説明

冷媒および電源を備えた一体型凍結手術システム

患者における組織を処置するためのシステムは、冷却流体供給路を有するボディ、および冷却流体供給路と流体連通している組織穿刺プローブを含む。プローブは、ボディから遠位に延び、患者の皮膚を介して組織内に挿入可能である。冷却が開始されたときに、冷却流体がプローブ中を流れ、それによりプローブおよび任意の隣接する組織を冷却するように、冷却流体供給源がプローブと流体的に結合している。ヒーター要素が冷却流体供給源と熱的に係合しており、電源がヒーター要素に電力を供給してそれによって冷却流体を加熱する。電源は、冷却流体を少なくとも所望の温度まで加熱するのに十分な電力を有するが、冷却流体を、冷却流体供給源の破断を生じさせる臨界温度よりも高く加熱するのには不十分な電力を有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は概して、特に冷却によって誘発される組織のリモデリングのための医療装置、システムおよび方法に関する。本発明の態様は、皮膚の露出表面に沿う、および/またはその下にある一つまたは複数の標的組織を選択的にリモデリングするために極低温冷却を皮膚科学的組織に適用するための装置、システムおよび方法を含む。態様は、皮膚または他の周囲組織における望ましくないおよび/または外観の悪い効果(たとえばすじ、しわ、またはセルライトのくぼみ)を任意で抑えることにより、多様な美容的状態のために使用することができる。他の態様は、広範な医学的適応症に対して用途を見いだすことができる。標的組織のリモデリングは、標的組織の動きまたは構成における所望の変化を達成することができる。
【背景技術】
【0002】
変形部を修正する、または単に外観を改善するために、人体の様々な特徴を再形成したいという望みは一般的である。これは、毎年実施される美容外科手術の増加によって明白である。
【0003】
多くの処置は、すじおよびしわを減らすことによって皮膚表面の外観を変化させることを意図する。これらの処置のいくつかは、充填材を注入すること、またはコラーゲン産生を刺激することを含む。ごく最近には、しわの軽減および他の美容用途のための薬理学ベースの治療法が人気を博している。
【0004】
A型ボツリヌス毒素(BOTOX(登録商標))が、美容用途に使用される薬理学ベースの治療法の一例である。これは通常、顔面筋に注入されて筋収縮を阻止し、その結果、筋肉の一時的な神経衰弱または麻痺を生じさせる。ひとたび筋肉が不能になると、望ましくないしわの形成に寄与する運動が一時的に除かれる。薬学的美容処置の別の例が、ホメオパシー薬、ビタミンおよび/または他の適応症に認可されている薬物のカクテルを皮膚に注入して体の特定領域に治癒的または修正的処置を施す、メソセラピーである。様々なカクテルが、脂肪細胞を溶解させることによる身体改造およびセルライト減少、またはコラーゲン増強による皮膚再生を生じさせることを意図している。また、非薬理学ベースの美容処置の開発も続いている。たとえば、エンダモロジーは、真空吸引を利用して、セルライトのでこぼこした外観に関与する線維性結合組織を伸ばす、または緩める機械ベースの治療法である。
【0005】
BOTOX(登録商標)および/またはメソセラピーは、一時的にはすじおよびしわを減らす、脂肪を減らす、または他の美容的恩典を提供することができるが、欠点がないわけではなく、特に、公知の毒性物質の患者への注入に伴う危険、未知および/または未試験のカクテルを注入する潜在的危険などがある。さらには、エンダモロジーの作用は潜在的に危険性があるとは知られていないが、その作用は短期間であり、軽いものにすぎない。
【0006】
上記を鑑みて、特にしわ、脂肪、セルライトおよび他の美容的欠点の処置のために、極低温手法を利用して組織を処置する改良された医療装置、システムおよび方法が発案された。これらの新規な技術は、公知の生体活性的および他の美容的治療法に取って代わって、および/またはそれを補完して、理想的には、患者が毒素および有害なカクテルの注入を減らす、またはなくすことを可能にしながらも、類似の、または改善された美容的結果を提供する代替的な外見改善機構を提供することができる。これらの新たな技術はまた、局所麻酔のみを使用するかまたは麻酔を使用せずに経皮的に実施することができ、皮膚の切開が最小限かまたはなく、縫合または他の閉止法の必要がなく、広範な包帯がなく、および回復または患者の「ダウンタイム」の長期化に影響する打撲傷または他の要因が限定的であるかまたはないため、有望である。さらには、極低温処置は、他の美容的および/または皮膚科学的状態(および潜在的に他の標的組織)の処置にも使用することができるため、特に、処置がより高い精度および制御、より少ない付随的な組織損傷および/または疼痛、ならびにより良い使いやすさを提供する場合、望ましい。
【0007】
これらの新規な極低温処置は有望であるが、極低温流体の使用は、操作者および患者にとって危険である可能性がある。極低温流体は、多くの場合、ヒーターキャニスタの中に貯蔵される。キャニスタの過度な加熱は、キャニスタの破断および望まない流体漏出を生じさせるおそれがある。さらには、これらの極低温システムの多くは電気エネルギーで駆動される。短絡または他の電気的障害もまた、望まないキャニスタの加熱および破断を生じさせるおそれがある。キャニスタの破断は、空中に飛ぶ危険な飛散物および装置からの冷却流体の漏出を生じさせて、患者および/または医師に対して外傷または望まない結果を引き起こすことがある。したがって、装置中の極低温流体の貯蔵および加熱をより綿密に制御することができるさらなる安全機能を備えた極低温処置装置および方法を提供することが望ましい。また、そのような安全機能が、費用対効果が大きく、製造しやすく、操作しやすいことが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は概して、冷却によって誘発される組織のリモデリングのための医療装置、システムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、極低温冷却流体の安全な貯蔵を容易にするために使用される方法および装置に関する。
【0009】
本発明の第一の局面において、患者における標的組織を処置するためのシステムは、少なくとも一つの冷却冷媒供給路を有するボディ、および近位部分と、遠位組織穿刺部分と、それらの間にあり冷却冷媒供給路と流体連通している管腔とを有する少なくとも一つのプローブを含む。少なくとも一つのプローブは、ボディから遠位に延び、患者の皮膚表面を介して標的組織内に挿入される。前記システムはまた、冷却が開始されたときに、冷媒、たとえば冷却流体または気体が管腔の中を流れ、それによりプローブおよび任意の隣接する標的組織を冷却するように、管腔と流体的に結合した冷媒供給源を含む。ヒーター要素が冷媒供給源と熱的に係合しており、電源が、ヒーター要素に電力を供給して、それによって冷媒を加熱するように適合されている。電源は、冷媒を所望の温度に加熱するのに十分な電力を有し、かつ電源は、冷却流体であってもよい冷媒を、冷却流体供給源の破断を生じさせる臨界温度よりも高く加熱するのには不十分な電力を有する。
【0010】
ボディはさらに、その遠位端の近くに配置され、少なくとも一つのプローブを解放可能に保持するように適合された、迅速交換(quick disconnect)機構を含む。迅速交換機構は、プローブがボディから接続解除されたのち冷媒が冷媒供給路に沿って流れることを防ぐように適合された逆止め弁を含むことができる。プローブは、ボディと解放可能に接続していてもよく、また、組織を穿刺するように適合された遠位端を有する針を含むことができる。針の遠位端は、冷媒がそこを通過して流れることを防ぐために、封止されていてもよい。
【0011】
冷却流体供給源であってもよい冷媒は、冷媒を含むキャニスタを含むことができ、キャニスタは、約1グラム〜約35グラムの亜酸化窒素を含むことができる。電源は、使い捨てまたは充電可能かつ再使用可能なバッテリ、たとえばニッケル水素電池またはリチウムイオン電池を含むことができる。いくつかの態様において、バッテリは、約5ボルト未満の電気エネルギーを供給し、350ミリアンペア時以下の電流容量を有する。臨界温度は、キャニスタ破裂温度の約80%未満であることができ、所望の温度は30℃であることができる。電源は、ボディの外部にあり、ボディに係留された交流電源を含むことができる。電源とヒーターとの間に温度ヒューズが電気的に配置されてもよい。
【0012】
システムはさらに、キャニスタから管腔までの冷媒の流れを調整するように適合された弁を含むことができる。いくつかの態様において、システムは、モーターの作動が弁を作動させるように、弁と動作的に結合したモーターを含むことができる。システムはまた、電源と電気的に結合した制御装置を含むことができる。制御装置は、実行されると、冷媒供給源から管腔までの冷媒の流れを生じさせる命令を含むことができる。弁はまた、手動で作動させることもできる。
【0013】
本発明の第二の局面において、患者における標的組織を処置するための方法は、冷却冷媒または冷却流体供給路を有するボディと、冷却流体供給源と、ボディの遠位領域に結合したプローブとを有する極低温装置を提供する段階を含む。プローブは管腔を有し、該装置はまた、冷却流体供給源と熱的に係合したヒーター要素および電源を含む。前記方法はまた、冷却流体供給源をヒーターで加熱する段階を含み、電源がヒーターに電力を供給する。電源は、冷却流体を所望の温度まで加熱するのに十分な電力を有するが、しかし冷却流体を、冷却流体供給源の破断を生じさせる臨界温度よりも高く加熱するのには不十分な電力を有する。プローブが標的組織と係合し、プローブの冷却により標的組織が冷却されて標的組織がリモデリングされる。
【0014】
プローブは針を含むことができ、プローブを係合させる段階は、針によって皮膚表面を標的組織内まで穿刺することを含むことができる。標的組織は、皮膚、神経、脂肪、結合組織、血管、筋肉またはそれらの組み合わせを含むことができる。冷却する段階は、標的組織を少なくとも0℃まで冷却することを含み、該標的組織内で物理的、生理学的または構造的変化を生じさせることができる。冷却は、プローブの遠位部分内で冷却流体の少なくとも一部を液体から気体に気化させることを含むことができる。冷却冷媒または流体は、亜酸化窒素、二酸化炭素または他の冷媒を含むことができる。
【0015】
極低温装置は弁を含むことができ、前記方法はさらに、冷却流体供給源から管腔までの冷却流体の流れを調整するために、弁を作動させる段階を含むことができる。極低温装置は、弁と動作可能に結合したモーターを含むことができ、前記方法はさらに、弁を作動させるために、モーターを作動させる段階を含むことができる。ときには、電源は第一のバッテリを含むことができ、前記方法はさらに、第一のバッテリが実質的に放電してしまった場合に、第一のバッテリを極低温装置から切り離す段階、および第二のバッテリを極低温装置と結合させる段階を含むことができる。第二のバッテリは少なくとも部分的に充電されていることができる。電源がバッテリを含む場合、前記方法はまた、バッテリが実質的に放電してしまったのちに、バッテリを再充電する段階を含むことができる。ときには、前記方法はまた、プローブをボディから接続解除し、プローブを廃棄する段階を含むことができる。
【0016】
本発明のさらに別の局面において、一人の患者における標的組織を冷却するためのシステムは、近位部分と、遠位標的組織係合部分と、それらの間の冷却流体供給管腔とを有するプローブを含む。プローブは、標的組織内に遠位方向へ挿入可能であり、冷却流体供給源はある量の冷却流体を含む。ヒーター要素が冷却流体供給源と熱的に係合し、使い捨てまたは充電可能なバッテリが、冷却流体を加熱するためにヒーター要素に電力を供給するように適合されている。電源は、冷却流体を所望の温度まで加熱するのに十分な電力を有するが、冷却流体を、冷却流体供給源の破断を生じさせる臨界温度よりも高く加熱するのには不十分な電力を有する。また、バッテリは、標的組織をリモデリングし、患者の外観を美容的に改善するために、極低温装置を動作させて、複数の挿入部位に隣接する標的組織を冷却するのに十分な電力を有する。冷却流体供給源は、約1グラム〜約35グラムの亜酸化窒素または他の冷媒を有する単回使用キャニスタを含むことができ、バッテリは、350ミリアンペア時未満の電流容量を有することができる。
【0017】
添付図面に関連する以下の説明においてこれらおよび他の態様をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の態様の自蔵式皮下極低温リモデリングプローブおよびシステムの斜視図である。
【図1B】極低温リモデリングシステムの内部コンポーネントを示し、使い捨てプローブと共に使用するための交換用処置針を概略的に示す、図1Aの自蔵式プローブの部分透視斜視図である。
【図1C】外部電源供給部によって駆動される極低温リモデリングプローブおよびシステムの略図である。
【図1D】制御装置を備えた制御コンソールと、任意で外部電源供給部とを有する極低温リモデリングプローブおよびシステムの略図である。
【図1E】内部電源供給部と制御装置とを備えた制御コンソールを有する極低温リモデリングプローブおよびシステムの略図である。
【図2】処置システムに含めることができるコンポーネントを概略的に示す。
【図3】図1Bの使い捨て極低温プローブおよびシステムを使用する処置方法を概略的に示すフローチャートである。
【図4】患者の皮膚を介して標的組織内に挿入された図1Bの極低温プローブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、改良された医療装置、システムおよび方法を提供する。本発明の態様は、任意で美容的欠陥、病変、疾病状態を処置する、および/または上を覆う皮膚表面の形状を変化させるために、皮膚および皮膚よりも下に位置する組織のリモデリングを容易にする。
【0020】
本発明のもっとも直接的な用途としては、患者の外観を改善するための、特に美容的欠陥に関連する筋収縮を抑制することによる、すじおよびしわの軽減を挙げることができる。本発明の多くの態様は、薬理学的毒素などに完全に依存して筋肉を不能にして一時的麻痺を誘発するのではなく、少なくとも部分的に、冷気を使用して神経および筋肉機能を妨害、調節または変化させる。有利な点として、神経、筋肉および関連する組織の機能は、10℃〜−5℃という中程度に低い温度を使用することにより、組織機能または構造を永久的に不能にすることなく、一時的に妨害、調節または変化させることができる。心房細動に関連する構造を特定するために用いられる手法と類似した手法を使用すると、針プローブまたは他の処置装置を診断用モードでこれらの中程度の温度で使用して、標的組織構造を特定することができ、同じプローブ(または異なるプローブ)を使用して、任意で約−5℃〜約−100℃の温度で標的組織ゾーンを処置する、および/またはアポトーシスを誘発することにより、より長期的または永久的な処置を提供することもできる。いくつかの態様において、炎症および骨格筋衛星修復細胞の動員を制限または回避する、より長期的または永久的な処置を任意で提供するために、約−1℃〜約−15℃または約−1℃〜約−19℃の処置温度を使用して、アポトーシスを誘発することもできる。したがって、そのような皮下極低温処置の処置効果の持続期間を選択し、制御することができ、より低い温度、より長い処置時間および/または標的組織のより大きな体積もしくは選択パターンによって処置の寿命が決定される。−5℃より低い処置温度を使用すると、細胞(たとえば骨格筋細胞または神経軸索)は処置されるが結合組織構造は無傷のまま残されるように、組織を選択的に変性させて、患部細胞の完全な回復または再生を保証し、それにより、一時的な処置効果を提供することができる。
【0021】
美容的および他の欠陥の処置のための極低温冷却のさらなる説明は、その全ての開示がいずれも参照により本明細書に組み入れられる、2005年12月5日に出願された「Subdermal Cryogenic Remodeling of Muscle, Nerves, Connective Tissue, and/or Adipose Tissue (Fat)」と題する米国特許公開公報第2007/0129717号(代理人ドケット番号025917-000110US)および2007年6月28日に出願された「Subdermal Cryogenic Remodeling of Muscles, Nerves, Connective Tissue, and/or Adipose Tissue (Fat)」と題する米国特許公開公報第2008/0183164号(代理人ドケット番号025917-000120US)に見いだすことができる。
【0022】
すじ、しわなどの美容的処置に加えて、本発明の態様はまた、皮下脂肪細胞、良性病変、前悪性病変、悪性病変、アクネおよび広範の他の皮膚科学的状態(極低温処置が提唱されている皮膚科学的状態およびその他の皮膚科学的状態を含む)などの処置にも用途を見いだすことができる。本発明の態様はまた、その全ての開示が参照により本明細書に組み入れられる、2007年11月14日出願の「Pain Management Using Cryogenic Remodeling」と題する同時係属中の米国特許仮出願第60/987,992号(代理人ドケット番号025917-000800US)に開示されているように、筋痙攣に関連する疼痛を含む疼痛の軽減にも用途を見いだすことができる。
【0023】
ここで図1Aおよび1Bを参照すると、この極低温リモデリングのためのシステムは、一般に近位端12および遠位端14を有する自蔵式プローブハンドピースを含む。ハンドピースボディまたはハウジング16は、外科医の手または他のシステム操作者に把持および支持されるのに適したサイズおよび人間工学的形状を有する。図1Bで非常によく見てとれるように、入力24の作動に応答して自蔵式システム10によって適用される冷却を制御するためのプロセッサを有する回路22とともに、極低温冷却冷媒供給源18、供給弁32および電源20がハウジング16内に見られる。電源20はまた、冷却冷媒供給源18を加熱して、それにより均一な冷却材状態を作り出しやすくするために、ヒーター要素44に電力を供給する。供給弁32は、作動すると、流体供給源18からの極低温冷却冷媒の流れを制御する。いくつかの態様は、少なくとも部分的に、手動で、たとえば手動供給弁および/または同様のものの使用によって起動することもでき、そのため、プロセッサ、電源供給部などがなくてもよい。
【0024】
ハウジング16の遠位端14からは、組織貫入極低温冷却プローブ26が遠位に延びている。プローブ26は、冷却冷媒供給源18から延びる冷却流体路に熱的に結合し、例示的なプローブは、冷却流体供給源からの冷却流体の少なくとも一部分をその中に受ける管状ボディを含む。例示的プローブ26は、軸方向に封止された鋭利な遠位端を有する30g針を含む。プローブ26は、ハウジング16の遠位端14と針の遠位端との間の軸方向の長さが約0.5mm〜5cm、好ましくは約0.5cm〜約1cm(5〜10mm)の長さであってもよい。このような針は、約0.006インチの内径および約0.012インチの外径を有するステンレス鋼管を含むことができ、一方、代替のプローブは、約0.006インチ〜約0.100インチの外径(または他の横断面寸法)を有する構造を含んでもよい。一般に、針プローブ26は、16g以下のサイズの針、多くの場合には20g以下、通常は27、30または31ゲージ以下の針を含む。いくつかの態様において、プローブ26は、その全ての開示が参照により本明細書に組み入れられる、2007年6月28日に出願された「Subdermal Cryogenic Remodeling of Muscles, Nerves, Connective Tissue, and/or Adipose Tissue (Fat)」と題する米国特許公開公報第2008/0183164号(代理人ドケット番号025917-000120US)に開示されているような、線形アレイに配置された二つまたはそれ以上の針を含む。多針プローブ構成は、極低温処置を、より大きいまたはより特定の処置領域に適用することを可能にする。針貫入の深さを制御しやすくする他の針構造および断熱針態様が、その全ての内容が参照により本明細書に組み入れられる、2007年2月16日に出願された「Replaceable and/or Easily Removable Needle Systems for Dermal and Transdermal Cryogenic Remodeling」と題する米国特許公開公報第2008/0200910号(代理人ドケット番号025917-000500US)に開示されている。いくつかの態様において、針26は、使用後、より鋭利な針と(点線で示すように)または異なる構造を有する針と交換することができるよう、解放可能にボディ16と結合している。例示的な態様において、針は、ボディに通すこともできるし、ボディの開口にプレス嵌めすることもできるし、針をボディと係合させるための、戻り止め機構のような迅速交換機構を有することもできる。逆止め弁を備えた迅速交換は、過度な冷却材の放出を伴わずにいつでもボディからの針の切り離しを可能にするため、有利である。これは、装置が動作中に故障した(たとえばモーターの故障)場合に有用な安全機能であり、システムが減圧したとき、患者を冷却材に曝露することなく、操作者が針および装置を患者の組織から係合解除することを可能にし得る。この機能はまた、処置の最中に操作者が鈍った針を鋭利な針と容易に交換することを可能にするため、有利である。当業者は、他の結合機構を使用することもできることを理解するであろう。
【0025】
ハウジング16内のコンポーネントのいくつかに関して、例示的な冷却冷媒供給源18は、好ましくは37℃未満の沸点を有する加圧下の液体を含有する、本明細書においてはカートリッジとも呼ばれるキャニスタを含む。冷媒が組織貫入プローブ26に熱的に結合し、プローブが患者内に配置されて、プローブの外面が標的組織に隣接している場合、標的組織からの熱により液体の少なくとも一部分が気化し、気化のエンタルピーにより標的組織が冷却される。供給弁32が、温度、時間、温度変化率または他の冷却特性を制限するために、冷却流体流路に沿ってキャニスタ18とプローブ26との間に、またはプローブの後の冷却流体流路に沿って配置されることもできる。弁は、多くの場合、プロセッサ22の指示にしたがって電源20によって電気的に駆動されるが、少なくとも部分的には、手動で駆動されることもできる。例示的な電源20は再充電可能または単回使用のバッテリを含む。弁32および電源20に関するさらなる詳細は以下に記載される。他の態様において、冷却冷媒供給源18は、キャニスタの過熱を防ぐために、それと熱的に結合したフィンまたは他の熱交換要素(図示せず)を有するキャニスタを含むことができる。
【0026】
例示的な冷媒流体供給源18は単回使用キャニスタを含む。有利な点として、キャニスタおよびその中の冷却流体は、室温(またはさらに室温を超える温度)で貯蔵および/または使用することができる。キャニスタは、脆いシールを有することもできるし、再充填可能であることもでき、例示的なキャニスタは液体亜酸化窒素N2Oを含む。また、多様な代替の冷却流体を使用することもでき、例示的な冷却流体としては、フルオロカーボン冷媒および/または二酸化炭素がある。キャニスタ18によって含まれる冷却流体の量は、通常、少なくとも患者の有意な領域を処置するのに十分な量であるが、しかし多くの場合は、二人またはそれ以上の患者を処置するのには十分な量よりも少ない。例示的な液体N2Oキャニスタは、たとえば、約1グラム〜約40グラムの範囲の液体、より好ましくは約1グラム〜約35グラムの液体、さらにより好ましくは約7グラム〜約30グラムの液体を含むことができる。
【0027】
プロセッサ22は、通常、本明細書に記載される処置法の一つまたは複数を実施するための機械読み取り可能なコンピュータコードまたはプログラミング命令を実行するプログラム可能な電子マイクロプロセッサを含む。マイクロプロセッサは通常、それによって使用されるコンピュータコードおよびデータを記憶するメモリ(たとえば不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)など)を含むか、もしくはそれに結合し、および/または記録媒体(磁気記録媒体、たとえばハードディスク、フロッピーディスクなど、または光学記録媒体、たとえばCDまたはDVDを含む)が提供されてもよい。また、適当なインターフェース装置(たとえばデジタル/アナログまたはアナログ/デジタル変換器など)および入出力装置(たとえばUSBまたはシリアルI/Oポート、ワイヤレス通信カード、グラフィカルディスプレイカードなど)が提供されてもよい。多種多様な市販または専用のプロセッサ構造を様々な態様で使用することができ、適当なプロセッサは、多種多様なハードウェアの組み合わせおよび/またはハードウェア/ソフトウェアの組み合わせを使用することができる。たとえば、プロセッサ22は、単一のプロセッサボード上に集積されてもよく、単一のプログラムを実行することもできるし、多種多様な代替分散データ処理またはコードアーキテクチャにおいて多数の異なるプログラムモジュールを実行する複数のボードを使用することもできる。加えて、プロセッサ22は、作動するためには使い捨てプローブ26からの適合するコードを要するコードを有する集積チップを含み得る、任意の安全保障23手段を制御する。また、ハウジング14の遠位端に接続されたプローブ26のインターフェースの設計は、プローブ26がハウジング14の遠位端に設置またはロックされる嵌合方向を有するように幾何学的嵌合であってもよい。これは、第三者の模造品コンポーネントの使用を防ぐか、または最小限にする。
【0028】
図1C〜1Eは、図1A〜1Bに示す態様の代替態様を示す。たとえば、図1Cにおいて、システム10は概して、電源がハウジングから取り除かれて、代わりにテザーまたは電源コード51がシステム10を交流電源供給部57、たとえば壁ソケットに接続すること以外は、図1A〜1Bのシステム10と同じ形態をとる。任意のヒューズ53が、過剰な電力が電源供給部57から引き込まれることを防ぎ、それにより、冷媒供給源(図示せず)の過熱を防ぐ。図1Dは、ほぼ図1A〜1Bのシステム10と同じ形態をとるシステム10の別の変形態様であり、主な違いは、電源および制御装置がいずれもハウジング16から取り除かれていることである。この態様において、外部制御装置ボックス55がテザーまたはコード51を介してハウジング16と接続され、ボックス55は、任意で、制御装置59およびバッテリ61(これは、壁ソケットまたは他の交流電源57を介して充電することができる)のいずれかまたは両方を含む。さらに別の変形態様において、図1Eは、概して、図1A〜1Bにおけるシステム10と同じ形態をとり、主な違いは、電源および制御装置がハウジングから取り除かれていることである。この態様において、ハウジング16は、テザーまたはコード51を介して外部制御ボックス55と結合されている。制御ボックス55は、任意で、バッテリ61および制御装置59のいずれかまたは両方を含む。ヒューズ53が制御ボックス55とハウジング16との間に電気的に配置されて、過剰な電力がバッテリ61から引き込まれ、冷媒供給源(図示せず)を過熱することを防ぐ。
【0029】
次に図2を参照すると、流体供給源18からの極低温冷却流体の流れは供給弁32によって制御される。供給弁32は、制御装置22からの制御信号に応答して作動する電動ソレノイド弁、モーター作動弁などを含んでもよく、および/または手動弁を含んでもよい。例示的な供給弁は、オン/オフの弁動作に適した構造を含むことができ、冷却流が停止したとき、残留する極低温流体の気化および冷却を制限するために、流体供給源および/または弁よりも下流の冷却流体路のガス抜きを提供することができる。さらには、弁は、例えば悪性病変などにおける組織の壊死を促進することが望ましい場合には高速の冷却を提供する、または壊死が望まれない場合には細胞内ではなく細胞間の氷形成を促進する低速冷却を提供するように冷却材の流量を調節するために、制御装置によって作動させることもできる。他の態様においては、より複雑な流量調節弁構造を使用することもできる。たとえば、他の適用可能な弁の態様が、先に参照により本明細書に組み入れられた米国特許公開公報第2008/0200910号に開示されている。
【0030】
さらに図2を参照すると、ヒーター(図示せず)が冷却流体供給源18を加熱して、加熱された冷却流体が弁32および冷却流体供給管36の管腔34を通過して流れる。供給管36は、少なくとも部分的に針26の管腔38内に配置されて、針の近位端40から遠位端42に向けて遠位に延びている。例示的な供給管36は、ポリマーコーティングを有し、針管腔38の中にカンチレバー式に延びる石英ガラス管状構造(図示せず)を含む。供給管36は、約200μm未満、多くの場合には約100μm未満、通常は約40μm未満の有効内径を有する内部管腔を有することができる。供給管36の例示的な態様は、約15〜50μm、たとえば約30μmの内部管腔を有する。供給管36の外径またはサイズは、通常は約1000μm未満、多くの場合には約800μm未満であり、例示的な態様は、約60〜150μm、たとえば約90μmまたは105μmである。小さな径の供給管は、針26への冷却流体流の計量分の大部分(または、まさに実質すべて)を提供し得るため、供給管36の管腔内径の許容差は、好ましくは比較的厳しく、通常は約+/−10μm以下、しばしば+/−5μm以下、理想的には+/−3μm以下である。針26の様々な局面に関するさらなる詳細は動作の代替態様および原理と共に、その全ての内容が参照により本明細書に組み入れられる、2006年12月21日に出願された「Dermal and Transdermal Cryogenic Microprobe Systems and Methods」と題する米国特許公開公報第2008/0154254号(代理人ドケット番号025917-000300US)でさらに詳細に開示されている。先に参照により本明細書に組み入れられた米国特許公開公報第2008/0200910号(代理人ドケット番号025917-000500US)もまた、針26に関するさらなる詳細を動作の様々な代替態様および原理と共に開示している。
【0031】
針26の管腔38に注入される冷却流体は通常、液体を含むが、いくらかの気体が注入されてもよい。液体の少なくとも一部は針26の中で気化し、気化のエンタルピーにより針と係合した組織が冷却される。針26の中の気体/液体混合物の圧力の制御が、管腔38内の温度、ひいては組織の処置温度範囲を実質的に制御する。比較的単純な機械的圧力リリーフ弁46を使用して針の管腔内の圧力を制御することができ、例示的な弁は、バイアスばねによって弁座に対して付勢される弁体、たとえばボールベアリングを含む。例示的なリリーフ弁が、先に参照により本明細書に組み入れられた米国特許仮出願第61/116,050号に開示されている。このように、リリーフ弁は、針におけるより良好な温度制御を可能にして、過渡的温度を最小限にする。排出容量に関するさらなる詳細が、先に参照により本明細書に組み入れられた米国特許公開公報第2008/0200910号に開示されている。
【0032】
排出容量の制限に代えて、またはそれとともに、冷却サイクルの始めに過度に低い過渡的温度を抑制するための代替方法を用いることもできる。たとえば、気化ガスだけ(または、針管腔温度の過度な低下を避けるために十分に制限された量の液体)が針管腔に到達するように、通常は制御装置22により、冷却流体の流れを制限するタイミングシーケンスで、供給弁がオフ/オフを繰り返すこともできる。ひとたび排出容量の圧が十分になったならば、このサイクルは終了させて、定常状態流の間、冷却温度が所望の限度内に入るようにすることもできる。冷却流を推定するために使用することができる分析モデルが、先に参照により本明細書に組み入れられた米国特許公開公報第2008/0154,254号(代理人ドケット番号025917-000300US)でさらに詳細に記載されている。
【0033】
上記装置は、制御装置および(あるならば)弁の作動のため、電力に依存する。さらには、いくつかの態様において、ヒーター要素がキャニスタと熱的に係合し、冷却材を一定の所望の温度まで加熱するために使用される。したがって、適当な電源が必要である。装置は、装置を壁ソケットに差し込むことによって駆動することができるが、単回使用の手持ち装置を提供するためには、バッテリを電源供給部として使用することがより好都合である。バッテリを使用することはまた、装置からの電力コードのぶらさがりを心配する必要のない医師による装置の取り扱いを容易にするため、有利である。バッテリの使用には利点があるが、いかなる電源でもそうであるように、潜在的な欠点もある。たとえば、バッテリがショートした場合、その結果として生じる熱が冷却流体の過熱を生じさせ、それにより、キャニスタにおける過度の圧力およびそれに続くキャニスタ破断を生じさせるおそれがある。これは、飛散物のせいで危険であるだけでなく、潜在的に患者および/または医師を冷却流体に曝露させて、望まない結果または外傷を生じさせかねない。また、装置の制御装置または他の部分が故障した場合、ヒーターが「オン」のポジションに置かれたままになり、同様にキャニスタを過熱し、破裂させるおそれがある。キャニスタの過熱および過剰加圧を防ぐために圧力モニタリングをそのようなシステムにおいて実施することもできるが、これは装置の費用および複雑さを増す。したがって、冷却流体圧力モニタリングに依存しない、キャニスタの過熱および破断を防ぐ安全機能を提供することが有利であろう。簡単な解決手段は、装置回路中にヒューズを使用することであり、これによって、過剰な電流がバッテリから引き込まれた場合には、ヒューズが融解して電力回路を遮断する。また、キャニスタ温度が臨界値を超えた場合に、ヒューズによりヒーターへの電力がカットされるように、温度ヒューズを使用することもできる。これらの機能は有望ではあるが、ひとたびヒューズが融解すると、ヒューズが交換されるまで装置は非動作状態になる。したがって、ヒューズに依存することなく、かつ装置を停止させることなく過熱を防ぐ異なる安全機能が望ましい。
【0034】
そのような安全機能の一つの態様は、装置を、典型的な処置の間、駆動するのに十分な容量を有すると同時に、冷却流体キャニスタを過熱するのに十分な電力は欠く電源、たとえばバッテリを使用することである。バッテリは、制御装置およびヒーター要素を駆動するのに十分な容量を有しなければならない。いくつかの態様において、最適なプローブ冷却を生じさせる均一な冷却流体供給条件を提供するためには、冷却流体を約28℃〜32℃に加熱することが望ましく、したがって、バッテリは、キャニスタをこの所望の温度に加熱するのに十分な電力を有しなければならない。さらには、ソレノイドまたはモーターが弁を作動させる態様においては、バッテリは、これらのコンポーネントをも駆動するのに十分な容量を有しなければならない。モーターはソレノイドよりも少ない電力しか要しないため、バッテリの代わりにモーターを使用することが有利である。所要バッテリおよび容量は、様々な実験を実施することによって推定することができる。以下に開示する実験は例を示すのみであり、限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0035】
実験1: 図1に示すシステムの試験はバッテリ容量の上限を決定するのに役立つ。たとえば、4.8ボルト350mAhのニッケル水素電池を有するシステムを使用して、4Ωの抵抗のヒーター要素および手動弁によって8グラムの亜酸化窒素のキャニスタを加熱した。バッテリをフル充電し、涸渇するまでキャニスタを1050秒間連続的に加熱した。キャニスタ温度をモニタリングすると、キャニスタ破断を伴わずに最高81℃に達した。したがって、4.8ボルト350mAhのバッテリは、8グラムの亜酸化窒素のキャニスタを加熱して破裂させるのには不十分な容量を有し、さらには、このタイプのキャニスタを破裂させるには81℃は不十分であるということが明らかである。
【0036】
実験2: 実験1における上記バッテリに代えて10ボルトのDC電源を用いた。電力を連続的にキャニスタに供給し、キャニスタが破断するまで温度をモニタリングした。第一のキャニスタは161℃で破断し、第二のキャニスタは138℃で破断した。第二のキャニスタは、1250秒間の加熱ののち破断した。したがって、いくらかの安全裕度を考慮するためには、キャニスタは、約138℃を超えて、より好ましくはより低い温度未満に加熱されるべきではない。統計的に有意な破裂温度を得るためには、より大きな試料サイズ(ここではn=2)が必要である。さらには、破裂温度は、キャニスタの製造ロットおよび製造業者に依存して異なり得る。破裂温度の上限は、統計的に有意な数のキャニスタを試験し、安全裕度を考慮することによって決定することができる。例示的方法において、シリンダは、その破裂温度の80%以内までしか加熱されない。
【0037】
キャニスタを過熱せず、破断させない安全なバッテリ容量は、上記二つの実験から生成されたデータを使用して以下のように算出することができる。実験2から、キャニスタを破裂させるのに必要な電力は以下にしたがって推定することができる。
10ボルトの電源によって送達される電流=10v/4Ω、すなわち2.5アンペア
10ボルトの電源によって送達される電力=10v×2.5A、すなわち25ワット
キャニスタを破裂させるために必要なアンペア時=2.5A×1250秒/(毎時3600秒)、すなわち0.868アンペア時、すなわち868ミリアンペア時
キャニスタを破裂させるために必要なワット時=25W×1250秒/(毎時3600秒)、すなわち8.68ワット時
実験1からのデータは、4.8ボルト350ミリアンペア時のバッテリが、キャニスタを破断させるには不十分な容量を有するということを確証させる。実際のバッテリ容量を算出すると、以下のとおりであった。
ヒーターに供給される電流=4.8v/4Ω、すなわち1.17アンペア
送達される電力=4.8v×1.17アンペア=5.62ワット
送達されるワット時=5.62ワット×1050秒/(毎時3600秒)、すなわち1.64ワット時
バッテリ容量=1050秒/(毎時3600秒)×1.17アンペア、すなわち0.341アンペア時、すなわち341ミリアンペア時
このように、4.8ボルト350ミリアンペア時のバッテリは、キャニスタを過熱するのに十分な容量を有さず、したがって、上記パラメータであれば、本質的に安全である。安全係数2を提供するためには、バッテリは、4.3ワット時または430ミリアンペア時を超えるべきではない。当業者は、当然、これらの計算が、特定のヒーター要素およびバッテリならびに他の要因、たとえばキャニスタのタイプ、ヒーター/キャニスタインターフェースおよび他のシステム機能に基づくということを理解するであろう。システムに対する任意の変更は、例示的使用のためだけに提示されるこれらの推定値を変化させることができる。
【0038】
次に図3を参照すると、方法100は、自蔵式使い捨てまたは再使用可能なハンドピース、交換可能な針、たとえば図1Bに示す針、および限られた容量のバッテリを有する極低温冷却システムを使用して患者を処置することを容易にする。方法100は、一般に、所望の組織治療法および結果、たとえば顔の特定の表面的なしわの軽減、特定の部位からの疼痛の抑制、外観の悪い皮膚病変または表面的欠陥についての顔の領域からの軽減などの、決定110から始まる。処置に適切な標的組織(たとえばしわを誘発させる皮下筋肉、痛みのシグナルを伝達する組織または病変誘発性の感染組織)を特定112して、標的の処置深度、標的の処置温度プロフィールなどを決定114する。処置アルゴリズムの適用114は、処置領域の冷却または解凍のための多数のパラメータ、たとえば温度、時間、サイクル、パルスおよびランプレートの制御を含むことができる。そして、標的組織の処置に適した針の長さ、皮膚表面冷却チャンバ、針アレイおよび/または他のコンポーネントを任意で有する適切な針アセンブリをハンドピースに取り付けること116ができる。より単純なシステムは、ハンドピースに取り付けられた一つの針タイプおよび/または第一の針アセンブリのみを含んでもよい。
【0039】
挿入120ならびに針および関連する標的組織の極低温冷却122の前、最中ならびに/または後に、圧力、加熱、冷却またはそれらの組み合わせを、針挿入部位に隣接する皮膚表面に適用すること118ができる。極低温冷却サイクルが完了すると、神経、筋肉、血管または結合組織を非限定的に含む標的組織の物理的破壊を伴わずにプローブの安全な除去を可能にするために、針には、内部に形成された氷のボールから解凍するためのさらなる「解凍」時間123が必要である。この解凍時間は、冷媒弁遮断によってできるだけ短い期間、好ましくは15秒未満、より好ましくは5秒未満に手動で設定することができ、あるいは自動的に弁を遮断したのち、処置完了の音響的または視覚的通知があるまで選択された時間間隔だけ休止するように制御装置中にプログラムすることができる。
【0040】
その後、針を標的組織から抜き取ること124ができる。処置が完了せず126、針を交換する必要がない128ならば、任意で、圧力および/または冷却および/または加熱を次の針挿入部位に適用118し、さらなる標的組織を処置することができる。しかし、小さなゲージの針は、皮膚に数回挿入されただけで鈍くなるため、処置中に鈍くなった(または、そうでなくても、1回の挿入後、5回の挿入後などであるかどうかにかかわらず、交換を正当化するのに十分なくらい使用されたと判断された)針は、次の圧力/冷却の適用118、針の挿入120などの前に、新たな針と交換すること116ができる。ひとたび標的組織が完全に処置された、またはひとたび自蔵式ハンドピースに含まれる冷却供給キャニスタが涸渇したならば、使用済みキャニスタおよび/または針を処分すること130ができる。任意で、ハンドピースを廃棄してもよい。いくつかの場合において、システムにエネルギーを供給するために使用される電源はバッテリであり、このバッテリは、涸渇したとき交換または充電することができる。図4は、針26を患者の皮膚Sを介して、隣接する処置組織T内に穿刺した後の図1A〜1Bおよび図2の針26を示す。極低温冷却流体が加熱され、供給管36を介して針26に注入されたのち、標的組織Tの領域99は、標的組織の少なくとも一部分の所望のリモデリングを生じさせるのに十分に冷却される。冷却される領域99を制御し、成形して、様々な組織体積を処置することができる。
【0041】
所望のリモデリングを達成するために、多様な標的処置温度、時間およびサイクルを様々な標的組織に適用することができる。たとえば、(いずれも先に参照により本明細書に組み入れられた米国特許公開公報第2007/0129714号および第2008/0183164号にさらに詳細に記載されている。)
【0042】
アポトーシスを誘発することができる温度領域がある。アポトーシス効果は、一時的、長期的(少なくとも数週間、数ヶ月または数年続く)またはさらに永久的であることができる。壊死効果は長期的または永久的であり得るが、アポトーシスは、実際、壊死よりも長く続く美容的恩典を提供することができる。アポトーシスは非炎症性細胞死を示し得る。炎症を伴わず、正常な筋肉治癒過程が阻害され得る。多くの筋肉損傷(壊死を含む多くの損傷を含む)ののち、炎症によって骨格筋衛星細胞が動員され得る。炎症を伴わないと、そのような動員は限られるか、または回避され得る。アポトーシス細胞死は、筋肉量を減らすこともできるし、および/またはコラーゲンとエラスチンとの結合鎖を分断することもできる。また、アポトーシスおよび壊死の組み合わせを発生させる温度範囲は、長期的または永久的な恩典を提供することができる。脂肪組織の減少については、永久的な効果が有利であるかもしれない。驚くことに、脂肪細胞は筋肉細胞とは異なるふうに再生するため、アポトーシスおよび壊死はいずれも脂肪組織において長期的または永久的な結果を生じさせることができる。
【0043】
例示的な態様を、理解を明確にするためいくらか詳しく、および実施例により記載したが、数多くの改変、変更および適応が実施されることができ、および/または当業者に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は独立の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの冷却冷媒供給路を含む、ボディ、
近位部分と、遠位組織穿刺部分と、それらの間にあり該冷却冷媒供給路と流体連通している管腔とを有する少なくとも一つのプローブであって、該ボディから遠位に延び、かつ患者の皮膚表面を介して標的組織内に挿入可能である、少なくとも一つのプローブ、
冷却が開始されたときに、冷媒が該管腔の中を流れ、それにより該プローブおよび任意の隣接する標的組織を冷却するように、該管腔と流体的に結合した冷媒供給源、
該冷媒供給源と熱的に係合したヒーター要素、ならびに
該ヒーター要素に電力を供給して、それによって該冷媒供給源を加熱するように適合された電源であって、該冷媒を所望の温度に加熱するのに十分な電力を有し、かつ、該冷媒を、該冷媒供給源の破断を生じさせる臨界温度よりも高く加熱するのには不十分な電力を有する、電源
を含む、患者における標的組織を処置するためのシステム。
【請求項2】
ボディが、その遠位端の近くに配置され、かつ前記少なくとも一つのプローブを解放可能に保持するように適合された、迅速交換(quick disconnect)機構をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
迅速交換機構が、前記プローブがボディから接続解除されたのち冷媒が冷媒流体供給路に沿って流れることを防ぐように適合された逆止め弁を含む、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも一つのプローブがボディと解放可能に接続されている、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも一つのプローブが針を含み、該針が、組織を穿刺するように適合された遠位端を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記針の遠位端が、冷媒がそこを通過して流れることを防ぐために、封止されている、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
冷媒供給源がキャニスタを含み、該キャニスタが冷媒を含有している、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
キャニスタが約1グラム〜約35グラムの亜酸化窒素を含む、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
電源が使い捨てまたは再使用可能なバッテリを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
電源が、ボディの外部にありかつ該ボディに係留された交流電源を含み、および該電源とヒーターとの間に温度ヒューズが電気的に配置されている、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
臨界温度がキャニスタ破裂温度の約80%未満である、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
所望の温度が35℃である、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
バッテリが、約5ボルト未満の電気エネルギーを供給し、かつ350ミリアンペア時以下の電流容量を有する、請求項9記載のシステム。
【請求項14】
電源が、再使用可能なバッテリを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
バッテリがニッケル水素電池またはリチウムイオン電池を含む、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
キャニスタから管腔までの冷媒の流れを調整するように適合された弁をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
モーターをさらに含むシステムであって、該モーターが、前記弁と動作的に結合し、前記弁を作動させるように適合されている、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
弁が手動で作動される、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
電源と電気的に結合した制御装置をさらに含むシステムであって、該制御装置が、実行されると、冷却流体供給源から管腔までの冷媒の流れを生じさせる命令を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
以下の段階を含む、患者における標的組織を処置するための方法:
冷却流体供給路を有するボディと、冷却流体供給源と、該ボディの遠位領域に結合しかつ管腔を有するプローブと、該冷却流体供給源と熱的に係合したヒーター要素と、電源とを有する、極低温装置を提供する段階、
該冷却流体供給源を該ヒーターで加熱する段階であって、該電源が該ヒーターに電力を供給し、該電源が、冷却流体を少なくとも所望の温度まで加熱するのに十分な電力を有し、かつ該電源が、該冷却流体を、該冷却流体供給源の破断を生じさせる臨界温度よりも高く加熱するのには不十分な電力を有する、段階
該プローブを標的組織と係合させる段階、および
該標的組織をリモデリングするために、該プローブによって該標的組織を冷却する段階。
【請求項21】
電源がバッテリを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
バッテリが、約5ボルト未満の電気エネルギーを供給し、かつ350ミリアンペア時以下の電流容量を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
電源がニッケル水素電池を含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
所望の温度が30℃である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
臨界温度が130℃である、請求項20記載の方法。
【請求項26】
プローブが針を含み、かつ該プローブを係合させる段階が、該針によって皮膚表面を標的組織内まで穿刺することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項27】
標的組織が皮膚を含む、請求項20記載の方法。
【請求項28】
標的組織が筋肉を含む、請求項20記載の方法。
【請求項29】
冷却する段階が、標的組織を少なくとも0℃まで冷却することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項30】
標的組織を冷却する段階が該標的組織内に壊死を誘発する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
冷却する段階が、プローブの遠位部分内で冷却流体の少なくとも一部を液体から気体に気化させることを含む、請求項20記載の方法。
【請求項32】
冷却流体が亜酸化窒素を含む、請求項20記載の方法。
【請求項33】
極低温装置が弁を含み、かつ方法が、冷却流体供給源から管腔までの冷却流体の流れを調整するために、該弁を作動させる段階をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項34】
極低温装置が、前記弁と動作可能に結合したモーターを含み、かつ方法が、該弁を作動させるために、該モーターを作動させる段階をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
電源が第一のバッテリを含み、かつ方法が、
該第一のバッテリが実質的に放電してしまった場合に、該第一のバッテリを極低温装置から切り離す段階、および
少なくとも部分的に充電されている第二のバッテリを該極低温装置と結合させる段階
をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項36】
電源がバッテリを含み、かつ方法が、
該バッテリが実質的に放電してしまったのちに、該バッテリを再充電する段階
をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項37】
プローブをボディから接続解除し、該プローブを廃棄する段階をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項38】
近位部分と、遠位標的組織係合部分と、それらの間の冷却流体供給管腔とを有し、標的組織内に遠位方向へ挿入可能である、プローブ、
ある量の冷却流体を含む冷却流体供給源、
該冷却流体供給源と熱的に係合したヒーター要素、および
該冷却流体を加熱するために該ヒーター要素に電力を供給するように適合されたバッテリまたは電源であって、該電源が、該冷却流体を少なくとも所望の温度まで加熱するのに十分な電力を有し、かつ該電源が、該冷却流体を、該冷却流体供給源の破断を生じさせる臨界温度よりも高く加熱するのには不十分な電力を有し、かつ該バッテリが、標的組織をリモデリングし、患者の外観を美容的に改善するために、極低温装置を動作させて、複数の挿入部位に隣接する該標的組織を冷却するのに十分な電力を有する、バッテリまたは電源
を含む、一人の患者における標的組織を冷却するためのシステム。
【請求項39】
冷却流体供給源が、冷却流体を保持する単回使用キャニスタを含む、請求項35記載のシステム。
【請求項40】
バッテリが450ミリアンペア時未満の電流を含む、請求項38記載のシステム。
【請求項41】
冷却流体が約1グラム〜約35グラムの亜酸化窒素を含む、請求項38記載のシステム。
【請求項42】
所望の温度が30℃である、請求項38記載のシステム。
【請求項43】
臨界温度が130℃である、請求項38記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513255(P2012−513255A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542579(P2011−542579)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069282
【国際公開番号】WO2010/075438
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(507381732)ミオサイエンス インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】