説明

冷却装置

【課題】少ない電力消費で稼動させることができ、蒸発効率を向上させ、冷却塔内の充填材を効率よく冷却することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置100は、充填材11と、散水部12L・12Rと、貯水部13と、を有する冷却塔2と、冷却水通路3L・3Rと、冷却水内において気体を超微細気泡として発生させる超微細気泡発生装置5L・5Rと、を備え、超微細気泡発生装置5L・5Rは、冷却水通路3L・3R内部に配置される気泡発生媒体32L・32Rと、コンプレッサ31L・31Rと、を有し、気泡発生媒体32L・32Rは、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体であり、気泡発生媒体32L・32Rは、直径数μm以下の細かな孔32bを多数有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機、冷温水機、各種工程の熱交換器などで使用する冷却媒体を冷却水の蒸発効果によって冷却する冷却装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充填材と、前記充填材の上方に設けられた冷却水を散水するための散水部と、前記充填材の下方に設けられた貯水部と、を有する冷却塔を備える冷却装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。前記冷却装置は、冷凍機、冷温水機、各種工程の熱交換器などで使用することにより温度の高くなった冷却媒体を充填体内部に流通させて、散水部から充填材に冷却水を散水して、充填材表面で冷却水と送風機などから取り入れられた外気とを接触させて蒸発させることにより気化熱で充填体内部の冷却媒体を冷却し、再び冷却媒体として熱交換器などで使用できるようにする装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−241146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記冷却装置は、冷却水の蒸発効率が大きい方が充填材内の冷却媒体から奪う熱量が大きくなる。冷却水の蒸発効率を向上させる手段として、気泡を冷却水内に注入する方法があるが、直径の大きな気泡では冷却水の蒸発効率が向上しにくかった。また、従来の気泡発生装置は、大型のコンプレッサなどを使用して大量の空気を水中に送り込むことで気泡を発生させるため、電力を多く消費していた。また、既存の冷却装置の冷却水通路内に気泡発生装置を取り付けるには、冷却水通路の配管などを変更する必要があり困難であった。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、少ない電力消費で稼動させることができ、蒸発効率を向上させ、冷却塔内の充填材を効率よく冷却することができる冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、充填材と、前記充填材の上方に設けられた冷却水をかけるための散水部と、前記充填材の下方に設けられた貯水部と、を有する冷却塔と、前記冷却塔の貯水部及び散水部に接続され、前記冷却塔で使用した冷却水を再び冷却塔へ戻すための冷却水通路と、前記冷却水内において気体を超微細気泡として発生させる超微細気泡発生装置と、を備え、前記超微細気泡発生装置は、前記冷却水通路内部に配置される気泡発生媒体と、気体圧送手段と、を有し、前記気泡発生媒体は、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体であり、前記気泡発生媒体は、直径数μm以下の細かな孔を多数有するものである。なお、前記孔は断面が円形の孔に限定されるものではない。言い換えれば、前記気泡発生媒体は、多孔質に形成されている。
【0008】
請求項2においては、前記気泡発生媒体は、前記冷却水通路の前記散水部側の出口近傍であって貯水部よりも上方に設けられたものである。
【0009】
請求項3においては、前記気泡発生媒体は、冷却水の水流と平行な方向が長手方向となる柱状に形成されたものである。
【0010】
請求項4においては、前記気泡発生媒体は、冷却水の水流を乱さない流線形に形成されたものである。
【0011】
請求項5においては、前記気泡発生媒体は、取付部を介して冷却水通路内に着脱可能に固設されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、冷却水に気体を超微細気泡として混入することで、気液界面が増加して蒸発効率が向上し、冷却塔内の充填材を効率よく冷却することができる。
【0014】
請求項2においては、超微細気泡が冷却水通路内で消滅することが少なくなり、気液界面が増加して蒸発効率が更に向上し、冷却塔内の充填材を効率よく冷却することができる。また、気泡発生媒体が貯水部よりも上方にあることで、運転停止時には気泡発生媒体が冷却水と接触せず、メンテナンスが容易となるので、メンテナンスコストを抑制することができる。
【0015】
請求項3においては、冷却水の水流により、超微細気泡が発生した瞬間に気泡発生媒体から離間することで、合体して大きな気泡になることを防ぐことができるため、水流発生装置などを用意する必要が無く、少ない電力消費で稼動させることができ、コストを削減することができる。したがって、コストを増加させることなく、冷却塔内の充填材を効率よく冷却することができる。
【0016】
請求項4においては、冷却水の水流が気泡発生媒体に沿って流れることにより、超微細気泡が発生した瞬間に気泡発生媒体から離間することで、合体して大きな気泡になることを防ぐことができるため、水流発生装置などを用意する必要が無く、コストを削減することができる。したがって、コストを増加させることなく、冷却塔内の充填材を効率よく冷却することができる。
【0017】
請求項5においては、既存の冷却水通路に後付けで取り付けることができ、冷却装置全体を交換する必要がなく、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却装置の全体的な構成を示した正面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る冷却用熱交換器を有する冷却装置の全体的な構成を示した正面図。
【図3】(a)超微細気泡発生装置を示す断面一部拡大図(b)気泡発生媒体を示す断面一部拡大図。
【図4】気泡発生媒体を示す断面拡大図。
【図5】冷却水通路及び貯水部を示す断面拡大図。
【図6】第二実施形態に係る超微細気泡発生装置を示す断面一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係る冷却装置100について図1を用いて説明する。
冷却装置100は、冷却塔2と、冷却塔2に接続され、冷却塔2で使用した冷却水を再び冷却塔2へ戻すための冷却水通路3L・3Rと、揚水ポンプ4L・4Rと、冷却水内において気体を超微細気泡として発生させる超微細気泡発生装置5L・5Rと、を備える。冷却装置100は、冷凍機、冷温水機、各種工程の熱交換器などで使用することにより温度の高くなった冷却媒体を冷却し、再び冷却媒体として熱交換器などで使用できるようにする装置である。
【0020】
冷却塔2は、充填材11と、充填材11の上方に設けられた、冷却水を散布するための散水部12L・12Rと、充填材11の下方に設けられた貯水部13と、を有する。
充填材11は、冷却塔2の中間部に設けられており、その内部に熱交換部としての多数の熱交換パイプ21と、この熱交換パイプ21の外部に取り付けられたルーバー22とを有している。熱交換パイプ21は銅などの金属で形成されており、熱交換パイプ21の中には、外気温度よりも高い温度の水など、熱交換されるべき冷却媒体が流れている。例えば、冷凍機(図示せず)からの冷水などである。冷却媒体は、熱交換パイプ21の中を通過する際に、散水部12L・12Rから散布された冷却水の気化熱で熱交換されて冷却される。また、ルーバー22は、間隔を開けて設けられた複数の板状部材から構成されており、複数の板状部材は外側に向かうにつれて上向きに傾斜している。ルーバー22の板状部材の間を外気が通過できるように形成されている。
【0021】
散水部12L・12Rは、冷却塔2の上部に設けられており、散水貯溜槽23L・23Rと、散水貯溜槽23L・23Rの底部に通水孔が多数設けられた多孔板24L・24Rと、を有している。散水貯溜槽23L・23Rは、冷却塔2中間部の上方に設けられ、充填材11の熱交換パイプ21を冷却するために、その底部の多孔板24L・24Rの通水孔から、可能な限り均等に冷却水を落下させて、熱交換パイプ21に散水を行う。
【0022】
貯水部13は、冷却塔2の下部に設けられており、散水部12L・12Rから散布されて充填材11と接触し温度の高くなった冷却水を一時貯溜する。
【0023】
また、冷却塔2の上部には熱交換後の内部空気を外部に排気するためのファン14が設けられている。すなわち、冷却塔2の中間部に設けられたルーバー22の隙間とファン14との間が外気通路となっている。
【0024】
次に冷却水通路3L・3Rについて説明する。
冷却水通路3L・3Rは、冷却塔2で使用した冷却水を再び冷却塔2へ戻すための通路であり、冷却塔2の貯水部13及び散水部12L・12Rに接続されている。冷却水通路3L・3Rは、図3(a)(図3(a)には冷却水通路3Lのみ記載)に示すように複数の配管17で構成されており、各配管17の端部にはフランジ部17aが設けられている。配管17同士はフランジ部17aを重ねて螺子などで固定することにより連結されている。
冷却水通路3L・3Rの一端は、貯水部13の下面に接続されている。また冷却水通路3L・3Rの他端は、散水貯溜槽23L・23Rの上方に配置されており、冷却水通路3L・3Rの他端から散水貯溜槽23L・23R内へ冷却水が流下する。
【0025】
冷却水通路3L・3Rの中途部には、揚水ポンプ4L・4Rが設けられている。揚水ポンプ4L・4Rは冷却水を下方から上方へと揚水するためのポンプであり、冷却水通路3L・3R下部を流れる冷却水は揚水ポンプ4L・4Rによって上方へと圧送される。つまり、揚水ポンプ4L・4Rにより、貯水部13内の冷却水が冷却水通路3L・3Rの一端側から取り込まれるとともに、冷却水通路3L・3Rの他端側へ圧送される。
【0026】
また、冷却水通路3L・3Rの中途部には、超微細気泡発生装置5L・5Rが設けられている。
超微細気泡発生装置5L・5Rは、図3及び図4(図3及び図4には超微細気泡発生装置5Lのみ記載)に示すように、気体を圧送するための気体圧送手段であるコンプレッサ31L・31Rと、圧送された気体を超微細気泡として冷却水内へ放出するための気泡発生媒体32L・32Rと、気体供給路33L・33Rと、を具備する。
また、超微細気泡発生装置5L・5Rは、図3(a)に示すように、冷却水通路3L・3Rの配管17・17と同径の配管35L・35Rを具備し、配管35L・35Rの内部に気泡発生媒体32L・32Rを配置し、配管35L・35Rの外部に、コンプレッサ31L・31Rを配置している。
配管35L・35Rの端部には取付部であるフランジ部35aが設けられており、両端のフランジ部35aを冷却水通路3L・3Rの配管17の端部に設けられたフランジ部17aと接続することにより、超微細気泡発生装置5L・5Rを冷却水通路3L・3Rの中途部に配置することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、取付部をフランジ部17aで構成したが、これに限定するものではなく、例えば、取付部を、雄ネジ及び雌ネジからなるネジ機構や、配管17及び配管35L・35Rの外側に嵌設するスリーブで構成することも可能である。
【0028】
また、図2に示すように、冷却装置100は、冷却用熱交換器6L・6Rを備える構成とすることもできる。冷却装置100は、冷凍機、冷温水機、各種工程の熱交換器などで使用することにより温度の高くなった冷却媒体を冷却用熱交換器6L・6Rで冷却し、再び冷却媒体として熱交換器などで使用できるようにする装置である。
【0029】
冷却用熱交換器6L・6Rは、冷凍機、冷温水機、各種工程の熱交換器などで使用することにより温度の高くなった冷却媒体の流れる図示せぬパイプと、冷却水の流れる図示せぬパイプとを隣接させて配置している。これにより、温度の高い冷却媒体と温度の低い冷却水との間で熱交換が行われ、冷却媒体を冷却することができる。
【0030】
また、図2に示す冷却装置100の冷却塔2には、複数の板状部材25が設けられている。板状部材25は波形に形成されており、外気と接触する面積が大きくなるように形成されている。散水部12L・12Rから散布された温度の高い冷却水は、複数の板状部材25と接触し、一時付着する。これにより、冷却水が板状部材25の表面で外気と接触する時間が長くなる。冷却水は外気と接触することで一部が蒸発し、その気化熱で残りの冷却水が冷却される。
【0031】
次に超微細気泡発生装置5L・5Rについて説明する。
超微細気泡発生装置5Lと超微細気泡発生装置5Rとは同様の構成であるので、以下では、超微細気泡発生装置5Lについて説明する。
【0032】
コンプレッサ31Lは、気体供給路33Lを介して気泡発生媒体32Lの内部空間32aへと気体を圧送する装置である。コンプレッサ31Lは、小型の気体圧送装置であり、0.2MPaの圧力で空気を供給する。
コンプレッサ31Lから圧送された気体は気体供給路33Lを通り、気泡発生媒体32Lの内部空間32aへと圧送される。
【0033】
なお、コンプレッサ31Lによって圧送される気体は、空気に限定するものではなく、例えば、オゾンや窒素などで構成することも可能である。気体をオゾンで構成した場合には、その殺菌作用により、冷却水内の細菌を減少させることができ、スケールやスライムの発生を抑制することができる。
【0034】
気泡発生媒体32Lは、図3(a)及び(b)に示すように、円柱状に形成されており、内部空間32aと、無数の微細な孔32bと、表面部32cと、を有している。内部空間32aは、気泡発生媒体32Lの長手方向一端から長手方向中途部まで設けられた空間であり、開口している一端が気体供給路33Lの一端と連結されている。このように構成することにより、気体が円柱の長手方向側面部である表面部32cより均等に放出されるため、効率的に超微細気泡を発生させることができる。
【0035】
また、気泡発生媒体32Lは、冷却水通路3Lの中途部であって上下方向が長手方向となる配管17の内部に設けられている。より詳しくは、気泡発生媒体32Lは、冷却水通路3Lの散水部12L側の出口近傍であって貯水部13よりも上方に設けられている。
また、気泡発生媒体32Lは、揚水ポンプ4L付近ではなく、揚水ポンプ4Lと一定以上の距離を開けて配置されている。このように配置することにより、揚水ポンプ4Lによって作り出された水圧の影響を軽減することができ、効率よく超微細気泡を発生することができる。
【0036】
気泡発生媒体32Lは、冷却水通路3Lを流れる水流と平行な方向が長手方向となるように配置されている。このように配置することで、気泡発生媒体32Lの表面部32cから発生する超微細気泡が、発生した瞬間に水流によって気泡発生媒体32Lから離間することにより、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0037】
気泡発生媒体32Lは、固体組織がイオン結合による分子構造である高密度複合体で形成されている。また、前記高密度複合体は導電体であり、気泡発生媒体32Lから発生する気泡は負の電荷を帯電する。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体32Lを通過する際に超微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷を帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。例えば、前記導電体は炭素系の素材で構成している。
【0038】
また、図3(b)に示すように、気泡発生媒体32Lは直径数μm以下の細かな孔32bを多数有しており、コンプレッサ31Lから圧送された気体が孔32bを通過する構造となっている。すなわち、コンプレッサ31Lから圧送した気体のガス圧で、超微細気泡を孔32bから液中へ放出するものである。
このように構成することにより、気泡発生媒体32Lを形成する高密度複合体は、軟性を持たない固体であるため膨張及び収縮による劣化がなく、無機質の素材であるため経時変化による腐蝕がないことから、超微細気泡発生装置5Lの損傷や劣化を防ぐことができる。
【0039】
気泡発生媒体32Lから超微細気泡が発生する過程を、図4を用いて説明する。
図4(a)に示すように、まず、前記超微細気泡が孔32bから発生し、その瞬間に、図4(b)に示すように、超微細気泡が放出されている表面部32cを冷却水が通過することによって気泡発生媒体32Lの表面部32cから離間させる。そして、図4(c)に示すように、表面部32cの超微細気泡は、後から発生する超微細気泡や周辺の孔32bから発生する超微細気泡と合体することなく単独で液中へ移動する。
これにより、超微細気泡は、数十μm以下の直径を有しながら冷却水内に存在する。
【0040】
冷却水内に含まれる超微細気泡は、破裂することなく冷却水内に存在し続け、時間がたつにつれて収縮して直径が数μm以下の気泡となる。超微細気泡は収縮することにより、内部の圧力及び温度が周囲と比較して高圧高温状態となる。
【0041】
次に、図1に示す冷却装置100を用いた冷却方法について説明する。
冷却水通路3L・3Rから揚水ポンプ4L・4Rによって上方に揚水された冷却水は、冷却水通路3L・3Rの中途部に設けられた超微細気泡発生装置5L・5Rの気泡発生媒体32L・32Rの表面部32cに沿うように通過する。その際、超微細気泡発生装置5L・5Rから発生した超微細気泡が冷却水内へと圧送される。超微細気泡を含んだ冷却水は上方へと圧送される。
【0042】
超微細気泡を含んだ冷却水は、冷却水通路3L・3Rの上方端から散水貯溜槽23L・23Rへと流下する。散水貯溜槽23L・23R内の冷却水は、散水貯溜槽23L・23R下面の多孔板24L・24Rに設けられた通水孔から下方へ落下する。
【0043】
散水貯溜槽23L・23Rから下方へ落下した冷却水は、充填材11の表面に付着する。また、ファン14を駆動させることによって、外気がルーバー22を通過して、充填材11方向へ向けて導入される。ルーバー22の板状部材は外側に向かうにつれて上向きに傾斜しているため、外気は内部下方へ向かって通過する。また、板状部材を傾斜させることにより、冷却水が、ルーバー22の隙間から外側へ流出するのを防ぐことができる。
【0044】
充填材11表面においては、付着した冷却水と外気とが接触して冷却水が蒸発する。冷却水には超微細気泡が含まれている。超微細気泡は収縮した状態で存在し、超微細気泡内部の圧力及び温度は収縮過程において周囲と比較して高圧高温状態となっている。そのため、冷却水と外気とが接触した際に冷却水が蒸発する効率、すなわち蒸発効率が向上する。冷却水の気化熱によって、充填材11の熱交換パイプ21内の冷却媒体が冷却される。
【0045】
充填材11に付着した冷却水のうち一部は蒸発しないまま下方へ落下して、貯水部13に貯溜される。貯水部13に貯溜された冷却水は貯水部13の下面から冷却水通路3L・3Rへと流入する。冷却水通路3L・3Rに流入した冷却水は揚水ポンプ4L・4Rで再び上方へと圧送される。
【0046】
次に、図2に示す冷却用熱交換器6L・6Rを備える冷却装置100を用いた冷却方法について説明する。
冷却水通路3L・3Rから揚水ポンプ4L・4Rによって上方に揚水された冷却水は、冷却用熱交換器6L・6R内の図示せぬパイプに流入する。冷却用熱交換器6L・6Rにおいて、温度の高い冷却媒体と温度の低い冷却水との間で熱交換が行われ、冷却媒体を冷却する。
冷却用熱交換器6L・6R内において熱交換を終えた温度の高い冷却水は、冷却水通路3L・3Rの中途部に設けられた超微細気泡発生装置5L・5Rの気泡発生媒体32L・32Rの表面部32cに沿うように通過する。その際、超微細気泡発生装置5L・5Rから発生した超微細気泡が冷却水内へと圧送される。超微細気泡を含んだ冷却水は上方へと圧送される。
【0047】
超微細気泡を含んだ冷却水は、冷却水通路3L・3Rの上方端から散水貯溜槽23L・23Rへと流下する。散水貯溜槽23L・23R内の冷却水は、散水貯溜槽23L・23R下面の多孔板24L・24Rに設けられた通水孔から下方へ落下する。
【0048】
散水貯溜槽23L・23Rから下方へ落下した冷却水は、充填材11の板状部材25の表面に付着する。また、ファン14を駆動させることによって、外気がルーバー22を通過して、充填材11方向へ向けて導入される。ルーバー22の板状部材は外側に向かうにつれて上向きに傾斜しているため、外気は内部下方へ向かって通過する。また、板状部材を傾斜させることにより、冷却水が、ルーバー22の隙間から外側へ流出するのを防ぐことができる。
【0049】
充填材11の板状部材25表面においては、付着した冷却水と外気とが接触して冷却水が蒸発する。冷却水には超微細気泡が含まれている。超微細気泡は収縮した状態で存在し、超微細気泡内部の圧力及び温度は収縮過程において周囲と比較して高圧高温状態となっている。そのため、冷却水と外気とが接触した際に冷却水が蒸発する効率、すなわち蒸発効率が向上する。一部の冷却水の気化熱によって、他の冷却水が冷却される。
【0050】
充填材11の板状部材25に付着した冷却水のうち一部は蒸発しないまま下方へ落下して、貯水部13に貯溜される。貯水部13に貯溜された冷却水は貯水部13の下面から冷却水通路3L・3Rへと流入する。冷却水通路3L・3Rに流入した冷却水は揚水ポンプ4L・4Rで再び上方へと圧送される。
【0051】
次に冷却装置100のメンテナンス方法について説明する。
冷却塔2、冷却水通路3L・3R、及び気泡発生媒体32L・32Rにスケールやスライムなどが付着した場合には、揚水ポンプ4L・4Rの駆動を停止することにより、冷却水の循環を止めて冷却塔2、冷却水通路3L・3R、及び気泡発生媒体32L・32Rを乾燥させて洗浄する。
揚水ポンプ4L・4Rの駆動を停止した場合、冷却水通路3L・3R内の水は、貯水部13の水面と同じ高さhになるまで貯水部13側へ逆流する。その結果、冷却水通路3L・3R内の冷却水の水面は、図5に示すように、貯水部13の水面と同じ高さhで保たれる。気泡発生媒体32L・32Rは、貯水部13よりも上方に設けられているため、気泡発生媒体32L・32R周辺の冷却水及び水面よりも上方の冷却水通路3L・3R内の冷却水は無くなる。また、冷却水通路3L・3Rも貯水部13の水面より上方部分の水は無くなる。このため、気泡発生媒体32L・32R及び冷却水通路3L・3Rについて容易にメンテナンスを行うことが可能となる。
【0052】
[第二実施形態]
また、図6に示すように、気泡発生媒体32L・32Rを流線形に形成することも可能である。気泡発生媒体32L・32Rの形状以外の構成は第一実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0053】
気泡発生媒体32L・32Rは流線形に形成されている。より詳細には、気泡発生媒体32L・32Rの長手方向中央部の直径が大きく、長手方向上下端の直径が小さく構成されており、その側面が滑らかに傾斜した形状に構成されている。このように構成されていることにより、冷却水通路3L・3R内に気泡発生媒体32L・32Rを配置しても冷却水の水流を乱さない。また、気泡発生媒体32L・32Rの表面部32cから発生する超微細気泡が、発生した瞬間に水流によって気泡発生媒体32L・32Rから離間することにより、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
なお、気泡発生媒体32L・32Rの形状は、冷却水の水流を乱さない形状であれば、本実施形態に限定するものではなく、例えば、卵型に形成することも可能である。
【0054】
以上のように、冷却装置100は、充填材11と、充填材11の上方に設けられた冷却水をかけるための散水部12L・12Rと、充填材11の下方に設けられた貯水部13と、を有する冷却塔2と、冷却塔2の貯水部13及び散水部12L・12Rに接続され、冷却塔2で使用した冷却水を再び冷却塔2へ戻すための冷却水通路3L・3Rと、冷却水内において気体を超微細気泡として発生させる超微細気泡発生装置5L・5Rと、を備え、超微細気泡発生装置5L・5Rは、冷却水通路3L・3R内部に配置される気泡発生媒体32L・32Rと、コンプレッサ31L・31Rと、を有し、気泡発生媒体32L・32Rは、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体であり、気泡発生媒体32L・32Rは、直径数μm以下の細かな孔32bを多数有するものである。
このように構成することにより、冷却水に気体を超微細気泡として混入することで、気液界面が増加して蒸発効率が向上し、冷却塔2内の充填材11を効率よく冷却することができる。そして、充填材11の熱交換パイプ21内を流れる冷却媒体が冷却される。
【0055】
また、気泡発生媒体32L・32Rは、冷却水通路3L・3Rの散水部12L・12R側の出口近傍であって貯水部13よりも上方に設けられたものである。
このように構成することにより、超微細気泡が冷却水通路3L・3R内で消滅することが少なくなり、気液界面が増加して蒸発効率が更に向上し、冷却塔2内の充填材11を効率よく冷却することができる。また、気泡発生媒体32L・32Rが貯水部13よりも上方にあることで、運転停止時には気泡発生媒体32L・32Rが冷却水と接触せず、メンテナンスが容易となるので、メンテナンスコストを抑制することができる。
【0056】
また、気泡発生媒体32L・32Rは、冷却水の水流と平行な方向が長手方向となる柱状に形成されたものである。
このように構成することにより、冷却水の水流により、超微細気泡が発生した瞬間に気泡発生媒体32L・32Rから離間することで、合体して大きな気泡になることを防ぐことができるため、水流発生装置などを用意する必要が無く、少ない電力消費で稼動させることができ、コストを削減することができる。したがって、コストを増加させることなく、冷却塔2内の充填材11を効率よく冷却することができる。
【0057】
また、気泡発生媒体32L・32Rは、冷却水の水流を乱さない流線形に形成されたものである。
このように構成することにより、冷却水の水流が気泡発生媒体32L・32Rに沿って流れることにより、超微細気泡が発生した瞬間に気泡発生媒体32L・32Rから離間することで、合体して大きな気泡になることを防ぐことができるため、水流発生装置などを用意する必要が無く、コストを削減することができる。したがって、コストを増加させることなく、冷却塔2内の充填材11を効率よく冷却することができる。
【0058】
また、気泡発生媒体32L・32Rは、冷却水通路3L・3R内に着脱可能なフランジ部17a及び35aを介して固設されたものである。
このように構成することにより、既存の冷却水通路3L・3Rに後付けで取り付けることができ、冷却装置100全体を交換する必要がなく、コストを削減することができる。
【符号の説明】
【0059】
2 冷却塔
3L・3R 冷却水通路
5L・5R 超微細気泡発生装置
11 充填材
12L・12R 散水部
13 貯水部
17 配管
17a フランジ部
31L・31R コンプレッサ
32L・32R 気泡発生媒体
32b 孔
35L・35R 配管
35a フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材と、前記充填材の上方に設けられた冷却水をかけるための散水部と、前記充填材の下方に設けられた貯水部と、を有する冷却塔と、前記冷却塔の貯水部及び散水部に接続され、前記冷却塔で使用した冷却水を再び冷却塔へ戻すための冷却水通路と、前記冷却水内において気体を超微細気泡として発生させる超微細気泡発生装置と、を備え、前記超微細気泡発生装置は、前記冷却水通路内部に配置される気泡発生媒体と、気体圧送手段と、を有し、前記気泡発生媒体は、高密度複合体で形成されており、前記高密度複合体は導電体であり、前記気泡発生媒体は、直径数μm以下の細かな孔を多数有する、冷却装置。
【請求項2】
前記気泡発生媒体は、前記冷却水通路の前記散水部側の出口近傍であって貯水部よりも上方に設けられた、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記気泡発生媒体は、冷却水の水流と平行な方向が長手方向となる柱状に形成された、請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記気泡発生媒体は、冷却水の水流を乱さない流線形に形成された、請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記気泡発生媒体は、取付部を介して冷却水通路内に着脱可能に固設される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137265(P2012−137265A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290921(P2010−290921)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(504077308)
【出願人】(508231256)株式会社西研デバイズ (8)
【Fターム(参考)】