説明

冷壁水平アンモニアコンバーター

アンモニアを生成するためのシステムおよび方法。内殻の内側に配置された反応ゾーンに窒素と水素とを供給することができる。内殻は、空間が内殻と外殻の間に形成されるように外殻の内側に配置することができる。反応ゾーンは、空間と間接的に熱交換する少なくとも1つの触媒床を備えることができる。窒素と水素とは、少なくとも1つの触媒の存在下で反応ゾーンで反応することによってアンモニアを含む排出物を生成することができる。排出物は、内殻から回収し、冷却することによって冷却排出ストリームを提供することができる。冷却流体は、空間の少なくとも一部分を通って流れ、内殻の外側と流体連結するように外殻に供給することができる。冷却排出物の少なくとも一部分は、冷却流体の少なくとも一部分を提供することができる。次いで、冷却流体は、アンモニア生成物として外殻から回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本態様は、一般的には、発熱合成のための方法に関する。より詳細には、本発明の態様は、1つまたは2つ以上の触媒床を使用してアンモニアおよび他の化学薬品を合成するための方法に関する。
【0002】
関連技術の説明
従来の発熱化学合成反応器は、圧力外殻(outer pressure shell)の内側に配置された触媒格納バスケットまたは「バスケット」に格納された触媒床を有する発熱反応チャンバーを特徴とする。触媒床は、圧力外殻が発熱合成反応に固有の高温に直接暴露されないようにバスケット内に格納される。圧力外殻は、通常、バスケットの外側と圧力外殻の内側の間に形成した環状空間内に反応器用供給原料ガス(feed gas)を流すことによって冷却される。バスケットで行われる発熱反応から供給原料ガスに伝達される熱は、供給原料ガスが触媒床まで進む前に供給原料ガスを所要の反応温度まで予熱する。次いで、予熱供給原料ガスは、直接にまたは内部熱交換器を介して触媒床まで進み、流れの少なくとも一部分がアンモニアまたは他の公知の化合物などの副生物に転換される。
【0003】
バスケットと圧力外殻の間の環状空間における発熱合成によって発生する熱および圧力は、相当に大きい。バスケットの設計では、バスケットの壁厚を増加させ、バスケットが発熱プロセス中に発生する熱を乗り切るのに必要な他の金属学的なパラメータを選択することによって、触媒床内の反応の物理的な実際条件を考慮しなければならない。圧力外殻の設計でも、こうした物理的な実際条件を考慮しなければならないが、それは外殻が、とりわけバスケット内に導入する前に供給原料ガスを予熱する際に大きな熱および圧力に暴露されるためである。金属学的な要件のために、発熱反応チャンバーの設計および構築に大きなコストを要するおそれがある。したがって、アンモニアまたは他の公知の化学薬品の製造に使用されるような反応チャンバーを含めての発熱反応チャンバーの金属学的な必要条件を低減できる新規なシステムおよび方法を提供する必要性が存在する。
【0004】
本発明の上記特性を詳細に理解するために、態様を参照することによって上記においてごく簡略に説明した本発明のより詳細な説明を得ることができる。なお、この態様の一部は添付の図面で例示されている。しかし、添付の図面は、本発明の典型的な態様を例示するのみであり、したがって、本発明の範囲を限定するものとみなすべきでないことに留意されたい。というのは、本発明は同等な効果を有する他の態様をも許容するからである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】1つまたは2つ以上の態様に従って、アンモニアおよび/または他の化学薬品を生成するための例示的な冷壁(cold wall)合成反応器の略図を示す。
【図2】1つまたは2つ以上の態様に従って、冷壁合成反応器を使用してアンモニアを生成するための例示的なシステムの略図を示す。
【図3】1つまたは2つ以上の態様に従って、1つまたは2つ以上の1次合成反応器および1つまたは2つ以上の2次合成反応器を使用してアンモニアを生成するための例示的なシステムの略図を示す。
【0006】
詳細な説明
これから詳細な説明を提供する。添付の特許請求の範囲はそれぞれ、別個の発明を定義するものであり、その発明は、特許権の侵害を防止するために、特許請求の範囲に規定した多様な要素または限定事項に対応する等価物をも包含するものと認識される。文脈に応じて、以下で「発明」と指定されるものはすべて、一部の場合ではある特定の態様のみを指すことがある。「発明」と指定されるものが、1つまたは2つ以上の特許請求の範囲で引用されている主題事項を指すが、必ずしもすべての特許請求の範囲では引用されていない主題事項を指すと認識される場合もある。これから、特定の態様、バージョンおよび例を含めての発明のそれぞれを以下で詳細に説明するが、発明は、これらの態様、バージョンまたは例に限定されるものではない。これらが含まれているのは、本特許内の情報を入手可能な情報および技術と組み合わせた場合に当業者が本発明物を作製および使用することを可能にするためである。
【0007】
アンモニアを包含する、1つまたは2つ以上の化学薬品を合成するためのシステムおよび方法が提供される。少なくとも1つの特定の態様では、窒素と水素は、内殻の内側に配置された反応ゾーンに供給することができる。内殻は、空間が内殻と外殻の間に形成するように外殻の内側に配置することができる。反応ゾーンは、空間と間接的に熱交換する少なくとも1つの触媒床を備えることができる。窒素と水素とは、少なくとも1つの触媒の存在下で反応ゾーンで反応することによってアンモニアを含む排出物を生成することができる。排出物は、内殻から回収し、冷却することによって冷却排出ストリームを提供することができる。冷却流体は、空間の少なくとも一部分を通って流れ、内殻の外側と流体連結するように外殻に提供することができる。冷却排出物の少なくとも一部分は、冷却流体の少なくとも一部分を提供することができる。次いで、冷却流体は、アンモニア生成物として外殻から回収することができる。
【0008】
少なくとも1つの他の特定の態様では、合成反応器が提供される。反応器は、外殻の内側に配置された内殻を備えることができる。第1の空間は内殻の内側に生成させることができる。第1の空間は、反応ゾーンと呼称することができる。第2の空間は内殻と外殻の間に形成させることができる。1つまたは2つ以上の態様では、第2の空間の少なくとも一部分は、環状空間であってよい。内殻および外殻は、任意の形状または大きさであってよい。合成反応器は、第1の空間に配置された1つまたは2つ以上の触媒床を備えることができる。1つまたは2つ以上の態様では、1つまたは2つ以上の触媒は、1つまたは2つ以上の触媒床中に配置することができる。触媒床中の触媒は、1つまたは2つ以上の化学薬品、例えば、アンモニアを合成するように改変することができる。
【0009】
運転に際しては、合成反応器は、プラントまたは施設における1次および/または2次合成ユニットであってよい。1つまたは2つ以上の態様では、供給原料ストリーム(feed stream)は反応ゾーン内に導入することができ、触媒と供給原料ストリームとの間で発熱反応を行わせることができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体を第2の空間内に進めることによって内殻および外殻を冷却することができる。1つまたは2つ以上の態様では、外殻は、その温度を内殻の温度よりも低い温度に維持することができるように冷却することができる。合成反応器は、冷壁合成反応器と称呼することができる。
【0010】
図1は、1つまたは2つ以上の態様に従って、アンモニアおよび/または他の化学薬品を生成するための例示的な冷壁合成反応器の略図を示す。1つまたは2つ以上の態様では、反応器10は、外殻12の内側に配置された内殻20を備えることができる。反応ゾーン24は、内殻20の内側に生成することができる。空間14は、内殻20と外殻12の間に形成することができる。1つまたは2つ以上の触媒床25は、内殻20の内側に配置することができる。反応器10は、1つまたは2つ以上の管15、1つまたは2つ以上の内殻の入口30および1つまたは2つ以上の内殻の出口35を備えることができる。1つまたは2つ以上の管15、1つまたは2つ以上の内殻の入口30および1つまたは2つ以上の内殻の出口35は、反応ゾーン24と流体連結することができる。外殻12は、1つまたは2つ以上の外殻の入口40および1つまたは2つ以上の外殻の出口45を備えることができる。1つまたは2つ以上の外殻の入口40および1つまたは2つ以上の外殻の出口45は、空間14と流体連結することができる。1つまたは2つ以上の態様では、内殻20および管15は、外殻12の内側に第1のプレナムを生成することができる。外殻12は、内殻20を囲む第2のプレナムを生成することができる。1つまたは2つ以上の態様では、外殻12、1つまたは2つ以上の外殻の入口40および1つまたは2つ以上の外殻の出口45は、内殻20を囲む第2のプレナムを生成することができる。
【0011】
1つまたは2つ以上の態様では、内殻20は、円形断面を含めての任意の形状の断面を有することができる。1つまたは2つ以上の態様では、内殻20は、内殻20の内側および/または外側上に配置されたフィン(示さず)を備えることができる。フィンは、反応ゾーン24および/または内殻20から空間14への熱伝達を促進することができる。
【0012】
1つまたは2つ以上の態様では、内殻20および1つまたは2つ以上の触媒床25は、1つまたは2つ以上の管15によって外殻12の内側に支持することができる。内殻20は、内殻20および外殻12に付けた2次構造物(示さず)によって支持することができる。内殻20は、任意の公知支持構造概念体によって外殻12の内側に支持することができる。1つまたは2つ以上の態様では、内殻20は、外殻12の内側に取り外しができるように配置することができる。触媒床25は、任意の公知支持構造概念体によって内殻20の内側に支持することができる。1つまたは2つ以上の態様では、1つまたは2つ以上のバッフル板(示さず)は、2つ以上の触媒床25を分離することができる。
【0013】
1つまたは2つ以上の態様では、1つまたは2つ以上の触媒床25は、水素と窒素とを反応させることによってアンモニアを創出することができる触媒を含むことができる。1つまたは2つ以上の触媒床25に含まれる触媒は、1つまたは2つ以上の白金族金属、炭素系触媒、マグネタイトおよび/またはそれらの組合せであってよい。
【0014】
1つまたは2つ以上の態様では、内殻12は、円形断面を含めての任意の形状の断面を有することができる。1つまたは2つ以上の態様では、外殻12は、外殻12の内側および/または外側上に配置されたフィン(示さず)を備えることができる。フィンは、外殻12から空間14への熱伝達を促進することができる。
【0015】
示されてはいないが、1つまたは2つ以上の内殻20は、外殻12の内側に配置することができる。1つまたは2つ以上の内殻20は、互いに流体連結することができ、互いに直列および/または並列に配列することができる。1つまたは2つ以上の態様では、1つまたは2つ以上の内殻20は、それぞれの内殻20内に配置された1つまたは2つ以上の触媒床25を有することによって1つまたは2つ以上の反応ゾーン24を画定することができる。
【0016】
1つまたは2つ以上の態様では、内殻20内の全体のコンポーネントは、ステンレス鋼、インコロイ、インコネル、チタン、他の高合金金属および/またはそれらの組合せを含めての材料を使用して構築することができる。1つまたは2つ以上の態様では、外殻12は、炭素鋼、他の低合金金属および/またはそれらの組合せを含めての材料を使用して構築することができる。低合金金属は、高合金金属よりも安価であることができる。例えば、低合金金属は高合金金属に比較してより安価に購入することができる。低合金金属を使用してコンポーネントを製作することは、高合金金属を使用することに比較してより安価にすることもできる。1つまたは2つ以上の態様では、外殻12は、内殻20よりも低いコストで製造することができる。1つまたは2つ以上の態様では、高合金金属は、8重量%以上のニッケルおよび/またはクロムを含有する金属として定義される。1つまたは2つ以上の態様では、高合金金属は、6重量%以上のニッケルおよび/またはクロムを含有する金属として定義される。1つまたは2つ以上の態様では、低合金金属は、6重量%未満のニッケルおよび/またはクロムを含有する金属として定義される。
【0017】
図1の合成反応器10は、一般的には、触媒床25を直列に有する水平構造として示されているが、このことによって、本明細書に記載の1つまたは2つ以上の態様における方向および/または触媒床構造が制限を受けることは一切ないということが理解されよう。例えば、合成反応器10は、一般的な垂直構造で設置することができる。垂直構造では、1つまたは2つ以上の触媒床25は、反応ゾーン24において上下に配置することができる。流体は、垂直に配向された合成反応器10の頂部から垂直に配向された合成反応器10の底部に向かって反応ゾーン24内を流れることができる。
【0018】
1つまたは2つ以上の態様では、合成反応器10を運転する間、供給原料ストリーム32は、窒素と水素とを含むことができ、内殻の入口30に供給することができる。供給原料ストリーム32は、反応ゾーン24内を進むことができる。供給原料ストリーム32は、それぞれの触媒床25の頂部から底部に流れることができる。供給原料ストリーム32は、直接にまたは内殻20の内側に配置された熱交換器(示さず)を介して1つまたは2つ以上の触媒床25の上を流れることができる。触媒床25の触媒と供給原料ストリーム32との間で行われる反応のために、排出物37を生成することができ、この排出物37は、供給原料ストリーム32よりもアンモニア含量を増加させることができる。排出物37は、内殻の出口35から回収し、さらに加工することができる。上述したように、供給原料ストリーム32の流れの方向は、非限定的であり、1つまたは2つ以上の態様では、供給原料ストリーム32は、それぞれの触媒床25の底部から頂部に流れることができる。
【0019】
冷却流体22などの冷却媒体を使用することによって供給原料ストリーム32と触媒床25の触媒との反応によって発生する熱を除去することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22は、外殻の入口40に供給することができる。空間14は、内殻20の少なくとも一部分上に冷却流体22を進めることができ、反応ゾーン24と間接的に熱交換する関係が可能になる。冷却流体22は、供給原料ストリーム32と1つまたは2つ以上の触媒床25の触媒との間の反応によって発生する反応熱の少なくとも一部分を除去することができる。次いで、冷却流体は、外殻の出口45に進むことができ、外殻の出口45から回収して、以下で議論されているようにまたは本技術分野で公知のようにさらに使用することができる。内殻20と外殻12の双方について、1つの入口30、40および1つの出口35、45のみが示されているが、入口30、40および出口35、45の数に対する制限はないことを理解されたい。
【0020】
1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22は、供給原料ストリーム32に対して向流方向で空間14内を流れることができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22は、供給原料ストリーム32に対して並流方向で空間14内を流れることができる。
【0021】
1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22は、任意の流体であってよい。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22は、内殻20からおよび外殻12からの熱を伝達することができる。1つまたは2つ以上の態様では、外殻12は、その温度が内殻20の温度よりも低い温度に維持できるように冷却することができ、合成反応器10は、冷壁合成反応器10と呼称することができる。1つまたは2つ以上の態様では、反応ゾーン24の平均温度は、約600°Fから約950°Fの間の温度に維持することができ、外殻12の平均温度は、約100°Fから約600°Fの間の温度に維持することができる。
【0022】
反応ゾーン24および外殻12の平均温度は、約95°Fから約600°Fの間の温度を有することができる冷却流体22を導入することによって維持することができる。1つまたは2つ以上の態様では、反応ゾーン24および外殻12の平均温度は、約95°Fから約400°Fの間の温度を有し、供給原料ストリームの質量流速の約10%と約100%の間の質量流速を有する冷却流体22を導入することによって維持することができる。
【0023】
1つまたは2つ以上の態様では、1つまたは2つ以上の冷壁合成反応器10は、プラントまたは施設で運転することができる。1つまたは2つ以上の冷壁合成反応器10は、お互いに並列および/または直列にプラントで配列することができる。1つまたは2つ以上の冷壁合成反応器10は、プラントにおいて1次および/または2次合成ユニットであってよい。
【0024】
図2は、1つまたは2つ以上の態様に従って、冷壁合成反応器を使用してアンモニアを生成するための例示的なシステムの略図を示す。1つまたは2つ以上の態様では、アンモニアプラント100は、冷壁合成反応器10を備えることができる。冷壁合成反応器10は、1次合成ループの一部分としてアンモニアプラント100用の1次アンモニア反応器になることができる。1次合成ループは、1つまたは2つ以上の冷壁合成反応器10、1つまたは2つ以上の改質装置50、1つまたは2つ以上のコンディショニングユニット51、1つまたは2つ以上の冷却器または凝縮器/精製ユニット52、1つまたは2つ以上のアンモニア回収ユニット55および1つまたは2つ以上の水素回収ユニット65を備えることができる。冷壁合成反応器10は、外殻12、内殻20、内殻20と外殻12の間に形成した空間14および内殻20内に生成した反応ゾーン24を備えることができる。
【0025】
運転に際しては、改質装置50は、アンモニア合成のための適切な圧力および温度で冷壁合成反応器10に合成ガスまたは供給原料ストリーム32を供給することができる。1つまたは2つ以上の態様では、供給原料ストリーム32は、冷壁合成反応器10に供給する前にコンディショニングユニット51で加熱調整および/または圧縮することができる。1つまたは2つ以上の態様では、供給原料ストリーム32は、約90から100体積%純度を有する窒素および水素を含むことができる。供給原料ストリーム32は、約97.5から99.5体積%純度を有する窒素および水素を含むことができる。1つまたは2つ以上の態様では、供給原料ストリーム32は、約50から約75体積%の水素および約25から約40体積%の窒素を含むことができる。
【0026】
供給原料ストリーム32は、反応ゾーン24で反応することができ、生成した排出物37は、アンモニアを凝縮させるための冷却および/または熱コンディショニングのために1つまたは2つ以上の冷却器52に進めることができる。少なくともいくらかの冷却をした後に、冷却排出物37の少なくとも一部分は、冷壁合成反応器10からの熱を冷却または伝達するために冷却流体22の少なくとも一部分として空間14に進めることができる。冷却流体22が冷壁合成反応器10を出た後に、冷却流体22は、アンモニアを凝縮および精製するために1つまたは2つ以上の冷却器52に進めることができ、本技術分野で公知の方式で精製アンモニア93を得ることができる。
【0027】
1つまたは2つ以上の態様では、部分精製されたアンモニアのスリップストリーム84は、アンモニア蒸留用の補給流体として使用するためにアンモニア回収ユニット55に転用することができる。低圧アンモニアと、冷却器52の冷却部からの非凝縮性ガスおよび他の蒸気とを含むフラッシュさせた冷却液スリップストリーム54は、アンモニア回収ユニット55に転用することによって水蒸気および非凝縮性ガスを分離することができる。アンモニア回収ユニット55は、冷却器52に純度を上げた低圧アンモニア蒸気82を戻すことができる。アンモニア回収ユニット55は、通常、供給原料ストリーム32の質量流速の約0.1〜0.5%の低質量流速で低圧廃ガス62を生成することができる。
【0028】
高圧パージガス56は、アンモニア回収ユニット55から抜き取ることによって、1次合成ループに蓄積するおそれのあるアルゴン、二酸化炭素およびメタンなどの不活性ガスを除去することができる。パージガス56の少なくとも一部分58は、水素回収ユニット65に送ることができる。水素は、低圧水素68として回収することができ、高圧水素73は、供給原料ガス32と一緒に改質装置50および冷壁アンモニア合成ユニット10にリサイクルさせることができる。主として窒素と、少量のアルゴン、二酸化炭素およびメタンとを含む廃ガス64は、廃ガス62と一緒に66に流すことができる。パージガス56の別の部分は、供給原料60として2次合成ループまたはユニットに供給することができるが、図には示していない。2次合成ユニットは、本技術分野で公知の1つまたは2つ以上の2次合成ユニットおよび/または1つまたは2つ以上の冷壁合成反応器10であってよい。
【0029】
1つまたは2つ以上の態様では、アンモニアプラント100をスタートアップさせた初期の間、供給原料ストリーム32の少なくとも一部分は、空間14に進み、初期の冷却流体32のチャージとして空間14で働かせることができる。1つまたは2つ以上の態様では、供給原料ストリーム32の少なくとも一部分は、空間14の初期チャージとして空間14に供給する前に1つまたは2つ以上の冷却器52に進めることができる。
【0030】
冷却流体22は、外殻12の平均温度を約100°Fから約600°Fの間に維持できるように冷壁合成反応器10から熱を除去することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22の平均温度は、約200°Fから500°Fの間に維持することができる。冷却流体22の平均温度は、約400°Fから500°Fの間に維持することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22の質量流速は、供給原料ストリーム32の約10%〜約100%の間に維持することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22の質量流速は、供給原料ストリーム32の約90%〜約100%の間に維持することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22は、冷却流体22を約200°Fから500°Fの間に維持できる1次合成ループのある箇所で冷壁合成反応器10に進めることができる。
【0031】
1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22は、反応ゾーン24の平均温度を約600°Fから約950°Fの間に維持できるように冷壁合成反応器10から熱を除去することができる。冷却流体22は、反応ゾーン24の平均温度を約570°Fから約1200°Fの間に維持できるように冷壁合成反応器10から熱を除去することができる。
【0032】
図3は、1つまたは2つ以上の態様に従って、1つまたは2つ以上の1次合成反応器および1つまたは2つ以上の2次合成反応器を使用してアンモニアを生成するための例示的なシステムの略図を示す。1つまたは2つ以上の態様では、アンモニアプラント200は、1次アンモニア合成ループ110と統合された2次反応器として冷壁合成反応器10を組み込むことができる。1つまたは2つ以上の態様では、1つまたは2つ以上の冷壁合成反応器10は、元のアンモニアプラントの1次アンモニアループ110の中にin situで2次反応器として組み込むことができる。1次アンモニアループ110は、改質装置50、1次アンモニア合成ユニット121、アンモニア凝縮および精製または冷却ユニット52、アンモニア回収ユニット55ならびに水素回収ユニット65を備えることができ、これらはすべて本技術分野で公知である。
【0033】
運転に際しては、窒素および水素からなる供給原料ストリーム32は、約95〜100体積%の純度を有するもののとすることができる。1つまたは2つ以上の態様では、供給原料ストリーム32は、約97.5〜99.5体積%の純度を有することができる。改質装置50は、アンモニアを合成するための適切な圧力で供給原料ストリーム32を供給することができる。供給原料ストリーム32は、1次アンモニア合成ユニット121に進めることができ、富アンモニア生成物ガス111は、冷却および凝縮のために冷却ユニット52に流れることができる。貧アンモニア供給原料113は、改質装置50に再循環させることができ、貧アンモニア供給原料蒸気のスリップ84は、アンモニア回収ユニット55に転用することによって水蒸気および非凝縮性ガスを分離することができる。再循環供給原料113との平衡状態で生成した凝縮物は、冷却ユニット52において補給冷媒として使用することができる。補給冷媒および富アンモニア生成物ガス111は、冷却ユニット52内で複数の段階を介して(示さず)循環的に凝縮およびフラッシュすることができ、本技術分野で公知の方式で精製アンモニア93を得ることができる。
【0034】
部分精製されたアンモニア冷媒のスリップストリーム117は、アンモニア蒸留用の補給液体として使用するためにアンモニア回収ユニット55に転用することができる。低圧アンモニアと、冷却系からの非凝縮性ガスおよび他の蒸気とを含むフラッシュ冷媒スリップストリーム54は、アンモニア回収ユニット55に転用することによって水蒸気および非凝縮性ガスを分離することができる。アンモニア回収ユニット55は、冷却サブシステムに純度を上げた低圧アンモニア蒸気82を戻すことができる。アンモニア回収ユニット55は、低圧廃ガス62を生成することができる。
【0035】
高圧パージガス56は、アンモニア回収ユニット55から抜き取ることによって、1次アンモニア合成ループ110に蓄積するおそれのあるアルゴン、二酸化炭素およびメタンなどの不活性ガスを除去することができる。パージガス56の一部分58は、水素回収ユニット65に送ることができる。低圧水素68として回収された水素および高圧水素73は、改質装置50および1次アンモニア合成ユニット121にリサイクルさせることができる。主として窒素と、少量のアルゴン、二酸化炭素およびメタンとを含む廃ガス64は、廃ガス62と一緒にストリーム66に流れることができる。
【0036】
パージガス56の別の部分は、内殻20、外殻12、反応ゾーン24および空間14を有する冷壁合成反応器10を備える2次アンモニア合成ループに、2次アンモニア生成物または供給原料60として供給することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷壁合成反応器10は、排出物37を冷却するための冷却ユニット52と流体連結することができる。1つまたは2つ以上の態様では、供給原料60が反応ゾーン24内を通過した後、冷壁合成反応器10は、富アンモニア排出物37を生成することができ、その排出物37は、いくらか冷却するために冷却ユニット52に進めることができる。いくらか冷却した後、冷却排出物または冷却流体22は、冷却のために冷壁合成反応器10内に戻し、アンモニア回収ユニット145に供給することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷壁合成反応器10を出た冷却流体22は、アンモニア回収ユニット55に進めることができる。アンモニア回収ユニット145は、アンモニア蒸留用の補給液体として冷却器52から部分精製されたアンモニア冷媒123を取り込むことができ、高濃度アンモニア蒸気136をストリーム82に戻すことができる。貧アンモニアストリーム148は、窒素および水素と、かなり高圧の他のガスとを含むことができ、望ましいならば、改質装置50および1次合成ユニット121にリサイクルすることができる。運転に際しては、2次合成によって、供給原料60のプラント生産性を約5〜50%、例えば、10〜25%改善することができる。
【0037】
冷却流体22は、外殻12の平均温度を約100°Fから約600°Fの間に維持できるように冷壁合成反応器10から熱を除去することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22の平均温度は、約200°Fから500°Fの間に維持することができる。1つまたは2つ以上の態様では、冷却流体22の質量流速は、供給原料ストリーム32の約50%〜約90%の間に維持することができ、冷却流体蒸気22の温度は、約100°F〜約600°Fの間に維持することができる。冷却流体22は、反応ゾーン24の平均温度を約570°Fから約1200°Fの間に維持できるように冷壁合成反応器10から熱を除去することができる。冷却流体22は、反応ゾーン24の平均温度を約600°Fから約950°Fの間に維持できるように冷壁合成反応器10から熱を除去することができる。
【0038】
1組の上限数値および1組の下限数値を使用して、ある種の態様および特徴を説明してきた。別段の指示がない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲も企図されていることが理解されよう。ある種の下限値、上限値および範囲は、以下の1つまたは2つ以上の特許請求の範囲に出現することができる。数値はすべて、示された値の「約」または「およそ」の値であり、実験誤差および変動を考慮に入れており、この実験誤差および変動は、当業者には予想できるはずのものである。
【0039】
1組の上限数値および1組の下限数値を使用して、ある種の態様および特徴を説明してきた。別段の指示がない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲も企図されている。ある種の下限値、上限値および範囲は、以下の1つまたは2つ以上の特許請求の範囲に出現する。数値はすべて、示された値の「約」または「およそ」の値であり、実験誤差および変動を考慮に入れており、この実験誤差および変動は、当業者には予想できるはずのものである。
【0040】
多様な用語を上記において定義した。特許請求の範囲で使用された用語が上記において定義されていない場合、当業者がその用語に与えた最も広い定義のうち少なくとも1つの印刷刊行物または発行された特許において示されたものが与えられるべきである。さらに、本願に引用した特許、試験手順およびその他の書類はすべて、参照により本明細書に完全に組み込まれるものとする。ただし、その開示が本出願に矛盾しない限りにおいて、ならびに、かかる組み込むことが許されるすべての司法制度における範囲においてである。
【0041】
前記した事項は、本発明の態様を対象とするものであるが、その基本的な範囲から逸脱しない限りにおいて本発明の他の態様およびさらなる態様を構築することが可能であり、その範囲は以下の特許請求の範囲によって定められる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、アンモニアを製造するための方法:
反応ゾーンに窒素と水素とを供給するステップであって、該反応ゾーンが内殻の内側に配置され、前記内殻と外殻の間に空間が形成されるように内殻が外殻の内側に配置され、前記反応ゾーンが、空間と間接的に熱交換する少なくとも1つの触媒を含む少なくとも1つの触媒床を備える上記ステップ、
前記反応ゾーンで窒素と水素とを反応させることによってアンモニアを含む排出物を生成するステップ、
前記内殻からの排出物を回収するステップ、
回収した排出物を冷却することによって冷却排出ストリームを提供するステップ、
冷却流体が、空間の少なくとも一部分を通って流れ、前記内殻の外部と流体連結するように冷却流体を外殻に供給するステップを含み、
冷却排出物の少なくとも一部分が、冷却流体の少なくとも一部分を提供し、
前記外殻からの冷却流体をアンモニア生成物として回収するステップ。
【請求項2】
冷却流体が約570°Fから約1,200°Fの反応ゾーン温度を維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
冷却流体が約100°Fから約600°Fの温度に外殻を維持し、冷却流体が約600°Fから約950°Fの温度に反応ゾーンを維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応ゾーンが、空間中の冷却流体と間接的に熱交換する2つ以上の触媒床を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
外殻が、炭素鋼、他の低合金金属およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは2つ以上の材料から構築されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
内殻および反応ゾーンが、ステンレス鋼、インコロイ、インコネル、チタン、他の高合金金属およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは2つ以上の材料から構築されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
約1:1から約1:4のモル比を提供するのに十分な速度で反応ゾーンに窒素と水素とを供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
触媒床中の触媒が、マグネタイト、白金族金属、炭素系触媒およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1次アンモニア合成ループから反応ゾーンにパージガスを導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
以下を備える、供給原料ストリーム中の窒素と水素とをアンモニアに転換するシステム:
外殻内に配置された内殻と該内殻内に配置された反応ゾーンとを備え、前記内殻と前記外殻の間に空間が形成され、前記反応ゾーンが前記空間と間接的に熱交換する1つまたは2つ以上の触媒床を備える反応器、
供給原料ストリームを反応ゾーン内に導入する第1の入口、
排出物を反応ゾーンから排出する第1の出口であって、第1の入口、反応ゾーンおよび第1の出口が前記外殻を貫通する第1のプレナムを提供する上記第1の出口と、
冷却流体を空間内に導入する第2の入口、
冷却流体を空間から排出する第2の出口。
【請求項11】
第2の入口、外殻および第2の出口が、第1のプレナムを囲む第2のプレナムを提供する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
第2のプレナムが、炭素鋼、他の低合金金属およびそれらの組合せからなる群から選択される材料を使用して構築されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
触媒床が少なくとも1つの触媒を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
触媒が、マグネタイト、白金族金属、炭素系触媒およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
以下を含む、元のアンモニアプラントを転換アンモニアプラントに転換するための方法:
供給原料ストリームを反応させることによってアンモニアを生成するための2次アンモニア合成ループを設置するステップであって、該2次アンモニア合成ループが冷却ユニットに流体連結した冷壁合成反応器を備え、該冷壁合成反応器が外殻内に配置された内殻と該内殻内に配置された反応ゾーンとを備え、空間が前記内殻と前記外殻の間に形成され、前記反応ゾーンが、前記空間と間接的に熱交換する1つまたは2つ以上の触媒床を備え、該触媒床が少なくとも1つの触媒を含む上記ステップ、
第1の入口を通って前記反応ゾーン内に供給原料ストリームを導入するステップ、
第1の出口を通って前記反応ゾーンから排出物を排出するステップであって、前記第1の入口、前記反応ゾーンおよび前記第1の出口が前記外殻を貫通する第1のプレナムを提供する前記ステップ、
第2の入口を通って前記空間内に冷却流体を導入するステップ、
第2の出口を通って前記空間から冷却流体を排出するステップ。
【請求項16】
2次アンモニア合成ループが、2次アンモニア生成物から富アンモニアストリームを分離し、改質装置用の供給原料にリサイクルするための残渣ガスを得るためのアンモニア回収ユニットを備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
冷壁合成反応器の外殻が、炭素鋼、他の低合金金属およびそれらの組合せからなる群から選択される材料を使用して構築されている、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
冷壁合成反応器の内殻および反応ゾーンが、ステンレス鋼、インコロイ、インコネル、チタン、他の高合金金属およびそれらの組合せからなる群から選択される材料を使用して構築されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
触媒が、マグネタイト、白金族金属、炭素系触媒およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
1次アンモニア合成ループから冷壁合成反応器にパージガスを導入するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−521876(P2011−521876A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511593(P2011−511593)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/002828
【国際公開番号】WO2009/145865
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(508364749)ケロッグ ブラウン アンド ルート エルエルシー (10)