説明

冷却型撮像装置

【課題】撮像素子を十分に冷却すると共に撮像素子の撮像面への結露を防止する。
【解決手段】冷却型撮像装置1は、撮像面を有する撮像素子15と、撮像素子15を撮像面の反対側の裏面側から冷却する冷却手段17と、撮像素子15の撮像面を内部に配置する第1の密閉室110と、撮像素子15の裏面及び冷却手段17を内部に配置する第2の密閉室120と、第1の密閉室110と第2の密閉室120とを連通する通気孔11,12と、通気孔11,12を開放及び閉止する開閉部材19,20と、開閉部材19,20の開閉動作を制御する制御手段21と、を備え、制御手段21は、冷却手段17の冷却動作時は通気孔11,12を開放するように、冷却手段17の冷却動作の停止時には通気孔11,12を閉止状態に維持するように、開閉部材19,20を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却型撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子は、自己発熱や周囲温度の上昇などによって内部温度が上昇すると、暗電流が増加して固定パターンノイズが発生するので、撮像素子をペルチェ素子などで冷却して固定パターンノイズを低減することが知られている。
ところが、撮像素子をペルチェ素子等によって冷却すると、撮像素子の撮像面などに結露が生じ、撮像するべき光学像を劣化させてしまう。
そこで、撮像素子を冷却しつつ、撮像素子の撮像面などへの結露の発生を防止した冷却型撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載された冷却型撮像装置は、撮像装置内の温度と相対湿度とを検出し、ペルチェ素子によって撮像素子を冷却する際の結露発生の有無を温度及び相対湿度の検出結果に基づき判定して、結露の発生が起こりうる場合に、冷却を中止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−117911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の冷却型撮像装置は、結露の発生を防止するために、撮像装置内の温度と相対湿度との検出結果に撮像素子の冷却を中止してしまうので、冷却動作が不十分となり、撮像素子の固定パターンノイズを十分に低減することができない場合があるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1の発明による冷却型撮像装置は、撮像面を有する撮像素子と、前記撮像素子を前記撮像面の反対側の裏面側から冷却する冷却手段と、前記撮像素子の撮像面を内部に配置する第1の密閉室と、前記撮像素子の裏面及び前記冷却手段を内部に配置する第2の密閉室と、前記第1の密閉室と前記第2の密閉室とを連通する通気孔と、前記通気孔を開放及び閉止する開閉部材と、前記開閉部材の開閉動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記冷却手段の冷却動作時は前記通気孔を開放するように、前記冷却手段の前記冷却動作の停止時には前記通気孔を閉止状態に維持するように、前記開閉部材を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の冷却型撮像装置によれば、冷却動作時には通気孔の開放によって第1及び第2の密閉室が連通し、第1及び第2の密閉室内で冷却手段が最も低温になるので、第1の密閉室内の撮像素子の撮像面に結露が生じることがなく、冷却動作の停止時には通気孔の閉止によって第1及び第2の密閉室の連通が遮断されるので、この場合も第1の密閉室内の撮像素子の撮像面に結露が生じることがなく、よって、十分な冷却動作が可能になり、撮像素子の固定パターンノイズを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷却型撮像装置の断面図であって、通気孔の開放状態を示す図。
【図2】本発明の実施の形態に係る冷却型撮像装置の断面図であって、通気孔の閉止状態を示す図。
【図3】図1に示す仕切り壁を示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る冷却型撮像装置の制御系を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態による顕微鏡用の冷却型撮像装置を説明する。
図1において、冷却型撮像装置1は、横断面が矩形の側壁2と下部の底壁3と上部の底壁4とを有し、これらの側壁2と下部の底壁3と上部の底壁4は、内部空間を有する筐体100を構成する。筐体100は、仕切り壁5によって第1の密閉室110と第2の密閉室120とに区分され、即ち仕切られている。
更に、側壁2の下端部は、下部底壁3から突出しており、その下端面に底板6が取り付けられている。この底板6には、多数の貫通孔7が穿孔されている。
【0009】
下部底壁3は側壁2と一体に構成されている。また、上部底壁4はOリング8を介して側壁2に固定されている。上部底壁4のほぼ中央部には開口4aが形成され、この開口4aを覆うように、透明窓部材9がビス9aによってOリング9bを介して取り付けられている。
このように、透明窓部材9は、第1の密閉室110が室外の周囲の雰囲気に対して気密性を保持するように、開口4aに取り付けられている。なお、透明窓部材9は例えば光学フィルタを使用することができる。
こうして、筐体100の内部の第1及び第2の密閉室110,120は、外部に対してほぼ気密状態、または密閉状態に保たれる。
【0010】
上部底壁4には顕微鏡取付用のマウント10が取り付けられ、撮像装置1はこのマウント10によって不図示の顕微鏡に搭載され、顕微鏡の観察像を撮像する。
【0011】
仕切り壁5は側壁2の内周部に固着され、仕切り壁5には、その中央部に中央開口5aが穿設されていると共に、中央開口5aの両側にそれぞれ第1及び第2の通気孔11,12が穿設されている。
下部底壁3には回路基板13が、下部底壁3との間に所定の間隙が生ずるように、ネジ14によって取り付けられている。回路基板13には、パッケージに収容された撮像素子15が実装されている。撮像素子15は、回路基板13の上面から所定距離だけ離れた状態で、リード線16によって回路基板13に取り付けられている。
【0012】
また、撮像素子15は、仕切り壁5の中央開口5aに密嵌され、即ち中央開口5aとの間に隙間が生じないように配置されている。こうして、撮像素子15は、その表面、即ち撮像面が透明窓部材9に向き、冷却型撮像装置1が顕微鏡のポートに取り付けられたときに撮像面の中心が顕微鏡の光軸Lに一致するように位置決めされる。
撮像素子15の裏面にはペルチェ素子17の冷却面が密接、又は密着されている。ペルチェ素子17の放熱面は放熱部材18に密接、又は密着している。放熱部材18は下部底壁3に一体的に突設された放熱突起部から構成され、この放熱部材18はペルチェ素子17の熱を吸収するヒートシンクとして機能する。
また、ペルチェ素子17と放熱部材18とは、回路基板13に設けられた開口13aを貫通している。
なお、放熱部材18は、この実施の形態では下部底壁3から一体に突設された放熱突起部として構成したが、このような構成に限られるものではなく下部底壁3に密接された別部品として構成することもできる。
【0013】
図1乃至図3において、仕切り壁5の下面には、第1及び第2の開閉板、即ち開閉部材19,20が設置され、この第1及び第2の開閉部材19、20は、それぞれ第1及び第2の通気孔11,12を完全に閉止する閉止位置と開放する開放位置との間を、図3に矢印で示すように摺動可能に構成されている。
なお、図1及び図3は、第1及び第2の開閉部材19、20が開放位置にある状態を示しており、図2は、第1及び第2の開閉部材19、20が閉止位置にある状態を示している。
こうして、第1及び第2の密閉室110,120は、第1及び第2の開閉部材19、20が閉止位置にある時には、それぞれ独立した密閉空間を形成し、第1及び第2の開閉部材19、20が開放位置にある時には、互いに連通した密閉空間を形成する。
【0014】
図4は、冷却型撮像装置1の駆動部と制御部を示したブロック図である。
コントローラ21は、撮像素子15の動作及びペルチェ素子17の動作をそれぞれ制御すると共に、モータ22の駆動を制御する。モータ22は、第1及び第2の開閉部材19,20をその開放位置と閉止位置との間で移動させる。
もちろん、モータ22は、第2の密閉室120内に配置されている。
【0015】
次に、第1の実施の形態に係る冷却型撮像装置の動作を説明する。
撮像装置1が起動されると、モータ22がコントローラ21の指令により第1及び第2の開閉部材19,20を開放駆動し、第1及び第2の開閉部材19,20を図1及び図3に示した開放位置に移動させる。これによって、第1及び第2の通気孔11,12が開放して第1及び第2の密閉室110,120を互いに連通させる。
これと同時に、ペルチェ素子17は、コントローラ21からの指令に従い、撮像素子15を裏面から冷却する。この時、ペルチェ素子17の放熱面の熱は、ヒートシンクとして機能する放熱部材18によって吸熱されて、下部底壁3に伝熱し大きな熱容量の側壁2に吸収される。
【0016】
このペルチェ素子17の冷却動作によって、ペルチェ素子17の冷却面周辺が、第1及び第2の密閉室110,120内において、最も低温な部分になる。
従って、第2の密閉室120内の空気中の水蒸気は、この最低温度部分、即ちペルチェ素子17の冷却面付近に結露する。この結露に伴い、第1の密閉室110内の空気中の水蒸気は、図1に矢印で示したように、第1及び第2の通気孔11,12を通って第2の密閉室120に流入し、同様に、ペルチェ素子17の冷却面付近に結露する。
【0017】
こうして、ペルチェ素子17が撮像素子15をその裏面側から十分に冷却しても、撮像素子15の撮像面には結露が発生することはないので、撮像素子15は、固定パターンノイズの発生を十分に抑制して顕微鏡観察像を撮像することができ、極めて良好な撮像信号を出力することができる。
【0018】
撮像装置1の動作停止時には、コントローラ21からの指示によって、ペルチェ素子17がその冷却動作を停止すると同時に、モータ22が第1及び第2の開閉部材19,20を図2に示すように閉止位置に移動させる。この第1及び第2の開閉部材19,20の閉止位置への移動によって、第1及び第2の通気孔11,12が閉止されて第1及び第2の密閉室110,120の連通が遮断される。
ペルチェ素子17の冷却動作の停止によって、ペルチェ素子17の冷却面周辺の温度は、急激に上昇し、冷却動作時の結露が蒸発し水蒸気となるが、この水蒸気は第1及び第2の通気孔11,12の閉止によって、第2の密閉室120内に閉じ込められ、第1の密閉室110内に流出することはない。
【0019】
他方、第1の密閉室110内の撮像素子15の撮像面は、ペルチェ素子17の冷却動作の停止に伴い、徐々に温度上昇するが、上述のように第2の密閉室120に発生した水蒸気が第1の密閉室110に流入することはないので、撮像素子15の撮像面に結露が生ずることはない。
なお、冷却動作の停止時に撮像素子15の撮像面での結露を許容した場合には、その結露がその後に蒸発すると、撮像面に水の蒸発痕跡が残り、その痕跡が顕微鏡観察像を劣化させる恐れがあるので、冷却動作の停止時にも撮像素子15の撮像面での結露の発生を防止することが望ましい。
撮像装置1は、上述の動作の停止後、比較的早期に撮像動作を再開したい場合にも、撮像面に結露が存在しないので、直ちに再開することができる。
【0020】
以下に本発明の実施の形態の効果を説明する。
(1)撮像素子は、撮像面などに結露が生じることなく、十分に冷却されるので、固定パターンノイズを十分に低減することができ、良好な画像信号を得ることができる。
(2)第1及び第2の密閉室を連通する通気孔を、冷却動作の開始及び停止に連動させて開閉するという非常に簡単な構成及び制御によって、撮像素子を十分に冷却すると共に撮像素子の撮像面などへの結露を防止することができる。
(3)撮像素子の撮像面での結露防止のために、温度や相対湿度を測定する専用の検出器を必要としないので、冷却型撮像装置の製造コストを低減することができる。
【0021】
本実施の形態に係る冷却型撮像装置の構成は、上述した通りであるが、次にその変形例を説明する。
本実施の形態にあっては下部の底壁3は、第1及び第2の密閉室110,120の十分な気密性を確保するために側壁2と一体に構成されているが、上部底壁4と同様に、側壁2とは別部品として、Oリングなどを介して側壁2に固着することもできる。
本実施の形態にあっては第1の通気孔11の幅は、第2の通気孔12の幅よりも大きく定められているが、両通気孔の幅を同一にしてもよい。
本実施の形態にあっては第1及び第2の開閉部材19,20の開閉動作は、モータ22によって行われるが、このモータ22による第1及び第2の開閉部材19,20の開閉機構は、単一のモータの駆動力を第1及び第2の開閉部材19,20にそれぞれ伝達する第1及び第2の伝達機構から構成することもできる。また、第1及び第2の開閉部材19,20の各々について、モータと伝達機構とを使用することもできる。
第1及び第2の開閉部材19,20の開閉動作の駆動源としては、モータ以外のアクチュエータを使用することもできる。
【0022】
本実施の形態にあっては冷却素子としてペルチェ素子を使用したが、それ以外の冷却素子を使用してもよい。
本実施の形態にあっては第1及び第2の密閉室110,120を2個の通気孔11,12によって連通したが、通気孔の個数は2個に限られるものではなく、1個でも又は3個以上でもよい。
更に、本実施の形態にあっては冷却型撮像装置は、顕微鏡の観察像を撮像するものであったが、本発明は、この用途に限ることなく、温度上昇に伴う固定パターンノイズの発生を防止することが必要な撮像装置に広く適用することができるものである。
【0023】
本発明は、その特徴を損なわない限り、以上説明した実施の形態に何ら限定されない。
【符号の説明】
【0024】
1:冷却型撮像装置 11:第1の通気孔
12:第2の通気孔 15:撮像素子
17:ペルチェ素子 19:第1の開閉部材
20:第2の開閉部材 21:コントローラ
110:第1の密閉室 120:第2の密閉室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像面を有する撮像素子と、
前記撮像素子を前記撮像面の反対側の裏面側から冷却する冷却手段と、
前記撮像素子の撮像面を内部に配置する第1の密閉室と、
前記撮像素子の裏面及び前記冷却手段を内部に配置する第2の密閉室と、
前記第1の密閉室と前記第2の密閉室とを連通する通気孔と、
前記通気孔を開放及び閉止する開閉部材と、
前記開閉部材の開閉動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記冷却手段の冷却動作時は前記通気孔を開放するように、前記冷却手段の前記冷却動作の停止時には前記通気孔を閉止状態に維持するように、前記開閉部材を制御することを特徴とする冷却型撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却型撮像装置において、
前記冷却手段はペルチェ素子を含み、
前記第2の密閉室は、側壁と、前記第1及び第2の密閉室とを仕切る仕切り壁と、底壁とを有し、
前記底壁は、前記ペルチェ素子に接触して前記ペルチェ素子からの熱を前記底壁に放熱する放熱部材を有することを特徴とする冷却型撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却型撮像装置において、
前記仕切り壁は開口を有し、
前記開口には前記撮像素子が、前記撮像面が前記第1の密閉室に臨むように、配置され、
前記仕切り壁には前記通気孔が穿孔されていることを特徴とする冷却型撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却型撮像装置において、
前記通気孔は、前記仕切り壁に前記開口を挟むように複数個穿孔されていることを特徴とする冷却型撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷却型撮像装置において、
前記第1の密閉室は、前記仕切り壁と側壁と底壁とから構成され、
前記第1の密閉室の底壁には、前記撮像面に撮像光束を導く透明窓部材が設けられていることを特徴とする冷却型撮像装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−120044(P2011−120044A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276179(P2009−276179)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】