説明

冷却装置及び画像形成装置

【課題】ベルト部材の裏面が水分により冷却部材の冷却面に貼り付きながら回転して回転不良が起こるのを抑制できる冷却装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の張架部材41,42,43,44によって回転可能に張架され、シート状部材10をおもて面2aに担持して搬送するベルト部材2と、ベルト部材2の裏面2bに冷却面1aを接触させて設けられ、ベルト部材2を介してシート状部材10を冷却する冷却部材1とを備えた冷却装置30において、冷却部材1の冷却面1aに撥水層1hを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に用いられる冷却装置、及び、その冷却装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置としては、電子写真技術を用いてシート状部材である用紙上にトナー画像を形成し、熱定着装置を通過させることでトナーを溶融し融着させるものが知られている。一般に熱定着装置の温度は、トナーや用紙の種類、用紙搬送スピードなどによって異なるが180[℃]〜200[℃]程度の温度に設定され制御されて、トナーを瞬時に融着させる。熱定着装置を通過した直後の用紙の表面温度は、用紙の熱容量(比熱、密度など)に左右されるが例えば100[℃]〜130[℃]程度の高い温度となっている。トナーの溶融温度はもっと低いので、熱定着装置通過直後の時点ではトナーは少し軟らかいままであり、用紙が冷えるまでは、しばらく粘着状態にある。そのため、連続的に画像出力動作が繰り返され熱定着装置通過後の用紙が排紙収容部に積載される場合、用紙上のトナーが十分に硬化できず軟化状態にあると、用紙上のトナーが別の用紙に貼り付く所謂ブロッキング現象が起こり、画像品質が著しく低下することがある。そのため、熱定着装置通過後の用紙を冷却装置で冷却した後に排紙収容部に積載させることで、ブロッキング現像が起こるのを抑制することができる。
【0003】
特許文献1に記載の冷却装置では、用紙をおもて面に担持して搬送する、複数の張架ローラによって回転可能に張架された搬送ベルトの裏面に、冷却部材であるヒートシンクの冷却面を接触させて設けている。ヒートシンクはファンにより風を当てて冷却しており、搬送ベルトによって搬送される用紙は、ヒートシンクとの対向領域を通過した際に、搬送ベルトを介して用紙からヒートシンクに熱が奪われることで冷却される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱定着装置では熱によってトナーを溶融し用紙に定着させるので、用紙が含んでいる水分が蒸発することにより周囲の雰囲気が高湿な状態となる。こうした雰囲気中では、ヒートシンクが冷えた状態にあるためにヒートシンクの表面で結露を起こし易い。そして、この結露によって水分がヒートシンクの冷却面と搬送ベルトの裏面との間に入り込むと、搬送ベルトの裏面がヒートシンクの冷却面に貼り付きながら回転されるため回転不良を起こすといった問題が生じる。
【0005】
また、搬送ベルトの裏面に接触させて配設される冷却部材としてはヒートシンクに限るものではなく、冷却媒体が流れる流路が内部に設けられた冷却プレートなどを前記冷却部材として用いた場合でも上述したのと同様の問題が生じる。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ベルト部材の裏面が水分により冷却部材の冷却面に貼り付きながら回転して回転不良が起こるのを抑制できる冷却装置、及び、その冷却装置を備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の張架部材によって回転可能に張架され、シート状部材をおもて面に担持して搬送するベルト部材と、前記ベルト部材の裏面に冷却面を接触させて設けられ、該ベルト部材を介して前記シート状部材を冷却する冷却部材とを備えた冷却装置において、前記冷却部材の前記冷却面に撥水層を形成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の冷却装置において、上記冷却面にシート状部材搬送方向に沿った溝を1つ以上設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の冷却装置において、前記冷却部材が傾斜を持って配置され傾斜の最下点付近に、水分を回収し装置外あるいは貯水容器に移送させる水路、または、吸湿材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の冷却装置において、上記冷却部材の上記冷却面とは反対側の面にも撥水層を形成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の冷却装置において、上記冷却部材の内部に冷却媒体が流れる流路が設けられており、前記流路の内壁にも撥水層を形成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の冷却装置において、上記撥水層の主成分が金属材料であることを特徴する冷却装置。
また、請求項7の発明は、請求項6の冷却装置において、上記冷却部材から電荷を除去する電荷除去手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1、2、3、4、5、6または7の冷却装置において、上記撥水層のほうが上記冷却部材の母材よりも上記ベルト部材に対する摩擦係数が低いことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7または8の冷却装置において、上記撥水層のほうが上記冷却部材の母材よりも硬いことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、シート状部材上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記シート状部材上に形成されたトナー像を少なくとも熱によって該シート状部材に定着させる熱定着手段と、前記熱定着手段によってトナー像が定着されたシート状部材を冷却する冷却手段とを備えた画像形成装置において、前記冷却手段として、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の冷却装置を用いたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、ベルト部材の裏面と接触する冷却部材の冷却面に撥水層を形成したことによって前記冷却面で水が弾かれる。これにより、冷却部材の冷却面とベルト部材の裏面との間に水分が入り込んだとしても前記冷却面で水が弾かれるため、水分によってベルト部材の裏面が冷却部材の冷却面に貼り付くのを抑えることができる。よって、ベルト部材の裏面が水分により冷却部材の冷却面に貼り付きながら回転して回転不良が起きてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、ベルト部材の裏面が水分により冷却部材の冷却面に貼り付きながら回転して回転不良が起こるのを抑制できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】構成例1に係る冷却プレートの外観図。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図3】構成例1に係る冷却装置の全体構成図。
【図4】(a)構成例1に係る冷却プレートを斜め下方から見た場合の模式図、(b)構成例1に係る冷却プレートを斜め上方から見た場合の模式図。
【図5】構成例2に係る冷却プレートの外観図。
【図6】構成例2に係る冷却装置の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2は、本実施形態の冷却部材である冷却プレート1を有する冷却装置30を搭載したタンデム型中間転写ベルト方式のカラー画像形成装置の構成概略図である。
【0012】
複数のローラによって中間転写媒体としての中間転写ベルト51を展張し、中間転写ベルト51はこれらのローラにより回転するように構成すると共に、中間転写ベルト51のまわりに画像形成用のプロセス手段を配置している。
【0013】
中間転写ベルト51の回転方向を図中矢印aとするとき、中間転写ベルト51の上方であってローラ52とローラ53との間には、中間転写ベルト51の回転方向の上流側から順に画像形成用のプロセス手段として、画像ステーション54Y、画像ステーション54C、画像ステーション54M、画像ステーション54Bkが配置されている。例えば画像ステーション54Yは、ドラム状の感光体111Yの周囲に帯電装置110Y、光書込装置112Y、現像装置113Y、クリーニング装置114Yが配置され、さらに中間転写ベルト51を挟んで感光体111Yの対向位置に中間転写ベルト51への転写手段としての一次転写ローラ115Yが設けられている。また、他の3つの画像ステーション54C,54M,54Bkも同一構成となっている。そして、それら4つの画像ステーション54Y,54C,54M,54Bkが互いに所定のピッチ間隔となるように左右並列に配置されている。
【0014】
本実施形態では光書込装置112をLEDを光源とする光学系としているが、半導体レーザーを光源とするレーザー光学系で構成することもでき、感光体111に対して画像情報に応じた露光を行う。
【0015】
中間転写ベルト51の下方には、シート状部材である用紙10の用紙収納部119および給紙コロ23、レジストローラ対21、中間転写ベルト51を張架するローラ55に中間転写ベルト51を介して対向するように設けられ中間転写ベルト51から用紙10へのトナー像の転写手段としての二次転写ローラ56、中間転写ベルト51の裏面に接するローラ58の対向位置で中間転写ベルト51のおもて面に接するように設けられ中間転写ベルト51のおもて面をクリーニングするクリーニング装置59、熱定着装置116、用紙10を冷却する冷却プレート1を有する冷却装置30、トナー定着後の用紙10の排出部である排紙収容部117などが配置されている。そして、用紙収納部119から排紙収容部117へ至る用紙搬送路128が延びている。また、両面画像形成時に用紙10の裏面への画像形成を行う際に、冷却装置30を一度通過した用紙10の表裏を反転させ、再度、レジストローラ対21へ搬送する両面画像形成用の用紙搬送路29も備えている。
【0016】
なお、冷却装置30の冷却プレート1は用紙10の熱を受熱する受熱部であり、ファン104を装着したラジエータ103、ポンプ100、タンク101と共に配管105で連通するように連結され、冷却液が封入されている。冷却液の循環経路は配管105の矢印で示すように、ラジエータ103で冷やされた冷却液を、冷却プレート1へ供給し、そして冷却プレート1内を廻ってから排出し、その後にタンク101、ポンプ100へ送り、再び、ラジエータ103に戻す順序であり、ポンプ100の回転圧力により冷却液を循環させ、ラジエータ103で放熱することで冷却液、如いては冷却プレート1を冷やす。ポンプ100の送液能力やラジエータ103の大きさなどは、熱設計条件(冷却プレート1が冷却すべき熱量と温度の条件)によって決定される流量、圧力、冷却効率などを元に選定される。
【0017】
画像の形成プロセスは、画像ステーション54Yに着目すれば、一般の静電記録方式に準じていて、暗中にて帯電装置110Yにより一様に帯電された感光体111Y上に光書込装置112Yにより露光して静電潜像を形成し、この静電潜像を現像装置113Yによりトナー像として可視像化する。そのトナー像は一次転写ローラ115Yにより感光体111Y上から中間転写ベルト51に転写される。転写後の感光体111Yの表面はクリーニング装置114Yによりクリーニングされる。他の画像ステーション54も画像ステーション54Yと同構成であり、同様の画像形成プロセスが行われる。
【0018】
画像ステーション54Y,54C,54M,54Bkにおける各現像装置113Y,113C,113M,113Bkは、それぞれ異なる4色のトナーによる可視像化機能を有しており、各画像ステーション54Y,54C,54M,54Bkでイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを分担すれば、フルカラー画像を形成することができる。よって、中間転写ベルト51の同一画像形成領域が4つの画像ステーション54Y,54C,54M,54Bkを順次通過する間に、中間転写ベルト51を挟むようにして各感光体111とそれぞれ対向して設けられた一次転写ローラ115により与えられる転写バイアスによって、それぞれ1色ずつトナー像を中間転写ベルト51上に重ね転写されるようにすれば、上記同一画像形成領域が各画像ステーション54Y,54C,54M,54Bkを1回通過した時点で、この同一画像領域に、重ね転写によってフルカラートナー画像を得ることができる。
【0019】
そして、中間転写ベルト51上に形成されてフルカラートナー画像は、用紙10に転写される。転写後の中間転写ベルト51はクリーニング装置59によりクリーニングされる。用紙10への転写は転写時において二次転写ローラ56に転写バイアスを印加して、中間転写ベルト51を介して二次転写ローラ56とローラ55との間に転写電界を形成し、二次転写ローラ56と中間転写ベルト51とのニップ部に用紙10を通過させることにより行なわれる。中間転写ベルト51から用紙10へのフルカラートナー像の転写後、用紙10上に担持されたフルカラートナー像を熱定着装置116で用紙10上に定着することにより、用紙10上にフルカラーの最終画像が形成され、その後、用紙10は排紙収容部117に積載される。
【0020】
本実施形態の画像形成装置においては、排紙収容部117に用紙10が積載される前に、用紙10が熱定着装置116の直後に配置された冷却装置30を通過する。通過する際、熱定着装置116で熱せられた用紙10が受熱部である冷却プレート1に冷却ベルト2を介して接触し熱交換しながら通過することになるので、冷却プレート1の冷却面で用紙10から熱を吸熱し、この熱を冷却プレート1内部の流路1gを流れる冷却液へ伝達する。熱が伝達され高温となった冷却液は、この後、冷却プレート1から排出されタンク101やポンプ100を経て、ファン104を装着したラジエータ103に送られ、そこで熱が画像形成装置外に排熱される。ラジエータ103で熱が除去され室温近くにまで下げられた冷却液は、その後、再び冷却プレート1へと送られる。このような冷却液による高い冷却性能の排熱サイクルによって、熱定着装置116で熱せられて高温となった用紙10が効率良く冷やされる。
【0021】
[構成例1]
図3は、構成例1に係る冷却装置30の全体構成図である。
本構成例に係る冷却装置30では、複数の張架ローラ41,42,43,44によって回転可能に張架されおもて面2aに用紙10を担持して搬送するベルト部材である冷却ベルト2と、複数の張架ローラ45,46,47,48によって回転可能に張架されおもて面3aに用紙10を担持して搬送する搬送ベルト3とが、互いのおもて面が対向するように配設されており、冷却ベルト2と搬送ベルト3とで用紙10を挟みながら担持して搬送する。
【0022】
冷却ベルト2のループ内側には、二つの冷却プレート1が連結された状態でそれぞれ冷却ベルト2の裏面2bと接するように配設されている。冷却ベルト2の裏面2bと接触する冷却プレート1の下面である冷却面は、冷却ベルト2の裏面2bとの間で均等な接触圧を保てるように曲面形状となっている。
【0023】
高温多湿な環境下では冷却プレート1が結露し、冷却プレート1の表面に水滴が生じる。例えば、熱定着装置116では用紙10に熱や圧力を作用させてトナーを溶融させて用紙10に定着させる。このとき、用紙10が含んでいる水分が蒸発することで周囲の雰囲気が高湿な状態となる。こうした雰囲気中では、冷却プレート1が冷えた状態にあるために冷却プレート1の表面で結露を起こし水滴が生じ易い。そのため、冷却プレート1の上面1bには結露による水分が過度にたまらないように傾斜を持たせており、冷却プレート1の上面1bの傾斜の最下点に、上面1bから傾斜を下ってきた結露による水分を回収するための水路9が設置されている。そして、この水路9に回収された水分は、水路9を通って装置外あるいは廃液タンク等に回収される。
【0024】
図4(a)は、構成例1に係る冷却プレート1を斜め下方から見た場合の模式図であり、図4(b)は構成例1に係る冷却プレート1を斜め上方から見た場合の模式図である。図1は、構成例1に係る冷却プレート1の外観図である。
【0025】
本構成例の冷却プレート1は、母材としてA5052アルミニウム合金を用いており、図4(a)及び図4(b)にそれぞれ示された冷却面1a及び上面1bに、テフロン(登録商標)コーティングを20[μm]厚で施して撥水層1h及び撥水層1iを形成している。なお、図中斜線部が冷却プレート1に撥水層が形成された箇所であり、以下、他の図面においても冷却プレート1の撥水層が形成された箇所を斜線部で示す。
【0026】
冷却プレート1の冷却面1a及び上面1bにテフロンコーティングによって形成された撥水層1h及び撥水層1iは、冷却プレート1の母材であるA5052アルミニウム合金よりも撥水性が高いため、テフロンコーティングによる撥水層1h及び撥水層1iの表面を水分が通過する際に生じる流体の粘性抵抗が、母材であるA5052アルミニウム合金の表面を水分が通過する場合よりも小さくなる。
【0027】
冷却プレート1の母材であるA5052アルミニウム合金にテフロンコーティングを施さず冷却面1aに撥水層を形成していない冷却プレート1の場合、冷却面1aとなる母材表面に水滴を滴下した際のθ/2法によって計測された接触角が50[°]前後と撥水性が低く、冷却プレート1の冷却面1aと冷却ベルト2の裏面2bとの間に水分が入り込んだ際に、水分によって冷却プレート1の冷却面1aと冷却ベルト2の裏面2bとが張り付いてしまい冷却ベルト2の回転不良が生じてしまう。
【0028】
一方、冷却プレート1の母材であるA5052アルミニウム合金にテフロンコーティングを施して冷却面1aに撥水層1hを形成した場合は、冷却ベルト2に対するテフロンの低摩擦係数という特性に加えてθ/2法によって計測された接触角が100[°]以上となり、冷却プレート1の冷却面1aと冷却ベルト2の裏面2bとの間に水分が入り込んだとしても、撥水層1hの高い撥水性によって粘性抵抗による冷却プレート1の冷却面1bと冷却ベルト2の裏面2bとの張り付きが抑制されて、冷却ベルト2をスムーズに回転させることができる。
【0029】
また、冷却プレート1の上面1bに対してもテフロンコーティングが施されて撥水層1iが形成されているため、傾斜を持って配置された冷却プレート1の上面1b上の水滴は、速やかに上面1bを下って水路9へ誘導され、装置外あるいは廃液タンクなどに排出される。
【0030】
なお、冷却プレート1の上面1bの用紙搬送方向に直交する方向両端部には、水滴がこぼれないよう図1に示すように上面1bの中央部よりも上方に突出したガイド壁1cを設けても良い。また、冷却プレート1の用紙搬送方向に直交する方向の両側面に結露が生じて冷却ベルト2上に水滴が落ちるのを抑制するために、冷却プレート1の前記両側面に吸湿材料1dを貼付しても良い。
【0031】
[構成例2]
図5は構成例2に係る冷却プレート1の外観図であり、図6は構成例2に係る冷却装置30の全体構成図である。
【0032】
本構成例では、A5052アルミニウム合金を母材とした冷却プレート1の内部に設けた冷却液が流れる流路1gの流路内壁1eを含む冷却プレート全面に、カニフロン(日本カニゼン株式会社製)を10[μm]厚でメッキして、金属材料が主成分となる撥水層1jを形成している(図中斜線部)。カニフロンは無電解ニッケル皮膜中にフッ素樹脂の微粒子を均一に分散共析させた複合めっき皮膜であり、テフロンコーティングと同等の撥水性と低摩擦係数を有するため、構成例1と同様の性質を持つ。
【0033】
また、カニフロンはニッケルを主成分としたメッキであるため、熱伝導性が高く冷却プレート1による用紙10の冷却性能が向上するとともに、ビッカース硬さが200(Hv)以上と母材であるA5052アルミニウム合金(ビッカース硬さ100未満)よりも硬いため、耐久性も向上する。
【0034】
また、本構成例では、メッキ処理の際にマスキングなどを行わず冷却プレート全体をメッキ液内に入れることによって、冷却プレート1の内部に設けた流路1gの流路内壁1eまでメッキしている。これにより、これによって流路内壁1eの撥水性が増し、冷却プレート1の内部に設けた流路1gを流れる冷却液と流路内壁1eとの間に生じる粘性抵抗が低下するため、圧力損失が低下するという効果も期待できる。
【0035】
なお、冷却プレート1の母材に使用しているA5052アルミニウム合金に対してカニフロンの主成分はニッケルであるため異種金属となり、結露が起きた場合などにこれを介した電気回路が形成されてしまうとガルバニック腐食が生じてしまう可能性が高い。そのため、本構成例では冷却プレート1から電荷を除去する電荷除去手段として冷却プレート1にアース11を繋ぎ、アース11によって冷却プレート1内の電荷を逃がすことにより、前記電気回路が形成されてガルバニック腐食が生じてしまうのを抑制している。
【0036】
また、本構成例では、図6に示すように結露によって生じた水分が冷却プレート1の淵13にたまってしまうのを抑制するため、図5に示すように冷却プレート1の冷却面1aには水分を逃すための溝1fが2つ設けられている。そして、冷却プレート1の淵13にある水分は、溝1fを通って反対側に設けられた吸湿材12に吸収される。この吸湿材12は、冷却プレート1の上面1bに生じた結露による水分を吸収する働きも兼ねている。
【0037】
表1は、冷却プレート1の表面処理について説明する表である。
【0038】
【表1】

【0039】
表面処理の例としては、無処理(A5052アルミニウム合金)、テフロンコーティング、アルマイト処理、カニハステメッキ(日本カニゼン社製)、及び、カニフロンメッキ(日本カニゼン社製)が挙げられ、これらに対して撥水性、摩擦係数、硬さ及び熱伝導性を比較した。
【0040】
冷却プレート1の母材であるA5052アルミニウム合金は、表1の中で熱伝導性が最も高いが、その他の性能では他の処理に対して劣っている。テフロンコーティングは撥水性と低摩擦係数という部分では非常に良いが、ビッカース硬さが母材であるA5052アルミニウム合金よりも低く耐久性で劣り、熱伝導性も低いため冷却プレート1の性能を落としてしまう。アルマイトは母材であるA5052アルミニウム合金よりも硬く耐久性に優れており、テフロンコーティングよりも熱伝導性が高い。カニハステは特にビッカース硬さが母材であるA5052アルミニウム合金だけではなく他の処理よりも高く、熱伝導性も良いため長時間使用しても高い性能を維持することができる。そして、カニフロンはテフロンコーティングと同等の撥水性と低摩擦係数を持ちながら、高い熱伝導性や母材であるA5052アルミニウム合金母材以上の硬さを有しているため、本発明において最も適性が高い処理であると考えられる。
【0041】
以上、本実施形態によれば、複数の張架部材である張架ローラ41,42,43,44によって回転可能に張架され、おもて面2aにシート状部材である用紙10を担持して搬送するベルト部材である冷却ベルト2と、冷却ベルト2の裏面2bに冷却面1aを接触させて設けられ、冷却ベルト2を介して用紙10を冷却する冷却部材である冷却プレート10とを備えた冷却装置30において、冷却プレート1の冷却面1aに撥水層1hを形成したことにより冷却面1aで水が弾かれる。これにより、冷却プレート1の冷却面1aと冷却ベルト2の裏面2bとの間に水分が入り込んだとしても、冷却ベルト2の裏面2bが冷却プレート1の冷却面1aに貼り付くのを抑えることができる。よって、冷却ベルト2の裏面2bが水分により冷却プレート1の冷却面1aに貼り付きながら回転して回転不良が起きてしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、冷却プレート1の冷却面1aに用紙搬送方向に沿った溝1fを1つ以上設けたことで、結露によって生じた水分が冷却プレート1の淵でたまってしまうのを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、冷却プレート1が傾斜を持って配置され傾斜の最下点付近に、水分を回収し装置外あるいは貯水容器である廃液タンクに移送させる水路9、または、吸湿材12を設けたことで、冷却プレート1の上面1bに、結露による水分が過度にたまるのが抑えられるとともに、結露による水分が回収されるため、冷却プレート1から冷却ベルト2上に水滴が落ちるのを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、冷却プレート1の冷却面1aとは反対側の面である上面1bに撥水層1iを設けたことで、傾斜を持って配置された冷却プレート1の上面1b上の水滴は速やかに水路9へ誘導され、装置外あるいは廃液タンクなどに排出させることができる。
また、本実施形態によれば、冷却プレート1の内部に冷却媒体である冷却液が流れる流路1gが設けられており、流路1gの内壁である流路内壁1eにも撥水層1jを形成したことで、流路内壁1eの撥水性が増し、流路1g内を流れる冷却液と流路内壁1eとの間に生じる粘性抵抗が低下するため、圧力損失を低下させることができる。
また、本実施形態によれば、上記撥水層の主成分が金属材料であることで、ビッカース硬さが高く熱伝導性も良いため長時間使用しても高い性能を維持することができる。
また、本実施形態によれば、冷却プレート1から電荷を除去する電荷除去手段であるアース11を設けたことで、冷却プレート1にアース11を繋ぎアース11によって冷却プレート1内の電荷を逃がして結露が起きた場合などにこれを介した電気回路が形成されるのを抑制し、ガルバニック腐食が生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、上記撥水層のほうが冷却プレート1の母材であるA5052アルミニウム合金よりも冷却ベルト2に対する摩擦係数が低いことで、冷却ベルト2をスムーズに回転させることができる。
また、本実施形態によれば、上記撥水層のほうが冷却プレート1の母材であるA5052アルミニウム合金よりも硬いことで耐久性が向上し、長時間使用しても高い性能を維持することができる。
また、本実施形態によれば、シート状部材である用紙10上にトナー像を形成するトナー像形成手段である画像ステーション54と、用紙10上に形成されたトナー像を少なくとも熱によって用紙10に定着させる熱定着手段である熱定着装置116と、熱定着装置116によってトナー像が定着された用紙10を冷却する冷却手段とを備えた画像形成装置において、前記冷却手段として、本発明の冷却装置30を用いたことにより、冷却ベルト2をスムーズに回転させて用紙10の冷却を良好に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 冷却プレート
1a 冷却面
1b 上面
1c ガイド壁
1d 吸湿材料
1e 流路内壁
1f 溝
1g 流路
1h 撥水層
1i 撥水層
1j 撥水層
2 冷却ベルト
3 搬送ベルト
5 冷却液循環経路
6 タンク
7 ポンプ
8a ファン
8b ラジエータ
9 水路
10 用紙
11 アース
12 吸湿材
13 水分
21 レジストローラ対
23 給紙コロ
29 用紙搬送路
30 冷却装置
41 張架ローラ
42 張架ローラ
43 張架ローラ
44 張架ローラ
45 張架ローラ
46 張架ローラ
47 張架ローラ
48 張架ローラ
51 中間転写ベルト
52 ローラ
53 ローラ
54 画像ステーション
55 ローラ
56 二次転写ローラ
58 ローラ
59 クリーニング装置
100 ポンプ
101 タンク
103 ラジエータ
104 ファン
105 配管
110 帯電装置
111 感光体
112 光書込装置
113 現像装置
114 クリーニング装置
115 一次転写ローラ
116 熱定着装置
117 排紙収容部
119 用紙収納部
128 用紙搬送路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2009−103822号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の張架部材によって回転可能に張架され、シート状部材をおもて面に担持して搬送するベルト部材と、
前記ベルト部材の裏面に冷却面を接触させて設けられ、該ベルト部材を介して前記シート状部材を冷却する冷却部材とを備えた冷却装置において、
前記冷却部材の前記冷却面に撥水層を形成したことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1の冷却装置において、
上記冷却面にシート状部材搬送方向に沿った溝を1つ以上設けたことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2の冷却装置において、
前記冷却部材が傾斜を持って配置され傾斜の最下点付近に、水分を回収し装置外あるいは貯水容器に移送させる水路、または、吸湿材を設けたことを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1、2または3の冷却装置において、
上記冷却部材の上記冷却面とは反対側の面にも撥水層を形成したことを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の冷却装置において、
上記冷却部材の内部に冷却媒体が流れる流路が設けられており、前記流路の内壁にも撥水層を形成したことを特徴とする冷却装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の冷却装置において、
上記撥水層の主成分が金属材料であることを特徴する冷却装置。
【請求項7】
請求項6の冷却装置において、
上記冷却部材から電荷を除去する電荷除去手段を設けたことを特徴とする冷却装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7の冷却装置において、
上記撥水層のほうが上記冷却部材の母材よりも上記ベルト部材に対する摩擦係数が低いことを特徴とする冷却装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8の冷却装置において、
上記撥水層のほうが上記冷却部材の母材よりも硬いことを特徴とする冷却装置。
【請求項10】
シート状部材上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記シート状部材上に形成されたトナー像を少なくとも熱によって該シート状部材に定着させる熱定着手段と、
前記熱定着手段によってトナー像が定着されたシート状部材を冷却する冷却手段とを備えた画像形成装置において、
前記冷却手段として、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9の冷却装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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