説明

冷却機構、及び、当該冷却機構を搭載する冷却機構搭載装置

【課題】消費電力及び騒音を抑制する。
【解決手段】制御部は、冷却部に低効率冷却状態で駆動させる(S105)とともに、その後に、検出温度Tが切替用閾値温度(第1閾値温度Tth1)に到達した場合(S115で“Yes”の場合)であっても、低効率冷却状態での処理終了時の温度(ファン低速印刷終了時温度Ta)が上限閾値温度(第2閾値温度Tth2)以下になるとき(S130で“No”のとき)には、冷却部の冷却状態を高効率冷却状態に切り替えずに、低効率冷却状態のままに維持する(S135)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却対象物を冷却する冷却機構、及び、当該冷却機構を搭載する冷却機構搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像形成装置やプロジェクタ等の様々な装置は、内部に、冷却機構を搭載している。冷却機構は、各種の発熱体を冷却対象物とし、冷却ファン等の冷却部によって冷却対象物を冷却する機構である。その冷却機構の中には、冷却対象物の温度を検出する温度検出部を有しており、温度検出部によって検出された検出温度に応じて、冷却ファンの駆動を切り替える装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された冷却機構(以下、「従来の冷却機構」と称する)は、2つの温度が設定されており、検出温度が第1設定温度に達するまでは、冷却ファンを停止させ、検出温度が第1設定温度に達したら、低速で冷却ファンを回転駆動させ、さらに、検出温度が第2設定温度に達したら、高速で冷却ファンを回転駆動させる。
【0004】
従来の冷却機構は、検出温度が所定の温度(ここでは、第2設定温度)に達すると、これを契機にして、定性的に、冷却ファンの回転速度を低速から高速に切り替える。このとき、冷却機構は、冷却ファンが常に高速で回転するため、消費電力及び騒音が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−211763号公報(段落27、段落30)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の冷却機構は、検出温度が所定の温度に達すると、定性的に、冷却ファンの回転速度を切り替えるため、消費電力及び騒音が増大する傾向にある、という課題があった。
【0007】
この点について、発明者は、検出温度が所定の温度に達した場合であっても、冷却ファンの回転速度の切り替えタイミングを遅延させることができる場合には、冷却ファンの回転速度を高速に切り替えずに低速のままに維持すれば、高速での冷却ファンの駆動時間を短縮することができ、これによって、消費電力及び騒音を抑制することができる、と考えた。
【0008】
なお、従来の冷却機構は、冷却部として、冷却ファンの代わりに、例えば、ペルチェ素子等を用いることができる。しかしながら、この構成の場合も、従来の冷却機構は、検出温度が所定の温度に達すると、定性的に、冷却効率の低い状態通常の冷却状態から冷却効率の高い急冷却状態に切り替わるため、消費電力が増大する。発明者は、この構成の場合についても、ペルチェ素子の駆動状態の切り替えタイミングを遅延させることができる場合には、ペルチェ素子の駆動状態を切り替えずに通常の冷却状態のままに維持すれば、急冷却状態でのペルチェ素子の駆動時間を短縮することができ、これによって、消費電力を抑制することができる、と考えた。
【0009】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、消費電力を抑制する冷却機構、及び、当該冷却機構を搭載する冷却機構搭載装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、第1発明は、冷却対象物を冷却する冷却機構であって、前記冷却対象物を冷却する冷却部と、前記冷却対象物の温度を検出温度として検出する温度検出部と、前記冷却部の冷却状態を、冷却効率が低い低効率冷却状態、及び、当該低効率冷却状態よりも冷却効率が高い高効率冷却状態のいずれかに切り替える制御部と、少なくとも、前記冷却部の冷却状態を前記低効率冷却状態から前記高効率冷却状態に切り替えるための基準の温度として用いられる切替用閾値温度と、温度制御の上限値の温度として用いられる上限閾値温度とを記憶する記憶部とを有し、前記制御部は、前記冷却部に前記低効率冷却状態で駆動させるとともに、その後に、前記検出温度が前記切替用閾値温度に到達した場合であっても、前記低効率冷却状態での処理終了時の温度が前記上限閾値温度以下になるときには、前記冷却部の冷却状態を前記高効率冷却状態に切り替えずに、前記低効率冷却状態のままに維持する構成とする。
【0011】
ここで、「低効率冷却状態」とは、例えば、冷却部が単一の冷却ファンで構成されている場合に、「冷却ファンを低速で駆動させている状態」を意味しており、また、冷却部が複数の冷却ファンで構成されている場合に、「単一の冷却ファンを駆動させている状態」を意味している。また、「高効率冷却状態」とは、例えば、冷却部が単一の冷却ファンで構成されている場合に、「冷却ファンを高速で駆動させている状態」を意味しており、また、冷却部が複数の冷却ファンで構成されている場合に、「複数の冷却ファンを駆動させている状態」を意味している。
【0012】
なお、冷却部は、冷却ファンの代わりに、例えば、ペルチェ素子等によっても構成することができる。この場合に、「低効率冷却状態」とは、通常の冷却状態を意味しており、「高効率冷却状態」とは、急冷却状態を意味している。
【0013】
この冷却機構は、検出温度が切替用閾値温度に到達した場合であっても、低効率冷却状態での処理終了時の温度が上限閾値温度以下になるときには、冷却部の冷却状態を高効率冷却状態に切り替えずに、低効率冷却状態のままに維持する構成となっている。そのため、この冷却機構は、高効率冷却状態での冷却部の駆動時間を短縮することができ、これによって、消費電力を抑制することができる。
【0014】
また、第2発明は、冷却対象物を冷却する冷却機構を搭載する冷却機構搭載装置であって、第1発明に係る冷却機構を搭載する構成とする。
【0015】
この冷却機構搭載装置は、第1発明に係る冷却機構を冷却対象物の冷却に用いる構成となっている。そのため、この冷却機構搭載装置は、高効率冷却状態での冷却部の駆動時間を短縮することができ、これによって、消費電力を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、消費電力を抑制する冷却機構を提供することができる。
また、第2発明によれば、第1発明に係る冷却機構を冷却対象物の冷却に用いる冷却機構搭載装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る冷却機構搭載装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態1に係る冷却機構の構成を示す図である。
【図3】比較例に係る冷却機構の冷却動作を示す図である。
【図4A】実施形態1に係る冷却機構の冷却動作を示す図(1)である。
【図4B】実施形態1に係る冷却機構の冷却動作を示す図(2)である。
【図5A】実施形態1に係る冷却機構の動作を示すフローチャート(1)である。
【図5B】実施形態1に係る冷却機構の動作を示すフローチャート(2)である。
【図6】実施形態2に係る冷却機構の構成を示す図である。
【図7A】実施形態2に係る冷却機構の冷却動作を示す図(1)である。
【図7B】実施形態2に係る冷却機構の冷却動作を示す図(2)である。
【図8】実施形態2に係る冷却機構の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0019】
[実施形態1]
<冷却機構搭載装置の構成>
以下、図1を参照して、本実施形態1に係る冷却機構搭載装置の構成につき説明する。なお、図1は、実施形態1に係る冷却機構搭載装置の構成を示す図である。
【0020】
本発明は、高効率冷却状態での冷却部(本実施形態1では、後記する冷却ファン110(図2参照))の駆動時間を短縮する冷却機構100(図1及び図2参照)を提供することを主な目的としている。そのために、本発明は、冷却機構100を以下の(1)ように動作させることを主な特徴とし、さらに、以下の(2)ように動作させることを副次的な特徴とする。
【0021】
(1)冷却機構100は、後記する温度検出部121e(図2参照)によって検出された冷却対象物の温度を「検出温度T」とし、冷却部の冷却状態を低効率冷却状態から高効率冷却状態に切り替えるための基準に用いられる温度を「切替用閾値温度」とし、温度制御の上限値として用いられる温度を「上限閾値温度」とする。そして、冷却機構100は、図4Aに示すように、検出温度Tが「切替用閾値温度(後記する第1閾値温度Tth1)」に到達した場合であっても、低効率冷却状態での処理終了時の温度(後記する低効率ジョブ終了時温度Ta)が「上限閾値温度(後記する第2閾値温度Tth2)」以下になるときには、冷却部(本実施形態1では、後記する冷却ファン110)の冷却状態を高効率冷却状態に切り替えずに、低効率冷却状態のままに維持する。
【0022】
(2)冷却機構100は、図4Bに示すように、検出温度Tが「切替用閾値温度(後記する第1閾値温度Tth1)」に到達した場合で、かつ、低効率冷却状態での処理終了時の温度(後記する低効率ジョブ終了時温度Ta)が「上限閾値温度(後記する第2閾値温度Tth2)」を超える場合には、冷却部の冷却状態を高効率冷却状態に切り替える。ただし、この場合に、冷却機構100は、好ましくは、検出温度Tが後記する切替温度Tcに到達したときに、冷却部の状態を低効率冷却状態から高効率冷却状態に切り替えるようにするとよい。
【0023】
図1に示す冷却機構搭載装置1は、このような冷却機構100を搭載する装置である。ここでは、冷却機構搭載装置1として、電子写真プロセスによって画像を形成する画像形成装置、特に、タンデム型のカラープリンタを想定して説明する。以下、冷却機構搭載装置1を「カラープリンタ1」と称する。ただし、冷却機構搭載装置1は、冷却機構100によって冷却対象物を冷却する構成の装置であればよく、例えば、プロジェクタ等のように、画像形成装置以外に、様々な形態の装置がありえる。
【0024】
なお、本実施形態1では、冷却機構搭載装置1が「カラープリンタ1」として構成されているため、後記する「ジョブ」は「印刷」を意味する。しかしながら、例えば、冷却機構搭載装置1が「プロジェクタ」として構成されている場合に、後記する「ジョブ」は「(画像の)投影」を意味する。このように、冷却機構搭載装置1が画像形成装置以外の装置として構成されている場合に、後記する「ジョブ」はその装置によって実現される機能を意味するものとする。
【0025】
図1に示すように、冷却機構搭載装置としてのカラープリンタ1は、主要な構成要素が収納される本体部2と、本体部2に対して開閉自在なトップカバー部3とを有する構成となっている。
【0026】
本体部2は、外部に、表示操作部2a、及び、排出スタッカ部2bを備えている。
表示操作部2aは、各種の情報の表示や、ユーザによる各種の指示の入力が行われる構成要素である。ここでは、表示操作部2aは、液晶表示パネル及びスイッチ等により構成されているものとする。
排出スタッカ部2bは、印刷媒体Pが最終的に排出される集積部である。なお、印刷媒体Pは、カラープリンタ1によって、画像が印刷される媒体である。
【0027】
本体部2は、内部に、印刷媒体収納部4、搬送路5、搬送ベルト8、画像形成部10、露光部20、転写部30、及び、定着部40を備えている。
【0028】
印刷媒体収納部4は、印刷媒体Pを収納する収納部である。印刷媒体格納部4は、印刷媒体Pを複数枚収納することができる。
搬送路5は、印刷媒体Pが搬送される通路である。搬送路5は、印刷媒体収納部4から排出スタッカ部2bまで設けられている。なお、ここでは、「上流」や、「下流」、「手前」等の位置を規定する用語は、印刷媒体Pの搬送方向を基準にしているものとする。
【0029】
搬送路5の周囲には、多数のローラ6が配置されている。なお、図1には、ローラ6として、給紙ローラ6a、第1レジストローラ6b、及び、第2レジストローラ6cが、示されている。
給紙ローラ6aは、印刷媒体格納部4から印刷媒体Pを1枚ずつ給紙するためのローラである。
第1レジストローラ6b及び第2レジストローラ6cは、印刷媒体格納部4から給紙された印刷媒体Pを画像形成部10まで搬送するためのローラである。
ローラ6a,6b,6cは、搬送ベルト8とともに、印刷媒体Pを搬送する搬送部50(図2参照)を構成している。
【0030】
また、搬送路5の周囲には、多数のセンサ部SNが配置されている。なお、図1には、センサ部SNとして、第1搬送センサSN1、第2搬送センサSN2、書込センサSN3、及び、排出センサSN4が、示されている。
【0031】
各センサSN1,SN2,SN3,SN4は、それぞれ、印刷媒体Pが各センサの設置位置に到達したことを検知するための走行系センサである。第1搬送センサSN1は、第1レジストローラ6bの手前の位置に設けられている。第2搬送センサSN2は、第2レジストローラ6cの手前の位置に設けられている。書込センサSN3は、第2レジストローラ6cの後の位置に設けられている。排出センサSN4は、定着部40の後の位置に設けられている。
【0032】
各センサSN1,SN2,SN3,SN4は、印刷媒体Pの有無に応じて固有の値の検出信号を制御部120(図2参照)に出力する。制御部120は、各センサSN1,SN2,SN3,SN4から入力される検出信号の値に応じて、印刷媒体Pの位置を特定する。特に、制御部120は、書込センサSN3から入力される検出信号によって、印刷媒体Pが画像形成部10に到達するタイミングを検出する。また、制御部120は、排出センサSN4から入力される検出信号によって、印刷媒体Pが排出スタッカ部2bに排出されたことを検出する。
【0033】
また、搬送路5は、一部が搬送ベルト8によって構成されている。搬送ベルト8は、給紙された印刷媒体Pを搬送ベルト8の下流側に向けて搬送する搬送手段である。搬送ベルト8の上には、画像形成部10及び露光部20が設けられている。また、搬送ベルト8の内周には、転写部30としての転写ローラ31が設けられている。さらに、搬送ベルト8の下流には、定着部40が設けられている。なお、画像形成部10、露光部20、転写部30、及び、定着部40は、公知の構成要素であり、本発明の特徴部分(特に、前記した冷却機構100の(1)の温度制御)との関連性が低いため、ここでは、概要のみを説明する。
【0034】
画像形成部10は、内部に設けられた感光ドラム12の表面に画像を形成する構成要素である。画像形成部10は、内部に、現像剤収納部11、及び、感光ドラム12を備えている。
現像剤収納部11は、トナー等の現像剤を収納する収納部である。
感光ドラム12は、表面に静電潜像及び現像剤像が形成される像担持体である。
【0035】
画像形成部10の感光ドラム12は、図示せぬ帯電部材によって表面が一様に帯電された後に、露光部20によって部分的に露光されることによって、表面に静電潜像が形成される。その後、感光ドラム12は、図示せぬ現像部材によって、現像剤収納部11に収納されていた現像剤が供給される。これによって、静電潜像が、現像剤像として感光ドラム12の表面に現像される。
【0036】
画像形成部10は、本体部2に対して装着及び取り外しが自在な構成となっている。なお、図1に示す例では、カラープリンタ1は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に対応して、4つの画像形成部10が設けられている。4つの画像形成部10は、現像剤収納部11の内部に収容される現像剤の色が異なる以外は、同じ構成となっている。以下、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に対応する構成要素を区別する場合に、各構成要素に与えられた符号の末尾に、英文字「K」、「Y」、「M」、「C」を付して説明する。
【0037】
露光部20は、図示せぬ上位装置から送信される印刷命令に基づいて、感光ドラム12の表面を部分的に露光する構成要素である。感光ドラム12は、図示せぬ帯電部材によって表面が一様に帯電された後に、露光部20によって部分的に露光されることによって、表面に静電潜像が形成される。ここでは、露光部20は、LEDヘッドとして構成されている場合を想定して説明する。以下、露光部20を「LEDヘッド20」と称する。LEDヘッド20は、トップカバー部3に設けられており、図示せぬケーブルにより本体部2の制御部120A(図2参照)及び電源部200(図1及び図2参照)と接続されている。LEDヘッド20は、トップカバー部3が閉じられることにより、感光ドラム12の表面近傍に配置される。本実施形態1では、LEDヘッド20は、各色の感光ドラム12K,12Y,12M,12Cに対応して、4つ設けられている。
【0038】
転写部30は、感光ドラム12の表面に形成された現像剤像を印刷媒体Pに転写する構成要素である。転写部30は、転写ローラ31を備えている。転写ローラ31は、搬送ベルト8の内周に、感光ドラム12と対向して設けられている。転写ローラ31は、感光ドラム12の表面に形成された現像剤像の極性とは逆の極性の高電圧が印加されることによって、現像剤像を感光ドラム12から搬送ベルト8側に引き寄せる。その際に、搬送ベルト8が印刷媒体Pを搬送することにより、現像剤像が印刷媒体Pの上に転写される。本実施形態1では、転写ローラ31は、各色の感光ドラム12K,12Y,12M,12Cに対応して、4つ設けられている。
【0039】
定着部40は、内部に設けられたヒートローラ(図示せず)及び加圧ローラ(図示せず)で、現像剤像が転写された印刷媒体Pを加熱及び加圧することにより、現像剤像を溶融させて、現像剤像を印刷媒体Pに定着させる構成要素である。
【0040】
これら画像形成部10、露光部20、転写部30、及び、定着部40は、搬送部50(ローラ6a,6b,6c、及び、搬送ベルト8)とともに、画像形成機構60(図2参照)を構成している。
【0041】
カラープリンタ1は、冷却機構100を有している。冷却機構100は、各部に電力を供給する電源部200や、定着部40の図示せぬヒートローラ等の各種の発熱体を冷却対象物とし、その冷却対象物を冷却する機構である。ここでは、冷却機構100は、電源部200を冷却する場合を想定して説明する。なお、本実施形態1では、電源部200は、第1出力用電源部200a、第2出力用電源部200b、及び、第3出力用電源部200cを備えている。第1出力用電源部200a、第2出力用電源部200b、及び、第3出力用電源部200cは、それぞれ、3.3(V)、5(V)、及び、24(V)の電源電圧を制御部120(図2参照)に印加する。
【0042】
<冷却機構の構成>
以下、図2を参照して、冷却機構100の構成につき説明する。なお、図2は、実施形態1に係る冷却機構の構成を示す図である。
【0043】
図2に示すように、冷却機構100は、冷却部110を備えている。冷却部110は、冷却対象物(ここでは、電源部200)を冷却する構成要素である。ここでは、冷却部110は、単一の冷却ファンによって構成されている場合を想定して説明する。以下、冷却部110を「冷却ファン110」と称する。
【0044】
冷却ファン110は、制御部120のファン制御部121aによって、回転速度が、停止している状態(以下、「ファン停止状態」と称する)、低速で駆動している状態(以下、「ファン低速駆動状態」と称する)、及び、高速で駆動している状態(以下、「ファン高速駆動状態」と称する)のいずれかに切り替えられる。冷却ファン110の冷却効率(冷却速度)は、冷却ファン110の回転速度に比例する。そのため、冷却ファン110の冷却状態は、「ファン停止状態」時に「停止状態」となり、「ファン低速駆動状態」時に「低効率冷却状態」となり、「ファン高速駆動状態」時に「高効率冷却状態」となる。
【0045】
なお、ここでは、「低速」は、冷却ファン110をDC12(±10%)(Volt;V)の電源電圧で駆動させたときの回転速度とする。
また、「高速」は、冷却ファン110をDC24(±10%)(V)の電源電圧で駆動させたときの回転速度とする。ファン高速駆動状態の時は、ファン低速駆動状態の時と比べて、駆動時の騒音が大きく、また、消費電力が大きい。
【0046】
冷却ファン110は、電源部200に、又は、電源部200の周囲に設けられている。その電源部200には、図示せぬヒートシンク、及び、温度検出用のサーミスタ220を備えている。なお、サーミスタ220は、図示せぬヒートシンクに取り付けられている。
【0047】
冷却ファン110は、制御部120に接続されている。制御部120は、カラープリンタ1の各部の動作を制御する制御手段である。制御部120は、MPU121、ファン回転速度変更回路141、オペアンプ(Operational Amplifier)142、分圧抵抗器143、及び、A/D変換器144を有しており、外部インタフェース151、記憶部161、前記した表示操作部2a、前記した画像形成機構60、及び、前記したセンサ部SNと接続されている。
【0048】
MPU121は、各種の演算を実行する演算実行手段である。MPU121は、記憶部161に予め記憶された制御プログラムを実行することにより、ファン制御部121a、温度上昇率算出部121b、印刷終了時温度算出部121c、時間算出部121d、温度検出部121e、及び、ファン速度切替温度算出部121fとして機能する。ただし、MPU121は、制御プログラムを実行することにより、印刷命令を解析して印刷すべき画像データを取得する手段や、画像形成機構60を駆動する手段としても機能するが、これらの手段は公知であり、本発明の特徴部分との関連性が低いため、ここでは、説明を省略する。
【0049】
ファン制御部121aは、冷却ファン110の回転速度を制御する機能手段である。
温度上昇率算出部121bは、ファン低速駆動状態F1(図4A及び図4B参照)での温度上昇率k1を算出する機能手段である。
【0050】
印刷終了時温度算出部121cは、冷却ファン110の回転速度を低速のままに維持した場合の印刷終了時の温度(以下、「ファン低速印刷終了時温度」と称する)Ta(図4A及び図4B参照)、及び、冷却ファン110の回転速度を低速から高速に切り替えた場合の印刷終了時の温度(以下、「ファン高速印刷終了時温度」と称する)Tb(図4B参照)を算出する機能手段である。なお、「ファン低速印刷終了時温度Ta」及び「ファン高速印刷終了時温度Tb」は、冷却機構搭載装置1が印刷処理以外の機能を実現する装置である場合に、それぞれ、「低効率冷却ジョブ終了時温度Ta」及び「高効率冷却ジョブ終了時温度Tb」となる。
【0051】
時間算出部121dは、切替用閾値温度(ここでは、後記する第1閾値温度Tth1(図3、図4A、及び、図4B参照))に到達した時間(以下、「切替用閾値到達時間」と称する)t1を算出する機能手段である。
【0052】
温度検出部121eは、冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度を検出する機能手段である。ここでは、温度検出部121eによって検出された冷却対象物の温度を「検出温度T」と称する。
【0053】
ファン速度切替温度算出部121fは、冷却ファン110の状態をファン低速駆動状態(低効率冷却状態)からファン高速駆動状態(高効率冷却状態)に実際に切り替えるための基準の温度(以下、「切替温度」と称する)Tcを算出する機能手段である。
【0054】
ファン回転速度変更回路141は、冷却ファン110の状態を、ファン停止状態、ファン低速駆動状態、及び、ファン高速駆動状態のいずれかに変更するための回路である。
オペアンプ142は、2つの入力端子への入力の差を増幅する直流増幅器である。
分圧抵抗器143は、サーミスタ220との間で、電源電圧3.3(V)を分圧する抵抗器である。
A/D変換器144は、所定時間毎にアナログ入力値をデジタル値に変換して出力する機能を有し、オペアンプ142を介してサーミスタ220から入力されたアナログ値である検出電圧値を、デジタル値である検出温度電圧値に変換して、MPU121に出力する。
外部インタフェース151は、図示せぬ上位装置との通信を行うインタフェースである。
【0055】
記憶部161は、冷却ファン110の制御に必要な各種のデータや、制御プログラム等を記憶している記憶手段である。記憶部161は、好ましくは、複数の記憶領域、例えば、値が頻繁に変動するデータ(以下、「可変データ」と称する)が記憶される第1記憶部161aと、値が頻繁には変動しないデータ(以下、「固定データ」と称する)が予め記憶される第2記憶部161bとに、区画されているとよい。第1記憶部161a及び第2記憶部161bは、単一の記憶手段によって構成されていてもよいし、複数の記憶手段によって構成されていてもよい。
【0056】
第1記憶部161aには、例えば、「切替用閾値温度」や「上限閾値温度」等のデータが記憶される。なお、本実施形態1では、「切替用閾値温度」は、「第1閾値温度Tth1(図3、図4A、及び、図4B参照)」に相当する。また、「上限閾値温度」は、「第2閾値温度Tth2(図4A及び図4B参照)」に相当する。ただし、ここでは、冷却機構100は、冷却ファン110の低効率冷却状態から高効率冷却状態への切り替えタイミングをできるだけ遅延させることができるように、「切替用閾値温度」及び「上限閾値温度」を可変データとして用いる構成となっている。しかしながら、冷却機構100は、運用次第では、「切替用閾値温度」及び「上限閾値温度」を固定データとして用いる構成にすることもできる。
【0057】
「第1閾値温度Tth1」は、冷却ファン110の状態をファン低速駆動状態(低効率冷却状態)からファン高速駆動状態(高効率冷却状態)に切り替えるタイミングを検出するために用いられる閾値の温度である。
また、「第2閾値温度Tth2」は、冷却ファン110の状態をファン低速駆動状態からファン高速駆動状態に切り替えた場合の印刷処理終了時に検出されるサーミスタ220の上限値の温度(飽和温度)である。冷却対象物(ここでは、電源部200)は、印刷処理終了時の温度(以下、「印刷終了時温度Tend(図3、図4A、及び、図4B参照)」と称する)が第2閾値温度Tth2以下である場合に、故障や特性の変質が起きないものとする。
【0058】
また、第2記憶部161bには、例えば、「ファン高速駆動状態F2(図4A及び図4B参照)での温度上昇率k2」や、「サーミスタ電圧−温度変換テーブルD1(図示せず)」、「待機時間twa(図3、図4A、及び、図4B参照)」等のデータが予め記憶されている。なお、「ファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2」は、事前に測定された、ファン高速駆動状態F2での温度上昇率を表している。また、「サーミスタ電圧−温度変換テーブルD1」は、サーミスタ220で検出された電圧値とその電圧値に対応する温度との関係を規定するテーブルデータである。また、「待機時間twa」は、待機処理の開始から終了までの時間を表している。待機時間twaは、パワーセーブ移行時間でもある。待機処理は、印刷が終了した後に、実行される。
【0059】
制御部120のMPU121は、電源部200のサーミスタ220にかかる電圧が、バッファとしてのオペアンプ142及びA/D変換器144を介して入力される。すると、MPU121は、温度検出部121eが、記憶部161に予め記憶された「サーミスタ電圧−温度変換テーブルD1(図示せず)」を参照して、入力された電圧値に基づいて、電源部200の温度を検出温度Tとして検出する。そして、MPU121は、ファン制御部121aが、検出温度Tに基づいて、ファン回転速度変更回路141を制御して、冷却ファン110の回転速度を変更する。
【0060】
<冷却機構の動作>
以下、図3、図4A、及び、図4Bを参照して、冷却機構の動作につき説明する。ここでは、冷却機構100の動作を分かり易く説明するために、まず、図3を参照して、従来の冷却機構と同様の動作を行う比較例の動作を説明し、次に、図4A及び図4Bを参照して、本実施形態1に係る冷却機構100の動作を説明する。
【0061】
なお、図3は、比較例に係る冷却機構の動作を示す図である。また、図4A及び図4Bは、それぞれ、実施形態1に係る冷却機構の動作を示す図である。図3、図4A、及び、図4Bは、それぞれ、冷却ファン110の冷却状態の制御に伴う冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度の変化をグラフで示している。なお、図3、図4A、及び、図4Bは、温度の変化を直線状のグラフで示している。しかしながら、温度の変化は、実際には、非直線状に変化する。図3、図4A、及び、図4Bは、カラープリンタ1では、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)の時間が約1分程度となる見込みであり、時間が短いため、直線で近似して示している。
【0062】
ここでは、冷却機構搭載装置は、カラープリンタ1として構成されているため、装置の状態が、「印刷中(ジョブ中)」、「待機中」、及び、「パワーセーブ中」の順に変化するものとして説明する。装置の状態が「印刷中」である場合に、冷却対象物は「高発熱状態」となる。また、装置の状態が「待機中」である場合に、冷却対象物は「低発熱状態」となる。また、装置の状態が「パワーセーブ中」である場合に、冷却対象物は「低発熱、又は、停止状態」となる。
【0063】
なお、カラープリンタ1は、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機状態に移行して、待機処理を開始する。その待機処理の開始から終了までの時間は、「待機時間twa」として予め設定されおり、記憶部161に記憶されている。ここでは、「待機時間twa」は、例えば、「60」(Second;S)に設定されているものとする。
【0064】
ここでは、比較例に係る冷却機構を「冷却機構100a(図示せず)」と称し、冷却ファン110を「冷却ファン110a(図示せず)」と称し、冷却機構100aを搭載する冷却機構搭載装置を「カラープリンタ1a(図示せず)」として説明する。また、本実施形態1に係る冷却機構100を「冷却機構100A」と称し、冷却ファン110を「冷却ファン110A」と称し、冷却機構100Aを搭載する冷却機構搭載装置1を「カラープリンタ1A」として説明する。図4A及び図4Bに示す冷却機構100Aの動作は、冷却機構100Aの制御部120Aによって実行される。
【0065】
図3に示すように、比較例に係る冷却機構100aは、冷却対象物に対して、一点鎖線L0で示す温度制御を行う。
【0066】
すなわち、冷却機構100aは、カラープリンタ1aが印刷を開始すると、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1で駆動を開始する。このとき、検出温度Tは、印刷開始時の温度(以下、「印刷開始時温度Tst」と称する)からファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1で上昇を開始する。
【0067】
そして、冷却機構100aは、検出温度Tが第1閾値温度Tth1に到達すると、冷却ファン110aの状態をファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1からファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に切り替える。これにより、検出温度Tは、上昇を続けるものの、その上昇率がファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1からファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2に低下する。
【0068】
カラープリンタ1aは、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機状態に移行して、待機処理を開始する。冷却機構100aは、待機中も、冷却ファン110aの状態をファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に維持する。なお、検出温度Tは、印刷終了時に、印刷終了時温度Tendに到達し、その後に、待機処理の開始に伴って、徐々に下降する。比較例では、印刷終了時温度Tendは、ファン高速印刷終了時温度Tbと等しくなる。
【0069】
そして、カラープリンタ1aは、待機処理を開始してから待機時間twaが経過すると、パワーセーブ処理を開始する。このとき、冷却機構100aは、冷却ファン110aの状態をファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2からファン停止状態Fspに切り替える。これにより、検出温度Tは、下降を続けるものの、その下降率が低下する。
【0070】
これに対して、図4A及び図4Bに示すように、本実施形態1に係る冷却機構100Aは、冷却対象物に対して、二点鎖線L1又はL2で示す温度制御を行う。
【0071】
すなわち、図4A及び図4Bに示すように、冷却機構100Aは、カラープリンタ1Aが印刷を開始すると、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1で駆動を開始する。このとき、検出温度Tは、印刷開始時温度Tstからファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1で上昇を開始する。
【0072】
そして、冷却機構100Aは、検出温度Tが第1閾値温度Tth1に到達すると、予測されるファン低速印刷終了時温度(低効率冷却ジョブ終了時温度)Taが第2閾値温度Tth2を超えるか否かを判定する(図5AのS130参照)。
【0073】
この判定で、図4Aに示すように、予測されるファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超えないと判定された場合(すなわち、予測されるファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2以下になる(「Ta≦Tth2」)と判定される場合)に、冷却機構100Aは、図4Aの二点鎖線L1で示す温度制御を行う。
【0074】
すなわち、冷却機構100Aは、冷却ファン110Aの状態を、ファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に切り替えずに、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1のままに維持する(図5AのS135参照)。その結果、検出温度Tは、ファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1のままで上昇を続ける。
【0075】
カラープリンタ1Aは、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機状態に移行して、待機処理を開始する。このとき、冷却機構100Aは、冷却ファン110Aの状態をファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1に維持する。又は、このとき、冷却機構100Aは、運用に応じて、冷却ファン110Aの状態をファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1からファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に切り替えるようにしてもよい。なお、検出温度Tは、印刷終了時に、印刷終了時温度Tendに到達し、その後に、待機処理の開始に伴って、徐々に下降する。本実施形態1では、「Ta≦Tth2」となる場合に、印刷終了時温度Tendは、ファン低速印刷終了時温度Taと等しくなる(図4A参照)。
【0076】
そして、カラープリンタ1Aは、待機処理を開始してから待機時間twaが経過すると、パワーセーブ処理を開始する。このとき、冷却機構100Aは、冷却ファン110Aの状態をファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1(又は、ファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2)からファン停止状態Fspに切り替える。これにより、検出温度Tは、下降を続けるものの、その下降率が低下する。
【0077】
一方、予測されるファン低速印刷終了時温度(低効率冷却ジョブ終了時温度)Taが第2閾値温度Tth2を超えるか否かの判定で、図4Bに示すように、予測されるファン低速印刷終了時温度Ta(図4Bの実線参照)が第2閾値温度Tth2を超える(「Ta>Tth2」)と判定される場合に、冷却機構100Aは、図4Bの二点鎖線L2で示す温度制御を行う。
【0078】
すなわち、冷却機構100Aは、切替温度Tcを算出する。なお、「切替温度Tc」の算出方法については、後記する。そして、冷却機構100Aは、検出温度Tが切替温度Tcに到達するまでは、冷却ファン110Aの状態を、ファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に切り替えずに、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1のままに維持し、検出温度Tが切替温度Tcに到達すると、冷却ファン110Aの状態を、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1からファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に切り替える(図5AのS150参照)。その結果、検出温度Tは、検出温度Tが切替温度Tcに到達するまでは、ファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1のままで上昇を続け、検出温度Tが切替温度Tcに到達すると、ファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2で上昇する。
【0079】
カラープリンタ1Aは、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機状態に移行して、待機処理を開始する。このとき、冷却機構100Aは、冷却ファン110Aの状態をファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2からファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1に切り替える。又は、このとき、冷却機構100Aは、運用に応じて、冷却ファン110Aの状態をファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に維持するようにしてもよい。なお、検出温度Tは、印刷終了時に、印刷終了時温度Tendに到達し、その後に、待機処理の開始に伴って、徐々に下降する。本実施形態1では、「Ta>Tth2」となる場合に、印刷終了時温度Tendは、ファン高速印刷終了時温度Tbと等しくなる(図4B参照)。
【0080】
そして、カラープリンタ1Aは、待機処理を開始してから待機時間twaが経過すると、パワーセーブ処理を開始する。このとき、冷却機構100Aは、冷却ファン110Aの状態をファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1(又は、ファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2)からファン停止状態Fspに切り替える。これにより、検出温度Tは、下降を続けるものの、その下降率が低下する。
【0081】
なお、冷却機構100Aは、例えば、印刷開始時温度Tstが低い場合や、印字処理を開始してから終了するまでの時間(以下、「印字終了時間t2(図4A及び図4B参照)」と称する)が短い場合、設置環境の温度が低い場合に、「予測されるファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超えない」状態に、なり易い。ここで、「印刷開始時温度Tstが低い場合」とは、具体的には、前回の印刷処理から時間が十分に経過していて、冷却対象物の温度が十分に低下している場合を意味する。また、「印字終了時間t2が短い場合」とは、具体的には、印字ジョブ枚数が少ない場合を意味する。
【0082】
これに対して、冷却機構100Aは、例えば、印刷開始時温度Tstが高い場合や、印字終了時間t2(図4A及び図4B参照)が長い場合、設置環境の温度が高い場合に、「予測されるファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超える」状態に、なり易い。ここで、「印刷開始時温度Tstが高い場合」とは、具体的には、前回の印刷処理から時間が十分に経過しておらず、冷却対象物の温度が十分に低下していない場合を意味する。また、「印字終了時間t2が長い場合」とは、具体的には、印字ジョブ枚数が多い場合を意味する。
【0083】
なお、図4Bに示す例では、冷却機構100Aは、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1とファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2との2段階に区分して温度制御を行っている。冷却機構100Aは、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1の時間ができるだけ長くなるように温度制御を行う。そのため、本実施形態1では、温度制御は、3段階以上に区分されない。
【0084】
本実施形態1に係る冷却機構100Aは、図4A及び図4Bに示す温度制御を実現するために、図5Aに示す処理を実行する。なお、図5Aは、実施形態1に係る冷却機構の動作を示すフローチャートである。
【0085】
冷却機構100Aは、第2閾値温度Tth2、ファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2等のデータを記憶部161に予め記憶している。なお、ここでは、「ファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2」は、例えば、事前に、高温高湿環境下でかつ装置の印刷処理時の定格負荷状態で、1分間の印刷処理をカラープリンタ1Aに行わせた場合に測定される温度の上昇率と、低温低湿環境下でかつ装置の定格負荷状態で、1分間の印刷処理をカラープリンタ1Aに行わせた場合に測定される温度の上昇率とを比較することによって、決定されているものとする。双方の上昇率のうち、上昇率の大きい方がファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2となっている。
【0086】
カラープリンタ1Aは、図示せぬ上位装置から印刷命令を受信して、印刷命令に基づいて、印刷処理を開始する。これに合わせて、冷却機構100Aは、図5A及び図5Bに示すフローに沿って、図4A及び図4Bに示す温度制御を開始する。このとき、冷却機構100Aは、カラープリンタ1Aの印刷速度S及び印刷ジョブ枚数J等のデータを記憶部161に記憶する。
【0087】
図5Aに示すように、印刷開始時(具体的には、搬送部50の搬送動作開始時)に、冷却機構100Aは、ファン制御部121aが、冷却ファン110Aの回転速度を低速に設定して、冷却ファン110Aを低速で駆動開始させる(S105)。
【0088】
このとき、温度検出部121eは、サーミスタ220で検出された電圧値から、記憶部161に予め記憶されている「サーミスタ電圧−温度変換テーブルD1(図示せず)」に基づいて、冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度を検出温度Tとして検出する(S110)。なお、初回検出時の検出温度Tは、印刷開始時温度Tst(図4A及び図4B参照)となる。温度検出部121eは、印刷開始時温度Tstが検出されると、印刷開始時温度Tstを記憶部161に記憶させる。
【0089】
S110の後、温度検出部121eは、検出温度Tが第1閾値温度Tth1に達したか否かを(すなわち、検出温度Tが第1閾値温度Tth1まで上昇したか否かを)判定する(S115)。なお、ここでは、第1閾値温度Tth1は、例えば、カラープリンタ1Aが印刷中の状態において、冷却ファン110Aが低速で1分間駆動した場合の温度上昇値の1/10〜1/4を印刷開始時温度Tstに加算した値の温度とする。温度検出部121eは、印刷開始時温度Tstが検出されたときに、印刷開始時温度Tstに基づいて第1閾値温度Tth1を算出し、算出された第1閾値温度Tth1を記憶部161に記憶させる。なお、第1閾値温度Tth1を固定値にせずに、印刷開始時温度Tstの検出時に第1閾値温度Tth1を算出するのは、印刷処理が連続して実行されたとき(高頻度印刷時)や設置環境の温度等の影響によって、印刷開始時温度Tstが変動し易いためである。すなわち、冷却機構100Aは、第1閾値温度Tth1を固定値にすると、印刷開始時温度Tstが高い場合に、冷却ファン110Aの状態をすぐにファン高速駆動状態(高効率冷却状態)F2に切り替えなければならなくなり、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1の期間が短くなるためである。
【0090】
S115の判定で、検出温度Tが第1閾値温度Tth1に達していないと判定された場合(“No”の場合)に、ファン制御部121aは、印刷が終了したか否かを判定する(S120)。
【0091】
S120の判定で、印刷が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、終了となる。この場合に、ファン制御部121aは、冷却ファン110Aを低速のままで駆動させ続ける。
【0092】
一方、S120の判定で、印刷が終了していないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S110に戻る。その結果、この場合に、温度検出部121eが検出温度Tを再度検出する
【0093】
また、S115の判定で、検出温度Tが第1閾値温度Tth1に達していると判定された場合(“Yes”の場合)に、印刷終了時温度算出部121cが、「ファン低速印刷終了時温度Ta」を算出する(S125)。
【0094】
この「ファン低速印刷終了時温度Ta」の算出は、以下のようにして行われる。
まず、検出温度Tが第1閾値温度Tth1に到達すると、時間算出部121dが、印刷処理を開始してから検出温度Tが第1閾値温度Tth1に到達するまでに要した時間(以下、「切替用閾値到達時間t1」と称する)を算出して、記憶部161に記憶させる。
【0095】
また、時間算出部121dが、記憶部161に記憶されたカラープリンタ1Aの印刷速度Sと印刷ジョブ枚数Jとを参照して、以下の式(1)に基づいて、印刷終了時間t2を算出して、算出された印刷終了時間t2を記憶部161に記憶させる。
t2=J÷S …(1)

【0096】
そして、印刷終了時温度算出部121cが、記憶部161に記憶された「第1閾値温度Tth1」、「切替用閾値到達時間t1」、及び、「印刷終了時間t2」を参照して、以下の式(2)に基づいて、「ファン低速印刷終了時温度Ta」を算出して、算出されたファン低速印刷終了時温度Taを記憶部161に記憶させる。
Ta=Tth1+((Tth1−Tst)÷t1)×(t2−t1) …(2)

【0097】
S125の後、温度検出部121eは、ファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超えるか否かを判定する(S130)。
【0098】
S130の判定で、ファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超えないと判定された場合(“No”の場合)に、冷却機構100Aは、図4Aに示す温度制御を行う。すなわち、冷却機構100Aは、「印刷終了時間t2」の経過時に検出温度Tが「第2閾値温度Tth2」を超えないと判定された場合に、図4Aに示す温度制御を行う。この場合に、ファン制御部121aは、冷却ファン110の回転速度を高速に切り替えずに低速のままに維持し、冷却ファン110Aを低速で駆動させ続ける(S135)。これにより、冷却機構100Aは、印刷処理時の冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度制御を終了する。この後、カラープリンタ1Aは、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機状態に移行して、待機処理を開始する。
【0099】
一方、S130の判定で、ファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超えると判定された場合(“Yes”の場合)に、冷却機構100Aは、図4Bに示す温度制御を行う。すなわち、冷却機構100Aは、「印刷終了時間t2」の経過時に検出温度Tが「第2閾値温度Tth2」を超えると判定された場合に、図4Bに示す温度制御を行う。この場合に、まず、ファン速度切替温度算出部121fが、冷却ファン110Aを低速から高速に実際に切り替えるタイミングとしての切替温度Tcを算出する(S140)。
【0100】
この「切替温度Tc」の算出は、以下のようにして行われる。
まず、温度上昇率算出部121bが、記憶部161に記憶された「第1閾値温度Tth1」、「印刷開始時温度Tst」、及び、「切替用閾値到達時間t1」を参照して、以下の式(3)に基づいて、ファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1を算出して、算出されたファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1を記憶部161に記憶させる。
k1=(Tth1−Tst)÷t1 …(3)

【0101】
ここで、図4Bに示すように、検出温度Tが第1閾値温度Tth1に到達してから切替温度Tcに到達するまでの時間を「tx」とすると、「切替温度Tc」、「第1閾値温度Tth1」、「ファン低速駆動状態F1での温度上昇率k1」、及び、「時間tx」は、以下の式(4)の関係が成立する。なお、「時間tx」は、切替用閾値到達時間t1から冷却ファン110Aの冷却状態を実際に切り替えるまでの時間である。また、「時間tx」は、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1で冷却ファン110Aを駆動することが可能な時間でもある。以下、「時間tx」を「低速許容時間」と称する。
Tc=Tth1+k1×tx …(4)

【0102】
また、図4Bに示すように、「第2閾値温度Tth2」、「切替温度Tc」、「ファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2」、「印刷終了時間t2」、「切替用閾値到達時間t1」、及び、「時間tx」は、以下の式(5)の関係が成立する。
Tth2=Tc+k2×(t2−t1−tx) …(5)

【0103】
ここで、式(4)を変形すると、txの算出式として、以下の式(4a)を得ることができる。
tx=(Tc−Tth1)÷k1 …(4a)

【0104】
そして、式(4a)を式(5)に代入すると、以下の式(5a)を得ることができる。
Tc+k2×(t2−t1−(Tc−Tth1)÷k1)=Tth2 …(5a)

【0105】
式(5a)を変形すると、Tcの算出式として、以下の式(6)を得ることができる。
Tc=(k1×Tth2−k1×k2×(t2−t1)−k2×Tth1)÷(k1−k2) …(6)

以上により、「切替温度Tc」が算出される。
ファン速度切替温度算出部121fは、式(6)に基づいて、切替温度Tcを算出して、算出された切替温度Tcを記憶部161に記憶させる。
【0106】
S140の後、温度検出部121eは、検出温度Tが切替温度Tcに達するまで、検出温度Tが切替温度Tcに達したか否かを繰り返し判定する(S145)。
【0107】
S145の判定で、検出温度Tが切替温度Tcに達したと判定された場合(“Yes”の場合)に、ファン制御部121aは、冷却ファン110Aの回転速度を低速から高速に切り替えて、冷却ファン110Aを高速で駆動させる(S150)。これにより、冷却機構100Aは、印刷処理時の冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度制御を終了する。この後、カラープリンタ1Aは、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機処理に移行して、待機処理を開始する。
【0108】
このように、冷却機構100Aは、冷却ファン110Aの回転速度を高速に切り替える必要がない場合に、冷却ファン110Aの回転速度を低速のままに維持する。そのため、冷却機構100Aは、高効率冷却状態F2での冷却ファン110Aの駆動時間を短縮することができ、これによって、消費電力及び騒音を抑制することができる。
【0109】
なお、図5Aに示すフローは、例えば、図5Bに示すように、変形してもよい。
すなわち、図5Bに示すように、S130の判定で、ファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超えないと判定された場合(“No”の場合)に、印刷終了時温度算出部121cが、ファン高速印刷終了時温度Tbを算出する(S131)。
【0110】
このとき、印刷終了時温度算出部121cは、記憶部161に記憶された「第1閾値温度Tth1」、「ファン高速駆動状態F2での温度上昇率k2」、「印刷終了時間t2」、及び、「切替用閾値到達時間t1」を参照して、以下の式(7)に基づいて、ファン高速印刷終了時温度Tbを算出して、算出されたファン高速印刷終了時温度Tbを記憶部161に記憶させる。
Tb=Tth1+k2×(t2−t1) …(7)

【0111】
S131の後、ファン速度切替温度算出部121fは、S131で算出されたファン高速印刷終了時温度Tbを用いて、ファン低速印刷終了時温度Taとファン高速印刷終了時温度Tbとの差分(「Ta−Tb」)が第2閾値温度Tth2とファン低速印刷終了時温度Taとの差分(「Tth2−Ta」)よりも大きい(「Ta−Tb>Tth2−Ta」)か否かを判定する(S132)。
【0112】
S132の判定で、ファン低速印刷終了時温度Taとファン高速印刷終了時温度Tbとの差分が第2閾値温度Tth2とファン低速印刷終了時温度Taとの差分よりも大きい(「Ta−Tb>Tth2−Ta」)と判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S150に進む。その結果、S150で、ファン制御部121aが、冷却ファン110の回転速度を低速から高速に切り替えて、冷却ファン110Aを高速で駆動させる。
【0113】
一方、S132の判定で、ファン低速印刷終了時温度Taとファン高速印刷終了時温度Tbとの差分が第2閾値温度Tth2とファン低速印刷終了時温度Taとの差分以下(「Ta−Tb≦Tth2−Ta」)になると判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S135に進む。その結果、S135で、ファン制御部121aが、冷却ファン110の回転速度を高速に切り替えずに低速のままに維持し、冷却ファン110Aを低速で駆動させ続ける。
【0114】
図5Bに示すS131及びS132の処理は、以下の温度制御を意図している。
すなわち、冷却機構100Aは、ファン低速印刷終了時温度Taが第2閾値温度Tth2を超えない場合に、冷却ファン110Aの状態の切り替えを全く行わないようにすると、1回の印刷ジョブ枚数が少なくても、印刷処理が連続して実行されたとき(高頻度印刷時)に、次回以降の印刷処理で、印刷開始温度Tstが高くなり、冷却ファン110Aの状態がすぐにファン高速駆動状態(高冷却状態)F2に切り替わる可能性が高くなる。冷却機構100Aは、このような高頻度印刷時に、図5Bに示すS131及びS132の処理を行うことによって、次回以降の印刷処理で、印刷開始温度Tstを低下させることができる。その結果、冷却機構100Aは、高頻度印刷時の冷却ファン110Aの状態の切り替え頻度を抑制することができる。
【0115】
なお、本実施形態1では、冷却部110が単一の冷却ファンによって構成されている場合を想定して説明した。しかしながら、冷却部110は、複数の冷却ファンによって構成することもできる。この構成では、冷却機構100は、1つの冷却ファンだけが回転駆動している状態が「低効率冷却状態」となり、複数の冷却ファンが回転駆動している状態が「高効率冷却状態」となる。
【0116】
以上の通り、本実施形態1に係る冷却機構100Aによれば、高効率冷却状態(ここでは、ファン高速駆動状態F2)での冷却ファン110Aの駆動時間を短縮することができ、これによって、消費電力及び騒音を抑制することができる。
【0117】
[実施形態2]
冷却機構100は、カラープリンタ1が印刷処理を行っている「印刷中」の期間だけでなく、カラープリンタ1が待機処理を行っている「待機中」の期間でも、温度制御を行うことができる。本実施形態2に係る冷却機構100Bは、カラープリンタ1が待機処理を行っている「待機中」の期間に、図7A及び図7Bに示す温度制御を行う構成となっている。
【0118】
<冷却機構の構成>
以下、図6を参照して、本実施形態2に係る冷却機構100Bの構成につき説明する。なお、図6は、実施形態2に係る冷却機構の構成を示す図である。なお、ここでは、冷却機構100Bを搭載する冷却機構搭載装置1Bとして、電子写真プロセスによって画像を形成する画像形成装置、特に、タンデム型のカラープリンタを想定して説明する。以下、冷却機構搭載装置1Bを「カラープリンタ1B」と称する。また、冷却機構100Bの制御部120を「制御部120B」として説明する。
【0119】
図6に示すように、冷却機構100Bは、実施形態1に係る冷却機構100Aと比較すると、電源部200に2つの冷却部110を有している点で相違している。以下、2つの冷却部110を区別する場合に、それぞれ、「第1冷却部111」及び「第2冷却部112」として説明する。なお、ここでは、「第1冷却部111」及び「第2冷却部112」が冷却ファンとして構成されている場合を想定して説明する。以下、「第1冷却部111」及び「第2冷却部112」を「第1冷却ファン111」及び「第2冷却ファン112」と称する。
【0120】
なお、第1冷却ファン111は、ファン回転速度変更回路141に接続されており、ファン回転速度変更回路141によって回転速度が制御されて、「低速」又は「高速」で回転する。なお、ここでは、「低速」は、DC12(±10%)(V)の電源電圧で駆動させたときの回転速度とする。また、「高速」は、DC24(±10%)(V)の電源電圧で駆動させたときの回転速度とする。第1冷却ファン111は、実施形態1の冷却ファン110Aに相当する構成要素である。冷却機構100Bは、印刷時に、実施形態1に係る冷却機構100Aの冷却ファン110Aと同様に、第1冷却ファン111を回転制御することにより、冷却対象物(ここでは、電源部200)に対して、図4A及び図4Bの二点鎖線L1又はL2で示す温度制御を行うことができる。
【0121】
これに対し、第2冷却ファン112は、ファン回転速度変更回路141に接続されておらず、常に一定の速度で回転する。第2冷却ファン112は、第1冷却ファン111と同等の回転速度か、又は、第1冷却ファン111よりも遅い回転速度で回転する。ここでは、第2冷却ファン112は、DC12(±10%)(V)の電源電圧で駆動させたときの「低速」で回転するものとして説明する。
【0122】
以下、第1冷却ファン111だけが回転している状態を、「単一ファン駆動状態」と称する。また、第1冷却ファン111及び第2冷却ファン112の双方が回転している状態を、「複数ファン駆動状態」と称する。「単一ファン駆動状態」は、「低効率冷却状態」となる。また、「複数ファン駆動状態」は、「高効率冷却状態」となる。
【0123】
また、制御部120Bは、MPU131、ファン回転速度変更回路141、オペアンプ142、分圧抵抗器143、及び、A/D変換器144を有しており、外部インタフェース151、記憶部171、表示操作部2a、画像形成機構60、及び、センサ部SNと接続されている。
【0124】
MPU131は、記憶部171に予め記憶された制御プログラムを実行することにより、ファン制御部131a、温度下降率算出部131b、待機終了時温度算出部131c、時間算出部131d、温度検出部131e、及び、温度比較部131fとして機能する。ただし、MPU131は、制御プログラムを実行することにより、印刷命令を解析して印刷すべき画像データを取得する手段や、画像形成機構60を駆動する手段としても機能するが、これらの手段は公知であり、本発明の特徴部分との関連性が低いため、ここでは、説明を省略する。
【0125】
ファン制御部131aは、実施形態1のファン制御部121aと同様に、冷却ファン110の回転速度を制御する機能手段である。
温度下降率算出部131bは、単一ファン駆動状態F3(図7A及び図7B参照)での温度下降率k3を算出する機能手段である。
【0126】
待機終了時温度算出部131cは、単一ファン駆動状態F3での待機終了時の温度(以下、「単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度」と称する)Td(図7A及び図7B参照)を算出する機能手段である。なお、「単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Td」は、冷却機構搭載装置1が印刷処理以外の機能を実現する装置である場合に、それぞれ、「低効率冷却待機終了時温度Td」となる。
【0127】
時間算出部131dは、実施形態1の時間算出部121dと同様に、切替用閾値温度(ここでは、後記する第3閾値温度Tth3(図7A及び図7B参照)に到達した時間(以下、「切替用閾値到達時間」と称する)t3を算出する機能手段である。
【0128】
温度検出部131eは、実施形態1の温度検出部121eと同様に、冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度を検出温度Tとして検出する機能手段である。
【0129】
温度比較部131fは、単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Tdが第4閾値温度Tth4以下であるか否かを判定する機能手段である。
【0130】
記憶部171は、冷却ファン111,112の制御に必要な各種のデータや、制御プログラム等を記憶している記憶手段である。記憶部171は、実施形態1の記憶部161と同様に、好ましくは、複数の記憶領域、例えば、可変データが記憶される第1記憶部171aと固定データが予め記憶される第2記憶部171bとに区画されているとよい。第1記憶部171a及び第2記憶部171bは、単一の記憶手段によって構成されていてもよいし、複数の記憶手段によって構成されていてもよい。
【0131】
第1記憶部171aには、例えば、「切替用閾値温度」や「上限閾値温度」等のデータが記憶される。なお、本実施形態2では、「切替用閾値温度」は、「第3閾値温度Tth3(図7A及び図7B参照)」に相当する。また、「上限閾値温度」は、「第4閾値温度Tth4(図7A及び図7B参照)」に相当する。
【0132】
「第3閾値温度Tth3」は、冷却ファン110の状態を単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)から複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)に切り替えるタイミングを検出するために用いられる閾値の温度である。
また、「第4閾値温度Tth4」は、冷却ファン110の状態を単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)から複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)に切り替えた場合の待機処理終了時に検出されるサーミスタ220の上限値の温度(飽和温度)である。冷却対象物(ここでは、電源部200)は、待機終了時の温度(以下、「待機終了時温度Tend2(図7A及び図7B参照)」と称する)が第4閾値温度Tth4以下である場合に、故障や特性の変質が起きないものとする。
【0133】
また、第2記憶部171bには、例えば、「複数ファン駆動状態F4(図7B参照)での温度下降率k4」や、「サーミスタ電圧−温度変換テーブルD1(図示せず)」、「待機時間twa(図7A及び図7B参照)」等のデータが予め記憶されている。なお、「複数ファン駆動状態F4での温度下降率k4」は、事前に測定された、複数ファン駆動状態F4での温度下降率を表している。
【0134】
制御部120BのMPU131は、電源部200のサーミスタ220にかかる電圧が、オペアンプ142を介して入力される。すると、MPU131は、温度検出部131eが、記憶部171に予め記憶された「サーミスタ電圧−温度変換テーブルD1(図示せず)」を参照して、入力された電圧値に基づいて、電源部200の温度を検出温度Tとして検出する。そして、MPU131は、ファン制御部131aが、検出温度Tに基づいて、ファン回転速度変更回路141を制御して、第1及び第2冷却ファン111,112の駆動状態を変更する。
【0135】
<冷却機構の動作>
以下、図7A及び図7Bを参照して、冷却機構の動作につき説明する。図7A及び図7Bは、それぞれ、実施形態2に係る冷却機構の動作を示す図である。図7A及び図7Bは、それぞれ、第1冷却ファン111及び第2冷却ファン112の冷却状態の制御に伴う冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度の変化をグラフで示している。
【0136】
ここでは、カラープリンタ1Bが印刷処理を終了したものとして説明する。したがって、ここでは、カラープリンタ1Bの状態が、「待機中」、及び、「パワーセーブ中」の順に変化する。
【0137】
図7Aに示すように、冷却機構100Bは、カラープリンタ1Bが印刷処理を終了すると、第1冷却ファン111のみを低速で駆動開始する。すなわち、冷却機構100Bは、単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3になる。このとき、検出温度Tは、印刷終了時温度Tendから単一ファン駆動状態F3での温度下降率k3で下降を開始する。
【0138】
そして、冷却機構100Bは、検出温度Tが第3閾値温度Tth3に到達すると、予測される単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度(低効率冷却待機終了時温度)Tdが第4閾値温度Tth4以下になるか否かを判定する。
【0139】
この判定で、予測される単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度(低効率冷却待機終了時温度)Tdが第4閾値温度Tth4以下になる(「Td≦Tth4」)と判定される場合に、冷却機構100Bは、図7Aの実線L3で示す温度制御を行う。
【0140】
すなわち、冷却機構100Bは、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)F4(図7B参照)に切り替えずに、第1冷却ファン111のみが駆動されている単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3のままに維持する。その結果、検出温度Tは、単一ファン駆動状態F3での温度下降率k3のままで下降を続ける。
【0141】
そして、カラープリンタ1Bは、待機処理を開始してから待機時間twaが経過すると、パワーセーブ処理を開始する。このとき、冷却機構100Bは、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3からファン停止状態Fspに切り替える。これにより、検出温度Tは、下降を続けるものの、その下降率が低下する。本実施形態2では、「Td≦Tth4」となる場合に、待機終了時温度Tend2は、単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Tdと等しくなる(図7A参照)。
【0142】
一方、予測される単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度(低効率冷却待機終了時温度)Tdが第4閾値温度Tth4以下になるか否かの判定で、予測される単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度(低効率冷却待機終了時温度)Tdが第4閾値温度Tth4を超える(「Td>Tth4」)と判定される場合に、冷却機構100Bは、図7Bの一点鎖線L4で示す温度制御を行う。
【0143】
すなわち、冷却機構100Bは、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、第1冷却ファン111のみが駆動されている単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3から第1及び第2冷却ファン111,112がともに駆動されている複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)F4に切り替える。その結果、検出温度Tは、複数ファン駆動状態F4での温度下降率k4で下降する。
【0144】
そして、カラープリンタ1Bは、待機処理を開始してから待機時間twaが経過すると、パワーセーブ処理を開始する。このとき、冷却機構100Bは、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)F4からファン停止状態Fspに切り替える。これにより、検出温度Tは、下降を続けるものの、その下降率が低下する。本実施形態2では、「Td>Tth4」となる場合に、待機終了時温度Tend2は、複数ファン駆動状態F4での待機終了時温度Teと等しくなる(図7B参照)。
【0145】
本実施形態2に係る冷却機構100Bは、図7A及び図7Bに示す温度制御を実現するために、図8に示す処理を実行する。なお、図8は、実施形態2に係る冷却機構の動作を示すフローチャートである。
【0146】
冷却機構100Bは、複数ファン駆動状態F4での温度下降率k4等のデータを記憶部171に予め記憶する。なお、ここでは、「複数ファン駆動状態F4での温度下降率k4」は、例えば、事前に、高温高湿環境下でかつ装置の待機処理時の定格負荷状態で、最小の待機時間twaの半分の測定時間の待機処理をカラープリンタ1Bに行わせた場合に測定される温度の下降率となっているものとする。
【0147】
カラープリンタ1Bは、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機状態に移行して、待機処理を開始する。これに合わせて、冷却機構100Bは、図8に示すフローに沿って、図7A及び図7Bに示す温度制御を開始する。
【0148】
図8に示すように、待機開始時(具体的には、搬送部50の搬送動作停止時)に、冷却機構100Bは、ファン制御部131aが、第1冷却ファン111の回転速度を低速に設定して、第1冷却ファン111を低速で駆動開始させる(S605)。
【0149】
このとき、温度検出部131eは、サーミスタ220で検出された電圧値から、記憶部171に予め記憶されている「サーミスタ電圧−温度変換テーブルD1(図示せず)」に基づいて、冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度を検出温度Tとして検出する(S610)。なお、初回検出時の検出温度Tは、印刷終了時温度Tend(図7A及び図7B参照)となる。印刷終了時温度Tendは、待機状態移行時温度でもある。温度検出部131eは、印刷終了時温度Tendが検出されると、印刷終了時温度Tendを記憶部171に記憶させる。
【0150】
S610の後、温度検出部131eは、検出温度Tが第3閾値温度Tth3に達するまで(すなわち、検出温度Tが第3閾値温度Tth3まで下降するまで)、検出温度Tが第3閾値温度Tth3に達したか否かを繰り返し判定する(S615)。なお、ここでは、第3閾値温度Tth3は、例えば、カラープリンタ1Bが待機中の状態において、第1冷却ファン111が低速で1分間駆動した場合の温度下降値の1/10〜1/4を印刷終了時温度Tendから減算した値の温度とする。温度検出部131eは、印刷終了時温度Tendが検出されたときに、印刷終了時温度Tendに基づいて第3閾値温度Tth3を算出し、算出された第3閾値温度Tth3を記憶部171に記憶させる。なお、第3閾値温度Tth3を固定値にせずに、印刷終了時温度Tendの検出時に第3閾値温度Tth3を算出するのは、印刷ジョブ枚数Jが多いときや設置環境の温度等の影響によって、印刷終了時温度Tendが変動し易いためである。すなわち、冷却機構100Bは、第3閾値温度Tth3を固定値にすると、印刷終了時温度Tendが高い場合に、第1及び第2冷却ファン111,112の状態をすぐに複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)F4に切り替えなければならなくなり、単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3の期間が短くなるためである。
【0151】
S615の判定で、検出温度Tが第3閾値温度Tth3に達したと判定された場合(“Yes”の場合)に、待機終了時温度算出部131cは、単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Tdを算出する(S620)。
【0152】
この「単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Td」の算出は、以下のようにして行われる。
まず、検出温度Tが第3閾値温度Tth3に到達すると、時間算出部131dが、待機処理を開始してから検出温度Tが第3閾値温度Tth3に到達するまでに要した時間(以下、「切替用閾値到達時間t3」と称する)を算出して、記憶部171に記憶させる。
【0153】
そして、待機終了時温度算出部131cが、記憶部171に記憶された「第3閾値温度Tth3」、「印刷終了時温度Tend」、「切替用閾値到達時間t3」、及び、「待機時間twa」を参照して、以下の式(8)に基づいて、「単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Td」を算出して、算出された単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Tdを記憶部171に記憶させる。
Td=Tth3+((Tth3−Tend)÷t3)×(twa−t3) …(8)

【0154】
S620の後、温度比較部131fは、単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Tdが第4閾値温度Tth4以下(「Td≦Tth4」)になるか否かを判定する(S625)。
【0155】
なお、「第4閾値温度Tth4」の算出は、以下のようにして行われる。
温度検出部131eは、切替用閾値到達時間t3が算出されたときに、記憶部171に記憶された「第3閾値温度Tth3」、「複数ファン駆動状態F4での温度下降率k4」、「待機時間twa」、及び、「切替用閾値到達時間t3」を参照して、以下の式(9)に基づいて、「第4閾値温度Tth4」を算出して、算出された第4閾値温度Tth4を記憶部171に記憶させる。
Tth4=Tth3+k4×(twa−t3) …(9)

【0156】
S625の判定で、単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Tdが第4閾値温度Tth4以下になると判定された場合(“Yes”の場合)に、冷却機構100Bは、図7Aに示す温度制御を行う。この場合に、冷却機構100Bは、ファン制御部131aが、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)F4(図7B参照)に切り替えずに、第1冷却ファン111のみが駆動されている単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3のままに維持する。
【0157】
そして、ファン制御部131aは、待機開始時からの時間が記憶部171に保存された「待機時間twa」分だけ経過するまで、時間が待機時間twa分だけ経過したか否かを繰り返し判定する(S630)。
【0158】
S630の判定で、時間が待機時間twa分だけ経過したと判定された場合(“Yes”の場合)に、ファン制御部131aは、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3からファン停止状態Fsp(図7A参照)に切り替える。すなわち、ファン制御部131aが、第1冷却ファン111を駆動停止させる(S635)。これにより、冷却機構100Bは、待機処理時の冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度制御を終了する。これに合わせて、カラープリンタ1Bは、待機処理が終了して、装置の状態がパワーセーブ状態に移行する。
【0159】
一方、S625の判定で、単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Tdが第4閾値温度Tth4を超えると判定された場合(“No”の場合)に、冷却機構100Bは、図7Bに示す温度制御を行う。この場合に、冷却機構100Bは、ファン制御部131aが、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)F3から複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)F4(図7B参照)に切り替える。すなわち、ファン制御部131aが、第2冷却ファン112を低速で駆動開始させる(S640)。
【0160】
そして、ファン制御部131aは、待機開始時からの時間が記憶部171に保存された「待機時間twa」分だけ経過するまで、時間が待機時間twa分だけ経過したか否かを繰り返し判定する(S645)。
【0161】
S645の判定で、時間が待機時間twa分だけ経過したと判定された場合(“Yes”の場合)に、ファン制御部131aは、第1及び第2冷却ファン111,112の状態を、複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)F4からファン停止状態Fsp(図7B参照)に切り替える。すなわち、ファン制御部131aが、第1及び第2冷却ファン111,112を駆動停止させる(S650)。これにより、冷却機構100Bは、待機処理時の冷却対象物(ここでは、電源部200)の温度制御を終了する。これに合わせて、カラープリンタ1Bは、待機処理が終了して、装置の状態がパワーセーブ状態に移行する。
【0162】
本実施形態2に係るカラープリンタ1Bは、冷却機構100Bを搭載することにより、以下のように動作する。
【0163】
すなわち、本実施形態2に係るカラープリンタ1Bは、印刷処理が終了すると、装置の状態が待機状態に移行して、待機処理を開始する。このとき、カラープリンタ1Bは、各部の温度が上昇した状態となっている。
【0164】
そのため、冷却機構100Bは、待機開始時からの時間が記憶部171に記憶された「待機時間twa」分だけ経過するまで、第1冷却ファン111を駆動させて、冷却対象物を冷却する。その際に、冷却機構100Bは、パワーセーブ移行時の温度として「単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Td」を算出するとともに、上限閾値温度として「第4閾値温度Tth4」を算出する。そして、冷却機構100Bは、「単一ファン駆動状態F3での待機終了時温度Td」と「第4閾値温度Tth4」との関係に基づいて、必要に応じて、第2冷却ファン112を駆動して、冷却効率をアップさせる。これにより、カラープリンタ1Bは、次回印刷時の印刷開始温度Tst(図4A及び図4B参照)が、第2冷却ファン112を駆動させない場合よりも低くなる。そのため、カラープリンタ1Bは、実施形態1に係るカラープリンタ1Aよりも、ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)F1の期間を長くすることができる。その結果、カラープリンタ1Bは、実施形態1に係るカラープリンタ1Aよりも、次回印刷時の消費電力及び騒音を低減することができる。
【0165】
この後、冷却機構100Bは、待機開始時からの時間が記憶部171に記憶された「待機時間twa」分だけ経過すると、第1冷却ファン111を駆動停止させる。これに合わせて、カラープリンタ1Bは、待機処理が終了して、装置の状態がパワーセーブ状態に移行する。
【0166】
以上の通り、実施形態2に係る冷却機構100Bによれば、実施形態1に係る冷却機構100Aと同様に、高効率冷却状態(ここでは、複数ファン駆動状態F4)での冷却ファン110の駆動時間を短縮することができ、これによって、消費電力及び騒音を抑制することができる。
【0167】
さらに、冷却機構100Bによれば、必要に応じて、第2冷却ファン112を駆動して、冷却効率をアップさせることができる。
これにより、冷却機構搭載装置1Bの次回ジョブ時のジョブ開始温度Tst(図4A及び図4B参照)を、第2冷却ファン112を駆動させない場合よりも低下させることができる。その結果、冷却機構100Bによれば、冷却機構搭載装置1Bの次回印刷時の消費電力及び騒音を、実施形態1に係るカラープリンタ1Aよりも、低減することができる。
【0168】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0169】
例えば、冷却機構100A,100Bは、定着部40のヒートローラや、図示せぬ各種のスイッチング素子を冷却対象物とし、これらを冷却するように構成されていてもよい。なお、この場合には、サーミスタ220は、冷却対象物に、又は、その周囲に配置される。
【0170】
また、例えば、実施形態1では、冷却ファン110の回転速度の変更は、冷却ファン110に印加される電圧をオペアンプ142で変更することによって、行っている。しかしながら、冷却ファン110(直流ファン)の回転速度の変更は、冷却ファン110に印加される電圧を図示せぬツェナーダイオード及び抵抗器で変更することによって、行うようにしてもよい。このような回路は、例えば、ツェナーダイオードと抵抗器とを電源端子とグランド端子との間に接続し、直流ファンをツェナーダイオードと抵抗器との間に接続することによって実現される。
【0171】
また、例えば、冷却部110は、ペルチェ素子(Peltier Device)によって構成することもできる。ペルチェ素子は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルティエ効果を利用した板状の半導体素子である。ペルチェ素子は、直流電流を流すと、一方の面が吸熱し、他方の面が発熱する。
【0172】
また、例えば、本発明は、プリンタに限らず、ファクシミリ装置、複写機、MFP等の画像形成装置に用いることができる。なお、「MFP」とは、Multi Function Printerの略称で、プリンタにファクシミリ機能やスキャナ機能、コピー機能等を付加した装置である。
また、例えば、本発明は、画像形成装置に限らず、プロジェクタ等の様々な冷却対象物を冷却する構成の装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0173】
1(1A,1B) 冷却機構搭載装置(画像形成装置)
2 本体部
2a 表示操作部
2b 排出スタッカ部
3 トップカバー部
4 印刷媒体収納部
5 搬送路
6(6a) ローラ(給紙ローラ)
6(6b) ローラ(第1レジストローラ)
6(6c) ローラ(第2レジストローラ)
8 搬送ベルト
10 画像形成部
11 現像剤収納部
12 感光ドラム
20 露光部(LEDヘッド)
30 転写部
31 転写ローラ
40 定着部
50 搬送部
60 画像形成機構
100(100A,100B) 冷却機構
110 冷却ファン(冷却部)
111 冷却ファン(第1冷却部)
112 冷却ファン(第2冷却部)
120(120A,120B) 制御部
121,131 MPU
121a,131a ファン制御部
121b 温度上昇率算出部
121c 印刷終了時温度算出部
121d,131d 時間算出部
121e,131e 温度検出部
121f ファン速度切替温度算出部
131b 温度下降率算出部
131c 待機終了時温度算出部
131f 温度比較部
141 ファン回転速度変更回路
142 オペアンプ
143 分圧抵抗器
144 A/D変換器
151 外部インタフェース
161,171 記憶部
161a,171a 第1記憶部
161b,171b 第2記憶部
200 電源部(冷却対象物)
200a,200b,200c 第1,第2,第3出力用電源部
220 サーミスタ
D1 サーミスタ電圧−温度変換テーブル
F1 ファン低速駆動状態(低効率冷却状態)
F2 ファン高速駆動状態(高効率冷却状態)
F3 単一ファン駆動状態(低効率冷却状態)
F4 複数ファン駆動状態(高効率冷却状態)
Fsp ファン停止状態
P 印刷媒体
SN センサ部
SN1 センサ(第1搬送センサ)
SN2 センサ(第2搬送センサ)
SN3 センサ(書込センサ)
SN4 センサ(排出センサ)
Ta ファン低速印刷終了時温度(低効率冷却ジョブ終了時温度)
Tb ファン高速印刷終了時温度(高効率冷却ジョブ終了時温度)
Tc 切替温度
Td 単一ファン駆動状態での待機終了時温度
Te 複数ファン駆動状態での待機終了時温度
Tend 印刷終了時温度(ジョブ終了時温度)
Tend2 待機終了時温度
Tst 印刷開始時温度(ジョブ開始時温度)
Tth1 第1閾値温度(切替用閾値温度)
Tth2 第2閾値温度(上限閾値温度)
Tth3 第3閾値温度(切替用閾値温度)
Tth4 第4閾値温度(上限閾値温度)
t1,t3 切替用閾値到達時間
t2 印刷終了時間(ジョブ終了時間)
twa 待機時間
tx 低速許容時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象物を冷却する冷却機構において、
前記冷却対象物を冷却する冷却部と、
前記冷却対象物の温度を検出温度として検出する温度検出部と、
前記冷却部の冷却状態を、冷却効率が低い低効率冷却状態、及び、当該低効率冷却状態よりも冷却効率が高い高効率冷却状態のいずれかに切り替える制御部と、
少なくとも、前記冷却部の冷却状態を前記低効率冷却状態から前記高効率冷却状態に切り替えるための基準の温度として用いられる切替用閾値温度と、温度制御の上限値の温度として用いられる上限閾値温度とを記憶する記憶部とを有し、
前記制御部は、前記冷却部に前記低効率冷却状態で駆動させるとともに、その後に、前記検出温度が前記切替用閾値温度に到達した場合であっても、前記低効率冷却状態での処理終了時の温度が前記上限閾値温度以下になるときには、前記冷却部の冷却状態を前記高効率冷却状態に切り替えずに、前記低効率冷却状態のままに維持する
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却機構において、
前記冷却対象物が高発熱状態になるジョブ処理の開始時の温度をジョブ開始時温度とし、前記検出温度を検出温度とし、前記切替用閾値温度を第1閾値温度とし、前記上限閾値温度を第2閾値温度とし、前記低効率冷却状態でのジョブ処理終了時の予測温度を低効率冷却ジョブ終了時温度とする場合に、
前記温度検出部は、前記ジョブ処理の開始時に、前記検出温度として前記ジョブ開始時温度を検出し、
前記制御部は、前記ジョブ処理中に、前記検出温度が前記ジョブ開始時温度から前記第1閾値温度に上昇した場合であっても、前記低効率冷却ジョブ終了時温度が前記第2閾値温度以下になるときには、前記冷却部の冷却状態を前記高効率冷却状態に切り替えずに、前記低効率冷却状態のままに維持する
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却機構において、
前記制御部は、前記検出温度が前記ジョブ開始時温度から前記第1閾値温度に上昇した場合で、かつ、前記低効率冷却ジョブ終了時温度が前記第2閾値温度を超える場合に、前記検出温度が所定の切替温度に到達したときに、前記冷却部の状態を前記低効率冷却状態から前記高効率冷却状態に切り替える
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の冷却機構において、
前記検出温度を「T」とし、前記ジョブ開始時温度を「Tst」とし、前記第1閾値温度を「Tth1」とし、前記低効率冷却ジョブ終了時温度を「Ta」とし、前記検出温度Tが前記ジョブ開始時温度Tstから前記第1閾値温度Tth1に上昇するまでに要する時間を切替用閾値到達時間t1とし、前記ジョブ処理の開始から終了までに要する時間をジョブ終了時間t2とする場合に、
前記低効率冷却ジョブ終了時温度Taは、前記第1閾値温度Tth1、前記ジョブ開始時温度Tst、前記切替用閾値到達時間t1、及び、前記ジョブ終了時間t2に基づいて、式(1)によって算出される
Ta=Tth1+((Tth1−Tst)÷t1)×(t2−t1) …(1)
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項5】
請求項3に記載の冷却機構において、
前記検出温度を「T」とし、前記ジョブ開始時温度を「Tst」とし、前記第1閾値温度を「Tth1」とし、前記第2閾値温度を「Tth2」とし、前記所定の切替温度を「Tc」とし、前記低効率冷却状態での一定時間あたりの温度上昇率を低効率冷却温度上昇率k1とし、前記高効率冷却状態での一定時間あたりの温度上昇率を高効率冷却温度上昇率k2とし、前記検出温度Tが前記ジョブ開始時温度Tstから前記第1閾値温度Tth1に上昇するまでに要する時間を切替用閾値到達時間t1とし、前記ジョブ処理の開始から終了までに要する時間をジョブ終了時間t2とする場合に、
前記切替温度Tcは、前記第1閾値温度Tth1、前記第2閾値温度Tth2、前記低効率冷却温度上昇率k1、前記高効率冷却温度上昇率k2、前記切替用閾値到達時間t1、及び、前記ジョブ終了時間t2に基づいて、式(2)によって算出される
Tc=(k1×Tth2−k1×k2×(t2−t1)−k2×Tth1)÷(k1−k2) …(2)
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項6】
請求項5に記載の冷却機構において、
前記低効率冷却温度上昇率k1は、式(3)によって算出される
k1=(Tth1−Tst)÷t1 …(3)
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の冷却機構において、
前記高効率冷却温度上昇率k2は、前記記憶部に予め記憶されている
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項8】
請求項7に記載の冷却機構において、
前記記憶部は、前記切替用閾値温度としての前記第1閾値温度Tth1及び前記上限閾値温度としての前記第2閾値温度Tth2を記憶する第1記憶部と、前記高効率冷却温度上昇率k2を記憶する第2記憶部とに区画されている
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項9】
請求項3乃至請求項8のいずれか一項に記載の冷却機構において、
前記冷却部の冷却状態が前記高効率冷却状態に切り替えられた場合のジョブ処理終了時の予測温度を高効率冷却ジョブ終了時温度とし、
前記制御部は、
前記低効率冷却ジョブ終了時温度と前記高効率冷却ジョブ終了時温度との差分が前記第2閾値温度と前記低効率冷却ジョブ終了時温度との差分よりも大きい場合に、前記冷却部の冷却状態を前記低効率冷却状態から前記高効率冷却状態に切り替え、
一方、前記低効率冷却ジョブ終了時温度と前記高効率冷却ジョブ終了時温度との差分が前記第2閾値温度と前記低効率冷却ジョブ終了時温度との差分以下になる場合に、前記冷却部の冷却状態を前記高効率冷却状態に切り替えずに、前記低効率冷却状態のままに維持する
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の冷却機構において、
前記冷却対象物が高発熱状態になるジョブ処理が終了した後の、待機処理の開始時の温度をジョブ終了時温度とし、前記検出温度を検出温度とし、前記切替用閾値温度を第3閾値温度とし、前記上限閾値温度を第4閾値温度とし、前記低効率冷却状態での待機処理終了時の予測温度を低効率冷却待機終了時温度とする場合に、
前記温度検出部は、前記待機処理の開始時に、前記検出温度として前記ジョブ終了時温度を検出し、
前記制御部は、前記待機処理中に、前記検出温度が前記ジョブ終了時温度から前記第3閾値温度まで下降した場合であっても、前記低効率冷却待機終了時温度が前記第4閾値温度以下になるときには、前記冷却部の冷却状態を前記高効率冷却状態に切り替えずに、前記低効率冷却状態のままに維持する
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項11】
請求項10に記載の冷却機構において、
前記検出温度を「T」とし、前記ジョブ終了時温度を「Tend」とし、前記第3閾値温度を「Tth3」とし、前記低効率冷却待機終了時温度を「Td」とし、前記検出温度Tが前記ジョブ終了時温度Tendから前記第3閾値温度Tth3に下降するまでに要する時間を切替用閾値到達時間t3とし、前記待機処理の開始から終了までの時間を待機時間twaとする場合に、
前記低効率冷却待機終了時温度Tdは、前記第3閾値温度Tth3、前記ジョブ終了時温度Tend、前記切替用閾値到達時間t3、及び、前記待機時間twaに基づいて、式(4)によって算出される
Td=Tth3+((Tth3−Tend)÷t3)×(twa−t3) …(4)
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の冷却機構において、
前記冷却対象物は、電源部である
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の冷却機構において、
前記冷却部は、冷却ファンとして構成されている
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項14】
請求項13に記載の冷却機構において、
前記制御部は、前記冷却ファンの回転速度を変更することによって、前記冷却部の冷却状態を、前記低効率冷却状態と前記高効率冷却状態とのいずれか一方に切り替える
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項15】
請求項14に記載の冷却機構において、
前記冷却ファンの回転速度の変更は、前記冷却ファンに印加される電圧をツェナーダイオードによって変更することにより行う
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項16】
請求項13に記載の冷却機構において、
前記冷却ファンは、複数設けられており、
前記制御部は、回転させる前記冷却ファンの数を変更することによって、前記冷却部の冷却状態を、前記低効率冷却状態と前記高効率冷却状態とのいずれか一方に切り替える
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項17】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の冷却機構において、
前記冷却部は、ペルチェ素子として構成されている
ことを特徴とする冷却機構。
【請求項18】
冷却対象物を冷却する冷却機構を搭載する冷却機構搭載装置において、
請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の冷却機構を搭載する
ことを特徴とする冷却機構搭載装置。
【請求項19】
請求項18に記載の冷却機構搭載装置において、
当該装置は、電子写真プロセスによって画像を形成する画像形成装置として構成されており、
各部に電力を供給する電源部を前記冷却対象物とし、前記冷却機構を当該電源部の冷却に用いる
ことを特徴とする冷却機構搭載装置。
【請求項20】
請求項18に記載の冷却機構搭載装置において、
当該装置は、プロジェクタとして構成されており、
各部に電力を供給する電源部を前記冷却対象物とし、前記冷却機構を当該電源部の冷却に用いる
ことを特徴とする冷却機構搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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