説明

冷却液の温度を制御するための冷却液回路およびこれを備える自動車

【課題】自動車(1)、具体的には、乗用車の駆動装置または機関(2)を冷却するために好ましい、冷却液(7a)の温度を制御するために電動式ファンモータ(5)を作動するコントローラ(8)を備える冷却液回路(5、6、7、7a、8、8a)を提供する。
【解決手段】コントローラ(8)が、冷却されるために冷却液(7a)と熱接触し、好ましくはコントローラ(8)に備えられた温度センサ(8a)によって冷却液(7a)の温度を検出するために構成される。これによって、冷却液(7a)を、この目的のために必要とされる主制御器または調節機器からの制御信号なしで規定温度に調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液の温度を制御するために冷却液から熱を抽出する働きをする電動式ファンモータを作動し、これによって、ファンモータの電圧を決定するコントローラを有する、自動車、具体的には、乗用車の駆動装置または機関を冷却するために好ましい冷却液回路に関する。冷却液回路のファンモータは、機関が運転しているとき電気的または機械的のいずれかで駆動される。機関が停止されると、そこで電動式であるファンモータの続走が、通常、適切な機関温度で起こる。この種の冷却液回路の中の冷却液として水を用いることは通例のものである。この種の冷却液回路が(内燃)機関を冷却するだけでなく、他の駆動装置を冷却、例えば燃料電池を冷却するために用いることができることが理解されよう。
【背景技術】
【0002】
ファンは、ほとんどの場合、出力を徐々に制御することができる電気モータを有する。実際には、出力制御は並列または直列のスイッチまたはリレーで行う。パルス幅変調に基づくコントローラ、いわゆるPWMコントローラでの連続制御が、最上級カテゴリの車両が関連する分野でやはり知られている。したがって、PWMコントローラは、このしばしば非常に高温である機関室の中で機能する。
【0003】
冷却液の温度を測定するために冷却液回路の中に温度センサを備えることが知られており、このセンサは冷却液回路の外側の制御ユニットに接続される。制御ユニットは、温度センサの信号を評価し、冷却液温度に関する情報をコントローラに伝える。ケーブル布線の多大な消費が、コントローラまたは温度センサに制御ユニットを接続するために必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冷却液回路と、この種の冷却液回路を有する自動車と、冷却液導管と、冷却器と、冷却液の温度、したがって冷却されるべき機器、例えば、内燃機関の温度が単純で廉価な方法で制御されることを可能にするこの種の冷却器を有するCRFMモジュールとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は独立請求項の特徴によって解決される。有利な発展形態およびさらなる実施形態が従属請求項の特徴から明らかになる。
【0006】
一態様によると、この目的は、コントローラが冷却されるために冷却液と熱接触し、コントローラが、好ましくはコントローラに備えられた温度センサを用いて冷却液の温度を検出するために構成される最初に言及したタイプの冷却液回路によって解決される。コントローラは、検出した(実際の)温度を冷却水の理想温度と比較し、理想温度に冷却水の温度を調節またはこれに上限を設定するためにファンモータを作動する。
【0007】
冷却液の温度は、温度制御が実際のコントローラによって直接に実行されるので、主制御器または調節機器と関係なく設定することができる。コントローラがこの冷却の目的のために冷却液と間接または直接に熱接触するということが、この接続で利用することができる。したがって、具体的には、温度センサは、単一のサブアッセンブリだけがファンモータの温度を制御するために必要とされるようにコントローラを有するユニットを構成し、すなわち、後者の中に一体化されるかまたはこれに固定され、これがさらにケーブル布線の消費を低減させる。
【0008】
したがって、冷却液回路は、冷却液の温度を制御するための独立したユニットとして用いることができる。冷却されるべき冷却液または内燃機関の理想温度だけが外部制御機器によって任意選択でさらに予め設定される。
【0009】
好ましい実施形態では、コントローラは(アナログ)線形コントローラとして構成される。連続制御可能なファンモータを有する自動車の場合には、線形コントローラを用意することにより、モータが低コストでよい電磁環境両立性で制御されることが可能になる。最初に、連続制御可能性はバッテリに最小負荷で最小の騒音の発生をもたらす。制御部をリレーと比較すると、より少ない電気接続およびより少ないケーブルのためおよび過熱保護システムの存在、より低い発火の恐れとともにより少ない故障のために信頼性が高い。リレーの代わりに線形コントローラを用いることにより、少なくとも80%小さい空間要件で価格が半分より低くて約50%の重量軽減をももたらす。さらに、組立コストは低く、故障のときの診断を実行することができる。
【0010】
PWMコントローラと比較すると、線形コントローラは、前者が20kHzで不利な方法でパルス振動するので、明らかによい電磁環境両立性を有する。したがって、PWMコントローラは電磁環境両立性を保証するために幅広い対策を必要とし、この対策は、PWMコントローラを線形コントローラより現在ほぼ3倍高価な構成部品にする。最初に、この解法が、他方で水回路へコントローラの消散出力を取り除くことによって内燃機関の複雑な冷却システムの中で介入を必要とするが、小型および中型カテゴリの車両の機関用ファンが許容可能な相場で連続制御されることが可能になる。
【0011】
一実施形態では、コントローラは冷却液回路の冷却液導管と熱接触する。これにより、車両がケーブル布線の消費を低減させるために設計されるとき、ファンモータに近いコントローラの位置を選択することが可能になる。
【0012】
別の実施形態では、冷却液導管は、コントローラまたはこのコントローラに連結された冷却ブロックが部分的に取り付けられる凹部を有する。冷却液導管は、例えば、鋳造アルミニウムから成り、この冷却液導管の凹部の中にコントローラまたはこの冷却ブロックが取り付けられ、適切に密封される。したがって、コントローラは冷却液回路の冷却液に熱的に結合され、これは媒体空気を介する冷却より効率的である。この場合には、温度センサは、冷却液と直接に接触するかまたは冷却ブロックの温度を測定するために構成されるかのいずれかであり、この温度センサからコントローラは冷却液の温度を確認する。
【0013】
別の実施形態では、コントローラは、冷却液回路に連結され、冷却液を含む冷却器と熱接触する。この場合、コントローラは、温度センサが冷却器ハウジングの温度を測定する状態で(水)冷却器に直接設置されてよく、この温度センサからコントローラは順に冷却液の温度を測定する。この場合、コントローラが、内燃機関によって加熱された冷却液の温度を確認するかまたは理想温度にこれを調節するために冷却器内への冷却液の冷却液入口の近傍に、あるいは冷却器によって冷却された冷却液の温度を検出しこれを制御するために冷却液出口に配置することができることが理解されよう。
【0014】
本発明の別の態様は、内燃機関を冷却するための上述のような冷却液回路のための自動車に関する。既に示したように、ケーブル布線の消費をこの種の自動車では低減することができる。
【0015】
本発明の一態様は、自動車の冷却液回路用の冷却液導管であって、運転中にこの冷却液導管の中を流れる冷却液の温度を測定するための温度センサを有するコントローラ、具体的には、線形コントローラを備える冷却液導管に関する。上述のように、その結果、コントローラとファンモータの間の距離、したがって、コントローラからファンモータへの制御電線路のケーブル長さは、短く維持することができる。
【0016】
一実施形態では、冷却液導管は、コントローラが、とりわけ好ましい方法で水回路の冷却液と熱的に結合するようにコントローラまたはこのコントローラに連結された冷却ブロックが部分的に取り付けられる凹部を備える。
【0017】
本発明の別の態様は、自動車の冷却液回路用の冷却器であって、運転中に冷却器の中を流れる冷却液の温度を測定するための温度センサを有する着脱可能な方法でこれに接続されたコントローラ、具体的には、線形コントローラを備える冷却器に関する。(水)冷却器は、コントローラが冷却器に取り付けられるかまたはクリップ連結によって後者に固定される限りにおいて使用することができる。コントローラは、冷却器の横方向の冷却液端部タンクの一方に装着することができる。この連結では、冷却液出口側にある端部タンクが冷却液が低温であるとの理由で選択されることが好ましい。組み合わされた冷却器/コントローラのために、機関室の中で構成部品を組み立てる工程が容易になり、組立時間は低減され、構成部品はよりかさばらない方法で配置することができ、これは新しい車両の開発でより大きな自由度をもたらす。
【0018】
本発明の別の態様は、上述のようなファンモータと冷却器とを備えるCRFMモジュールに関する。この場合も、取り扱う機能の一体化のために、新しい車両の開発において自由度がより大きくなるとともに機関室の中の構成部品に対する空間要件がより少なくなる。
【0019】
本発明の実施形態を、概略図に示し、以下の説明で例証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
概して、同一の目的物を同一の参照符号で記す図では、図1が平面図で自動車1を示す。自動車1は内燃機関2を有し、この内燃機関2の上流に水冷装置3および空調用コンデンサ4が配置される。ファンモータ5が、自動車1が停止された後、冷却器の続走のために備えられる。
【0021】
水冷装置3、空調用コンデンサ4およびファンモータ5は、分かれた冷却回路用の個別の構成部品、または破線によって示すようにCRFMモジュール(コンデンサラジエータファンモジュール)6の構成部品であってよい。CRFMモジュール6は、知られる方法で冷却液導管7を経由して冷却液7aとして水で内燃機関2を冷却する。
【0022】
線形コントローラとして構成されたコントローラ8が、冷却液導管7の中に取り付けられる。コントローラ8は、電線路9を経由してCRFMモジュールに接続され、ファンまたはこのファンモータ5を連続的に制御する。その結果、続走でのファンの騒音およびやはりバッテリ(図示せず)の負荷は、低コストで電磁環境両立性的な方法で最小限に低減される。これはコントローラ8を有する機関室の中で場合によっては高温にもかかわらず成功し、このコントローラ8は水回路の中で冷却液によって十分に冷却できる。
【0023】
コントローラ8はまた、冷却液7aと直接に熱接触する温度センサ8aを有する。温度センサ8aによって伝えられ、冷却液7aの実温度に対応する信号は、コントローラ8によって評価され、これにより、冷却液7aの所望の理想温度が得られるように電線路9を経由してファンモータ5を作動する。したがって、自動車1の冷却液回路は、外部制御機器なしに冷却液7aひいては、内燃機関2の温度を制御することができる閉ループ制御システムを示す。冷却液の理想温度だけが、外部制御機器によって任意選択で予め設定することができる。
【0024】
図2は、線形コントローラ8が端部タンク12にしっかりとねじ込まれる水冷装置3を示す。冷却液入口13が図2の右側にあり、冷却液出口14が図2の左側にあるので、冷却液出口側の端部タンク12は、より低い温度であるとの理由により選択される。水冷装置3は、線形コントローラ8の寸法に適合した凹部(図示せず)を有し、線形コントローラを部分的に収容する。水冷装置3は図1のCRFMモジュール6の一部であってよい。コントローラ8は、端部タンク12と熱接触する温度センサ8aを有し、冷却液と熱接触する端部タンク12の温度を介して冷却液の温度を間接的に検出する。
【0025】
図3は内燃機関2用の冷却液回路のための冷却液導管7を示す。これは、線形コントローラ8の冷却ブロック11が、冷却液回路の冷却液がこの周りを直接に流れるように取り付けられる凹部10を有する。線形コントローラ8は、冷却ブロック11と熱的に連結される温度センサ(図示せず)を有し、その結果、コントローラ8は、冷却ブロック11の温度に基づき冷却液導管7の中の冷却液の温度を検出することができる。
【0026】
具体的な実施形態を上述したが、当分野の技術者ならばこれら実施形態の説明の目的が提示された形で発明を制限しないことが理解されよう。それどころか、本発明は、請求した発明の保護的範囲の中にあるすべての変形形態、均等物および代替物を含むものである。本発明は、具体的には、冷却液回路の冷却液の温度を制御するためのファンモータを備えるすべての技術的機器で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】自動車を示す平面図である。
【図2】水冷装置を示す側面図である。
【図3】ユニット式の線形コントローラを有する冷却液導管を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動車
2 内燃機関
3 水冷装置
4 空調用コンデンサ
5 ファンモータ
6 CRFMモジュール
7 冷却液導管
7a 冷却液
8 コントローラ
8a 温度センサ
9 電線路
10 凹部
11 冷却ブロック
12 端部タンク
13 冷却液入口
14 冷却液出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)、具体的には、乗用車の駆動装置または機関(2)を冷却するために好ましい、冷却液(7a)の温度を制御するために電動式ファンモータ(5)を作動させるコントローラ(8)を備える冷却液回路(5、6、7、7a、8、8a)であって、前記コントローラ(8)が冷却されるために前記冷却液(7a)と熱接触すること、および前記コントローラ(8)が、好ましくは前記コントローラ(8)に備えられた温度センサ(8a)によって前記冷却液(7a)の温度を検出するために構成されることを特徴とする冷却液回路。
【請求項2】
前記コントローラ(8)が線形コントローラである、請求項1に記載の冷却液回路。
【請求項3】
前記コントローラ(8)が前記冷却液回路の冷却液導管(7)と熱接触する、請求項1または2に記載の冷却液回路。
【請求項4】
前記冷却液導管(7)が、前記コントローラ(8)または前記コントローラ(8)に連結された冷却ブロック(11)が部分的に取り付けられる凹部(10)を有する、請求項3に記載の冷却液回路。
【請求項5】
前記コントローラ(8)が、前記冷却液(7a)を冷却するために冷却器(3)と熱接触する、請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却液回路。
【請求項6】
その内燃機関(2)を冷却するための請求項1から5のいずれか一項に記載の冷却液回路(5、6、7、7a、8、8a)を有する自動車(1)。
【請求項7】
自動車(1)の冷却液回路(5、6、7、7a、8、8a)用の冷却液導管(7)であって、運転中に前記冷却液導管(3)の中を流れる冷却液(7a)の温度を測定するための温度センサ(8a)を有するコントローラ(8)、具体的には、線形コントローラを備える冷却液導管(7)。
【請求項8】
前記コントローラ(8)または前記コントローラ(8)に連結された冷却ブロック(11)が部分的に取り付けられる凹部(10)を備える、請求項7に記載の冷却液導管。
【請求項9】
自動車(1)の冷却液回路(5、6、7、7a、8、8a)用の冷却器(3)であって、着脱可能な方法で前記冷却器に連結され、運転中に前記冷却器(3)の中を流れる冷却液(7a)の温度を測定するための温度センサ(8a)を有するコントローラ(8)、具体的には、線形コントローラを備える冷却器(3)。
【請求項10】
ファンモータ(5)と、請求項9に記載の冷却器(3)とを備えるCRFMモジュール(6)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−68488(P2009−68488A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−230842(P2008−230842)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(503145110)シトリニック ゲス フュール エレクトロテクニッシュ オウスルゥスタング エム ベー ハー ウント コー カー ゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】sitronic Ges.  fur elektrotechnische Ausrustung mbH & Co. KG