説明

冷感が持続する吸水性樹脂入りバンド

【課題】 含水したバンドの冷感を従来よりも長時間持続できる吸水性樹脂入りバンドおよびその使用方法を提供する。
【解決手段】 吸水性樹脂と、これを入れる袋状の通気性の布帛からなるバンドにおいて、下記水分測定法により測定した布帛(A)の表面の水分が、同時に測定した綿織物の布帛の表面の水分よりも0.3%以上多い布帛(A)により、少なくとも吸水性樹脂を包む部分の最外層が形成されてなることを特徴とする吸水性樹脂入りバンドである。
水分測定法:布帛(A)を含水しピックアップ率100%に絞って、含水膨潤させた吸水性樹脂入りバンドの上に密着しておき、室内の25±5℃で30分放置した後布帛(A)の表面の水分を水分測定器で測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂入りバンドおよびその使用方法に関する。詳しくは吸水性樹脂入りバンドの最外層の布帛を、湿潤時の布帛表面の水分(%)が大きいものを用いたバンドおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夏の暑い時期や、風邪などで人体が発熱した時、含水タオルを用いて頭部や首部を保冷して人体を冷やす方法がある。含水タオルは水の蒸発潜熱を利用して熱を除去するものであり、最近は、首部を保冷するものとしてネッククーラーが販売されている。このネッククーラーは吸水性樹脂の粉末を中に入れたものが用いられ、吸水すると中の吸水性樹脂が膨潤してゲルとなり、ゲル中の水が通気性布帛を通って徐々に蒸発するのでネッククーラー自体の温度が下がり、首部を保冷することができる。首部の頸動脈中の血液を保冷すると、適度に冷やされた血液は体全体に回り体の温度を下げることができる。このようなものとして、冷却用ネックバンドを幅方向に二分するように長手方向に縫製してその中に吸水性樹脂を入れて首部を冷却するバンド(たとえば、特許文献1)や、水可溶性成分含量が少ない吸水性樹脂を含水させて用いる吸水性樹脂入りバンドがある(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用第3019831号公報
【特許文献2】特許第4204904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの含水したバンドをたとえば、首部に巻いたときに最初は冷感を感じるが、時間が経つにつれて冷感が減少する。この場合一度はずしてしばらく放置するとバンドの温度が下がり、再度使用すると冷感が戻る。バンドを外さなくとも冷感が長時間持続できるネッククーラーが求められている。
本発明の目的は、含水したバンドの冷感を従来よりも長時間持続できる吸水性樹脂入りバンドおよびその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、吸水性樹脂入りバンドの最外層の布帛を、湿潤時の布帛表面の吸水量(%)が大きいものを用いることにより達成できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は吸水性樹脂と、これを入れる袋状の通気性の布帛からなるバンドにおいて、下記水分測定法により測定した布帛(A)の表面の水分が、同時に測定した綿織物の布帛の表面の水分よりも0.3%以上多い布帛(A)により、少なくとも吸水性樹脂を包む部分の最外層が形成されてなることを特徴とする吸水性樹脂入りバンドである。
水分測定法:布帛(A)を含水しピックアップ率100%に絞って、含水膨潤させた吸水性樹脂入りバンドの上に密着しておき、室内の25±5℃で30分放置した後布帛(A)の表面の水分を水分測定器で測定する。
【0006】
さらに本発明は、上記布帛(A)の水分が21.0%以上であることを特徴とする。
さらに本発明は、上記布帛(A)がマイクロファイバーまたはナノファイバーで形成された布帛であることを特徴とする。
また本発明は、上記の吸水性樹脂入りバンドを含水させた後、前記布帛(A)を皮膚に接触させる吸水性樹脂入りバンドの使用方法である。
また本発明は、吸水性樹脂入りバンドが人体の保冷バンドまたは保冷バンダナである。
また本発明は、吸水性樹脂入りバンドが汗取りバンドである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸水性樹脂と、これを入れる袋状の布帛からなるバンド(以下、単にバンドや保冷バンドということがある)において、下記水分測定法により測定した布帛(A)の表面の水分が、同時に測定した綿織物の布帛の表面の水分よりも0.3%以上多い布帛(A)により、少なくとも吸水性樹脂を包む部分の最外層が形成されているので、綿織物を最外層に用いた従来のバンドよりも冷感が向上し、且つその冷感を長時間持続することができる。
冷感は冷たいと感じる意識であり、冷たい温度は大きく影響するが冷たい温度そのものではない。バンドを形成する最外層の布帛の表面の水分が多いほど、水の蒸散がより大きくなり、バンド自体の温度がより下がり、冷感がより大きくなり、それによってより冷感が長く持続するものと考えられる。また、布帛の表面の水分が多いほど、バンドに接触する皮膚を多く濡らし皮膚の水分がより多く蒸発することにより皮膚の温度がさらに下がることになる。皮膚面ではこの両者の現象が同時に起こるが、後者が冷感に大きく影響するのではないかと思われる。しかしながら、本分野においては、最外層の布帛の表面の水分については特に着目されていない。
【0008】
また、本発明によれば、上記布帛(A)の水分が21.0%以上であれば、含水させた吸水性樹脂入りバンドの表面の水分は従来の綿織物で形成した保冷バンドの表面の水分よりも大きいので、従来の保冷バンドよりも冷感が大きく、且つその冷感を長時間持続することができる。
【0009】
また、本発明によれば、上記布帛(A)がマイクロファイバーまたはナノファイバーで形成されていれば、含水させた吸水性樹脂入りバンドの表面の水分は従来の綿織物で形成した保冷バンドの表面の水分よりも大きいので、従来の保冷バンドよりも冷感が大きく、且つその冷感を長時間持続することができる。マイクロファイバーやナノファイバーは、後記するように極細繊維または超極細繊維であり、綿布帛よりも吸水性が格段に大きく、保冷バンドの表面の水分も非常に大きく、マイクロファイバーで作成した保冷バンドは従来の綿織物で形成した保冷バンドよりも冷感が大きく、且つその冷感を長時間持続することができる。
【0010】
また、上記の吸水性樹脂入りバンドを含水させた後、前記布帛(A)を皮膚に接触させて用いるので、皮膚に接触する部分の布帛表面の水分が従来の綿織物の水分よりも大きく、そのため冷感が大きく、且つその冷感を長時間持続することができる。
【0011】
また本発明は、吸水性樹脂入りバンドが人体の保冷バンドまたは保冷バンダナであるので、従来の保冷バンドまたは保冷バンダナよりも冷感が増し、且つその冷感が持続する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における布帛(A)および比較の綿織物を保冷バンドに巻いて、保冷実験をしたときの、保冷バンドの温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき、説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0014】
本発明において用いられる布帛(A)は、吸水性樹脂入りバンドの最外層を形成する通気性の布帛であって、下記測定法で測定した表面の水分が、該綿織物で形成し、含水させた吸水性樹脂入りバンドの同時に測定した表面の水分よりも0.3%以上多い布帛である。現在市販されている保冷バンドで最も冷感が大きいのは最外層が綿織物のものであり、この綿織物の表面の水分との差が大きい布帛を用いるほど冷感が向上するが、その差がわずかであれば、冷感の差を感じにくい。後記する実施例の数値によりその差が0.3%以上であれば冷感の差を感じることができると思われる。したがって、本発明においては布帛(A)の水分が0.3%以上多い布帛とした。
水分測定法:布帛(A)を含水しピックアップ率100%に絞って、含水膨潤させた吸水性樹脂入りバンドの上に密着しておき、室内の25±5℃で30分放置した後布帛(A)の表面の水分を水分測定器で測定する。
【0015】
具体的には、保冷バンドを15〜20℃の水に2〜3分間浸漬し、十分吸水膨潤させた後、非吸水性の基板の上に置く。その上に含水しピックアップ率100%に絞った布帛(A)を密着して置き、室温で30分静置した後、水分測定器でその布帛(A)の表面の水分を測定する。10回測定し、平均値を測定値とする。十分吸水膨潤させるとは、保冷バンドが丸くまたはなだらかに膨らみ表面に水があることがわかる状態をいう。
本測定法において、布帛(A)の表面の水分は外部への水の蒸散と内部から水が表面に移動して表面の水分がある程度定常状態になった状態で測定しなければならない。本発明方法は、布帛(A)の通気性、吸水性などのファクターを総合した測定方法である。測定時間を30分後としたのは布帛の表面の水分が定常状態になっていると考えられるからである。
【0016】
併せて、従来の保冷バンドに用いる綿織物布帛についても同時に同様にして表面の水分を測定しておく。同時にというのは、測定条件をできるだけ同じにするという意味があり、試験条件が変われば、たとえば含水する水の温度が変わると含水量が異なり、そのため測定値が影響を受けてしまうからである。
水分測定器は市販の水分測定器が測定できる。たとえば、「水分チエッカー」(型式:SK−940A、佐藤軽量器製作所社製)が挙げられる。
【0017】
布帛表面の水分は、布帛表面からの水分の蒸発と含水ゲルからの表面への水分の移行とのバランスによるものであると考えられる。布帛表面の湿潤時の水分量は、布帛を形成する繊維の材質、繊維の断面形状、繊維同士の絡み状態によって変わり、また布帛表面の加工によっても影響を受けるが、実験結果では布帛の目付によってはあまり影響を受けないようである。
保冷バンドの布帛(A)としては、湿潤時の水分量の他に、通気度、強度、肌触り、皮膚安全性、コストなどを含めて選定される。材質的には親水性が大きい繊維で形成され、公定水分量が大きいほど湿潤時の布帛表面の水分が大きい。繊維の構造としては、一本一本の繊維に凹凸や孔を有し水分が入り込む空間が多いほど水分量が大きい。また、繊維と繊維の絡みが多い程水分が入る空間が多く水分量が大きい。また、吸水加工すれば表面の水分量を上げることができる。
【0018】
本発明に用いられる通気性の布帛(A)の具体例としては、高吸水性繊維、麻、レーヨン、マイクロファイバー、ナノファイバーなどの繊維からなる布帛が挙げられるがこれらに限定されない。これらの中でも吸水しても膨潤しにくく、且つ表面の吸水量が大きいマイクロファイバー、ナノファイバーからなる布帛が好ましい。従来の保冷バンドに用いられる綿織物の表面の水分(%)は、本発明における測定法によればせいぜい20%台である。したがって、布帛(A)の表面の水分が21.0%以上であるのが好ましい。
【0019】
マイクロファイバーは、化学的に組成された8マイクロメートル以下の極細のナイロンやポリエステルなどの繊維であり、たとえば、0.01〜50デニール、より好ましくは0.01〜0.99デニールのスプリットマイクロファイバー、アンスプリットマイクロファイバー、又はそれらの組み合わせが挙げられる。また、重量%の割合が50/50〜90/10であるポリエステルおよびポリアミドからなるマイクロファイバー;100%ポリエステルのマイクロファイバー;及び100%ポリアミド(ナイロン)のマイクロファイバーが挙げられる。マイクロファイバーからなる布帛は、極細繊維を束ねているので繊維間に多くの空間を有しており、毛管作用により吸水性が大きい。さらにマイクロファイバーを繊維を押し出しにより紡績した後で、裂いて畝と溝を生成したものが、さらに毛管作用を助長するので好ましく、ボイドスペースに水分が引き込まれる。マイクロファイバーで形成された布帛は、たとえば、1平方インチ当たり90,000〜180,000のマイクロファイバーを有し得るので、水分を含む表面と接触するのに広い表面領域を有する。同様に、多数の繊維により、それに比例して毛管作用の量および水分が吸い込まれるボイドスペースの量が増大する。
【0020】
ナノファイバーは、マイクロファイバーよりもさらに平均繊維径を小さくした超極細繊維であり、好ましくは1〜800nm、より好ましくは10〜700nmである。ナノファイバーを構成する樹脂としては、たとえば、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、でんぷん、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。繊維は、単独樹脂からなる繊維でも2種類以上の樹脂からなる複合繊維でもよい。複合繊維の形状は、サイドバイサイド型複合繊維、芯鞘繊維、複合中空繊維などが挙げられる。また、繊維の単糸断面形状は、円形、三角形、扁平、多葉、多孔などが挙げられ、これらの中から用途等に合わせて適宜選択すればよい。また、ナノファイバーから構成される布帛(A)の厚みは、1μm以上が好ましい。厚みが1μm未満であると、ハンドリング性および加工性が低下する場合がある。好ましくは10〜100μmである。ナノファイバーはマイクロファイバーと同等またはより優れた吸水性能を有する。
【0021】
布帛(A)は少なくとも吸水性樹脂を包む部分の最外層が形成されてなる。布帛(A)は人体の皮膚に接触して用いられるのが好ましいので、少なくとも吸水性樹脂の存在する部分の最外層が形成されている。最外層とするのは、吸水性樹脂と最外層の間に他の布帛がある場合も考慮して皮膚に接触できるという意味である。
【0022】
上記布帛(A)の他にも通常保冷バンドに用いられる通気性布帛を布帛(A)と共に使用できる。該通気性布帛としては、柔軟性・通水性を有し、且つ含水ゲルを含んだ状態で破れない湿潤強度があれば、特に形態、材質にはこだわらない。
【0023】
通気性布帛の材質としては、たとえば綿、羊毛、絹、セルロース、パルプなどの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポバールなど及びその変性物などの合成樹脂又は繊維、アセテートなどの半合成繊維など及びこれらの混合素材が適用できる。好ましくは吸水性のある天然繊維、およびそれらと他の繊維の混合素材である。
形態としては、たとえば編布、織布、不織布などの布などが挙げられる。
【0024】
また、該通気性布帛や上記の通気性の布帛(A)のフラジール法による通気度は0.1cm/cm・s以上であるのが好ましく、0.3cm/cm・s以上であるのがより好ましい。また、30cm/cm・s以下であるのが好ましく、20cm/cm・s以下であるのがより好ましい。0.1cm/cm・s以上であると、保冷バンドの含水ゲルの水分が布を通して徐々に気化する気化速度が早く冷感が増し、且つ冷感を長時間持続できる。0.3cm/cm・s以上であると気化する気化速度がさらに早く冷感が向上する。30cm/cm・s以下であると、吸水前の吸水性樹脂粉末が外部にこぼれたりせず、吸水後の吸水性樹脂の水分の気化速度が速すぎず保冷持続時間も短くならない。
【0025】
本発明におけるバンド中の含水ゲルを形成する吸水性樹脂としては、天然系でも合成系でも特に限定はないが、安価で、安全性、耐久性、吸水倍率や吸水速度などの吸水特性に優れ、かつ、腐敗の心配の無いものが好ましい。
このようなものとして特に合成系の吸水性樹脂が挙げられ、吸水・膨潤するものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルアルカンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、および、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物が、吸水膨潤特性、保水性、安全性や経済性などが特に良好であるため好ましい。
【0026】
これらの吸水性樹脂は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記吸水性樹脂は、所定形状に造粒されていてもよく、また、不定形破砕状、球状、鱗片状、繊維状、棒状、塊状、粉末状など、種々の形状であってもよいが、吸水性能を向上させるために、粉末状であることがより好ましい。
【0027】
粒子の平均粒子径について特に限定はないが、好ましくは30〜850μmであり、より好ましくは60〜400μmである。30μmより大きいと通気性基材から吸水性樹脂の粉末が漏れにくくなり、850μmより小さいと含水ゲルを作成するときの吸水速度が良好である。粒度分布は特に限定はないが、好ましくは30〜850μmの範囲の粒子が95質量%以上になるような粒度分布である。ここで平均粒子径は質量平均粒子径を意味し、質量平均粒子径は、架橋重合体の各粒度分布を横軸が粒子径、縦軸が質量基準の含有量の対数確率紙にプロットし、全体の50%を占めるところの粒子径を求める方法により測定する。たとえば、通常の篩振とう法が適用できる。
【0028】
上記吸水性樹脂の吸水倍率は重量で100〜1000倍であるのが好ましい。吸水倍率は下記の方法で測定できる。
<吸水性樹脂の吸水倍率の測定法>
ナイロン製の網袋(250メッシュ)に吸水性樹脂の試料(サンプル量;Xg)を入れ、これを袋ごと過剰の水に浸した。浸漬60分後に袋ごと空中に引き上げ、静置して15分間水切りした後、質量(Yg)を測定して下式より吸水倍率を求めた。[網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の質量(Zg)をブランクとして差し引いた。]
吸水倍率=(Y−Z)/X
【0029】
また、吸水性樹脂の吸水速度は、好ましくは5〜200秒であり、より好ましくは5〜100秒である。吸水速度が5秒以上であると、空気中の湿度の影響で吸水性樹脂同士のブロッキングなどが生じにくくなり、使う前に「ままこ」がないので使いやすい。吸水速度が200秒以下であると、含水した時の吸水速度が十分に速くまた水の蒸散速度も速いので冷却速度も速く好ましい。
【0030】
吸水性樹脂の吸水速度は下記の方法で測定できる。
<吸水性樹脂の吸水速度の測定法>
100mLのガラスビーカーに水道水を50mL入れ、マグネットスターラー〔直径(中央部8mm、両端7mm)、長さ30mmのフッ素樹脂コーテイングされたもの〕を用いて600rpmで攪拌する。試料2.00試験サンプルを渦中に一度に投入し、投入した時から渦が消えて液面が水平になった時点までの時間(秒)を測定し、吸水速度とする。
【0031】
また、吸水性樹脂としては、低分子の水可溶性成分、たとえば、アクリル酸のオリゴマーなどの低分子などは少ない方が好ましい。これらの水可溶性成分は、含水ゲルを手で触ったときに、ヌメリ感を与え感触がよくない。吸水性樹脂中の水可溶性成分が10%以下であるとヌメリ感が少なく、5%以下であるとさらに少なく感じ、1%以下のものが、触った時にヌメリ感がないので好ましい。水可溶性成分の測定法は、特開2005−445公報などに記載された重量測定法や電滴法などの方法で測定できる。
水可溶性成分は水ではなく蒸発しにくいので、保冷バンドを使用したときに、布帛の表面に出てきて残りやすい。そのため、布帛表面の水分量が多くなることがあるが、そのような状態は皮膚にヌメリ感を与え、本発明の保冷バンドには適さない。
【0032】
吸水性樹脂入りバンドは、吸水性樹脂が布帛からなる袋に入れられたバンドであり、袋は少なくとも吸水性樹脂を含む部分の最外層が布帛(A)により形成されてなる。吸水性樹脂を含まない部分は布帛(A)で形成されていてもいなくてもよい。さらに吸水性樹脂を含む部分の全体が布帛(A)で形成されていてもよいが、袋が偏平状であれば、片方のみが布帛(A)で覆われ、反対側の面が従来から用いられている綿織物などの通気性の布帛で覆われていてもよい。好ましくは袋の片方の吸水性樹脂がある部分の半分以上が布帛(A)で覆われ、より好ましくは吸水性樹脂がある部分の片方の全面が覆われることである。特に好ましくは吸水性樹脂がある部分の両方の全面が覆われることである。
吸水性樹脂入りバンドを袋状にするための接合手段としては、特に限定されないが、例えば縫製、ヒートシール、接着剤、熱融着テープを布と布との間に介在させて熱により融着する方法等がある。好ましくは縫製とヒートシールである。
【0033】
保冷バンドの大きさは、装着する部位や子供、大人により決まるが、好ましくは巾1cm〜15cm、長さ15cm〜150cmであり、より好ましくは巾2cm〜10cm、長さ20cm〜90cmであり、形状は特に限定はなく、帯状や三角形などがある。三角形のものとは、二等辺三角のようなもので長い底辺部が帯状になっているものは特にバンダナと称する。またスカーフの一部などとしても、ファッション性を有し若者に好まれ用いられる。
【0034】
また、前記布帛の袋部は1区画又は2区画以上に分割、好ましくは1区画又は2〜5区画に分割されるように上下間で縫合やヒートシールなどがされており、分割された各々の空間に単位広さ当たり均等に吸水性樹脂が充填されているのが良い。これによって、吸水性樹脂が袋内の一側に偏るのを防止できるからである。また、吸水性樹脂の偏りを防ぐために、吸水性樹脂の代わりに不織布などの基材に吸水性樹脂を塗工したり、不織布などの基材で吸水性樹脂をサンドイッチしたシートを袋部の中に入れても良い。
バンドの周辺には、吸水性樹脂の粉落ちを防止するため端を折り曲げて縫製したり、必要によりヘムを取り付けて縫製しても良い。また、縫い目からの粉落ちを防止するために、細い針と細い糸を使用することが好ましい。また必要により縫い目を後から樹脂加工等により目つぶしすることもできる。
【0035】
吸水性樹脂入りバンドは、公知の方法で製造することができる。たとえば、上記のように1区画又は2区画以上の袋部を設け、各袋部の中に粉末状吸水性樹脂又はシート状若しくは薄板状に形成された吸水性樹脂が封入される形態が挙げられる。吸水性樹脂の量も公知の量で入れることができる。
【0036】
バンドを形成する最外層の布帛の表面の水分が多いほど、水の蒸散がより大きくなり、バンド自体の温度がより下がり、冷感がより大きくなり、それによってより冷感が長く持続するものと考えられる。また、布帛の表面の水分が多いほど、バンドに接触する皮膚を多く濡らし皮膚の水分がより多く蒸発することにより皮膚の温度がさらに下がることになる。皮膚面ではこの両者の現象が同時に起こる。
【0037】
本発明者らは、冷感の向上と持続のためには、布帛の表面の水分量を多くすれば、上記の二つの機能が増すと考えた。特に皮膚に直接接触する水分が蒸発するときに皮膚が冷感を感じやすいのではないかと考えられる。すなわち、保冷バンドと皮膚の間は人の動きにつれて微妙に密着したり離れたりしているので、上記の現象は多くなり、効果は向上する。
現在の市販のバンドで最も冷感がある布帛は綿織物であるが、この綿織物よりもさらに布帛の湿潤時の表面の水分量が多い布帛をバンドの皮膚と接触する部分に用いると皮膚を多く濡らすことができるので、上記の効果を奏することができると考えられる。
【0038】
本発明の保冷バンドの両面が布帛(A)で形成されていれば何ら問題はないが、片面またはその一部が布帛(A)で形成されている場合には、保冷バンドを含水させた後、布帛(A)を皮膚に接触させて使用すれば、綿織物を最外層に用いた従来のバンドよりも冷感を強く感じ、且つ冷感を長時間持続することができる。
【0039】
本発明の吸水性樹脂入りバンドは、含水させて人体の頭、首、腕などに巻いて保冷する装身用保冷バンドまたは保冷バンダナとして好適に使用できる。装身用保冷バンド又は保冷バンダナとして使用する場合には、吸水性樹脂の入ったバンドを1〜15分間、
1〜25℃の水に浸けた後使用する。好ましくは3〜20℃である。また、含水させない場合は、布帛(A)の表面が高含水量になることを利用して、汗取りバンドとして用いれば、従来の綿織物を最外層とする汗取りバンドよりも早く汗を吸収するので、汗取りバンドとして用いることもできる。
【0040】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明するがこれに限定されるものではない。
(試験例1)
「アイクール」(ネッククーラー:アイ・イー・ジェー社製、最外層は綿織物)を20℃の水道水に5分間浸漬し、吸水膨潤させた。その上に下記布帛を含水しピックアップ率100%に絞って、含水膨潤させた「アイクール」の上に密着しておき、20分、30分、1時間放置した後布帛の表面の水分を、「水分チエッカー」(型式:SK−940A、佐藤軽量器製作所社製)水分測定器で10回測定し、その平均値を表1に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
上記の結果から、綿織物よりも吸水量(%)が大きいものは、マイクロファイバー(以下、MFという)織物と麻織物であり、30分後の水分は同時に測定した綿織物よりも0.3%以上大きい。エステル/綿織物の表面の水分が最も低かった。
綿織物A,Bの表面の吸水量(%)は、「アイクール」の表面の水分(%)とほぼ同じ数値を示している。「アイクール」自体も含めて最外層の布帛がいずれも綿織物であることによると考えられる。また、いずれも綿織物A,Bだけをみると、表面の水分(%)と目付量とは関係がないようである。
【0043】
次に上記の30分後の布帛について、10人(A〜J)に手の甲で触ってもらい、冷たい順に番号を付してもらった。その結果、表2の通りになった。数値の小さいほど冷たいことを示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表1、2から、表面の水分(%)が大きいものほど冷感が良好である。保冷バンドの温度は同じであるので、この評価では冷感は温度には関係がない。MF織物と麻織物は綿織物よりも冷感が良好である。すなわち、布帛の表面の水分(%)が大きいものは、冷感を感じやすいといえる。
【0046】
(試験例2)
屋外の日陰で以下の実験を行った。表1に記載したMF織物A、綿織物Aを含水し100%にピックアップして、十分に吸水膨潤させた「アイクール」(上記)の吸水性樹脂のある部分を全面1回巻いて、太陽により36℃(この温度は人の体温に近い温度である)に温められた板の上に、静置した。この板と最外層の布帛の間に温度センサーを挿入し、1時間の間の温度を10分毎に測定した。また、合わせて気温、板の温度、バンドを捲いた布帛表面の水分(%)を測定した。その結果を、表3と図1に示した。図1は表1の数値をプロットしたグラフである。
【0047】
【表3】

【0048】
観察時間は1時間であるが、その間に気温は34.0℃から35.5℃に上がり、34.0℃に下がった。それにつれて、下板の温度も36.0℃から36.5℃に上がり36.0℃に下がった。保冷バンドの布帛と下板の間の温度については、二つの布帛の間に歴然とした差がみられた。すなわち、綿織物の場合は、29.7℃から30.3℃に上がり29.7℃に下がった。MF織物の場合は、29.9℃から28.9℃に下がった。表面の水分(%)については、綿織物の場合、19.7〜19.0に推移したが最後には16.7%に下がった。MF織物の場合、20.7〜20.4の間で安定していた。
【0049】
このことから、両者の最初のバンドの温度は同じであったが、30分経過すると1℃の開きが生じている。綿織物の場合、気温が上昇するにつれてバンドの温度も上昇しているが、MF織物の場合、殆ど温度が上がらなかった。綿織物の表面の水分量が少ないので温度の上昇分を蒸発によってカバーしきれなかったが、MF織物の場合は表面の水分が多いので温度上昇分の水分を蒸発でカバーすることができたものと考えられる。MF織物の場合、その間も表面の水分量は変わっていないので、内部の含水ゲルから水分が移動し表面の水分が補給されていると考えられる。下板の温度が常に36℃程度であるので、人体の皮膚(動き以外)を想定できていると考えられる。
【0050】
上記のことから、バンドの最外層の表面の水分量が多いと温度が上昇してもバンドの温度が上がりにくく、このことが冷感を持続させることの一つの理由になると考えられる。上記の試験では、バンドを静置しているので、バンド自体の温度変化しかわからない。しかし、バンドを人体に着けた場合、人の動きによる皮膚とバンドの間の現象は不明であるので、実際に人体でどうなるか試験する必要があり、以下の試験を行った。
【0051】
まず、保冷バンドは、以下のように作成した。
(実施例1)
吸水性樹脂として、平均粒径200μm、吸水量100g/g、水可溶性成分含量1.5%の架橋されたポリアクリル酸ソーダを準備した。別途、サイズ5×80cmの布帛を3種類(上記表1のMF織物A、綿織物A、エステル/綿(65/35)織物:通気度は20、16、14cm3/cm2・sec、)をそれぞれ2枚準備した。そして、2枚重ね合わせ、帯の中央部長さが35cmの部分には縦に2区画の袋部を均等に設けて縫合した。分割された各空間に未縫合の辺側より上記吸水性樹脂1.0gをそれぞれ充填し、その辺も縫合することによって3種類の吸水性樹脂入りバンドを製造した。MF織物Aで作成したバンドが本発明のバンドである。
【0052】
以下に、綿織物A、MF織物A、エステル/綿(65/35)織物を用いて、上記に作成した保冷バンドを用いて、20℃で3分間水に浸漬して、23〜28℃の室内で10人に首に着用してもらい、冷感度の順番、冷感の持続時間をみてもらった。その結果を表4に示した。表4において、時間は人数を表しているが、冷感度については、冷たい順に1、2、3と付けてもらい、10人の合計点を記載した。数値の小さいほど冷感が大きいことを表している。
【0053】
【表4】

【0054】
この結果から、MF織物Aで作成した保冷バンドが冷感の持続性が最も良かった。また、表1の表面の水分(%)の多いものほど、冷感度が大きいし、冷感を感じる時間が持続している。保冷バンド自体の温度低下に加えて皮膚表面を濡らした水分が多いので、その水分の蒸発による温度低下を含めた効果も影響したと思われる。
したがって、本発明の保冷バンドは、従来用いられてきた保冷バンドの綿織物よりも最外層の表面の水分(%)が大きいので、冷感度が大きく、冷感を長時間持続することができたものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂と、これを入れる袋状の通気性の布帛からなるバンドにおいて、下記水分測定法により測定した布帛(A)の表面の水分が、同時に測定した綿織物の布帛の表面の水分よりも0.3%以上多い布帛(A)により、少なくとも吸水性樹脂を包む部分の最外層が形成されてなることを特徴とする吸水性樹脂入りバンド。
水分測定法:布帛(A)を含水しピックアップ率100%に絞って、含水膨潤させた吸水性樹脂入りバンドの上に密着しておき、室内の25±5℃で30分放置した後布帛(A)の表面の水分を水分測定器で測定する。
【請求項2】
前記布帛(A)の水分が21.0%以上であることを特徴とする請求項1記載の吸水性樹脂入りバンド。
【請求項3】
前記布帛(A)がマイクロファイバーまたはナノファイバーで形成された布帛であることを特徴とする請求項1または2記載の吸水性樹脂入りバンド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸水性樹脂入りバンドを含水させた後、前記布帛(A)を皮膚に接触させることを特徴とする請求項1または2記載の吸水性樹脂入りバンドの使用方法。
【請求項5】
人体の保冷バンドまたは保冷バンダナである請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸水性樹脂入りバンド。


【図1】
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