説明

冷却装置および作業機械

【課題】ホースを確実に屈曲させることができるクーリングパッケージを提供する。
【解決手段】固定フレーム105と取付フレーム66との間にヒンジ46を接続し、クーラ部43に対してアフタクーラ44を開閉するようにアフタクーラ44をクーラ部43に対して旋回可能とする。ヒンジ46の旋回中心を、直線状態の可撓ホースの中心軸線CLに対して旋回内側にオフセットした所定の位置に配設する。可撓部86aと取付フレーム66のそれぞれの旋回軌跡が近似し、かつ、可撓部86aと取付フレーム66のそれぞれの旋回角度が略一致してホース45aと取付フレーム66の隙間の拡大を低減でき、ホース45aを確実に屈曲させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器を開閉可能に回動させるヒンジを有する冷却装置およびこれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械としての油圧ショベルは、下部走行体と、この下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体とを有する機械本体を備え、この機械本体の前部には、作業装置が作動可能に突設されている。上部旋回体内には、エンジンおよびこのエンジンにより駆動される油圧ポンプなどが配設され、エンジンの駆動により油圧ポンプから吐出された油圧により作業装置を作動させている。
【0003】
ところで、油圧ショベルなどは、エンジンおよび油圧ポンプなどに加わる負荷が比較的大きい環境下で使用されるため、エンジンの温度上昇、あるいは作動油の温度上昇を招きやすい。
【0004】
そこで、このような油圧ショベルは、エンジンのファンによって生成される冷却風の流路に大容量のラジエータおよびオイルクーラなどの冷却装置を設け、これらラジエータおよびオイルクーラによりエンジン冷却水や作動油を冷却している。
【0005】
また、近年、油圧ショベルでは、排ガス性能を向上するために、アフタクーラを備えたエンジンが搭載されてきている。このアフタクーラは、過給器からエンジンへと供給される過給空気の冷却用に設けられ、吸入空気の温度上昇を抑制し、エンジン内での燃焼温度を低下させることで、窒素酸化物などの発生を抑制するもので、オイルクーラなどの冷却風における上流側すなわち外側などに対向する位置に追加配置される。
【0006】
しかしながら、アフタクーラをオイルクーラなどの外側に配置すると、オイルクーラおよびラジエータなどの清掃の際にアフタクーラが邪魔になるため、このアフタクーラを、オイルクーラおよびラジエータの前面が露出するように回動すなわち旋回可能に設ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図7および図8に、このような作業機械の従来例を具体的に示し、この作業機械は、蛇腹状のホース1を備え、このホース1は、図示されない被取付部であるオイルクーラに、図示されない固定フレームを介して一端側が取付けられているとともに、図示されない冷却器であるアフタクーラに、取付フレーム2を介して他端側が取付けられている。
【0008】
ホース1は、両端部がそれぞれ図示されないクランプホースにより他のホースに接続され、一端部がアフタクーラに接続されている。
【0009】
取付フレーム2には、固定フレームとの間に、アフタクーラをオイルクーラに対して回動可能すなわち旋回可能に支持する図示されないヒンジが接続されている。このヒンジの旋回中心C1は、ホース1の中心軸線CL1上に位置している。
【0010】
そして、この構成では、アフタクーラをオイルクーラに対して旋回させると、ヒンジの旋回中心C1の回りに取付フレーム2が旋回することで、ホース1の両端側の各クランプホースとの接続部間に形成される可撓部1aが、直線状態と90°程度まで屈曲した状態との間で可撓変形する。
【特許文献1】特開2003−96821号公報(第4−5頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、アフタクーラに接続されるホース1は、一般的に固くて柔軟性が充分でなく、また、所要の曲げ半径に対して外径が大きいなど、曲げ長さも不充分であることが多い。
【0012】
したがって、ホース1の可撓部1aを確実に屈曲させるためには、可撓部1aの旋回軌跡T1と取付フレーム2の旋回軌跡T2とを近似させ、可撓部1aの屈曲状態での隙間(ギャップ)も少なくする必要がある。
【0013】
具体的に、直線状の可撓部1aの中心軸線CL1を横軸(x軸)、この中心軸線CL1に直交する方向を縦軸(y軸)にとり、可撓部1aの非旋回部側の端部のクランプホースとの接続部の中心部O1を原点とし、可撓部1aの長さ寸法をLa、可撓部1aの旋回側の端部のクランプホースとの接続部の中心部P1の旋回角度をθ1としたとき、これら中心部Pの旋回軌跡T1(以下、単に旋回軌跡T1という)は、半径R1=La/θ1、中心角θ1の扇形の円弧で近似される。すなわち、この旋回軌跡T1は、0<θ1≦π/2において、
1=(Lasinθ1)/θ1
1={La(1−cosθ1)}/θ1
となる。
【0014】
一方、取付フレーム2の旋回側の上記中心部P1に対応する位置の旋回軌跡T2(以下、単に旋回軌跡T2という)は、ヒンジの旋回中心C1を中心とした円弧となる。したがって、この旋回軌跡T2は、ヒンジの旋回中心C1までの距離をLb、取付フレーム2の旋回角度をθ2とすると、0<θ2≦π/2において、
2=Lb+(La−Lb)cosθ2
2=(La−Lb)sinθ2
となる。
【0015】
このため、上記従来例の冷却装置では、可撓部1aの旋回軌跡T1と取付フレーム2の旋回軌跡T2とが一致せず、取付フレーム2を90°旋回させた場合には、可撓部1aと取付フレーム2との隙間Gが大きくなるという問題点を有している。
【0016】
一方で、取付フレーム2を可撓部1aの位置に合わせて旋回させて隙間Gを低減させようとすると、可撓部1aと取付フレーム2との旋回角度θ1,θ2が一致しないという問題点を有している。
【0017】
この結果、上記従来例では、ホース1の可撓部1aを確実に屈曲することが容易でないという問題を有している。
【0018】
また、最小曲げ半径の制限により、可撓部1aを90°に屈曲させられない場合がある一方で、可撓部1aの曲げ半径を大きくすると多くのスペースが必要となるという問題もある。
【0019】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ホースを確実に屈曲させることができる冷却装置およびこれを備えた作業機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1記載の発明は、冷却器と、この冷却器に一端側が接続されたホースと、被取付部に取付けられた固定フレームと、冷却器に取付けられた取付フレームと、固定フレームと取付フレームとの間に接続され、被取付部に対して冷却器を開閉可能に回動させるヒンジとを具備し、ホースが、ヒンジを中心とする冷却器の開閉状態のそれぞれに対応して直線状態から所定角度まで可撓変形される可撓部を備え、ヒンジの回動中心が、直線状態のホースの可撓部の中心軸線に対して回動内側にオフセットされた所定の位置に配設されている冷却装置である。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の冷却装置において、ヒンジの回動中心が、ホースの可撓部の長さ寸法に基づいて設定されているものである。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の冷却装置において、被取付部が、固定冷却器であり、冷却器が、閉状態で固定冷却器に対向するものである。
【0023】
請求項4記載の発明は、機械本体と、この機械本体に作動可能に設けられた作業装置と、機械本体に設けられ被冷却流体を冷却する請求項3記載の冷却装置とを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、ヒンジの回動中心を、直線状態のホースの中心軸線に対して回動内側にオフセットされた所定の位置に配設することで、ホースの可撓部の回動側端部の回動軌跡と取付フレームの回動軌跡とが近似し、かつ、可撓部の回動側端部と取付フレームとの回動角度が略一致してホースと取付フレームとの隙間の拡大を低減でき、ホースを確実に屈曲させることができる。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、ヒンジの回動中心を、ホースの可撓部の長さ寸法に基づいて設定することにより、ホースの可撓部の回動側端部と取付フレームの回動側とのずれを最小限に抑制できる。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、被取付部を固定冷却器とし、閉状態で冷却器が固定冷却器に対向することで、固定冷却器と冷却器とをともに冷却可能なクーリングパッケージとすることができるとともに、冷却器を固定冷却器に対して回動させて開いた際には、固定冷却器を容易に掃除できる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、ホースを確実に屈曲させることができる冷却装置を備えることで、冷却器を固定冷却器に対して容易に回動させてこの固定冷却器を容易に掃除できるなど、メンテナンス性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を、図1乃至図4を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図4に作業機械としての油圧ショベル11を示し、この油圧ショベル11は、下部走行体12の上部に図示されない旋回部を介して上部旋回体14が旋回可能に設けられた機械本体15を備えている。この機械本体15の上部旋回体14には、オペレータの運転空間を囲むキャブ16が搭載されているとともに、前部に作業装置17が作動可能に突設されている。また、上部旋回体14上には、作動油タンク21、コントロールバルブ22などが搭載され、これらの後側に動力装置23が搭載され、さらに後端上にカウンタウエイト24が搭載されている。
【0030】
動力装置23は、図示されないエンジンフードおよびサイドドアなどの上部の外殻構造物と、エンジンルーム底板およびボトムガードなどの下部の外殻構造物25とで囲まれた空間内に、冷却ファン26を備えた冷却装置としてのクーリングパッケージ27が設置され、このクーリングパッケージ27より上流側にラジエータルーム31が、また下流側に、エンジン32が設置されたエンジンルーム33が区画形成されている。
【0031】
ラジエータルーム31に臨むエンジンフード、サイドドアなどの外殻構造物には、冷却ファン26によりクーリングパッケージ27を通してエンジンルーム33に冷却風を吸込む給気開口部が開口されているとともに、エンジンフード、サイドドア、エンジンルーム底板およびボトムガードなどには、ラジエータルーム31に吸込んだ冷却風を外部へ排気する各種排気開口部がそれぞれ開口されている。
【0032】
エンジン32は、冷却ファン26と、コントロールバルブ22を介して各種油圧アクチュエータに作動油を給排する油圧ポンプ35とをそれぞれ駆動させるもので、図示されない過給器が接続され、この過給器から過給空気が供給される。
【0033】
そして、図1乃至図4に示されるように、クーリングパッケージ27は、冷却ファン26が背面に設けられたラジエータ41およびオイルクーラ42を備えた被取付部としての固定冷却器であるクーラ部43と、冷却器としてのアフタクーラ44とを備え、このアフタクーラ44にホース45a,45bの一端部がそれぞれ取付けられ、かつ、クーラ部43に対してアフタクーラ44が、ヒンジ46を中心として回動すなわち旋回可能に設けられている。これらラジエータ41、オイルクーラ42およびアフタクーラ44は、それぞれ冷却ファン26による冷却風の吸込風路内に、互いに対向するように隣接して冷却風の吸込方向と反対側、すなわち上部旋回体14の外側へと、換言すれば冷却風の下流側から上流側へと、順次配設されている。
【0034】
ラジエータ41は、エンジン冷却水を冷却するもので、例えば放熱用のフィンが複数取付けられエンジン32からのエンジン冷却水が内部を通過する複数のチューブを有する冷却コアの上下を一対のタンクにより挟持して構成され、エンジンルーム33に固定されている。
【0035】
オイルクーラ42は、作動油を冷却するもので、例えば放熱用のフィンが複数取付けられ作動油タンク21からの作動油が内部を通過する複数のチューブを有する冷却コア51の上下を一対のタンク52,53により挟持して構成され、エンジンルーム底板に固定された一対の支持板54,55に取付けられている。
【0036】
アフタクーラ44は、過給器からエンジン32に供給される過給空気を冷却するもので、例えば放熱用のフィンが複数取付けられ過給器からの過給空気が内部を通過する複数のチューブを有する冷却コア56の両側をタンク57,58により挟持して構成され、オイルクーラ42の上部に対向して配置され、ヒンジ46を中心として回動すなわち旋回することで、クーラ部43に対して開閉可能となっている。
【0037】
そして、ラジエータ41、オイルクーラ42およびアフタクーラ44は、各冷却コアを、冷却ファン26の駆動により吸込まれた冷却風が通過することで、エンジン冷却水、作動油および過給空気がそれぞれ冷却されるように構成されている。
【0038】
また、アフタクーラ44は、タンク57,58のそれぞれの側部に溶接されたブラケット61,61,62,62を介して、フレーム体63にボルト64により固定されている。
【0039】
フレーム体63は、タンク57が取付けられる係止フレーム65と、タンク58が取付けられる取付フレーム66と、これら係止フレーム65と取付フレーム66との間に亘って架渡された連結用のサポート67,68をと備え、四角形枠状に形成されている。
【0040】
係止フレーム65は、略四角形板状に形成され、一対の突出部71,71が側部にそれぞれ突設されているとともに、上下方向中央部に、四角形状の取付ブラケット72がボルト73により固定されている。
【0041】
各突出部71には、丸孔状の孔部74が穿設され、この孔部74には、支持板54に一対のボルト75,75により取付けられたブラケット76に突設された図示されない凸部が、アフタクーラ44をオイルクーラ42側に旋回させた状態で嵌合される。
【0042】
取付ブラケット72は、突出部71,71間にてこれら突出部71,71と同側に突出し、この突出部分に凹状の切欠部77が切欠き形成され、この切欠部77にハンドル部78が取付けられている。このハンドル部78は、切欠部77の上下部に一対のボルト78a,78aにより固定されるハンドル部ブラケット78bと、このハンドル部ブラケット78bに回動可能に設けられたハンドル78cとを備えている。このハンドル78cには、切欠部77から取付ブラケット72の背面側に突出する図示されない鉤部が設けられ、この鉤部が、ハンドル78cの回動操作により、支持板54から突設された鉤受部78dに係合されることで、アフタクーラ44を支持板54に係止可能となるように構成されている。
【0043】
取付フレーム66は、ヒンジ46にボルト79,79により固定された略円筒状の一対の円筒部80,80と、これら円筒部80,80に一側部がボルト81により固定されるとともにボルト64,64によりブラケット62を介してアフタクーラ44に固定されたフレーム本体82とを備え、平面視で略L字状に形成されている。
【0044】
フレーム本体82は、円筒部80側からアフタクーラ44側へと上下に幅広となるように拡開状に形成された平板状の部材である。
【0045】
サポート67には、ホース45aの背面側を支持するホースサポート83,83が取付けられている。
【0046】
ホース45aは、例えばラバーなどの部材により形成された略円筒状のパイプ85、可撓性を有する蛇腹状の可撓ホース86、および、パイプ87,88を有し、これらパイプ85、可撓ホース86およびパイプ87,88が、略円筒状のクランプホース91,92および接続ホース93により互いにそれぞれ連通接続されている。
【0047】
パイプ85は、クーラ部43およびアフタクーラ44の側部とカウンタウエイト24との間に配設され、一端側が過給器へと連通接続され、他端側がクーラ部43側へと傾斜状に屈曲形成されている。このパイプ85の他端側の屈曲方向は、クランプホース91を介して接続される可撓ホース86の中心軸線CLの直線方向を設定している。
【0048】
可撓ホース86は、クランプホース91との接続部からクランプホース92との接続部の間に亘る可撓部86aを有し、この可撓部86aは、クーラ部43の角部に位置し、アフタクーラ44の開閉旋回に応じて、アフタクーラ44の開状態時にはクーラ部43に略直交する直線状態となり、アフタクーラ44の閉状態時には所定角度、例えばクーラ部43に略平行な略90°の屈曲状態となる。
【0049】
パイプ87は、タンク57の上方から冷却コア56の上部に沿って直線状に配設され、ホースサポート83,83により背面側が支持されている。
【0050】
パイプ88は、タンク57の上部に連通接続されている。
【0051】
そして、ホース45aは、パイプ85、クランプホース91、可撓ホース86、クランプホース92、パイプ87、接続部93およびパイプ88を介して、過給器から供給された過給空気をタンク57へと運搬する。
【0052】
また、ホース45bは、例えばラバーなどの部材により形成された連結パイプ95、可撓性を有する蛇腹状の可撓ホース96、および、円筒状のパイプ97を有し、これら連結パイプ95、可撓ホース96およびパイプ97が、略円筒状の図示しない連結クランプホースとクランプホース99により互いにそれぞれ連通接続されている。
【0053】
連結パイプ95は、クーラ部43およびアフタクーラ44の側部に沿って配設され、一端側がエンジン32の吸気側へと連通接続され、他端側が直線状に形成されている。この連結パイプは、他端部が連結クランプホースに接続されることにより、この連結クランプホースに接続される可撓ホース96の中心軸線CLの直線方向を設定している。
【0054】
可撓ホース96は、連結クランプホースとの接続部からクランプホース99との接続部の間に可撓部96aを有し、この可撓部96aは、可撓ホース86の可撓部86aの下方にてクーラ部43の角部に位置している。そして、この可撓部96aは、可撓部86aの下方にてクーラ部43の角部に位置し、アフタクーラ44の開閉旋回に応じて、アフタクーラ44の開状態時にはクーラ部43に略直交する直線状態となり、アフタクーラ44の閉状態時には所定角度、例えばクーラ部43に平行な略90°の屈曲状態となる。
【0055】
パイプ97は、タンク58の下部に連通接続されている。
【0056】
そして、ホース45bは、パイプ97、クランプホース99、可撓ホース96、連結クランプホースおよび連結パイプを介して、アフタクーラ44で冷却された過給空気をエンジン32へと運搬する。
【0057】
ヒンジ46は、一方のヒンジ板101の一側部と他方のヒンジ板102の他側部とを互いに回動可能に接続して構成されている。
【0058】
一方のヒンジ板101は、ボルト79を介して円筒部80に接続された部分である。
【0059】
他方のヒンジ板102は、ボルト104,104を介して、オイルクーラ42に取付けられた固定フレーム105に固定されている。
【0060】
固定フレーム105は、オイルクーラ42に溶接された溶接部107と、この溶接部107に対してオイルクーラ42から離間されるように傾斜状に延設された延設部108と、この延設部108から延設されボルト104により他方のヒンジ板102に固定された固定部109とを有している。
【0061】
そして、ヒンジ46の回動中心としての旋回中心C、すなわち各ヒンジ板101,102の接続部は、可撓ホース86,96の中心軸線CLよりも旋回内側にオフセットされた位置に配設されている。
【0062】
次に、上記一実施の形態の作用効果を、図5および図6も参照しながら説明する。なお、これら図5および図6においては、例えば直線状となった中心軸線CLを横軸(x軸)にとり、この中心軸線CLに直交する方向を縦軸(y軸)にとり、可撓部86aのクランプホース91との接続部(可撓部96aの連結クランプホースとの接続部)の中心部Oを原点とするとともに、クーラ部43とアフタクーラ44との位置関係は、便宜上、上記一実施の形態とx軸方向について反転している。
【0063】
アフタクーラ44がクーラ部43に対して旋回すると、可撓部86a,96aが直線状態、あるいは屈曲状態となる。
【0064】
このとき、可撓部86a,96aの中心軸線CLは、可撓部86a,96aの長さをL、中心軸線CLの旋回側端部である可撓部86a,96aとクランプホース92,99との接続部の中心部Pでの旋回角度をθCLとしたとき、半径R=L/θCL(可撓部86a,96aの曲げ半径に相当)、中心角θCLの扇形の円弧で近似される。具体的に、これら中心部Pでの旋回軌跡TCL(以下、単に旋回軌跡TCLという)は、0<θCL≦π/2において、
CL=(LsinθCL)/θCL
CL={L(1−cosθCL)}/θCL
となる。
【0065】
すなわち、アフタクーラ44がクーラ部43に対して閉状態(θCL=π/2)のときは、可撓部86a,96aの中心軸線CLが半径R=2L/πの1/4円弧と略等しい屈曲状態となり、また、アフタクーラ44が開状態のとき(θCL=0)は、中心軸線CLが直線状となる。
【0066】
一方、取付フレーム66の旋回側であるフレーム本体82の上記中心部Pに対応する位置の旋回軌跡TFR(以下、単に旋回軌跡TFRという)は、ヒンジ46の旋回中心Cを中心としこの旋回中心Cからフレーム本体82の上記中心部Pに対応する位置までの距離を半径とする円弧となる。したがって、中心軸線CLからの旋回中心Cのオフセット寸法をL1、旋回中心Cから可撓部86aのクランプホース91との接続部(可撓部96aの連結クランプホースとの接続部)までのx軸方向の長さ寸法をL2、取付フレーム66の旋回角度をθFRとすると、0<θFR≦π/2において、
FR=L−L2+L1sinθFR+L2cosθFR
FR=L1−L1cosθFR+L2sinθFR
となる。
【0067】
そして、このように、ヒンジ46の旋回中心Cを、直線状態の可撓部86a,96aの中心軸線CLに対してアフタクーラ44の旋回内側にオフセットされた所定の位置に配設することで、旋回軌跡TCLと旋回軌跡TFRとが近似し、かつ、旋回角度θCLと旋回角度θFRとが略一致してホース45a,45bと取付フレーム66との隙間の拡大を低減できる。
【0068】
すなわち、中心軸線CLに対して、ヒンジ46の旋回中心Cをアフタクーラ44の旋回内側へとオフセットすることにより、旋回中心Cから可撓部86a,96aのクランプホース92,99との接続部の中心部Pまでの距離すなわち旋回半径が、旋回中心Cを中心軸線CL上とした場合よりも大きくなるとともに、これら中心部Pのアフタクーラ44の開状態から閉状態へと旋回する際の旋回開始方向が、中心軸線CLに対して直交する方向から旋回外側へと膨らむように傾斜する。
【0069】
この結果、太さを有するために旋回するに従い曲げ半径が小さくなり連結端側の振れが固定端側の振れよりも大きくなる旋回軌跡TCLに対して、旋回軌跡TFRを近似させることができ、アフタクーラ44と過給器およびエンジン32との間を接続するホース45a,45bのように、一般的に固くて柔軟性が充分でなく、また、所要の曲げ半径に対してホース外径が大きいなど、曲げ長さも不充分であることが多いホースであっても、無理な外力が加わることなく確実に屈曲させることができる。
【0070】
また、可撓部86a,96aの最小曲げ半径を大きくする必要もなく、さらには、屈曲状態、あるいは直線状態でも可撓部86a,96aが弛まないため、クーリングパッケージ27の周囲に必要以上のスペースを取ることもなく、省スペース化でき、油圧ショベル11の小型化などにも対応できる。
【0071】
そして、ヒンジ46の旋回中心Cを、可撓部86a,96aの長さ寸法Lに基づいて設定することで、可撓部86a,96aと取付フレーム66とのずれを最小限に抑制できる。
【0072】
例えば、アフタクーラ44の開状態および閉状態での中心部Pと取付フレーム66のフレーム本体82の中心部Pに対応する位置とのそれぞれを一致させる場合には、
L=2L/π+L2−L1、および、
1+L2=2L/π
となるから、これらの式により、
1=2L/π−L/2
2=L/2
を得るので、この位置の近傍に旋回中心Cを配設する際に、旋回軌跡TCLと旋回軌跡TFRとのずれが最も小さくなる。
【0073】
具体的に、図6に示されるように、L=182の場合には、L1≒25、L2=90のとき、アフタクーラ44の開状態と閉状態とのそれぞれにおいて中心部Pと取付フレーム66のフレーム本体82の中心部Pに対応する位置とが略一致し、旋回軌跡TCLと旋回軌跡TFRとのずれを最小限に抑制できる。
【0074】
また、被取付部をクーラ部43とし、閉状態でアフタクーラ44がクーラ部43に対向することで、クーラ部43とアフタクーラ44とを、ファンによる共通の冷却風でともに冷却可能なクーリングパッケージ27とすることができるとともに、アフタクーラ44をクーラ部43に対して旋回させて開いた際には、クーラ部43を容易に掃除できる。
【0075】
さらに、このようなクーリングパッケージ27を油圧ショベル11が備えることで、アフタクーラ44をクーラ部43に対して容易に旋回させてクーラ部43のラジエータ41およびオイルクーラ42を容易に掃除できるなど、油圧ショベル11のメンテナンス性を向上できる。
【0076】
なお、上記一実施の形態において、ヒンジ46の旋回中心Cは、要求されるホース45a,45bと取付フレーム66との隙間および旋回角度θCL,θFRの一致の程度などに応じて、直線状態の可撓部86a,96aの中心軸線CLに対してアフタクーラ44の旋回内側の任意の位置を選択できる。
【0077】
また、クーリングパッケージ27および油圧ショベル11の細部などは、上記構成に限定されるものではない。
【0078】
さらに、冷却器と固定冷却器とは、上記のクーラ部43とアフタクーラ44との組み合わせ以外にも、任意に選択できる。
【0079】
そして、被取付部としては、クーラ部43のような冷却器に限らず、他の様々なものとすることが可能である。
【0080】
また、冷却装置としては、クーリングパッケージ27以外の冷却装置とすることも可能である。
【0081】
さらに、本発明の冷却装置は、油圧ショベル11以外の他の様々な作業機械、あるいは車両などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る冷却装置の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】同上冷却装置の要部を拡大して示す平面図である。
【図3】同上冷却装置を示す正面図である。
【図4】同上冷却装置を備えた作業機械を一部を切欠いて示す斜視図である。
【図5】同上冷却装置の冷却器の回動動作を示す説明図である。
【図6】同上冷却装置の動作の一実施例を示すグラフである。
【図7】従来例の冷却装置を示す説明図である。
【図8】同上冷却装置の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
C 回動中心としての旋回中心
CL 中心軸線
11 作業機械としての油圧ショベル
15 機械本体
17 作業装置
27 冷却装置としてのクーリングパッケージ
43 被取付部としての固定冷却器であるクーラ部
44 冷却器としてのアフタクーラ
45a,45b ホース
46 ヒンジ
66 取付フレーム
86a,96a 可撓部
105 固定フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器と、
この冷却器に一端側が接続されたホースと、
被取付部に取付けられた固定フレームと、
冷却器に取付けられた取付フレームと、
固定フレームと取付フレームとの間に接続され、被取付部に対して冷却器を開閉可能に回動させるヒンジとを具備し、
ホースは、ヒンジを中心とする冷却器の開閉状態のそれぞれに対応して直線状態から所定角度まで可撓変形される可撓部を備え、
ヒンジの回動中心は、直線状態のホースの可撓部の中心軸線に対して回動内側にオフセットされた所定の位置に配設されている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
ヒンジの回動中心は、ホースの可撓部の長さ寸法に基づいて設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
被取付部は、固定冷却器であり、
冷却器は、閉状態で固定冷却器に対向する
ことを特徴とする請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項4】
機械本体と、
この機械本体に作動可能に設けられた作業装置と、
機械本体に設けられ被冷却流体を冷却する請求項3記載の冷却装置と
を具備したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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