説明

冷却器

【課題】冷却能力を簡単に変更することができ、多機種への転用が可能である。
【解決手段】この発明に係る冷却器は、枠体1と、この枠体1の両側に設けられ、枠体1と協働して冷媒を閉じる空間を形成する第1の板2及び第2の板3と、枠体1に設けられ、冷媒を空間の内部に導入する冷媒流入部6、及び空間の冷媒を外部に流出する冷媒流出部7と、空間に並列に配置された複数の冷却フィン5とを備え、冷却フィン5には、冷媒が通る切欠き部が形成されており、冷媒流入部6から空間内に流入した冷媒は、切欠き部、冷媒流出部7を通じて外部に流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、半導体モジュール等の電力変換装置を冷却する冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、発熱体である半導体モジュール等の電力変換装置を冷却器上に配置し、冷却器を通じて冷媒に熱を放出する。
近年、電動機の高出力化に伴い電力変換装置の発熱量も大きくなり、冷却器の冷却性能を大きく向上させる必要が高まってきた。
しかし、電動機は、高出力化だけでなく小型化も必要とされ、低出力で小型な電動機も存在する。
このため、電力変換装置は、使用する電動機ごとに様々に存在し、冷却器も電動機の出力に合わせて設計すると、冷却器を他の電力変換装置に転用することが難しく、大量生産できないため生産時のコストダウンを阻害していた。
【0003】
従来の力変換装置用冷却器として、表面にディンプル等の加工を施した薄板部材で作製された多数枚の冷却フィンを空気の流れ方向に沿って所定間隔をおいて配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の電力変換装置用冷却器として、複数枚の冷却フィンを隣り合う冷却フィンが相対向するように並列させて立設し、各冷却フィンの高さを並べ方向内側のものほど高く成形し、また冷却フィンには切欠き、穴が形成されたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4585881号明細書
【特許文献2】特開2008−10820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記冷却器は、共に冷却フィンとして板材を加工するだけで成形されるため生産性が高く、さらに冷却フィンのピッチや冷却フィン高さを変え易く設計の自由度も高いために多機種への転用に向くが、以下に示す問題点があった。
上記特許文献1の冷却器は、冷媒として空気を想定しており、冷却フィンが空気の流れ方向に沿って配置され、空気は冷却フィンに沿って一方向に流れており、圧力損失が低いが空気に対して積極的に乱流を起こすことができず高い熱伝達率を得ることができない。
【0007】
また、上記特許文献2の冷却器も、特許文献1のものと同様に冷媒として空気を想定し、流れ方向が定まっていない空気に対して全方位で対応させるために、冷却フィンの高さを並べ方向内側のものほど高くしており、液冷式の冷却器などの閉ざされた空間を決まった方向に冷媒が流れる冷却器には不向きである。
【0008】
この発明は、かかる問題点を解決することを課題とするものであって、大量生産、他機種への転用が可能であって、しかも高い冷却性能を発揮することができる冷却器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る冷却器は、枠体と、この枠体の両側に設けられ、枠体と協働して冷媒を閉じる空間を形成する第1の板及び第2の板と、前記枠体に設けられ、前記冷媒を前記空間の内部に導入する冷媒流入部、及び前記空間の冷媒を外部に流出する冷媒流出部と、
前記空間に並列に配置された複数の冷却フィンとを備え、
前記冷却フィンには、前記冷媒が通る連通部が形成されており、
前記冷媒流入部から前記空間内に流入した前記冷媒は、前記連通部、前記冷媒流出部を通じて外部に流出するようになっている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る電力変換装置用冷却器によれば、冷却フィンには、冷媒が通る連通部が形成されており、冷媒流入部から空間内に流入した冷媒は、連通部、冷媒流出部を通じて外部に流出するようになっているので、冷却フィンの配置枚数を変更することで、冷却能力を変更することができ、多機種への転用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1の電力変換装置用冷却器を示す内部上面図である。
【図2】図2(a)は図1の冷却フィンを示すA−A線に沿った矢視断面図、図2(b)は冷却フィンの変形例である。
【図3】図1の電力変換装置用冷却器の内部の冷媒の流速分布を示す分布図である。
【図4】この発明の実施の形態2の電力変換装置用冷却器を示す内部上面図である。
【図5】図5(a)は図4の冷却フィンを示すB−B線に沿った矢視断面図、図5(b)は冷却フィンの変形例である。
【図6】この発明の実施の形態3の電力変換装置用冷却器を示す内部上面図である。
【図7】図6の冷却フィンを示すC−C線に沿った矢視断面図である。
【図8】図7の冷却フィンを示すD−D線に沿った矢視断面図である。
【図9】電力変換装置用冷却器の冷却フィンにおける撓みを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の各実施の形態の電力変換装置用冷却器について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の電力変換装置用冷却器(以下、冷却器と略称する。)を示す内部上面図、図2(a)は図1の冷却フィン5を示すA−A線に沿った矢視断面図である。
この冷却器は、電力変換装置の底面と面接触した冷却器であって、アルミダイカスト製の枠体1と、この枠体1を両側に設けられ枠体1と協働して冷媒である水を閉じる空間を形成する第1の板2及び第2の板3と、この空間内に収納された複数の冷却フィン5と、先端部が枠体1の縁部の一方の側に取り付けられた冷媒流入部6と、この冷媒流入部6と並列に枠体1の縁部の他方の側に取り付けられた冷媒流出部7とを備えている。
枠体1は、冷媒流入部6及び冷媒流出部8側に複数の凹凸部が形成された嵌め込み部4を有している。この嵌め込み部4の凹部に冷却フィン5の端部が嵌着され、各冷却フィン5が互いに並列に配列されている。
【0014】
各冷却フィン5は、図2(a)から分かるように、上部と下部にそれぞれ冷媒の流れ方向に沿って等分間隔で連通部である切欠き部8a,8bがプレス加工により形成されている。切欠き部8a,8bは、互いに対向しないように形成されている。
なお、図2(b)に示すように、上部と下部にそれぞれ冷媒の流れ方向に沿って等分間隔で連通部である穴部11a、11bがプレス加工により形成された冷却フィン5Aであってもよい。
【0015】
上記冷却器は、冷媒が冷媒流入部6から枠体1の内部の往流路9に入る。この冷媒は、往流路9では、矢印イの方向に流れる一方、途中切欠き部8a,8bを通じて矢印イに対して垂直の矢印ロの方向にも分流して流れ、これらの冷媒は、復流路10で合流し、復流路10では矢印ハの方向に流れ、冷媒流出部7を通じて外部に流出する。
【0016】
この実施の形態による冷却器によれば、冷却フィン5,5Aは、プレス加工により、切欠き部8a,8b、穴部11a,11bを形成することができ、冷却フィン5,5Aの生産性が高い。
また、冷却フィン5,5Aには、往流路9と復流路10とを連通した連通部である切欠き部8a,8b、穴部11a,11bが形成されているので、冷媒は、往流路9から切欠き部8a、8b、穴部11a、11bを通じて分流して復流路10に流れるので、冷媒は乱流が生じ易く、冷却器の熱伝達率が高い。
【0017】
また、枠体1は、そのままで、冷却フィン5、5Aの配置枚数、切欠き部8a,8b、穴部11a,11bの寸法を変更することで冷却器の熱伝達率や圧力損失を容易に調整できるので、多機種への転用が可能となる。
また、多機種への転用が可能なため枠体1を大量生産することができ、コストが削減される。
また、各冷却フィン5,5Aは、端部を枠体1の嵌め込み部4に形成された凹部にそれぞれ嵌着されることで、枠体1に容易に位置決め、組み付けられることができ、冷却フィン5,5Aを支持する部材を設ける必要性がなく、生産性が向上するとともにコストが低減される。
【0018】
実施の形態2.
図3は図1の冷却器の内部の流速分布を示す分布図である。
この図から分かるように、往流路9から復流路10に流れる冷媒の流速は、冷媒流入部6及び冷媒流出部7から離れるに従って減少する。そのため、冷媒流入部6及び冷媒流出部7から離れるに従って、冷却器の熱伝達率は低下する。
この実施の形態2の冷却器は、この不都合を解消するためになされたものである。
【0019】
図4はこの発明の実施の形態2の冷却器を示す内部上面図、図5(a)は図4の冷却フィンを示すB−B線に沿った矢視断面図である。
この実施の形態では、冷却フィン15の連通部である切欠き部18a,18bは、冷媒流入部6、冷媒流出部7から離れるに従って、冷媒の流れ方向に沿った幅寸法が大きく形成されている。
このようにすることで、冷媒流入部6、冷媒流出部7に近づくほど、矢印ロに示すように、往流路9から復流路10に流れる冷媒の流れ抵抗が大きくなり、冷却器の内部全体では、往流路9から復流路10に流れる冷媒の流速は均等化され、冷却性能のムラを抑えることができる。
【0020】
なお、図5(b)に示すように、冷媒の流れ方向に沿って径寸法が大きく形成された連通部である穴部21a,21bが上部及び下部にそれぞれプレス加工により形成された冷却フィン15Aであってもよい。
なお、他の構成は、実施の形態1の冷却器と同じである。
【0021】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3の冷却器を示す内部上面図、図7は図6の冷却フィン25を示すC−C線に沿った矢視断面図、図8は図7の冷却フィンを示すD−D線に沿った矢視断面図である。
この実施の形態では、冷却フィン25は、上部と下部にそれぞれ冷媒の流れ方向に沿って大径の連通部である大穴部31aと小径の連通部である小穴部31bとが交互に形成されている。また、冷却フィン25の上部と下部とに、大穴部31aと小穴部31bとが対向して配置されている。
また、各冷却フィン25は、嵌め込み部4の凹部に、隣接した冷却フィン25に対して冷却フィン25を上下に180度反転し、または左右に180度反転して嵌着されている。
また、各冷却フィン25の上端面と第1の板2との間、各冷却フィン25の下端面と第2の板3との間は、ろう付けで溶接されている。
他の構成は、実施の形態1の冷却器と同じである。
【0022】
この実施の形態の冷却器では、図8に示すように、往流路9から復流路10に流れる冷媒は、途中冷却フィン2の大穴部31aと小穴部31bとを交互に通過するので、乱流がそれだけ生じ易くなり、熱伝達率をより効果的に上げることができる。
また、一種類の冷却フィン25を上下、左右に反転して順次配置することで、冷媒に乱流を生じさせることができ、冷却フィン25を作製するために必要な金型は1つで済むために、低コストで高性能な冷却器を製作することができる。
【0023】
また、上記冷却器は、冷媒が連通部である大穴部31a、連通部である小穴部8bを通じて流れるので、冷却フィン25を通過する際に冷却フィン25は、その面に圧力を受けるため、この圧力に対する対策がなされていない場合には、図9に示すように撓みが発生する。
これに対しては、各冷却フィン25の上端面と第1の板2との間、各冷却フィン25の下端面と第2の板3との間が、ろう付けで溶接されているので、冷却フィン25の撓み変形を防止することができるとともに、第1の板2及び第2の板3と冷却フィン25とが金属結合され、第1の板2及び第2の板3と冷却フィン25との間の熱抵抗を低減することができる。
なお、実施の形態1の冷却フィン5、5A、実施の形態2の冷却フィン15、15Aについても、勿論、実施の形態3と同様に、第1の板2、第2の板3にろう付けで溶接するようにしてもよい。
【0024】
なお、上記各実施の形態では、冷媒流入部6及び冷媒流出部7を枠体1の同じ側の縁部に設けたが、冷媒流入部6及び冷媒流出部7を枠体1の対角線の部位に設けるようにしてもよい。
また、冷媒は水に限定されるものではなく、例えば空気であってもよい。
また、電力変換装置が載置され、電力変換装置の底面と面接触した電力変換装置用冷却器は、一例であり、この発明は、他の電機機器を冷却する冷却器にも適用できるのは勿論である。
また、冷却フィン5、5A,15、15A,25と、第1の板2及び第2の板3の端面との固定については、ろう材を用いることなく融接により固定するようにしてもよい。
また、冷却フィン5、5A,15、15A,25に形成された連通部の形状については、矩形状、円形は一例であり、これらの形状に限定されない。
【符号の説明】
【0025】
1 枠体、2 第1の板、3 第2の板、4 嵌め込み部、5,5A,15,15A 25 冷却フィン、6 冷媒流入部、7 冷媒流出部、8a,8b,18a,18b 切欠き部(連通部)、9 往流路、10 復流路、11a,11b,21a,21b 穴部(連通部)、31a 大穴部(連通部)、31b 小穴部(連通部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
この枠体の両側に設けられ、枠体と協働して冷媒を閉じる空間を形成する第1の板及び第2の板と、
前記枠体に設けられ、前記冷媒を前記空間の内部に導入する冷媒流入部、及び前記空間の冷媒を外部に流出する冷媒流出部と、
前記空間に並列に配置された複数の冷却フィンとを備え、
前記冷却フィンには、前記冷媒が通る連通部が形成されており、
前記冷媒流入部から前記空間内に流入した前記冷媒は、前記連通部、前記冷媒流出部を通じて外部に流出することを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記冷媒流入部及び前記冷媒流出部は、前記枠体の同じ側の縁部に設けられ、
前記空間は、内部に前記冷媒流入部に連通した往流路と、前記冷媒流出部に連通した復流路とが形成され、
各前記冷却フィンは、前記往流路と前記復流路との間に並列に配置され、
前記冷媒は、前記冷媒流入部、前記往流路、前記連通部、前記復流路、前記冷媒流出部を通じて外部に流出することを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記連通部は、前記冷媒流入部に離れた側が近い側に比較して冷媒通過面積が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の冷却器。
【請求項4】
前記冷却フィンは、前記連通部が複数の異なる形状で形成されており、この同一の冷却フィンは、上下または左右に180度反転して順次配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の冷却器。
【請求項5】
前記枠体は、複数の凹凸部が形成された嵌め込み部を有しており、この嵌め込み部の凹部に前記冷却フィンの端部が嵌着されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の冷却器。
【請求項6】
前記冷却フィンは、両端面が前記第1の板及び前記第2の板と溶接により固定されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の冷却器。
【請求項7】
前記冷却フィンは、平板をプレス加工して形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の冷却器。
【請求項8】
前記冷却器は、電力変換装置を冷却することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−216708(P2012−216708A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81712(P2011−81712)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】