い、下記の条件にて、ゲルのゼリー強度を測定した。なお、測定の概要は、図5に示すとおりである。即ち、アダプター41を、試料用架台45上に載置したゲル試料43に押し付け、その際の荷重を測定した。
【0129】
測定は、発明例1乃至6の各々につき、3枚のゲル試料について行った。結果(最小値、最大値及び平均値)を表2に示す。
(測定条件)
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
圧縮形状及び面積: 直径30mmの円、7.065cm
圧縮量(変位量): 2mm
圧縮速度: 1mm/秒
【0130】
【表2】

【実施例2】
【0131】
水蒸気バリア性シート層の透湿度と、含水ゲル層中の水分保持性との関係の試験
(a)水蒸気バリア性シート層の構成と透湿度
ポリ塩化ビニリデン系シート(厚さ:25μm)、線状低密度ポリエチレンシート(厚さ:40μm)、2層の線状低密度ポリエチレンシートの間にアルミ箔(厚さ:1μm)が挟持されてなる複層構造のシート(総厚:41μm)、株式会社麗光製ファインバリヤー(登録商標)KW(ポリエステル系水蒸気バリアフィルム;厚さ:40μm)、凸版印刷株式会社製GXフィルム(PETフィルムにセラミックを蒸着させたもの;厚さ:40μm)とを用意した。これらについて、JIS Z0208に従い、温度40℃における透湿度を測定した。なお、GXフィルムに関しては、透湿度を測定する際のシートの向きは、蒸着面が外側となるようにした。結果を表3に示す。
【0132】
(b)高温保存による含水ゲル層中の水分の減少率の測定
(a)で使用した水蒸気バリア性シート層用の各種素材(104cm×104cm)の上に、表1に示された発明例2の処方の組成物6kgを、周囲約2cmを残して展膏した。展膏とほぼ同時に、同じ素材の水蒸気バリア性シート層用シートでゲル表面を被覆し、前記組成物が展膏されていない四周を接着剤で接着した。
【0133】
このように製造したもの各々の重量を測定した後、40℃の恒温室に一週間放置した。恒温室から取り出し、各々の重量を測定した。なお、シート試料の製造前に、水蒸気バリア性シート層用の各種素材の重量と接着剤の重量も測定した。
【0134】
一週間の放置によって減少した重量を求め、その値を試験前の含水ゲルの重量で除して、含水ゲルの重量減少率(%)を求めた。なお、この実験では、減少した重量は、すべて、ゲル中の水分の揮散によるものとした。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】

【実施例3】
【0136】
本発明の冷却又は加温用シートの製造
(A)織布の防黴処理
中部サイデン株式会社製X1290B9(アクリルモノマーの水系エマルジョン;水分含有量:50重量%)と、防黴剤として大和化学工業株式会社製アモルデンNBP−8を用意した。これらを表4に示す処方で混合し、防黴処理液を調製した。なお、アモルデンNBP−8の防黴剤は、トリアゾール系化合物である。
【0137】
これらの防黴処理液に、ポリエステル/綿(65%/35%)製織布(45番/45番;110本/76本)を浸漬し、絞った。防黴処理液は、織布1mあたり100gを使用し、絞り率(絞ることによって織布から除去された割合;主として希釈液が除去される)は70重量%であった。その後、170℃にてアクリルモノマーを重合させた。なお、得られた防黴処理されたポリエステル織布には、使用した防黴剤のほぼ全量が付着されていた。
【0138】
【表4】

【0139】
(B)冷却又は加温用シートの製造
繊維層a及びdの両者として使用するために、上記防黴処理されたポリエステル/綿製織布(発明例a乃至d)と防黴処理されていない同様のポリエステル/綿製織布(発明例e)とを用意した。繊維層a、水蒸気バリア性シート層aとしての線状低密度ポリエチレン系シート(厚さ:40μm;透湿度(JIS Z0208):6.8g/m・24時間)、繊維層bとしてのポリエステル製スパンレース不織布(坪量:45g/m)を貼り合わせたもの、繊維層d、水蒸気バリア性シート層bとしての線状低密度ポリエチレン系シート(厚さ:40μm;透湿度(JIS Z0208):6.8g/m・24時間)、繊維層cとしてのポリエステル製スパンニードル不織布(坪量:100g/m)を貼り合わせたものを用意し、含水ゲル用組成物として実施例1の表1における発明例2を用い、冷却又は加温用シートを製造した。
【0140】
(C)黴発生試験
(B)で製造した冷却又は加温用シートを、一定条件下に放置し、黴の発生状況を目視観察した。結果を表5に示す。
【0141】
【表5】

【実施例4】
【0142】
アモルデンNBP−8の各種黴に対する防黴性能の試験
JIS Z2911(2000)の「かび抵抗試験方法」に従い、各種の黴に対するアモルデンNBP−8の防黴性能を試験した。供試黴は、次のとおりである。結果を表6に示す。
【0143】
供試黴I: Aspergillus niger FERM S-1
供試黴II: Penicillium citrium FERM S-5、Chaetomiumu globosum FERM S-11及びMyrothecium verrucaria FERM S-13の混合物
供試黴III: 実施例3の発明例eで発生した黴; Cladosporium属
【0144】
【表6】

【実施例5】
【0145】
各種防黴剤の防黴性能の試験(実施例3の発明例eで発生した黴に対する、各種防黴剤の最小生育阻止濃度の測定)
実施例3の供試黴IIIを用い、最小生育阻止濃度測定法に従い、表7に示す各種防黴剤について、最小生育阻止濃度(MIC)を測定した。結果を表7に示す。
【0146】
【表7】

【実施例6】
【0147】
電場遮蔽性能の測定
市販の電気毛布から出る電場の、本発明の冷却又は加温用シートによる遮蔽性能を測定した。試験材としては、キルト製ベッドパッド(比較)、本発明の冷却又は加温用シートから含水ゲル層を除去したもの(ブランク)、本発明の冷却又は加温用シートI及び本発明の冷却又は加温用シートIIを用いた。また、電気毛布のみの場合(対照)についても測定した。
【0148】
本発明の冷却又は加温用シートから含水ゲル層を除去したものは、表面が、綿織布(実施例3と同様の方法で、アモルデンNBP−8を約8g/m付着させたもの)、線状低密度ポリエチレン系シート(厚さ:40μm;透湿度(JIS Z0208):6.8g/m・24時間)及びポリエステル製スパンレース不織布(坪量:45g/m)をこの順にドライ・ラミネートしたものであり、裏面が、ポリエステル/綿(65%/35%)製織布(45番/45番;110本/76本)(実施例3と同様の方法で、アモルデンNBP−8を約8g/m付着させたもの)、線状低密度ポリエチレン系シート(厚さ:40μm;透湿度(JIS Z0208):6.8g/m・24時間)及びポリエステル製スパンニードル不織布(坪量:100g/m)をこの順にドライ・ラミネートしたものであり、表面と裏面の外周部は接着されているという構成であった。これは、本発明の冷却又は加温用シートI及びIIの含水ゲル層以外の部分の構成と同様である。
【0149】
また、本発明の冷却又加温用シートI及びIIの含水ゲルの処方は、表8に示すとおりであった。含水ゲルの量は、約6kg/mとした。
【0150】
【表8】

【0151】
ここに、本発明の冷却又加温用シートIIの製造方法の概略を述べる。なお、冷却又加温用シートIの製造方法は、含水ゲルの製造の際にC群とE群原料を用いないこと以外は、冷却又加温用シートIIの製造方法と同様である。
(1)先ず、F(グリセリン)の一部にカルボキシメチルセルロースナトリウムを溶解させる。これに酒石酸とG(水)のほぼ全量とを加え、溶液とする。
(2)Bの混合物を調製し、これを(1)で調製した溶液に加える。
(3)Cの混合物を、(2)で調製した溶液に加える。
(4)Eの混合物を、(3)で調製した分散液に加える。
(5)F(グリセリン)の残りにDを加え、溶液を調製する。
(6)(5)で調製した溶液を(4)で調製した分散液に加え、全体が均一になるまで撹拌する。
(7)裏面となる三層複合体の不織布の面上に、(6)で調製した分散液を展膏し、次いで、ゲル表面を、表面となる三層複合体を不織布の面をゲルに向けて使用して覆う。
(8)外周部を接着剤で接着した後、ポリマーが架橋するまで放置する。
【0152】
電場の測定は、次のようにして行った。図10に示すように、布団81の上に市販の電気毛布83を敷き、その上に試験材85を敷いた。試験材85の中央に測定器87を置き、さらに、測定器87と試験材85とを、その内面を銅テープとアルミ箔で覆った簡易シールド箱89で覆った。なお、簡易シールド箱89と試験材85とを確実に密着させるため、簡易シールド箱89の上に約1.8kgの錘を載せた。また、簡易シールド箱89はアースをして用いた。
【0153】
測定器87は、アナログ式トリフィールドメータであり、その測定周波数範囲は30Hz乃至100kHz、電場測定範囲は1乃至1000V/m、磁場測定範囲は0乃至100mGであった。
【0154】
測定の際は、電気毛布のヒータをONとした。また、電気毛布のみ(対照)と、本発明の冷却又は加温用シートから含水ゲル層を除去したもの(ブランク)を使用した場合については、測定位置を合わせるために、電気毛布から8mm上で測定を行った。なお、本発明の冷却又は加温用シートI及びIIとブランクとは、表面が上を向き、裏面が電気毛布83と対向するような向きで使用した。結果を表9に示す。
【0155】
【表9】

【0156】
電場は、一般的に機能障害、神経障害を引き起こすといわれている。表9から明らかなように、本発明の冷却又加温用シートI及びIIは、電磁波中の電場を大きく遮蔽する効果があった。なお、一般家庭用電気機器から発せられる電磁波は50乃至60Hzであり、波長は5,000乃至6,000kmと非常に長い。
【実施例7】
【0157】
敷パッドの製造及び官能試験
図1に示す構成の敷パッド3種を製造した。
【0158】
(a)各層を構成する材料
(繊維層a) ポリエステル/綿(65%/35%)製織布(45番/45番;110本/76本)
(水蒸気バリア性シート層a) 線状低密度ポリエチレン系シート; 厚さ:40μm 透湿度(JIS Z0208): 6.8g/m・24時間
(繊維層b) ポリエステル製スパンレース不織布; 坪量:45g/m
(含水ゲル層) 実施例1の表1に示された発明例2の処方の組成物を使用して調製;
展膏量:3kg/m,5kg/m,7kg/m
(繊維層c) ポリエステル製スパンニードル不織布; 坪量:100g/m
(水蒸気バリア性シート層b) 線状低密度ポリエチレン系シート; 厚さ:40μm 透湿度(JIS Z0208): 6.8g/m・24時間
(繊維層d) ポリエステル/綿(65%/35%)製織布(45番/45番;110本/76本)
【0159】
なお、ポリエステル/綿製織布(繊維層a及びd)は、防黴剤であるアモルデンNBP−8が、実施例3と同様の方法で約10g/mの量で付着されているものであった。また、ポリエステル(100%)製織布(繊維層a又はd)と線状低密度ポリエチレンシート(水蒸気バリア性シート層a又はb)とポリエステル製不織布(繊維層b又はc)は、ドライ・ラミネーション用接着剤によってその全面が貼り合わされていた。
【0160】
(b)製造方法
(i)ポリエステル/綿製織布(繊維層d)と線状低密度ポリエチレンシート(水蒸気バリア性シート層b)とポリエステル製スパンニードル不織布(繊維層c)とが貼り合わされてなるベース基材のポリエステル製スパンニードル不織布(繊維層c)上に、表1に示された発明例2の処方の組成物を、展膏量が3kg/m、5kg/m、又は7kg/mとなるように展膏した。
【0161】
(ii)展膏とほぼ同時に、ポリエステル/綿製織布(繊維層a)と線状低密度ポリエチレンシート(水蒸気バリア性シート層a)とポリエステル製スパンレース不織布(繊維層b)が貼り合わされてなるオーバーラップ基材のポリエステル製スパンレース不織布(繊維層b)の面をゲルに向け、そのオーバーラップ基材でゲル表面を被覆し、四周を縫製した。
【0162】
(iii)このようにして、幅92cm、長さ180cmの敷パッドを製造した。
【0163】
(c)官能試験
敷パッドを、40℃の恒温室に2日間放置して、含水ゲル層中のポリマーの架橋を促進させた後、15℃の恒温室内に10日間放置した。
【0164】
30℃に設定された室内に布団を敷き、その上に敷パッドを敷き、綿ブロード製のシーツで覆った。なお、敷パッドは、繊維層aが人体と対向し、繊維層dが敷布団と対向するように敷いて使用した。対照として、敷パッドを敷かない布団も用意した。
【0165】
表面温度計を用いて、シーツの表面温度を測定した。また、シーツの上に被検者が横たわり、一定時間ごとに、首、肩、腰、尻、足及び胸に、冷感又は温感があるか否かを評価した。結果を表10に示す。
【0166】
【表10】

【0167】
表10から明らかなように、敷パッド無しでは、試験開始から10分後には、腕を除く5個所に、40分後には評価個所すべてに温感があったが、本発明の敷パッドを敷いた場合には、評価個所すべてで温感が生じたのは、展膏量3kg/mで120分後、展膏量5kg/mで150分後であり、展膏量7kg/mでは、180分後においても温感があったのは4個所にとどまった。
【0168】
また、敷パッドを敷かない布団を使用した被検者は、試験開始から30分程度が経過した後には、腰部の落ち込みによる腰痛を訴えたが、敷パッドを敷いた布団を使用した被検者は、腰痛を訴えることはなく、快適であると評価した。
【0169】
なお、この敷パッドの使用で、かゆみや皮膚野ざらつき等の皮膚刺激を訴えたものはいなかった。
【0170】
以上のとおりであるから、本発明の敷パッドを用いれば、気温が高い場合でも、快適な睡眠をとることができる。
【実施例8】
【0171】
含水ゲルの温度上昇及び低下特性の測定
(a)試料
実施例6で使用した冷却又は加温用シートI及びIIと同様のシートであって、含水ゲルの大きさが10cm×13cm×8mmのものを調製した。
【0172】
(b)試料の温度の測定(その1)
図11に示す構成で、試料の加温状態を経時的に測定、観察した。具体的には、42.6℃の温水を循環させた温水循環プレート91の上に、予め20℃に調温した試料93を置き、試料93の上部をポリエステル綿(目付量:400g/m)入りキルト97で覆った。試料93とキルト97との間に熱電対95を配置し、経時的に温度を測定した。なお、試料93は、表面が上を向き、裏面が温水循環プレート91と対向するような向きで使用した。結果を表11に示す。
【0173】
(c)試料の温度の測定(その2)
上記(b)の実験開始から2時間を経た、加温された試料93を使用し、図12に示す構成で、試料93の温度の低下状態を経時的に測定、観察した。具体的には、温水循環プレート91をはずし、代わりに試料93の下にポリエステル綿(目付量:400g/m)入りキルト99を配置し、温度の測定を継続した。なお、キルト99は、温水循環プレート91に貼り付けて2時間加温しておいたものである。結果を表12に示す。
【0174】
【表11】

【0175】
【表12】

【0176】
表11及び表12から明らかなように、含水ゲルが油脂を含有すると、油脂を含有しないものと比べて、温度の上昇も下降も速いという傾向にあることが分かった。また、本発明の冷却又は加温用シートI、IIは、加温を止めた後、温度が約38℃から約28℃まで10℃下がるのに、約1.5時間を要した。人が就寝する際には、人の体温があるので、加温を止めた後の温度の低下は、この実験よりも更に緩やかとなる。したがって、このようなシートを敷パッドとして使用し、電気毛布と人体の間に配すれば、電気毛布の電源を切った後も長時間にわたって暖を取ることができる。このように、本発明は、冬季において省エネルギーに寄与することが明らかとなった。
【実施例9】
【0177】
熱伝導性の測定
カトーテック株式会社製精密迅速熱物性測定装置KES−F7(THERMO LABO II TYPE)を用い、以下の条件で各種不織布の熱伝導率を測定した。結果を表13に示す。
【0178】
(熱伝導性の測定条件及び測定方法)
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
測定方法: 図4に示す熱物性測定装置50を用いた。恒温水槽から水循環され、20℃に維持されるように設定された熱板51上に、試料片(5cm×5cm)55を置き、その上に同寸法で40℃の熱板(試料加圧力:6g/cm)57を重ね、試料片を通して伝わる熱量を40℃の熱板57の温度を維持する熱量として測定し、試料片55の熱伝導性とする。
【0179】
【表13】

【実施例10】
【0180】
冷却用枕の製造と温度の測定
図13に示す構成の枕本体700の凹部701に、冷却用シート300と、図14に示す竹チップが充填されてなる袋体410とを収納して枕を使用した。
【0181】
(a)枕の構成
枕本体700
軟質ポリウレタンフォーム製で、図13に示す寸法であった。
【0182】
竹チップが充填されてなる袋体410
竹チップは、直径が約5乃至6mmで長さが約20乃至25mmとなるように加工されたものであった。竹チップが充填されてなる袋体410は、図14に示すように、約22cm×約42cmの木綿製袋体が幅方向に四等分されてなる、四個所の竹チップ充填部を有するものであって、一個所の竹チップ充填部に約210乃至220gの竹チップが充填されてなるものであった。
【0183】
冷却用シート300
(繊維層a) ポリエステル/綿(65%/35%)製織布(45番/45番;110本/76本);アモルデンNBP−8が、実施例3と同様の方法で約5g/mの量で付着されているもの
(水蒸気バリア性シート層a) 線状低密度ポリエチレンシート; 厚さ:40μm 透湿度(JIS Z0208): 6.8g/m・24時間
(繊維層b) ポリエステル製スパンレース不織布; 坪量:40g/m 熱伝導性: 8.9W/25cm・20℃(カトーテック株式会社製精密迅速熱物性測定装置KES−F7(THERMO LABO II TYPE)を用いて測定)
(含水ゲル層) 実施例1の表1に示された発明例5の処方の組成物を使用して調製;
展膏量:3kg/m
(繊維層c) ポリエステル製スパンニードル不織布; 坪量:100g/m; 熱伝導性: 5.8W/25cm・20℃(カトーテック株式会社製精密迅速熱物性測定装置KES−F7(THERMO LABO II TYPE)を用いて測定)
(水蒸気バリア性シート層b) 線状低密度ポリエチレンシート; 厚さ:40μm 透湿度(JIS Z0208): 6.8g/m・24時間
(繊維層d) ポリエステル/綿(65%/35%)製織布(45番/45番;110本/76本);アモルデンNBP−8が、実施例3と同様の方法で約5g/mの量で付着されているもの
【0184】
(b)冷却用シート300の製造方法
(i)ポリエステル製スパンニードル不織布と線状低密度ポリエチレンシートとポリエステル/綿製織布とが貼り合わされてなるベース基材のポリエステル製スパンニードル不織布上に、実施例1の表1に示された発明例5の処方の組成物を、展膏量が3kg/mとなるように展膏した。
【0185】
(ii)展膏とほぼ同時に、ポリエステル/綿製織布と線状低密度ポリエチレンシートとポリエステル製スパンレース不織布とが貼り合わされてなるオーバーラップ基材のポリエステル製スパンレース不織布の面をゲルに向け、そのオーバーラップ基材でゲル表面を被覆し、四周を接着した。
【0186】
(iii)その後、常温に一週間放置して、ポリアクリル酸類を架橋させた。このようにして、含水ゲルの大きさが約22cm×42cmの冷却用シートを調製した。
【0187】
(c)使用時の枕表面の温度の測定(その1)
枕本体700と、その凹部701に載置された竹チップが充填されてなる袋体410及び冷却用シート300からなる枕を、ピロー・ケースに収納した。なお、竹チップが充填されてなる袋体410及び冷却用シート300の載置の仕方は、図9(1)、(2)及び(3)と同様の三種類とした。
【0188】
10℃の室内に、冷却用シート300又は竹チップが充填されてなる袋体410の表面温度が約10℃となるまで枕を放置した。試験開始時に、ピロー・ケースの表面温度を測定した。被験者(体温:36.5℃)に枕を使用させ、その間、ピロー・ケースの表面温度の測定を続けた。対照として、T社製低反発枕を使用させ、同様にピロー・ケースの表面温度を測定した。結果を表14に示す。
【0189】
【表14】

【0190】
冷却用シート300の熱伝導性の高い方(内部の不織布の層が薄い方、図9(2))を頭に対向させて用いると、熱伝導性の低い方(内部の不織布の層が厚い方、図9(1))を頭に対向させて用いた場合や、竹チップが充填されてなる袋体410を頭に対向させて用いた場合に比べ、表面温度の上昇が遅く、頭を冷やす効果に優れることが明らかとなった。
【0191】
(d)使用時の枕表面の温度の測定(その2)
室温を約20℃としたことと、被験者の体温が36.7℃であったことと、事前に冷蔵又は冷蔵された冷却用シート300も用いた以外は、上記と同様の方法で試験を行った。結果を表15に示す。
【0192】
【表15】


【0193】
冷却用シート300を事前に冷蔵すると、冷蔵しない場合と比べて、使用時に熱伝導性の高い方(内部の不織布の層が薄い方、図9(2))と熱伝導性の低い方(内部の不織布の層が厚い方、図9(1))のいずれを枕に対向させるかによる低温保持効果の差異は小さくなる傾向にあった。しかし、差異は0ではなく、従って、本発明の枕は、使用者の好みに応じることができることが明らかである。また、冷蔵と比べて冷凍は、より大きな低温保持効果を示した。
【0194】
(e)使用時の枕表面の温度の測定(その3)
室温を約30℃としたことと、被験者の体温が36.2℃であったことと、事前に冷蔵又は冷蔵された冷却用シート300も用いた以外は、上記と同様の方法で試験を行った。結果を表16に示す。
【0195】
【表16】


【0196】
表14及び表15の結果を表16の結果と比較すると明らかなように、周囲温度の上昇により、ピロー・ケースの表面温度を低く保つ能力は低下する。しかし、室温が30℃でも、本発明の枕の使用により、頭部の冷却効果は確実に得られた。
【実施例11】
【0197】
反発性試験
実施例6で製造した本発明の冷却又加温用シートIに関し、反発性能を試験した。具体的には、重さ5.7kg、直径3/16インチのJIS規定鋼球を、高さ20cmから自然落下させ、鋼球の跳ね返り高さを測定した。比較のため、市販の軟質ウレタンフォームについても同様の試験を行った。結果を表17に示す。
【0198】
【表17】

【0199】
表17から明らかなように、本発明の冷却又加温用シートIの含水ゲルは、軟質ポリウレタンフォームと比べて低反発性であった。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明の冷却又は加温用シートの一例を示す断面図である。
【図2】水蒸気バリア性シート層として使用することが出来る、二層のポリマーシートとそれらの間に位置する金属箔からなる積層体を示す断面図である。
【図3】水蒸気バリア性シート層として使用することが出来る、金属系又は無機物蒸着層を有する金属系又は無機物蒸着ポリマーシートを示す断面図である。
【図4】熱伝導性測定装置の一例を示す断面模式図である。
【図5】ゲルのゼリー強度の測定方法を示す模式図である。
【図6】本発明の枕の本体の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の枕の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の枕の本体の他の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明の枕の他の一例を示す断面模式図である。
【図10】電磁波の測定方法を示す模式図である。
【図11】本発明の冷却又は加温用シートの温度上昇傾向の測定方法を示す模式図である。
【図12】本発明の冷却又は加温用シートの温度低下傾向の測定方法を示す模式図である。
【図13】本発明の枕の本体のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図14】竹チップが充填されてなる袋体の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0201】
1,9 織布
2 糸
3,7,61,63,71 ポリマーシート
5 含水ゲル
30 袋体
13,15 不織布
41 アダプター
43 ゲル試料
45 試料用架台
50 熱物性測定装置
51 定温台
53 熱源台
55 試料片
57 熱板
60 積層体
65 金属箔
70 金属系又は無機物蒸着ポリマーシート
75 金属系又は無機物蒸着層
81 布団
83 電気毛布
85 試験材
87 測定器
89 簡易シールド箱
91 温水循環プレート
93 試料
95 熱電対
97,99 キルト
300 冷却又は加温用シート
400,410 竹チップが充填されてなる袋体
500,600,700 枕本体
501 孔
601,701 凹部
1000,1100,1200,2000,2100,2200,2300 枕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維層a、水蒸気バリア性シート層a、繊維層b、含水ゲル層、繊維層c、水蒸気バリア性シート層b及び繊維層dをこの順で具備し、含水ゲル層は露出していない冷却又は加温用シートであって、含水ゲル層が、下記の条件で測定して10乃至5,000gのゼリー強度を有し、水蒸気バリア性シート層a及びbは、各々、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)における透湿度が10g/m・24時間以下であり、繊維層a、水蒸気バリア性シート層a及び繊維層bを備える第一の面の熱伝導性と、繊維層c、水蒸気バリア性シート層b及び繊維層dを備える第二の面の熱伝導性とが、以下の条件及び方法で測定して少なくとも1.0W/25cm・20℃異なることを特徴とする冷却又は加温用シート:
(ゼリー強度測定条件)
測定器: 圧縮型物性測定器
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
圧縮形状及び面積: 直径30mmの円、7.065cm
圧縮量(変位量): 2mm
圧縮速度: 1mm/秒
測定試料の大きさ: 20cm×30cm×6mm(厚さ)
(熱伝導性の測定条件及び方法)
測定器: 熱物性測定装置
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
測定方法: 恒温水槽から水循環され、20℃に維持されるように設定された熱板(5cm×5cm)上に、同寸法の試料片を置き、その上に同寸法で40℃の熱板(6g/cm)を重ね、試料片を通して伝わる熱量を40℃の熱板の温度を維持する熱量として測定し、試料片の熱伝導性とする。
【請求項2】
第一の面の熱伝導性と第二の面の熱伝導性との相違が、繊維層bと繊維層cとの熱伝導性の相違による、請求項1に記載の冷却又は加温用シート。
【請求項3】
繊維層aと繊維層dの各々には、トリアゾール系防黴剤、ピリチオン系防黴剤、ベンズイミダゾール系防黴剤、ベンズチアゾール系防黴剤、イソチアゾリン系防黴剤、及びチアベンダゾール系防黴剤からなる群から選択される1種以上の防黴剤が、少なくともその両面に付着されており、その量は、0.1乃至40g/mである、請求項1又は2に記載の冷却又は加温用シート。
【請求項4】
含水ゲル層のゼリー強度が10乃至3,000gである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却又は加温用シート。
【請求項5】
含水ゲルは、ポリアクリル酸類の架橋物を含有し、含水ゲル全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は1乃至10重量%であり、架橋剤の量は0.01乃至0.5重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.2重量%であり、水の量は30乃至95重量%である組成物から調製されたものである、請求項4に記載の冷却又は加温用シート。
【請求項6】
枕であって、その中央部に凹部又は孔を有し、その凹部又は孔には、請求項1乃至5のいずれかに記載の冷却又は加温用シートが着脱自在に収納されてなることを特徴とする枕。
【請求項7】
前記凹部又は孔には、さらに、その内部に植物素材のチップ又は合成樹脂素材のチップ又はパイプが充填されてなる袋体が、前記冷却又は加温用シートに重ねあわされて着脱自在に収納されてなる、請求項6に記載の枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−233283(P2009−233283A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86631(P2008−86631)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(397007011)株式会社オーシンエムエルピー (12)
【Fターム(参考)】